電子定款はCD-Rで出すのか|オンライン申請との使い分け


この記事のポイント
- ✓電子定款とCD-Rの関係を整理します
- ✓公証役場で受け取るときと法務局へ提出するときでは求められる媒体が違い
- ✓オンライン申請なら媒体そのものが不要です
まず、安心してください。電子定款を作ったからといって、必ずCD-Rを買ってきて焼かなければならない、というわけではありません。CD-Rが必要になるのは特定の出し方を選んだときだけで、別の出し方を選べば1枚も使わずに会社は設立できます。
それなのに「電子定款 CD-R」で検索する人が絶えないのは、案内の書き方が場面ごとにばらばらだからです。ある解説は「CD-Rを持参してください」と書き、別の解説は「オンラインで受け取れます」と書く。どちらも嘘ではありません。公証役場で定款の認証を受ける場面と、法務局へ設立の登記を申請する場面は別の手続きで、それぞれに媒体の決まりがあるからです。
この記事では、CD-Rが出てくる2つの場面を分けて整理し、どの出し方を選べば媒体が不要になるのかを順に見ていきます。加えて、CD-Rが焼けないときの回避策、媒体の規格として法令で決まっている条件、費用の差まで具体的に並べます。
会社設立の手続きはどこまでオンラインで完結するのか
最初にマクロの話をしておきます。会社設立に関わる手続きは、ここ数年で電子化が一気に進みました。定款の認証はテレビ電話でできるようになり、登記の申請はインターネット経由で送れるようになり、法人設立に伴う税や社会保険の届出もまとめて出せる仕組みが整っています。
ただし、電子化されたのは「できるようになった」という意味であって、紙や媒体での手続きが廃止されたわけではありません。窓口に行って書面で出す方法も、電磁的記録を記録した媒体を持ち込む方法も、いまも並行して生きています。この3つが並んでいる状態が、案内の食い違いを生んでいます。
登記の申請を受け付けるのは、法務省が運営する登記・供託オンライン申請システムです。利用できる時間は平日の8時30分から23時00分まで、休日は8時30分から18時00分までで、12月29日から1月3日までの年末年始は止まります。なお、申請者情報を登録しても1年間利用がないと自動的に削除されるので、設立のときに登録して数年後に使おうとすると、登録からやり直しになります。
公証役場側の電子公証システムは、これとは別に取扱時間が決まっています。日本公証人連合会は、電子公証システムの事務取扱時間を月曜日から金曜日の8時30分から17時00分までとしており、17時00分でシステムが止まるため終業間際の申請は当日中に処理できない場合があると案内しています。登記の側は23時まで開いていても、公証役場の側は夕方で閉まる。この時間差を知らずに夜に作業を始めると、認証が翌営業日に回ります。
手続きの順番は変わりません。定款を作り、公証人の認証を受け、出資金を払い込み、法務局へ設立の登記を申請する。この流れのうち、CD-Rが顔を出すのは2か所目と4か所目です。
CD-Rが出てくるのは公証役場と法務局の2か所
ここが混乱の元なので、はっきり分けます。
1か所目は、公証役場で認証済みの電子定款を受け取るときです。電子データを受け取る以上、何かに入れて持ち帰る必要があります。そのときの入れ物として媒体が出てきます。
2か所目は、法務局へ設立の登記を申請するときです。申請書を紙で出す場合、添付する定款は電子データなので、これも何かに入れて提出することになります。
つまり、CD-Rは定款を作るために必要なのではなく、データを運ぶために必要になるだけです。運ばなくて済む方法を選べば、CD-Rは1枚も要りません。
そして実際、運ばなくて済む方法が両方の場面に用意されています。公証役場側はテレビ電話を使った認証、法務局側はオンライン申請です。この2つを組み合わせると、家から一歩も出ずに、媒体を1枚も使わずに設立が終わります。
逆に言えば、CD-Rが必要になるのは「公証役場に出向いて受け取る」か「法務局へ書面で申請する」かのどちらかを選んだときだけです。どちらを選ぶかは自分で決められます。
公証役場で受け取るときの媒体
まず公証役場側を見ます。日本公証人連合会は、テレビ電話を利用しない場合に持参するものとして、媒体の種類まで具体的に挙げています。
(ア) 認証した電子文書のデータを保存するための電子媒体(フロッピーディスクもしくはCD-R、CD-RW、DVD-R または USB メモリ。なお、未使用のものか、ウイルス感染等がないことを必ず確認してください。) 出典: koshonin.gr.jp
ここで押さえてほしいのは、公証役場に持ち込む媒体にはUSBメモリも含まれている点です。光学ドライブを持っていないパソコンでも、USBメモリなら用意できます。CD-Rでなければ受け取れない、という決まりではありません。
条件として付いているのは、未使用のものであること、ウイルス感染がないことを確認することの2点です。中古のUSBメモリに他のデータが入ったまま持ち込むのは避けてください。新品を1本買っておくのが確実です。
テレビ電話を利用する場合は、この持参そのものが不要になります。認証済みの電子定款は登記・供託オンライン申請システムを介して送られてきます。あわせて、申告受理および認証証明書が返信用のレターパックで届きます。嘱託人から希望があれば、あらかじめ郵送した電子媒体に認証済みの電子文書を格納して返送してもらうことも可能です。
テレビ電話を使うかどうかは、事前の打合せの段階で決めます。日本公証人連合会は、電子公証を利用するときは必ず事前に公証役場へ電話するなどして担当者と打合せをするよう求めています。特に定款認証については、内容に不備があると設立登記ができなくなるおそれがあるため、申請前に公証人の事前審査を受けるよう案内しています。一度電子署名をしたPDFは字句の訂正ができず、直すには元の文書を修正して署名をやり直し、送り直すことになります。手戻りの重さを考えると、この事前打合せは省いてはいけない工程です。
法務局へ出すときの媒体は光ディスクに限られる
次が法務局側です。ここが、多くの解説で「CD-Rが必要」と書かれている本当の理由にあたります。
設立の登記を書面で申請する場合、電子定款は申請書に添付する電磁的記録として提出します。この媒体の条件は商業登記規則で決まっていて、公証役場のように選択肢が広くありません。
商業登記規則第36条第1項は、申請書に添付すべき電磁的記録について、同規則第33条の6第4項第1号に該当する構造の電磁的記録媒体でなければならないと定めています。そして同号が指しているのは、日本産業規格X0606またはX0610に適合する120ミリメートルの光ディスクです。
つまり、法務局へ書面で出すときはUSBメモリが使えません。公証役場ではUSBメモリで受け取れたのに、法務局では受け付けてもらえない。この非対称が「結局CD-Rが要るのか」という混乱を生んでいます。120ミリメートルの光ディスクという指定は、実務上はCD-RまたはDVD-Rを指します。
もう1つ、見落とされがちな決まりがあります。同規則第35条第3項の規定が第36条第6項で準用されていて、電磁的記録媒体には申請人の氏名、法人の場合は商号または名称を記載するか、記載した書面を貼り付けなければなりません。ディスクの盤面に油性ペンで会社名と代表者名を書くか、ラベルを貼るということです。焼いただけの真っさらなディスクを持って行くと、その場で書くことになります。
電子署名の規格にも条件があります。同規則第36条第3項は、電子署名の方式として日本産業規格X5731-8の附属書Dに適合する方法で、鍵の長さが2048ビット、指定公証人が講ずる場合は2048ビットまたは3072ビットであるものと定めています。市販の電子署名ソフトとマイナンバーカードの署名用電子証明書を使えばこの条件は満たされますが、自作の署名や古い規格のものは通りません。
オンライン申請なら媒体そのものが要らない
ここまでを踏まえると、媒体の話から解放される道は1つです。登記の申請をオンラインで行うことです。
オンライン申請では、定款を含む添付書面の情報をインターネット経由で送ります。光ディスクに焼く工程も、盤面に社名を書く工程も、法務局へ持ち込む工程もなくなります。日本公証人連合会も、法務局に認証済みの定款を提出して会社登記をする場合は電子文書の形で受け付けてもらえると案内しています。
オンライン申請には登記・供託オンライン申請システムの申請者情報登録と、申請用総合ソフトのダウンロードが必要です。Webブラウザから使える「かんたん登記・供託申請」は一部の手続きに限られるため、設立の登記では申請用総合ソフトを使うことになります。
注意点を1つ挙げておきます。日本公証人連合会は、近時、銀行等の金融機関では紙ベースの定款を求める運用もなされているとして、謄本を請求する場合は必ず書面で交付を受けるよう案内しています。登記はデータで通っても、法人口座の開設では紙の定款を求められることがある、という意味です。電子定款で設立するときも、同一の情報の提供を書面で1部もらっておくと、あとで慌てずに済みます。
合同会社なら公証役場の場面が丸ごと消える
ここまでは株式会社を前提に書いてきました。合同会社を選ぶ場合、話が1段階シンプルになります。
会社法は、公証人の認証を必要とする定款を限定しています。日本公証人連合会は、いわゆる持分会社、つまり合名会社、合資会社、合同会社の定款については公証人の認証を必要としないと明示しています。株式会社の定款に認証が求められるのは、経営と責任が分離されて不特定多数の者が関わる設計になっているため、設立後の紛争予防や不正防止の必要性が特に高いからだと説明されています。
認証が不要ということは、公証役場に行く場面そのものがなくなるということです。前半で整理した2か所のうち、1か所目が消えます。残るのは法務局への提出だけです。
ただし、電子定款にするかどうかの判断は合同会社でも同じように発生します。紙で作れば印紙税4万円がかかり、電子で作ればかかりません。そして書面で登記を申請するなら、電子定款は120ミリメートルの光ディスクに記録して添付します。公証役場を通らない分だけ、媒体の話は法務局側の1か所に集約されます。
費用の全体像も変わります。合同会社の設立登記の登録免許税は資本金の額の1000分の7で、下限が6万円です。認証手数料はゼロ、電子定款なら印紙税もゼロなので、法定費用は6万円だけという組み立てが可能です。株式会社の下限15万円と比べると、入口の差は9万円以上になります。
一人で始めるのか、将来的に出資を受けるのか。どちらの器を選ぶかは費用だけで決める話ではありませんが、手続きの重さという意味では合同会社のほうが明確に軽い。媒体の準備で迷っているなら、そもそもどちらの会社形態を選ぶのかから考え直す価値があります。
3つの出し方を並べて比べる
ここまでの内容を、選べる3つの道として整理します。
| 出し方 | 公証役場での受け取り | 法務局への提出 | 必要な媒体 |
|---|---|---|---|
| すべてオンライン | テレビ電話認証でデータ受領 | オンライン申請 | なし |
| 認証は出向き、登記は書面 | 電子媒体を持参して受け取る | 光ディスクを添付 | USBメモリまたは光ディスク、加えて光ディスク |
| 紙の定款 | 紙の原本を受け取る | 紙の謄本を添付 | なし(収入印紙4万円が必要) |
3つ目の紙の定款を選ぶと媒体は要りませんが、印紙税がかかります。国税庁の印紙税額の一覧表では、定款は第6号文書として1通につき4万円と定められています。ただし非課税文書の扱いがあり、株式会社または相互会社の定款のうち公証人法の規定により公証人の保存するもの以外のものは非課税です。つまり課税されるのは公証人が保存する原本1通だけで、会社が持ち帰る分や謄本には印紙を貼りません。それでも4万円は4万円です。
電子定款にすればこの4万円がかかりません。媒体の手間と4万円を天秤にかければ、答えははっきりしています。
事前の打合せで確かめておく5つのこと
日本公証人連合会は電子公証の利用にあたって事前の打合せを求めていますが、何を聞けばいいのかまでは書かれていません。実務上ここを確かめておくと手戻りが減る、という項目を挙げておきます。
1つ目は、テレビ電話で認証を受けられるかどうかです。受けられるなら公証役場に行く必要がなくなります。あわせて、認証済みデータの受け取り方と、返信用のレターパックをどう送ればよいかを確認します。
2つ目は、定款の内容の事前審査をいつまでに出せばよいかです。署名前のPDFや原稿の段階で見てもらえば、字句の直しが署名のやり直しにつながりません。署名済みのファイルは訂正ができず、直すには元の文書を修正して署名からやり直して送り直すことになります。
3つ目は、手数料の支払い方法です。日本公証人連合会は、事前審査の案内とあわせて手数料の支払方法についても案内すると記しており、手数料の予納が必要になる場合があるとしています。当日に現金を持参するのか、事前に振り込むのかは役場によって運用が違います。
4つ目は、謄本を何通もらうかです。登記申請用に1通は必要ですが、金融機関に出す分を考えると書面でもう1部もらっておくと後が楽です。謄本の手数料は1枚250円なので、1部増やしても大きな負担にはなりません。
5つ目は、実質的支配者となるべき者の申告の書き方です。一人で設立する場合は自分自身が該当しますが、出資の構成によっては誰を書くかの判断が必要になります。ここは会社ごとに違うので、迷ったら確定させてから申請してください。
この5つを最初の電話で押さえておくと、そのあとのやり取りが1往復か2往復で済みます。
CD-Rが焼けないときにどうするか
ここからは実務の話です。光ディスクに焼く必要が出たとき、現代のパソコンでは最初の一歩でつまずきます。
いまのノートパソコンには光学ドライブが付いていません。デスクトップでも省かれている機種が増えました。手元の機械でディスクを焼けるかどうかは、買った年と機種によります。ドライブがない場合の選択肢は3つです。
1つ目は、外付けの光学ドライブを買うことです。USB接続のものが家電量販店や通販で手に入ります。会社設立のためだけに買うのは無駄に感じるかもしれませんが、書面申請を選ぶなら必要な出費です。
2つ目は、そもそも光ディスクが要らない道を選ぶことです。オンライン申請にすれば、この問題は消えます。設立の登記をオンラインで出すには申請用総合ソフトの操作を覚える必要がありますが、ドライブを買いに行く時間と比べて極端に重いわけではありません。
3つ目は、書類の作成と申請を専門家に依頼することです。司法書士に登記を依頼すれば、媒体の準備も含めて向こうで処理します。報酬はかかりますが、目的や商号の設計まで相談できる点を含めて判断してください。
焼く場合の注意も挙げておきます。追記可能な形式ではなく、書き込みを終えた状態にしてください。パソコンによっては、書き込んだ直後は自分の機械でしか読めない状態になることがあります。焼いたあとに一度取り出して入れ直し、別のパソコンでも中身が見えるかを確認してから持ち込むと安全です。ファイルは認証済みの定款そのものだけを入れ、関係のないデータを混ぜないでください。
なお、ここでひとつ現場の話をすると、設立の準備を進める人がいちばん時間を取られるのは、この媒体の準備そのものではありません。電子署名の環境を整える段階です。署名用のソフトを入れ、カードリーダーをつなぎ、マイナンバーカードの署名用電子証明書の暗証番号を思い出す。この3つのどれかでつまずいて半日溶ける、というのがよくある流れです。設立の期日から逆算するなら、署名の環境は定款の文面を書き始める前に一度試しておくことをすすめます。
電子定款のファイルそのものにも条件がある
媒体の話に気を取られがちですが、中に入れるファイルにも条件があります。日本公証人連合会が示している条件は次のとおりです。
認証の対象となる電子文書はPDF形式に限られます。ファイルの大きさは10メガバイト以下です。ファイル名は全角の場合15文字以内、半角の場合31文字以内で、使える文字は全角と半角の英数字および各種記号、カタカナ、ひらがな、日本産業規格の第1水準と第2水準の漢字に限られます。
文字数の制限は見落としやすい箇所です。「株式会社○○○○定款(最終版)20260918.pdf」のような長いファイル名を付けると、それだけで弾かれます。短く、記号を詰め込まない名前にしてください。
PDFに署名を付けるソフトにも指定があります。日本公証人連合会は、PDF署名にはアドビ株式会社の市販ソフトウェアやその他のソフトウェアを使うよう案内し、登記・供託オンライン申請システムからPDF署名プラグインを入れる必要がある場合があること、電子証明書を読み取るためにカードリーダーが必要になることを示しています。
もう1つ、株式会社、一般社団法人および一般財団法人については、嘱託人の氏名のほかに実質的支配者となるべき者の氏名と読みを入力しなければなりません。これは平成30年11月30日から始まった取り扱いです。一人で設立する会社なら自分自身が該当しますが、入力欄があることを知らないと申請の途中で手が止まります。
電子公証を扱えるのは、法務大臣に指定された指定公証人だけです。申請にあたっては公証人を指名する必要があるので、事前の打合せで誰に依頼するかを決めておきます。
差し戻しの原因になりやすい箇所
媒体の準備よりも、実際に時間を奪われるのは内容の不備です。よくある差し戻しの原因を挙げておきます。
まず、管轄の間違いです。定款の認証は、会社の本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人でなければできません。日本公証人連合会は、管轄区域外の公証人がした定款の認証は無効になるとして、必ず本店の所在地の公証役場で認証を受けるよう注意を促しています。近い役場、空いている役場を選ぶ、という発想は通りません。
次に、発起人の住所と氏名の書き方です。印鑑登録証明書の記載と1文字でも違うと直しになります。番地の表記が「1-2-3」か「一丁目2番3号」かといった違いでも止まります。印鑑登録証明書は発行後3か月以内のものに限られるので、取得の時期にも注意してください。
3つ目は、資本金の書き方です。定款に資本金の額等が記載されていない場合は、設立に際して出資される財産の価額が基準になります。ここで「設立に際して出資される財産の最低額」という書き方をしていると、手数料の区分では上の2つのいずれにも当たらず5万円の扱いになります。100万円未満にして手数料を抑えるつもりだったのに、書き方のせいで5万円になるということが起こり得ます。
4つ目は、目的の書き方です。許認可が必要な事業を予定しているなら、許可の窓口が読める文言になっているかを先に確かめてください。定款が通っても、許可の申請の段階で目的の追加を求められると、定款変更と変更登記をやり直すことになります。
5つ目は、電子署名の不備です。署名の規格が条件を満たしていない、署名した人と委任状の内容が合っていない、といった理由で止まります。定款作成代理人が署名する場合は、発起人から代理人への委任状の扱いが別途必要になるため、誰が署名するのかを最初に決めておいてください。
どれも、媒体を買いに行くより先に潰せる項目です。
費用はどう変わるのか
媒体の選択と費用の関係を整理します。
定款の認証手数料は、公証人手数料令で決まっています。資本金の額等が100万円未満の場合は3万円、100万円以上300万円未満の場合は4万円、それ以外は5万円です。さらに、資本金の額等が100万円未満で、発起人の全員が自然人かつ3人以下であること、定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載があること、定款に取締役会を置く旨の記載がないことのいずれにも該当する場合は1万5,000円になります。
登記申請用の謄本を請求する手数料は1枚につき250円で、おおむね8枚で2,000円ほどです。設立登記の登録免許税は、資本金の額の1000分の7か、それが15万円に満たないときは15万円です。合同会社の場合は同じ1000分の7で、下限が6万円になります。
この並びに、紙の定款なら印紙税4万円が加わります。電子定款なら加わりません。媒体の有無で変わるのは、光ディスクの実費と外付けドライブの代金だけで、手数料そのものは変わりません。
整理すると、費用を左右するのは紙か電子かであって、CD-Rを使うかどうかではありません。CD-Rの話は費用ではなく手間の話です。ここを分けて考えると、選択が楽になります。
認証のあとに手元に残るもの
媒体の話とあわせて、認証が終わったときに何が手元に残るのかも整理しておきます。ここが分かっていないと、登記の申請の段階で「これで足りているのか」が判断できません。
紙の定款の場合は、定款の原本を2通提出します。公証人が認証したうえで、1通は役場の保存用原本として保存され、もう1通が会社保存用原本として返ってきます。登記申請には認証を受けた謄本が1通必要になるので、実務では謄本の分を含めて3通を提出することになります。
電子定款でテレビ電話を使わない場合は、持参した電子媒体に認証済みの電子定款のデータが格納されて交付されます。あわせて、申告受理および認証証明書が交付され、請求すれば同一の情報の提供の書面も受け取れます。
テレビ電話を使った場合は、認証済みの電子定款が登記・供託オンライン申請システムを介して送信され、申告受理および認証証明書は返信用のレターパックで届きます。同一の情報の提供の書面も、請求すればこのレターパックに同封されます。
この「同一の情報の提供」というのが、電子データと同じ内容であることを証明した書面のことです。手数料は700円で、書面による交付の場合は1枚につき20円が加算されます。金融機関に紙の定款を求められたときに出すのがこの書面です。電子で設立したのに紙を求められて困るケースは、これを取っておけば防げます。
なお、認証を受けた定款は公証役場で20年間保存されます。嘱託人、その承継人または利害関係人であれば、認証をした公証役場で謄本の請求や閲覧の請求ができます。手数料は謄本が1枚につき250円、閲覧が1回200円です。会社の側で原本をなくしても、設立時の定款は取り直せるということです。ただし取り直せるのは設立時の内容までで、そのあとの変更は反映されていません。
手続きの形式を自分で選べるようになる価値
ここから先は、会社を作ったあとの話をします。
設立の手続きを一度自分で通すと、役所の書類の読み方が変わります。どこに規格が書いてあるのか、どの言葉が条件でどの言葉が例示なのか、当たりが付くようになる。この感覚は、そのまま仕事の書類にも効きます。
運営者として在宅とフリーランスの市場を20年見てきた立場から言えば、長く仕事が続く人ほど、成果物そのものより書類のやり取りでつまずかない人です。見積書の形式、検収の条件、支払いのサイト。こうした部分で相手に手間をかけさせない人には、次の仕事が回ってきます。設立の書類を自分で通した経験は、その基礎体力になります。書類を扱う力そのものを底上げしたいなら、ビジネス文書検定の学習範囲が実務にそのまま重なります。技術系で受注の幅を広げたいなら、CCNA(シスコ技術者認定)のような認定が発注側の判断材料になります。
法人になると、取引の形も変わります。一定の規模以上の発注元は、継続的な業務委託の相手を法人に限っていることがあります。特に開発の規模が大きい案件ではこの傾向が強く、アプリケーション開発のお仕事のような分野では契約の相手方に法人を求められる割合が上がります。近年はAIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事でも同じ動きが出ています。
判断の足場として、自分の職種の単価の水準を知っておくと迷いが減ります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場では公的な統計をもとにした分布を確認できますし、文章を扱う仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が目安になります。
もう1つ、額面と手取りの差にも目を向けてください。仲介を挟む取引では、報酬から手数料が引かれます。法人を持つと固定費が発生するので、同じ売上でも手元に残る額の差が経営に直結します。運営者として見てきた限りでは、長く続いている人ほど早い段階で直接つながる取引の割合を増やしています。手数料0%で直接つながる仕組みなら、同じ予算で発注側はより多く頼めて、受け手は手取りが厚くなる。この構造は、法人という器を持ったあとほど効いてきます。
契約書のやり取りも増えます。発注書と契約書に入れるべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにまとめてあります。報酬が支払われないときの進め方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】にあります。決算まわりを外部に頼む選択肢を検討するなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】にこの分野の働き方がまとまっています。
最後に、この記事の要点をもう一度だけ具体的に置いておきます。CD-Rが要るかどうかは、自分がどの道を選ぶかで決まります。公証役場に出向くなら媒体が要り、テレビ電話なら要りません。法務局へ書面で出すなら120ミリメートルの光ディスクが要り、オンライン申請なら要りません。判断の前に、どちらの手続きの話をしているのかを確かめてください。それだけで、検索結果に並ぶ食い違った案内は整理できます。
よくある質問
Q. 電子定款を作ったら必ずCD-Rが必要ですか?
必要とは限りません。公証役場での認証をテレビ電話で受け、設立の登記をオンラインで申請すれば、媒体は1枚も使いません。CD-Rが必要になるのは、公証役場に出向いてデータを受け取る場合と、法務局へ書面で登記を申請する場合です。どちらを選ぶかは自分で決められます。
Q. 法務局にUSBメモリで提出できますか?
できません。商業登記規則で、申請書に添付する電磁的記録は日本産業規格X0606またはX0610に適合する120ミリメートルの光ディスクと定められています。公証役場ではUSBメモリでの受け取りが認められていますが、法務局への書面申請では使えません。この違いが混乱の原因になっています。
Q. 電子定款にすると費用はいくら変わりますか?
紙の定款に必要な収入印紙4万円がかかりません。認証手数料は資本金100万円未満で3万円、一定の要件を満たす場合は1万5,000円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以外で5万円です。謄本代は1枚250円で8枚程度が目安です。登録免許税は株式会社で最低15万円です。
Q. パソコンに光学ドライブがない場合はどうすればよいですか?
外付けの光学ドライブを用意するか、そもそも媒体が不要なオンライン申請を選ぶかの二択です。設立の登記をオンラインで出すには登記・供託オンライン申請システムの申請者情報登録と申請用総合ソフトが必要になりますが、ドライブを買い足す必要はなくなります。司法書士に依頼する方法もあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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