特別労災の仕組みと対象になる人

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
特別労災の仕組みと対象になる人

この記事のポイント

  • 特別労災(労災保険の特別加入)の対象者
  • 給付基礎日額と保険料の決まり方
  • 団体を通した加入手続き

「特別労災」という言葉で検索してたどり着く人の多くは、すでに一人で現場に入っているか、業務委託で仕事を受けている最中です。ケガをしたら誰が治療費を出すのか、休んだ間の収入はどうなるのか。結論から書くと、特別労災とは労災保険の「特別加入」制度のことで、会社に雇われていない人でも、決められた団体を通して申し込めば国の労災保険に入れる仕組みです。ただし誰でも入れるわけではなく、業種ごとに入り口が分かれていて、補償される作業の範囲も細かく決められています。この記事では、対象になる人、保険料の決まり方、手続きの順番、そして入ったあとに「これは対象外だった」となりやすい場面までを、厚生労働省の資料に沿って整理します。

特別労災とは何か。正式には労災保険の「特別加入」

労災保険は本来、雇われて働く人のための制度です。会社が保険料を全額払い、働く人が業務中や通勤中にケガや病気をしたときに治療費や休業中の補償を出します。ところが、一人で現場に入る大工や左官、自分の車で荷物を運ぶ個人運送業者、業務委託でデザインや翻訳を請け負う人は、法律上は「労働者」ではありません。雇われていないので、何が起きても労災保険は使えないのが原則でした。

そこに例外を設けたのが特別加入制度です。厚生労働省の資料では、その趣旨がはっきり書かれています。

労災保険は、本来、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外でも、その業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の方には特別に任意加入を認めています。これが、特別加入制度です。 出典: mhlw.go.jp

ポイントは「任意加入」という三文字です。雇われている人の労災保険は強制で、本人が手続きをする必要はありません。特別加入は自分から申し込まないと始まりません。申し込まない限り、現場で足場から落ちても、配送中に追突されても、労災保険からは一円も出ません。健康保険を使って自己負担三割で治療を受けることになり、働けない期間の収入はそのまま消えます。この落差が、特別労災を調べる人が最初に知っておくべきことです。

なお「特別労災」は通称であり、行政の書類や申請書には出てこない言葉です。窓口で相談するときや資料を探すときは「労災保険 特別加入」で探したほうが早く目的の情報にたどり着けます。民間の共済や傷害保険にも似た名前の商品がありますが、特別加入は国の制度で、給付の内容も労働基準監督署の判断も、雇われている人の労災と同じ基準で動きます。

入り口は4つに分かれる。自分がどれに当たるかで話が変わる

特別加入は一つの制度ですが、申し込む枠が4つに分かれています。中小事業主等、一人親方その他の自営業者、特定作業従事者、海外派遣者の4区分です。自分がどれに当たるかで、加入できる団体も、保険料率も、対象になる作業の範囲も変わります。

中小事業主等は、労働者を雇っている小さな会社の社長や役員、その家族従事者が入る枠です。従業員は最初から労災保険で守られていますが、社長本人は労働者ではないので対象外でした。そこで、労働保険事務組合に事務を委託していることを条件に、社長も特別加入できるようにしています。

一人親方その他の自営業者は、労働者を雇わずに自分で事業を行う人の枠で、特別労災を調べる人の多くがここに当たります。対象になる事業は厚生労働省が12種類に限定して列挙しています。建設、個人タクシーや個人貨物運送、漁業、林業、医薬品の配置販売、再生資源の取り扱い、船員、柔道整復師、高年齢者の創業支援等措置にもとづく事業、あん摩マッサージ指圧師とはり師ときゅう師、歯科技工士、そして特定フリーランス事業です。

特定作業従事者は、特定農作業従事者や指定農業機械作業従事者、家内労働者、介護作業従事者、家事支援従事者(いわゆる家政婦・家政夫)、芸能関係作業従事者、アニメーション制作作業従事者、ITフリーランスなどが並ぶ枠です。名前だけ見ると一人親方の枠と重なりそうですが、法令上は別の区分として扱われます。海外派遣者は、日本の事業主から海外の事業所へ派遣されて働く人のための枠です。

ここで大事なのは、労働者を雇っていても即座に一人親方の枠から外れるわけではないという点です。厚生労働省の資料には、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たなければ一人親方等として特別加入できると明記されています。繁忙期だけ手伝いを頼む働き方をしている人は、この日数を数えておく価値があります。

2024年11月に加わったフリーランスの枠

長く「特別労災は建設業の話」と受け止められてきましたが、2024年(令和6年)11月1日から状況が変わりました。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)にいう特定受託事業者が、業務委託を受けて行う事業について特別加入できるようになったのです。制度上は「特定フリーランス事業」と呼びます。

厚生労働省が想定職種として挙げているのは、営業、講師やインストラクター、デザインやコンテンツ制作、調査・研究・コンサルティング、翻訳・通訳、データや文書の入力などです。パソコンの前で完結する仕事も、移動や対面が混ざる仕事も、どちらも含まれています。

ただし条件があります。対象になるのは、企業などから業務委託を受けて行う事業者間の取引です。加えて、同じ種類の仕事を消費者から直接受けている場合も対象に入ります。逆に、消費者からだけ仕事を受けていて、今後も事業者から受ける見込みがない場合は、その仕事中にケガをしても給付を受けられません。加入時点で事業者からの委託がまだ無くても、これから受ける見込みがあるなら加入できるという例外も置かれています。

もう一つの落とし穴は、枠の重なりです。同じ人が複数の仕事をしていて、そのうちの一つが建設業やITフリーランスなど別の特別加入の枠に当たる場合、その仕事については特定フリーランス事業ではなく、本来の枠で加入しなければなりません。特定フリーランス事業にだけ入っていて、別の枠に当たる作業中に被災すると、給付は受けられません。両方の仕事で補償を受けたいなら、それぞれに特別加入する必要があります。

在宅で受注する仕事の種類は年々広がっています。どんな職種が業務委託で動いているかを俯瞰したいときは、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように分野ごとに仕事の中身と求められる経験を整理したガイドを読むと、自分の仕事がどの枠に近いかを判断しやすくなります。

給付基礎日額は自分で選ぶ。3,500円から25,000円までの16段階

特別加入でいちばん迷うのが給付基礎日額です。これは保険料の計算にも、休業補償などの給付額の計算にも使われる基準額で、申請にもとづいて都道府県労働局長が決定します。選べるのは3,500円、4,000円、5,000円、6,000円、7,000円、8,000円、9,000円、10,000円、12,000円、14,000円、16,000円、18,000円、20,000円、22,000円、24,000円、25,000円の16段階です。

低く設定すれば保険料は安くなりますが、休業したときに受け取れる額も同じ比率で下がります。休業に対する給付は、休業4日目以降について1日あたり給付基礎日額の60パーセント、これに休業特別支給金として20パーセントが上乗せされます。合わせて80パーセントです。給付基礎日額を1万円にしていて20日間休んだ場合、給付は1万円×60パーセント×17日で10万2千円、特別支給金が1万円×20パーセント×17日で3万4千円という計算になります。

ここで考えたいのは、自分が3日以上働けなくなったときに、毎日いくら足りなくなるかです。家賃や住宅ローン、リースの機材代、子どもの学費は、仕事が止まっても請求が止まりません。日額を低く抑えると保険料は下がりますが、いざというときに生活費を埋められない額になります。逆に、実際の稼ぎとかけ離れて高い額を選んでも、保険料だけが重くなります。手取りベースで1日あたりいくら回しているかを出してから選ぶのが現実的です。

給付基礎日額は後から変えられますが、時期が決まっています。原則として3月2日から3月31日までに変更申請書を出すと翌年度から変わります。労働保険の年度更新期間中にも当年度分の変更ができますが、いずれも災害が起きる前に申請していることが前提です。事故が起きてから「もっと高くしておけばよかった」と申請しても、その年度の変更は認められません。

保険料は業種で決まる。建設と特定フリーランスでは5倍以上の差

年間保険料の計算式はとてもはっきりしています。保険料算定基礎額(給付基礎日額×365日)に、事業ごとに決められた保険料率を掛けるだけです。年度の途中で加入や脱退をした場合は、その年度内の特別加入月数に応じて計算します。1か月未満の端数は1か月として数えます。

厚生労働省が公表している第2種特別加入保険料率を見ると、業種ごとの差がそのまま数字に出ています。建設の事業は1000分の17、自動車や原動機付自転車・自転車を使った運送の事業は1000分の11、漁船による水産動植物の採捕は1000分の45、林業は1000分の52、医薬品の配置販売は1000分の6、再生利用の目的となる廃棄物などの収集・運搬・選別・解体は1000分の14、船員は1000分の48です。一方、柔道整復師、創業支援等措置にもとづき高年齢者が行う事業、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師、歯科技工士、そして特定フリーランス事業はいずれも1000分の3にとどまります。

具体的な金額に直すと差がよく見えます。給付基礎日額を1万円にした場合、保険料算定基礎額は365万円です。建設の事業なら年間62,050円、特定フリーランス事業なら年間10,950円です。同じ補償内容で5倍以上開きます。これは「フリーランスが優遇されている」という話ではなく、業種ごとの災害発生率がそのまま料率に反映されている結果です。足場の上と机の前では、起きる事故の頻度も重さも違います。

なお、特別加入団体を通して申し込むため、この保険料に加えて団体の組合費がかかるのが一般的です。組合費の額や入会金の有無、脱退時に未経過分の保険料が戻るかどうかは団体ごとに違います。次のような案内を出している団体もあります。

保険料以外に必要な費用は月500円の組合費のみ。(※入会時のみ入会金1,000円)その他手続きに必要な手数料は一切かかりません。また、年度途中での脱退も可能です。(お預かりした未経過分の保険料はご返金いたします) 出典: rousai-hoken.jp

保険料そのものは国が決めた計算式で一律なので、団体を比べるときに見るべきなのは組合費、入会金、事務手数料、証明書の発行速度、そして脱退時の扱いです。保険の中身で差はつきません。

手続きは団体を通す。個人で労働基準監督署に申し込むことはできない

一人親方等の特別加入は、個人が単独で申請する形になっていません。一人親方等の団体(特別加入団体)を事業主、一人親方等を労働者とみなして労災保険を適用する建て付けになっているからです。手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行います。

流れは、加入を希望する人が団体に申し込み、団体が特別加入申請書を所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出し、承認または不承認の通知が返ってくる、という三段階です。申請書には、希望する人の業務の具体的な内容、業務歴、希望する給付基礎日額を書きます。電子申請も用意されており、e-Gov電子申請の手続検索で「特別加入」と入力すると該当の手続きが出てきます。

特別加入団体になれる条件も決まっています。一人親方等の相当数を構成員とする単一の団体であること、法人かどうかは問わないが構成員の範囲や加入・脱退の手続きが明確であること、定款などから見て労働保険事務の処理が可能であること、事務体制や財務内容から見て確実に事務を処理できること、そして団体の地区が主たる事務所の所在地を中心とした一定の区域を超えないことです。

特定フリーランス事業の団体には、さらに条件が上乗せされています。特定の業種に限らないフリーランス全般の支援活動の実績(活動期間1年以上、会員100名以上)があること、全国を単位として運営し都道府県ごとに訪問可能な事務所を設けること、加入・脱退・災害発生時の請求の支援を行うこと、加入者に災害防止の教育を行うことが求められます。加えて、承認後は少なくとも年1回以上、加入者向けに災害防止の研修を実施し、毎年度4月末までに前年度の実施状況と当年度の計画を報告する義務があります。

脱退にも手順があります。団体そのものが脱退する場合は構成員全員を包括して申請する必要があり、承認日は申請日から30日以内で本人が希望する日になります。特定の人だけを外す場合は変更届を出します。また、団体の構成員でなくなった日、要件を満たさなくなった日には、その日に特別加入者としての地位が消滅します。会費を止めたまま放置すると、補償も一緒に止まっていることになります。

加入時健康診断が必要な業務がある

すべての人に健康診断が求められるわけではありませんが、特定の業務に一定期間従事した経験がある人は、申請の際に健康診断を受ける必要があります。対象は4種類です。粉じん作業を行う業務に通算3年以上従事した人はじん肺健康診断、振動工具を使う業務に通算1年以上の人は振動障害健康診断、鉛業務に通算6か月以上の人は鉛中毒健康診断、有機溶剤業務に通算6か月以上の人は有機溶剤中毒健康診断です。

流れは、特別加入時健康診断申出書を団体経由で労働基準監督署長に出し、必要と判断されれば指示書と実施依頼書が交付され、指示された期間内に労働局長が委託している診断実施機関で受診し、健康診断証明書を申請書に添えて提出する、という順番です。健康診断の費用は国が負担しますが、交通費は自己負担です。

注意したいのは、結果によっては加入が制限される点です。すでに病気にかかっていて、症状や障害の程度から見て一般的に就業が難しく療養に専念すべきと認められる場合は、業務の内容にかかわらず特別加入は認められません。特定の業務からの転換が必要と認められる場合は、その業務以外についてのみ加入が認められます。さらに、加入前に発症した病気や、加入前の事情によって発症したと認められる病気については、加入後であっても給付の対象になりません。

この健康診断は、加入を遅らせる要因にもなります。建設業の特定業務に当たる人は、受診して証明書を出すまで正式な加入になりません。元請から「労災に入っている証明を出してほしい」と言われて急いで申し込んでも、健康診断が挟まると即日というわけにはいかないのが実情です。現場が決まってから動くのではなく、仕事の話が見えた時点で手続きを始めておくほうが安全です。

補償されるのは「決められた作業の範囲」だけ

特別加入で最も誤解が多いのがここです。雇われている人の労災は、業務遂行性と業務起因性が認められれば幅広く対象になります。特別加入の場合は、加入者ごとに対象となる作業があらかじめ決められていて、その範囲の中で被災したときだけ給付が行われます。

建設業の一人親方等を例にとると、対象になるのは、請負契約に直接必要な行為、請負工事現場での作業とそれに直接付随する行為、請負契約にもとづくことが明らかな作業を自宅の作業場で行う場合、請負工事に関する機械や製品を運搬する作業(手工具類程度のものを持って通勤する場合を除く)とそれに付随する行為、台風や火災などの突発事故で予定外に緊急出勤する場合です。

この線引きは実務で効いてきます。たとえば、見積もりのために現場を下見する移動は「請負契約に直接必要な行為」に当たりますが、営業のために取引先へ挨拶に行く道中は同じ扱いになるとは限りません。個別の判断は労働基準監督署が行うため、自分で断定せず、迷う場面があれば加入している団体か監督署に確認するのが確実です。

休業に対する給付にも特別加入ならではの条件があります。雇われている人の場合は所得が減ったかどうかが問われますが、特別加入者の場合は、所得が減ったかどうかにかかわらず、補償の対象とされている範囲の作業について全部労働不能であることが必要です。全部労働不能とは、入院中、自宅で就床して治療している、または通院して治療していて、対象の作業ができない状態を指します。「事務作業なら少しできるので家で伝票を切っていた」という状態は、この条件に当てはまらない可能性があります。

支給が制限される場合もあります。災害が特別加入者の故意または重大な過失によって起きた場合、そして保険料を滞納している期間中に起きた場合は、給付の全部または一部が制限されることがあります。口座振替が止まっていたことに気づかないまま被災する、という事故は実際に起こり得ます。

受け取れる給付の中身を数字で押さえる

補償の全体像を数字で見ておくと、給付基礎日額をいくらにするかの判断がしやすくなります。給付基礎日額を1万円とした場合の例で並べます。

治療については、労災病院や労災指定病院で必要な治療を無料で受けられます。指定病院以外で治療を受けた場合は、かかった費用が支給されます。この給付だけは給付基礎日額と関係なく、必要な治療が受けられる形です。給付の範囲は原則として健康保険に準拠します。

休業については、前に触れたとおり4日目以降に給付基礎日額の60パーセント、特別支給金が20パーセントです。障害が残った場合は、障害等級1級から7級なら年金、8級から14級なら一時金になります。年金は1級で給付基礎日額の313日分、7級で131日分、一時金は8級で503日分、14級で56日分です。これとは別に障害特別支給金が1級342万円から14級8万円まで一時金として出ます。

療養開始後1年6か月を過ぎても治らず、傷病等級に当たる場合は傷病年金に切り替わります。1級で313日分、2級で277日分、3級で245日分です。死亡した場合は遺族年金が出ます。遺族1人なら153日分または175日分(55歳以上の妻など一定の場合)、2人なら201日分、3人なら223日分、4人以上なら245日分です。受給資格のある遺族がいない場合の遺族一時金は1000日分、遺族特別支給金は人数にかかわらず300万円です。葬祭料は31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額と、給付基礎日額の60日分のいずれか高いほうが支給されます。

介護が必要になった場合の介護給付もあります。常時介護を要する場合は上限186,050円、最低保障額85,490円、随時介護を要する場合は上限92,980円、最低保障額42,700円です。これらの金額は令和7年8月1日現在のものとされており、改定されることがあります。

数字を並べると、給付基礎日額を1万円にした場合の年間保険料が建設業で62,050円、特定フリーランス事業で10,950円であることに対して、給付の規模がどれだけ大きいかが見えてきます。なお、特別加入者として負担する労災保険の保険料は、国税庁が社会保険料控除の対象として列挙しています。事業の必要経費ではなく、確定申告で所得から差し引く形になる点に注意してください。団体の組合費の扱いは保険料とは別なので、迷う場合は税務署か税理士に確認してください。

入る前に確かめたい3つの点

1つ目は、自分がどの枠に当たるかです。複数の仕事を並行している人ほど、ここでつまずきます。建設の現場にも入りながら図面作成の委託も受けている、配送もしながら講師の仕事もしている、といった働き方の場合、どちらか一方の枠にだけ入っていると、もう一方の仕事中の事故は補償されません。仕事の種類ごとに、どの枠に当たるかを確かめてから申し込みます。

2つ目は、団体の選び方です。保険料は国が決めた計算式で決まるので団体による差はありませんが、組合費、入会金、加入証明書の発行速度、脱退時の返金の有無、そして特定フリーランス事業の団体なら年1回以上の研修の実施方法は団体ごとに違います。次の案内のように、入金のタイミングと加入日の関係を明示している団体もあります。

※平日15時までにご入金済みの場合、翌日のご加入・当日中の加入予定証明書の発行が可能です。平日15時以降のご入金の場合は翌平日のご入金確認となります。※建設業の特定業務に該当し、特別加入時健康診断が必要な方は、健康診断を受診されないと正式な加入とならず、加入予定証明書を発行することはできません。 出典: rousai-hoken.jp

3つ目は、既存の保険との重なりです。民間の傷害保険や所得補償保険にすでに入っている人は、補償が重なる部分と、特別加入にしかない部分を分けて見ます。特別加入にしかないのは、治療費が原則自己負担なしになること、障害や死亡に対する年金が続くこと、そして労災として認定された事実が残ることです。民間保険は請求手続きが早い代わりに、年金形式の長期補償は手薄なことが多くなります。どちらが上という話ではなく、役割が違います。

個別の判断には所得や家族構成が絡むため、この記事で断定はできません。金額や条件は年度や団体で変わるので、最終的には加入予定の団体か所轄の労働基準監督署で確認してください。

中小事業主等の枠と一人親方の枠は手続きが違う

人を雇い始めた人が混乱しやすいのが、中小事業主等の枠との違いです。従業員を常時雇うようになると、その従業員は最初から労災保険の対象になり、事業主には労働保険の成立手続きと保険料の納付義務が生じます。そのうえで事業主本人も補償を受けたい場合は、一人親方の枠ではなく中小事業主等の枠に移ることになります。

中小事業主等の枠には、一人親方の枠には無い条件が付きます。労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していることが前提になるのです。自分で年度更新の書類を作って納付している事業主は、そのままでは特別加入できません。事務組合に委託し、そのうえで特別加入の申請を行うという二段構えになります。委託には事務手数料がかかるので、人を雇うかどうかを考える段階で、この費用も計算に入れておく必要があります。

保険料の考え方も変わります。一人親方の枠では第2種特別加入保険料率を使いますが、中小事業主等の枠では、その事業に適用される労災保険率(従業員の保険料を計算するのと同じ料率)を使って、事業主本人分の保険料を計算します。建設業のように業種ごとに細かく料率が分かれている分野では、同じ「建設」でも工事の種類によって料率が違うため、金額の見当が一人親方の頃と変わることがあります。

そして切り替えのタイミングが重要です。従業員を雇う日の合計が年間100日を超える見込みになった時点で、一人親方の枠の要件を満たさなくなります。要件を満たさなくなった日に特別加入者としての地位は消滅するので、気づかないまま現場に立っている期間ができると、その間の事故は補償されません。人を入れる計画が動き出した段階で、加入している団体に相談しておくのが安全です。逆に、雇用をやめて再び一人で動くようになった場合も、枠を戻す手続きが要ります。制度は自動では切り替わりません。

業務委託で働く人にとっての特別労災の位置づけ

在宅ワークや業務委託の市場を20年近く見てきた運営者の立場から言えば、フリーランスの枠が2024年に加わったことは、制度の側が働き方の実態に追いついてきたサインです。これまで、パソコンの前で完結する仕事は「危険が少ないから労災は不要」と扱われてきました。実際には、機材を運ぶ、撮影現場に立ち会う、講座のために移動する、客先で作業する場面がいくらでもあります。事故が起きる確率は低くても、起きたときに一人で全額を背負う構造は変わりません。

長く仕事が続く人ほど、単価そのものよりも「止まったときに何が起きるか」を先に設計しています。稼働できない期間が2週間あったとして、その間の固定費を誰が払うのか。答えを持っている人は、仕事を選ぶときに無理な納期を飲まずに済みます。手数料が引かれない直接取引は、同じ予算で依頼する側はより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。その厚みを保険料に回せるかどうかで、長い目で見た働き方の安定度は変わります。手数料0%の取引が効いてくるのは、単発の金額よりも、こうした固定費を払い続けられるかどうかの場面です。

自分の仕事の相場を確かめたいときは、職種ごとの単価と年収をまとめたデータが役に立ちます。文章や編集を仕事にしている人は著述家,記者,編集者の年収・単価相場、開発を請け負っている人はソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、給付基礎日額をいくらにするかの目安を立てやすくなります。1日あたりの稼ぎが見えていないと、日額の選択が当てずっぽうになります。

仕事の幅を広げる方向では、業務委託の需要が伸びている分野を押さえておくと、収入の落ち込みそのものを防ぎやすくなります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事アプリケーション開発のお仕事では、どんな経験が求められ、どんな形で発注されているかが整理されています。技術の裏づけを増やしたい人はCCNA(シスコ技術者認定)、文書のやり取りを正確にしたい人はビジネス文書検定のような資格ガイドも判断材料になります。

保険料の扱いについては、事業に関連する保険料が経費になるかどうかで迷う人が多い領域です。個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法では、保険の種類ごとに経費にできるものとできないものを分けて説明しています。特別加入の保険料と、生命保険料控除の対象になる保険では扱いが違うため、確定申告の前に一度整理しておくと迷いが減ります。

最後に、制度の細かい数字は年度ごとに動きます。保険料率も、介護給付の上限額も、対象になる職種の範囲も、これまで何度も改正されてきました。加入している人は、年度更新の案内が届いたときに、給付基礎日額が今の稼ぎと合っているかを見直す習慣を持っておくと、いざというときに「思っていた額と違った」という事態を避けられます。

よくある質問

Q. 特別労災は個人で直接申し込めますか?

一人親方等の特別加入は、個人が単独で労働基準監督署に申し込む形にはなっていません。都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体に申し込み、団体が申請書を監督署経由で労働局長へ提出します。団体を通すため、国の保険料とは別に組合費や入会金がかかるのが一般的です。

Q. 保険料はいくらくらいかかりますか?

年間保険料は、給付基礎日額×365日に業種ごとの保険料率を掛けて計算します。給付基礎日額1万円なら算定基礎額は365万円で、建設の事業(1000分の17)は年62,050円、特定フリーランス事業(1000分の3)は年10,950円です。この保険料とは別に団体の組合費がかかります。

Q. フリーランスでも特別労災に入れますか?

2024年11月1日から、フリーランス法にいう特定受託事業者が業務委託を受けて行う事業について特別加入できるようになりました。営業、講師、デザイン、調査やコンサルティング、翻訳、データ入力などが想定職種です。ただし消費者からだけ仕事を受けている場合は対象外になります。

Q. 加入したのに給付を受けられないことはありますか?

あります。補償の対象は加入者ごとに決められた作業の範囲に限られ、その外での事故は対象外です。また、加入時健康診断が必要な業務で受診していない場合、加入前に発症した病気の場合、保険料を滞納していた期間中の災害、故意または重大な過失による災害は、給付が制限されることがあります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月30日最終更新:2026年9月23日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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