畑を貸すときに気をつける点|契約の結び方と借り手の探し方

長谷川 奈津
長谷川 奈津
畑を貸すときに気をつける点|契約の結び方と借り手の探し方

この記事のポイント

  • ✓畑を貸すときの注意点を農地法の条文から整理しました
  • ✓農業委員会の許可が要る理由
  • ✓無許可だと契約が無効になる仕組み

畑を貸すときの注意点を調べている人は、たいてい先に相手が決まっています。近所の人に「使わせてほしい」と声をかけられた、親から相続した畑が草だらけで困っている、知り合いの農家に任せたいが口約束でよいのか分からない。この順番で悩みが来ます。結論を先に書くと、農地の貸し借りは当事者だけで決められません。農業委員会の許可か、法律が用意した別の仕組みを通す必要があり、そこを飛ばした貸し借りは法律上の効力を持ちません。

そしてもうひとつ、多くの人が知らずに進めてしまう点があります。農地の賃貸借は、いったん始めると貸した側から簡単には終わらせられない仕組みになっています。この記事では、農地法の条文を実際に引きながら、貸す前に決めておくこと、契約書に書くこと、借り手をどう探すか、税金はどう扱われるかを順に整理します。個別の判定は土地の区域や事情で変わるので、最後は必ず市区町村の農業委員会で確認してください。

口約束で貸した畑がいちばん揉める

相談として持ち込まれる農地のトラブルは、原因のほとんどが「書面がないこと」に集まります。よくある流れはこうです。近所の人に無償で貸した。数年は問題がなかった。やがて貸した側に相続が起き、子の世代が土地を売りたいと考えた。ところが借りている側は「ずっと使っていいと言われた」と主張し、資材置き場にしていた小屋も撤去しない。ここで初めて、当時のやり取りを示す書面が1枚もないことに気づきます。

何を言ったかの記憶は、双方で必ず食い違います。貸した側は「草を刈ってくれるならという条件だった」と言い、借りた側は「期限は決めていない」と言います。どちらも嘘をついているわけではなく、決めていなかったことを、それぞれが自分に都合よく補って覚えているだけです。書面は、相手を疑うために作るのではなく、記憶が食い違ったときに立ち戻る場所を作るために作ります。

さらに厄介なのは、口約束の貸し借りには許可を取っていない場合が多いという点です。市町村の農業委員会を通さずに行われている貸し借りは、実務の場では正規の手続きを経ていない耕作として扱われます。この状態だと、後で説明する農地法の保護も使えないうえ、行政から是正を求められることがあります。貸した側にとっては、賃料を受け取っているかどうかとは関係なく問題になります。

貸す前に決めておくべき項目は、あとで契約書の節にまとめます。先に押さえてほしいのは、期間と返し方を決めていない貸し借りは、貸す側にとっていちばん不利な形だという事実です。

農地を貸すには農業委員会の許可が必要

農地法は、農地の権利が動くときに許可を求めています。売る場合だけではなく、貸す場合も対象です。条文はこうなっています。

農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

ここに「使用貸借による権利」と書かれている点が重要です。使用貸借とは、賃料を取らずに貸す形のことです。つまり、無償で貸す場合も許可の対象になります。「お金をもらっていないから届出も要らない」と考えている人が本当に多いのですが、条文はお金のあるなしで区別していません。

許可を出すのは、その農地がある市区町村の農業委員会です。申請するのは貸す側と借りる側の当事者で、一方だけでは進みません。審査では、借りる側がその農地をきちんと耕作するか、地域の他の農業者との関係で問題がないか、必要な農作業に従事するかなどが見られます。趣味で少し野菜を作りたいという人に許可が出るとは限らないのは、この審査基準があるためです。

そして注意してほしいのは、農地を農地以外の用途にする場合は別の条文が動くことです。駐車場にする、資材置き場にする、太陽光発電の設備を設ける。こうした転用には4条または5条の許可が必要で、審査は3条よりも厳しくなります。借り手から「一部を資材置き場に使いたい」と言われたときに軽く承諾すると、貸した側も違反の当事者になります。ここは口頭で流さず、必ず農業委員会に確認してください。

許可を取らない貸し借りは「効力を生じない」

許可を取らずに貸した場合にどうなるのか。農地法第3条第6項は、第1項の許可を受けないでした行為はその効力を生じないと定めています。効力を生じないというのは、無効という言い方よりも強い意味を持ちます。後から許可を取れば有効になるという救済もなく、その貸し借りは最初から存在しなかったものとして扱われます。

つまり、当事者どうしで契約書を交わしていても、農業委員会の許可がなければ、その貸し借りは法律上なかったことになります。これは借りる側だけの問題ではありません。貸した側も、賃料を受け取る根拠を失い、相手に対して契約に基づく義務を主張できなくなります。困ったときに使える道具を、自分から手放している状態です。

罰則も用意されています。同法第64条は、第3条第1項や第18条第1項の規定に違反した者を、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処すると定めています。偽りその他不正の手段で許可を受けた場合も同じ重さです。罰則の条文に「拘禁刑」と書かれているのは、刑法の改正で刑の種類が整理されたためで、以前の資料にある「懲役」という表記は現行の条文と合いません。古い解説ページの記載をそのまま信じないでください。

実際に個人間の無償の貸し借りで直ちに罰金が科される例は多くありませんが、条文上は貸した側も対象に入ります。「知らなかった」で済む話ではなく、行政から是正を求められれば、借り手に出てもらうよう伝える役目は貸した側が負うことになります。近所付き合いのある相手に、自分から立ち退きを申し入れる立場に回るのは、誰にとっても重い作業です。

ここまでで押さえてほしいのは順番です。相手を決めてから許可を取るのではなく、相手を決めた段階で農業委員会に相談し、許可の見込みを確かめてから話を進めます。相談は無料で、必要な書類の一覧も渡してもらえます。先に相談しておけば、そもそも許可が出ない相手に土地を預ける事故を防げます。

貸した畑が返ってこないと言われる理由

農地法には、借り手を守るための規定が並んでいます。貸す側からすると、ここがいちばん怖い部分です。

まず、期間を決めていても自動で続いてしまう仕組みがあります。農地法第17条は、期間の定めがある農地の賃貸借について、当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨を相手方へ通知しなかったときは、従前と同一の条件でさらに賃貸借をしたものとみなすと定めています。法定更新と呼ばれる規定です。

期間の満了の1年前から6か月前までという窓が決まっている点が肝心です。1年前より早く通知しても、6か月前を過ぎてから通知しても、条文の求める通知にはなりません。この窓を逃すと、同じ条件で自動的に続いたものとして扱われます。5年や10年の契約を結んだ場合、その通知の時期が来るのは契約から何年も先です。カレンダーやリマインダーに入れておかないと、うっかり過ぎてしまう長さです。貸す側が高齢で、実務を子の世代が引き継ぐ場合は、通知の期限を書面の表紙に書いておくくらいの備えが要ります。

さらに、途中でやめることにも許可が要ります。

農地又は採草放牧地の賃貸借の当事者は、政令で定めるところにより都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

しかも許可が出る場合は限定されています。借り手が信義に反した行為をした場合、その土地を農地以外にするのが相当な場合、双方の事情を考えて貸した側が耕作するのが相当な場合などです。「売りたくなったから返してほしい」は、それだけでは理由になりません。

例外として、合意による解約を、引き渡す期限の6か月前以内に成立した合意で、その内容が書面で明らかなものに基づいて行う場合は、許可なしでできると定められています。10年以上の期間を定めた賃貸借について更新しない旨を通知する場合も例外に入ります。つまり、最初から長めの期間を書面で定めておくほうが、後で終わらせやすくなるということです。短い期間を刻んで更新していく形は、一見すると安全そうに見えて、実は法定更新の窓を毎回管理しなければならないため事故が起きやすくなります。

ここは 6か月 と 1年 という2つの期間が出てきて混同しやすい部分です。貸す前に、返してもらいたい時期を先に決めて、そこから逆算して期間を設計してください。判断に迷う場合は、農業委員会だけでなく弁護士に相談する場面です。

無償で貸す場合に決めておくこと

賃料を取らずに貸す使用貸借は、身内や近所の間でよく使われます。手続きの重さは賃貸借と同じで許可が必要ですが、中身の決め方には違いがあります。

まず、期間です。使用貸借は「いつまで」を決めておかないと、いつ返してもらえるのかが曖昧になります。書面に終わりの日を書き、更新するなら双方が改めて書面で合意する形にしておきます。

次に、費用の負担です。実際に貸している間に発生するのは、草の管理、水路の掃除、水利費や土地改良区の賦課金、農道の整備の負担金といった支出です。誰が払うのかを決めていないと、必ず後で揉めます。固定資産税は所有者に課されるので貸した側が払いますが、それ以外の費用は取り決め次第です。書面には、項目名を並べてどちらが負担するかを書いておきます。

三つめが、土地の状態をどう戻すかです。借り手が畑にビニールハウスを建てた、作業小屋を置いた、暗渠を入れた、土を入れて高さを変えた。こうした変更を返すときに元に戻すのか、そのまま引き取るのかを決めておきます。ここを決めていない案件は、立ち退きの交渉が撤去費用の交渉に変わり、長引きます。

四つめが、相続が起きたときの扱いです。貸した側が亡くなったとき、借りた側が亡くなったとき、それぞれ契約をどう扱うかを書いておきます。無償で貸している関係は当事者の人間関係で成り立っていることが多く、世代が変わると前提が崩れます。

無償だから軽く済ませてよい、という考え方が事故のもとです。金銭のやり取りがない関係ほど、揉めたときに立ち戻る材料が何も残っていません。書面は相手を縛る道具ではなく、次の世代に説明を残す道具として作ります。

農地バンクを通して貸す方法

当事者どうしで許可を取る形以外に、公的な仕組みを通して貸す道があります。都道府県ごとに置かれている農地中間管理機構、いわゆる農地バンクです。根拠になる法律では、機構が行う事業がこう定義されています。

この法律において「農地中間管理事業」とは、農用地の利用の効率化及び高度化を促進するため、(中略)農用地等について農地中間管理権を取得すること。 出典: laws.e-gov.go.jp

仕組みを平たく言うと、機構がいったん農地を借り受けて、それを耕作する人へ貸し付けます。貸す側から見た利点は3つあります。ひとつ、相手を自分で探さなくてよいこと。ふたつ、賃料の受け取りが機構経由になるので、個人間の取り立てにならないこと。みっつ、契約の管理を機構が担うので、更新の期限を自分で追いかける負担が軽くなることです。

注意点もあります。まず、機構が引き受けるかどうかは、その農地の条件によります。区画が小さい、道が狭くて機械が入らない、水の確保が難しい、といった土地は借り手がつきにくく、機構に申し込んでも成立しないことがあります。次に、貸付先は機構が決めるので、特定の相手を指名したい場合には向きません。そして、市街化区域として定められた区域は事業の対象から外れている点も押さえておきます。

申し込みの窓口は市区町村の農政の担当課か、都道府県の機構です。手続きの流れと必要書類は地域で違うので、まず電話で自分の土地が対象になるかを聞くのが早道です。相続で遠方の農地を引き継いだ人には、この仕組みがいちばん現実的な選択になります。

市民農園として貸す形

耕作してくれる農家が見つからない場合、区画を小さく分けて家庭菜園として貸す形もあります。これは特定農地貸付けと呼ばれる仕組みで、要件が法律で定められています。

この法律において「特定農地貸付け」とは、農地についての賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定(中略)で、次に掲げる要件に該当するものをいう。 一 政令で定める面積未満の農地に係る農地の貸付けで、相当数の者を対象として定型的な条件で行われるものであること。 二 営利を目的としない農作物の栽培の用に供するための農地の貸付けであること。 三 政令で定める期間を超えない農地の貸付けであること。 出典: laws.e-gov.go.jp

政令で定める面積と期間は具体的に決まっています。面積は 10アール、期間は 5年 です。つまり、1人あたり10アール未満の区画を、営利目的でない栽培のために、5年を超えない期間で、相当数の人に同じ条件で貸す形であれば、この仕組みに乗れます。

進め方は、市町村と協定を結び、貸付けの規程を作って承認を受ける流れになります。地方公共団体や農業協同組合以外の人が行う場合は、自分が所有する農地について市町村と協定を締結していることが要件に入っています。個人が単独でいきなり始められる仕組みではなく、市町村の農政の担当課と一緒に組み立てる形です。

実務上の注意点は、区画を貸したあとの運営の手間です。水道の設置、道具置き場、駐車場、区画の境界の管理、利用者間の苦情の処理、そして利用者が途中でやめたときの区画の扱い。ここを甘く見積もると、賃料で得るものより手間のほうが大きくなります。まずは区画数を少なく始めて、運営の手間を実測してから広げるのが安全です。

契約書に必ず書く項目

書面に入れる項目を並べます。順番どおりに埋めていけば、必要な取り決めが抜けません。

ひとつめは当事者と対象地です。登記事項証明書のとおりに所在、地番、地目、面積を書きます。畑の一部だけを貸す場合は、図面に線を引いて添付します。

ふたつめは期間です。始まりの日と終わりの日を書きます。更新の扱いも書きますが、自動更新にするかどうかは慎重に決めてください。先に説明した法定更新の仕組みがあるため、更新しない旨の通知をいつまでに出すかを書面にも記載しておくと、期限を忘れにくくなります。

みっつめは対価です。賃料の額、支払いの期日、支払い方法を書きます。無償の場合は「無償とする」と明記します。書いていないと、後から賃料の有無自体が争いになります。

よっつめは使い方の範囲です。何を作ってよいか、農地以外の用途に使わないこと、建物や構築物を建てる場合は事前に書面で承諾を得ること、第三者に貸したり耕作を任せたりしないことを書きます。転用の禁止は、貸す側を守るうえで最も重要な一項です。

いつつめは費用の負担です。水利費、土地改良区の賦課金、農道や水路の維持の負担金、草の管理、農薬や肥料の扱いを項目ごとに分けて書きます。

むっつめは返すときの状態です。作物や施設をどう処理するか、原状に戻すのか、費用は誰が負担するのかを書きます。

ななつめは解除の条件です。耕作をやめて荒らした場合、賃料の支払いが滞った場合、無断で転用した場合の扱いを書きます。ただし、農地の賃貸借を終わらせるには知事の許可が関わるため、契約書に書いただけで自由に解除できるわけではありません。この点は書面の中でも触れておくと、双方の理解がそろいます。

やっつめは許可に関する条項です。農業委員会の許可を得ることを契約の前提とし、許可が得られない場合は契約が成立しないことを書きます。これを入れておかないと、許可が出なかったときの費用や責任の所在が不明になります。

作成そのものは自分でもできますが、判断が必要な部分が多い書面です。行政書士や司法書士、争いが見込まれる場合は弁護士に見てもらう費用は、後で揉めたときの費用よりはるかに安く済みます。

借り手の探し方と、相手を見るときの基準

相手の探し方は4通りあります。

ひとつめは農業委員会や市区町村の農政の担当課への相談です。地域で規模を広げたい農家の情報を持っているので、条件の合う相手を紹介してもらえることがあります。無料で、しかも許可の見込みまで同時に確認できるので、最初に行く場所はここです。

ふたつめは農地バンクへの申し込みです。相手探しと契約の管理をまとめて任せられます。

みっつめは農業協同組合や地域の生産組合です。集落単位で耕作を引き受けている組織がある地域では、個人よりも組織に貸すほうが長く安定します。担い手が法人化している地域では、こちらが主流になっています。

よっつめは近所の農家への直接の打診です。いちばん早いのですが、人間関係が絡むため、後で条件を変えにくくなる点に注意が必要です。

相手を見るときに確認したいのは5点です。ひとつ、その人が現に農業をしているか。ふたつ、機械と人手が足りているか。みっつ、引き受けたあとに実際に耕作する範囲を説明できるか。よっつ、水利費や賦課金の負担について話が通じるか。いつつ、書面を作ることに抵抗がないか。最後の1点は相性を測る指標として有効です。書面を嫌う相手との貸し借りは、ほぼ確実に後で揉めます。

反対に、避けたほうがよいのは、資材置き場や駐車場として使いたいという申し出です。それは農地の貸し借りではなく転用の話なので、手続きも審査もまるで違います。相手が軽く言ってきた場合でも、貸す側が違反の当事者になる点は変わりません。

税金と費用は、どう扱われるか

賃料を受け取る場合、その収入は不動産所得として扱われます。国税庁は不動産所得の範囲を次のように示しています。

不動産所得とは、次の(1)から(3)までの所得(事業所得または譲渡所得に該当するものを除きます。)をいいます。 (1)土地や建物などの不動産の貸付け 出典: nta.go.jp

必要経費として差し引けるものには、貸している資産にかかる固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費が挙げられています。畑を貸している場合なら、その土地の固定資産税や、水路の修繕の負担金などが検討の対象になります。

給与を受けている人が副業として賃料を受け取る場合、確定申告が必要かどうかは他の所得との合計で決まります。給与を1か所から受けていて源泉徴収されている場合は、給与と退職所得を除いた所得の合計が20万円を超えると申告が必要になります。これは所得税の話で、住民税は金額にかかわらず申告が必要になる点が違います。実際の金額の当てはめは収入の構成で変わるので、税務署か市区町村の窓口で確認してください。

固定資産税は所有者に課され続けます。貸していても、貸していなくても、耕作していなくても課税の対象です。荒らしたまま放置している状態では課税の扱いが変わる場合もあるため、農地として使われている形を維持することには税の面でも意味があります。詳しい取り扱いは市区町村の資産税の担当課で確認してください。

相続や贈与の場面では、無償で貸しているか賃料を取っているかで評価の考え方が変わる場合があります。ここは金額に直接響く部分で、しかも事情によって結論が動くため、断定せずに税務署または税理士に確認する場面です。将来の相続を見据えて貸し方を決めるなら、契約の形を固める前に相談しておくほうが、後から組み替えるより手間が少なくなります。

貸す前に集めておく書類と、土地の状態の記録

許可の申請でも契約書の作成でも、同じ書類が要ります。先に揃えておくと、相手が決まってから動く期間が短くなります。

必要になるのは、登記事項証明書、公図または地積測量図、固定資産税の課税明細書、そして農業委員会が求める様式の申請書です。登記の内容が現況と違っていることは珍しくありません。相続の登記が済んでいない、共有になっていて共有者の一部と連絡が取れない、地目が畑ではなく田や山林になっている、といった状態はよくあります。共有地の場合は共有者の同意が必要になるため、ここで時間がかかります。相続が絡む場合は、貸す話を進める前に登記を整えるのが順番です。

土地の状態の記録も、貸す前に取っておきます。四隅と全体が分かる写真を撮り、日付が残る形で保存します。境界の目印、既にある小屋や資材、水路の状態、隣地との段差も撮っておきます。返してもらうときに「もともとこうだった」と示せる材料になり、撤去費用の話になったときの根拠にもなります。写真は撮るのに数分しかかからないのに、揉めたときに効く材料としては最も強いものです。

あわせて、水利費や土地改良区の賦課金の年額、農道の維持の負担金があるかどうかを、地元の組織に確認しておきます。金額が分かっていないと、費用の負担を契約書に書けません。ここを空欄にしたまま貸し始めると、最初の請求が来た時点で相手と話し直すことになります。

区域の区分と生産緑地で、手続きが変わる

同じ「畑」でも、その土地がどの区域にあるかで使える仕組みが変わります。ここを知らずに調べ始めると、読んだ説明が自分の土地に当てはまらないという事故が起きます。

まず、都市計画法で市街化区域と定められた区域にある農地は、先に説明した農地バンクの事業の対象から外れています。根拠となる条文の定義に、市街化区域を除くと書かれています。市街化区域の農地を貸したい場合は、農業委員会の許可による貸し借りか、都市の農地について別に用意された仕組みを検討することになります。

その別の仕組みが、都市農地の貸借の円滑化に関する法律です。生産緑地に指定されている農地を貸す場合に使える枠組みで、農業委員会の認定や市区町村の計画と組み合わせて運用されます。生産緑地は税の扱いが優遇されている代わりに、耕作を続けることが前提になっている土地です。貸し方を間違えると優遇の前提が崩れる可能性があるため、生産緑地の指定を受けている土地は、必ず市区町村の都市計画の担当課と農政の担当課の両方に確認してください。

自分の土地がどの区域にあるかは、市区町村の都市計画の窓口か、公開されている都市計画図で確認できます。固定資産税の課税明細書の記載からも手がかりが得られます。区域の確認は、相手を探すより先に済ませておくべき作業です。対象になる仕組みが分かれば、相談に行く窓口も、必要な書類も、そこから一本に絞れます。

土地を貸す副業と、時間を売る副業の違い

畑を貸す形は、副業として見ると特殊です。手を動かす時間はほとんど要らないのに、始めるときと終わるときの手続きが重く、しかも収入は大きくありません。時間あたりの収益で測ると、割のよい選択とは言えません。

それでも意味があるのは、選択肢が「貸す」か「荒らす」かのどちらかになっている場合です。耕作されない農地は、草が伸びて近隣に迷惑がかかり、害虫や不法投棄の温床になり、いざ売ろうとしたときの状態も悪くなります。貸すことで土地が使われている状態を保てるなら、収入の額そのものより、土地の状態を維持できる価値のほうが大きくなります。

一方で、収入の柱を増やしたいという目的が先にあるなら、土地を貸す形だけに期待しないほうが現実的です。在宅でできる仕事を並行して持っておくと、収入の見通しが立てやすくなります。どの分野を選ぶかを決める材料としては、資格から入る道を整理した在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるが参考になります。書面を扱う仕事と相性がよいのは、文章と事務の系統です。

職種ごとの単価の水準を先に見ておくと、学ぶ順番を決めやすくなります。文章を書いて納める仕事の相場は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、設計や開発の系統はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっています。契約書や申請書を扱う作業に慣れている人なら、文書の型を扱う仕事に移りやすく、ビジネス文書検定で扱う内容はそのまま実務に使えます。

在宅で仕事を受ける環境を整える話になると、回線の選び方で作業の速さが変わります。光回線とホームルーターの違いを整理した在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方は、郊外に土地を持っている人ほど確認しておく価値があります。

現場を長く見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、土地でも仕事でも、長く続く関係には共通点があります。始めるときに終わり方を決めているという点です。

相談として持ち込まれる揉め事は、ほぼ例外なく「終わり方を決めていなかった案件」です。畑の貸し借りなら期間と返し方、業務の委託なら検収と支払の期限、どちらも同じ構造をしています。始めるときは双方が善意なので、終わり方の話を持ち出すのは気が引けます。しかし、気が引ける話を先にした関係のほうが、結果として長く続きます。終わり方が決まっていれば、途中で条件を見直す相談もしやすくなるからです。

もうひとつ、運営者として見てきた限りで確かなのは、間に人が入るほど受け手の取り分が薄くなるという構造です。紹介の手数料が売上の20%を占める形で仕事を受けている人と、直接取引で受けている人では、同じ作業をしていても手元に残る額が2割違います。手数料0%の直接取引が効くのは、単価が跳ね上がるからではなく、依頼する側が同じ予算でもう1件頼めるようになり、受ける側の手取りが厚くなるからです。土地を貸す関係も同じで、間に何段も入る形より、書面を整えた直接の関係のほうが双方に残るものが多くなります。

畑の貸し借りで最後に伝えたいのは、順番です。相手を決める前に農業委員会へ相談し、許可の見込みを確かめ、期間と返し方を書面にしてから引き渡す。この順番を守れば、農地法の規定は貸す側を縛る壁ではなく、荒らさずに土地を回すための道具として働きます。逆にすると、同じ条文が返してもらえない理由に変わります。

在宅で受けられる仕事と組み合わせて収入を組み立てたい場合は、需要が伸びている分野を先に見ておくのが確実です。導入の支援に関わる仕事の中身はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に、広告運用やセキュリティを含む分野はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に整理されています。土地の管理は年に数回の作業に収まるので、平日の時間は別の仕事に向けられます。

よくある質問

Q. 無償で畑を貸す場合も手続きは必要ですか?

必要です。農地法第3条第1項は、使用貸借による権利の設定も許可の対象に含めています。賃料のあるなしで区別していないため、無償で貸す場合も農業委員会の許可が要ります。許可を受けずにした行為は効力を生じないと同条に定められているので、書面を交わしていても法律上は貸し借りが成立していない状態になります。

Q. 貸した畑は、返してほしいと言えば返ってきますか?

簡単には返りません。農地法第18条は、賃貸借の解除や解約の申入れ、更新しない旨の通知に都道府県知事の許可を求めています。許可が出るのは借り手が信義に反した場合など限られた場合です。第17条には期間満了の1年前から6か月前までに通知しないと自動的に更新されたものとみなす規定もあるため、期間の設計を先に決めてください。

Q. 借り手が見つからないときはどうすればよいですか?

都道府県ごとに置かれている農地中間管理機構、いわゆる農地バンクに申し込む方法があります。機構がいったん借り受けて耕作する人へ貸し付ける仕組みなので、相手探しと契約の管理を任せられます。ただし区画の条件によっては成立しないことがあり、市街化区域は事業の対象外です。窓口は市区町村の農政の担当課です。

Q. 区画に分けて家庭菜園として貸すことはできますか?

特定農地貸付けの仕組みを使えば可能です。1人あたり10アール未満、営利目的でない栽培のため、5年を超えない期間で、相当数の人に同じ条件で貸すことが要件です。地方公共団体や農業協同組合以外の人が行う場合は、自分が所有する農地について市町村と協定を結ぶ必要があります。市町村の農政の担当課と一緒に進めてください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月2日最終更新:2026年9月27日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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