任意継続と国民健康保険はどちらを選ぶべきか


この記事のポイント
- ✓任意継続と国民健康保険のどちらを選ぶべきかを
- ✓保険料の決まり方の違いから整理しました
- ✓標準報酬月額の3つで結論が変わります
結論から書きます。任意継続と国民健康保険のどちらが得かは、扶養している家族の人数、前年の所得、そして退職時の標準報酬月額という3つの数字でほぼ決まります。一般論として「任意継続のほうが安い」と書かれている記事をよく見かけますが、正直なところ、これは条件を省きすぎています。扶養家族がいない人にとっては逆の結論になることが珍しくありません。この記事では、両者の保険料がそれぞれ何で決まるのかを分けて説明し、自分の場合にどちらを選べばよいかを判断できるところまで持っていきます。
先に結論。判断は3つの数字で決まる
比較の全体像を先に置いておきます。どちらを選ぶかで迷ったときに見るべきなのは、次の3点です。
1つ目は、扶養に入れている家族がいるかどうかです。任意継続は在職中の扶養をそのまま引き継げます。配偶者や子どもを扶養に入れていても、保険料は被保険者本人の分だけです。いっぽう国民健康保険には扶養という考え方がありません。家族全員がそれぞれ加入者として数えられ、1人あたりの均等割額が人数分だけ積み上がります。この差は大きく、扶養家族が2人以上いる人は任意継続が有利になる傾向がはっきり出ます。
2つ目は、前年の所得です。国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されます。退職前の1年間に会社員として普通に給与を受け取っていた人は、その所得で計算された保険料が、収入が落ちたあとに請求されます。ここが国民健康保険のつらいところです。逆に、前年の所得がもともと低かった人や、年の途中から働いていなかった人は、国民健康保険のほうが安くなります。
3つ目は、退職時の標準報酬月額です。任意継続の保険料には上限があります。協会けんぽの場合、退職時の標準報酬月額が32万円を超えていても、32万円として計算されます。つまり給与水準が高かった人ほど、任意継続の保険料が実際の収入に見合わない程度まで抑えられます。この頭打ちに届いていたかどうかが、比較の結論を大きく動かします。
この3つを踏まえると、大まかな傾向が見えてきます。扶養家族がいて、前年の所得が高く、標準報酬月額が上限に届いていた人は任意継続。単身で、前年の所得がそれほど高くない人は国民健康保険。この2つが典型です。ただし境界にいる人は実際に試算しないと分かりません。どちらの金額も窓口で出してもらえるので、必ず両方を並べてから決めてください。
退職後の健康保険には3つの道がある
比較の前に、選択肢そのものを確認しておきます。全国健康保険協会(協会けんぽ)は、退職後の健康保険の選び方を次のように案内しています。
退職後の健康保険には、「健康保険任意継続」、「国民健康保険」、「ご家族の健康保険(被扶養者)」の3つの選択があります。毎月納める保険料などを比較の上、選択された健康保険にお手続ください。 出典: kyoukaikenpo.or.jp
任意継続とは、退職前に入っていた会社の健康保険に、退職後も個人の資格で最長2年間残る仕組みのことです。加入するには、退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あることと、退職日の翌日から20日以内に手続きをすることの2つが必要です。手続き先は、協会けんぽなら住んでいる都道府県の支部です。
国民健康保険は、市区町村が運営する制度です。ほかの健康保険に入っていない人が入る仕組みなので、加入条件という意味でのハードルはありません。手続き先は住んでいる市区町村の国民健康保険担当課です。届出の期限は多くの自治体で退職日の翌日から14日以内としています。
家族の健康保険の被扶養者になる道も忘れずに検討してください。被扶養者には保険料の負担がありません。扶養に入れるかどうかの条件は、家族が加入している健康保険ごとに定められており、収入の基準や必要な書類が違います。独立したばかりで収入の見込みが立たない時期に、いったん配偶者や親の扶養に入り、売上が育ってから外れるという組み立て方もあります。まずは家族の勤務先に条件を確認するのが確実です。
このほか、業種によっては同業者で作る国民健康保険組合に入れる場合があります。建設、医療、美容、文筆といった分野で古くから存在し、所得ではなく定額で保険料が決まる組合もあります。加入には業種や地域の条件があり、誰でも入れるものではありませんが、自分の業種に組合があるかどうかは一度調べておく価値があります。
任意継続の保険料はこう決まる
任意継続の保険料を決める式はひとつです。退職時の標準報酬月額に、住んでいる都道府県ごとの健康保険料率(子ども・子育て支援金率を含む)を掛けます。40歳から64歳までの人は、ここに介護保険料が加わります。在職中は会社が半分を負担していたので、任意継続に移ると控除されていた額のおよそ2倍になります。
ここで効くのが上限です。協会けんぽでは、退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた場合でも32万円として計算します。標準報酬月額が50万円だった人も、32万円だった人も、同じ保険料になるということです。この頭打ちがあるため、給与が高かった人ほど任意継続の相対的な有利さが増します。逆に標準報酬月額がもともと20万円台だった人には頭打ちが効かず、単純に2倍の負担になります。
もうひとつの特徴が、原則として2年間変わらないことです。独立して収入が落ちても保険料は下がりません。所得が下がったことを理由にした軽減や減免の仕組みが、任意継続には用意されていないからです。ただし例外的に変わる場合があり、加入中に40歳になって介護保険の第2号被保険者に該当したとき、65歳になって該当しなくなったとき、都道府県別の保険料率が改定されたとき、標準報酬月額の上限が変わったとき、保険料率の違う都道府県へ引っ越したときが該当します。
納付は毎月10日までの納付書払いか口座振替です。前納制度もあり、6か月分または12か月分をまとめて納めると年4パーセントの割引が付きます。年度の途中で加入した人は、資格を取得した月の翌月分から9月分または3月分までをまとめて納められます。納付期限を1日でも過ぎると資格を失うという厳しい決まりがあるので、口座振替か前納にしておくのが安全です。納付した際の領収証書は確定申告で使ううえ再発行ができないため、まとめて保管しておいてください。
国民健康保険の保険料はこう決まる
国民健康保険料は、世帯単位で計算します。所得に比例する所得割と、加入者1人あたりにかかる均等割、世帯ごとにかかる平等割を足し合わせる形です。東京23区のように平等割を置いていない自治体もあります。さらに医療分、後期高齢者支援金分、40歳から64歳の人にかかる介護分、自治体によっては子ども・子育て支援金分と、部品ごとに分かれています。
料率も金額も市区町村ごとに違います。同じ所得でも引っ越すだけで金額が変わるのが国民健康保険の特徴です。その代わり、任意継続にはない値引きの仕組みが用意されています。
最初に押さえたいのが法定軽減です。世帯主と加入者全員の前年の所得の合計が一定額を下回ると、均等割額と平等割額が7割、5割、2割のいずれかで軽くなります。東京都中央区が公表している令和8年度の基準は次のとおりです。
| 軽減割合 | 世帯の総所得金額等の合計がこの額以下 |
|---|---|
| 7割 | 43万円+(給与所得者等の数−1)×10万円 |
| 5割 | 43万円+(給与所得者等の数−1)×10万円+(31万円×被保険者数) |
| 2割 | 43万円+(給与所得者等の数−1)×10万円+(57万円×被保険者数) |
この軽減は申請なしで適用されますが、所得の申告をしていないと役所が判定できません。収入がなかった年も住民税の申告だけは済ませてください。また、小学校に上がる前の子どもにかかる均等割額は、所得に関係なく一律で2分の1になります。子どもが多い世帯では、この軽減が効くぶん国民健康保険の不利が薄まります。
さらに、災害や所得の大幅な減少を理由にした条例減免もあります。北九州市の例では、失業や事業の休廃止で所得が前年比30パーセント以上減り、かつ300万円以下になる見込みの世帯について、所得割額の40から80パーセントを減免しています。基準も割合も自治体ごとに違うので、住んでいる市区町村のページで確認してください。任意継続を選ぶと、これらの仕組みは一切使えません。比較のときに見落とされやすい点です。
会社都合で辞めた人は前提が変わる
比較の結論をいちばん大きく動かすのが、退職の理由です。倒産や解雇、雇い止めで職を失った人には、国民健康保険側に強力な軽減が用意されています。非自発的失業者軽減と呼ばれるもので、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算し直します。
対象になるのは、離職時に65歳未満で、雇用保険の特定受給資格者または特定理由離職者にあたる人です。判定はハローワークで交付される雇用保険受給資格者証、または雇用保険受給資格通知に記載された離職理由のコードで行われます。特定受給資格者は11、12、21、22、31、32、特定理由離職者は23、33、34です。自己都合退職のコードは含まれません。効く期間は離職日の翌日から翌年度の末日までで、最大でおよそ2年分になります。
この軽減が当たると、前年の所得が高かった人ほど国民健康保険料が大きく下がります。年収が高く、任意継続の上限が効くはずだった人でも、給与所得を3割に圧縮したあとの国民健康保険料のほうが安くなることがあります。会社都合で辞めた人は、単純な保険料の比較ではなく、軽減を当てたあとの金額で比べないと判断を誤ります。
しかも、この軽減は保険料だけに効くものではありません。医療費が高額になったときの自己負担限度額の判定にも、同じ100分の30が使われます。入院や手術の予定がある人にとっては、毎月の保険料以上に大きな差になり得ます。
届出をしないと適用されない点にだけ注意してください。市区町村は対象者を自分で把握できないため、雇用保険受給資格者証か雇用保険受給資格通知の全件版を持って窓口に行く必要があります。雇用保険受給資格通知には全件版と最新処理状況版の2種類があり、届出に使えるのは全件版です。手ぶらで行って出直すことになりやすいので、持ち物を確認してから向かってください。
ケース別の選び方
3つの数字と退職理由が分かったところで、よくあるケースに当てはめてみます。あくまで傾向なので、最後は必ず実額で確かめてください。
単身で、前年の所得が300万円前後、自己都合で退職した場合。国民健康保険料は前年の所得で計算されるため1年目は高めに出ますが、任意継続も標準報酬月額の上限に届いていない可能性が高く、2倍の負担がそのままのしかかります。どちらも決め手に欠けるため、実額の比較が必須になります。判断に迷ったら、翌年の見通しまで含めて考えてください。独立1年目の所得が下がる見込みなら、2年目に国民健康保険が大きく下がります。
配偶者と子ども2人を扶養に入れていて、前年の所得が高い場合。任意継続が有利になりやすい典型です。国民健康保険では家族4人分の均等割が積み上がるのに対し、任意継続は本人の保険料だけで家族の保障が続きます。標準報酬月額が32万円の上限に届いていれば、差はさらに開きます。
会社都合で退職した場合。前述のとおり、国民健康保険の非自発的失業者軽減が効きます。前年の所得が高かった人ほど効果が大きいため、扶養家族がいる場合でも国民健康保険が逆転することがあります。まず軽減後の金額を市区町村の窓口で出してもらい、それから任意継続と比べてください。
独立するが当面は収入の見込みが立たない場合。家族の健康保険の扶養に入れるかを先に確認する価値があります。被扶養者には保険料の負担がありません。扶養の条件は加入している健康保険ごとに違うので、家族の勤務先に問い合わせます。条件を満たさないなら任意継続と国民健康保険の比較に戻ります。
2年目に乗り換えるという選択
以前の任意継続には、自分の意思では途中でやめられないという制約がありました。現在は、任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出れば資格を喪失できます。資格喪失申出書を出す形です。この変更によって、比較の仕方そのものが変わりました。
具体的には、1年目は任意継続を選んで扶養家族の保障を維持し、前年の所得が下がる2年目から国民健康保険に移る、という組み立てができます。独立初年度の所得が会社員時代より低くなるのは珍しいことではありません。その低い所得をもとに計算される2年目の国民健康保険料は、1年目より大きく下がります。法定軽減の基準に入れば、均等割まで7割や5割で軽くなります。
判断のために見るべきは、1年目の確定申告で確定した所得です。この金額が出たら、市区町村の窓口で「この所得だと国民健康保険料はいくらになるか」を聞けば試算してもらえます。任意継続の保険料はすでに分かっているので、そこで比べて安いほうに移ります。切り替えは年度の途中でも可能です。
注意点を2つ挙げます。1つは、任意継続は最長2年で必ず終わるということです。2年経てば自動で国民健康保険に切り替わるわけではなく、市区町村への届出が必要です。終了月をカレンダーに入れておいてください。もう1つは、国民健康保険に移ると家族全員が加入者として数えられるという点です。1年目に扶養に入れていた家族の分がそのまま保険料に乗るので、乗り換えの試算では家族全員分で比べる必要があります。
自分で試算するときの手順
比較は概算でも構いませんが、境界にいる人は実額で出さないと判断できません。集める数字と、それをどこで出してもらうかを順番に並べておきます。
最初に用意するのは、退職時の標準報酬月額です。給与明細の控除欄か、会社の担当者に聞けば分かります。健康保険料と厚生年金保険料の控除額から逆算することもできますが、等級の境目で間違えやすいので、数字そのものを確認するのが確実です。この1つがないと任意継続の試算ができません。
次に、前年の所得です。源泉徴収票の給与所得控除後の金額、または住民税の通知書に記載された総所得金額等を見ます。国民健康保険料はこの数字をもとに計算されます。年の途中で退職した場合、退職した年の所得は翌年度の保険料に反映されるので、今年度の保険料は去年1年分の所得で決まっている、という時間のずれを意識してください。
3つ目が、世帯に何人が国民健康保険に入ることになるかです。任意継続なら扶養家族の人数は保険料に影響しませんが、国民健康保険では人数分の均等割がかかります。配偶者が自分で働いていて別の健康保険に入っているなら、その人は数に入りません。子どもが未就学児なら均等割が半額になります。この人数の数え方を間違えると、試算が丸ごとずれます。
ここまで揃えたら、2か所に問い合わせます。任意継続の見込み額は、住んでいる都道府県の協会けんぽ支部に標準報酬月額を伝えれば教えてもらえます。健康保険組合に入っていた人は、その組合に問い合わせます。国民健康保険料は、市区町村の国民健康保険担当課に前年の所得と加入予定の人数を伝えれば試算してもらえます。公式サイトに試算ページを置いている自治体も増えています。会社都合の退職なら、非自発的失業者軽減を当てた場合の金額も一緒に出してもらってください。
比べるときは、必ず年額に直します。任意継続は月額で案内されることが多く、国民健康保険は年額を複数回に分けて納める形が一般的なので、単位を揃えないと誤差では済まない差が出ます。介護保険料が乗る40歳から64歳の人は、両方の試算に介護分が入っているかも確認してください。
よくある勘違いを整理する
比較の相談でくり返し出てくる誤解があります。代表的なものを挙げておきます。
「任意継続のほうが安いと決まっている」という思い込みが1つ目です。扶養家族がいない人にとっては、国民健康保険のほうが安くなる場面が珍しくありません。特に前年の所得が低かった人は、法定軽減で均等割が7割や5割まで下がるため、任意継続とは比べものにならない金額になります。一般論ではなく自分の数字で判断してください。
2つ目が「任意継続にしておけば保険料が下がっていく」という誤解です。任意継続の保険料は原則として2年間変わりません。独立して収入が落ちても、所得に連動して下がることはありません。所得が下がったときに効くのは国民健康保険側の軽減と減免です。この非対称を知らないと、2年目の乗り換えという選択肢を思いつけません。
3つ目が「20日を過ぎても相談すれば何とかなる」という期待です。任意継続の期限は退職日の翌日から20日以内で、原則として動きません。郵送の場合は20日以内の必着です。離職票を待つ必要はないので、退職した週のうちに手続きを済ませるつもりで動いてください。
4つ目が「国民健康保険には減免があるから任意継続より必ず安い」という逆の思い込みです。法定軽減は前年の所得が基準を下回ってはじめて効きます。退職前に普通に給与を受け取っていた人は、1年目はまず基準を超えます。軽減が効くのは、所得の下がった年が反映される2年目からです。
5つ目が「家族の扶養は収入がある人は入れない」という決めつけです。扶養に入れるかどうかの条件は、家族が加入している健康保険ごとに定められています。独立直後で収入の見込みが立たないなら、条件を満たす可能性があります。判断する前に、家族の勤務先に確認してください。
比較のときに見落とされやすい点
金額以外にも、判断に関わる違いがあります。5つ挙げます。
1つ目は給付の範囲です。医療機関での窓口負担の割合は、任意継続でも国民健康保険でも同じです。高額療養費の仕組みも両方にあります。大きく違うのは休業中の所得補償です。任意継続では、被保険者になってから発生した病気やケガについて傷病手当金は支給されません。国民健康保険にも傷病手当金の仕組みは基本的にありません。つまりどちらを選んでも、独立後に働けなくなったときの所得補償は自分で用意することになります。
2つ目は継続給付です。在職中から傷病手当金や出産手当金を受けている人は、条件を満たせば退職後も引き続き受け取れます。傷病手当金の場合、退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日の時点で受けているか受けられる状態にあることが条件です。この継続給付は、任意継続を選んだかどうかとは別の話なので混同しないでください。
3つ目は健診です。任意継続に移れば協会けんぽの健診を受けられます。国民健康保険に移ると、市区町村が実施する特定健康診査などに変わり、対象年齢や内容が違ってきます。毎年の健診を欠かさず受けている人は、この違いも確認しておくと安心です。
4つ目は期限です。任意継続は退職日の翌日から20日以内、国民健康保険は多くの自治体で14日以内が目安です。離職票が届くのを待っているうちに20日が過ぎるという失敗が多いので、任意継続の手続きは離職票を待たずに進めてください。
5つ目は納付の事故です。任意継続は納付期限を過ぎると資格を失います。国民健康保険は滞納しても即座に資格を失うわけではありませんが、有効期間の短い証に切り替わったり、延滞金が発生したりします。どちらも放置すると立場が悪くなるので、払えないと分かった時点で窓口に相談するのが正解です。
年金と確定申告の扱い
健康保険の話に集中していると抜けるのが年金です。厚生年金保険には任意継続にあたる仕組みがありません。会社員だった人は退職によって国民年金の第1号被保険者になり、市区町村で種別の変更を届け出ます。配偶者を扶養に入れていた場合、その配偶者も第3号被保険者から第1号被保険者に変わるので、2人分の手続きが必要です。ここは任意継続を選んでも国民健康保険を選んでも同じです。
保険料の負担が重い場合は、免除や納付猶予の制度があります。本人と配偶者、世帯主の前年所得が一定額以下なら、申請して承認されることで納付が免除されます。免除は全額、4分の3、半額、4分の1の4段階です。さらに、失業や倒産、事業の廃止の事実が確認できれば、本人の前年所得に関係なく利用できる特例があります。日本年金機構の国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度に必要書類と申請方法が載っています。全額免除の期間は老齢基礎年金の計算で全額納付の2分の1として反映されますが、未納にはこの2分の1も付きません。
確定申告では、任意継続の保険料も国民健康保険料も国民年金保険料も、すべて社会保険料控除の対象になります。事業の経費ではなく所得控除という扱いなので、帳簿では区別します。この線引きは初年度にいちばん迷うところなので、個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法で仕訳の考え方を整理しておくと申告がスムーズになります。生計を同じくする家族の分を自分が払った場合、払った人の控除に入れられる点も覚えておいてください。
保障の穴をどう埋めるかも考えどころです。どちらを選んでも休業中の所得補償は付かず、会社員時代の団体保険は退職で切れます。年代と家族構成によって必要な範囲は変わるので、生命保険おすすめ比較【2026年版】|年代別の選び方のような整理を出発点に、足りない部分だけを補う形が無駄がありません。
市場を長く見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、任意継続と国民健康保険の比較で最後に効いてくるのは、1年目の所得をどれくらい見込めるかという一点です。ここが読めている人は、2年目の乗り換えまで含めた設計ができます。読めていない人は、目先の金額だけで選んでしまい、翌年に「乗り換えられたのに」と気づくことになります。
運営者として見てきた限りでは、独立初年度の所得が読める人には共通点があります。在職中のうちに小さく受注を始めていて、辞めた月から売上がゼロにならないことです。ゼロから始めると、最初の3か月は営業だけで過ぎます。その3か月にも保険料と年金は発生します。制度の選択より前に、収入の谷を浅くしておくことのほうが効きます。
仲介手数料の話も、ここに直結します。年間100万円の仕事を受けたとき、手数料が20パーセントなら20万円が消えます。この20万円は、任意継続と国民健康保険の差額よりはるかに大きいことがほとんどです。中間マージンが乗らない直接取引なら、同じ予算を持つ依頼者はより多く頼め、受ける側は手数料0%のぶん手取りが厚くなります。制度の選び方を詰めるのと同じくらい、どこで受注するかを見直す価値があります。
職種の選び方にも触れておきます。企業の業務にAIを組み込む支援は需要が伸びており、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように相談から設計まで請け負う形が増えています。マーケティングとセキュリティをまたぐ領域でも、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように複数の専門を横断する案件が目立ちます。自分の職種の相場を確かめたいなら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場やソフトウェア作成者の年収・単価相場が目安になります。書く仕事から入る人にとっては、文書の型を身につけておくと提案の説得力が変わるため、ビジネス文書検定のような資格が実務経験の浅い時期を補ってくれます。
もうひとつ、編集の現場で気づいたことを添えておきます。独立を考えている人ほど、制度の比較には時間をかけるのに、受注先の条件は見直さないまま動き出します。ところが年間の手取りに与える影響は、後者のほうが桁ひとつ大きいことがほとんどです。制度の選択で変わるのは月あたり数千円から1万円台、受注先の条件で変わるのは年間で十数万円という規模になります。どちらも大事ですが、時間の配分としては逆になっている人が多い、というのが実感です。
最後に手順としてまとめます。退職日が決まったら標準報酬月額を確認し、任意継続の見込み額を協会けんぽの支部で聞く。次に市区町村で国民健康保険料の試算を出してもらい、会社都合なら軽減後の金額も出してもらう。家族の扶養に入れる可能性があるなら勤務先に条件を聞く。この3つを並べれば、20日の期限の中で迷わず決められます。
よくある質問
Q. 任意継続と国民健康保険、結局どちらが安いですか?
扶養している家族の人数、前年の所得、退職時の標準報酬月額の3つで決まります。扶養家族が多く前年の所得が高い人は任意継続が有利になりやすく、単身で前年の所得が低い人は国民健康保険が有利になりやすい傾向です。協会けんぽの任意継続は標準報酬月額が32万円を超えても32万円で計算されるため、給与が高かった人ほど頭打ちが効きます。
Q. 会社都合で退職した場合はどちらを選ぶべきですか?
国民健康保険側に非自発的失業者軽減があり、前年の給与所得を100分の30とみなして計算し直すため、国民健康保険が逆転することがあります。離職時に65歳未満で、雇用保険の特定受給資格者または特定理由離職者にあたる人が対象です。まず市区町村で軽減後の金額を出してもらい、それから任意継続と比べてください。
Q. 任意継続に入ったあとで国民健康保険に移れますか?
移れます。任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出れば資格を喪失します。1年目は任意継続で扶養家族の保障を維持し、前年の所得が下がる2年目から国民健康保険に移るという使い方ができます。なお任意継続は最長2年で終わり、そのときも自動では切り替わらないため市区町村への届出が必要です。
Q. どちらを選んでも受けられる給付は同じですか?
医療機関での窓口負担の割合と高額療養費は、どちらでも同じように使えます。違うのは休業中の所得補償で、任意継続では加入後に発生した病気やケガの傷病手当金は支給されず、国民健康保険にも基本的にこの仕組みはありません。在職中から受けている傷病手当金や出産手当金は、条件を満たせば退職後も継続して受け取れます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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