ホームページ制作の実績の見せ方|出せない仕事をどう伝えるか


この記事のポイント
- ✓ホームページ制作の実績の見せ方を
- ✓公開できない案件の扱い方から解説します
- ✓守秘義務のある仕事を匿名化して伝える手順
ホームページ制作の実績の見せ方でつまずく人の多くは、作れる技術がないのではなく、作ったものを外に出せない状況に置かれています。下請けで入った案件、社名を出せない案件、公開後に先方の担当者が中身を差し替えてしまった案件。手を動かした事実はあるのに、証拠として提示できるものが手元にない。この記事では、出せない仕事を出せる形に変換する手順と、実績ページを設計するときの判断基準を、受注後の実務としてまとめます。
実績が出せなくなる理由を先に切り分ける
「実績を載せられない」と一言で言っても、その理由はいくつかの種類に分かれます。理由が違えば打つ手も変わるため、まず自分の案件がどれに当たるのかを分類するところから始めます。ここを飛ばして「とりあえず載せられるものだけ載せる」と進めると、本来は交渉すれば公開できたはずの案件まで棚上げしたままになります。
契約で禁止されている場合
制作委託契約や秘密保持契約に、成果物や取引の事実を第三者に開示しない条項が入っているケースです。この場合は交渉なしに載せることができません。ただし、契約書をよく読むと「発注者の事前の書面による承諾がある場合を除く」という但し書きが付いていることが少なくありません。禁止されているのは無断掲載であって、掲載そのものではないという構造です。この但し書きの有無を確認するだけで、扱いが「絶対に不可」から「聞けば通るかもしれない」に変わります。
元請けの制作会社を通している場合
制作会社やWeb代理店の下請けとして入ったパターンです。エンドクライアントとの契約関係は元請けにあり、実際に手を動かした人の名前は表に出ません。この場合、掲載の可否を判断する権限を持っているのは元請けです。エンドクライアントに直接聞きに行くのは商流を飛び越える行為になるため、必ず元請けの担当者に相談します。元請け側も、自社の実績ページに載せている案件であれば「サイト名は出さず、担当工程だけを書くなら構わない」と回答してくれることがあります。
納品後に中身が変わってしまった場合
公開直後は設計どおりだったのに、その後クライアント側で画像が差し替えられ、文章が書き足され、当初の意図が読み取れない状態になっているケースです。URLを実績として貼ると、今の画面を見た人が「これがこの人の仕事か」と判断してしまいます。制作物の質を疑われる方向に働くため、リンクを貼るより設計意図とキャプチャで見せたほうが有利になります。
案件そのものが短命だった場合
キャンペーンサイト、イベント告知サイト、期間限定のランディングページなど、役目を終えてすでに閉じているものです。URLは死んでいますが、内容を出してはいけない理由は基本的にありません。掲載の許可さえ取れれば、キャプチャと解説で十分に実績として機能します。
分類してみると、本当に手が出せないのは1つ目の一部だけで、残りは伝え方の工夫か、ひと言の確認で解決する範囲に入ります。実績がないのではなく、整理されていないだけという状態が実際には多く見られます。
出せない仕事を伝える4つの型
公開できない案件を扱う方法は、大きく4つに分かれます。案件の性質に応じて使い分けます。
匿名化して事例として書く
社名とURLを伏せ、業種と規模と課題だけを書く方法です。「首都圏で複数店舗を展開する飲食業のコーポレートサイト」「従業員数十名規模の建設業の採用サイト」といった粒度まで抽象化すれば、読み手には案件の輪郭が伝わり、かつ特定はされません。抽象化の度合いは、その業種にその規模の会社が地域内に何社あるかで決めます。1社しかない条件を並べてしまうと、伏せたつもりでも特定されます。業種を1段広く書く、地域名を都道府県ではなく地方名にする、といった調整で逃げ道を作ります。
担当した工程だけを書く
サイト全体を見せず、自分が受け持った範囲だけを切り出す方法です。下請け案件で使いやすい型になります。「情報設計とワイヤーフレーム作成を担当」「既存デザインをもとにコーディングとCMS実装を担当」「表示速度改善のための画像最適化とテンプレート修正を担当」というように、工程名で書きます。この書き方には副次的な効果があり、読み手が「この人はどこから入ってもらえるのか」を判断しやすくなります。丸ごと一式しか受けない人よりも、途中から入れる人のほうが声のかかる場面は広がります。
再現サンプルを作り直す
実案件の構造だけを借りて、架空の企業向けに作り直す方法です。デザインもテキストも自作に差し替えるため、掲載制限に触れません。注意点は、実案件の再現であることを書かないことと、架空の事例であると明記することです。「架空の設定で制作したサンプルです」と一行入れておけば、閲覧者が受注実績と誤解することはありません。この一行を省くと、経歴の水増しと見なされるリスクが出ます。
制作過程の中間成果物を見せる
完成画面を出せなくても、サイトマップ、ワイヤーフレーム、要件を整理した表など、自分が作った中間成果物であれば出せる場合があります。固有名詞を差し替えれば情報としての機密性はほぼ消えます。中間成果物は、完成画面よりもむしろ思考の過程が見えるため、依頼側から見た判断材料としては価値が高くなります。
掲載許諾を取るための実務
出せる形に変える一番確実な方法は、掲載してよいかを聞くことです。多くの人がこれをやらないまま「たぶん駄目だろう」と自己判断で諦めています。
聞くべきタイミングは3つある
最も通りやすいのは、契約前の見積もり段階です。「実績として掲載させていただく場合があります」と提案書に書いておき、そこに合意をもらう形にします。この段階なら、掲載を前提とした条件のすり合わせができます。
次に通りやすいのが、納品直後です。制作物への満足度が最も高く、担当者との関係も温まっているタイミングになります。検収完了の連絡に合わせて確認すると、追加の手間だと受け取られにくくなります。
最も通りにくいのが、納品から時間が経ったあとです。担当者が異動していたり、当時の経緯を知る人がいなくなっていたりして、確認作業そのものが相手の負担になります。それでも聞く価値はありますが、通過率は下がると考えておきます。
依頼文には掲載範囲を先に書く
「実績に載せてよいですか」とだけ聞くと、相手は何が公開されるのか分からないため、判断を保留しやすくなります。何をどこまで出すのかを先に書いておくと、返事が早くなります。
たとえば次のような形です。
「先日納品いたしました〇〇サイトについて、弊方の制作実績として掲載させていただけないかご相談です。掲載内容は、トップページのスクリーンショット、貴社名、担当工程(設計・デザイン・実装)、制作の狙いを3行程度でまとめた文章を予定しております。掲載前に文面をご確認いただき、修正のご指示があればそのとおりに直します。社名は伏せ、業種のみの記載とすることも可能です。」
社名を伏せる選択肢を最初から提示しておくのが要点です。全面公開か非公開かの二択にすると、迷った相手は非公開を選びます。中間の選択肢を用意すると、そこに落ち着く確率が上がります。
断られたときに必ず聞くこと
不可という返事が来たら、そこで終わらせず「どこまでなら可能か」を一度だけ確認します。社名は駄目だが業種なら可、キャプチャは駄目だが文章のみなら可、公開から一定期間が過ぎたあとなら可、という条件付きの許可が出ることがあります。条件付きで得られた許可は必ずメールなど文字で残しておきます。担当者の口頭了承だけで載せると、担当者交代後に問題化する可能性があります。
実績1件あたりの書き方の型
掲載できる案件が確保できたら、次は書き方です。上位で読まれている制作会社の実績ページを見ると、書かれている項目にはっきりとした共通点があります。
今回は、実績の見せ方やLP(ランディングページ)の構成、見出しの工夫など、改善ポイントを具体的にご紹介します! 出典: hachimakivenda.com
実績1件は、次の6項目で構成すると過不足がなくなります。
1つ目は、クライアントの属性です。 業種、規模、地域を書きます。社名を出せる場合は社名も入れます。読み手は自社と似た属性の事例を探しているため、ここが最初に来ていないと読み飛ばされます。
2つ目は、依頼の背景と課題です。 なぜ作り直すことになったのか、当時どんな困りごとがあったのかを書きます。「サイトが古く、スマートフォンで見づらい状態だった」「問い合わせフォームの項目が多く、途中で離脱していた」「採用の応募が来ず、求人媒体に頼り切りだった」というように、依頼側が自分の状況と重ねられる書き方にします。
3つ目は、担当した範囲です。 企画、設計、デザイン、コーディング、CMS構築、原稿作成、写真撮影のディレクション、公開後の運用のうち、どこを受け持ったかを明示します。
4つ目は、判断のポイントです。 ここが実績ページの核心になります。どういう理由でその設計にしたのかを書きます。「来店予約が主な目的だったため、電話番号を全ページの固定位置に置いた」「更新担当者がパソコン操作に不慣れだったため、編集箇所をブロック単位に限定した」といった、判断と根拠のセットです。デザインの美しさだけを語る実績が読み飛ばされるのは、この部分がないからです。
5つ目は、結果です。 数字を出せる場合は出し、出せない場合は状態の変化を書きます。「公開後、更新をクライアント側で完結できるようになった」「問い合わせ時にヒアリングしていた項目をフォームで取得できるようになり、初回のやり取りが1往復減った」といった書き方であれば、成果を誇張せずに伝えられます。
6つ目は、期間と体制です。 着手から公開まで何か月かかったか、単独か複数人かを書きます。依頼側は自分の案件がどれくらいで動くのかを知りたいため、この情報の有無で問い合わせのしやすさが変わります。
見せ方と配置で結果が変わる
内容が良くても、置き方を間違えると読まれません。実績ページの構造には、いくつかの実務的な決まりごとがあります。
一覧はサムネイルと業種で絞れるようにする
実績が増えてくると、一覧をただ並べただけでは目的の事例にたどり着けません。業種、サイト種別(コーポレート、採用、EC、ランディングページ)、規模の3軸で絞り込めるようにしておくと、閲覧者は自分に近い事例を自力で見つけられます。絞り込みの実装が重い場合でも、見出しでグルーピングするだけで効果が出ます。
詳細ページの冒頭に結論を置く
実績詳細を開いた読み手が最初に知りたいのは、何をした案件なのかです。大きな画像から始めるより、1行の概要文を先に置いたほうが理解が早くなります。画像は概要文の直後に配置します。
スマートフォンでの表示を前提に組む
制作物のキャプチャは横長になりがちで、スマートフォンでは縮小されて中身が読めなくなります。全体像のキャプチャに加えて、要点部分を切り出した拡大画像を用意しておくと、小さな画面でも伝わります。実績ページは制作物のショーケースであると同時に、自分自身の制作物でもあります。ここが読みにくいと、それ自体が技術力の評価材料になってしまいます。
見出しだけで内容が分かるようにする
実績詳細の見出しに「デザイン」「実装」と書くだけでは中身が伝わりません。「予約導線を1タップに縮めた設計」「更新担当者が迷わない編集画面の作り方」というように、見出しで判断内容まで言い切ります。読み手は本文を全部読まず、見出しを拾い読みして判断します。
比較して選ばれる側になるための整理
依頼側は複数の制作者を並べて比べます。比較されている状況を前提に整理しておくと、実績ページの役割がはっきりします。
外部の紹介サービスでも、実績の見せ方は選定の判断材料として扱われています。
good productionsでは様々な業界のWebサイトの制作実績のある制作会社を企業情報や実績から調べることができます。今回は、実際にgood productionsに掲載されている制作会社の中で実績の見せ方を工夫している制作会社をご紹介します。 出典: goodproductionsjp.com
比較の場面で見られているのは、次の3点です。
1つ目は、依頼したい種類の仕事をやったことがあるかどうかです。採用サイトを作りたい人は採用サイトの事例を探します。得意分野が散らばっている場合でも、種別ごとに1件ずつは揃えておくと機会を落としません。
2つ目は、任せられる範囲です。原稿は誰が書くのか、写真は誰が用意するのか、公開後の更新は誰がやるのか。ここが読み取れない実績ページは、問い合わせの前に候補から外れます。実績の各件に担当範囲を書いておくのは、この不安を先に消すためです。
3つ目は、話が通じそうかどうかです。専門用語だけで書かれた実績は、発注側の担当者が読んでも判断できません。技術名を出す場合は、その技術で何ができるようになったのかを平易な言葉で添えます。
やってしまいがちな失敗
実績ページで起きる失敗には、繰り返し現れるパターンがあります。
スクリーンショットだけを並べる。 画像だけの一覧は、見た目の好みでしか判断されません。デザインの好みが合わなければそこで終わりです。文章を添えて、判断の根拠を伝えられる状態にします。
古い実績を放置する。 数年前の案件が最新として並んでいると、今も動いているのか疑われます。制作年を明記し、古いものは一覧の後方に回すか、種別ごとの代表例に絞ります。
リンク先が消えている。 閉鎖されたサイトへのリンクが残っていると、確認しようとした人がエラー画面に当たります。公開URLを載せるなら定期的な確認が必要です。確認の手間を掛けられないなら、最初からキャプチャ中心で構成するほうが安全です。
成果を盛る。 検証できない成果を書くと、確認された時点で信用を失います。断定できるのは自分が観測した範囲だけです。
掲載の許可を取らずに載せる。 最も重い失敗です。契約違反になるだけでなく、業界内での評判に直結します。判断に迷ったら載せないという基準を持っておきます。
実績が少ない段階をどう埋めるか
受注実績がまだ少ない段階では、実績ページに載せる材料そのものが不足します。この時期にやることは決まっています。
架空の案件を設定して作り込むのが1つ目です。実在の店舗や企業を勝手に題材にするのは避け、業種と課題を自分で設定します。設定を作る段階で情報整理の練習になり、それ自体が制作物の説明材料になります。
自分の知り合いや家族の事業サイトを引き受けるのが2つ目です。実在の相手がいると、要望のすり合わせという工程が発生します。この工程を経た制作物は、練習用のサンプルとは説得力が変わります。
自分のサイトを教材にするのが3つ目です。ポートフォリオサイトそのものを、表示速度、構造化、更新のしやすさという観点で作り込み、その設計意図を解説記事として書きます。作った本人しか書けない内容になるため、他の制作者と重なりません。
関連する分野の仕事から入る道もあります。制作単体ではなく、運用や改善の側から関わると、既存サイトの分析という別種の実績が積み上がります。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、サイト運用やマーケティング支援に近い仕事の内容がまとめられており、制作だけに絞らず周辺工程から入る場合の参考になります。開発寄りに広げるなら、アプリケーション開発のお仕事で扱われている業務範囲も比較対象になります。
更新と管理を仕組みにする
実績ページは作って終わりではなく、案件が終わるたびに追加する運用が必要です。運用が止まる原因はほぼ1つで、書くのが面倒だからです。面倒さを下げる仕組みを作ります。
案件が終わった時点で、実績用のメモを残す習慣を持ちます。書く項目は先ほどの6項目と同じです。記憶が新しいうちなら15分程度で書けますが、半年経つと当時の判断理由を思い出せなくなります。掲載の可否がまだ決まっていなくても、メモだけは残しておきます。
キャプチャも納品時に撮っておきます。公開後にクライアント側で改変されると、当時の画面は二度と取得できません。トップページ、主要な下層ページ、スマートフォン表示の3種類を最低限として撮影します。
掲載可否の管理表も作ります。案件名、掲載可否、条件、確認した日付、確認先の担当者名を並べた表です。表があると、条件付き許可の内容を後から確認でき、うっかり条件を超えて掲載する事故を防げます。
工程ごとに見せ方を変える
実績の書き方は、担当した工程によって効く要素が変わります。全部を同じ型で書くと、強みが埋もれます。
設計から入った案件
情報設計や要件整理から関わった案件では、完成画面よりも整理の過程を見せたほうが伝わります。ヒアリングで出てきた要望をどう分類したか、優先順位をどう決めたか、削った要素は何かを書きます。削った判断を書けるのは、実際にその場にいた人だけです。「トップページに載せたい要素が十数個挙がったが、来店予約という目的に直結しない要素を下層に移した」というような記述は、他人が真似できません。サイトマップやワイヤーフレームを画像で添える場合は、固有名詞をダミーに差し替えてから使います。
デザインから入った案件
デザインを担当した案件では、見た目の説明に終始しないことが要点になります。配色やフォントの選定理由を、ターゲットとの結びつきで説明します。「利用者の年齢層が高く、店頭の掲示物との印象を揃える必要があったため、彩度を抑えた配色と本文17px以上の文字サイズで組んだ」というように、判断と根拠を並べます。デザインの好みは人によって割れますが、根拠の説明に納得できるかどうかは好みに左右されません。比較検討の場面で残るのは後者です。
実装から入った案件
コーディングやCMS構築を担当した案件では、公開後の運用しやすさが最大の売りになります。誰が更新するのか、その人はどの程度の操作ができるのか、更新を間違えたときに何が起きるのか。この3点をどう設計に落としたかを書きます。「更新担当者が1名で、他業務と兼任だったため、編集できる箇所をブロック単位に限定し、レイアウトが崩れない構造にした」という書き方であれば、技術の話を知らない読み手にも価値が伝わります。表示速度やアクセシビリティへの対応も、対応した内容ではなく、対応したことで何が変わったかを書きます。
公開後の運用から入った案件
既存サイトの改善や運用代行から関わった場合、作った画面がないため実績として書きにくく感じられます。ここで書くべきなのは、変更した箇所と、変更を決めた理由です。「問い合わせフォームの入力項目のうち、初回接触の時点では不要な項目を削った」「更新が止まっていたお知らせ欄を、担当者が投稿しやすい運用ルールとセットで再開した」といった内容です。運用の実績は、制作単体の実績よりも継続的な依頼に繋がりやすい性質があります。依頼側から見れば、任せたあと放置されない相手だという証明になるためです。
掲載を前提にして案件を進める
実績を後から作ろうとすると苦労します。案件の入口の時点で、実績にする前提を組み込んでおくほうが手間は少なくなります。
提案書に掲載の項目を入れておく
見積書や提案書に「制作実績としての掲載について」という項目を1つ立て、掲載の範囲と、掲載を望まない場合の選択肢を書いておきます。この時点で相手が不可と答えたなら、それは契約条件として最初から分かるため、後で揉めません。可と答えたなら、契約書にその内容を盛り込みます。掲載の可否を契約の一部として扱うと、担当者が交代しても効力が残ります。
制作中に素材を集めておく
実績記事に必要な材料の多くは、制作中にしか手に入りません。ヒアリングで出てきた課題、検討したが採用しなかった案、公開前後の状態の違い。これらは案件が終わると散逸します。案件用のフォルダに実績メモという名前のファイルを1つ置き、気づいた時点で追記していく運用にしておくと、書き起こす手間がほとんど発生しません。
公開直後に確認まで済ませる
掲載の許可、キャプチャの取得、担当者への確認依頼の3つを、公開から1週間以内に終わらせる形を標準にします。この時期を過ぎると、相手の関心は次の業務に移り、確認依頼の優先度が下がります。段取りとして固定してしまえば、案件ごとに悩む必要がなくなります。
市場の側から見た実績の位置づけ
制作を発注する側の視点で見ると、実績ページは価格を判断する材料でもあります。同じ内容の見積もりが2通あったとき、判断の根拠になるのは「この金額で何が返ってくるか想像できるかどうか」です。実績に判断の理由が書かれていれば、依頼側は完成形を想像できます。想像できる相手には値切りが起きにくく、想像できない相手には安全策として値切りが入ります。実績の見せ方は、価格交渉の前段階ですでに効いています。
職種としての相場観を掴んでおくと、実績に書く内容の優先順位も決めやすくなります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場には開発職の報酬水準がまとめられており、制作から開発へ範囲を広げる場合の目安になります。文章の作成まで請け負う形を検討するなら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場も併せて確認しておくと、どの工程を自分の売りにするかの判断材料が増えます。
運営者の視点から見た実績ページの実際
20年この市場を見てきた立場から言えば、実績ページで問い合わせが増える人と増えない人の差は、載っている案件の派手さではありません。差が出るのは、読んだ人が「自分の場合はこうしてもらえそうだ」と想像できるかどうかです。有名企業の名前が並んでいても、何をしたのかが書かれていないページには問い合わせが来ません。逆に、社名がすべて伏せられていても、課題と判断が丁寧に書かれているページには、同じ課題を抱えた依頼が集まります。
もう一つ、長く仕事が続いている人に共通しているのは、実績を「作品集」ではなく「引き継ぎ資料」として書いていることです。次に頼む人が読んで、どう進めればいいか分かる形になっている。この書き方をしていると、依頼側の担当者が社内稟議を通すときにそのまま資料として使えます。稟議を通しやすい相手が選ばれるのは、当然の結果です。仲介手数料が差し引かれない直接取引の場では、同じ予算で依頼側はより多くを頼め、受け手の手取りが厚くなります。その関係を継続させる入口として、実績ページは最初に読まれる一枚になります。
制作以外の領域に軸足を広げる場合も、実績の書き方の型は同じです。AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、成果物が画面として残らない仕事でも、課題と判断と結果という骨格で書けば実績として成立します。逆に言えば、この骨格を持っていない実績は、どれだけ画像を並べても判断材料になりません。出せない仕事があること自体は不利ではありません。出せない前提で書き方を設計できている人のほうが、結果として伝わる実績を持つことになります。
よくある質問
Q. 守秘義務のある案件は本当に一切載せられませんか?
契約書に「発注者の事前の書面による承諾がある場合を除く」といった但し書きがあれば、許可を取れば掲載できます。禁止されているのは無断掲載であることが多く、確認せずに諦めているケースが目立ちます。まず契約書の該当条項を読み、次に社名を伏せる案を添えて相談してください。条件付きの許可が出ることもあります。
Q. 下請けで入った案件は誰に掲載許可を取ればよいですか?
契約関係のある元請けの制作会社に相談します。エンドクライアントへ直接連絡するのは商流を越える行為になるため避けてください。元請けからは、サイト名を出さず担当工程だけ書く形なら可、といった条件付きの回答が返ってくることがあります。回答は口頭ではなくメールなど文字で残しておきます。
Q. 実績が数件しかない段階では何を載せればよいですか?
架空の企業を設定して作り込んだ制作物、知人の事業サイト、自分のポートフォリオサイト自体の3つが現実的な材料です。架空の設定で作った場合は、受注実績と誤解されないよう「架空の設定で制作したサンプルです」と明記します。制作物の点数より、判断の理由が書かれているかどうかが評価されます。
Q. スクリーンショットだけを並べる形では駄目ですか?
画像だけの一覧は見た目の好みでしか判断されず、好みが合わない相手には何も残りません。依頼側が知りたいのは、どんな課題に対してどう判断したかです。各件に業種、課題、担当範囲、判断の理由、結果、期間の6項目を添えると、比較の場面で候補に残りやすくなります。
Q. 納品後にクライアントがサイトを改変した場合はどうしますか?
公開URLを実績として貼ると、改変後の画面で評価されてしまいます。納品時に撮っておいたキャプチャと設計意図の解説で見せる形に切り替えてください。この事態を防ぐため、納品のタイミングでトップページ、主要な下層ページ、スマートフォン表示の3種類を撮影しておく運用をおすすめします。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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