手作り陶器の販売先の選び方と、作品を売り始める手順

斎藤 翔平
斎藤 翔平
手作り陶器の販売先の選び方と、作品を売り始める手順

この記事のポイント

  • ✓手作り陶器販売を始めたい人に向けて
  • ✓ハンドメイドマーケット・自分のネットショップ・陶器市・委託販売の違い
  • ✓器として売るときに守る食品衛生法の規格

陶芸教室に通い始めて数年、棚に器が増えてきて「そろそろ売ってみたい」と考えたとき、最初に迷うのが「どこで売ればいいのか」と「売るために何を準備すればいいのか」の2つです。手作り陶器販売は、作品づくりそのものより、販売先の選び方と、器ならではの決まりごとを知っているかどうかで差がつきます。この記事では、販売先の4つの型と手数料の実際の数字、食器として売るときに守る食品衛生法の規格、値付けや写真や梱包のコツ、そして売り始めるまでの手順を順番に整理します。結論を先に書くと、最初の1か所はハンドメイドマーケットで小さく始め、売れ方を見てから自分のネットショップや対面販売に広げるのが、失敗の少ない進め方です。

手作り陶器を売る場は、ここ数年で大きく広がった

ひと昔前まで、個人が焼いた器を売る場所は、窯元の直売所、陶器市、知り合いの雑貨店くらいに限られていました。いまは、スマートフォンで写真を撮って登録すれば、その日のうちに全国の人に作品を見てもらえます。

その中心にあるのがハンドメイドマーケットです。ハンドメイドマーケットとは、個人の作り手が作品を出品し、買い手が通販のように購入できるインターネット上の市場のことです。国内最大手の1つである minne は、販売者向けのページで次のように紹介しています。

minneは販売・購入ともに満足度No.1。99万件を超える作家・ブランドに選ばれている、国内最大のハンドメイドマーケットです。 出典: minne.com

作り手が99万件を超えているということは、買い手にとっては選択肢が多く、作り手にとっては競争相手が多いということでもあります。陶器のカテゴリーも例外ではありません。作家ものの一点物の隣に、工房で量産された器や、海外から仕入れた食器が並んでいることも珍しくありません。

もう1つの変化は、自分の名前で店を持つ道が手軽になったことです。初期費用や月額費用がかからないネットショップ作成サービスが増え、作家ごとのブランドを育てやすくなりました。SNSで制作の様子を見せ、気に入った人を自分の店に案内する流れは、陶芸の分野でもすっかり定着しています。

一方で、対面の陶器市やクラフトフェアの価値も下がってはいません。器は手に持ったときの重さや、口に当てたときの感触で選ばれる品物です。写真だけでは伝わらない部分を、直接触ってもらえる場は今も強い。オンラインと対面を組み合わせる作り手が多いのはこのためです。

市場が広がった分、「出せば売れる」状態ではなくなりました。手作り陶器販売で結果を分けるのは、どこに出すかを自分の作品に合わせて選ぶことと、写真・説明・値付け・梱包といった地味な準備をきちんと積み上げることです。以下、その順番で見ていきます。

販売先は4つの型に分かれる

手作り陶器の販売先は、大きく分けると次の4つの型になります。それぞれ、集客を誰が担うか、手数料の形、向いている作品が違います。

販売先の型 集客を担うのは 費用の形 向いている段階
ハンドメイドマーケット 運営会社の集客に乗る 売れたときの手数料 最初の1か所
自分のネットショップ 自分(SNSなど) 決済手数料と利用料 ファンがつき始めたら
陶器市・クラフトフェア 主催者と自分 出店料と交通費 手に取って選ばれたい器
店舗への委託・卸 お店 販売額からの取り分 継続して数を作れる人

ハンドメイドマーケット

minne や Creema のように、運営会社がサイト全体に買い手を集めてくれる場です。自分で集客しなくても、検索やカテゴリーの一覧から作品を見つけてもらえる可能性があります。出品料や月額費用がかからず、売れたときだけ手数料が引かれる仕組みが一般的なので、在庫を抱えずに試せます。

注意したいのは、同じカテゴリーの中で作品が比べられることです。安い量産品と並ぶと、一点物の価値が伝わりにくくなります。冒頭で触れたように、陶器のカテゴリーには工業的に作られた皿も多く並んでいます。実際に出品した作り手の声として、次のような記録があります。

minnneを選んだ理由は、noteにストア連携機能があるためです。noteのマイページのストアタブがminneに連携されます。また、ユーザー数が他のハンドメイド系フリマサイトの中で最も多く、手数料も比較的安価な点が良かったです。ただ、陶器のカテゴリーでは、工業的に大量生産されたお皿が人気で多いので、minneのターゲット層は私の作品とは合わないかなとも感じています。 出典: note.com

ハンドメイドマーケットは入口として優れていますが、買い手の層が自分の作風と合うかは出してみないと分かりません。1つのサイトで数か月様子を見て、閲覧数やお気に入りの数が伸びないなら、別のサイトに出し直すことも考えます。

自分のネットショップ

BASE などのネットショップ作成サービスを使えば、自分の名前の店を開けます。比べられる相手が同じ画面に並ばないので、作風や制作の背景をじっくり伝えられます。その代わり、集客は自分で行う必要があります。SNSや展示会で知ってもらった人を案内する場として使うのが基本です。

陶器市・クラフトフェア

対面で売る場です。器を手に取ってもらえるので、写真では伝わりにくい釉薬の深みや重さの心地よさが伝わります。出店料のほか、交通費、宿泊費、什器(陳列台や布)の費用がかかります。売上だけでなく、買い手の反応を直接聞ける場として価値があります。

店舗への委託・卸

雑貨店やギャラリーに作品を預けて販売してもらう方法です。委託とは、売れた分だけ代金を受け取る形のことで、売れ残りは返却されます。卸とは、お店に作品を買い取ってもらう形のことです。お店の取り分は作品価格の一定割合になることが多く、割合は店ごとに大きく違うため、契約前に書面で確かめます。継続して同じ品質の器を一定数作れることが前提になるので、売り始めてすぐより、ある程度経験を積んでから検討するのが現実的です。

手数料を実際の数字で比べる

販売先を選ぶとき、手数料は必ず確かめる項目です。2026年10月時点で各サービスの公式ページに掲載されている数字は次のとおりです。

サービス 月額費用 売れたときにかかる費用
minne 0円 販売手数料10.659%(税込、送料・オプション価格を含む)
Creema 0円 成約手数料 決済総額の10.67%(税込)
BASE スタンダードプラン 0円 決済手数料3.6%+40円、サービス手数料3%
BASE グロースプラン 年払いで1か月あたり16,580円(月払いは19,980円) 決済手数料2.9%、サービス手数料0円

minne には「minne PLUS」という有料の会員制度があり、加入すると販売手数料が下がります。ライトは30日あたり880円で10.615%、スタンダードは年払い16,500円で10.505%、アドバンスは年払い33,000円で10.45%です。出品数が少ないうちは、会員費のほうが高くつくことが多いので、まずは無料のまま始めて構いません。

具体的な金額で比べてみます。3,300円のマグカップに送料900円を付けて売った場合、minne の手数料は合計4,200円に対してかかるので、約448円です。Creema は決済総額に対してかかるので、同じ条件ならほぼ同じ水準の約448円になります。BASE のスタンダードプランでは、決済手数料が4,200円の3.6%で約151円に40円を足して約191円、サービス手数料が約126円で、合わせて約317円です。

数字だけを見るとネットショップのほうが安く見えますが、ハンドメイドマーケットの手数料には「集客の代金」が含まれていると考えるのが妥当です。自分のショップに人を呼ぶ手段がないうちは、手数料が安くても売れません。逆に、SNSのフォロワーや常連客がついてきたら、自分のショップへの比重を上げていくと手取りが厚くなります。

BASE のグロースプランは月額費用がかかる代わりに手数料が下がる形で、月の売上がかなり大きくならないと得になりません。売り始めの段階では検討しなくて大丈夫です。また、手数料の数字は各社が見直すことがあります。出品を始める前と、年に1回くらいは公式ページを開いて確かめる習慣をつけておきます。

器として売るなら避けて通れない食品衛生法の規格

手作り陶器販売でいちばん見落とされやすいのが、食品衛生法の規格です。茶碗、皿、マグカップのように食べ物や飲み物に触れる器は、法律上「器具」にあたり、販売するものは国が定めた規格に合っていなければなりません。

規格の中身は、釉薬(ゆうやく、器の表面にかけるガラス質の上薬)や絵の具から溶け出す鉛とカドミウムの量に上限を設けたものです。陶磁器製の器に4%酢酸(お酢に近い酸性の液)を満たして24時間置き、溶け出した量を測ります。上限は器の種類と容量で分かれていて、たとえば加熱調理用ではない容量1.1L未満の器なら、カドミウムが1mLあたり0.5μg以下、鉛が1mLあたり2μg以下です。

趣味で作って自分で使う分には、この規格は関係ありません。厚生労働省が示したQ&Aには次のように書かれています。

食品衛生法では、規格に適合しない製品を、販売の用に供するために製造又は輸入することは禁止しているが、趣味として自分が使う目的で陶芸作品を作ることは禁止していない。 出典: 厚生労働省

つまり、売ると決めた時点で規格の対象になります。同じQ&Aでは、不特定または多数の人に無料で配る場合も「販売」に含まれると説明されています。イベントで配る記念品なども含めて、食器として人の手に渡す器は気をつける必要があります。

規格に合わせるためにできること

同じQ&Aは、規格に合った器を作る方法として、釉薬に合わせて焼成温度を十分に高くすること、食品に触れる内側の面には無鉛の釉薬や絵の具を使うこと、内側には絵付けをしないこと、などを挙げています。市販の釉薬には「無鉛」と表示されたものが多く、陶芸材料の店でも確かめられます。

自分の器が規格に合っているかを確かめたい場合は、検査機関に溶出試験を依頼する方法があります。費用は機関や検体の数で変わるので、問い合わせて見積もりを取ります。使う釉薬を固定し、同じ条件で焼いた器を検査しておくと、その組み合わせについての裏付けになります。

電子レンジ対応や鑑賞用の扱い

Q&Aでは、鍋やグラタン皿のように加熱して使うことが主な目的の器、または「直火用」「オーブン用」「電子レンジ用」と明示した器は、より厳しい「加熱調理用器具」の区分になると説明されています。普通の茶碗やマグカップを短時間温め直す程度なら、この区分には入りません。作品説明に「電子レンジで調理できます」と書くと区分が変わる可能性があるので、表現には気をつけます。

飾り紐が付いていたり、実用できないように小さな穴を開けたりした鑑賞専用の絵皿は、規格の対象外とされています。食器としてではなくオブジェや花器として売る作品は、説明にその用途をはっきり書いておきます。なお、2024年4月から、食品衛生の基準に関する行政は厚生労働省から消費者庁に移っています。最新の取り扱いを確かめたいときは、消費者庁の食品衛生基準のページか、地域の保健所に問い合わせてください。

ネットで売るときに表示すること

インターネットで作品を売ることは、法律上の「通信販売」にあたります。通信販売をする事業者には、特定商取引法という法律で、広告に表示しなければならない事項が決められています。特定商取引法とは、通信販売や訪問販売のようにトラブルが起きやすい取引について、消費者を守るためのルールを定めた法律のことです。

表示が求められる主な事項は次のとおりです。

・販売価格(送料が別なら送料も) ・代金の支払いの時期と方法 ・商品を引き渡す時期 ・申込みの撤回や返品に関する事項

返品については、特約を広告に表示していなければ、購入者は商品を受け取った日から数えて8日間は申込みを撤回したり契約を解除したりできる、と定められています。一点物の陶器は返品を受け付けにくいので、「お客様都合の返品はお受けできません」などの特約を、作品ページや店舗の案内に分かりやすく書いておきます。割れていた場合や説明と違う品が届いた場合の対応は、特約とは別に書き分けます。

ハンドメイドマーケットでは、運営会社が取引の仕組みを用意しているため、出品者が自分で用意する範囲はサービスごとに違います。ネットショップを自分で開く場合は、販売者の氏名や住所、連絡先などの表示も必要になります。自宅の住所の扱いを含めて、どう表示するかは各サービスのヘルプと消費者庁の特定商取引法のページを確かめてから決めます。

値段の付け方は「原価の全部」を数えてから決める

手作り陶器の値付けで多い失敗は、土と釉薬の代金だけを見て安くしすぎることです。売るたびに赤字になると、続けるほど苦しくなります。値段を決める前に、1つの器にかかる費用を全部書き出します。

費用の項目 内容
材料費 土、釉薬、絵の具
焼成費 電気窯やガス窯の燃料代、共同窯なら使用料
失敗分 割れ、ゆがみ、釉薬の縮れなどで売れなかった器の材料と焼成費
梱包材 箱、緩衝材、テープ
手数料 販売サイトの手数料、振込手数料
撮影と管理 背景紙や照明、撮影と出品作業の時間
制作の時間 成形、削り、施釉、窯詰めの時間

陶芸は窯の中で一定の割合の器が失敗します。10個焼いて8個が売り物になるなら、10個分の材料と焼成費を8個で割って原価を考えます。この「失敗分」を入れ忘れると、帳簿の上では利益が出ていても手元にお金が残りません。

次に、自分の作業時間に値段を付けます。時給をいくらと置くかは人それぞれですが、0円にしてはいけません。作業時間を含めずに値段を決めると、作品が売れるほど自分の時間が安売りされる状態になります。

最後に、同じサイトで似た大きさ・似た作風の器がいくらで売られているかを見ます。相場より大幅に高いと手に取ってもらえず、大幅に安いと「安い量産品」と同じ棚に並べられます。相場の中で、自分の器の特徴を説明できる価格に置くのが基本です。

価格を上げる余地を作るなら、セット販売も有効です。同じ釉薬の小皿を2枚組にする、湯呑みと急須を揃えるなど、組み合わせで選ぶ楽しさを加えると、1点あたりの梱包と発送の手間が減り、手取りが厚くなります。

写真と作品説明で伝わる量が変わる

ネットで陶器を買う人は、手に取れない分、写真と説明文からすべてを判断します。売れる作り手ほど、ここに時間をかけています。

写真で押さえること

・自然光の入る窓辺で撮り、色が実物から離れないようにする ・正面、真上、横、底(高台)、内側の5方向を揃える ・手に持った写真や、料理を盛った写真で大きさを伝える ・貫入(かんにゅう、釉薬の表面の細かいひび模様)やピンホール(小さな穴)など、個体差が出る部分は寄って撮る

釉薬の色は光で大きく変わります。白熱灯の下で撮ると黄色っぽく写り、届いた器を見て「思った色と違う」と言われる原因になります。

説明文で押さえること

項目 書き方の例
寸法 直径、高さ、口径をmm単位で
容量 満水で何mLか、普段使いで何mLか
重さ g単位で
使える家電 電子レンジ、食洗機、オーブンの可否
個体差 一点ずつ色や形が違うこと、貫入やピンホールの有無
手入れ 使い始めの目止め、長時間のつけ置きを避けることなど

陶器ならではの個体差は、先に書いておくほどトラブルが減ります。「味わい」と受け取る人もいれば、「傷」と受け取る人もいるからです。説明に書いてあれば、買い手は納得して選べます。

作品名は検索される言葉で付ける

ハンドメイドマーケットでは、買い手の多くがサイト内の検索で器を探します。作品名に詩的な名前だけを付けると、検索に引っかかりません。「粉引のマグカップ 300mL」「青い釉薬の取り皿 直径15cm」のように、技法や色、器の種類、大きさを作品名に入れておくと、探している人の目に留まりやすくなります。作家としての名前や作品のシリーズ名は、その後ろに添える形で十分です。

検索に使われる言葉は、器の種類(マグカップ、小鉢、豆皿)、色(白、青、黒)、技法(粉引、織部、灰釉)、用途(取り皿、カレー皿、コーヒー)などです。自分の器を探す人がどんな言葉を打つかを想像して、作品名と説明の冒頭に入れておきます。

説明文は、読み手が使う場面を思い浮かべられるように書くのがコツです。文章を書くのが苦手な人は、商品説明の書き方を仕事にしている人の考え方が参考になります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、文章を書く仕事の報酬の水準や働き方がまとめられています。人に伝わる文章にお金が払われている現実を知ると、作品説明にかける時間の価値も見えてきます。

梱包と発送、割れたときの対応を決めておく

陶器の通販で最も怖いのは、配送中の破損です。届いた器が割れていれば、作り手は作品と送料を失い、買い手は楽しみにしていた器を受け取れません。梱包の方法と、割れたときの対応は、出品前に決めておきます。

梱包の基本は、器を緩衝材で包み、箱の中で動かないように隙間を埋めることです。器と箱の内側の間に数cmの余白を取り、その余白を緩衝材で満たします。口の部分や持ち手など欠けやすい箇所は、別に保護します。複数の器を同じ箱に入れるときは、器どうしが触れないように仕切ります。

配送方法は、補償の有無と上限で選びます。配送会社によって、破損したときに補償される条件や金額が違います。高価な器を送るときは、補償が付く方法を選び、送料に反映させます。ハンドメイドマーケットには、提携の配送サービスや匿名で送れる仕組みが用意されていることが多いので、どんな補償があるかを各サービスの案内で確かめておきます。

割れて届いたと連絡があったときの対応も、店のルールとして書いておきます。届いた状態の写真を送ってもらう、作り直しか返金かを選んでもらう、連絡の期限を決める、といった流れです。対応が決まっていれば、慌てずに丁寧な返事ができ、次の注文につながる信頼が生まれます。

発送の作業は、作品が増えるほど負担になります。箱のサイズを2〜3種類に絞り、緩衝材をまとめて買っておくと、1件あたりの手間と費用が下がります。

陶器市やお店に出すときに確かめること

オンラインで手応えをつかんだあと、対面の販売や店舗への委託に広げる人は多くいます。それぞれ、事前に確かめておくと後で困らない点があります。

陶器市・クラフトフェアに出店するとき

出店の募集要項には、出店料のほか、ブースの広さ、テントや机の貸し出しの有無、搬入と搬出の時間、雨天時の扱い、売上の一部を主催者に納める形かどうかが書かれています。屋外の催しでは、風で器が倒れないように陳列台を低めにし、割れたときに備えて予備の在庫を車に積んでおくと安心です。

会計の準備も欠かせません。釣り銭、値札、領収書、包装用の新聞紙や袋を用意し、キャッシュレス決済を使うなら通信環境を当日の会場で確かめます。売れた器の記録を残しておくと、どの形や色が対面で選ばれやすいかが分かり、次の制作の手がかりになります。

対面販売のよさは、買い手の言葉を直接聞けることです。「もう少し軽いと毎日使える」「この色の大皿があれば欲しい」といった声は、ネットの閲覧数からは得られない情報です。名刺やショップのカードを渡しておけば、会場で迷った人が後からネットで買ってくれることもあります。

お店に委託や卸をするとき

お店に作品を預ける前に、少なくとも次の点を書面で確かめます。

・販売価格を誰が決めるか ・お店の取り分の割合と、精算の時期と方法 ・展示中に割れたり汚れたりしたときの負担 ・売れ残った作品を返す時期と送料の負担 ・契約の期間と、やめるときの連絡方法

口約束で始めると、精算の時期や破損の扱いで行き違いが起きやすくなります。お店側も、作り手が継続して納品できるかを気にしています。何点をどのくらいの間隔で納められるかを正直に伝えておくと、長く付き合える関係になります。

売り始めるまでの手順

ここまでの内容を、実際に手作り陶器販売を始めるまでの順番に並べ直すと、次のようになります。

手順1 売る器を決める

最初から品数を広げず、得意な形と釉薬に絞ります。マグカップ、小皿、茶碗など、使う場面が想像しやすい器から始めると、買い手も選びやすくなります。

手順2 釉薬と規格を確かめる

食器として売る器は、使う釉薬や絵の具が無鉛かどうかを確かめ、必要なら溶出試験を受けます。陶芸教室の窯や釉薬を使っている場合は、販売してよいかも含めて教室に確かめます。教室によっては、作品の販売に条件を設けているところがあります。

手順3 原価を書き出して値段を決める

前の節の表に沿って、材料・焼成・失敗分・梱包・手数料・時間を書き出し、相場と見比べて価格を決めます。

手順4 写真を撮り、説明文を書く

5方向の写真と、寸法・容量・重さ・家電の可否・個体差・手入れの説明を揃えます。

手順5 販売先を1つ選んで出品する

最初はハンドメイドマーケットに5〜10点を出品し、閲覧数やお気に入りの反応を見ます。

手順6 梱包材と発送方法を準備する

注文が入ってから慌てないように、箱と緩衝材を先に用意し、配送方法と補償を決めておきます。

手順7 反応を見て販売先を広げる

数か月続けて手応えが出てきたら、SNSでの発信、自分のネットショップ、陶器市への出店へと広げます。反応の薄い作品は、写真や説明を直すか、販売先を変えて試します。

写真を何枚もアップロードし、作品ページを管理する作業は、通信環境が不安定だとそれだけで時間を取られます。自宅で作業する環境を整える参考には、在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方が役立ちます。また、制作と出品と発送を1人でこなすと、作業が細切れになりがちです。在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックでは、細かい作業を続けるための工夫が紹介されています。

会社員の副業として売るときのお金の手続き

本業を持ちながら副業で手作り陶器販売をする人は、税金の手続きも押さえておきます。

所得税では、給与を1か所から受け取っている会社員で、給与以外の所得の合計が20万円以下なら、確定申告は不要とされています。ここでいう所得とは、売上ではなく、売上から材料費や手数料などの経費を引いた額のことです。売上が20万円を超えていても、経費を引いた所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は要りません。

ただし、この20万円の線は所得税だけの話です。住民税には同じ扱いがないため、所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告は必要になります。申告先は住んでいる市区町村です。手続きの詳細は、国税庁の確定申告が必要な方のページと、お住まいの市区町村の案内で確かめてください。

経費を正しく計上するために、材料の購入、窯の使用料、梱包材、送料、手数料のレシートや明細は、売り始めた日から保存しておきます。どこまでを経費として扱えるか、所得の区分をどうするかは、金額や事情で変わるので、迷ったら税務署や税理士に確かめます。

勤め先の就業規則で副業が制限されていないかも、始める前に確かめておきたい点です。作品の販売は勤務時間外の活動であることが多いものの、届け出を求める会社もあります。

運営者の視点から見た、手作り品を売り続ける人の共通点

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、手作り品の販売で長く続く人には、はっきりした共通点があります。それは、作品の出来を上げることと同じくらい、「この人から買うと安心できる」という信頼の積み上げに時間を使っていることです。

写真が実物に近い、説明が正直で個体差まで書いてある、梱包が丁寧で割れずに届く、問い合わせへの返事が早い。こうした一つひとつは地味ですが、繰り返し買ってくれる人を生み、口コミで新しい買い手を連れてきます。逆に、作品が良くても、写真と実物が違う、届くまで連絡がないといった経験をさせると、次の注文は来ません。

もう1つの観察は、手取りの厚さが続ける力になるという点です。間に入る事業者の取り分が小さい販売の形ほど、同じ価格でも作り手の手元に残る額が増え、その分を材料の質や梱包の改善に回せます。仕事の受発注でも同じで、仲介の手数料がかからない直接取引の形は、頼む側はより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。中間マージンが乗らない仕組みは、双方が得をする形として長く選ばれ続けています。

陶芸の販売経験を、ほかの仕事にもつなげる

手作り陶器販売を続けていると、作品づくり以外にも身につくことがあります。写真の撮り方、商品説明の書き方、価格の考え方、問い合わせへの対応、SNSでの発信。これらは、そのまま在宅でできる仕事のスキルでもあります。

作品説明やSNSの文章を書く力は、文章の仕事に直結します。ビジネスの場で通じる文章の基礎を体系立てて身につけたいなら、ビジネス文書検定という選択肢もあります。問い合わせへの返信や、お店との委託契約のやり取りでも、伝わる文章を書く力は役立ちます。

また、ネットショップを自分で運営すると、ページの作り方や集客の仕組みに興味が湧く人も少なくありません。どんなスキルが在宅の仕事につながりやすいかは、在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるで全体像をつかめます。

陶器の販売は、作る時間と売る時間のどちらも必要な活動です。売る側の作業を効率よく回せるようになると、作る時間を確保しやすくなります。収入の柱を1つに頼らず、作品の販売と在宅の仕事を組み合わせる働き方を考えるなら、前の節で紹介した文章の仕事の報酬の水準を確かめておくと、自分の時間をどこに使うかを決める材料になります。

よくある質問

Q. 手作り陶器を売るのに資格や許可は必要ですか?

陶器の販売そのものに特別な資格はありません。ただし、茶碗や皿など食べ物に触れる器を売る場合は、食品衛生法で決められた鉛とカドミウムの溶出の規格に合っている必要があります。趣味で自分が使う分は対象外ですが、販売や無料で配る場合は対象になります。無鉛の釉薬を使い、必要なら検査機関で溶出試験を受けて確かめます。

Q. 最初はどの販売先から始めるのがよいですか?

自分で集客する手段がないうちは、minne や Creema などのハンドメイドマーケットから始めるのが無理のない進め方です。出品料や月額費用がかからず、売れたときに約10.7%の手数料がかかります。数か月出品して反応を見て、ファンがついてきたら自分のネットショップや陶器市へ広げると、手取りを厚くしやすくなります。

Q. 手作り陶器の値段はどう決めればよいですか?

材料費だけでなく、焼成の燃料代や窯の使用料、焼成で失敗した器の分、梱包材、販売手数料、制作にかけた時間まで含めて原価を出します。そのうえで、同じサイトで似た大きさと作風の器がいくらで売られているかを見比べ、自分の器の特徴を説明できる価格に決めます。作業時間を0円で数えると、売れるほど苦しくなります。

Q. 会社員の副業で陶器を売る場合、確定申告は必要ですか?

給与を1か所から受け取っている会社員なら、陶器の売上から経費を引いた所得が20万円以下のとき、所得税の確定申告は不要です。ただし住民税には同じ扱いがないため、市区町村への申告が必要になります。経費として扱える範囲や所得の区分は事情で変わるので、迷ったら税務署や市区町村の窓口で確かめてください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月9日最終更新:2026年10月3日
斎藤 翔平

この記事を書いた人

斎藤 翔平@SOHO編集部

フリーランス音楽クリエイター

音楽制作会社でBGM・効果音制作を担当した後、フリーランスに。ポッドキャスト編集やナレーション収録も手がけ、音楽・音声系の記事を執筆しています。

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