障害者雇用で在宅ワークはできるか


この記事のポイント
- ✓障害者雇用の枠で在宅勤務は可能です
- ✓短時間勤務とフルリモートの組み合わせ
- ✓合理的配慮の確認のしかたをデータと実例で整理しました
結論から書きます。障害者雇用の枠で在宅ワークをすることは可能です。完全在宅を前提にした求人が実際に出ていて、週10時間台の短時間勤務とフルリモートを組み合わせた採用も行われています。ただし求人の数は通勤前提のものより少なく、探す場所と確認する項目を知らないと見つかりません。この記事では実際の募集内容、給与の水準、応募前に確かめるべきこと、そして雇用以外の選択肢までを整理します。感情論ではなく、募集要項に書かれている条件から書きます。
制度の側から見た答え
まず前提を確認します。障害者雇用促進法にもとづき、一定規模以上の民間企業には障害のある人を雇用する義務があります。法定雇用率は段階的に引き上げられており、2024年4月に2.5%へ引き上げられ、その後さらに引き上げる段取りが示されています。最新の率と対象となる企業規模は変わるので、厚生労働省の公表資料で確認してください。
この引き上げが、在宅勤務の求人が増えた直接の理由になっています。企業は雇用率を満たす必要があるのに、通勤を前提にすると採用できる人の範囲が狭くなる。そこで在宅を前提にした採用枠を作る会社が出てきました。つまり在宅の障害者雇用は、企業側の必要から生まれた選択肢です。お願いして認めてもらう性質のものではありません。ここを理解しておくと、応募のときの姿勢が変わります。
制度上の大きな変化がもう1つあります。2024年4月から、週10時間以上20時間未満の短時間で働く重度の身体障害や重度の知的障害のある人、そして精神障害のある人について、1人を0.5人として雇用率に算入できるようになりました。それまでは週20時間未満だと雇用率に算入できなかったため、短時間で働きたい人の求人がほとんど出ていませんでした。この改正によって、週10時間台の募集が成立するようになりました。
体調に波がある人、通院の頻度が高い人、長時間の集中が難しい人にとって、これは実務上の意味が大きい変化です。フルタイムで働けないことを理由に雇用の対象から外れていた層に、求人が届くようになったからです。
在宅と短時間を組み合わせられるという点も押さえてください。制度は「在宅なら短時間しか認めない」とは定めていません。フルタイムの在宅勤務も、短時間の在宅勤務も、どちらも成立します。
実際に出ている求人の形
制度の話だけでは実感が持てないので、実際の募集内容を見ます。求人検索サイトに掲載されている例です。
【仕事内容】障がい者雇用枠の募集です 企業情報〈設立〉2016年 【ここがポイント】<障がい者雇用>契約社員/完全在宅/事務職/身体・精神障がい者雇用実績多数/月19.2万円〜 出典: 求人ボックス
この募集から読み取れることを分解します。雇用形態は契約社員で、正社員ではありません。勤務形態は完全在宅で、条件付きの在宅ではない。職種は事務。そして「雇用実績多数」と書かれている点が重要です。すでに在宅で働いている社員がいる会社は、業務の切り出し方と情報共有の仕組みができています。初めて在宅の障害者雇用をする会社より、入ってからの負荷が軽い。
給与は月19.2万円から。この水準の意味は後の節で詳しく書きます。
雇用形態が契約社員である点について、正直に書いておきます。障害者雇用の在宅求人は、契約社員や有期雇用から始まるものが多い。正社員の在宅枠は数が限られます。ただし契約社員から正社員に転換する制度を持つ会社もあるため、募集要項の「正社員登用あり」の記載を確認する価値があります。記載がある会社では、1年から3年の勤務を経て転換の実績があるか面接で聞いてください。
もう1つ、求人票で確認すべき点があります。業務の切り出しが具体的に書かれているかです。「事務職」とだけ書かれた募集は、入ってから業務が定まっていない可能性があります。データ入力、書類のスキャンとファイリング、問い合わせの一次対応、といった具体的な記述がある募集のほうが、実態が固まっています。
短時間勤務とフルリモートを組み合わせた採用
企業が公式に打ち出している例も見ておきます。障害者雇用を専門に手がける会社の採用情報です。
本求人は、フルリモートかつ特定短時間・短時間勤務(週10時間以上30時間未満)という新しいはたらき方による求人募集です。パーソルダイバースは「障害者雇用を成功させる。そして、その先へ」をミッションに掲げ、はたらく意志や想いのあるすべての人に、はたらく機会と可能性を拡げ、いきいきとはたらける社会を目指しています。 そのような想いのもと、当社では、障害、疾病により、 通勤型、フルタイム勤務などが難しかった方へ 『新しいはたらき方』の『選択肢』の提供を促進してまいります。 出典: persol-diverse.co.jp
同社の情報では、2024年3月からフルリモートかつ週30時間未満の短時間勤務が可能な採用活動を行っているとされています。制度改正の時期と一致しており、企業が改正に合わせて枠を作ったことがわかります。
週10時間から30時間という幅の意味を考えてください。週10時間は1日2時間で5日、あるいは1日5時間で2日という配分です。この幅があると、通院の日を勤務から外せます。体調の波がある人は、調子の良い時間帯に業務を寄せられます。フルタイムを前提にすると成立しなかった働き方が、ここで成立します。
こうした枠を持っている会社を探すコツを書きます。企業の採用ページに「障害者採用」の専用ページがあるかを見てください。専用ページを作っている会社は、採用の仕組みを整えています。専用ページに社員のインタビューが載っている会社は、さらに確度が高い。実際に働いている人がいるという証拠になります。
逆に、求人検索サイトの掲載情報しかなく、企業の採用ページに障害者雇用の記載がない会社は、内部の体制を確認する必要があります。応募を避ける理由にはなりませんが、面接で在宅勤務の実績を必ず聞いてください。
在宅でできる仕事の種類
どんな業務が在宅の障害者雇用で切り出されているかを、具体的に並べます。
1つ目は事務とデータ処理です。データ入力、伝票の処理、名簿の整備、書類の電子化、社内システムへの登録。これがもっとも件数の多い領域です。手順が決まっていて、成果が件数で見えるので、在宅でも評価しやすい。
2つ目は問い合わせ対応です。チャットやメールでの一次対応、よくある質問への回答、社内からの問い合わせ受付。電話を使わない形の募集が増えています。音声でのやりとりが負担になる人にとっては、チャット中心の募集を選ぶ意味があります。
3つ目は資料の作成と編集です。会議資料の整形、マニュアルの更新、議事録の作成、社内報の編集。文章を扱う仕事は在宅との相性が良く、成果物で評価されるので働きやすい。
4つ目はWebサイトの運用補助です。商品情報の登録、画像の差し替え、記事の入稿、SNSへの投稿。手順が決まっていて、自分のペースで進められる業務です。私はアパレルブランドのEC運営を支援していますが、商品登録と説明文の作成は在宅の担当者に任せている部分が大きい。この領域は在宅で成立する仕事の代表例です。
5つ目はデータの集計と分析です。売上の集計、アクセス解析のレポート作成、アンケートの集計。表計算ソフトを使える人にとっては、評価されやすい業務です。
6つ目は技術職です。プログラミング、テスト、インフラの監視。専門性が必要なぶん、給与の水準が上がります。技術系の募集がどう出ているかはアプリケーション開発のお仕事で業務の中身を確認できます。開発の仕事は成果物が明確なので、在宅でもっとも評価のずれが起きにくい領域です。
逆に、在宅で切り出しにくい業務も書きます。来客対応、郵便物の処理、備品の管理、現場での作業。これらを主業務とする募集は、在宅になりません。求人票の業務内容にこれらが含まれている場合、実態は出社が前提です。
給与と年収の水準
数字の話をします。期待値を正しく持つために、率直に書きます。
在宅の障害者雇用の給与は、月17万円から25万円の帯が中心です。先に挙げた募集例の月19.2万円は、この帯のなかほどにあたります。年収にすると220万円から320万円前後です。賞与がある会社では、これに年1回から2回の支給が加わります。
短時間勤務の場合は時給制が多く、時給1,100円から1,500円が相場です。週20時間で時給1,200円なら、月の収入は10万円前後になります。この数字を見て低いと感じる方もいるでしょうが、短時間勤務は「フルタイムが難しい人が収入を得る手段」として設計されています。フルタイムと比較する対象ではありません。
技術職や専門職では水準が上がります。プログラミングやデータ分析の業務では、月25万円から35万円の提示が見られます。専門性が給与に反映される構造は、障害者雇用の枠でも同じです。参考として、技術職全体の年収帯はソフトウェア作成者の年収・単価相場で確認できます。目指す先の水準を知っておくと、何を学ぶかの判断がつきます。
給与を上げる方法は2つあります。1つは業務の範囲を広げることです。データ入力から集計と報告まで担えるようになると、評価が変わります。もう1つは専門性を作ることです。表計算ソフトの関数とピボットテーブル、文章の作成、画像の編集、簡単なプログラミング。どれか1つで社内に代わりがいない状態を作ると、契約更新と昇給の交渉材料になります。
在宅であることの経済的な利点も計算に入れてください。通勤の交通費と時間、通勤に伴う体力の消耗がなくなります。額面が通勤型より低い場合でも、実質の負担で見ると差が縮まります。逆に、自宅の光熱費と通信費は増えます。在宅勤務手当を出す会社があるので、募集要項の手当の欄を確認してください。
求人の探し方
在宅の障害者雇用の求人は、探す場所によって見つかる数が大きく変わります。経路を4つ挙げます。
1つ目はハローワークの専門援助部門です。障害者雇用の求人は、一般の求人検索では出てこないものがあります。専門援助部門の窓口では、在宅勤務が可能な求人を条件として指定して探してもらえます。地域の求人に強いのが特徴です。
2つ目は障害者雇用に特化した人材紹介サービスです。企業側が在宅の枠を作るときに、こうした事業者に依頼することが多い。紹介サービスを通すと、求人票に書かれていない配慮の実態を事前に確認できます。
3つ目は企業の採用ページです。大手企業は自社の採用サイトに障害者採用の専用ページを持っています。求人検索サイトに出さず、自社サイトだけで募集する会社があるため、気になる企業の採用ページは直接見てください。
4つ目は求人検索サイトです。「障害者 在宅」「障がい者雇用 フルリモート」といった語で検索します。件数は多いものの、在宅可の表記が曖昧なものが混ざるので、選別が必要です。
探すときのコツを2つ書きます。1つは、勤務地の欄を鵜呑みにしないことです。完全在宅でも、雇用契約上の勤務地として本社の住所が書かれていることがあります。勤務地が遠いからと除外せず、本文の在宅に関する記述を読んでください。もう1つは、掲載時期を見ることです。同じ求人が長期間掲載されている場合、応募が集まっていないか、採用基準が厳しいかのどちらかです。前者なら応募の余地があります。
応募書類の作り方でも結果が変わります。経験の並べ方や自己PRの構成は共通の型があるので、職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】を参考にしてください。障害者雇用の応募でも、職務経歴の書き方が評価されるのは同じです。
応募前に確認すべき合理的配慮の中身
ここは見落とすと入社後に困る部分なので、確認項目として書きます。事業主には合理的配慮の提供が求められていますが、具体的な内容は会社ごとに違います。求人票には書かれていないことが多いので、面接で聞く必要があります。
確認すべき項目を6つ挙げます。1つ目は勤務時間の柔軟性です。始業時刻をずらせるか、通院の日に時間を調整できるか、体調不良時の連絡方法はどうなっているか。2つ目は業務の指示のしかたです。口頭か文字か。文字での指示を求められるなら、そう伝えてよい会社かを確認してください。3つ目は会議の形式です。カメラをオンにする義務があるか、音声での参加が必須かどうか。4つ目は機器と環境です。パソコンは貸与されるか、通信費の補助があるか、必要な支援機器を用意してもらえるか。5つ目は相談先です。困ったときに誰に言うのか。産業医や支援担当者がいるかどうか。6つ目は評価の方法です。何をもって成果とするのか。
聞き方のコツを書きます。「配慮していただけますか」と尋ねるより、「私はこの条件だとこのように働けます」と伝えるほうが通ります。前者は会社に判断を委ねる形になり、後者は具体的な運用の相談になります。たとえば「口頭の指示は聞き漏らすことがあるため、作業の指示をチャットで残していただけると正確に進められます」という伝え方です。
私自身、在宅で仕事を回すなかで手痛い経験があります。繁忙期に体調を崩して1週間ほとんど動けなかったことがあり、そのとき自分の業務が誰にも引き継げない状態になっていました。以降は、作業を手順書に落とすことを習慣にしました。手順書があると、休んでも仕事が止まりません。これは配慮を求める話とは別に、在宅で働く全員に効く備えだと思っています。配慮の交渉をするときも、「手順が文字で残っていれば、私が休んだ日も業務が止まりません」という形で提案すると、会社にとっての利点として伝わります。
選考と働き始めてからのつまずき
選考では何が見られるか。在宅の採用に共通しているのは、文字でのやりとりが成立するかという点です。応募のメールの文章、返信の速さ、質問への答え方。これらが実務能力の代わりとして見られます。
オンライン面接では、環境が見られます。接続の安定性、音声の聞き取りやすさ、静かに話せる場所があるか。事前に一度、誰かと通話して確認してください。技術的な問題で面接が中断すると、在宅勤務への不安を与えてしまいます。
自分の障害について、どこまで伝えるかは悩むところだと思います。判断の基準は「業務に影響する範囲」です。業務の進め方に関係する部分は具体的に伝え、関係しない部分は伝える義務がありません。「この作業はこの方法なら問題なくできます」という形で、できることを軸に説明するほうが、採用側は判断しやすくなります。
働き始めてからつまずく点も書きます。1つ目は聞けないことです。在宅では相手の状況が見えないので、質問をためらって時間を溶かします。対策は、質問する基準を自分で決めることです。15分考えて進まなければ聞く、と決めるだけで変わります。2つ目は、働いていることが見えないことです。日報や進捗の共有を自分から出す習慣を作ってください。これは評価のためだけでなく、困っていることを早く拾ってもらうためでもあります。3つ目は、生活と仕事の境界が消えることです。始業と終業で場所や服装を変える、といった物理的な区切りを1つ作ってください。4つ目は孤立です。週に1回は誰かと話す機会を作る。会社に仕組みがなければ、支援機関の面談を使うのも手です。
資格とスキルは何を用意するか
在宅の事務職の募集は応募が集中します。差が付くのは、手を動かせる範囲の広さです。優先順位を付けて書きます。
最優先は表計算ソフトです。関数、並べ替えと絞り込み、ピボットテーブル。この3つができると、データ入力の担当から集計と報告の担当へ移れます。給与に直結する差が生まれるのはここです。
次は文章です。在宅の仕事は文字のやりとりが中心なので、誤解を生まない文章を書ける人は評価されます。社外文書の型と敬語を体系的に扱うビジネス文書検定は、メールや報告書をそのまま良くする内容なので、在宅で働く人には実用性が高い資格です。
3つ目は簿記です。事務職の求人では歓迎条件に入っていることが多く、経理の補助業務に入る道が開きます。
4つ目は技術系の基礎知識です。IT関連の職種を狙うなら、ネットワークとインフラの基礎を扱うCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が応募条件や歓迎条件に使われます。専門職として在宅で働く場合、給与の帯が一段上がります。
資格より優先すべきことも書きます。使えるツールを増やすことです。チャットツール、ビデオ会議、タスク管理、クラウドの文書共有。これらを操作できることは、資格より直接的に評価されます。在宅の採用で会社が心配しているのは、ツールの操作でつまずいて業務が止まることです。無料で使えるものが多いので、応募前に自分で触っておいてください。
雇用ではない在宅ワークという選択
最後に、雇用以外の選択肢を書きます。障害者雇用の枠にこだわらず、業務委託で在宅の仕事を受ける道です。
業務委託の利点は3つあります。1つは、働く時間を自分で決められること。体調の波に合わせて配分できます。2つは、雇用率の枠や企業側の受け入れ体制に左右されないこと。仕事の成果だけで判断されます。3つは、複数の依頼者と取引できること。1社に依存しないので、1つの契約が終わっても収入がゼロになりません。
欠点も正直に書きます。社会保険が自分の負担になり、有給休暇がありません。仕事が途切れる月は収入が下がります。確定申告も自分で行う必要があります。安定という点では、雇用のほうが確実です。
現実的な使い方は、組み合わせです。短時間の雇用で基礎的な収入と社会保険を確保し、余力のある範囲で業務委託の仕事を受ける。この形なら、収入の下限を守りながら上を伸ばせます。ただし勤務先の副業規定を確認してください。
業務委託で受けやすい仕事は、文章の作成、データの整備、画像の加工、Webサイトの更新、問い合わせ対応の代行です。文章の仕事の収入水準を知りたい方は、統計をもとにした著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見てください。専門分野を持つ書き手が到達する帯がわかります。
支援機関の使い方も書いておきます。就労移行支援は在宅での訓練に対応している事業所があり、自宅から通わずに訓練を受けられます。地域障害者職業センターでは、職業評価と就職後の支援を受けられます。就労定着支援は、入社後に会社との間に入ってもらえる仕組みです。入社してから困ったときに使える窓口を、応募の段階で確保しておくと安心です。
手帳と雇用枠の関係
応募の前提になる部分を整理します。障害者雇用の枠に応募するには、原則として障害者手帳が必要です。対象になるのは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類です。企業が雇用率に算入するためには手帳の確認が必要なので、手帳がない状態では障害者雇用枠の選考に進めない会社がほとんどです。
手帳を持っていない場合の選択肢を書きます。1つは、取得を検討することです。申請の窓口は市区町村で、診断書や意見書が必要になります。取得までに数か月かかることがあるので、就職の時期から逆算して動いてください。もう1つは、一般枠で在宅の求人に応募することです。在宅勤務そのものは障害者雇用枠に限られた働き方ではありません。一般枠の在宅求人に応募して、必要な配慮を個別に相談する道もあります。
手帳の等級によって応募できる求人が変わるかという点も、よく聞かれます。基本的には等級で応募が制限されることは少なく、企業が見ているのは業務との適合です。ただし重度の区分に該当する場合、企業側の雇用率の算入が手厚くなるため、採用の判断が前向きになることがあります。制度上の扱いなので、自分から不利に考える必要はありません。
手帳を開示するかどうかの判断についても触れます。障害者雇用枠で応募する時点で開示が前提になります。一般枠で応募する場合は、開示するかどうかを選べます。開示すれば配慮を求めやすくなり、開示しなければ配慮を求めにくくなる。どちらが良いかは、必要な配慮の大きさで決めてください。業務に影響しない範囲なら開示しない選択もありますし、勤務時間の調整が必要なら開示したほうが働きやすくなります。
雇用保険と社会保険の扱いは、障害の有無で変わりません。週20時間以上の勤務で雇用保険の対象になり、一定の条件を満たせば健康保険と厚生年金の対象になります。短時間勤務を選ぶ場合は、社会保険の対象になるかどうかを募集要項で確認してください。ここは収入の手取りに直接効く部分です。
在宅の1日をどう組み立てるか
働き方の実務を書きます。在宅は自由に見えますが、自由なぶん自分で構造を作る必要があります。続いている人がやっていることを具体的に挙げます。
1つ目は、始業の合図を作ることです。着替える、机を拭く、その日の予定を紙に書く。何でも構いませんが、毎日同じ動作にしてください。在宅では通勤という切り替えがないため、意識だけで仕事に入ろうとすると失敗します。
2つ目は、作業を小さく割ることです。「資料を作る」という単位ではなく、「見出しを決める」「数字を集める」「表を作る」と分けます。細かく割ると、体調が落ちた日でも1つは進められます。進んだ記録が残ることが、翌日の負担を軽くします。
3つ目は、集中できる時間帯に重い仕事を置くことです。朝が調子の良い人は午前に考える仕事を寄せ、午後に単純作業を置く。逆の人は逆にします。自分の波を2週間記録すると、パターンが見えます。
4つ目は、休憩を予定に入れることです。疲れてから休むのではなく、決めた時刻に休む。在宅は中断されないぶん、気付くと数時間続けています。これが翌日の不調につながります。
5つ目は、終業の合図です。パソコンを閉じる、机を離れる、その日にできたことを1行書く。1行書く習慣は、報告の材料にもなるので一石二鳥です。
6つ目は、週に1度の振り返りです。1週間で何件処理したか、どこで詰まったかを簡単に書き残す。これがあると、評価面談と契約更新の話し合いで自分の実績を示せます。在宅では上司が作業の様子を見ていないため、記録を持っている人だけが正当に評価されます。
私はEC運営の仕事で在宅のメンバーと業務を回していますが、うまく回っているのは、誰がいつ何をするかが文字で決まっているときです。曖昧な依頼を出した週は、必ず手戻りが出ます。これは働く側の問題ではなく、依頼側の設計の問題です。もし入った会社の指示が曖昧なら、自分から「この理解で進めます」と文字で確認してください。確認を出す人は、面倒な人ではなく助かる人だと受け取られます。
市場を長く見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、2つ書きます。
1つ目。運営者として見てきた限りでは、在宅の仕事が続く人と続かない人の差は、能力ではなく段取りにあります。続く人は、自分ができることとできないことを先に伝え、途中の状況を短く共有し、困ったら早く相談しています。依頼する側から見ると、この振る舞いがある人は「任せておける」相手になります。逆に、ぎりぎりまで黙っていて期限に間に合わない人は、成果物が良くても次の依頼が減ります。在宅では相手が様子を見られないので、伝えることそのものが仕事の一部になります。
2つ目。額面より手取りを見てほしいという話です。同じ予算の仕事でも、仲介が入って手数料が引かれる経路と、依頼者から直接受ける経路では、手元に残る額が違います。依頼する側から見ても構造は同じで、中間マージンが乗らなければ同じ予算でより多くを頼めます。20年この市場を見てきて確信しているのは、この差が関係の続く年数に出るということです。手数料0%の意味は安く買えることではなく、双方の手元に厚く残ることにあります。
在宅の障害者雇用は、企業側の必要と制度の改正が重なって広がった選択肢です。数はまだ多くありませんが、探す場所を知っていれば見つかります。応募の前に、自分がどの条件なら働けるかを文章にしてください。「配慮してもらえるか」ではなく「この条件でこう働けます」と書けたとき、選考の会話が前に進みます。
よくある質問
Q. 障害者雇用で完全在宅の求人はありますか?
あります。契約社員で完全在宅、事務職、月19.2万円からという募集など、在宅を前提にした求人が実際に掲載されています。企業の採用ページに障害者採用の専用ページを持つ会社や、障害者雇用に特化した人材紹介サービスを通すと見つけやすくなります。
Q. 週に数時間だけの短時間勤務でも雇用されますか?
されます。2024年4月から、週10時間以上20時間未満で働く重度の身体障害や重度の知的障害のある人、精神障害のある人を1人0.5人として雇用率に算入できるようになり、週10時間台の募集が成立するようになりました。フルリモートと短時間を組み合わせた採用も行われています。
Q. 給与はどのくらいですか?
在宅の障害者雇用では月17万円から25万円、年収220万円から320万円前後が中心です。短時間勤務は時給1,100円から1,500円が相場です。プログラミングやデータ分析などの専門職では月25万円から35万円の提示も見られ、専門性が給与に反映される点は一般の採用と同じです。
Q. 面接で配慮についてどう伝えればよいですか?
「配慮していただけますか」ではなく「この条件ならこう働けます」と具体的に伝えてください。たとえば口頭の指示が聞き取りにくい場合は、作業指示をチャットで残してもらえれば正確に進められる、という形です。勤務時間の柔軟性、指示の方法、会議の形式、機器の貸与、相談先、評価方法の6点は応募前に確認しておきます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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