育児・介護休業の労使協定で対象外にされる人と、確認すべき点 2026


この記事のポイント
- ✓育児介護休業法の労使協定で
- ✓短時間勤務などの対象から外せる人の範囲を
- ✓厚生労働省のパンフレットで確かめて制度ごとに整理します
会社に育児休業や介護休業を申し出たら、「労使協定があるので、あなたは対象外です」と言われた。そんな場面に直面して、この言葉の意味を調べている人は少なくありません。逆に、会社の人事担当として、労使協定で誰を対象外にできるのかを確かめたい人もいるはずです。
結論を先に書きます。育児介護休業法では、会社と労働者の代表が労使協定を結べば、一部の人を制度の対象から外すことが認められています。ただし、外せる人の範囲は法律と省令で細かく決まっており、それより広く外すことはできません。令和7年4月からは、子の看護等休暇と介護休暇について、勤続6か月未満の人を外す仕組みが廃止されました。
この記事では、厚生労働省の育児・介護休業法のパンフレットに書かれている内容をもとに、制度ごとに対象外にできる人を整理し、協定があっても外せないケース、そして働く側が確認すべき点を順番に解説します。
労使協定とは何か。会社と労働者の代表が結ぶ書面の約束
労使協定とは、会社と労働者の代表との間で結ぶ、書面による約束のことです。厚生労働省のパンフレットでは、事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定のことをいう、と説明されています。
育児介護休業法では、育児休業などの制度を、原則としてすべての労働者が使えるものとしています。そのうえで、会社の実情に合わせて、一部の人を対象から外す余地を残しています。社会保険労務士事務所の解説でも、この点がこう整理されています。
育児・介護休業法では、育児休業や介護休業を始め、仕事と育児・介護との両立に関する様々な制度を定めていますが、一部の者については、「労使協定」を締結することによって、制度の適用を除外することが認められています。 出典: uenishi-sr.jp
ここで大切なのは、労使協定は「会社が一方的に決めるもの」ではないという点です。就業規則は会社が作成し、労働者の代表の意見を聴いたうえで定めるものですが、労使協定は労働者の代表と合意して結ぶものです。労働者の代表が同意しなければ、協定は成立しません。
もう1つ大切なのは、労使協定がない会社では、法律で決められた要件を満たす人は全員が制度の対象になるという点です。「入社1年未満だから育休は取れない」と会社に言われた場合でも、労使協定がなければ、その説明は法律上の根拠を欠いています。まず協定があるかどうかを確かめることが出発点です。
労働者の代表はどう選ばれるか
労働組合がない会社では、労働者の過半数を代表する人(過半数代表者)が会社と協定を結びます。この代表者の選び方には、労働基準法の施行規則で決まりがあります。
・管理監督者(部長や工場長など、経営者と一体的な立場にある人)でないこと ・協定を結ぶ人を選ぶことを明らかにしたうえで、投票や挙手などの方法で選ばれた人であること ・会社の意向で選ばれた人でないこと
社長が指名した人や、親睦会の代表が自動的に代表者になっている場合は、正しく選ばれたとはいえない可能性があります。過半数代表者が適正に選ばれていなければ、その労使協定は無効と判断されるおそれがあります。
働く側として確かめたいのは、自分の職場で過半数代表者の選挙や信任の手続きがあったかどうかです。社内の掲示やメールで「労使協定を結ぶ代表者を選出します」といった案内があったはずです。思い当たらない場合は、人事部に、いつ、どのような方法で代表者が選ばれたのかを尋ねてみましょう。
また、育児介護休業法の労使協定は、時間外労働に関する協定(いわゆる36協定)のように労働基準監督署へ届け出る仕組みにはなっていません。そのため、外からは協定の有無が見えにくく、社内で確認するしかありません。協定は書面で結ぶものなので、会社は内容を示すことができるはずです。
育児休業で対象外にできる人
育児休業について、労使協定で対象外にできるのは次の人です。厚生労働省のパンフレットでは、育児休業申出の時点で、次のいずれかに当てはまる人を労使協定で定めれば、会社は申し出を拒むことができるとされています。
・その会社に継続して雇われた期間が1年未満の人 ・育児休業の申し出の日から1年以内に雇用関係が終わることが明らかな人(1歳6か月までと2歳までの育児休業の場合は6か月以内) ・1週間の所定労働日数が2日以下の人
ここで重要なのは、パンフレットのポイント解説にある次の記述です。法律と省令は、労使協定で育児休業の対象から外せる人の範囲の最大限度を示しているので、より狭い範囲の人を外すことはできても、より広い範囲の人を外すことはできない、とされています。例として、男性はすべて育児休業の対象から外す旨の労使協定を結ぶことはできない、と明記されています。
つまり、「入社2年未満の人を対象外にする」「週3日勤務の人を対象外にする」「男性社員は対象外にする」といった協定は、法律の範囲を超えるため認められません。協定の中身が法律の範囲に収まっているかを確認することが大切です。
なお、日々雇い入れられる人(日雇いの人)は、労使協定とは関係なく、法律の上で育児休業の対象になりません。また、期間を決めて雇われている人(有期雇用の人)は、子が1歳6か月になる日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないことが条件になります。
有期雇用の人と、令和4年の要件緩和
契約社員やパートなど、期間を決めて雇われている人の扱いは、令和4年4月1日に大きく変わりました。
それまで有期雇用の人が育児休業を取るには、法律上、「引き続き雇用された期間が1年以上」であることと、「子が1歳6か月になるまでの間に契約が満了することが明らかでない」ことの2つの要件が必要でした。厚生労働省のパンフレットによると、令和4年4月1日からは1つ目の要件が撤廃され、2つ目の要件だけになりました。引き続き雇用された期間が1年未満の人は、正社員などの無期雇用の人と同じように、労使協定を結んだ場合に限って対象外にできる扱いになっています。介護休業も同じです。
この改正によって、労使協定のない会社では、入社して間もない有期雇用の人でも、要件を満たせば育児休業を取れるようになりました。一方で、労使協定で「継続雇用1年未満」を外している会社では、有期雇用か無期雇用かに関係なく、1年未満の人は育児休業を取れないことになります。
有期雇用で働く人が育児休業を考えるときは、次の2点を確認しましょう。
・会社に「継続雇用1年未満」を対象外とする労使協定があるか ・子が1歳6か月になるまでの間に、自分の契約が終わって更新されないことが明らかになっていないか
契約書に「更新しない」と明記されている場合や、更新の上限に達することが決まっている場合は、2つ目の条件に当たる可能性があります。更新の見込みについて会社がどう考えているかを、人事担当に確認しておくと安心です。
厚生労働省のパンフレットでは、契約が更新されないことが「明らか」かどうかは、育児休業の申し出があった時点で、労働契約の期間満了や更新がないことが確実かどうかで判断するとされています。パンフレットで要件を満たさない例として挙げられているのは、書面や口頭で更新しない旨や更新回数の上限が示されていて、契約の末日が子が1歳6か月になる日までの間にある場合です。単に「更新するかどうか分からない」という状態では、対象から外す理由にはなりません。
産後パパ育休と介護休業で対象外にできる人
産後パパ育休(出生時育児休業)で、労使協定により対象外にできるのは次の人です。
・その会社に継続して雇われた期間が1年未満の人 ・申し出の日から8週間以内に雇用関係が終わることが明らかな人 ・1週間の所定労働日数が2日以下の人
産後パパ育休には、対象外の範囲とは別に、労使協定で決める事項が2つあります。
1つは、休業中の就業です。産後パパ育休の期間中に働けるのは、会社が労使協定で休業中に就業させることができる労働者を定めている場合に限られます。協定がなければ、休業中に働くことはできません。厚生労働省のパンフレットでは、会社が休業中の就業を認めない場合は、労使協定を結ぶ必要はないと説明されています。
もう1つは、申し出の期限です。産後パパ育休の申し出は原則として休業開始の2週間前までですが、会社が法律で義務づけられた以上の雇用環境の整備などの措置を講じることを労使協定で定めれば、期限を2週間超から1か月の範囲で決めることができます。この措置には、研修や相談窓口の設置などから2つ以上を行うこと、男性の取得状況を含む数値目標を決めて方針を周知すること、本人の意向を把握するための取り組みを行うことが含まれます。
介護休業で、労使協定により対象外にできるのは次の人です。
・その会社に継続して雇われた期間が1年未満の人 ・申し出の日から93日以内に雇用関係が終わることが明らかな人 ・1週間の所定労働日数が2日以下の人
介護休業についても、パンフレットでは、外せる範囲は最大限度であり、たとえば男性をすべて対象外にするような協定は結べないとされています。
子の看護等休暇と介護休暇。令和7年4月から外せる範囲が狭くなった
令和7年4月1日の改正で、もっとも大きく変わったのが、子の看護等休暇と介護休暇の対象外の範囲です。
改正前は、労使協定を結べば、次の2種類の人を対象外にできました。
・その会社に継続して雇われた期間が6か月未満の人 ・1週間の所定労働日数が2日以下の人
令和7年4月1日からは、このうち勤続6か月未満の人を外す仕組みが撤廃されました。今、労使協定で対象外にできるのは、週の所定労働日数が2日以下の人だけです。入社したばかりの人でも、週3日以上働いていれば、子の看護等休暇と介護休暇を使えます。
もう1つ、時間単位での取得についても労使協定が関わります。子の看護等休暇と介護休暇は、1日単位でも時間単位でも取れますが、時間単位で取ることが難しいと認められる業務に従事する人を、労使協定で時間単位の取得の対象から外すことができます。ただし、その場合でも1日単位では休暇を取れます。休暇そのものを取れなくするわけではない、という点を押さえておきましょう。
ここで注意したいのは、改正前に結んだ労使協定がそのまま残っている会社です。協定に「勤続6か月未満の者を除く」という定めが残っていても、令和7年4月1日以降はその部分は法律の範囲を超えるため、有効に働きません。会社が協定や就業規則を見直していない可能性もあるので、入社6か月未満で休暇を断られた場合は、この改正を伝えて確認を求めましょう。
残業の免除、短時間勤務、柔軟な働き方の措置で対象外にできる人
休業や休暇のほかにも、労使協定で対象外にできる人が決められている制度があります。
所定外労働の制限(残業の免除)では、労使協定で次の人を対象外にできます。
・その会社に継続して雇われた期間が1年未満の人 ・1週間の所定労働日数が2日以下の人
3歳未満の子を育てる人の短時間勤務制度では、次の3種類の人を対象外にできます。
・その会社に継続して雇われた期間が1年未満の人 ・1週間の所定労働日数が2日以下の人 ・業務の性質や業務の実施体制から見て、短時間勤務が難しいと認められる業務に従事する人
3つ目の人を対象外にした場合、会社は代わりの措置として、育児休業に関する制度に準ずる措置、テレワーク等、フレックスタイム制、時差出勤、保育施設の設置運営等のいずれかを用意しなければなりません。代わりの措置もなく放置することはできません。
令和7年10月1日から始まった柔軟な働き方を実現するための措置(3歳から小学校入学前の子を育てる人向けの5つの選択肢)でも、労使協定で次の人を対象外にできます。
・その会社に継続して雇われた期間が1年未満の人 ・1週間の所定労働日数が2日以下の人 ・時間単位で養育両立支援休暇を取ることが難しいと認められる業務に従事する人(1日単位では取れる)
介護のための短時間勤務などの措置では、継続して雇われた期間が1年未満の人と、1週間の所定労働日数が2日以下の人を対象外にできます。
一方で、時間外労働の制限と深夜業の制限は、労使協定ではなく法律の上で対象外になる人が決められています。継続して雇われた期間が1年未満の人や週の所定労働日数が2日以下の人などは、協定がなくても請求できない扱いです。
制度ごとの対象外の範囲を一覧で整理する
ここまでの内容を、一覧で整理します。いずれも、会社が労使協定を結んでいる場合に限って対象外にできる人です。
| 制度 | 労使協定で対象外にできる人 |
|---|---|
| 育児休業 | 継続雇用1年未満、1年以内(1歳以降の休業は6か月以内)に雇用終了、週の所定労働日数2日以下 |
| 産後パパ育休 | 継続雇用1年未満、8週間以内に雇用終了、週の所定労働日数2日以下 |
| 介護休業 | 継続雇用1年未満、93日以内に雇用終了、週の所定労働日数2日以下 |
| 子の看護等休暇 | 週の所定労働日数2日以下(時間単位が難しい業務は時間単位のみ対象外) |
| 介護休暇 | 週の所定労働日数2日以下(時間単位が難しい業務は時間単位のみ対象外) |
| 所定外労働の制限 | 継続雇用1年未満、週の所定労働日数2日以下 |
| 短時間勤務(育児) | 継続雇用1年未満、週の所定労働日数2日以下、短時間勤務が難しい業務 |
| 柔軟な働き方の措置 | 継続雇用1年未満、週の所定労働日数2日以下(時間単位が難しい業務は養育両立支援休暇の時間単位のみ) |
この表は、外せる範囲の上限を示したものです。会社がこれより狭い範囲だけを外す協定を結ぶのは自由ですし、協定を結ばずに全員を対象にするのも自由です。むしろ、法律より手厚くすることは望ましいとされています。
協定があっても外せない人と、注意したい扱い
労使協定があっても、外せる範囲を超えて対象外にすることはできません。とくに注意したいのが、次のようなケースです。
1つ目は、性別や雇用形態でまとめて外すことです。「男性社員は育児休業の対象外」「パートは全員対象外」といった定めは、法律の範囲を超えます。パートでも、週3日以上働き、継続雇用が1年以上あれば、協定で外すことはできません。
2つ目は、勤続期間の基準を延ばすことです。「勤続2年未満は対象外」とする協定は、1年未満までしか外せない法律の範囲を超えます。
3つ目は、令和7年4月の改正前の内容が残っている場合です。子の看護等休暇と介護休暇で「勤続6か月未満を除く」とする定めは、改正後は効力を持ちません。
4つ目は、短時間勤務の対象外とする業務の範囲を広げすぎることです。厚生労働省のパンフレットでは、指針に挙げられている業務は例示にすぎず、すでに1日6時間の短時間勤務制度を導入している場合など、客観的にみて困難とは認められない業務を対象外にすることはできないとされています。さらに、短時間勤務を申し出た人を、労使協定で対象外としている業務にわざわざ配置転換することは、不利益な配置の変更に当たる可能性が高いとも書かれています。
また、労使協定で対象外にされた人であっても、育児や介護と仕事の両立について会社に相談すること自体は自由です。会社が独自の判断で休業を認めることも妨げられません。協定で外されたからといって、あきらめる前に話し合ってみる価値はあります。
労使協定と就業規則の関係。両方に書かれているかを見る
労使協定を結んだだけでは、働く人に内容が伝わりません。会社は、協定で対象外とした人の範囲を、就業規則(育児・介護休業規程)にも書いて周知するのが一般的です。厚生労働省が公開している規則の規定例でも、育児休業などの対象から除外する人について、労使協定の内容に合わせて就業規則に定める形が示されています。
働く側が確認するときは、就業規則と労使協定の両方を見るのが確実です。よくある食い違いには、次のようなものがあります。
・就業規則には「勤続1年未満の者を除く」と書かれているが、労使協定が結ばれていない ・労使協定は改正後の内容に見直されたが、就業規則が古いまま残っている ・就業規則の対象外の範囲が、労使協定より広く書かれている
1つ目の場合、労使協定がない以上、就業規則に書いてあっても対象外にする根拠にはなりません。育児介護休業法は、対象外にするには労使協定が必要だと定めているからです。2つ目と3つ目の場合も、法律の範囲と労使協定の内容が優先して考えられます。
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場では労働基準監督署への届出が必要で、労働者がいつでも見られる状態にしておくことが求められています。社内の共有フォルダや掲示で確認できるはずなので、まず自分で読み、分からない点を人事部に尋ねましょう。
対象外にされたときでも使える制度
労使協定で育児休業や介護休業の対象から外された場合でも、使える制度がなくなるわけではありません。対象外の範囲は制度ごとに違うので、他の制度で両立を図れることがあります。
まず、産前産後休業は、育児介護休業法ではなく労働基準法で決められた制度で、労使協定で対象外にすることはできません。出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から本人が請求すれば休め、出産後8週間は原則として働かせてはならないとされています。入社したばかりでも、パートでも、すべての女性労働者が対象です。
また、生後1年に満たない子を育てる女性は、労働基準法で、1日2回、それぞれ少なくとも30分の育児時間を請求できます。これも労使協定で外せない制度です。
健康保険の出産手当金(産前産後休業中の給与の代わりとして健康保険から出るお金)や出産育児一時金も、育児休業の対象かどうかとは関係なく、健康保険の要件を満たせば受け取れます。産前産後休業中の健康保険と厚生年金の保険料の免除も同じです。
子の看護等休暇は、令和7年4月からは週の所定労働日数が2日以下の人しか外せなくなったので、入社1年未満で育児休業の対象外とされた人でも、週3日以上働いていれば使えます。時間外労働の制限や深夜業の制限は、継続雇用1年未満の人は法律の上で対象外ですが、1年を過ぎれば請求できるようになります。
年次有給休暇も、育児や介護のために使えます。有給休暇は入社から6か月が過ぎ、所定労働日の8割以上出勤していれば付与されるのが法律の原則です。対象外とされた期間をどう乗り切るかを考えるときは、使える休暇と制度を一覧にして、会社と相談しながら組み合わせていくのが現実的です。
会社と話し合うときの伝え方
労使協定で対象外にされたことに納得できないとき、いきなり労働局に相談するのではなく、まず会社と話し合いたいと考える人も多いはずです。話し合いを進めるときは、次の流れを意識すると、感情的な対立になりにくくなります。
- 対象外とされた根拠を、書面で示してもらうよう依頼する(労使協定のどの条項か)
- 協定の内容が、法律で外せる範囲に収まっているかを確認する
- 自分の事情(出産予定日、介護の状況、希望する期間)を具体的に伝える
- 法律上の対象外であっても、会社の判断で休業を認めてもらえないか相談する
- 話し合いの日付と内容を記録に残す
依頼の文面は、たとえば次のような形が考えられます。
「〇月〇日に育児休業の申し出をした際、労使協定により対象外とのご説明をいただきました。今後の準備のため、該当する労使協定の内容と、私が対象外となる理由を書面でお示しいただけますでしょうか。」
このように、事実を確認したいという姿勢で依頼すると、会社も応じやすくなります。会社の説明が法律の範囲を超えていると分かった場合は、その点を具体的に伝えれば、多くの場合は見直してもらえます。それでも解決しないときに、労働局の相談窓口を使うという順番が、職場の関係を保ちながら権利を守る現実的な進め方です。
副業や掛け持ちで働く人の数え方
複数の会社で働いている人や、副業をしている人は、労使協定の対象外の基準をどう数えるのかが気になるところです。
育児休業や介護休業は、雇われているそれぞれの会社に対して申し出る制度です。継続雇用期間や週の所定労働日数は、基本的に会社ごとに見ることになります。たとえば、A社で週2日、B社で週3日働いている人の場合、A社では週の所定労働日数が2日以下にあたるため、A社に労使協定があれば対象外にされる可能性があります。一方、B社では週3日なので、その基準では外されません。
雇用保険の育児休業給付は、休業する会社で雇用保険に加入していることなどが条件になります。掛け持ちで働く人は、どの会社で雇用保険に入っているかによって、給付の扱いが変わることがあります。育児休業を取る会社と雇用保険に加入している会社が同じかどうかを、早めに確認しておきましょう。
本業の会社に雇われながら、副業として業務委託の仕事をしている人は、本業の会社に対して育児介護休業法の制度を使えます。副業の業務委託先には、法律上の休業の制度はありませんが、取引条件の見直しについて相談することはできます。
自分が対象外にされていないか確かめる手順
会社から「労使協定で対象外」と言われたときや、これから制度を使う予定があるときは、次の手順で確かめましょう。
- 就業規則(育児・介護休業規程)を読み、対象外とされる人の定めを確認する
- 人事部に、労使協定があるかどうかと、その内容を見せてもらえるか尋ねる
- 協定の内容が、法律で外せる範囲に収まっているかを、この記事の一覧と照らし合わせる
- 自分の継続雇用期間、週の所定労働日数、契約の更新の見込みを確認する
- 納得できない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する
継続雇用期間は、入社日から数えた日付を正確に確認しておきましょう。入社日と子の出生予定日、休業を始めたい日の関係によっては、1年を超えるかどうかが数日の差で変わることがあります。どの時点で1年以上が必要と扱うのかを、人事部に具体的な日付で確認しておくと、申し出の時期を考える材料になります。
労働局への相談は無料で、受付は平日の8時30分から17時15分です。労働局は会社への助言や指導を行い、労働局長による紛争解決の援助の仕組みもあります。相談するときは、就業規則の該当部分、会社からの説明の内容、自分の雇用契約書を手元にそろえておくと話が早く進みます。
会社の人事担当者が労使協定を見直すときの要点
人事担当者として労使協定を結ぶ、あるいは見直す立場の人に向けて、確認しておきたい点を整理します。
厚生労働省は、育児・介護休業等に関する規則の規定例のページで、令和7年4月1日と10月1日の施行に対応した就業規則の規定例とあわせて、労使協定の例を公開しています。厚生労働省の育児・介護休業等に関する規則の規定例のページでは、詳細版のパンフレットの中に「育児・介護休業等に関する労使協定の例」が含まれており、Word版でも入手できます。
見直しのときに確認したいのは、次の点です。
・子の看護等休暇と介護休暇で、勤続6か月未満を除く定めが残っていないか ・令和7年10月から始まった柔軟な働き方の措置について、対象外とする人を定める必要があるか ・産後パパ育休の休業中の就業を認めるなら、その定めがあるか ・過半数代表者を適正な方法で選んでいるか ・協定の内容を就業規則にも反映し、労働者に周知しているか
協定で多くの人を外すことは、短期的には職場の運営を楽にするかもしれません。しかし、育児や介護を理由に人が辞めていく職場では、採用と教育にかかる負担がかえって大きくなります。外せるから外すのではなく、本当に外す必要がある範囲に絞ることが、長く働き続けてもらえる職場づくりにつながります。
協定の内容に迷ったときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に会社として相談することもできます。厚生労働省は、中小企業向けに、社会保険労務士などの専門家が両立支援の制度づくりについて無料で助言する事業も行っています。改正のたびに協定と就業規則の両方を見直す手間はかかりますが、年に1回、法改正の情報と照らし合わせて点検する日を決めておくと、古い定めが残り続けることを防げます。
独自データで見る、制度の外で働く人の両立
労使協定の議論は、会社に雇われている人の話です。業務委託で働くフリーランスには、育児介護休業法の休業や休暇の制度はありません。一方で、フリーランスの取引を守る法律では、一定期間以上続く業務委託について、発注する側が育児や介護と仕事の両立に配慮する決まりが設けられています。
運営者として長く在宅ワークの市場を見てきた立場から言えば、会社の制度の対象外になったことをきっかけに、働き方そのものを見直す人も少なくありません。入社1年未満で育児休業を取れなかった人が、在宅でできる業務委託の仕事に移り、子育ての時期に合わせて仕事量を調整しながら続けていく、という例はめずらしくありません。
在宅で進めやすい仕事としては、文章を書く仕事や開発の仕事が代表的です。書く仕事の収入の分布は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、開発職の収入水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場で確認できます。業務の文書を正確に書く力は、本業でも業務委託でも評価されやすく、ビジネス文書検定で基本を学べます。
業務委託で仕事を受けるときは、契約の内容をよく確かめることが大切です。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストでは、発注書や契約書で確認すべき項目を整理しています。また、生成AIの導入支援のように打ち合わせの時間を調整しやすい案件については、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で仕事の中身を紹介しています。
仲介の手数料がかからない直接取引なら、同じ依頼額でも受け手の手取りは厚くなります。会社の制度で守られる範囲と、自分で働き方を選べる範囲の両方を知っておくことが、育児や介護の時期を乗り切るための確かな備えになります。
よくある質問
Q. 労使協定がない会社でも、入社1年未満の人は育児休業を取れませんか?
労使協定がなければ取れます。継続雇用1年未満の人を育児休業の対象から外せるのは、会社と労働者の代表が労使協定を結んでいる場合に限られます。有期雇用の人も、令和4年4月から勤続1年以上の要件が撤廃されており、子が1歳6か月になるまでに契約が満了して更新されないことが明らかでなければ対象になります。
Q. 子の看護等休暇は入社6か月未満でも使えますか?
令和7年4月1日から使えるようになりました。改正前は労使協定で勤続6か月未満の人を対象外にできましたが、この仕組みは撤廃されました。現在、労使協定で外せるのは週の所定労働日数が2日以下の人だけです。古い協定に6か月未満を除く定めが残っていても、改正後は効力を持ちません。介護休暇も同じ扱いです。
Q. 労使協定で男性やパートをまとめて対象外にできますか?
できません。厚生労働省のパンフレットでは、法律と省令が示しているのは対象外にできる範囲の最大限度であり、それより広い範囲を外すことはできないとされ、男性をすべて対象外とする協定は結べないと明記されています。パートでも、週3日以上働き継続雇用が1年以上あれば、協定で育児休業の対象から外すことはできません。
Q. 会社の労使協定の内容はどうやって確かめればよいですか?
育児介護休業法の労使協定は労働基準監督署への届出の仕組みがないため、社内で確認します。まず就業規則の育児・介護休業規程を読み、人事部に協定の有無と内容を尋ねましょう。内容が法律の範囲を超えていると感じたら、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に無料で相談できます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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