自宅で託児所を開業するまでの流れ|必要な許可と部屋の条件

@SOHO編集部
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自宅で託児所を開業するまでの流れ|必要な許可と部屋の条件

この記事のポイント

  • ✓自宅で託児所を開業したい人に向けて
  • ✓1人でも預かるなら必要になる都道府県への届出
  • ✓市町村の認可を受ける家庭的保育事業との違い

子育てが一段落した保育士の資格を持つ人や、子どもと関わる仕事の経験がある人から、「自宅の一部屋を使って、近所の子どもを預かる託児所を開きたい」という相談を受けることがあります。保育園に空きがない地域では、少人数で家庭的な雰囲気の預かり先を求める保護者もいて、自宅託児所の開業に関心を持つ人は少なくありません。

ただ、自宅託児所開業で最初に知っておくべきなのは、「たとえ1人でも、仕事として子どもを預かるなら、都道府県などへの届出が必要」ということです。これ、知らない人が本当に多いんです。また、自宅で開ける託児の形には、届出だけで始められるものと、市町村の認可を受けるものがあり、部屋の広さや保育する人の資格の条件も違います。

この記事では、自宅で託児所を開業するまでの流れを、児童福祉法とこども家庭庁の「認可外保育施設指導監督基準」をもとに、必要な手続き、部屋の条件、保育する人の資格、安全と防災の備えの順に整理します。

自宅で開ける託児所の2つの形

自宅で子どもを預かる事業には、大きく分けて2つの形があります。

1つ目は、認可外保育施設として開業する形です。認可外保育施設とは、国や自治体の認可を受けずに運営する保育施設のことで、いわゆる託児所やベビーホテルもここに含まれます。開業そのものに許可は要りませんが、事業を始めたら都道府県知事などに届け出る必要があります。

2つ目は、市町村の認可を受けて家庭的保育事業を行う形です。家庭的保育事業とは、保育を必要とする主に3歳未満の子どもを、家庭的保育者と呼ばれる人の自宅などで少人数で預かる事業のことで、「保育ママ」と呼ばれることもあります。市町村の認可を受けるため、運営費の支援を受けられる一方で、基準は厳しく、募集の時期や枠も市町村が決めます。

項目 認可外保育施設(自宅託児所) 家庭的保育事業(保育ママ)
手続き 事業開始の日から1か月以内に都道府県知事などへ届出 市町村の認可
預かる子ども 年齢の制限は事業者が決める 保育を必要とする主に3歳未満の子
預かる人数 1日5人以下なら少人数施設の基準 家庭的保育者1人につき3人以下、補助者がいれば5人以下
保育する人 保育士・看護師または都道府県などの研修の修了者が1人以上 市町村長が行う研修を修了した保育士など
料金 事業者が決める 市町村が決める

どちらを選ぶかで、開業までの道のりが大きく変わります。自分で料金や預かる時間を決めて、柔軟な預かりをしたいなら認可外保育施設、市町村の保育の一部として安定した運営をしたいなら家庭的保育事業、というのが大まかな分け方です。家庭的保育事業は市町村ごとに募集の有無が違うため、まず住んでいる市町村の保育課に問い合わせましょう。この記事では、主に認可外保育施設として自宅で開業する流れを説明します。

1人でも預かるなら届出が必要

認可外保育施設を開業するときの最も大切な手続きが、都道府県知事などへの届出です。児童福祉法第59条の2は、認可を受けていない保育施設の設置者に、事業の開始の日から1か月以内に、施設の名称や所在地などを都道府県知事に届け出るよう義務づけています。

以前は、1日に保育する乳幼児の数が6人以上の施設だけが届出の対象でした。しかし平成28年4月から、この範囲が広がっています。こども家庭庁が公開しているお知らせは、次のように説明しています。

これまでは1日に保育する乳幼児の数が6人以上の認可外保育施設や認可外の訪問型保育事業(いわゆるベビーシッター事業)を行う場合に、原則、届出が必要でしたが、平成28年4月以降は1日に保育する乳幼児の数が1人以上の場合に、届出が必要となります。(ただし、臨時に設置される場合等は除きます。) 出典: こども家庭庁「1人でも乳幼児を保育する(預かる)事業を行う皆様へのお知らせ」

つまり、自宅で1人の子どもを預かる場合でも、それを事業として行うなら届出が必要だということです。届出先は、施設がある都道府県ですが、指定都市や中核市にある場合は、その市に届け出ます。子どもの預かりサービスのマッチングサイトを使って事業を行う場合は、利用しているサイトのURLも届出の事項になっています。

届出をしないまま事業を続けると、児童福祉法にもとづいて指導や立入調査の対象になり、改善の勧告や事業停止の命令を受けることもあります。「近所の子を少し預かるだけ」のつもりで始めても、継続して料金を受け取るなら事業に当たると考え、届出先の自治体に早めに相談しましょう。

届出のあとに続く義務

届出は1回出せば終わりではありません。児童福祉法は、届出をした施設の設置者に、次のような義務を定めています。

1つ目は、施設の名称や設置者の氏名、建物や設備の規模と構造などの事項を、施設の見やすい場所に掲示し、インターネットでも公表することです。

2つ目は、利用の申し込みがあったときに、契約の内容と、その履行に関する事項を説明するよう努めることです。

3つ目は、利用の契約が成立したときに、設置者の氏名と住所、利用者が払う料金などを書いた書面を、遅滞なく利用者に渡すことです。

4つ目は、毎年、施設の運営の状況を都道府県知事に報告することです。都道府県知事は、その報告をまとめて公表します。

5つ目は、届け出た事項に変更があったときや、事業を休止・廃止したときに、1か月以内に届け出ることです。

さらに、届出をした施設には、都道府県などが立入調査を行います。調査は、こども家庭庁の「認可外保育施設指導監督基準」に沿って行われます。条文の全文はe-Gov法令検索の児童福祉法で確認できます。

自宅に来てもらうのではなく、訪問して預かる形もある

自宅の部屋を保育室に整えるのが難しい場合は、子どもの家に出向いて保育する形もあります。いわゆるベビーシッターで、制度の上では認可外の居宅訪問型保育事業と呼ばれます。この形も、1日に保育する乳幼児が1人以上なら届出の対象で、個人のベビーシッターは住んでいる都道府県(指定都市や中核市ならその市)に届け出ます。

指導監督基準では、居宅訪問型の場合、原則として保育する人1人に対して乳幼児1人です。兄弟姉妹を一緒に預かる場合などで、保護者が契約で同意しているときは、例外として複数の子を見ることもできます。保育する人は、全員が保育士か看護師の資格を持っているか、都道府県知事などが行う研修を修了している必要があります。複数の人を雇う事業者の場合は、採用した日から1年を超えていない人は除かれます。

保育の場所は子どもの家なので、自宅託児所のような保育室の広さや設備の条件は求められません。その一方で、事業の運営に必要な広さの専用の区画を事業所に設けることや、保育に必要な備品を備えるよう保護者に協力を求めることが求められています。自宅の部屋を使うか、子どもの家に出向くか。開業の前に、自分の住まいの事情と、預かりたい子どもの年齢に合わせて選びましょう。

部屋の広さと設備の条件

自宅のどの部屋を、どのくらいの広さで使えるかは、預かる人数によって基準が変わります。指導監督基準は、1日に保育する乳幼児が6人以上の施設と、5人以下の施設で基準を分けています。

1日に6人以上を預かる施設では、子どもを保育する部屋である保育室のほかに、調理室と便所が必要です。保育室の面積は、おおむね乳幼児1人あたり1.65㎡以上とされています。この面積には、調理室や便所、浴室は含めません。また、おおむね1歳未満の乳児を保育する場所は、幼児の場所と区切り、安全を確保する必要があります。事故の防止のために、できれば別の部屋にし、難しければベビーフェンスなどで区切ることが望ましいとされています。

1日に5人以下を預かる自宅の施設では、保育室のほかに調理設備と便所が必要です。保育室の面積は、家庭的保育事業の基準を参考にしつつ、乳幼児の保育を適切に行える広さを確保する、とされています。参考にする家庭的保育事業の基準では、保育を行う専用の部屋の面積は9.9㎡以上で、保育する乳幼児が3人を超える場合は、1人につき3.3㎡を加えた面積以上とされています。家庭的保育事業の基準の全文はe-Gov法令検索の家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準で確認できます。

預かる人数 必要な設備 保育室の広さ
1日6人以上 保育室、調理室、便所 おおむね1人あたり1.65㎡以上
1日5人以下 保育室、調理設備、便所 家庭的保育事業の基準(9.9㎡以上、3人を超えると1人につき3.3㎡を加算)を参考に、適切な広さ

どちらの場合も、保育室には採光と換気が確保されていること、安全性が確保されていることが求められます。6畳の部屋はおよそ10㎡前後なので、1日5人以下の小さな託児所なら、6畳から8畳程度の一部屋を専用の保育室に充てるのが、1つの目安になります。ただし、大きな家具や家電がある部屋では、実際に子どもが使える面積が減ります。保育室として使う部屋は、できるだけ物を減らして専用にしましょう。

保育する人の資格と人数

自宅託児所で保育をする人に、どんな資格が必要かも、預かる人数で変わります。

1日に5人以下を預かる自宅の施設では、保育に従事する人1人に対して乳幼児3人以下が原則です。家庭的保育補助者と一緒に保育する場合は、5人以下まで預かれます。そして、保育に従事する人のうち1人以上が、保育士か看護師の資格を持っているか、都道府県知事などが行う保育に従事する人のための研修を修了している必要があります。

この研修は、20時間程度の講義と1日以上の演習を基本とするもので、子育て支援員研修の地域保育コースや、居宅訪問型保育の基礎研修などが当たります。つまり、保育士の資格がなくても、研修を修了すれば自宅託児所を始められる道がある、ということです。ただし指導監督基準は、保育士、看護師、家庭的保育者が常に配置されていることが望ましいともしています。研修の受講の状況も届出の事項なので、どの研修が認められるかは、届出先の都道府県などに相談してください。

1日に6人以上を預かる施設になると、基準は一気に厳しくなります。保育に従事する人の数は、乳児おおむね3人につき1人以上、1歳と2歳の子おおむね6人につき1人以上などと決められ、2人を下回ってはならないとされています。さらに、保育に従事する人のおおむね3分の1以上が、保育士か看護師の資格を持っている必要があります。自宅で始める場合は、まず1日5人以下の規模から始めるのが現実的です。

なお、保育士の資格を持っていない人が「保育士」や、それと紛らわしい名前を名乗ることは、児童福祉法で禁止されています。指導監督基準によると、違反すると30万円以下の罰金の対象になり、資格のない人を保育士であるかのように案内した事業者も罰則の対象になるおそれがあります。チラシやホームページで、保育する人の資格を正確に書くことが大切です。

防災と安全の備え

子どもを預かる以上、火災や地震、事故への備えは欠かせません。指導監督基準は、消火用具、非常口その他の非常災害に必要な設備を設けること、非常災害に対する具体的な計画を立て、定期的に訓練をすることを求めています。火災報知器や消火器を設置するだけでなく、保育する人の全員が設置場所と使い方を知っていることが必要とされています。

保育室の場所についても、災害のときの避難を考えると、原則として1階に設けることが望ましく、2階以上に設ける場合は防災上の必要な措置が求められます。マンションの上の階や、2階の部屋を保育室にする場合は、避難の経路を事前に確認し、届出先に相談しておきましょう。

日々の安全の確保についても、細かい基準があります。代表的なものを挙げます。

  1. 登園と降園のとき、子ども1人ひとりの体温や機嫌、皮膚の異常の有無などを観察し、保護者と状態を伝え合う
  2. 身長や体重の測定など、基本的な発育のチェックを毎月行う
  3. 継続して預かる子どもの健康診断を、利用の開始時と1年に2回行う(直接できない場合は、保護者から健康診断書の提出を受けるなどで確認する)
  4. 保育する人の健康診断を、採用時と1年に1回行う。調理をする人は、おおむね月1回の検便を行う
  5. 睡眠中の子どもの顔色や呼吸の状態をきめ細かく観察する
  6. 賠償責任保険に加入するなど、保育中の万が一の事故に備える

特に、睡眠中、水遊び中、食事中は重大な事故が起きやすい場面です。指導監督基準は、医学的な理由で医師からうつぶせ寝をすすめられている場合を除き、寝かせるときはあおむけに寝かせることなど、窒息のリスクを取り除く工夫を求めています。自宅だからといって、家庭の育児と同じ感覚で預かってはいけません。

保育の中身と保護者との連絡

指導監督基準は、設備や人数だけでなく、保育の中身についても基準を示しています。主なものは次のとおりです。

1つ目は、子ども1人ひとりの心身の発育や発達の状況を把握し、保育の内容を工夫することです。遊び、運動、睡眠などがバランスよく組み合わされた生活のリズムが保たれるよう、保育の計画を立て、それを実際に行うことが求められています。

2つ目は、放任的な保育にしないことです。基準は、漫然とテレビやビデオを見せ続けるなど、子どもへの関わりが少ない保育になっていないことを求めています。自宅で少人数を預かる場合でも、子どもと向き合う時間を確保する計画が必要です。

3つ目は、子どもの人権への配慮です。身体的、心理的な苦痛を与えたり、人格を辱めたりすることがないよう、十分に配慮することが求められています。また、子どもの体や様子、家族の態度などから、虐待など不適切な養育が疑われる場合は、都道府県や児童相談所などの専門の機関と連携する体制をとることも求められています。

4つ目は、保護者との密接な連絡です。連絡帳やそれに代わる方法で、保護者からは家庭での様子を、託児所からは預かっている間の様子を伝え合います。緊急時にいつでも連絡が取れるよう連絡先を整理し、保護者や利用を考えている人から見学の希望があれば、子どもの安全に配慮しつつ応じることも求められています。

食事やおやつを出す場合は、調理や配膳、食器の衛生管理を適切に行う必要があります。アレルギーのある子を預かるときは、保護者と医師の指示を確認し、誤って食べさせることがないよう、提供する食べ物の確認の手順を決めておきましょう。

掲示と公表で利用者に知らせる事項

届出をした施設は、提供するサービスの内容を、利用者の見やすい場所に掲示し、インターネットでも公表する必要があります。指導監督基準によると、インターネットでの公表は、子ども・子育て支援情報公表システム「ここdeサーチ」に掲載する方法によります。

掲示と公表が求められる主な事項は次のとおりです。

区分 主な事項
施設の基本情報 設置者の氏名、施設の管理者の氏名、施設の名称と所在地、事業を開始した年月日
運営の内容 開所している時間、提供するサービスの内容と料金、入所定員
職員 保育士その他の職員の配置数、設置者と職員の研修の受講状況
安全と緊急時 契約している保険の種類と保険金額、提携している医療機関、緊急時の対応方法、非常災害の対策、虐待の防止のための措置
過去の処分 事業停止命令や施設閉鎖命令を受けたことがあるかどうか

料金を変えたときは、直近の変更の内容と理由も掲示と公表の対象です。保護者に渡す契約の書面には、これらに加えて、利用者からの苦情を受け付ける担当者の氏名と連絡先も書くことになっています。1人で運営する自宅託児所なら、開業する本人が苦情の担当者になるので、連絡先と受付の時間をはっきり書いておきましょう。

「ここdeサーチ」への掲載の方法や時期は、開業の届出をするときに、届出先の都道府県などにあわせて確認しておきましょう。公表する情報は、保護者が預け先を選ぶときの判断材料になります。正確に書き、変更があればすぐに直すことが、信頼につながります。

立入調査と、備えておく帳簿

届出をした自宅託児所には、都道府県などによる指導監督が行われます。指導監督基準によると、すべての認可外保育施設の設置者には、年1回以上、文書で運営の状況の報告が求められます。立入調査も、届出の対象となる施設には年1回以上行うのが原則とされ、1日5人以下の小さな施設についても同じく年1回以上が原則です。都道府県などによっては、立入調査に代えて、講習などの集団指導が行われることもあります。

報告は定期的なものだけではありません。預かっている間に重大な事故が起きた場合は、速やかに報告することが求められます。食中毒が疑われる場合も、都道府県などへの報告に加えて、保健所に報告して指示を受けることになります。届け出た事項に変更があった場合も報告が必要です。

立入調査に備えて、日ごろから帳簿を整えておくことも大切です。指導監督基準は、職員と預かっている子どもの状況を明らかにする帳簿を整備するよう求めています。

帳簿の種類 主な記載事項
職員に関する帳簿 職員の氏名、連絡先、資格を証明する書類の写し、採用年月日
子どもに関する帳簿 子どもと保護者の氏名、子どもの生年月日と健康状態、保護者の連絡先、在籍の記録

自分1人で運営する場合でも、保育士の登録証や研修の修了証の写しは、すぐに見せられるよう保管しておきます。子どもに関する記録は個人情報なので、鍵のかかる場所や、パスワードで保護した端末に保存し、保護者の同意なく第三者に見せないようにしましょう。

立入調査は、問題を見つけて罰するためだけのものではありません。基準に照らして改善が必要な点を指摘してもらえる機会でもあります。開業したばかりの時期ほど、調査の担当者の助言を素直に受け止め、運営の改善に生かすことが、長く続けるための近道です。

開業までの流れ

ここまでの内容を、開業までの手順として並べ直します。

  1. 自分が開きたい託児の形を決める(認可外保育施設か、家庭的保育事業か。預かる年齢と人数、時間帯)
  2. 住んでいる市町村の保育課と、届出先の都道府県・指定都市・中核市の担当課に相談する
  3. 自宅の部屋の広さ、採光と換気、調理設備と便所、避難の経路を確認する
  4. 賃貸住宅やマンションの場合は、事業に使ってよいかを契約や管理規約で確かめ、必要なら大家や管理組合の承諾を得る
  5. 保育士や看護師の資格がない場合は、都道府県などが認める研修を受ける
  6. 消火器や火災報知器を設置し、防災の計画と訓練の方法を決める
  7. 賠償責任保険や傷害保険に加入する
  8. 料金、預かる時間、キャンセルの扱い、病気のときの対応を決め、契約書と重要事項の説明書を作る
  9. 事業を開始し、開始の日から1か月以内に届出をする
  10. 施設の見やすい場所への掲示と、インターネットでの公表を行う

建物の使い方については、建築基準法や消防法の規制がかかることもあります。自宅の一部を使う小さな託児所でも、建物の構造や規模によっては手続きが必要になる場合があるので、市町村の建築の担当課と、地域の消防署に確認しておくと安心です。

研修の受講には申し込みから修了まで時間がかかることがあり、子育て支援員研修などは実施の時期が自治体ごとに決まっています。開業したい時期から逆算し、少なくとも数か月前には研修の日程と届出先への相談を始めておくと、準備が間に合わずに開業が遅れる事態を避けられます。

開業の前にお金の見通しを立てる

自宅託児所は、店舗を借りる事業に比べると始めやすい一方で、預かれる人数に上限があるため、収入の天井もはっきりしています。開業の前に、収入と支出の見通しを紙に書き出しておきましょう。

収入の側は、1時間あたりや1か月あたりの料金に、預かる子どもの人数と日数をかけて計算します。1日5人以下の施設で、保育する人が自分1人なら、預かれるのは原則として3人までです。月極めで毎日来る子と、一時預かりで不定期に来る子では、収入の安定の度合いが違うので、両方の場合を分けて試算します。

支出の側は、開業の前にかかる費用と、毎月かかる費用に分けます。開業の前にかかるのは、研修の受講費、消火器や火災報知器、ベビーフェンスや寝具などの設備と備品、契約書やチラシの作成費などです。毎月かかるのは、賠償責任保険や傷害保険の保険料、食事やおやつの材料費、光熱費の増加分、消耗品の費用です。

料金を決めるときは、地域の認可外保育施設やベビーシッターの料金を調べ、近い水準に合わせるのが一般的です。ただし、安くしすぎると、保険料や研修の費用をまかなえなくなります。子どもの安全に関わる費用は削らない前提で、無理のない料金を決めることが、長く続けるための条件です。

料金の決め方と、保護者に渡す書類

認可外保育施設の料金は、事業者が自由に決められます。ただし、先ほどのとおり、契約が成立したら料金などを書いた書面を利用者に渡す義務があります。保護者との行き違いを防ぐためにも、次の点を書面に入れておきましょう。

書面に入れる項目 内容の例
設置者の氏名と住所 開業する人の氏名と自宅の住所
料金 1時間あたりの料金、月極めの料金、延長料金、食事やおやつの費用
預かる時間 開所時間、休みの日
キャンセルの扱い 前日・当日のキャンセルの料金
病気のときの対応 発熱時の連絡と迎え、預かれない症状
緊急時の連絡先 保護者の連絡先、かかりつけの医療機関
加入している保険 賠償責任保険、傷害保険の有無と内容

また、幼児教育・保育の無償化の対象になるかどうかも、保護者にとっては大きな関心事です。認可外保育施設の利用料が無償化の対象になるには、原則として指導監督基準を満たしていることが必要で、基準を満たさない施設については、令和12年3月末までの経過措置の取り扱いが示されています。対象になるかどうかで保護者の負担が変わるため、市町村の担当課に確認したうえで、保護者に正確に伝えましょう。

相談の現場で見たトラブル事例

自宅で子どもを預かる事業をめぐって、実際によく聞くトラブルを、特定できないよう内容を変えて紹介します。

1つ目は、届出をしないまま、知人の紹介で数人の子どもを預かり続けていたケースです。本人は「友人の子どもを預かっているだけ」と考えていましたが、毎回料金を受け取り、預かる子どもも増えていました。保護者の1人が自治体に問い合わせたことから、届出の必要を知り、慌てて手続きをしました。料金を受け取って継続的に預かるなら、人数にかかわらず届出が必要です。

2つ目は、契約書を作らずに預かりを始め、キャンセルの料金でもめたケースです。口頭で「当日のキャンセルは料金をいただきます」と伝えていましたが、保護者は聞いていないと主張しました。書面を渡す義務を果たしていれば、防げたトラブルです。

3つ目は、賃貸マンションで託児を始めたところ、管理組合から事業の使用を問題にされたケースです。管理規約で住居以外の使用が制限されていたため、場所を変えざるを得ませんでした。開業の前に、契約と規約を必ず読んでおく必要があります。

いずれも、開業の前に「誰に、何を確認するか」を決めておけば避けられました。※保護者との間で事故の責任や損害の賠償をめぐる争いになった場合は、早めに弁護士に相談してください。

個人で開業するときの事務の準備

自宅託児所を個人で開業すると、保育の仕事に加えて、事務の仕事も自分でこなすことになります。税務署への開業届は、開業した年分の確定申告の期限までに出すことになっています。料金の記録、領収書の管理、確定申告など、帳簿の仕事は早めに仕組みを決めておきましょう。保護者に渡す契約書や重要事項の説明書、お便りなどの文書を作る機会も多くなります。ビジネス文書検定では、ビジネス文書の書き方の基本と、試験の級ごとの内容を整理しています。

保護者から料金が支払われないときの対処も、知っておくと安心です。未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】では、少額の未払いでも使える支払督促の流れと、弁護士に頼む場合の費用の目安を説明しています。

また、自宅託児所とは別に、在宅でできる仕事を組み合わせて収入を安定させる人もいます。子どもを預かる時間帯以外に、文章を書く仕事を受けるといった形です。著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、書く仕事の年収と業務委託の単価の目安を、公的な統計をもとにまとめています。

運営者として見てきた、自宅で事業を続けられる人の共通点

在宅ワークやフリーランスの市場を20年見てきた立場から言えば、自宅で小さな事業を長く続けられている人に共通しているのは、「信頼を書面と記録で積み上げている」ことです。自宅託児所は、保護者にとって大切な子どもを預ける場所です。届出をきちんと出し、料金や対応を書面で示し、日々の子どもの様子を記録して伝える。こうした地道な積み重ねが、口コミによる紹介につながり、長く続く事業の土台になります。

もう1つは、手取りの考え方です。仲介の手数料が引かれない直接の取引では、同じ料金でも受け手の手取りが厚くなり、依頼する側も同じ予算でより多くを頼めます。手数料0%の直接取引が長続きしやすいのは、この双方が得をする構造があるからです。地域の保護者と直接つながる自宅託児所は、この構造をそのまま生かせる事業でもあります。

自宅で託児所を開業することは、地域の子育てを支える大切な仕事です。届出と基準を守ることは、子どもと保護者だけでなく、開業するあなた自身を守ることにもつながります。法律はあなたの味方です。分からない点は、届出先の都道府県や市の担当課、市町村の保育課に遠慮なく相談してください。

よくある質問

Q. 自宅で子どもを1人だけ預かる場合も届出は必要ですか?

必要です。平成28年4月から、認可外保育施設や認可外のベビーシッター事業は、1日に保育する乳幼児が1人以上なら届出の対象になりました。臨時に設置される場合などは除かれます。届出は事業開始の日から1か月以内に、施設がある都道府県、指定都市または中核市に行います。

Q. 保育士の資格がなくても自宅で託児所を開業できますか?

1日に預かる乳幼児が5人以下の施設なら、保育士または看護師の資格を持つ人か、都道府県などが行う保育に従事する人のための研修を修了した人が1人以上いればよいとされています。研修は子育て支援員研修の地域保育コースなどが当たります。どの研修が認められるかは届出先に確認してください。

Q. 自宅託児所の保育室はどのくらいの広さが必要ですか?

1日6人以上を預かる施設は、保育室の面積がおおむね乳幼児1人あたり1.65㎡以上必要です。1日5人以下の施設は、家庭的保育事業の基準を参考に適切な広さを確保します。その基準では専用の部屋が9.9㎡以上で、3人を超える場合は1人につき3.3㎡を加えた面積以上です。

Q. 自宅託児所と保育ママ(家庭的保育事業)は何が違いますか?

自宅託児所は認可外保育施設として、都道府県などへの届出で開業でき、料金や預かる時間を自分で決められます。保育ママと呼ばれる家庭的保育事業は、市町村の認可を受けて主に3歳未満の子を少人数で預かる事業で、市町村が料金や募集を決め、市町村長が行う研修の修了などの条件があります。

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年1月22日最終更新:2026年10月3日
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