役員変更の登記に要る書類|就任と辞任で中身が変わる

前田 壮一
前田 壮一
役員変更の登記に要る書類|就任と辞任で中身が変わる

この記事のポイント

  • 役員変更登記の必要書類は
  • 就任・辞任・重任・氏名変更のどれに当たるかで中身が変わります
  • 就任のときだけ要るもの

役員変更の登記をしようと調べ始めて、まず戸惑うのが必要書類の多さです。議事録、就任承諾書、株主リスト、印鑑証明書、本人確認証明書。検索すると次々に単語が出てきて、自分の会社にどれが当てはまるのか分からなくなります。まず、安心してください。役員変更登記の必要書類は、場面ごとに法務局がはっきり決めています。全部を揃える必要はなく、自分の会社で何が起きたかを1つ決めれば、そこから機械的に決まります。この記事では、場面ごとの書類一式を法務局の記載例で確認しながら、なぜその書類が要るのかまで含めて整理します。

書類を選ぶ前に、自分の場面を1つに決める

必要書類の話に入る前にやることがあります。自分の会社で起きたのが、次のどれなのかをはっきりさせることです。

1つめは就任です。新しく取締役や監査役になった人がいる場合です。2つめは退任で、辞任、任期満了による退任、死亡、解任がここに入ります。3つめが重任で、任期が切れた人をもう一度選んで続けてもらう場合です。4つめが氏名の変更、5つめが代表取締役の住所の移転です。

この5つは、必要書類がまったく違います。法務局も、株式会社の役員変更だけで住所移転用、氏名変更用、取締役会設置会社で役員全員が重任する場合用、取締役会のない会社で重任する場合用、辞任等で新しい取締役が就任する場合用、監査役が就任する場合用、と様式を分けて公開しています。ここを混ぜて「全部盛り」の書類を作ろうとすると、かえって出さなくてよいものまで用意することになります。

やっかいなのは、1つの総会で複数の場面が同時に起きることです。取締役Aが辞任してBが就任し、同じ総会で取締役CとDは重任した、というのはよくある話です。この場合は、それぞれの場面で要る書類を足し合わせます。申請自体は1件にまとめられるので、税金は1件分で済みます。

どの場面でも共通して要るもの

場面が違っても、ほぼ必ず出てくる書類が3つあります。

1つめは登記申請書です。法務局が場面ごとの様式をWordとPDFで無料配布しており、2026年8月14日付けで更新されたものが最新です。会社法人等番号、商号とフリガナ、本店、登記の事由、登記すべき事項、登録免許税、添付書類、申請人と押印、提出先の法務局名を書きます。

2つめは株主総会議事録です。取締役も監査役も、株主総会の決議で選びます。会社法329条1項が、役員と会計監査人は株主総会の決議によって選任する、と定めているからです。定時株主総会で選んだなら定時株主総会議事録、任期の途中で臨時に開いたなら臨時株主総会議事録になります。

3つめが株主リストです。2016年10月1日以降に申請する登記から必要になった書類で、根拠は商業登記規則61条2項と3項です。役員の選任は株主総会の決議事項なので、役員変更ではほぼ必ず付きます。

平成28年10月1日以降の株式会社・投資法人・特定目的会社の登記の申請に当たっては,添付書面として,「株主リスト」が必要となる場合があります(商業登記規則61条2項・3項,投資法人登記規則3条,特定目的会社登記規則3条)。 出典: moj.go.jp

なお、実際には集まらずに書面で決議を済ませた場合、つまり会社法319条1項の決議の省略を使った場合も、株主リストは必要です。集まっていないから総会ではない、と考えて外してしまうと補正の連絡が来ます。

このほか、司法書士など代理人に申請を頼む場合は委任状が加わります。自分で出すなら不要です。

就任のときだけ要る3点セット

新しく役員になる人がいる場合に追加されるのが、次の3つです。ここが役員変更登記でいちばん手間のかかる部分です。

1つめは就任承諾書です。選ばれただけでは役員になりません。本人が引き受けて初めて就任します。その引き受けを書面にしたのが就任承諾書で、氏名と住所を本人が書いて記名押印します。議事録の中に「被選任者はその場で就任を承諾した」と書いて議事録で兼ねる方法もありますが、その場合でも本人の住所が議事録に記載されていなければ、別に就任承諾書が要ります。

2つめが印鑑証明書です。ただし全員分ではありません。法務局の記載例は、取締役会を設置していない会社で新しく就任する取締役については、就任承諾書に市区町村に登録した実印を押し、その印鑑証明書を添付する必要があると注記しています。取締役会設置会社の場合は、新しく就任する代表取締役について同じ扱いです。つまり、取締役会がある会社で平取締役が1人増えるだけなら、その人の印鑑証明書は要りません。

3つめが本人確認証明書です。法務省は、取締役、監査役、執行役の就任による変更登記の申請では、印鑑証明書を添付しない場合に本人確認証明書が必要だと案内しています。印鑑証明書を出す人については重ねて出す必要はありません。

使える書類は決まっています。住民票記載事項証明書、戸籍の附票、住基カードのコピー、運転免許証のコピー、マイナンバーカードの表面のコピーです。運転免許証を使う場合は裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない」と書いて記名します。マイナンバーカードは、氏名、住所、生年月日、性別が載っている表面だけをコピーし、個人番号が印字された裏面はコピーしません。住民票を使うときも、個人番号が記載されていないものを取ります。市区町村から届く個人番号の通知カードは、本人確認証明書としては使えません。

そしてもう1つ、大事な例外があります。再任の場合、本人確認証明書は要りません。ずっと役員を続けている人について、2年ごとに免許証のコピーを出し直す必要はないということです。

辞任と死亡では、出すものが違う

役員が抜ける場合の書類は、抜け方で変わります。

辞任なら辞任届です。本人が会社に対して辞める意思を伝えた書面で、日付と氏名を書いて押印します。ここで注意が要るのが、法務局に印鑑を届け出ている取締役、つまり代表取締役が辞任する場合です。法務局の記載例は、辞任届に法務局への届出印か市区町村に登録した実印を押す必要があると注記しています。実印を押した場合は、その印鑑証明書も添えます。届出印を押したのであれば印鑑証明書は不要です。この使い分けを知らずに認印を押してしまい、差し替えになる例がよくあります。

死亡による退任なら、辞任届の代わりに死亡届または法定相続情報一覧図の写しを出します。この死亡届は、市区町村に出す戸籍の死亡届のことではなく、相続人などが会社に対して「役員が亡くなりました」と知らせる書面を指します。

任期満了で退任し、後任を選ばない場合は、退任の事実は株主総会議事録と定款から読み取れるため、退任届のような書類は要りません。ただし、退任によって法律や定款で定めた役員の人数を下回ってしまう場合は、退任の登記だけを先に出すことができない場面があります。取締役会設置会社なら取締役は3人以上必要なので、3人のうち1人が辞めたら後任を決めないと登記が進みません。

解任の場合は、解任を決議した株主総会議事録が根拠になります。解任は争いになりやすく、正当な理由がなければ損害賠償の問題が生じることもあるので、ここは自分で判断せず弁護士や司法書士に相談したほうが安全です。

重任だけなら、書類はぐっと減る

誰も入れ替わらず、任期が切れた役員をそのまま選び直す重任は、必要書類がいちばん軽い場面です。

取締役会設置会社で役員全員が重任する場合、法務局の記載例が挙げている添付書類は、株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録、就任承諾書、監査役の監査の範囲に関する書面、委任状です。辞任届も印鑑証明書も本人確認証明書もありません。新しく就任する人がいないからです。

取締役会を置いていない会社で、取締役全員が各自会社を代表する場合、または株主総会で代表取締役を選ぶ場合は、取締役会議事録すら不要になります。株主総会議事録、株主リスト、就任承諾書、監査役に関する書面、委任状の5点です。

ところが、同じ取締役会のない会社でも、取締役の互選で代表取締役を決めると書類が増えます。互選書と定款が加わるのです。定款を添える理由は、取締役の互選で代表取締役を選ぶという定めが定款にあることを示すためです。自分の会社がどの方式かは、定款の「代表取締役」の条文を読めば分かります。

重任の登記で見落とされがちなのが、監査役に関する書面です。監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社は、その旨を登記する必要があります。添付するのは、定款、株主総会議事録、または代表取締役が作成したその定めがあることの証明書のいずれかです。小さな会社の多くはこの定めを持っているので、監査役を置いているなら確認してください。

氏名変更と住所移転は、添付書類がほとんどない

意外に思われるのがこの2つです。

代表取締役が引っ越した場合、法務局の記載例が挙げている添付書類は委任状だけです。しかも注記に「申請書に住民票を添付する必要はありません」と明記されています。住所を証明する書類は要らないのです。ただし、登記すべき事項には住民票に記載されたとおりの住所を正確に書く必要があるので、手元で住民票を確認してから書くことになります。

結婚などで役員の氏が変わった場合も同じで、添付書類は委任状だけ、戸籍謄本も住民票も不要です。申請書に書く原因年月日は「令和○年○月○日△△○○の氏変更」という形式で、変更前の氏名を入れます。名前のほうが変わった場合は「氏変更」を「名変更」と書き換えます。

登録免許税は、この2つも役員の変更として扱われるので、資本金1億円以下の会社なら1万円です。書類は少なくても税金は同じです。ここは、引っ越しのたびに1万円かかると考えて、ほかの変更と時期を合わせられないか検討する余地があります。

なお、旧姓を登記簿に併記したい場合は、別に申出ができます。法務省は、役員または清算人について旧氏を記録するよう申し出ることができると案内しており、就任の登記や氏の変更の登記と同時に申し出ることも、単独で申し出ることもできます。令和4年9月1日から、併記できる旧氏の範囲が広がり、登記申請時以外の申出も可能になりました。

株主リストの中身は、2つのパターンだけ

株主リストは名前のわりに中身が単純です。書く人の範囲が2通りあり、どちらに当たるかで決まります。

株主総会の決議が必要な登記では、議決権数の上位10名の株主か、議決権割合が3分の2に達するまでの株主か、人数の少ないほうを書きます。書く項目は、株主の氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合の5点で、これを代表者が証明します。

3分の2に達するまでの株主を数えるときは、議決権割合の多いほうから順に足していきます。自己株式のように議決権を行使できない株式を持つ株主は除きますが、総会を欠席した株主や議決権を行使しなかった株主は含めます。ここを「出席した人だけ」と誤解して作ると、数が合わなくなります。

もう1つのパターンは、株主全員の同意が必要な登記の場合です。このときは株主全員について、氏名または名称、住所、株式数、議決権数の4点を書きます。議決権数の割合は要りません。役員変更では通常こちらには当たりません。

株主が代表者1人だけの会社なら、その1人で議決権割合が100パーセントになるので、書くのは1行です。それでも添付は省けません。

法務省は株主リストの書式例と記載例をExcelとPDFで無料配布しています。ひな形を探し回るより、「株主リスト」が登記の添付書面となりましたのページから落とすのが確実です。

議事録に書き落とすと、書類が揃っていても通らない

必要書類の一覧だけを見ていると、株主総会議事録は「1通」としか書かれていません。しかし中身が足りなければ、紙があっても意味がありません。

議事録に必要なのは、開催した日時と場所、出席した株主の議決権の数、議長と議事録を作った人の氏名、議案の内容と決議の結果です。役員を選ぶ決議であれば、誰を何に選んだのかを氏名まではっきり書きます。「取締役1名を選任する件」とだけ書いて名前が抜けていると、登記すべき事項と照らし合わせられません。

就任承諾書を別に用意しないで議事録で兼ねたい場合は、被選任者がその場で就任を承諾した旨に加えて、その人の住所を議事録に書いておく必要があります。住所が抜けていると、結局は就任承諾書を別に作ることになります。

任期満了による退任を登記するときも、議事録の書き方が効いてきます。「第○期定時株主総会の終結をもって任期満了により退任した」という趣旨が読み取れるようにしておくと、退任の根拠がはっきりします。

記名押印についても決まりがあります。議事録には議長と出席した取締役が記名押印するのが一般的で、定款にその旨の定めを置いている会社が多くあります。自分の会社の定款を確認して、そこに書かれたとおりに押してください。定款と違う人だけが押している議事録は、後から問題になります。

代表取締役を取締役会で選ぶ会社では、株主総会議事録に加えて取締役会議事録も要ります。こちらには、出席した取締役と監査役の氏名、議案、決議の結果を書きます。取締役会議事録には出席した取締役および監査役が記名押印します。

議事録の押印について1点補足すると、取締役会議事録で代表取締役を選定した場合、原則として出席取締役と監査役が個人の実印で押し、その印鑑証明書を添えることになります。ただし、変更前の代表取締役が取締役会に出席して法務局への届出印を押しているときは、この印鑑証明書が不要になります。ここは会社ごとに結論が変わるので、迷ったら管轄の法務局に確認してください。

出し方は4通りあり、揃える書類の形が変わる

書類が揃ったら、出し方を選びます。方法によって、紙で出すのか電子で出すのかが変わります。

1つめは窓口への持参です。本店の所在地を管轄する法務局に、申請書と添付書類、収入印紙を貼った台紙をまとめて出します。その場で軽く見てもらえることがあるので、初めてなら安心感があります。受付時間は平日の8時30分から17時15分までです。

2つめは郵送です。書留など追跡できる方法で送ります。郵送の場合、申請日は書類が法務局に到着した日になります。2週間の期限ぎりぎりに投函すると、到着が期限を過ぎることがあるので注意してください。返送用の封筒を同封しておくと、完了後の書類を送り返してもらえます。

3つめがオンライン申請です。登記・供託オンライン申請システムを使い、申請用総合ソフトで申請書情報を作って送信します。添付書面情報もPDFなどで添付しますが、申請書情報にも添付書面情報にも電子署名を付ける必要があり、そのための電子証明書を先に取得しなければなりません。添付ファイルの合計容量は1申請あたり15MBまでです。

登記・供託オンライン申請システムの利用時間は、平日の8時30分から23時まで及び休日の8時30分から18時まで(年末年始(12月29日~1月3日)を除く。)となります。 出典: moj.go.jp

ただし、法務局で実際に受け付けられる時間は平日の17時15分までです。夜に送信した分は翌営業日の受付になるので、期限の計算には使えません。

4つめが、その中間にあたるQRコード付き書面申請です。申請書の作成はパソコンで行い、印刷して紙で出します。電子証明書は不要で、手書きより記載ミスが減ります。法務局は、役員全員が重任する場合と、辞任と就任がある場合のそれぞれについて操作手引書を用意しています。初めて自分で申請する人には、この方式がいちばん現実的です。

書類が揃っても登記できない場面がある

必要書類を全部そろえたのに進まない、という状況もあります。代表的なのが員数の問題です。

取締役会設置会社では取締役が3人以上、監査役設置会社では監査役が1人以上必要です。3人いる取締役のうち1人が辞任して後任を決めていないと、法律で定めた人数を下回ります。この場合、辞任した人は後任が就任するまで役員としての権利義務を持ち続けるとされ、辞任の登記だけを先に入れることができません。後任を決めて、辞任と就任を同時に申請することになります。

定款で「取締役は3名以上とする」のように独自の人数を定めている会社もあります。法律上は1人でよくても、定款がそう書いていればそちらが優先されます。役員を減らす方向の変更をするときは、定款の人数の定めを先に確認してください。人数の定めを変えるなら、定款変更の決議も同じ総会で済ませておきます。

もうひとつ見落とされるのが印鑑届書です。代表取締役が交代して、法務局に届け出る印鑑を新しくする場合は、印鑑届書も一緒に出します。法務局は印鑑届書の記載例と様式を会社の種類ごとに公開しており、株式会社用はPDFとExcelの両方が配られています。前の代表者の届出印をそのまま使い続けることはできないので、交代したら必ず出すものだと考えてください。

さらに、役員変更と同時に機関設計を変える場合は、登記が2件分になります。取締役会を廃止する、監査役を置くのをやめる、といった変更は役員の変更とは別の区分になり、登録免許税が別に3万円かかります。法務局は、取締役会設置会社の定めの廃止、監査役設置会社の定めの廃止、監査役の変更、株式譲渡制限の定めの変更をまとめて行う場合の様式も別に公開しています。

書類を作る順番を決めておくと、日付がずれない

必要書類が分かったら、作る順番が問題になります。順番を間違えると日付が前後して、補正の原因になります。

先に定款を開いて、取締役の任期、代表取締役の選定方法、監査役の監査の範囲の定めを確認します。ここで方式が決まらないと、どの様式を使うかも決まりません。

次に、就任する人の印鑑証明書や本人確認証明書を取りに行きます。市区町村の窓口に行く必要があるので、いちばん時間がかかります。総会の前に動いておくと楽です。

そのうえで株主総会を開き、議事録を作ります。議事録の日付が基準になるので、就任承諾書の日付は総会の日以降にします。総会より前の日付になっていると、まだ選ばれていないのに承諾したことになり、辻褄が合いません。

株主リストは、議事録ができてから作ります。議事録に書いた議決権の数と食い違わないようにするためです。最後に申請書を作り、登記すべき事項の原因年月日を議事録の日付と合わせます。

期限は変更が生じた日から2週間です。市区町村の窓口が土日に閉まることを考えると、実働は10日ほどしかありません。総会の日程が決まった時点で、証明書の取得を先に済ませておくのが現実的です。

場面別に、出すものを並べ直す

ここまでの内容を、実際に多い4つの場面に当てはめて並べ直します。どれも代理人に頼まない前提なので、委任状は入れていません。

取締役会のない会社で、取締役1人が辞任して1人が就任する場合。登記申請書、辞任届、臨時株主総会議事録、株主リスト、就任した人の就任承諾書、就任した人の印鑑証明書。辞任するのが代表取締役で辞任届に実印を押したなら、その人の印鑑証明書も加わります。届出印を押したなら不要です。

取締役会設置会社で、役員全員が任期満了により重任する場合。登記申請書、定時株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録、就任承諾書、監査役の監査の範囲を会計に限定する定めがあることを証する書面。印鑑証明書も本人確認証明書もありません。この場面がいちばん多く、そしていちばん軽い構成です。

取締役会のない会社で、取締役の互選により代表取締役を選んでいて、役員全員が重任する場合。登記申請書、株主総会議事録、株主リスト、互選書、定款、就任承諾書、監査役に関する書面。定款が加わるのがこの方式の特徴です。

代表取締役が引っ越しただけの場合。登記申請書のみ。住民票も戸籍も要りません。書類の少なさに不安になりますが、これが法務局の記載例どおりです。

この並びを見て気づくのは、印鑑証明書と本人確認証明書が出てくるのは「新しく役員になる人がいるとき」だけだ、という点です。逆に言えば、重任と住所移転と氏名変更には、市区町村へ取りに行く書類が1枚もありません。自分の場面がこの3つのどれかなら、準備は1日で終わります。

もうひとつ、書類の原本をどう扱うかも押さえておきます。定款や印鑑証明書など、手元に返してほしい書類は、コピーに「原本と相違ありません」と書いて記名押印したものを添え、原本還付の手続きをすれば返してもらえます。定款は会社に1通しかないことが多いので、この手続きを使うのが普通です。

合同会社なら、書類はさらに少ない

会社の形が合同会社なら、話はもっと簡単です。

法務局が用意している様式は「合同会社変更登記申請書(業務執行社員の退社及び加入)」という名前で、株式会社のような重任の様式がありません。合同会社の業務執行社員には任期という考え方がないので、誰も出入りしなければ登記も発生しないからです。

株主総会がないので株主リストも要りません。かわりに、社員の加入や退社について定款を変更する必要があるかどうかで、総社員の同意書などが必要になります。代表社員を新しく決めるなら、その選定に関する書面と就任承諾書、印鑑証明書が加わります。

登録免許税は株式会社と同じ枠です。役員の変更として括られる区分に「社員」も含まれているため、資本金1億円以下なら1万円です。

一般社団法人の場合は、理事と監事が対象になります。法務局は「役員全員が重任した場合」と「辞任等により新たな役員が就任した場合」の2つの様式を公開していて、株式会社と似た構成です。ただし休眠法人として整理されるまでの期間が株式会社の12年ではなく5年と短いので、登記を後回しにできる余地はより少なくなっています。

書類仕事は、会社の規模に関係なく同じ量だけ降ってくる

ここまで並べて分かるとおり、役員変更登記の書類は、会社が1人でも100人でも基本的に同じです。運営者として20年この市場を見てきた立場から言えば、法人化した個人事業主がいちばん消耗するのは、事業そのものではなくこの種の定型作業です。

売上に直結しないのに、間違えると過料が来る。しかも数年に1度しか発生しないので、慣れる機会がない。そういう仕事は、本人がやるより外に出したほうが結果的に安くつきます。議事録の下書き、株主リストの表計算、申請書への転記といった作業は、書式を知っている人なら短時間で片づきます。

在宅で働く人を探せるマッチングの場では、こうした書類仕事の依頼が日常的に動いています。どんな職種が近いのか、報酬の相場がどのあたりなのかは著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。文章と書式を扱う仕事の相場がまとまっているので、依頼する側が予算を立てるときの目安として使えます。書式を正しく扱える人かどうかを見分ける物差しとしては、ビジネス文書検定のような資格ガイドが参考になります。

頼むときに効いてくるのが、仲介の手数料です。何割も抜かれる場で頼むより、手数料0%で直接やり取りできる場のほうが、同じ予算でより多く頼めます。受け手の側も手取りが厚くなるので、次も引き受けてもらいやすい。長く続いている依頼関係を見ていると、作業を安く買い叩いた側ではなく、相手が動きやすい形を整えた側が結局得をしています。

事務をどこまで外に出せるかという観点では、業務の切り分け方を扱ったAIコンサル・業務活用支援のお仕事も材料になります。判断が要る部分と、手を動かすだけの部分を分けるのが第一歩です。

最後にもう一度書いておくと、必要書類の唯一の正解は法務局の記載例です。商業・法人登記の申請書様式のページに場面別のPDFが並んでいて、書類名の横に「○通」と本数まで書かれています。解説記事を何本も読むより、自分の場面に当たる1本を開いて、書かれた書類を上から順に潰していくほうが速くて確実です。

よくある質問

Q. 就任承諾書は議事録があれば省略できますか?

議事録に本人がその場で就任を承諾した旨が記載され、かつ本人の住所まで書かれていれば、議事録で兼ねられる場合があります。ただし住所の記載がないときは、本人が住所を書いて記名押印した就任承諾書が別に必要です。判断に迷うなら別紙で作っておくほうが安全です。

Q. 印鑑証明書は役員全員分が必要ですか?

全員分は不要です。必要なのは、取締役会を置いていない会社で新しく就任する取締役、および取締役会設置会社で新しく就任する代表取締役です。取締役会がある会社で平取締役が増えるだけなら、その人には本人確認証明書を添付します。再任の場合はどちらも不要です。

Q. 運転免許証のコピーを本人確認証明書にする方法は?

表面と裏面の両方をコピーし、本人が「原本と相違がない」と記載して記名します。表面だけ、または記名なしでは受け付けられません。マイナンバーカードを使う場合は個人番号が印字された裏面はコピーせず、表面のみをコピーします。個人番号の通知カードは使えません。

Q. 代表取締役が引っ越した場合、住民票は必要ですか?

不要です。法務局の記載例には、申請書に住民票を添付する必要はないと明記されています。添付書類は代理人に頼む場合の委任状だけです。ただし登記すべき事項には住民票に記載されたとおりの住所を正確に書く必要があるため、手元で住民票を確認してから記入してください。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月18日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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