内容証明書の書き方


この記事のポイント
- ✓報酬未払いや契約解除のケース別文例
- ✓電子内容証明との使い分けまで通しで解説します
- ✓書いてはいけない一文と
結論から書きます。内容証明書で迷うポイントは、文面の内容そのものよりも「書式のルール」と「何を書かないか」の2つに集中しています。文面は型どおりに埋めれば成立しますが、1行の字数を超えていれば郵便局の窓口で差し戻されますし、余計な一文を入れると後の交渉や裁判で自分の首を絞めます。
この記事では、まず内容証明が何を証明する制度なのかを確認したうえで、字数と行数のルール、文面の組み立て方、ケース別の文例、出し方と費用、そして書かないほうがよい表現までを通しで整理します。報酬の未払いや一方的な契約解除に直面して調べている人が、今日のうちに書き上げて明日窓口に持ち込める状態になることを目標にしています。
内容証明が証明するのは「内容」と「日付」だけ
最初に、この制度の限界をはっきりさせておきます。内容証明郵便が証明するのは、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰宛に差し出したか、この3点だけです。書かれている主張が正しいことは証明しません。相手が読んだことも、内容に納得したことも証明しません。
正直なところ、ここを誤解したまま送る人がかなり多い印象があります。内容証明を送れば相手が払ってくれる、という理解は違います。内容証明はあくまで「この日に、この内容で、たしかに請求した」という事実を第三者が記録に残す仕組みです。効果は大きく3つに整理できます。
1つ目は、証拠として残ること。裁判や支払督促に進んだとき、いつ催告したかが争点になる場面は多く、そこで決定的な材料になります。2つ目は、法律上の効果を発生させる意思表示の到達を確定できること。契約の解除、時効の完成を6か月猶予する催告、クーリングオフの通知など、相手に届いたことが要件になる行為で使います。3つ目は、心理的な効果です。書留の形式で届き、差出人の住所氏名が明記された文書は、通常のメールとは受け取られ方が違います。社内で担当者止まりだった案件が、上長や法務に上がるきっかけになることは珍しくありません。
逆に言えば、証拠としての価値を持たせる必要がない場面では、わざわざ内容証明にする意味は薄いです。単に督促を重ねたいだけなら、まずは配達記録の残るメールや書留で十分なこともあります。段階を踏まずにいきなり内容証明を送ると、関係が一段階固くなるという副作用もある。そこは目的とのバランスで判断してください。
内容証明が実際に使われる場面
書き方に入る前に、どういう場面で選ばれている道具なのかを押さえておくと、自分のケースに必要かどうかの判断がつきます。
最も多いのが、金銭の請求です。納品したのに報酬が支払われない、貸したお金が返ってこない、家賃が滞納されている。いずれも請求した日付が重要になる類型で、内容証明の出番になります。特に業務委託の報酬については、支払期日を過ぎた日から遅延損害金が発生するため、いつ請求したかが計算の起点として意味を持ちます。
次に多いのが、契約の解除や解約の通知です。契約を終わらせるという意思表示は、相手に到達してはじめて効力が生じます。メールやチャットで伝えた場合、後から「受け取っていない」「その担当者に権限はない」と言われる余地が残ります。解除の効力がいつ生じたかは、違約金や原状回復の範囲に直結するので、ここは形式を固めておく価値があります。
3つ目が、時効の進行を止めたい場合です。債権には消滅時効があり、一定期間行使しないと請求できなくなります。裁判外で請求することにより、時効の完成を6か月猶予できる仕組みがあり、その請求をしたことを証明する手段として内容証明が使われます。ただしこの猶予は一度きりで、猶予期間中に訴訟などの手続を取らなければ意味がありません。時効が迫っているなら、内容証明と並行して次の手続の準備を始めてください。
4つ目が、権利侵害への警告です。著作物の無断使用、商標の侵害、誹謗中傷の削除要求など、相手に行為をやめさせたい場面で使われます。この類型では、期限を切って削除を求め、応じない場合に法的措置を取る旨を伝える形が一般的です。
5つ目が、クーリングオフです。訪問販売や電話勧誘販売などで契約した場合の解除通知は、書面で行うことが求められており、期間内に発信したことを証明できる内容証明が確実です。期間が短いため、迷っている時間はありません。
自分のケースがこのどれにも当てはまらず、単に督促を重ねたいだけであれば、内容証明でなくても構いません。道具は目的に合わせて選ぶものです。
送る前に決める3つのこと
書き始める前に決めておくべきことが3つあります。ここが曖昧なまま書くと、文面がぼやけて効果が落ちます。
1つ目は目的です。お金を払ってほしいのか、契約を解除したいのか、権利の侵害をやめさせたいのか、時効を止めたいのか。目的によって文面の締め方がまったく変わります。特に契約解除の意思表示は、書き方を間違えると解除の効力が生じないことがあるため、目的が解除なのか催告なのかは明確にしてください。
2つ目は相手の正確な宛先です。法人であれば登記上の商号と本店所在地、そして代表者名を使います。屋号やサービス名で送ると、後から「その名義の法人は存在しない」という反論を受ける余地を残します。国税庁の法人番号公表サイトで商号と本店所在地を確認できます。個人が相手の場合は、住民票上の住所が分からなければ実際に郵便が届いている住所で構いませんが、返送されるリスクは上がります。
3つ目は期限です。「速やかに」「至急」といった曖昧な表現は使わず、具体的な日付を入れます。到達から1週間から2週間程度が一般的で、あまりに短いと不誠実な印象を与え、長すぎると緊張感がなくなります。そして、期限を過ぎた場合にどうするかを書くかどうかを決めます。法的措置に言及するかどうかは、実際にその手続を取る意思があるかどうかで判断してください。やる気がないのに書くと、期限が過ぎたあとに動けず、次の請求の重みが失われます。
未払いが長期化したときにどこまで費用がかかるのかを先に把握しておくと、期限後の選択肢を落ち着いて書けます。未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】では、着手金の相場と支払督促の進み方が整理されているので、内容証明を出す前に一度目を通しておくと判断が速くなります。
期限と時効を先に確認する
内容証明を書き始める前に、必ず確認しておきたいのが期限の問題です。ここを飛ばすと、せっかく出した通知が無意味になります。
まず債権の消滅時効です。原則として、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早いほうで時効が完成します。業務委託の報酬であれば、支払期日を知っているのが通常なので、支払期日の翌日から5年と考えておけば実務上は足ります。5年は長いように見えますが、請求を先延ばしにしているうちに過ぎてしまう金額の小さい案件は実際にあります。
時効が迫っている場合、内容証明による催告で完成を6か月猶予できます。ただし前述のとおり、この猶予の間に訴訟提起や支払督促といった手続を取らなければ、猶予が切れた時点で時効が完成します。猶予は時間を買う手段であって、解決する手段ではありません。
次に、契約書に定められた期限です。契約解除の通知期間、異議申立ての期間、検収の期限。契約書に書かれている期限は、法律の原則より短いことがあります。内容証明を書く前に、必ず契約書を読み返してください。期限が過ぎていれば、主張できる内容そのものが変わります。
もう一つ、クーリングオフのように法律が短い期間を定めているものがあります。訪問販売や電話勧誘販売は書面を受け取った日から8日、連鎖販売取引は20日といった具合です。この種の期間は、書面を発信した時点で効力が生じる発信主義が取られているため、期限の最終日に出しても間に合います。とはいえ窓口の受付時間があるので、ぎりぎりを狙うのは避けたほうが安全です。
期限の確認は、書き始める前に10分で終わります。この10分を惜しんで、時効完成後に請求してしまったという相談は実際に存在します。契約書と請求書と納品記録を並べて、日付を確認する。それだけです。
字数と行数のルールを先に押さえる
窓口で差し戻される原因のほとんどがここです。書式の制限は、縦書きと横書きで異なります。
縦書きの場合は、1行20字以内、1枚26行以内です。横書きの場合は3通りの選び方があり、1行20字以内かつ1枚26行以内、1行13字以内かつ1枚40行以内、1行26字以内かつ1枚20行以内、このいずれかに収めます。自分で作るなら、横書きで1行20字26行を選んでおくのが無難です。ワープロソフトの設定で文字数と行数を指定すれば、あとは本文を流し込むだけで済みます。
使える文字にも決まりがあります。仮名、漢字、算用数字、句読点、一般的に使われる記号、これらは問題ありません。英字は固有名詞に限って使えます。社名にアルファベットが入っている場合は固有名詞なので大丈夫ですが、本文中で意味のある単語として英字を使うのは避けてください。括弧は1個で1字として数えます。句読点も1字です。ここを数え忘れると1行が制限を超えます。
用紙はどんなものでも構いませんが、同じ文面を3通用意する必要があります。1通は相手に送る原本、1通は郵便局が保管する謄本、1通は差出人の手元に残る謄本です。コピーで問題ありません。2枚以上になる場合は、ページの綴じ目に契印を押します。訂正が必要になったときは、該当箇所を二重線で消して正しい文言を記入し、欄外にその行の文字数の増減を書いて押印します。窓口での訂正は手間がかかるので、事前に読み直して直しておくほうが早いです。
表題についても触れておきます。法律上の決まりはないため、通知書、請求書、催告書、どれを使っても構いません。ただし表題が内容と食い違っていると読み手が混乱するので、金銭の請求なら請求書または催告書、契約解除なら通知書、と素直に選ぶのが無難です。表題を付けずに本文から始めても差し支えはありません。
作成に使うソフトについても迷う人が多いところです。一般的なワープロソフトで、ページ設定から1行の文字数と1ページの行数を指定すれば、制限を守った文書が作れます。文字サイズは読みやすければ自由で、手書きでも構いません。手書きの場合は、書き損じたときの訂正が面倒なので、下書きをしてから清書してください。
最後に、差出人と受取人の住所氏名は必ず文書の中に記載します。封筒に書くだけでは足りません。これも忘れやすいポイントです。
文面は5つのブロックで組み立てる
内容証明の本文は、次の5つの順に並べると過不足なく収まります。
1つ目が、事実の特定です。いつ、誰と、どのような契約を結び、何を履行したのか。日付、契約名、金額、納品日を具体的に書きます。ここで曖昧さを残すと、相手に「どの案件のことか分からない」という逃げ道を与えます。
2つ目が、相手の不履行の指摘です。本来いつまでに何をすべきだったのに、それが行われていない。支払期日が到来しているのに入金がない、という書き方をします。感情は入れず、事実だけを並べます。
3つ目が、請求の内容です。いくらを、いつまでに、どこへ支払ってほしいのか。振込先の金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義まで書きます。相手が払う気になったときに、追加の連絡なしで実行できる状態にしておくのが実務です。
4つ目が、期限を過ぎた場合の対応です。法的措置を検討する旨を書く場合は、ここに入れます。具体的な手続名まで書くかどうかは目的次第です。
5つ目が、差出人と受取人の表示と日付です。冒頭に通知書といった表題を置き、末尾に作成日、差出人の住所氏名、受取人の住所氏名を記載します。押印は法律上の必須要件ではありませんが、慣例として押しておくほうが受け取られ方が違います。
文書の体裁そのものに自信がないという声もよく聞きます。ビジネス文書の構成や敬語の使い分けを体系的に整理したい場合は、ビジネス文書検定の出題範囲が参考になります。資格を取るかどうかは別として、通知文や請求文の型がそのまま出題されているので、書式の下敷きとして使えます。
ケース別の文面例
具体的な文言に落とし込みます。以下はいずれも骨格だけを示したもので、実際には自分の案件の事実で置き換えてください。
報酬の未払いを請求する場合。「私は、貴社との間で令和〇年〇月〇日に締結した業務委託契約に基づき、同年〇月〇日、成果物一式を納品いたしました。上記契約における報酬〇円の支払期日は同年〇月〇日でしたが、本書面作成日現在、お支払いをいただいておりません。つきましては、本書面到達後7日以内に、上記報酬〇円を下記口座にお振り込みくださいますよう請求いたします。」
契約を解除する場合。「貴社は、令和〇年〇月〇日締結の業務委託契約第〇条に定める〇〇の義務を履行されておりません。よって、本書面到達後7日以内に上記義務を履行されるよう催告いたします。期間内に履行がない場合は、あらためての通知なく本契約を解除いたします。」催告と解除を1通にまとめるこの書き方は、期間経過によって自動的に解除の効力が生じるため、実務でよく使われます。
著作物の無断使用をやめさせる場合。「貴社が運営するウェブサイトにおいて、私が著作権を有する〇〇が、私の許諾なく掲載されていることを確認いたしました。つきましては、本書面到達後7日以内に、当該掲載を削除されるよう請求いたします。」
一方的な契約解除に抗議する場合。「貴社は令和〇年〇月〇日付のメールにより、令和〇年〇月〇日締結の業務委託契約を即時解除する旨を通知されました。しかしながら、同契約第〇条は、解除には30日前の書面による予告を要する旨を定めております。よって上記解除は無効であり、私は同契約に基づく業務を継続する意思を有することをここに通知いたします。仮に貴社が業務の受領を拒否される場合は、同契約に定める報酬の支払いを請求いたします。」
4つの例に共通しているのは、事実、根拠となる条項、請求、期限、この順で並んでいることです。文章として美しく書く必要はありません。むしろ、装飾のない事務的な文章のほうが、受け取った側の社内で扱われやすくなります。
注意したいのは、金額や日付を書くときに伏せ字のまま送らないことです。当然ですが、テンプレートをそのまま印刷して出してしまう事故は実際に起きています。差し出す前に、〇が残っていないかを3通すべてで確認してください。
出し方と費用
内容証明は、どの郵便局でも出せるわけではありません。集配を行っている郵便局と、集配を行っていなくても内容証明の取扱いを認められている郵便局に限られます。近所の小さな郵便局では扱っていないことがあるので、事前に日本郵便のサイトで取扱局を確認してから行ってください。
窓口には、同じ文面の文書3通と、宛名を書いた封筒、それに印鑑を持っていきます。封筒に封をしてはいけません。窓口で中身と謄本を照合するためです。料金は現金でも切手でも支払えます。
費用の内訳は、通常の郵便料金に、一般書留の料金と内容証明の加算料金が乗る形です。
1通送付する場合の最低料金は合計1,070円です。内訳は以下のとおりです(2026年1月16日時点での内容)。 出典: orico.co.jp
この金額は、定形郵便の基本料金、一般書留の加算料金、内容証明の加算料金を合わせたものです。内容証明の加算料金は謄本1枚目までの金額で、2枚を超えると1枚ごとに加算されます。文面が長くなるほど費用が増えるので、この点でも簡潔に書くほうが有利です。
窓口に行く前の準備として、封筒の宛名は文書に書いた受取人の表示と一字一句そろえてください。文書では正式な商号を使い、封筒では通称を使う、といったずれがあると窓口で指摘されます。差出人の表示も同様です。
なお、同じ文面を複数の相手に送りたい場合は、相手ごとに3通ずつ必要になります。連帯保証人がいる場合や、法人と代表者個人の両方に送る場合がこれにあたります。費用も人数分かかるので、誰に送る必要があるのかを先に決めておいてください。
そして、ほぼ必ず付けるべきなのが配達証明です。内容証明だけでは「出したこと」は証明できても「届いたこと」は証明できません。配達証明を付けると、配達した日付を記載した葉書が差出人に届きます。到達日が争点になる場面は多いので、数百円の追加でこの証拠が手に入るなら付けない理由がありません。差出時に窓口で申し出るだけです。
電子内容証明という選択肢
郵便局の窓口に行く時間が取れない場合は、Web経由で差し出せる電子内容証明が使えます。24時間受け付けており、原稿はワープロソフトのファイルで作成して送信します。郵便局側で印刷、照合、封入までを行ってくれるため、3通用意する手間も、窓口で待つ時間も不要です。
ただし、書式のルールは窓口に持ち込む場合と異なります。用紙サイズ、余白、フォントの大きさ、1行の文字数、1枚の行数、総枚数に、それぞれ専用の制限があります。手元のテンプレートをそのまま送信すると規定外で受け付けられないので、案内されている書式設定を確認してから作成してください。料金は窓口で出す場合より高くなる傾向がありますが、往復の時間と3通印刷する手間を考えると、差額は十分に回収できる範囲です。
私自身、以前に権利関係の通知を出す必要が生じたとき、平日に郵便局へ行く時間が取れず、結局1週間以上出すのが遅れたことがあります。期限が絡む通知で1週間の遅れは致命的になり得ます。時間がないことが理由で出せないという状態を作らないために、電子内容証明の手順だけは先に確認しておくことをおすすめします。
書いてはいけないことと、返送されたときの対応
最後に、いちばん大事な部分です。内容証明は相手の手元にも同じ文面が残ります。つまり、自分が書いた言葉が、後の交渉や裁判でそのまま相手の材料になります。
内容証明郵便は、相手方の手元にも残りますから、記載内容に不備があると、あなたの会社が不利になりかねません。実際、ご自身で内容証明郵便を作成して送付し、その後裁判になってから弁護士にご依頼いただいたケースで、内容証明郵便に記載された一文が原因で敗訴に追い込まれる、という事案もあります。 出典: kotegawa-law.com
具体的に避けるべきものを挙げます。事実と異なる記載は当然ですが、自分に不利な事実の自白も危険です。「納品が多少遅れたことは認めますが」のような譲歩を書くと、相手の反論の起点になります。また、根拠のない断定も避けてください。「貴社は詐欺行為を行っている」といった表現は、名誉毀損や脅迫の問題に発展する余地があります。「支払わなければ取引先に事実を公表する」といった書き方も同様です。書くのは、事実と、請求と、期限。この3つに絞るのが安全です。
もう一つ、文面の長さにも注意が必要です。言いたいことをすべて詰め込むと、争点が増えます。争点が増えるということは、相手が反論できる箇所が増えるということです。実務では、請求の根拠を1本に絞り、それ以外の不満は書かないほうが結果が出ます。「あの案件でも迷惑をかけられた」といった過去の経緯を並べたくなる気持ちは分かりますが、今回請求したい1点と無関係であれば削ってください。
感情表現も削ります。「誠に遺憾であり」「信義に反する行為であり」といった評価の言葉は、法的な効果を何も生みません。生むのは、相手の感情的な反発だけです。淡々と事実を並べた文書のほうが、受け取った側の担当者は上長に相談しやすくなります。相手を動かしたいのであって、相手を打ち負かしたいわけではない。この区別がついているかどうかで、文面は変わります。
相手が受け取りを拒否した場合や、不在のまま保管期間が過ぎて返送された場合もあります。受け取り拒否は、それ自体が「相手が内容を認識できる状態に置かれた」と評価され、到達したものとして扱われる余地があります。返送された封筒は開封せずにそのまま保管してください。差出日と返送の事実が記録として残ります。そのうえで、相手の別の住所や勤務先に再送する、あるいは支払督促や訴訟の手続に進むという流れになります。
そもそも、内容証明を出す段階に至らないようにするのが最善です。発注書の記載項目が整っていれば、金額と期日をめぐる争いはほとんど起きません。確認すべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリストの形でまとまっています。執筆や編集の仕事で提示された単価が相場から外れていないかを確かめたいときは、著述家,記者,編集者の年収・単価相場が判断材料になります。
20年この市場を見てきた立場からの観察
在宅ワークと業務委託の市場を長く運営してきた立場から見ると、内容証明まで進む案件には共通点があります。契約時の書面が薄いのです。金額と納期しか決めていない、検収の基準が書かれていない、支払期日が「請求書受領後」としか書かれていない。この状態で揉めると、事実の特定にまず時間がかかり、結果として文面を作る難易度が上がります。
逆に、発注書と納品記録と入金記録の3点を案件ごとにそろえている人は、内容証明が必要になっても作成が速い。事実の特定に必要な情報がすでに手元に並んでいるからです。制度の知識よりも、この記録の習慣のほうが実務では効きます。
もう一つ、運営者として見てきた限りでは、中間に入る会社が増えるほど、こうした請求の相手が遠くなります。実際に成果物を使っている人と直接つながっている場合、支払いの遅れは大半が事務処理の問題で、一本連絡すれば解決します。間に何社も挟まると、誰の判断で止まっているのかが分からなくなり、そこではじめて内容証明という道具が必要になる。同じ予算でも、直接の関係を持てている受注者のほうが手取りが厚く、しかも揉めごとが少ない。この2つは別の話のようでいて、実は同じ構造から来ています。
もう一点、現場で感じるのは、内容証明を出したこと自体を後悔する人はほとんどいない、ということです。後悔されるのは、出すまでに時間がかかりすぎたケースのほうです。相手の資金繰りが悪化してから請求しても回収は難しくなりますし、時効が近づけば選択肢が減ります。関係が壊れることを恐れて半年待った結果、相手が事業を畳んでいたという話は珍しくありません。送るかどうか迷っている段階で、すでに関係は通常の取引ではなくなっています。
内容証明書の書き方そのものは、型を知ってしまえば1時間で書けます。難しいのは、出すかどうかの判断と、出したあとに実際に次の手続へ進む覚悟のほうです。期限を書いたら守る。その一貫性が、文面の巧拙よりも結果を左右します。
よくある質問
Q. 内容証明を送れば必ず支払ってもらえますか?
支払いを強制する効力はありません。内容証明が証明するのは、いつ、どのような内容の文書を誰から誰宛に差し出したかという事実だけです。ただし証拠として残るため、支払督促や訴訟に進んだときの材料になり、社内で案件が上長や法務に上がるきっかけにもなります。強制力は次の手続で得るものと考えてください。
Q. 内容証明の費用はいくらかかりますか?
1通あたりの最低料金はおよそ1,070円で、定形郵便の基本料金、一般書留の加算料金、内容証明の加算料金を合わせた金額です。謄本が2枚を超えると1枚ごとに加算されます。到達日を証明する配達証明を付けると数百円が上乗せされますが、到達日が争点になりやすいので付けることをおすすめします。
Q. 横書きで書くときの字数と行数の制限を教えてください?
横書きは3通りから選べます。1行20字以内かつ1枚26行以内、1行13字以内かつ1枚40行以内、1行26字以内かつ1枚20行以内のいずれかです。句読点や括弧も1字として数えます。英字は固有名詞に限って使えるため、社名以外でアルファベットを使わないよう注意してください。
Q. 相手が受け取りを拒否したらどうなりますか?
受け取り拒否は、相手が内容を認識できる状態に置かれたものとして、到達したと評価される余地があります。返送された封筒は開封せずそのまま保管してください。差出日と返送の事実が記録として残ります。そのうえで別の住所へ再送するか、支払督促や訴訟の手続に進むのが一般的な流れです。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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