国民年金基金と厚生年金の関係|同時加入できない理由と切替の段取り


この記事のポイント
- ✓国民年金基金と厚生年金は同時に加入できません
- ✓会社員になった時点で基金の加入資格を失う仕組み
- ✓それまでに払った掛金の行き先
結論から書きます。国民年金基金と厚生年金は、同時に加入することができません。両方に掛けて老後の受取額を二重に積み上げるという設計は、制度上そもそも成立しません。厚生年金に加入した時点で、国民年金基金の加入資格は自動的に失われます。これは「どちらが得か」を選ぶ話ではなく、「いまの自分がどちらの側にいるか」で決まっている話です。
この記事では、なぜ同時加入ができないのか、会社員になったときに払い込んだ掛金がどうなるのか、届出は誰がいつ出すのか、そしてiDeCoとの掛金枠の配分をどう考えるのかまでを、制度の原典に沿って整理します。私は業務委託で15年ほど働いていて、途中で1年半だけ会社に雇われた時期があり、そのときに基金の資格喪失をまさに経験しました。手続きで引っかかった点も含めて書いていきます。
同時に入れない理由は、対象者の定義そのものにある
国民年金基金が誰のための制度かを押さえると、同時加入ができない理由は一発で理解できます。この制度は、国民年金の第1号被保険者、つまり自営業者や自由業の人のために作られた上乗せの年金です。加入できる人の範囲は、運営元の国民年金基金連合会が明確に線を引いています。
日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、自由業、学生などの国民年金の第1号被保険者および60歳以上65歳未満の方や海外に居住されている方で国民年金の任意加入されている方が加入できます。したがって次のような方は加入できません。 厚生年金保険に加入している会社員の方(国民年金の第2号被保険者) 厚生年金保険に加入している方の被扶養配偶者の方(国民年金の第3号被保険者) 出典: npfa.or.jp
ここで名指しされている第2号被保険者が、まさに厚生年金に入っている会社員です。つまり国民年金基金は、加入できる人の定義の中に「厚生年金に入っていないこと」を組み込んでいます。両立できないのではなく、両立という状態が定義上ありえないのです。
なぜそう作られているのか。公的年金の構造を3階建てで考えると腑に落ちます。1階が全員共通の国民年金(老齢基礎年金)、2階が会社員と公務員だけが乗る厚生年金、3階が企業年金やiDeCoなどの私的な上乗せです。自営業者は2階が空いています。この空いた2階を埋めるために作られたのが国民年金基金です。会社員は2階に厚生年金が既に乗っているため、そこへさらに国民年金基金を差し込む余地がありません。
この理解は、判断の順番を決めるうえで重要です。国民年金基金に入るかどうかは、老後資金の商品選びではなく、「自分は2階が空いている側の人間か」という事実確認から始まります。だからこそ、独立のタイミングと会社員に戻るタイミングが、そのまま制度の切替点になります。
会社員になった瞬間に何が起きるのか
会社に雇われて厚生年金に入ると、国民年金基金の加入資格は失われます。連合会は資格を失うケースを列挙していて、その中に会社員になった場合が明記されています。
国民年金基金への加入は任意ですが、付加年金を代行した公的な年金制度のため、加入後は途中で任意に脱退はできません。国民年金基金に加入した方は次のいずれかに該当したとき加入資格を喪失します。 60歳になったとき 65歳になったとき(国民年金に任意加入されている方) 会社員になったときなど国民年金の第1号被保険者でなくなったとき(海外に転居したときを含みます) 出典: npfa.or.jp
この一文には2つの重い情報が入っています。1つは、途中で任意にやめられない制度だということ。もう1つは、それでも会社員になったときは例外なく資格を失うということです。自分の意思では抜けられないのに、就職すると強制的に抜けることになる。この非対称性が、この制度のいちばん誤解されやすい点です。
では、資格を失ったら掛金はどうなるのか。ここが最大の関心事だと思いますが、答えは「返ってこないが、消えるわけでもない」です。連合会は、資格喪失後の取り扱いをこう説明しています。掛金は途中で引き出すことができませんが、基金または連合会から将来年金として支給されます。つまり、掛けた期間に対応する年金は、受給年齢になったら支払われます。1年しか掛けていなければ1年分の小さな年金として、20年掛けていれば20年分として残ります。
私が経験した実務の流れはこうでした。入社して厚生年金の資格を取得すると、日本年金機構側で第1号被保険者から第2号被保険者への切替が記録されます。基金にはその情報が回るため、こちらから何もしなくても資格喪失の通知が届くケースがあります。ただし届くまでに数か月かかることがあり、その間に口座振替が止まらないことがありました。二重に引き落とされた掛金は後で還付されますが、待つのは気持ちが悪いので、就職が決まったら自分から基金へ連絡したほうが早いです。連絡先は加入している基金(全国国民年金基金か職能型基金)であり、連合会ではありません。ここを間違えると1往復無駄になります。
厚生年金と国民年金基金は、そもそも比べる対象ではない
「国民年金基金と厚生年金、どちらが得か」という問いを目にしますが、この比較は成立しません。理由は3つあります。
第1に、保険料の負担者が違います。厚生年金の保険料は労使で半分ずつ負担します。会社が半分を出しているので、同じ金額が自分の年金原資になるとき、自分の手出しは半分です。国民年金基金の掛金は全額自分が出します。この時点で、同じ1万円が持つ意味がまったく違います。
第2に、カバーする保障の範囲が違います。厚生年金には老齢厚生年金だけでなく、障害厚生年金と遺族厚生年金がついてきます。働けなくなったときと死亡したときの保障が、老後の年金と同じ制度の中に入っています。国民年金基金にも遺族一時金はありますが、障害に対する上乗せの給付は持っていません。老後だけを見れば似ていても、途中で何かあったときの守り方が別物です。
第3に、選べるかどうかが違います。厚生年金は要件を満たせば強制加入で、入らない選択はできません。国民年金基金は任意加入です。任意であることには自由さと同時に、自分で決めなければ何も積み上がらないという負担が伴います。
比べる意味があるのは「同じ立場の中での選択肢」です。自営業者の立場で言えば、国民年金基金、iDeCo、小規模企業共済、つみたて投資の枠、この4つが比較の対象になります。ここで初めて、掛金の税効果や受取の柔軟性を並べる意味が出てきます。国民年金基金の掛金は全額が社会保険料控除の対象で、連合会も税負担の軽減を前面に出しています。課税所得400万円の人が年30万円を掛けた場合、所得税と住民税の合計で約9万円が軽くなるという試算を示しています。この効果は自営業者として掛けるからこそ得られるもので、会社員になったら使えません。
副業で会社員をしている人、家族の扶養に入る人はどうなるか
ここは相談が多いところなので分けて書きます。
まず、会社に雇われながら副業で個人事業もしている人です。この人は厚生年金の加入者、すなわち第2号被保険者です。副業の売上があっても、国民年金基金には入れません。事業所得があるかどうかではなく、年金制度上の被保険者の種別で決まります。副業の規模が大きくても結論は変わりません。この立場で老後の上乗せを作るなら、iDeCoか小規模企業共済を検討する順番になります。ただし小規模企業共済は事業を営んでいることが前提なので、副業の実態と申告の状況を確認したうえで判断してください。
次に、勤務先の社会保険に入らない働き方をしている人です。週の所定労働時間が短く、厚生年金の加入要件を満たさない場合、その人は第1号被保険者のまま国民年金を自分で納めます。この立場であれば国民年金基金に入れます。パートやアルバイトを並行しているフリーランスは、自分が社会保険に入っているかどうかを給与明細で確認してください。厚生年金保険料の控除行があれば第2号、なければ第1号です。推測ではなく明細を見るのが確実です。
3つ目に、配偶者の扶養に入る場合です。厚生年金加入者に扶養される配偶者は第3号被保険者で、これも国民年金基金の対象外です。事業を縮小して配偶者の扶養に入る選択をすると、その時点で基金の資格を失います。独立から結婚や出産を挟んで働き方を変える人は、この分岐を先に把握しておいたほうがよいです。
4つ目に、法人を作る場合です。個人事業主が法人化して自分を役員にすると、役員報酬を出す限り厚生年金に加入します。つまり法人化は、自分の意思で第1号から第2号へ移る行為です。国民年金基金の資格はここで失われます。法人化を検討するときは、税金と社会保険料の増減だけでなく、基金の掛金が止まることまで含めて年間の収支を並べてください。事業の収益や経理の全体像を整理する必要があるので、数字の作り方に不安があるなら経理・財務・法務の在宅ワーク案件ガイドで、外部に任せられる範囲を把握しておくと判断が早くなります。
掛金の上限とiDeCoとの枠の取り合い
国民年金基金に入る側の実務で、いちばん間違いが起きやすいのが掛金の上限です。連合会は上限と、iDeCoとの関係をはっきり書いています。
掛金の上限は、月額6万8,000円です。 給付の型及び加入口数は、掛金月額6万8,000円以内で選択できます。 (ただし、個人型確定拠出年金にも加入している場合は、その掛金と合わせて6万8,000円以内となります。) 出典: npfa.or.jp
重要なのは括弧の中です。国民年金基金とiDeCoは、別々に6万8,000円ずつ使えるのではなく、2つ合わせて6万8,000円が天井です。この枠を両方に分けて使うため、配分の判断が必要になります。
配分を考えるときの軸は、受取額が確定しているかどうかです。国民年金基金は、加入時に将来受け取る年金額が決まる確定給付です。連合会も、加入したときに将来受け取れる年金額をあらかじめ確認してから加入できると説明しています。インフレに弱い代わりに、金額が読めます。iDeCoは運用の結果で受取額が変わります。増える可能性も減る可能性もあります。
ここから導ける実務的な結論は、年齢と収入の安定度で配分を変えるということです。50代で残り期間が短く、老後の生活費の底を固めたい人は、金額が確定する国民年金基金の比重を上げたほうが計画が立ちます。30代で運用期間が長く取れる人は、iDeCoの比重を上げて時間を味方につける余地があります。どちらにも極端に振らず、基金で生活費の下支えを作り、iDeCoで上振れを狙う分け方が現実的です。
もう1つ注意点があります。国民年金基金に加入すると、付加年金の保険料を納める必要がなくなります。基金が付加年金を代行しているためです。付加年金とiDeCoの併用を前提に計算していた人は、基金に入る時点で前提が1つ崩れるので計算し直してください。また、掛金は口数単位で増減できますが、1口目は減らせません。1口目は終身年金で、これが制度の土台になっているためです。最初に大きく入れると後から下げきれないので、余裕のある口数から始めて増口するほうが安全です。年間分を前納すると0.1か月分が割引される仕組みもあり、キャッシュフローに余裕があるなら4月にまとめて納めるほうが有利になります。
独立するとき、会社員に戻るときの段取り
制度の理解を、実際の動きに落とします。
会社を辞めて独立する場合の順番はこうです。まず退職日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口で国民年金の第1号被保険者への種別変更を届け出ます。健康保険の切替も同じタイミングで行います。ここが終わって第1号になってから、国民年金基金の資料を請求して加入を申し込みます。逆の順番にはできません。第1号であることが加入の前提だからです。
申し込みは、全国国民年金基金か、自分の職業に対応する職能型国民年金基金のどちらかに行います。職能型は、弁護士や医師など特定の職種のために作られた基金です。該当する職種でなければ全国国民年金基金を選びます。加入後に給付の型と口数を決めますが、収入が安定していない独立初年度に上限まで掛けるのは危険です。掛金は所得控除で戻ってくるとはいえ、支払いは毎月現金で出ていきます。売上の見通しが立つまでは、1口目の終身年金だけで始めて、翌年以降に増口するのが実務的です。
自分の職種の収入水準を知らないまま掛金を決めると、高すぎる設定になりがちです。たとえば文章や編集の仕事で独立する人なら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で公的統計ベースの水準を確認してから、年間の可処分所得に対して何パーセントを老後資金に回すかを決めてください。売上ではなく、経費と税と社会保険料を引いた後の金額で考えるのが要点です。
会社員に戻る場合の順番は逆になります。入社日が決まったら、その時点で加入している基金へ連絡します。資格喪失日は厚生年金の資格取得日と連動するので、自分で日付を決めることはできません。口座振替を止める手続きと、喪失後に還付が発生する場合の振込先の確認を同時に済ませます。私のときは、基金への連絡が入社から2か月遅れ、2回分が引き落とされてから還付されました。連絡が早ければ避けられた手間です。
そして、資格喪失後の年金の記録を残しておいてください。将来受け取るときに必要になります。加入証書や年金額の通知は、退職や転職で書類が散らかる時期に届きます。年金関連の書類だけを1つのフォルダに集めておくと、受給時に探す手間がなくなります。
給付の型と口数は、厚生年金の代わりになるかを基準に決める
国民年金基金に入れる立場だとわかったら、次に決めるのが給付の型と口数です。ここは商品選びに近い部分で、厚生年金が持っている性質とどこが違うかを意識すると選びやすくなります。
給付の型は、大きく終身年金と確定年金に分かれます。終身年金は生きている限り受け取り続けられる型で、1口目は必ずこの終身年金から選びます。確定年金は、決まった年数だけ受け取る型です。連合会は、確定年金の年金額が終身年金の年金額を超える選択はできないという制限を置いています。つまり、土台は必ず終身で、確定年金はその上に乗せる形しか認められません。
この制限には意味があります。厚生年金は終身で支払われる年金です。自営業者の2階部分を埋めるという役割を果たすには、同じく終身でなければ代替になりません。65歳から80歳までの15年だけ受け取れる設計では、90歳まで生きたときに手元に何も残りません。長生きのリスクに対する備えという性格を維持するために、終身を土台に置く構造になっています。
口数の決め方は、目標額から逆算するのではなく、毎月払い続けられる金額から決めてください。理由は前に書いたとおり、1口目は減らせないからです。売上が落ちた年に掛金が重くのしかかると、事業そのものの現金が足りなくなります。老後のために現在の事業を細らせるのは本末転倒です。私の周りで長く続けている人は、月1万円前後から始めて、利益が出た年に増口しています。逆に、初年度に上限近くまで入れて2年目に苦しくなった人も見ました。増口はいつでもできますが、減口には制限があるという非対称を忘れないでください。
年齢も口数に影響します。掛金の額は、同じ年金額を狙うなら加入時の年齢が高いほど高くなります。50歳で始める人と30歳で始める人では、同じ1口の掛金が大きく違います。これは不利というより、残りの払込期間が短いぶん1回の負担が重くなるという算数です。40代後半以降に検討する人は、口数を増やすより、小規模企業共済や別の積立と組み合わせて総額を作るほうが無理がありません。
資格を失ったあと、受け取るまでに何をするか
資格喪失で話が終わらない点も押さえておきます。掛けた分は将来年金として支払われますが、その受取が自動で始まるわけではありません。
まず、複数の基金に加入歴がある場合の扱いです。職能型基金から全国国民年金基金へ移った人や、資格喪失を挟んで再加入した人は、記録が複数に分かれます。短い期間だけ加入して資格を失った人の記録は、国民年金基金連合会が中途脱退者の分として引き継ぐ仕組みになっています。受取のときに窓口が基金ではなく連合会になることがあるので、自分の記録がどこにあるかを把握しておいてください。加入証書と、資格喪失時に届く通知が手がかりになります。
次に、住所変更の届出です。年金は受給年齢まで何十年も先の話になりがちで、その間に引っ越す人がほとんどです。住所が古いままだと、受給開始の案内が届きません。年金は請求しなければ支払われない仕組みなので、案内が届かないことは実害につながります。資格を失った後も、住所が変わったら届出をしてください。会社員に戻った人は特に忘れやすいところです。
3つ目に、確定申告との関係です。資格喪失した年は、その年に払った掛金までが社会保険料控除の対象になります。年の途中で会社員になった人は、基金の掛金の控除証明書と、前職や新しい勤務先の源泉徴収票の両方が必要になります。年末調整だけで終わらせると、基金の掛金の控除が漏れることがあります。確定申告をして取り戻してください。還付の対象になるかどうかは、控除証明書に記載された払込額を見ればすぐわかります。
4つ目に、受取開始年齢の選択です。国民年金基金の年金は、選んだ型に応じて65歳から受け取るのが基本です。公的年金の繰下げのような柔軟な調整が効かない設計なので、老齢基礎年金や老齢厚生年金を繰り下げるかどうかを考えるときに、基金からの入金が先に始まることを前提に組んでください。65歳から基金の年金が入るなら、そのぶん公的年金の繰下げに耐えやすくなります。この組み合わせは受取総額に効くので、受給が近い人は年金事務所で見込額を出してもらってから決めるとよいです。
判断の順番を1本の線にまとめる
ここまでを、決める順番として並べ直します。
第1に、自分の被保険者種別を確定させます。給与明細に厚生年金保険料の控除があるかを見ます。あれば第2号で、国民年金基金は検討対象から外れます。なければ第1号で、検討対象に入ります。配偶者の扶養に入っている人は第3号で、これも対象外です。ここを推測で飛ばすと、以降の検討がすべて無駄になります。
第2に、第1号だとわかったら、国民年金本体の保険料を滞納していないかを確認します。基金は国民年金の上乗せなので、本体を滞納した期間に対応する基金の年金は受け取れません。滞納期間があるなら、基金の掛金より先に本体の追納を優先します。保険料の免除を受けている人は、そもそも基金に加入できません。
第3に、6万8,000円の枠をどう配るかを決めます。国民年金基金、iDeCo、その両方の組み合わせのどれにするかです。ここで小規模企業共済も併せて検討します。小規模企業共済は6万8,000円の枠とは別枠で月7万円まで掛けられるので、両方使える立場なら順番に使うほうが控除額は大きくなります。
第4に、独立や法人化の予定があるかを確認します。2年以内に法人化して役員報酬を取る予定があるなら、基金に大きく掛けても途中で止まります。止まっても掛けた分は将来年金になりますが、計画していた受取額には届きません。法人化の時期が視野に入っている人は、いったんiDeCoに寄せて、法人化後は企業型の制度を検討するほうが筋が通ります。
第5に、家族の保障を見ます。国民年金基金は障害に対する上乗せを持ちません。働けなくなったときの収入をどう守るかは、所得補償保険や就業不能保険で別に組む必要があります。老後の備えと、働けなくなったときの備えを、同じ財布の中で取り違えないでください。
この5つを順に潰せば、自分が国民年金基金に入るべきか、入れる立場なのか、いくら掛けるべきかは自動的に決まります。制度の損得を一般論で議論する前に、まず自分の種別を確定させることが出発点です。お金の設計を体系的に学びたい人は、ファイナンシャル・プランニング技能検定2級の学習範囲が年金と保険の全体像をそのまま扱っているので、判断の土台を作るのに向いています。
掛けるときと受け取るときの税金、そして亡くなったときの扱い
厚生年金と比べるなら、税金の扱いも見ておく必要があります。ここは国民年金基金がiDeCoと明確に違う部分です。
掛金を払うときの控除の区分が違います。国民年金基金の掛金は社会保険料控除に入り、iDeCoの掛金は小規模企業企業共済等掛金控除に入ります。どちらも全額が所得控除の対象になるので、節税の効果そのものに差はありません。ただし控除の枠が別なので、確定申告書に書く欄が違います。両方に掛けている人は、証明書を2枚とも添付してください。片方を貼り忘れて控除が漏れる例が毎年出ています。
受け取るときは、どちらも公的年金等の雑所得です。公的年金等控除が使えるため、老齢基礎年金と老齢厚生年金と合わせた合計額で課税額が決まります。ここで厚生年金との関係が出てきます。会社員期間が長くて老齢厚生年金が厚い人は、基金の年金が上に乗ると公的年金等控除の枠を超えて課税対象が増えます。逆に第1号期間が長くて公的年金が薄い人は、基金の年金を足しても控除の範囲に収まりやすい。同じ月額の年金でも、受け取る人の公的年金の厚みによって手取りが変わるということです。
亡くなったときの扱いも、型によって違います。保証期間のある終身年金や確定年金では、受給前や保証期間中に亡くなった場合に遺族一時金が支払われます。一方で、掛金が安く設定されている保証期間なしの型は、その対象から外れます。
※:保証期間のない「終身年金B型」は遺族一時金の対象外。終身年金B型では年金受給前の死亡で遺族に1万円が支給される。(全国国民年金基金「よくあるご質問(給付に関して)」参照) 出典: nanairolife.co.jp
掛金の安さだけで型を選ぶと、ここが抜けます。厚生年金には遺族厚生年金という別の仕組みがあり、亡くなった後の家族の生活を支える機能が制度に組み込まれています。国民年金基金にはその機能が弱いので、扶養する家族がいる人は保証期間のある型を選ぶか、掛金の一部を生命保険に振り分けるかを選ぶ必要があります。老後の自分のための積立と、家族のための保障は別の財布だと考えてください。
制度改正の動きをどう追うか
最後に、情報の追い方を書いておきます。年金の制度は数年おきに変わります。iDeCoの拠出限度額や加入可能年齢は過去に何度も改正されていて、そのたびに6万8,000円の枠の使い方が変わります。国民年金基金の側も、60歳以上65歳未満の任意加入者を対象に含めるなど、対象範囲が広がってきました。
追う先は3つに絞ってよいです。1つ目は国民年金基金連合会のサイトのお知らせ欄です。加入条件や掛金の上限が変わるときは、ここに出ます。2つ目は日本年金機構の通知です。種別変更や保険料に関わる変更は、年金事務所からの案内に出ます。3つ目は確定申告のタイミングです。控除証明書の書式や控除額の上限が変われば、証明書の記載が変わります。毎年11月前後に届く社会保険料控除証明書を、金額だけ見て仕分けせずに、注記まで読む習慣をつけてください。
反対に、追わなくてよいものもあります。金融機関や保険代理店が出す「どちらが有利か」という比較記事は、自分の被保険者種別が確定していない段階で読むと混乱するだけです。第1号なのか第2号なのかが決まれば、選べる制度は自動的に絞られます。先に事実を固め、それから商品の比較に進む順番を守れば、判断を間違えることはほとんどありません。
働き方が変わるタイミングは、年金だけでなく健康保険も税金も同時に動きます。1つの手続きだけを単独で進めると、どこかが抜けます。独立するときは国民年金、国民健康保険、開業届、青色申告の承認申請を1枚の紙に並べて期限を書き、上から潰していってください。会社員に戻るときは、基金への連絡、国民健康保険の脱退、確定申告の準備を同じように並べます。手続きの順番を紙に落とすだけで、後から還付を待つような無駄がほとんど消えます。
よくある質問
Q. 国民年金基金と厚生年金の両方に加入することはできますか?
できません。国民年金基金に加入できるのは国民年金の第1号被保険者などで、厚生年金に加入している会社員(第2号被保険者)とその被扶養配偶者(第3号被保険者)は加入できないと連合会が明記しています。両方に掛けて受取額を二重に増やす設計は制度上ありません。
Q. 会社員になったら、それまで払った国民年金基金の掛金はどうなりますか?
掛金は途中で引き出せませんが、掛けた期間に対応する年金として将来受け取れます。基金または連合会から支給されます。資格喪失日は厚生年金の資格取得日と連動するため自分で選べません。口座振替が止まらず二重に引き落とされることがあるので、入社が決まったら加入している基金へ自分から連絡してください。
Q. 国民年金基金とiDeCoは合わせていくらまで掛けられますか?
2つ合わせて月額6万8,000円が上限です。それぞれに6万8,000円ずつ使えるわけではありません。受取額が確定する国民年金基金と、運用結果で変わるiDeCoの比重を、年齢と収入の安定度に合わせて配分してください。小規模企業共済はこの枠とは別枠です。
Q. 副業で会社に勤めながら個人事業もしています。国民年金基金に入れますか?
勤務先で厚生年金に加入しているなら入れません。事業所得があるかどうかではなく、年金制度上の被保険者の種別で決まります。給与明細に厚生年金保険料の控除があれば第2号被保険者です。この立場で老後の上乗せを作るなら、iDeCoや小規模企業共済を検討する順番になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
久世 誠一郎@SOHO編集部
元人材コンサル・中小企業支援歴25年
大手人材会社でコンサルティング部門を率いた後、中小企業の業務改善・外注戦略の支援に転身。発注者目線でのクラウドソーシング活用術を発信しています。
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