在宅の写真加工とレタッチは障害者手帳の有無より1日の枚数で決まる


この記事のポイント
- ✓障害者手帳をお持ちの方が在宅で写真の加工・レタッチを仕事にするための実務ガイド
- ✓フリーランス新法で守られる支払期日や条件明示
- ✓著作権と修正回数の取り決め
先日、在宅でレタッチの仕事をされている方から、こんな相談を受けました。「80枚の商品写真を納品したのに、『思っていた仕上がりと違う』と言われて、報酬が振り込まれないまま3か月が経った」と。
結論から言います。これは2024年11月に施行されたフリーランス保護新法(正式には特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)で、はっきり禁止されている行為です。発注者は、成果物を受け取った日から60日以内に報酬を支払う義務があります。つまり、「イメージと違う」は支払いを止める正当な理由にならないんです。これ、知らない人が本当に多いんです。
写真の加工・レタッチは、在宅で完結する仕事のなかでも需要が安定しています。通勤がなく、作業時間を自分で組み立てられ、成果物で評価される。障害者手帳をお持ちの方が在宅ワークを探すとき、選択肢として十分に現実的な職種です。
この記事では、仕事の中身と単価相場、無理なく続けるための作業設計、そして契約で必ず確認すべき法的なポイントを整理します。なお、手帳の等級要件や利用できる支援制度の可否は地域や個々の状況で異なりますので、必ずお住まいの自治体の窓口でご確認ください。ここでは在宅ワークの実務に話を絞ります。
写真の加工・レタッチという仕事の輪郭
実際に何をするのか
レタッチとひとことで言っても、中身は大きく3つに分かれます。
1つ目が商品写真の処理です。ECサイトに載せる商品画像の背景を白く飛ばす、色味を実物に合わせる、複数カットのサイズと明るさを揃える。定型度が高く、案件数がもっとも多い領域です。1枚あたりの作業時間は、慣れれば2分から10分程度です。
2つ目が人物レタッチです。肌の質感を整える、不要な写り込みを消す、髪の毛の輪郭を調整する。ブライダル、広告、アパレル、証明写真など用途は広く、求められる精度も幅があります。1枚に15分から1時間かかることも珍しくありません。
3つ目が合成やデザイン寄りの加工です。複数の写真を組み合わせる、背景を差し替える、バナーやSNS投稿用の素材に仕立てる。ここまで来ると、レタッチというよりデザインの領域に踏み込みます。
在宅ワークとして始めるなら、1つ目の商品写真から入るのが定石です。判断の幅が狭く、作業が定型化しやすいので、自分の作業時間を測りやすいからです。
募集は実際に出ている
在宅可のレタッチ案件は、求人サイト上で継続的に募集されています。
プロのレタッチャーとして、撮影済み画像データの修正・加工業務に携わっていただきます。Photoshop、Illustrator等の画像編集ソフトの使用経験が必須で、レタッチャーとしての実務経験3年以上の方を募集しております。テレワーク・在宅勤務が可能です。完全成果報酬制で、依頼する業務量に応じて5,000円からとなります。勤務時間については指定がありません。待遇・福利厚生、加入保険、受動喫煙防止措置事項、試用期間、契約期間については、求人票に記載がない場合... 出典: 求人ボックス
この募集で法務的に見ておきたいのは、最後の一文です。「加入保険、試用期間、契約期間については、求人票に記載がない場合」。つまり、条件が書かれていない項目があるということです。
完全成果報酬制で勤務時間の指定がないという記載から、これは雇用ではなく業務委託の形態だと読み取れます。業務委託であれば、労働基準法ではなくフリーランス新法や下請法の世界です。守られ方がまったく違うので、応募前にどちらなのかを必ず確認してください。ここを曖昧にしたまま始めると、後で「言った言わない」になります。
一方で、雇用型のレタッチ職も存在します。週4日在宅で時短勤務、あるいはWebデザイナーとレタッチャーを兼ねる形での正社員募集など、働き方の選択肢は広がっています。転職としてレタッチ職を狙う場合は、雇用型のほうが収入も社会保険も安定します。
市場としての位置づけ
写真加工の需要が減ることは、当面考えにくい状況です。ECの拡大で商品写真の点数が増え続け、SNSでの発信が企業活動の標準になり、動画のサムネイル需要も加わりました。撮影する人と、加工する人の分業は進む一方です。
一方で、AIによる自動処理が広がっているのも事実です。背景の切り抜きや簡単な色補正は、ツールがかなりの精度でこなすようになりました。正直なところ、単純な切り抜きだけを売りにする働き方は、この先厳しくなります。
ただ、これは悪い話ばかりではありません。AIが処理した結果を確認し、破綻している箇所を直し、ブランドの世界観に合わせて微調整する。この「最終判断」の部分は人が担い続けます。作業量で勝負しなくてよくなったという意味では、稼働時間に制約がある方にとってむしろ有利な変化です。
単価と報酬の相場
案件単位の相場感
商品写真の背景切り抜きと色調整で、1枚あたり50円から300円が中心帯です。点数がまとまる案件では単価が下がる代わりに継続性が生まれます。
人物レタッチは1枚あたり500円から3,000円。ブライダルや広告など仕上がり要求が高い案件では、これを超えることもあります。合成やデザイン込みの加工は3,000円から15,000円の幅です。
月額固定で運用に入る形もあります。ECショップの画像処理を継続で受ける場合、月3万円から15万円程度が一般的なレンジです。単発より収入が読めるので、生活設計をする上ではこちらのほうが安定します。
手数料という見えないコスト
ここは必ず押さえてください。大手のクラウドソーシングを経由すると、報酬から16.5%から20%が差し引かれます。5万円の案件なら、手元に残るのは4万円台です。年間で見れば相当な額になります。
これ、契約書には「システム利用料」と書かれていて、応募時には意識しにくい部分です。稼働できる時間に上限がある方ほど、1件あたりの手取りが生活に直結します。同じ作業量なら手取りが厚いほうがいいに決まっています。仲介が入る経路と直接取引の経路、両方の存在を知った上で選んでください。
確定申告のこと
業務委託で収入を得る場合、一定額を超えれば確定申告が必要になります。副業として給与所得と併せて受け取る場合と、専業として受け取る場合で扱いが違います。経費として計上できるもの(ソフトのライセンス料、PC、モニター、通信費の按分など)も押さえておくと、手取りが変わります。
申告の手続きや所得区分については国税庁の案内が基準になります。電子申告ならe-Taxで自宅から完結するので、外出の負担を減らせる点も在宅ワークとは相性がいい部分です。
契約で必ず確認する5つの項目
ここからが法務の本題です。トラブルの大半は、契約時に決めていなかったことから起きます。
報酬の支払期日
フリーランス新法により、発注者は成果物を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その日までに報酬を支払う義務を負います。つまり、「クライアントからの入金があってから」「検収が終わったら」といった理由で、無期限に支払いを先延ばしにすることは認められません。
冒頭の相談事例は、まさにこれに該当します。この方には、まず内容証明で支払いを求める書面を送り、それでも動かない場合の相談窓口をお伝えしました。フリーランスの取引適正化については公正取引委員会が所管しており、相談を受け付ける窓口も設けられています。
※ 金額が大きい場合や、相手が支払いを明確に拒否している場合は、弁護士へのご相談をおすすめします。
取引条件の明示
発注者には、業務の内容、報酬額、支払期日などを書面または電子メール等で明示する義務があります。つまり、口頭だけで進める発注は、そもそも法が想定していない形なんです。
「メールに書いてあれば十分です」とお伝えすると、多くの方が安心されます。立派な契約書を作る必要はありません。業務範囲、枚数、報酬、納期、支払期日。この5つがメールの本文に書かれていれば、それが証拠になります。逆に、チャットツールで断片的に決めていくと、後から探せなくなります。決まったことは必ず1通のメールにまとめておく。これだけで身を守れます。
修正回数と再納品の範囲
レタッチで一番もめるのがここです。「イメージと違う」という理由での修正依頼が、何度も繰り返されるケース。
対策は明快で、契約時に修正回数を決めることです。「初稿提出後の修正は2回まで。3回目以降は1回あたり◯円」という取り決めを、先ほどのメールに1行加えるだけです。この1行があるかないかで、案件の負荷がまるで変わります。
もう1点、修正の指示は具体的な形で受け取るようにしてください。「もっと明るく」ではなく「明度を10%上げてほしい」、「なんか違う」ではなく「背景の色をこの見本に合わせてほしい」。抽象的な指示のまま作業すると、往復が無限に増えます。これは相手を疑う話ではなく、双方の時間を守る手続きです。
著作権と使用範囲
レタッチした画像の著作権が誰に帰属するか。これも決めておくべき項目です。
原則として、加工作業そのものに創作性があれば加工者に権利が生じ得ますが、実務では「納品と同時に発注者へ譲渡する」と定める契約が大半です。問題は、その範囲が書かれていないケース。ECサイト用に納品した画像が、後日まったく別の広告に転用されていた、という相談は実際にあります。
譲渡するのか、使用を許諾するだけなのか。許諾ならどの媒体でどの期間か。二次利用に追加の報酬が発生するのか。これらを決めておけば、後で交渉の余地が残ります。何も書かないと、事実上言われるままになります。
被写体の権利という落とし穴
これ、レタッチ特有の注意点です。人物写真を加工する場合、写っている人には肖像権があります。加工した画像を自分の実績としてポートフォリオに載せる行為が、思わぬトラブルになることがあります。
相談を受けた事例では、ブライダル写真をレタッチした方が、仕上がりの見本としてSNSに投稿してしまい、後から新郎新婦の抗議を受けたケースがありました。契約書に「実績公開の可否」の条項がなかったため、話がこじれました。
ポートフォリオに使いたい場合は、発注時に確認を取っておくこと。人物が特定できる画像は、許可が取れないなら使わないこと。これは法律の話であると同時に、信頼の話でもあります。
無理なく続けるための作業設計
作業を「枚数」ではなく「時間」で区切る
レタッチは、区切りをつけにくい仕事です。もう少し調整すればもっと良くなる、という気持ちが働くからです。この性質は、体調に波がある方にとってリスクになります。
おすすめしているのは、時間で区切る方法です。40分作業して10分休む。タイマーが鳴ったら、途中でも保存して手を止める。Photoshopなら作業履歴が残るので、再開のコストは小さく済みます。
集中の切り方や戻し方については、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックに、タイマー以外の方法も含めた具体策がまとまっています。自分に合うやり方を探す参考になります。
目と体への負担を先回りして減らす
画像の細部を見続ける作業は、目への負担が大きくなります。感じ方は人によって大きく異なりますが、環境を整えることで軽減できる部分は確実にあります。
実務的に効くのは3つです。1つ目はモニターの輝度を下げること。作業に適した明るさは、多くの環境で初期設定より低い値です。2つ目は表示倍率を上げること。100%表示で細部を追うより、拡大して作業したほうが目の緊張は減ります。3つ目は、休憩のたびに遠くを見ること。20秒でも効果があります。
姿勢については、肘を置ける場所を作ることが効きます。ペンタブレットを使う場合は特に、腕が宙に浮いた状態が続くと肩に負担が集中します。
補助的な入力機器や支援機器については、どれが使えるかが人によってまったく違いますし、利用できる制度もお住まいの地域によって異なります。自治体の窓口が最も正確な情報を持っていますので、そちらでご確認ください。
1日の組み立て方
在宅ワークでは、仕事と生活の境界が消えやすくなります。通院日や休養日を先にカレンダーへ置いて、残った日数で受注量を決める。この順番を守ると、引き受けすぎを構造的に防げます。
細切れの時間で成果を出す設計については、在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開が参考になります。属性は違っても、限られた時間をどう配分するかという点では共通する部分が多くあります。
私が最初に痛い目を見たこと
独立したばかりのころ、私は「相手の要望にはできる限り応える」ことが誠実さだと思っていました。修正依頼が来れば何度でも対応し、追加の作業も断らない。
半年ほどで限界が来ました。修正の往復が増え、当初想定していた作業時間の3倍を費やした案件が出たのです。相手に悪意はありません。ただ、決めていなかっただけでした。
そこから、着手前に条件を1通のメールにまとめて送る習慣に変えました。断られたらどうしようと不安でしたが、実際に嫌がられたことは一度もありません。むしろ「きちんとしている人だ」と受け止められることのほうが多かった。条件を明確にすることは、相手を疑うことではなく、双方が安心して進めるための手続きです。法律はあなたの味方です。
注意したい募集
避けたほうがよい募集には、はっきりした特徴があります。
1つ目は、報酬の記載が「応相談」だけのもの。レンジすら示されていない募集は、交渉の材料を応募者側だけが持たない不均衡な設計です。
2つ目は、契約形態が書かれていないもの。雇用なのか業務委託なのかで、保険も、休んだときの扱いも、守られ方も違います。ここを書いていない募集は、そもそも発注側の準備が不足しています。
3つ目は、着手前に費用を求めてくるもの。教材費、ソフト代、登録料といった名目で先に支払いを求める形は、仕事の募集としては不自然です。身元が確認できない相手からの前払い要求には、はっきり断ってください。
4つ目は、「テスト課題」が実務そのものであるケース。1枚や2枚の試作なら妥当ですが、20枚を無償で加工させて、そのまま連絡が途絶えるという相談が実際にあります。無償の試作は、実務で使えない量までにとどめるのが自衛策です。
5つ目は、修正回数に上限がなく「納得いただけるまで対応」と書かれているもの。善意の表現に見えますが、受ける側からすると青天井の債務です。
スキルの身につけ方と、副業から転職への道
必要なソフトはPhotoshopが標準です。月額のサブスクリプションで2,000円台から利用でき、無料の代替ツールでも基礎の練習はできます。
学習の順番としては、切り抜き、色調補正、レイヤーとマスクの理解、この3つを押さえれば商品写真の案件には対応できます。学習期間は1日1時間のペースで2か月程度が目安です。体調に波がある方は1.5倍で見積もっておくと、自分を責めずに進められます。
副業として始めて、実績が溜まってから雇用型に移る道もあります。前述のとおり、週4日在宅の時短勤務や、Webデザインと兼務する形のレタッチャー募集は実在します。転職を視野に入れるなら、ポートフォリオの整備と、業務範囲を説明できる文章力が効いてきます。
案件のやり取りで使う文章の基礎は、ビジネス文書検定の出題範囲がチェックリストとして機能します。見積書や納品連絡の書き方は、そのまま信頼につながる部分です。
在宅職種全体のなかでレタッチがどの位置にあるかを確認したい方は、在宅でできる仕事おすすめ【2026年版】|スキル別ランキングに、スキル要件と収入レンジの比較が整理されています。
単価が上がるのはどういうときか
案件を横に並べて見ると、レタッチの報酬が上がる条件は4つに整理できます。枚数を増やす以外の道があると知っておくと、稼働時間に上限がある方ほど選択肢が広がります。
第一が判断の難しさです。背景を白く飛ばすだけの作業は、AIツールでもかなりの精度で処理できるようになりました。単価が維持されているのは、素材ごとに判断が要る領域です。透明なガラス製品、毛皮や布の質感、金属の反射、逆光で撮られた素材。こうした「機械が破綻させる素材」を確実に仕上げられる人は、代替が効きません。得意な素材カテゴリを1つ作ると、そこで指名が入るようになります。
第二が色の再現性です。ECの商品写真で最も多いクレームは「届いた実物と色が違う」です。この責任は撮影と加工の両方にありますが、加工側で色を管理できる人は明確に評価されます。モニターの表示を基準に合わせ、指定された色空間で書き出し、実物の見本と照らして調整する。この一連ができる人は、単価の交渉余地が生まれます。
第三が処理量の安定です。同じ基準で毎回仕上がることが確認されると、依頼者は検品の工数を減らせます。「確認しなくてよい相手」になることが、実質的な値上げにつながります。仕上がりが上手い日と粗い日がある人は、いくら速くても単価が上がりません。
第四が運用への関与です。ファイル名の命名規則を整える、画像のサイズと形式をサイトの仕様に合わせて出す、一括処理の手順を提案する。どれもレタッチそのものではありませんが、依頼者が抱えている面倒を減らします。単発の加工を受けるより、画像の運用ごと任される形のほうが、収入は読みやすくなります。
作業環境と道具の実際
初期投資は抑えられますが、いくつかの項目は品質と作業速度に直結します。優先順位をつけて揃えていくのが現実的です。
最優先はモニターです。色を扱う仕事なので、表示が正確でないと判断そのものが狂います。高価な製品でなくても、明るさとコントラストを初期設定のまま使わず、作業に適した状態に調整するだけで精度は上がります。表示色域の広さより、時間が経っても表示が安定していることのほうが実務では重要です。予算に余裕が出た段階で、表示を測定して補正する機器を検討する形で十分です。
次が入力機器です。マウスだけでも商品写真の処理はできますが、人物レタッチのように細かい輪郭を扱う作業ではペンタブレットのほうが速く、手への負担も分散します。板型の小さいものから始めれば、負担なく試せます。腕が宙に浮いた状態が続くと肩に集中するので、肘を置ける台を用意することとセットで考えてください。
ストレージとバックアップも軽視できません。レタッチの素材は容量が大きく、作業途中のファイルが失われると納期に直結します。作業中のデータは外付けドライブとクラウドの2か所に置く。この二重化だけで、事故の大半は防げます。依頼者から預かった素材は、契約で決めた期限が来たら確実に削除します。
ファイル管理の作法も、実は評価に響きます。「案件名_連番_v2.psd」のような命名規則を自分で決めておくと、修正依頼が来たときに該当ファイルを一発で出せます。納品時のフォルダ構成が整理されている人は、それだけで丁寧な印象を与えます。
納品前に必ず見る7項目
差し戻しの原因は、技術ではなく確認漏れであることがほとんどです。納品前のチェックを手順として固定しておくと、やり直しが激減します。
第一に、指定されたサイズと解像度になっているか。第二に、ファイル形式と色空間が指定どおりか。第三に、拡大表示で切り抜きの輪郭を確認したか。100%表示では気づかない取りこぼしが、拡大すると見えます。第四に、複数枚の案件で明るさと色味が揃っているか。1枚ずつ完璧でも、並べたときにばらついていれば差し戻されます。
第五に、レイヤーの整理と不要な情報の削除。作業途中の非表示レイヤーや、メモ書きが残ったまま納品されることがあります。第六に、ファイル名が指定どおりか。連番の桁数や区切り文字まで指定されている場合があります。第七に、枚数が合っているか。単純ですが、抜けは実際に起きます。
この7項目を紙かメモアプリに書いて、毎回上から順に確認します。慣れると5分で終わります。体調に波がある方ほど、記憶ではなく手順に頼る設計にしておくと、調子の悪い日でも品質が落ちません。
最初の2か月の進め方
学習と受注準備を並行させると、無駄がありません。ただし、進み方には個人差が大きい部分です。日数はあくまで目安として、自分の体調に合わせて伸ばしてください。予定どおりに進まないことを、自分の能力の問題として受け取らないほうがうまくいきます。
前半の1か月は、切り抜きと色調補正、そしてレイヤーとマスクの理解に充てます。この3つで商品写真の案件には対応できます。練習素材は、自分で撮影した身の回りの物で十分です。同じ被写体を明るい場所と暗い場所で撮って、仕上がりを揃える練習をすると、色の扱いが身につきます。
後半の1か月は、実務の形に寄せていきます。10枚を1セットとして、統一感を持たせて仕上げる練習をします。ここで必ず作業時間を記録してください。1枚あたり何分かかるかを把握していないと、単価の判断ができません。感覚で見積もる人は、必ず割に合わない案件を掴みます。
並行して、ポートフォリオを作ります。加工前と加工後を並べた形式が最も伝わります。人物が写っている素材は、許可が取れない限り使わない。前述のとおり、ここは肖像権の問題に直結します。商品写真であれば自分で撮った素材を使えるので、権利関係で悩む必要がありません。
応募の準備としては、対応できる加工の種類、1日に処理できる枚数、稼働できる曜日と時間帯、返信の目安時間を書いておきます。稼働に制約がある場合、それを隠すより先に伝えるほうが結果的にうまくいきます。依頼者が知りたいのは、いつまでに何枚上がるかという一点だからです。
税務と、制度の確認先
業務委託で収入を得る場合の手続きについて、確認先を整理しておきます。制度は個々の状況によって扱いが変わるため、断定的な情報をうのみにせず、必ず窓口で確認してください。
確定申告は、所得の区分と金額によって要否が変わります。会社員として給与を受け取りながら副業として行う場合と、業務委託の収入だけの場合では判断が異なります。必要経費として計上できるものには、ソフトのライセンス料、パソコンやモニター、ペンタブレット、通信費の按分などがあります。所得区分の判断と経費の考え方は国税庁の案内が基準になります。
公的年金を受け取りながら働く場合の扱いは、収入の種類によって変わります。業務委託の報酬は給与とは異なる扱いになりますが、個々の状況で判断が分かれるため、自分のケースがどうなるかは日本年金機構の窓口で確認するのが確実です。家族の健康保険の被扶養者になっている場合も、認定の基準は保険者ごとに運用が異なるので、加入先に直接お問い合わせください。
在宅で働く際に利用できる支援や、就労に関する相談先については、お住まいの自治体の担当窓口が最も正確な情報を持っています。利用できる制度の種類も、手続きの流れも、地域によって異なります。ネット上の一般的な説明だけで判断せず、窓口で自分の状況を伝えて確認することをおすすめします。
記録の付け方だけは、最初から仕組みにしておくと後が楽です。案件ごとに受注日、納品日、枚数、単価、入金日を1行で残し、領収書は月ごとにまとめる。これだけで、申告時期の作業が数時間で終わります。稼働に波がある方ほど、調子のよい日にまとめて記録を整える形にしておくと負担が偏りません。
市場を運営してきた立場からの考察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、レタッチで長く続いている人には共通点があります。仕上がりが特別に上手い人ではなく、「やり取りで発注側の手間が増えない人」です。
具体的には、着手前に条件を確認する、進捗を途中で一度知らせる、判断に迷った箇所を隠さず質問する。どれも技術ではありません。それでも、これができる人は多くありません。発注する側は画像の細部まで見ている時間がないから外に出しているので、確認の回数を減らしてくれる相手を手放さないのです。
もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、契約経路の違いが働き方の余裕を大きく左右しています。同じ「月5万円のレタッチ案件」でも、仲介が何段階も入る形と、依頼者と直接つながる形では手元に残る額が変わります。中間マージンが乗らない直接取引なら、依頼する側は同じ予算でより多くの枚数を頼めますし、受ける側は手数料0%で手取りが厚くなる。稼働時間に上限がある人ほど、この構造の差が生活設計に効いてきます。少ない枚数で必要な収入に届くかどうかが変わるからです。
職種データから見える広がり
レタッチを軸に、隣接領域へ展開する道筋を職種データから見ておきます。
著述家,記者,編集者の年収・単価相場のデータを見ると、同じ文章の仕事でも専門領域の知見があるかどうかで報酬レンジが分かれています。画像の実務を知っている書き手は少数です。撮影やレタッチの解説記事、EC向けの画像運用のノウハウ記事といった領域は、実務経験がそのまま強みになります。
技術方向では、ソフトウェア作成者の年収・単価相場のデータが示すとおり、業務知識とIT技術が組み合わさる領域の単価水準は高めに出ます。画像の一括処理を自動化するスクリプト、画像管理システムの導入補助といった仕事は、現場を知っている人のほうが有利です。関連職種の全体像はアプリケーション開発のお仕事に整理されています。技術寄りの基礎資格としてCCNA(シスコ技術者認定)を入口にする人もいます。
そしてAI方向です。画像生成や自動補正のツールは、レタッチの前工程を大きく変えました。ツールを使いこなして品質を担保できる人材の需要は、確実に増えています。どんな職種が生まれているかはAIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で確認できます。
最後に、法務の立場から一つだけ。条件を書面に残す習慣は、面倒に見えて、実は一番自分を楽にしてくれます。決めておけば、あとは作業に集中できるからです。あなたの働き方を守る仕組みは、すでに用意されています。
よくある質問
Q. 在宅の写真加工・レタッチの単価相場はどれくらいですか?
商品写真の切り抜きと色調整は1枚50円から300円、人物レタッチは1枚500円から3,000円、合成やデザイン込みなら3,000円から15,000円が中心帯です。ECショップの画像処理を継続で受ける月額固定なら3万円から15万円程度。仲介経由だと16.5%から20%の手数料が差し引かれる点に注意してください。
Q. 報酬を払ってもらえないとき、どうすればいいですか?
フリーランス新法により、発注者は成果物を受け取った日から60日以内に報酬を支払う義務があります。「イメージと違う」は支払い拒否の正当な理由になりません。まず条件を記載したメールなど証拠を揃え、書面で支払いを求めてください。相談窓口は公正取引委員会が設けています。金額が大きい場合は弁護士への相談をおすすめします。
Q. 未経験からレタッチを始めるには何を学べばいいですか?
Photoshopの切り抜き、色調補正、レイヤーとマスクの理解、この3つを押さえれば商品写真の案件には対応できます。1日1時間のペースで2か月程度が目安です。体調に波がある方は1.5倍で見積もると無理がありません。まず定型度の高い商品写真から始めて、人物レタッチへ広げるのが現実的です。
Q. 契約で必ず決めておくべきことは何ですか?
業務範囲と枚数、報酬額、納期、支払期日、そして修正回数の上限です。この5つをメール1通にまとめておけば証拠になります。あわせて、納品画像の著作権の扱いと、ポートフォリオへの掲載可否も確認してください。人物写真は肖像権があるため、無断で実績公開するとトラブルになります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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