保育士が辞めたくなる理由と次の選択肢


この記事のポイント
- ✓人間関係・給与・労働時間・保護者対応の4系統に整理しました
- ✓辞めたくなるタイミングの傾向
- ✓退職理由の伝え方と手順
「保育士辞める理由」と検索してこのページを開いた時点で、あなたの中ではもう答えが出ているのかもしれません。それでも検索した理由は、自分の感じている「しんどさ」が甘えなのか、それとも構造的におかしいのかを知りたいからだと思います。この記事では、保育士が辞めたくなる理由を感情論ではなく系統立てて分解し、そのうえで「職場を変えれば解決するもの」と「業界の仕組みそのものに起因するもの」を切り分けます。最後に、資格と経験を持ったまま選べる進路を具体的に並べます。結論を先に言うと、辞めたくなる理由の大半は個人の適性ではなく労働環境の設計に原因があり、だからこそ「どこへ移るか」で結果が大きく変わります。
保育士の離職はどのくらい起きているのか
まず前提を数字で押さえておきます。保育士の離職率は、公立と私立、施設の規模によって差はあるものの、おおむね年間9%前後で推移していると各種調査で報告されています。全産業の平均離職率が15%前後であることを考えると、数字だけ見れば「特別に高いわけではない」ように見えます。しかしこの数字には落とし穴があります。保育士の場合、離職した人のかなりの割合が「保育の仕事そのものから離れる」という形をとる点です。
資格を持ちながら保育の現場で働いていない、いわゆる潜在保育士は100万人規模で存在するとされています。養成校を出て資格を取り、一度は現場に立ったのに戻ってこない人がこれだけいるということは、離職が「もっと良い保育園へ移る」という前向きな転職ではなく、「保育という働き方から降りる」という選択になりがちだという意味です。ここが看護や介護と少し違うところで、看護師は病院を変えながらキャリアを続ける人が多い一方、保育士は一度離れると戻らない傾向が強い。
有効求人倍率のほうは、保育士は全国平均で2倍を超える年が続いています。つまり求人側は常に足りていない。求人が豊富なのに人が定着しないという状態は、賃金と労働時間のバランスが崩れているサインです。待遇改善の施策としては処遇改善等加算が2013年以降段階的に拡充され、月額で数千円から4万円程度が上乗せされる仕組みが整いましたが、これは園の運営方針によって配分が変わるため、同じ地域の同じ年次でも手取りが1万円単位で違うことが珍しくありません。
ここで大事なのは、「自分の園がしんどいのは自分の努力不足ではないかもしれない」と客観視することです。求人倍率が2倍を超える市場では、売り手であるあなたの側に選択権があります。にもかかわらず辞められないと感じているなら、それは情報が足りていないだけです。園ごとの配置基準の守り方、行事の量、持ち帰り仕事の有無は、外からは見えにくいものの、転職市場では明確に差がついています。この記事の後半では、その差の見分け方まで踏み込みます。
辞めたくなる理由は大きく4系統に整理できる
保育士の退職理由は無数にあるように見えて、分解すると4つの系統に収まります。自分がどれに当てはまるかを特定すると、「職場を変えれば直るのか」の判断が一気にしやすくなります。
人間関係と園の空気
各種の退職理由ランキングで、ほぼ例外なく1位に来るのが人間関係です。保育は1つのクラスを複数人で回す仕事なので、価値観の合わない相手と毎日8時間以上、逃げ場なく同じ空間にいることになります。オフィスワークのように席を離れて頭を冷やすことができません。加えて、園は閉じた組織になりやすく、主任や園長の方針がそのまま全体のルールになります。制作物の作り方ひとつ、子どもへの声かけひとつに「そのやり方は違う」と言われ続ければ、保育観そのものが否定されたように感じてしまう。
この系統は、実は転職で解決する可能性がもっとも高い理由です。園の人間関係は属人的なので、園が変われば前提から変わります。ただし条件があります。次の園を「求人票の条件」だけで選ぶと同じことを繰り返します。見学時に職員同士がどう呼び合っているか、書類仕事をしている先輩に他の職員が気軽に話しかけているか、主任が子どもに対してどんなトーンで話すか。この3点は30分の見学でも観察できます。
給与と将来の見通し
次に多いのが賃金です。保育士の平均年収は常勤でおおむね380万円前後とされ、全産業平均を下回ります。施設形態による差もあり、認定こども園の水準について次のような整理があります。
「認定こども園の給料って、保育園や幼稚園と比べて実際どうなの?」気になる方はいませんか。認定こども園の保育教諭(常勤)の平均給与月額は私立で32万7,240円、公立で34万6,808円です。 出典: hoikushibank.com
金額そのものよりも効くのは「上がる見通しが描けない」ことです。一般企業なら役職が上がれば給与も上がる設計になっていますが、保育園は組織がフラットで、主任や園長のポストが空かない限り昇給幅は小さいままです。20代のうちは同世代と大きく変わらなくても、30代半ばで差が開き始める。住宅費や教育費が重くなる時期に伸びしろが見えないと、辞める理由として一気に前面に出てきます。
労働時間と持ち帰り仕事
3つ目が時間です。シフト上は8時間でも、実際には早番の準備、連絡帳、月案週案、行事の制作物、壁面の更新が積み上がります。これらは子どもがいる時間には手を付けられないため、休憩時間か勤務後、あるいは自宅に持ち帰ることになります。持ち帰り仕事は記録に残らないので、残業代も付かず、園の労務管理上は「残業ゼロの職場」として扱われてしまう。ここが保育士の疲弊が外から見えにくい最大の理由です。
私が別の業界で働いていたときにも似た構造を見ました。制作物のクオリティが個人の裁量に委ねられている職場では、真面目な人ほど自分の時間を削って質を上げようとします。そして質が上がるとそれが標準になり、翌年の後輩がさらに削られる。これは個人の頑張りでは止まらないので、園として「制作物は勤務時間内に終わる量にする」と決めているかどうかを、転職の面接で必ず確認したほうがいい項目です。
保護者対応と責任の重さ
4つ目が保護者対応と、事故に対する責任の重さです。子どもの命を預かる仕事である以上、ヒヤリハットのたびに強い緊張が走ります。さらに近年は保護者からの要求水準が上がり、連絡帳やアプリでのやり取りが勤務時間外に及ぶこともあります。この系統は園を変えても完全には消えませんが、園の方針で負担は大きく変わります。保護者対応を担任個人に任せる園と、主任やリーダーが必ず同席する園とでは、同じクレームでも心理的な重さがまったく違います。
辞めたくなるタイミングには規則性がある
「辞めたい」と感じる瞬間はランダムではなく、時期と年次にはっきりした傾向があります。自分がどこにいるかを知ると、それが一時的な波なのか構造的な限界なのかを判断しやすくなります。
時期で言えば、まず6月前後。新年度の緊張が切れ、クラスの課題が見えてきて、なおかつ梅雨で外遊びができず室内が荒れる時期です。次が大きな行事の直後。運動会や発表会は準備で数ヶ月削られるため、終わった瞬間に張り詰めていた糸が切れます。そして年度末の2月から3月。次年度のクラス編成や担任の発表が出る時期で、「来年もこの体制か」と分かった瞬間に気持ちが決まる人が多い。
年次で言えば、1年目の秋、3年目、そして6年目から7年目に山があります。1年目の秋は理想と現実のギャップが最大化する時期で、学校で習った保育と現場で求められる段取りの違いに打ちのめされます。3年目は、仕事が一通り回るようになり周囲の期待が上がる一方で、給与がほとんど変わらないことに気づく時期。6年目以降は、主任候補として運営側の仕事が増え、子どもと関わる時間が減ることへの違和感が出てきます。
ライフイベントも大きな引き金です。結婚、出産、パートナーの転勤。保育士の勤務はシフト制で早番と遅番があるため、自分の子どもの送り迎えと両立しにくい。皮肉なことに、他人の子どもを預かる仕事をしている人が、自分の子どもを預ける時間を作れないという事態が起きます。この場合、辞めたい理由は職場ではなく働き方の形式にあるので、同業への転職よりも勤務形態そのものを変えるほうが解決が早い。
ここで一度立ち止まって確認してほしいのは、「いま感じているしんどさは、時期の波か、年次の壁か、形式の限界か」という切り分けです。時期の波なら、行事が終わって2週間経ってからもう一度考える。年次の壁なら、園を変えることで解決できる可能性が高い。形式の限界なら、保育という職種の外まで視野を広げる必要があります。
辞めると決める前に確かめる3つのこと
勢いで退職届を出して後悔する人は一定数います。後悔の中身はほぼ共通していて、「次の環境をよく調べなかった」「お金の見通しを立てなかった」「辞める理由を職場のせいにして自分の希望を言語化しなかった」の3つです。順番に潰していきます。
1つ目は、施設形態を変えるだけで解決しないかの確認です。保育士が働ける場は認可保育園だけではありません。認定こども園、小規模保育事業所、企業主導型保育園、院内保育所、病児保育室、児童発達支援事業所、学童保育、ベビーシッター。定員19名以下の小規模保育は行事が少なく書類も軽い傾向があり、院内保育所は預かる子どもの数が少なく保護者が同じ施設の職員であるため保護者対応の質が変わります。今の不満が「行事が多すぎる」「保護者対応が重い」なら、この横移動だけで解決することがあります。
2つ目は、お金の見通しです。退職後に転職活動をする場合、雇用保険の基本手当は自己都合退職なら申請から給付開始まで一定の待期と給付制限があり、実際に振り込まれるのは退職から2ヶ月半ほど先になるケースが一般的です。家賃補助の一環である借り上げ社宅制度を使っている場合、退職と同時に住居も失うことになるので、引っ越し費用と敷金礼金も計算に入れる必要があります。在職中に次を決めておくほうが圧倒的に安全なのは、この一点に尽きます。
3つ目は、自分の希望の言語化です。「人間関係が嫌」で辞めると、次の面接で志望動機が作れません。そうではなく、「複数担任でクラス運営を分担できる体制で働きたい」「制作物は勤務時間内に完結する園がいい」「行事より日々の保育を大事にする方針の園を探している」と、欲しい条件の形で書き出します。これは面接対策のためだけでなく、求人票を読むときのフィルターになります。条件が言語化できていないと、給与と通勤時間だけで選んでしまい、同じ失敗を繰り返します。
退職理由の伝え方と辞めるまでの手順
退職を決めたら、次は伝え方です。保育園は年度で回る組織なので、一般企業以上にタイミングが重要になります。
伝える相手は直属の上司、つまり主任か園長です。同僚に先に話すと噂として伝わってしまい、正式に伝える前に園長の耳に入るという最悪の形になります。時期は、年度末退職なら遅くとも10月までに伝えるのが望ましい。次年度のクラス編成と採用計画が動き始めるためで、ここを過ぎると引き止めが強くなります。法律上は民法の規定により退職の申し入れから2週間で雇用契約は終了しますが、円満に辞めたいならこの最短ラインを主張するのは最後の手段にしておきます。
伝える内容は、園への不満ではなく自分側の事情に寄せるのが定石です。人間関係が理由であっても、それをそのまま言えば「誰が悪いのか」という話になり、改善提案という名の引き止めが始まります。「以前から関心のあった分野に挑戦したい」「家庭の事情で勤務形態を変える必要がある」「体調を整える時間が必要」といった、園側が反論しづらく、かつ嘘ではない言い方を選びます。退職を切り出す前の準備について、次のような整理が参考になります。
ここからは、退職する意志を職場に伝えるタイミングや、実際に伝える際の内容の考え方について解説していきます。具体的に目安とすべき時期や、退職を切り出す前にやっておくべきことについても紹介するので、実際にどうなるかイメージしながら見ていきましょう。 出典: co-medical.com
書類の準備も忘れずに。退職時に受け取るのは離職票、雇用保険被保険者証、年金手帳(預けている場合)、源泉徴収票の4点です。離職票は退職日から10日前後で郵送されるのが一般的で、これがないと雇用保険の手続きができません。返却するのは健康保険証、名札、園の鍵、制服、貸与された書籍や教材です。持ち帰った制作物の型紙やデータに園の所有物が混ざっていないかも確認しておきます。
引き継ぎは、子どもの情報を中心に組み立てます。アレルギーの有無、与薬の有無、家庭環境で配慮が必要な点、保護者との過去のやり取りで注意すべき点。これらを口頭ではなく文書にまとめて渡すと、残る人の負担が目に見えて減ります。ここを丁寧にやっておくと、数年後に別の形で保育に関わることになったときに、業界内の評判として返ってきます。保育の世界は地域単位で狭いので、辞め方は想像以上に記憶されます。
辞めたいのに辞められないときの詰まり方
相談を見ていて多いのが、辞めたい気持ちははっきりしているのに動けないという状態です。この詰まりにも型があり、型が分かれば外し方も決まります。
1つ目は「年度途中で抜けると子どもに悪い」という罪悪感です。これは保育士に特有の、そして最も強い足かせです。ただし冷静に考えると、担任が年度途中で交代する事態を避ける責任は、本来は園の運営側にあります。職員が1人辞めたら回らなくなる配置で運営していること自体が問題で、それを個人が背負うのは筋が違う。もちろん引き継ぎは丁寧にやるべきですが、「自分が抜けたら崩壊する」という感覚は、多くの場合は過大評価です。実際には、辞めた人の穴は数ヶ月で埋まります。
2つ目は引き止めです。「次の担任が決まるまで待ってほしい」「来年度は担任を外すから」といった提案が出てきます。ここで注意したいのは、口頭の約束は記録に残らないという点です。来年度は軽くすると言われて残った結果、4月にふたを開けたら以前より重いクラスを任されていたという話は珍しくありません。条件を理由に残るなら、クラス編成、勤務時間、給与の3点を書面で確認します。書面にできない約束は、実行される保証がないと考えたほうがいい。
3つ目は「次が決まっていない不安」です。これは最も健全な詰まり方で、解決策も明確です。在職中に動けばいい。保育士の求人は年間を通じて出ていますが、特に9月から12月は翌年度4月入職の募集が集中します。この時期に見学と面接を済ませておけば、内定を持った状態で退職を切り出せます。内定があると引き止めへの対応も楽になり、「もう次が決まっているので」の一言で話が終わります。
4つ目は、退職代行に頼るべきかという悩みです。心身の状態が限界で、園長と話すこと自体が耐えられないなら選択肢として否定しません。ただし業界が狭い地域では、辞め方が後々まで話題になることがあります。使うなら、離職票や源泉徴収票の受け取り、貸与物の返却まで代行範囲に含まれているかを事前に確認してください。書類が届かないと雇用保険の手続きが止まります。
辞めてよかった人と後悔した人の分かれ目
辞めた人の声を追うと、満足した人と後悔した人ではっきり差が出るポイントが3つあります。
第1に、辞める前に「何が嫌だったか」ではなく「何が欲しかったか」を書き出したかどうか。嫌だったことだけを基準に選ぶと、次の職場では別の嫌なことに当たります。たとえば行事の多さが嫌で行事の少ない園に移ったら、今度は日々の保育に刺激がなくて物足りなくなった、という反転が起きる。欲しい条件を先に決めておくと、こうしたねじれを避けられます。
第2に、収入が下がる期間を想定していたかどうか。異業種へ未経験で移れば、最初の1年は年収が下がるのが普通です。これを「失敗した」と受け取るか「投資期間だった」と受け取るかで、その後の行動がまるで違ってきます。下がり幅と回復までの期間をあらかじめ見積もっておけば、動揺せずに済みます。逆に言えば、見積もらずに飛び出した人ほど、半年後に「やっぱり保育に戻ろうか」と揺れます。
第3に、保育の経験を捨てたか、持って出たか。後悔している人の多くは、前職の話を面接で一切しなかった人です。「保育しかやってこなかったので」と自分で価値を下げてしまう。実際には、限られた時間で複数の業務を並行処理する力、想定外の事態に即座に優先順位を付ける力、相手の理解度に合わせて説明を変える力は、どの業界でも足りていません。経験を翻訳して持ち出した人は、1年後には新しい職場で中心になっていることが多い。
もう1つ付け加えると、辞めたあとに「保育に戻る」という選択も普通にあります。潜在保育士が多いということは、裏を返せば復職の間口が広いということです。数年別の業界を経験してから戻ってくる人は、園の運営を客観的に見られるため、主任や園長のポジションで重宝されます。辞めることは、保育との縁を切ることとは同じではありません。
保育士を辞めたあとに選べる進路
辞めた先の選択肢は、大きく3つの方向に分かれます。保育の中で場所を変える、保育に近い職種へ移る、保育の外へ出る。それぞれに向き不向きがあります。
保育の中で場所を変える場合、前述の小規模保育や院内保育、企業主導型が現実的です。年収水準は大きく変わりませんが、労働環境の改善幅は大きい。子どもと関わる仕事自体は好きで、環境だけがつらいという人はこの方向が最短です。
保育に近い職種としては、児童発達支援や放課後等デイサービスの支援員、子育て支援センターの職員、ベビーシッター、保育関連企業の本部職があります。特に児童発達支援は、保育士資格がそのまま活きるうえ、1人あたりの子どもの数が少なく、専門性を積み上げやすい分野です。ベビーシッターは自分で稼働時間を決められるため、育児との両立を優先する人に向きます。
保育の外へ出る場合、これまでの経験が何の能力として説明できるかを翻訳する作業が必要になります。保育士の仕事は、複数の関係者と同時に調整する力、突発的なトラブルに優先順位を付けて対応する力、書類を期限内に整える力、相手の理解度に合わせて言葉を変える力の集合体です。これらは事務職、営業事務、カスタマーサポート、人材業界、教育系企業の企画職で普通に求められる能力です。転職活動で使う職務経歴書の書き方は、職種を問わず共通する型があります。実績を数字と状況で示す方法をまとめた職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】が、未経験分野へ出る人にとっては特に役立ちます。20代で異業種へ移る場合は、第二新卒枠を扱うサービスの使い分けが結果を左右するため、年代別の選び方を整理した20代の転職サイトおすすめ5選|未経験・第二新卒向けも先に目を通しておくと無駄が減ります。
資格と経験を在宅の働き方へつなげる道筋
もう1つ、以前より現実的になった選択肢があります。雇用ではなく業務委託で働く形です。ここ数年で在宅を前提とした業務委託の求人は確実に増えており、保育士経験者が入りやすい入口もいくつかあります。
分かりやすいのは、保育や子育てに関する記事やマニュアルの執筆です。教育系メディアや保育関連企業は、現場経験のある書き手を常に探しています。現場を知らない書き手が書いた保育の記事は、読む人が読めばすぐに分かるためです。文章で報酬を得る仕事の相場感は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場に職種としての水準がまとまっているので、副業として始めるか本業にするかを決める前に一度見ておくといい。
2つ目は、事務・バックオフィス系の在宅業務です。保育士が日常的にやっている書類作成、スケジュール調整、保護者への連絡文書作成は、そのままオンライン事務の仕事と重なります。ビジネス文書の型を体系的に押さえておくと、未経験からでも採用されやすくなります。文書作成の基本ルールを資格として学べるビジネス文書検定は、学習範囲が実務と直結しているので、在宅事務を狙う人には費用対効果が高い選択です。
3つ目は、AIツールの活用支援です。意外に思われるかもしれませんが、保育や教育の現場を知っている人がAIの導入支援に入ると強い。現場で何が面倒で、どこを自動化すれば助かるかを肌で分かっているからです。この領域の仕事の広がりはAIコンサル・業務活用支援のお仕事に整理されています。技術そのものより、現場の業務を言語化できることのほうが価値になる仕事です。
ただし、業務委託には注意点があります。雇用ではないので、健康保険と年金は自分で切り替える必要があり、収入が安定するまでに時間がかかります。いきなり退職して独立するのではなく、在職中か、次の職場で働きながら小さく試すのが現実的な進め方です。
20年この市場を見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、資格職から離れた人がその後うまくいくかどうかは、資格の種類ではなく「自分の経験を相手の言葉に翻訳できるか」で決まります。保育士の場合、「子どもが好きで保育士をしていました」と言うと、それは趣味の話として受け取られます。そうではなく、「20人の子どもと保護者20世帯を同時に相手にしながら、毎月の計画書を期限内に出し、年間5回の行事を段取りしていました」と言えば、これはプロジェクト管理の話として伝わります。同じ経験でも、伝え方で評価が変わる。
もう1つ、運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど単発の作業ではなく「この人に任せると楽だ」という関係づくりに時間を使っています。これは保育の現場でも同じで、保護者から信頼される人は特別なことをしているわけではなく、小さな報告を欠かさないだけだったりします。その習慣はそのまま業務委託の仕事でも通用します。
そして、働き方の形が変わると手取りの構造も変わります。仲介のマージンが何重にも乗る取引では、発注側が払った金額と受け手が受け取る金額の間に大きな開きが生まれます。手数料0%の直接取引が意味を持つのは、金額そのものより、同じ予算で依頼側はより多くを頼め、受け手の手取りが厚くなるという構造の話です。この差は1件では小さく見えますが、継続的な関係になるほど効いてきます。
最後に、辞めるかどうかの判断そのものについて。この記事を読んで「やっぱり続けよう」と思ったなら、それも正解です。大事なのは、いまの状況を「選んでいる」状態にすることで、「選べないまま居続けている」状態から抜けることです。求人倍率が2倍を超える職種で働いているあなたには、実際に選択肢があります。次の一歩は、退職届を書くことではなく、いま自分が欲しい条件を3つだけ紙に書き出すことです。
よくある質問
Q. 保育士を辞める理由で一番多いのは何ですか?
各種の調査で最も多く挙がるのは職場の人間関係です。次いで給与への不満、労働時間や持ち帰り仕事の多さ、保護者対応の負担が続きます。人間関係は園ごとに事情が違うため、転職によって解決する可能性が比較的高い理由です。一方で給与水準は業界全体の構造に関わるため、園を変えるだけでは大きく変わらないことが多いです。
Q. 退職の意思はいつまでに伝えるべきですか?
年度末で辞めるなら、遅くとも10月までに主任か園長へ伝えるのが目安です。次年度のクラス編成と採用計画がその時期に動き始めるためで、それ以降だと引き止めが強くなります。法律上は申し入れから2週間で契約は終了しますが、円満に辞めたい場合は園の年間スケジュールに合わせるほうが安全です。
Q. 保育士の資格は辞めたあとも活かせますか?
活かせます。児童発達支援や放課後等デイサービスの支援員、子育て支援センター、ベビーシッター、病児保育など、資格が直接要件になる職場は保育園以外にも複数あります。また資格そのものより、複数の子どもと保護者を同時に調整してきた経験が、事務職やカスタマーサポート、教育系企業の企画職で評価される場面も多いです。
Q. 在宅の仕事に移る場合、何から始めればよいですか?
いきなり退職せず、在職中か次の職場で働きながら小さく試すのが安全です。保育や子育て分野の記事執筆、オンライン事務、資料作成などが入口になりやすく、いずれも実績が1件でもあると次の依頼につながります。業務委託は健康保険と年金を自分で管理する必要があるため、収入が安定するまでの期間を見込んでおきます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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