行政書士の資格を取ると給料はどう変わるか


この記事のポイント
- ✓行政書士の給料は勤務型で200万円から600万円
- ✓開業型は100万円から1,000万円超まで振れます
- ✓データと構造で整理しました
行政書士の給料を調べると、200万円と1,000万円が同じ検索結果に並びます。どちらも嘘ではありません。行政書士は「雇われるか、自分で売るか」で収入の決まり方が別物になる資格だからです。この記事では、その2つの世界の数字を分けて示し、どこで差が付くのかを構造で説明します。曖昧な期待値を持ったまま勉強を始めると、時間の使い方を間違えます。先に現実の数字を置きます。
行政書士の給料は2つの世界に分かれている
最初に全体の地図を描きます。行政書士の収入は、勤務型と開業型で別のロジックで決まります。
勤務型は、行政書士事務所や司法書士法人、企業の法務部や総務部に雇われて働く形です。この場合の年収は200万円から600万円の帯に収まります。給与なので毎月決まった額が入り、社会保険も会社が半分負担します。安定している代わりに、上限が見えています。事務所の規模と、自分が持っている担当業務の幅で決まる世界です。
開業型は、自分で事務所を開いて依頼を受ける形です。年収は100万円から1,000万円超まで振れます。上限がないと言えば聞こえがいいですが、下限もありません。売上から事務所の経費、会費、交通費、広告費を引いた残りが手取りです。1年目で年収100万円前後になる人が現実にいます。
この2つを混ぜて「行政書士の平均年収は○○万円」と語る記事が多いので、数字が信用できなくなっています。平均を出しても意味がない分布だからです。開業型は上に長く裾を引いた形で、中央値と平均が大きくずれます。皆さんが知りたいのは平均ではなく、自分がどちらの世界に行くのか、その世界の中で何をすればどの位置に立てるのかでしょう。
もう1つ、先に言っておくべきことがあります。行政書士は「転職で有利になる資格」としての力が弱い資格です。一般企業の求人票で「行政書士資格必須」と書かれているものは、ほとんどありません。簿記や社会保険労務士のように、企業の中に対応するポジションが用意されていないからです。これは資格の価値が低いという話ではなく、この資格が独立開業を前提に設計されているという話です。試験の出題範囲や合格率の推移、独学で届くのかどうかを確認したい皆さんには、行政書士の資格ガイドで全体像を先に押さえておくことをおすすめします。
勤務行政書士の給料の実態
まず勤務型の数字を詰めます。資格講座を運営している事業者が公開している目安を引きます。
企業や行政書士事務所などに雇用されて働く行政書士です。この場合の年収は200万~600万円ほどで、雇用形態や企業の規模によって異なります。スキルや経験も年収に影響するため、初年度の年収はさほど高くありません。多くの場合、年収200万~300万円ほどからのスタートとなります。 収入が安定しているため、行政書士になりたての人でも働きやすいことがメリットです。 出典: u-can.co.jp
初年度200万円から300万円という数字を見て、低いと感じる皆さんが多いはずです。ただしこれは行政書士に限った話ではなく、士業の補助者として入る場合の共通の水準です。資格を取った直後の人は、まだ売上を作れないからです。事務所から見れば、育成期間の人件費になります。
ここで押さえておきたいのは、勤務型の給料が上がる条件です。3つあります。
1つ目は、単独で受任から納品まで回せるようになることです。依頼者と話して必要書類を洗い出し、役所と折衝し、申請を通すまでを1人で完結できるか。ここが分かれ目で、できるようになると事務所の売上に直接貢献する人になります。
2つ目は、特定の許認可に深く入ることです。建設業許可、産業廃棄物処理業の許可、宅建業免許、運送業の許可。どれか1つで「この分野なら任せられる」と言われる位置に立つと、給与テーブルの上のほうに動きます。広く浅くやっている人より、狭く深い人のほうが評価されます。
3つ目は、営業ができることです。士業の事務所で給料が一段跳ねるのは、自分で顧客を連れてこられる人です。これは資格の話ではなく、事務所の経営の話です。
勤務型で600万円に届くのは、大きめの事務所で管理する立場に付いた人か、企業の法務部門で他の業務と兼務しながら経験を積んだ人です。行政書士の資格単体で600万円の求人が転がっているわけではない、という点は正直に書いておきます。
開業した場合の売上と手取りの構造
次に開業型です。ここは期待と現実の差がもっとも大きい領域なので、数字を分解します。
開業型の年収は、売上から経費を引いた額です。まず経費に何がかかるかを見てください。行政書士会への入会金が地域によって20万円前後、登録免許税が3万円、月々の会費が6,000円から8,000円程度。ここまでが資格を維持するための固定費です。加えて、事務所の家賃、電話、業務ソフト、職印や封筒などの実費、ホームページの制作と維持、名刺と印刷物。自宅を事務所にすれば家賃は抑えられますが、事務所として認められる要件を満たす必要があります。
初年度の売上が立たない理由は単純です。行政書士は待っていても依頼が来ません。依頼者は困ったときにインターネットで検索するか、税理士や不動産業者から紹介されて来ます。開業直後の人には、検索順位も紹介の経路もありません。
先ほどと同じ資料には、独立当初の現実がはっきり書かれています。
行政書士は働き方によって、年収の差が激しくなります。どれくらい案件を獲得できるかが重要なため、営業のしかたにも工夫が必要です。人脈を広げるためのコミュニケーション能力や、リピート客を獲得するためのノウハウも求められますので、独立・開業を目指す場合であっても、まずは、企業や事務所などに就職して経験を積むことをおすすめします。 独立当初であれば、年収が100万円前後となるケースもあります。また、請け負う業務によっても年収は変わってきます。それでも、案件を獲得できればゼロになることはないでしょう。 出典: u-can.co.jp
年収100万円前後という数字を、脅しとして読まないでください。これは「営業の仕組みを作る前の状態」の数字です。逆に言えば、営業の仕組みを持っている人はこの段階を飛ばせます。すでに士業や不動産業、建設業に人脈がある人、あるいは検索で見つけてもらう導線を作れる人は、1年目から数百万円の売上を立てます。
売上を作る経路は3つに整理できます。1つ目は紹介です。税理士、司法書士、不動産業者、建設業の同業者から流れてくる依頼。2つ目は検索です。「建設業許可 東京」のような具体的な語で自分のページが上位に出ること。3つ目は既存の顧客からの反復です。建設業許可は5年ごとに更新があり、決算変更届は毎年あります。1社取ると継続的な仕事になります。
この3つのうち、開業1年目に手を付けやすいのは3つ目に繋がる2つ目です。広告を出すより、自分が扱う許認可について具体的に書いたページを作るほうが、費用対効果が良い。私はアパレルのEC運営を支援する仕事をしていますが、同じことが起きます。ブランドの認知がゼロの状態で広告を打っても売れません。まず「この商品を探している人が打つ検索語」で見つかる状態を作る。行政書士の集客も構造は同じです。
業務別に見る単価と稼ぎ方
行政書士の仕事は幅が広く、どの業務を選ぶかで収入が変わります。単価の相場を業務別に並べます。
建設業許可の新規申請は、報酬の相場が12万円から20万円です。更新が5万円から10万円、決算変更届が3万円から5万円。1社を取ると5年間で複数回の仕事が発生するので、積み上がる業務です。行政書士の主要な収入源になっている分野で、参入者も多い。
産業廃棄物処理業の許可は15万円から30万円。手続きが重く、講習の受講や施設の要件確認が絡むため、単価が高く設定されています。対応できる人が限られるので、狭く深く入る対象として有力です。
運送業の許可は、一般貨物自動車運送事業の新規で30万円から50万円。要件が細かく、書類も多い。参入障壁が高いぶん単価も高い分野です。
法人設立の手続きは、定款作成と電子認証を含めて5万円から10万円。ただし登記そのものは行政書士の業務ではないので、司法書士との連携が前提になります。単価は低めですが、設立した会社が後に許認可や契約書の依頼をくれるので、入口として使われます。
相続と遺言の関連は、遺産分割協議書の作成で5万円から15万円、遺言書の作成支援で7万円から15万円。相続人の調査や戸籍の収集を含めると幅が広がります。高齢化で需要が伸びている分野ですが、他士業と競合します。
在留資格の申請取次は、1件8万円から15万円。外国人材の受け入れが増えているので、この分野は将来性という観点で注目されています。ただし入管の運用が頻繁に変わるため、常に情報を追い続ける負荷があります。
契約書の作成とチェックは、1通2万円から10万円。継続的な顧問契約に発展しやすい業務です。
古物商許可は3万円から5万円。単価は低いですが、件数が多く、短時間で終わります。私は中古のブランド品を扱うEC事業者の立ち上げを手伝ったことがありますが、そのとき初めて古物商許可の実務を知りました。準備する書類は多くないのに、要件を1つ見落とすと差し戻される。専門家に頼む理由がここにあると実感しました。単価が低い業務でも、依頼者にとっては「自分でやると2週間かかる」ものなので、価値があります。
稼ぎ方のコツは、単価の高い業務を1つと、件数が出る業務を1つ持つことです。高単価だけを狙うと依頼の間隔が空いて資金繰りが苦しくなり、低単価だけだと時間が売り切れます。
年収1,000万円に届く人と100万円で止まる人の差
同じ資格で10倍の差が付く理由を、構造として説明します。
100万円で止まる人の特徴は明確です。1つ目は、扱う業務を絞っていないこと。ホームページに「相続、許認可、契約書、内容証明、幅広く対応します」と書いてある事務所は、検索で誰にも見つかりません。2つ目は、待ちの姿勢であること。行政書士会の名簿に載っているだけでは依頼は来ません。3つ目は、単価を下げて勝負すること。安さで選ばれた依頼者は、次も安いところに行きます。
1,000万円に届く人は、逆のことをしています。業務を1つか2つに絞り、その分野で検索から見つかる状態を作り、リピートと紹介が循環する仕組みを持っています。さらに1,000万円を超える層には、共通してもう1つの要素があります。自分1人で作業していないことです。補助者を雇うか、他の行政書士と連携して、案件を回す体制を持っています。1人でやれる件数には上限があるので、売上の天井も決まってしまうからです。
重要なのは、この差が能力の差ではなく設計の差だという点です。営業能力、人脈、資金力で決まるという話をよく見かけますが、それらはすべて後から作れます。作れないのは時間だけです。
私が仕事でよく見るのは、良い商品なのに売れないブランドと、平凡な商品なのに売れるブランドです。差は商品ではなく、誰に向けて何と言って売っているかの設計にあります。行政書士も同じで、「行政書士です」と名乗っている人には仕事が来ず、「建設業の許可と決算変更届を専門にしています」と名乗っている人に来ます。
比較の観点をもう1つ。行政書士の資格を持っていても、企業に転職して年収を上げる経路は細い。ただし法務や総務の求人に応募するときの補強材料にはなります。職務経歴書で資格をどう配置すれば効くのかは書き方で差が出るので、資格の記載位置や職歴の並べ方まで踏み込んだ職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】を参考にしてください。
未経験から始める現実的な手順
順番を間違えると時間を失うので、手順として書きます。
合格した直後にやるべきことは、登録するかどうかの判断です。登録には入会金と登録免許税で20万円台の初期費用がかかり、その後は毎月の会費が続きます。すぐに開業しないなら、登録を急ぐ必要はありません。資格は取得した事実として残ります。
次にやることは、勤務で経験を積むか、いきなり開業するかの選択です。データが示しているのは、勤務で経験を積んでから開業するほうが立ち上がりが速いということです。理由は、役所との折衝の作法、書類の実際の書き方、依頼者への説明の順序が、テキストには書かれていないからです。行政書士事務所の求人は多くありませんが、司法書士事務所や税理士事務所で許認可業務を扱っているところ、建設業に特化したコンサルティング会社なども選択肢になります。
開業を選ぶ場合、最初の3か月でやることは集客の準備です。扱う業務を1つ決め、その業務について依頼者が知りたいことを書いたページを10本作る。要件、必要書類、期間、費用、よくつまずく点。これを具体的に書けるかどうかが、その後1年の売上を決めます。
30代や40代から目指す場合の話も書きます。行政書士は年齢による不利が小さい資格です。理由は2つあります。1つは、依頼者が信頼を重視するので、若すぎることがむしろ不利に働く場面があること。もう1つは、前職の業界知識がそのまま強みになることです。建設会社にいた人は建設業許可に強く、運送会社にいた人は運送業に強い。医療機関にいた人は医療法人の手続きに入れます。この「前職とのかけ算」が、行政書士でもっとも効く戦略です。
逆に、まったく縁のない業界の許認可を選ぶと立ち上がりが遅くなります。自分の経歴の棚卸しを先にやってください。
資格取得にかかる時間と費用
投資の側も数えます。
行政書士試験の受験料は10,400円です。学習時間の目安は、法律の学習が初めての人で600時間から1,000時間。1日2時間で1年前後になります。合格率は例年10%前後で推移しており、簡単な試験ではありません。
費用は独学で2万円から4万円、通信講座で5万円から20万円、通学の予備校で15万円から25万円が相場です。法律の学習が初めての人は、独学だと民法と行政法でつまずきやすい。費用を抑えたい気持ちはわかりますが、1年余分にかかるなら講座代のほうが安いという計算もできます。
回収の見通しを立てます。勤務型で年収が20万円上がるなら、1年で回収できます。開業型なら、建設業許可の新規申請1件で20万円近い報酬になるので、案件を2件受ければ講座代が戻ります。数字としては回収可能な投資です。
ただし回収できない典型もあります。登録せず、開業もせず、履歴書に書くだけで終わるパターンです。行政書士は企業の求人要件になりにくい資格なので、履歴書に書くだけでは年収が動きません。この資格は「使う前提で取る資格」だと理解しておいてください。
書類作成の基礎体力を底上げしておくと、実務に入ったときの速度が変わります。文書の構成や敬語、社外文書の型を体系的に扱うビジネス文書検定は、依頼者への説明文や役所への添付資料を書く場面で直接役立ちます。
副業と在宅で行政書士の知識を使う
最後に、開業しない使い方を書きます。ここは検索であまり語られていない領域です。
行政書士の業務そのものは、登録していないと報酬を得て行えません。ここは法律で制限されています。したがって副業として「行政書士の仕事を受ける」には、登録が必要です。会社員が副業で登録する場合、勤務先の就業規則と、行政書士会の運用を両方確認してください。兼業を認めている事務所もありますが、企業側が副業を禁じている場合は動けません。
一方で、登録せずに知識を使う道はあります。1つは、許認可や法務に関する文章を書く仕事です。専門性のある書き手は単価が上がりやすく、法律分野は特にその傾向が強い。文章を書く仕事の収入水準を確認したい皆さんは、国の統計をもとにした著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見てください。専門分野を持つ人が、どの帯に入れるのかの参考になります。
2つ目は、企業の中で許認可の管理を担う仕事です。建設業、運送業、不動産業の会社には、許可の更新と変更届を管理する業務があります。ここは資格がなくてもできますが、知識がある人が担当すると失効のリスクが下がる。社内で価値のある役割になります。
3つ目は、事業者の立ち上げ支援です。私の仕事で言えば、ブランドを立ち上げる人は法人設立、古物商許可、特定商取引法に基づく表記、利用規約といった手続きを一度に抱えます。ここで何が必要かを整理して段取りを組める人は、非常に重宝されます。実務の代行は登録者に任せ、自分は全体の設計と進行を持つ。この組み合わせは在宅でも成立します。
業務の棚卸しから手順の自動化までを扱う仕事は、この方向と相性が良いです。どんな依頼があるのかを俯瞰するならAIコンサル・業務活用支援のお仕事を見ておくと、書類業務の知識をどう単価に変えるかの当たりが付きます。
他の資格と比べたときの位置づけ
資格を選ぶ段階の皆さんのために、比較の軸を出します。収入という一点で見ると、行政書士は「独立しやすいが、雇われにくい資格」という位置にあります。
社会保険労務士と比べます。社労士は企業の人事労務に対応するポジションがあるので、勤務型の求人が行政書士より多い。給与計算や社会保険の手続きは毎月発生する業務なので、顧問契約に繋がりやすく、収入が積み上がります。一方の行政書士は、許認可という単発性の高い仕事が中心です。継続性では社労士が有利で、1件あたりの単価では行政書士のほうが大きくなる場面があります。
司法書士と比べます。司法書士は登記という独占業務を持ち、不動産取引と会社設立の流れに構造的に組み込まれています。試験の難易度は司法書士のほうがかなり高く、学習時間も3,000時間規模になります。投入する時間に対する収入の期待値で見ると、司法書士のほうが高い。ただし行政書士は600時間から1,000時間で到達できるので、時間対効果では悪くありません。
宅地建物取引士と比べます。宅建は不動産会社に必置の資格なので、求人要件として明確に機能します。転職で年収を上げたいだけなら、宅建のほうが直線的です。ただし宅建は独立開業の資格ではないので、自分の看板で稼ぐ方向には向きません。
税理士と比べます。税理士は顧問契約という月次の収入構造を持っていて、収入の安定度が士業のなかでもっとも高い。行政書士から税理士を目指す人は少ないですが、税理士事務所と連携して許認可を担う行政書士は多い。組み合わせとして機能する関係です。
つまり、行政書士を選ぶ理由は「短い学習時間で、独立して自分の看板で仕事ができる資格が欲しい」という場合に限られます。転職で年収を上げたいなら他の資格のほうが速い。ここを混同すると期待外れになります。
ダブルライセンスの効き方も書いておきます。もっとも効くのは行政書士と社会保険労務士の組み合わせです。会社の設立から許認可、雇用、助成金までを一気通貫で受けられるため、1社あたりの単価が上がります。次に効くのが行政書士と宅建で、不動産業の免許申請と物件の実務を両方見られるようになります。行政書士と中小企業診断士の組み合わせは、補助金と経営支援の方向に伸びます。
どの資格でどの求人が動いているのかを確認したいときは、年代別と職種別で得意分野が違う点を整理した転職サイトおすすめ比較【2026年版】|年代・職種別の選び方を先に見ておくと、資格を取る前に市場の需要を確かめられます。資格を取ってから需要を探す順番は、時間の使い方として損です。
依頼が続く事務所がやっていること
収入の安定度は、新規の獲得より継続の設計で決まります。ここは実務の話なので具体的に書きます。
継続を作るもっとも確実な方法は、期限がある手続きを扱うことです。建設業許可は5年ごとの更新があり、毎事業年度終了後に決算変更届の提出義務があります。産業廃棄物処理業も5年ごとの更新です。運送業には毎年の報告があります。これらを扱っている事務所は、1社獲得すると10年単位の付き合いになります。
次に、期限の管理を自分の側で持つことです。依頼者は自分の許可の更新時期を覚えていません。更新期限の3か月前に連絡する仕組みを持っている事務所と、依頼者からの連絡を待っている事務所では、失注率がまったく違います。名簿と期限をきちんと管理するだけで、売上が変わる領域です。
3つ目は、隣接する依頼を自分から出すことです。建設業許可を取った会社は、その後に経営事項審査を受けたいと考えます。法人設立を手伝った会社は、契約書の型が必要になります。依頼者が自分で気づく前に「次にこれが必要になります」と伝える。これが単発の仕事を関係に変える動きです。
4つ目は、料金を下げないことです。安い事務所として認知されると、価格で選ぶ依頼者ばかりが集まります。価格で選ぶ人は、次もより安いところを探します。私はアパレルの仕事でこれを何度も見てきました。セールで集めた客はセールでしか買わない。定価で買ってくれる人を集めたほうが、事業は長持ちします。士業の報酬も同じ構造です。
5つ目は、断ることです。自分の専門外の依頼を無理に受けると、時間を溶かして評価も下がります。他の行政書士や士業に紹介して返す。紹介した相手からも戻ってくるので、長期では自分の受任が増えます。
行政書士の将来性をどう見るか
将来性は、増える仕事と減る仕事に分けて見る必要があります。
減る方向にあるのは、定型的な書類作成です。行政の手続きはオンライン化が進んでおり、申請そのものを本人がやりやすくなっています。書類を代わりに書くだけの仕事は、単価が下がり続けます。ここを主戦場にしている事務所は厳しくなります。
増える方向にあるのは3つです。1つ目は、要件が複雑で判断を伴う許認可です。産業廃棄物、運送業、医療法人、外国人の在留資格。要件の解釈と役所との折衝が必要な分野は、オンライン化しても人の仕事が残ります。2つ目は、相続と終活の関連です。人口構成から見て需要が伸び続ける領域で、他士業と連携しながら入る形が主流になります。3つ目は、事業者の立ち上げ支援を包括で受ける仕事です。法人設立、許認可、契約書、規約の整備をまとめて段取りする役割は、依頼者にとって代替が難しい。
もう1つ、見落とされがちな変化があります。補助金と助成金の申請支援です。制度が頻繁に変わるため、常に情報を追える人にしか対応できません。中小企業にとっては金額が大きい話なので、報酬も相応に設定できます。ただし制度の内容は毎年変わるので、片手間ではできません。
将来性を判断する軸を1つ示します。「オンライン化すると消えるか」で仕分けてください。消えないのは、判断が必要な仕事、関係の継続が必要な仕事、複数の手続きを横断して段取りする仕事です。ここに自分の時間を置いている人は、10年後も食べていけます。書類を写すだけの作業に時間を置いている人は、収入が目減りします。
市場を長く見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、最後に2つ書きます。
1つ目。運営者として見てきた限りでは、士業でも在宅ワークでも、収入が伸び続ける人は「単発の作業」を売っていません。売っているのは「この人に任せると自分が考えなくて済む」という状態です。行政書士なら、申請書を作る人ではなく、更新の時期を先に教えてくれる人。その差が顧問契約と単発仕事の分かれ目になります。年収1,000万円の層がやっているのは、まさにこの置き換えです。
2つ目。額面より手取りを見てほしいという話です。同じ10万円の仕事でも、仲介を通して手数料が引かれる経路と、依頼者から直接受ける経路では、手元に残る額が違います。依頼者の側から見ても同じで、中間マージンが乗らなければ同じ予算でより多く頼めます。20年この市場を見てきて確信しているのは、この構造が続く年数を決めているということです。手数料0%の価値は、値段が安いことではなく、双方の手元に厚く残ることにあります。開業して自分の看板で受けるという選択は、突き詰めればこの構造を自分で持つという意思決定です。
行政書士の給料は、資格に付いてくるものではありません。誰に向けて、どの手続きを、どう届けるかを決めた人にだけ付いてきます。勉強を始める前に、自分の前職とかけ算できる分野を1つ決めてください。そこが決まっていれば、600時間の勉強は投資になります。決まっていなければ、合格した後にもう一度考える時間が発生します。順番を先に決めるほうが速いです。
よくある質問
Q. 行政書士の給料は勤務と開業でどのくらい違いますか?
勤務型は年収200万円から600万円の帯で、初年度は200万円から300万円が一般的です。開業型は100万円から1,000万円超まで振れ、上限も下限もありません。開業型は売上から入会金や会費、家賃などの経費を引いた額が手取りになるため、売上の数字だけで比較しないでください。
Q. 未経験でもすぐに開業して食べていけますか?
可能ですが、集客の経路を持たないまま開業すると1年目の年収が100万円前後になるケースがあります。先に事務所で経験を積むか、開業と同時に扱う業務を1つに絞って検索から見つかる状態を作るかのどちらかが必要です。前職の業界と関係する許認可を選ぶと立ち上がりが速くなります。
Q. どの業務が単価が高いですか?
一般貨物自動車運送事業の許可が30万円から50万円、産業廃棄物処理業の許可が15万円から30万円、建設業許可の新規が12万円から20万円が相場です。単価の高い業務を1つと、古物商許可のように件数が出る業務を1つ組み合わせると、資金繰りが安定します。
Q. 会社員のまま副業で行政書士の仕事はできますか?
報酬を得て行政書士業務を行うには登録が必要で、勤務先の就業規則と行政書士会の運用を両方確認する必要があります。登録せずに知識を使う道としては、許認可や法務分野の記事を書く仕事、社内で許可の更新管理を担う役割、事業立ち上げの段取りを整理する支援などがあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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