歯科衛生士の1年目をどう乗り切るか|つまずきやすい場面と、慣れるまでの順番


この記事のポイント
- ✓歯科衛生士の新卒1年目でつまずきやすい場面を
- ✓時期ごとに整理しました
- ✓入職時に確認したい保険や試用期間の条件までをまとめています
「歯科衛生士になったのに、思っていたより何もできない」。新卒で入職して数か月の方から、こういうご相談をよくいただきます。国家試験に受かって、免許も持っている。それなのに、現場に立つと手が止まる。周りの先輩は当たり前のように動いていて、自分だけが遅れているように感じる。
大丈夫ですよ。それは、あなたの能力の問題ではありません。1年目にそう感じるのは、順番の問題です。学校で習うことと、現場で必要になることの間には、どうしても距離があります。その距離を埋めるのに時間がかかるのは、誰にとっても同じです。
この記事では、歯科衛生士の1年目で何が起きるのかを時期ごとに追いながら、つまずきやすい場面と、その乗り越え方をお伝えします。あわせて、就職先を選ぶ段階でできること、入職のときに確認しておきたい条件についても整理しました。これから就職活動をする学生の方にも、すでに働き始めて苦しくなっている方にも、どちらにも届くように書いています。
1年目に起きることは、だいたい決まっている
最初に、全体の見取り図をお伝えします。これを知っているだけで、いま自分がどこにいるのかがわかり、少し楽になります。
歯科衛生士の1年目は、おおまかに4つの段階に分かれます。
最初の1か月は、覚える期間です。器具の名前と置き場所、医院ごとの手順、カルテの書き方、スタッフの名前。処置よりも、環境に慣れることに大半の時間が使われます。
2か月目から3か月目は、手を動かし始める期間です。少しずつ処置を任されますが、時間内に終わらない。予定の時間を超えて、先輩に交代してもらうことが続きます。ここがいちばんつらい時期だという方が多いです。
4か月目から半年ごろは、基本の処置が時間内に収まり始める期間です。ただし、想定外のことが起きると対応できない。患者さんから思わぬ質問をされると固まってしまう。
半年から1年は、担当を持ち始める期間です。任される範囲が広がり、責任が増えます。同時に、自分なりのやり方が見え始める時期でもあります。
この4段階を、全員が同じ速さで進むわけではありません。医院の規模、教育体制、患者さんの層によって、進み方はまったく違います。だから、同期と比べても意味がありません。比べるなら、1か月前の自分と比べてください。
そして、この段階のどこかで「向いていないのかもしれない」と思う瞬間が、ほぼ全員に訪れます。これは1年目の通過点であって、答えではありません。答えを出すのは、もう少しあとでいいのです。
最初の1か月は、覚えることの順番を意識する
入職してすぐの時期は、情報量に圧倒されます。何から手をつければいいかわからなくなるので、覚える順番を決めておくと楽になります。
優先順位の高いものから並べます。
第1に、器具の名前と置き場所。これがわからないと、何も始まりません。学校で習った名称と、医院で使われている呼び方が違うことがよくあります。「エキスカ」「ミラー」「探針」のような略称や、医院独自の呼び方は、その場で聞いて書き留めてください。
第2に、1日の流れと、自分が担当する範囲。朝の準備で何をするか、片づけで何をするか。ここは決まり切った作業なので、覚えれば確実にできるようになります。まず「決まった作業を確実にこなせる人」になることが、最初の目標です。
第3に、感染対策と滅菌の手順。これは順番を守ることそのものが仕事なので、最初に体に入れておく価値があります。
第4に、カルテの記載方法。医院ごとに記号も略語も違います。過去のカルテを見せてもらって、書き方を写すのが早いです。
第5に、患者さんへの声のかけ方。先輩がどう声をかけているかを、意識して聞いてください。挨拶、着席の案内、処置の説明、終わったあとの声かけ。ここは真似から入って問題ありません。
処置の技術は、この後です。焦って処置の腕から上げようとすると、周辺の作業が回らず、かえって時間がかかります。
メモの取り方についても、ひとつ提案させてください。その場で書けないことも多いので、昼休みか帰宅後に、その日教わったことを1枚に整理する習慣をつけるといいです。3か月続けると、それがそのまま自分専用のマニュアルになります。相談の場でも、これをやっていた方は立ち上がりが早い傾向があります。
2か月目から3か月目、手が動き始めても追いつかない
ここが、1年目でいちばん苦しい時期です。
処置を任され始めるのに、時間内に終わらない。スケーリングの枠が30分なのに、45分かかる。先輩が「代わるね」と入ってくる。患者さんが少し困った顔をする。この繰り返しで、自分を責めてしまう方が本当に多いです。
はっきりお伝えします。この時期に時間内に終わらないのは、当たり前です。
理由は単純で、処置そのものだけでなく、その前後の判断に時間がかかっているからです。どの器具を使うか、どの角度で当てるか、どこまで取れているか。経験を積んだ人はこれを考えずに判断しています。考えながらやっている段階で同じ速さを求めるのは、無理な話です。
この時期にやるといいことを、3つ挙げます。
ひとつめ。時間を測ってください。「遅い」という感覚ではなく、実際に何分かかったかを記録する。先週は50分、今週は45分。数字で見ると、進んでいることがわかります。感覚だけで判断すると、進歩が見えません。
ふたつめ。どこで時間を使っているかを分解してください。器具を探している時間なのか、判断に迷っている時間なのか、手技そのものなのか。原因が違えば、対策も違います。器具を探しているなら、トレーの並べ方を変えるだけで改善します。
3つめ。先輩が交代したとき、その先輩がどこをどう触っているかを見てください。交代は失敗ではなく、無料の実技指導の機会です。見ているだけで学べる場面を、落ち込むことに使ってしまうのはもったいない。
そして、ひとつだけ心の面のことをお話しさせてください。この時期に「患者さんに申し訳ない」と感じるのは、あなたが真面目だからです。その気持ち自体は、大切にしていい。ただ、その気持ちが強すぎると、緊張で手がさらに動かなくなります。呼吸をひとつ深くして、目の前の1本に集中する。それだけで、ずいぶん変わります。
半年前後、任される範囲が広がるときのつまずき
基本の処置が形になってくると、任される範囲が広がります。ここで新しい種類のつまずきが出てきます。
ひとつは、判断を求められる場面です。歯周ポケットの数値が前回より悪化している、患者さんが痛みを訴えている、出血が止まりにくい。こうしたときに、自分で判断していいのか、歯科医師に伝えるべきなのかで迷います。
原則として、迷ったら伝える。これで問題ありません。「こんなことで呼んでいいのか」と思う場面でも、呼んで困る歯科医師はほとんどいません。むしろ、伝えずに進めて後から発覚するほうが、全員が困ります。
なお、業務の範囲については法令で線引きがあります。歯科医師でなければできない行為と、歯科衛生士が行える行為の区別は、あいまいなまま進めてはいけない部分です。医院で指示された内容に疑問があれば、まず院内で確認し、必要に応じて厚生労働省が公表している情報や、都道府県の担当窓口で確認してください。
もうひとつは、患者さんへの説明です。ブラッシング指導をしていて、「毎日ちゃんと磨いているのに、なぜ良くならないのか」と言われる。歯周病の説明を求められて、うまく言葉にできない。
説明が苦手だと感じる方に伝えているのは、「全部を説明しようとしないこと」です。1回の来院で伝えられることは、ひとつかふたつです。今日はこれだけ、と決めて話す。次回にまた別のことを話す。この積み重ねのほうが、患者さんの記憶に残ります。
説明の言葉は、先輩の言い回しをそのまま借りていいのです。オリジナルの説明を考える必要はありません。まず借りて、使いながら自分の言葉に変わっていきます。
1年目につまずきやすい場面と、その対処
ここからは、相談として持ち込まれることの多い場面を、ひとつずつ扱います。
先輩に聞けない
これが、いちばん多い悩みかもしれません。忙しそうにしている先輩に、声をかけるタイミングがわからない。同じことを2回聞くのが怖い。
対処としては、聞くタイミングをまとめることです。処置の合間に細かく聞くのではなく、「あとでまとめて聞かせてください」と最初に伝えておく。昼休みの後半や、片づけの時間に3つまとめて聞く。この形なら、先輩の側も答えやすくなります。
同じことを2回聞かないためには、聞いた内容をその場でメモする。メモを取っている姿は、先輩から見ると好ましいものです。
それでも聞きにくい雰囲気の職場は、実際にあります。その場合、あなたのコミュニケーションの問題ではなく、職場の設計の問題です。区別して考えてください。
ミスをしてしまった
器具を落とした、患者さんを待たせた、記録を間違えた。1年目にミスは起きます。
大事なのは、隠さないことです。医療に関わる仕事では、隠したミスがいちばん重い結果につながります。すぐに報告する。そのうえで、なぜ起きたかを一緒に整理する。
そして、報告したあとは切り替えてください。ミスを反芻し続けると、次の処置にも影響します。反省と自責は違います。反省は行動を変えますが、自責は動きを止めるだけです。
カルテが書けない
記録に時間がかかり、診療後に残って書くことになる。これも1年目によくあることです。
対処は、テンプレートを持つことです。よく使う記載のパターンを、自分用に3つか4つ作っておく。ゼロから文章を組み立てるから時間がかかるので、型を持つと一気に短くなります。過去のカルテから、書き方の良いものを写して型にするのが早いです。
同期がいない
歯科医院は少人数なので、新卒が自分ひとりというケースが多いです。同じ立場で話せる相手がいないのは、想像以上にこたえます。
学校の同期と連絡を取り続けてください。月に1回でも、状況を話せる相手がいるだけで違います。「自分だけができない」と思っていたことが、実はみんな同じだったとわかるだけで、肩の力が抜けます。
歯科衛生士会や地域の勉強会に参加するのも手です。同じ年代の人と知り合えると、視野が広がります。
体がついていかない
立ち仕事で、姿勢を保ち続ける仕事です。腰や肩、首に負担がかかります。手の使いすぎで指に違和感が出ることもあります。
体の不調が続くときは、我慢せずに医療機関を受診してください。ここで具体的な対処法をお伝えすることはできません。体のことは、必ず専門家に診てもらってください。
そのうえで、日常でできることとしては、休憩時間に必ず座る、姿勢を変える時間を意識的に作る、といったことがあります。忙しいと休憩を飛ばしてしまいがちですが、長く続けるためには休むことが仕事のうちです。
気持ちが落ち込んで戻らない
眠れない、食欲がない、休日も仕事のことばかり考えてしまう。こうした状態が2週間以上続いているなら、ひとりで抱えないでください。
職場に相談できる人がいればいちばんいいのですが、いない場合もあります。地域の相談窓口や、公的な支援の仕組みがあります。労働者の心の健康に関する相談先については、厚生労働省が窓口の情報を公開しています。
あなたは一人ではありません。同じところで苦しんでいる1年目の方は、本当にたくさんいます。
学校で習ったことと、現場で必要になることのずれ
1年目が苦しくなる原因のひとつに、学校と現場のずれがあります。これを知っておくと、「習ったはずなのにできない」という自責がかなり減ります。
学校の実習では、相互実習や模型を使った練習が中心です。相手が同級生であれば、口を大きく開けてくれますし、痛みを訴えることも、途中で動くこともほとんどありません。ところが現場の患者さんは、開口の程度も、姿勢も、痛みへの反応も、一人ひとり違います。同じ手技でも、条件が変われば通用しません。
歯石の付き方も違います。実習で扱う模型は、除去すべきものが見えやすく設計されています。実際の口腔内では、歯肉の下に隠れていて見えない部分を、器具の感触だけで判断することになります。この感覚は、模型では身につきません。数をこなす以外に方法がない領域です。
時間の制約も、学校にはありません。実習では、時間をかけて丁寧にやることが評価されます。現場では、決められた枠の中で終える必要があります。この切り替えに、多くの人が戸惑います。丁寧さと速さは対立するものに見えますが、慣れると両立します。両立するまでの期間が1年目にあたるだけです。
記録も違います。学校では実習記録を書きますが、診療報酬に関わるカルテの記載は、まったく別の作業です。何をどう書けば記録として成立するかは、現場で覚えるしかありません。
そして、複数の作業を並行して進める力。学校では、ひとつの手技に集中できます。現場では、処置をしながら次の患者さんの準備を頭に置き、歯科医師の動きを見て、器具の残量を気にかける。この同時進行が、最初はまったくできません。できないのが普通です。
ずれがあることを知っておくだけで、「自分の勉強不足だ」と思い込まずに済みます。習ったことが役に立っていないのではなく、習ったことの上に、現場でしか身につかない層が乗るというだけの話です。
1年目のうちに作っておくと、後で効くもの
日々をこなすだけで精一杯の時期ですが、後になって効いてくる蓄積があります。余裕のあるときだけで構わないので、頭の片隅に置いておいてください。
ひとつめは、自分用の手順メモです。医院ごとのやり方をまとめたものは、その医院を離れると使えないと思われがちですが、そんなことはありません。手順を言葉にする習慣そのものが、次の職場での立ち上がりを速くします。
ふたつめは、担当した処置の記録です。どの処置を何件くらい経験したかを、ざっくりでいいので残しておく。転職するとき、職務経歴書を書くときに、この記録があるかないかで書ける内容がまったく違います。1年目から書き始めた人は、3年後に大きな差がつきます。
3つめは、うまくいかなかった場面の記録です。何が起きて、どう対応して、次はどうするか。3行で構いません。これは、同じつまずきを繰り返さないためというより、自分が確実に前へ進んでいることを確認するためのものです。落ち込んだときに読み返すと、半年前の自分が同じことで悩んでいたことがわかります。
4つめは、院外のつながりです。学校の同期、勉強会で知り合った人、地域の歯科衛生士会。ひとつの医院しか知らないと、その医院の常識が業界の常識に見えてしまいます。外の話を聞ける相手がいると、自分の環境を客観的に見られるようになります。
5つめは、体を守る習慣です。姿勢、休憩の取り方、道具の持ち方。1年目に無理な姿勢が癖になると、後から直すのは大変です。先輩の姿勢を見て、楽そうにしている人の真似をしてください。長く続けている人には、続けられる工夫があります。
就職先を選ぶ段階で、できることがある
ここからは、これから就職活動をする方に向けた内容です。1年目のつまずきの半分は、就職先の選び方でかなり減らせます。
いちばん重要なのは、新卒を育てる体制があるかどうかです。
求人情報を見ていくと、教育に力を入れていることを打ち出している医院が一定数あります。
歯科衛生士求人新着求人気になる!適性診断採用担当の方東京都の新卒歯科衛生士求人2027年新卒東京都選択するこだわり選択する項目クリア検索条件追加175件の新卒歯科衛生士求人すべて新着積極採用動画希望地域最近見た気になる!歯科衛生士の就職情報 No.1077047教育・研修に強みがある 出典: job.guppy.jp
こうした求人サイトの絞り込み条件に「教育・研修に強みがある」という項目が用意されているということは、それが求職者の関心事として認識されているということです。ただし、求人票に書かれている言葉だけでは実態はわかりません。確認する方法が要ります。
見学や面接で聞いておきたいのは、次の点です。
新卒の採用実績があるか。過去に新卒を採ったことがない医院では、教える側にも経験がありません。悪い医院という意味ではなく、教える仕組みがないという意味です。
教育の担当者が決まっているか。「みんなで教える」は、実際には「誰も責任を持たない」になりがちです。担当が決まっている医院のほうが、質問しやすくなります。
最初の数か月で、どこまでを任される想定か。ここが具体的に答えられる医院は、育てた経験があります。「やりながら覚えてもらう」しか返ってこない場合、体制がない可能性が高いです。
衛生士が何人いるか。ひとりだけの医院に新卒で入るのは、負荷が大きいです。聞ける相手がいることは、1年目にとって決定的に重要です。
在籍年数の長い衛生士がいるか。長く続いている人がいる医院には、続けられる理由があります。
見学は、可能なかぎり行ってください。求人票の情報量と、半日の見学で得られる情報量は比べものになりません。予約の詰まり方、スタッフ同士の声のかけ方、新人らしき人がどう扱われているか。ここに実態が出ます。
入職のときに確認しておきたい条件
技術の話とは別に、労働条件についても知っておいてください。ここを確認せずに入職して、後から困る方が多いです。
保険がどうなっているか
歯科医院で働くときに知っておきたいのが、加入する保険の種類です。歯科医院には、健康保険組合の一種である歯科医師国民健康保険組合に加入している医院と、協会けんぽなどの社会保険に加入している医院があります。
どちらに加入するかで、保険料の計算方法や、傷病手当金といった給付の扱いが変わります。制度の内容は加入する組合や事業所の状況によって異なるため、ここで断定的な説明はできません。入職前に、労働条件通知書で加入する保険の種類を確認し、詳細は加入先の組合や、日本年金機構の公開情報で確かめてください。
厚生年金に加入するかどうかも、確認しておきたい点です。将来の年金額に関わります。
聞きにくいと感じるかもしれませんが、労働条件の確認は当然の権利です。むしろ、確認する人のほうが、入職後のトラブルが少ないです。
試用期間と、そのあいだの条件
試用期間を設けている医院は多いです。期間は3か月から6か月が一般的です。
確認しておきたいのは、試用期間中の給与が本採用後と違うかどうか、社会保険に試用期間中から加入するかどうかの2点です。ここが求人票に書かれていないことがあります。
有給休暇
法令上、一定の要件を満たせば有給休暇が付与されます。付与のタイミングと日数は法令で定められていますが、実際に取得しやすいかどうかは職場によります。
面接で「有給は取れますか」と直接聞くのが気まずいなら、「休診日以外に、どのようにお休みを取っている方が多いですか」という聞き方ができます。制度の有無ではなく、運用を聞くのがコツです。
労働条件の明示に関するルールは法令で定められています。条文を確認したい場合はe-Govで検索できます。
残業と、その扱い
歯科医院では、診療後の片づけと滅菌の時間が発生します。この時間が労働時間として扱われているかどうかは、確認する価値があります。
タイムカードがあるか、始業と終業がどう記録されているか。入職時に見ておいてください。
給与と待遇を、1年目のうちにどう考えるか
新卒の給与について、相談を受ける立場から言えることをお伝えします。
歯科衛生士の初任給は、地域と医院の規模によって幅があります。都市部と地方では差がありますし、同じ地域でも医院によって開きます。求人票の金額を見るときは、額面だけでなく、その中に何が含まれているかを確認してください。
確認したいのは、基本給と手当の内訳です。「月給25万円」と書かれていても、そこに固定残業代が含まれていることがあります。含まれている場合、何時間分に相当するのかが明示されているはずです。明示されていなければ、面接で聞いてください。
賞与の有無と、支給の実績も確認する価値があります。求人票に「賞与年2回」と書かれていても、支給額は業績によって変わります。「昨年の実績はどのくらいでしたか」と聞くのは、失礼な質問ではありません。
昇給の仕組みも聞いておきたいところです。年に1回の定期昇給があるのか、評価に応じて上がるのか、何も決まっていないのか。ここが決まっていない医院は、数年後に自分の給与がどうなるか読めません。
交通費の上限、住宅手当、資格手当、研修費の補助。細かいようですが、年間で見ると差がつきます。研修費を医院が負担してくれるかどうかは、1年目にとっては特に大きい。学ぶ機会に費用がかからないなら、それは実質的な待遇の一部です。
1年目のうちは、給与よりも「何を教われるか」を優先したほうがいい、という考え方があります。これは半分正しく、半分は注意が必要です。教育の機会に価値があるのは事実ですが、生活が成り立たない条件を我慢する理由にはなりません。両方を見て、折り合いのつく範囲を探してください。
1年目で辞めたくなったときに、考えてほしいこと
1年目のうちに「辞めたい」と思う方は、少なくありません。相談を受ける立場から言えることを、いくつかお伝えします。
まず、辞めたい理由を分けて考えてください。技術が追いつかないことがつらいのか、人間関係がつらいのか、労働条件が合わないのか、歯科衛生士という仕事そのものが合わないと感じているのか。この4つは、対処がまったく違います。
技術が追いつかないことがつらいのなら、時間が解決する可能性が高いです。1年目の技術不足は、全員が通る道です。急いで結論を出す必要はありません。
人間関係や労働条件なら、職場を変えることで解決する可能性があります。歯科医院は数が多く、医院ごとの文化の差が非常に大きい業界です。ひとつの医院が合わなかったことは、この仕事が合わないことを意味しません。
仕事そのものが合わないと感じているなら、それも尊重されるべき判断です。ただし、その判断は、少し落ち着いてから下してください。心身が消耗しているときの判断は、普段の自分の判断とは違います。
そして、辞めるにしても、次を決めてから動くほうが安全です。転職活動の進め方を知っておくと、選択肢が見えて気持ちが落ち着きます。20代の転職で使えるサービスの特徴は20代の転職サイトおすすめ5選|未経験・第二新卒向けに、求人の傾向やサポート内容の違いという観点で整理されています。1年目から3年目で動く場合の考え方は第二新卒向け転職エージェントおすすめ5選|未経験OK求人が多い【2026年版】が扱っており、経験が浅い段階での見られ方が具体的に書かれています。
読むだけでも構いません。逃げ道があると知っているだけで、いまの職場に向き合う余裕が生まれることがあります。
1年目の経験は、この先ずっと効いてくる
在宅ワークと業務委託の市場を20年運営してきた立場から、ひとつ観察をお伝えします。
長く仕事が続いている人には、共通点があります。最初の1年で、わからないことをわからないと言う習慣を身につけていることです。この習慣がある人は、その後どんな環境に移っても、必要な情報を集められます。逆に、最初の1年で「できるふりをする」癖をつけてしまった人は、後になるほど聞けなくなり、行き詰まります。
運営者として見てきた限りでは、独立や業務委託でつまずく人の多くは、技術ではなく、この部分でつまずいています。自分の担当範囲と、できないことの境界を、はっきり言葉にできるかどうか。1年目に先輩へ質問を重ねる経験は、その練習になっています。
もうひとつ、市場の構造の話をします。仲介が何層も入る働き方より、依頼する側と受ける側が直接向き合う形のほうが、条件のずれが起きにくい。間に人が入るほど、話が伝言になって期待値がずれていきます。中間マージンが乗らない手数料0%の直接取引が支持されるのは、金額の話だけではありません。条件を当事者同士で確かめられるからです。同じ予算で依頼する側はより多く頼めて、受ける側は手取りが厚くなる。この構造は、雇用の場でも同じで、条件を直接確認できる関係のほうが後でこじれません。
新卒で組織に入らず、最初から独立を考える人も出てきています。ただ、資格職の場合は現場で経験を積む期間の価値が大きく、判断は慎重にしたほうがいい。組織を経ずに独立することの利点と難しさは新卒フリーランスは無謀?|メリット・デメリットと成功する人の特徴【2026年版】に、実務経験の積み方や信用の作り方という観点で整理されています。歯科衛生士のように免許で守られた職域を持つ職種にとって、この記事は「なぜ最初に組織で経験を積む価値があるのか」を裏側から示す資料として読めます。
将来の選択肢を広く持っておきたいなら、他分野の評価のされ方を知っておくのも役に立ちます。業務の段取りを整理して提案する仕事としてAIコンサル・業務活用支援のお仕事があり、医院の予約管理やリコール管理の効率化はこの領域に重なります。技術分野を広く見るならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に各領域で求められる経験が、アプリケーション開発のお仕事に案件の実際の形がまとまっています。報酬の分布を知りたいならソフトウェア作成者の年収・単価相場と著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になり、どちらも経験年数だけでなく担当範囲で単価が開くことを示しています。技術者の基礎を証明する資格としてはCCNA(シスコ技術者認定)が、文書作成の型を体系的に学ぶならビジネス文書検定が、それぞれ入口として知られています。
すぐに転職や独立を考える必要はありません。ただ、外の世界を知っておくと、いまの職場を客観的に見られるようになります。それは、いまの仕事を続けるための力にもなります。
1年目は、長く感じます。でも、振り返ると、いちばん伸びる1年です。焦らず、比べず、1か月前の自分と比べてください。呼吸をひとつ深くして、明日の1本に向かいましょう。
よくある質問
Q. 歯科衛生士の1年目で、いちばんつらい時期はいつですか?
2か月目から3か月目です。処置を任され始めるのに時間内に終わらず、先輩に交代してもらうことが続きます。処置そのものより判断に時間がかかっている段階なので、遅いのは当たり前です。所要時間を数字で記録すると、感覚では見えない進歩がわかり、気持ちが落ち着きます。
Q. 新卒の就職先はどう選べばいいですか?
新卒の採用実績があるか、教育の担当者が決まっているか、最初の数か月で任される範囲を具体的に答えられるか、衛生士が複数いるか。この4点を面接や見学で確認してください。衛生士がひとりだけの医院に新卒で入ると、聞ける相手がいない状態になり、負荷が大きくなります。
Q. 入職時に確認しておくべき条件は何ですか?
加入する保険の種類(歯科医師国保か社会保険か)、厚生年金への加入、試用期間の長さと期間中の給与、有給休暇の運用、そして診療後の片づけや滅菌の時間が労働時間として扱われているかです。労働条件通知書で確認し、疑問があれば入職前に質問してください。
Q. 1年目で辞めたくなったらどうすればよいですか?
理由を、技術・人間関係・労働条件・仕事そのものの4つに分けて考えてください。技術不足なら時間が解決する可能性が高く、人間関係や条件なら職場を変えることで解決します。歯科医院は医院ごとの文化差が大きい業界です。心身が消耗しているときは、大きな判断を急がないでください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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