医療機器メーカーの1日の流れ|朝から終業までの動き方を追う

中西 直美
中西 直美
医療機器メーカーの1日の流れ|朝から終業までの動き方を追う

この記事のポイント

  • 医療機器メーカーの1日の流れを
  • 受注やカスタマーサポートの職種ごとに朝から終業まで追いました
  • 求人票から実際の1日を読み取るポイントもまとめています

医療機器メーカーで働く人は、朝から夕方まで、実際にどう動いているのか。

転職を考えている方から、こういう声をよく聞きます。「仕事内容の説明は読んだけれど、1日の姿が思い浮かばない」「病院で働いていた自分が、メーカーの時間の流れに合うのか分からない」。

その気持ち、とても自然です。仕事内容の一覧は、どこの会社の採用ページにも載っています。でも、朝何時にどこへ行き、昼に何をして、何時に帰れるのかは、なかなか書かれていません。そして、働き始めてから「こんなはずじゃなかった」と感じる理由の多くは、この1日の姿の食い違いにあります。

大丈夫です。医療機器メーカーの1日は、職種ごとに「何に合わせて時間が決まるのか」がはっきりしています。そこが分かれば、自分の生活と合うかどうかを、応募する前にかなり具体的に確かめられます。

この記事では、職種ごとに朝から終業までの動き方を順番に追い、最後に求人票から実際の1日を読み取る方法をお話しします。

医療機器メーカーの1日は、職種によって「時計の持ち主」が違う

最初に、全体の地図を置いておきます。医療機器メーカーの1日を理解するいちばんの近道は、「その職種の時間を決めているのは誰か」を見ることです。

職種 時間を決めているもの 1日の特徴
営業・臨床サポート 病院の手術や検査の予定 朝が早い日がある、直行直帰が多い
サービスエンジニア 機器の稼働と故障 病院が使っていない時間に作業が入る
製造 生産計画と工程 始業と終業がはっきりしている
設計・開発 開発の日程と試験 社内中心、日によって現場作業が入る
品質保証・薬事 法令の手続きと社内の締切 デスク中心、報告の期限に追われる日がある
受注・カスタマーサポート 病院や代理店からの問い合わせ 営業時間内の対応が中心

表を見ると分かるように、同じ会社の中でも、1日の過ごし方はまるで違います。営業職は病院の都合に合わせて動き、製造は工場の時計に合わせて動く。「医療機器メーカーの1日」とひとまとめにすると、どちらの話をしているのか分からなくなってしまうんです。

もう1つ、会社の規模や扱う製品でも1日は変わります。手術で使うカテーテルや人工関節を扱う会社と、検査機器や介護用のベッドを扱う会社では、病院との関わり方がまったく違います。手術に関わる製品ほど、医療現場の予定に時間を合わせる場面が増えます。

医療機器メーカーでは、多くの場合、製品ごとに組織が分かれています。そのため、同じ営業職でも、担当する製品が変わると1日の動き方も変わるのが特徴です。

医療機器業界では転職を繰り返しながら多種製品での営業経験を重ね、その疾患領域でのエキスパートを目指すキャリアを選ぶ方が多いため、業界内転職が少なくありません。また、医療機器メーカーでは、多くの場合製品単位で組織が分かれており、異なる領域の製品を担当するために転職を行うケースも多くみられます。 出典: cmic-inizio.com

ここからは、職種ごとの1日を、朝から順番に追っていきます。自分が興味を持っている職種から読んでいただいてかまいません。

営業・臨床サポートの1日:手術室の予定表から逆算して動く

手術や治療で使う製品を扱う営業職の1日は、担当する病院の手術予定から始まります。

前日の夕方、担当する病院の翌日の手術予定と、自社の製品が使われる症例を確かめます。手術が朝一番に入っていれば、朝7時台に病院へ着く日もあります。自宅から病院へ直接向かう「直行」が多く、朝に会社へ寄らない日のほうが多いという人も少なくありません。

病院に着いたら、手術で使う製品や器械が揃っているかを確かめます。整形外科の人工関節のように、サイズ違いの製品や専用の器械を一式で病院に貸し出す製品では、事前の準備が特に大切です。

手術室では、医師や看護師から製品の使い方について質問を受けることがあります。ここで知っておきたいのは、メーカーの社員が手術に立ち会える範囲には業界のルールがあることです。医療機器業公正取引協議会が定めた立会いの基準では、立会いは製品の適正な使用や安全の確保のための情報提供に限られ、医療行為は当然できません。つまり、手術室にいても、あくまで製品の専門家としてそこにいる、ということです。

手術が終わると、使った製品の記録を確かめ、次の病院へ移動します。昼食は移動の合間に取ることが多く、決まった時間に食べられない日もあります。

午後は、病院の医師や看護師、臨床工学技士への製品説明、病院の購買担当や医療機器の販売代理店との打ち合わせ、新しい製品の勉強会の準備などが入ります。医師と会えるのは外来や手術の合間なので、待つ時間も仕事のうちです。

夕方、その日の活動を社内のシステムに入力し、翌日の手術予定を確かめます。移動の多い職種なので、自宅へ直接帰る「直帰」も一般的です。

この職種の1日で大変なのは、自分で時間を決められないことです。手術が長引けば次の予定がずれ、夜間の緊急手術で製品が必要になれば呼ばれることもあります。一方で、手術の場で医療に直接関われる手ごたえは、この職種ならではです。

検査機器や院内の備品のような、手術に直接関わらない製品を扱う営業職では、朝の立会いはほとんどありません。9時前後から病院を回り、夕方に報告を入れる、比較的決まった流れの1日になります。求人に応募するときは、担当する製品が手術に関わるものかどうかを必ず確かめてください。

サービスエンジニアの1日:病院が機器を使っていない時間に動く

医療機器の点検や修理を担うサービスエンジニアの1日は、「機器が止まっていい時間」に合わせて組み立てられます。

朝は会社や営業所に出勤するか、自宅から担当の病院へ直行します。その日に予定されている定期点検の部品や測定器を確かめ、移動を始めます。

定期点検は、病院が機器を使っていない時間に行う必要があります。外来の検査機器なら、診療が始まる前の朝や、診療が終わった夕方以降。手術室の機器なら、手術の無い曜日や土日。つまり、平日の日中だけで仕事が完結しにくい職種です。

日中は、点検の合間に修理の依頼が入ります。「画像が映らない」「エラーが出て止まった」。病院にとって、使えない機器は診療が止まることを意味するので、対応の優先度はとても高くなります。電話で状況を聞き、遠隔で直せるものは直し、部品の交換が必要なら手配して病院へ向かいます。

点検や修理のあとは、作業の記録を残します。医療機器は、いつ誰がどんな点検や修理をしたのかを記録として残すことが求められるので、ここを省くことはできません。

終業は夕方ですが、夜間や休日の作業が月に何回か入る会社が多く、交代で緊急の呼び出しに備える待機の当番を置いている会社もあります。

この職種で戸惑いやすいのは、病院の人たちの焦りを直接受け止めることです。機器が止まって検査ができない、患者さんを待たせている。そんな場面で、落ち着いて原因を探し、見通しを伝える力が求められます。

臨床工学技士や、病院で機器の管理をしていた方にとっては、これまでの経験がそのまま生きる職種です。立場が病院側からメーカー側に変わるだけで、機器と向き合う点は変わりません。ただし、1つの病院の機器を見るのではなく、何十もの病院の同じ機種を見ることになるので、機種についての知識は深くなる一方、病院ごとの事情に合わせる柔軟さも必要になります。

移動の多さも、この職種の1日を形づくる大きな要素です。担当エリアが広い会社では、1日に車で100キロ以上走る日もあります。点検に使う測定器や交換部品は重いものもあるので、社用車で動くのか、公共交通機関で動くのかによって、体の疲れ方がまったく違います。求人票の「普通自動車免許必須」という一文は、この1日の姿を表しています。

新人の時期は、先輩のエンジニアに同行して、点検の手順や病院での振る舞いを覚えます。医療機器の種類によっては、メーカーの研修で機種ごとの認定を受けてから、一人で作業を任される仕組みになっています。

製造現場の1日:クリーンルームに入る前の準備から始まる

医療機器メーカーの工場で働く製造スタッフの1日は、他の職種と比べて時間の区切りがはっきりしています。

朝は始業の少し前に出勤し、作業着に着替えます。カテーテルや注射針のように体の中に入る製品や、滅菌して出荷する製品を作る工程では、ほこりや菌を持ち込まないために、クリーンルームで作業することがあります。

クリーンルームに入る前には、決められた手順があります。専用の無塵衣に着替え、帽子やマスクで髪や口元を覆い、手を洗い、エアシャワーでほこりを落としてから入ります。化粧や香りの強いもの、アクセサリーやネイルは禁止されていることが多く、この準備だけで10分から15分ほどかかります。

始業後は朝礼で、その日の生産計画、品質上の注意点、前日に起きた不具合の共有などが伝えられます。安全のためのラジオ体操から1日を始める工場もあります。

作業中は、決められた手順書に沿って組立、検査、包装などを進めます。医療機器の製造では、どの材料を使い、誰が、いつ、どの工程を行ったかをロットごとに記録します。この記録があることで、後から不具合が見つかったときに、同じ時期に作られた製品を特定して回収できるからです。

午前と午後に短い休憩があり、昼休みは工場の食堂や休憩室で取るのが一般的です。クリーンルームから出るたびに着替えが必要なので、休憩の時間は着替えの時間も含めて考えておく必要があります。

終業の前には、その日の生産数と記録を確かめ、作業場所を片付けます。工場によっては、日勤と夜勤の交替制で24時間稼働しているところもあり、その場合は勤務の時間帯が週ごとに変わります。

製造の1日は、自分の時間の見通しが立てやすい点が大きな利点です。残業の有無は生産計画によって変わりますが、日々の始業と終業が決まっているので、家族の予定と合わせやすい働き方です。一方で、同じ作業を正確に繰り返す集中力と、手順を1つも省かない丁寧さが求められます。

製造の現場には、組立や包装のほかに、完成した製品を検査する工程、材料や部品を受け入れて確かめる工程、製品を滅菌する工程などがあります。検査の工程では、顕微鏡や拡大鏡で小さな傷や異物を見つける作業が続くので、目の疲れへの対策も大切です。1時間ごとに目を休める時間を決めている工場もあります。

新しく入った人は、まず手順書の読み合わせと、先輩の横での作業から始めます。一人で作業を任されるまでに、工程ごとの認定を受ける仕組みを取っている工場もあり、覚える手順の多さに最初は驚く方が多いです。

設計・開発の1日:午前はデスク、午後は現場という組み立て

製品の設計や開発を担う職種の1日は、社内での作業が中心です。ただ、机に向かうだけの仕事ではありません。

実際に医療機器メーカーで設計を担当していた人の1日を、業界の情報サイトが紹介しています。朝8時に出社して作業着に着替え、ラジオ体操と朝礼のあと、午前はメールの確認と設計図の確認や作成、資料づくり。昼食を挟んで、午後は金型のメンテナンスを行い、夕方に打ち合わせをして17時に退社する、という流れです。

メールチェックからはじまり、設計図の確認や資料作成など、デスク作業は頭が冴えている午前中に片付けていました。 お昼の後は頭がぼーっとしまうこともあるので、金型のメンテナンスなど、工場で体を動かす作業を行なっていました。 出典: iryokiki-navi.com

この話から見えてくるのは、設計や開発の仕事が、頭を使う時間と体を動かす時間の組み合わせでできていることです。自分の集中力の波に合わせて、1日の順番を組み立てる工夫が生きる職種だと言えます。

開発の日程が進むと、1日の中身も変わります。試作品ができる時期には、試験や評価の立ち会いが増えます。製品が安全に使えることを示すための試験は、決められた方法で繰り返し行う必要があり、その結果を記録にまとめる時間も長くなります。

医療機器の開発では、実際に使う医師や看護師の意見を聞く場面もあります。病院に出向いて使い勝手を確かめたり、試作品を見てもらったりする日は、営業職と同じように病院の予定に合わせて動きます。

発売の時期が近づくと、品質保証や薬事の担当者と一緒に、国に出す書類の準備が進みます。締切の前は残業が増えることもあり、開発の段階によって忙しさの波が大きい職種です。

私自身、ある開発職の方から「医療機器の開発は、作る時間より確かめる時間のほうがずっと長い」と聞いたとき、この仕事の本質を教えてもらった気がしました。1つの製品が患者さんに届くまでに、どれだけの確認が重ねられているのか。そこに誇りを持てる人が、この職種で長く続いているように感じます。

品質保証・薬事の1日:記録と期限に向き合う

品質保証と薬事の担当者の1日は、デスクでの作業が中心で、法令にもとづく手続きと社内の締切で時間が決まります。

医療機器は、医薬品医療機器等法(薬機法)という法律で、製造や販売に厳しいルールが定められています。品質保証の担当者は、そのルールに沿って製品が作られ、出荷されているかを確かめる役割を担います。

朝は、前日までに届いた病院からの問い合わせや、製品の不具合の情報を確かめるところから始まります。不具合の情報が届いたら、どのロットの製品か、同じ時期に作られた製品に同じ問題が無いか、製造の記録をさかのぼって調べます。

医療機器の不具合によって健康被害が起きた、あるいは起きるおそれがある場合には、法律で定められた期限までに国へ報告しなければなりません。こうした情報が届いた日は、他の予定を後回しにして対応にあたります。

日中は、工場の製造記録の確認、出荷してよいかどうかの判定、社内の監査や外部の審査の準備などが入ります。医療機器の品質を管理する仕組みには国の基準があり、その基準を満たしているかを定期的に確かめられるため、書類を整えておく作業は日常の一部です。

薬事の担当者は、新しい製品を販売するために必要な承認や認証の申請書類をつくります。開発部門から試験の結果を集め、書類にまとめ、審査を担う機関とやり取りをします。書類の不備を指摘されれば、その回答を期限内に準備します。

終業は定時に近い日が多いものの、申請や報告の期限が迫る時期は忙しくなります。

1日の中で意外と多いのが、社内の他の部署とのやり取りです。製造部門には記録の修正を依頼し、営業部門には病院への説明の内容を確かめ、開発部門には試験のやり直しを相談する。品質保証や薬事は、社内の誰にとっても「確認をお願いする相手」になるので、会議や相談の時間が1日の半分近くを占める日もあります。

そのため、この職種では、正確さと同じくらい、相手に伝わる言葉で説明する力が問われます。法令の言葉をそのまま伝えても、製造の現場や営業の担当者には伝わりません。「なぜこの記録が必要なのか」を相手の仕事の言葉に置き換えて話せる人ほど、社内から頼りにされます。

この職種は、看護師や臨床検査技師、薬剤師など、医療の資格を持つ人が活躍しやすい分野です。医療現場で製品がどう使われるのかを知っていることが、不具合の情報を読み解くときに役立ちます。一方で、病院のように患者さんと直接関わる場面はほとんどありません。そこに寂しさを感じるか、落ち着いて記録に向き合える良さを感じるかで、向き不向きが分かれます。

受注事務・カスタマーサポートの1日:病院と社内をつなぐ

医療機器メーカーには、病院や販売代理店からの注文を受け、社内に伝える受注事務や、製品の使い方の問い合わせに答えるカスタマーサポートの仕事もあります。

朝は始業と同時に、前日の夕方以降に届いた注文や問い合わせのメールを確かめます。病院からの注文は、手術や検査の予定に合わせて入るので、「明日の手術で使うので至急届けてほしい」という連絡が朝一番に入ることがあります。在庫を確かめ、物流の担当に出荷を依頼し、営業担当にも共有します。

日中は電話やメールでの対応が中心です。製品の在庫や納期の確認、見積もりの作成、返品や交換の手続き、請求書の発行などを進めます。製品の使い方についての問い合わせでは、取扱説明書にもとづいて答え、専門的な内容は技術の担当者につなぎます。

医療機器の問い合わせでは、製品の名前や型番を正確に聞き取ることがとても大切です。似た名前の製品やサイズ違いの型番が多く、1文字の聞き違いが、手術で使えない製品を届けてしまうことにつながりかねません。

問い合わせの中に不具合の可能性がある内容が含まれていた場合は、品質保証の担当者にすぐに伝えます。受け付けた人が、内容を正確に記録して社内につなぐことが、患者さんの安全を守る最初の一歩になります。

終業は定時のことが多く、時間の見通しが立てやすい職種です。一方で、病院からの急ぎの依頼が夕方に入ると、出荷の手配が終わるまで帰れない日もあります。

月末や年度末は、1日の中身が変わる時期です。病院の予算の締めに合わせて注文が集中し、請求書の発行や売上の締め処理も重なります。また、製品の価格改定や新製品の発売の時期には、代理店や病院からの問い合わせが一気に増えます。忙しさの波がいつ来るのかを先に知っておくと、休みの予定も立てやすくなります。

在宅勤務を取り入れている会社もありますが、注文の書類や出荷の手配の都合で、出社が基本になっている職場も多くあります。求人票の「在宅勤務可」が、入社直後から使えるのか、一定の期間を経てからなのかも確かめておくと安心です。

医療事務や病院の受付の経験がある方は、医療の用語や病院の仕組みを知っているぶん、この仕事になじみやすいはずです。病院の中で使われる言葉や、診療報酬の考え方を体系的に学んだことがあるなら、その知識も役立ちます。医療事務の知識を確かめる資格については、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)で試験の内容と活かし方をまとめています。

病院勤務の1日と比べて、何が変わるのか

医療機器メーカーへの転職を考える方の中には、病院で看護師や臨床工学技士、臨床検査技師として働いていた方が多くいます。病院の1日と比べると、何が変わるのでしょうか。

いちばん大きな違いは、「患者さんの時間」から「製品と取引先の時間」へ、時計の持ち主が変わることです。病院では、患者さんの状態がすべての予定に優先しました。メーカーでは、病院の予定、工場の生産計画、国の手続きの期限が、それぞれの職種の時間を決めます。

2つ目の違いは、夜勤が無くなることです。多くの職種で交替制の夜勤はなくなり、生活のリズムは整いやすくなります。ただし、営業職の早朝の立会いや、サービスエンジニアの夜間や休日の作業、製造の交替勤務など、職種によっては時間外の勤務が残ります。

3つ目の違いは、成果の見え方です。病院では、目の前の患者さんが回復していく姿が手ごたえでした。メーカーでは、製品が多くの病院で安全に使われること、不具合を防げたこと、売上の目標を達成したことが成果になります。一人ひとりの患者さんの顔は見えにくくなりますが、関われる患者さんの数は大きく広がります。

病院勤務の看護師の年収の相場は、看護師の年収・単価相場で年齢や働き方ごとの幅を確かめられます。夜勤手当がなくなるぶん、転職先の給与と比べるときには、手当を除いた基本給の部分で比べると、実際の差が見えやすくなります。

こんな声を聞いたことがあります。病院から品質保証の仕事に移った方が、最初の数か月、「自分は誰の役に立っているのか分からない」と感じていたそうです。でも、ある日自分が気づいた記録の小さな違いから、出荷前の製品の問題が見つかった。そのとき、「この1本の確認の先に、何百人もの患者さんがいる」と実感できたそうです。時間の流れが変わっても、医療に関わる手ごたえはちゃんと残っています。

4つ目の違いは、休みの取り方です。病院ではシフトで休みが決まり、希望を出しても通らないことがありました。メーカーの多くは土日祝が休みのカレンダーで、年次有給休暇も自分で予定を立てて取る形になります。一方で、営業職やサービスエンジニアは、担当する病院の予定を見ながら休みを入れる必要があり、「完全に自分の都合で決められる」わけではありません。

転職したばかりの時期は、平日の昼に予定が空くことに落ち着かなさを感じる方もいます。長く体に染みついたリズムが変わるので、慣れるまでに数か月かかるのは自然なことです。

求人票のどこを見れば、その職種の1日が分かるか

最後に、求人票から実際の1日を読み取る方法をお伝えします。求人票には1日の流れが書かれていないことが多いのですが、いくつかの言葉に注目すると、かなり具体的に想像できます。

求人票を読むときは、仕事内容の欄だけでなく、勤務時間、休日、手当、応募資格の欄を合わせて読むのがコツです。1つの欄だけでは分からないことも、複数の欄を並べると1日の姿が浮かび上がってきます。

1つ目は「勤務地」と「直行直帰」です。勤務地が「担当エリア」や「自宅から直行直帰可」と書かれていれば、会社にはあまり出社せず、病院を回る働き方です。移動に車を使うかどうかも、ここで確かめます。

2つ目は「手術立会い」「オンコール」「待機」という言葉です。これらが書かれていれば、早朝や夜間に病院の予定で動く日があるということです。待機手当が出るのか、呼び出しの頻度はどのくらいかも、面接で聞いておきましょう。

3つ目は「土日祝の作業あり」「夜間作業あり」です。サービスエンジニアの求人によく書かれています。月に何回くらいか、代わりの休みはどう取るのかを確かめてください。

4つ目は「クリーンルーム」「交替制」「無塵衣」です。製造の求人でこれらが書かれていれば、着替えの手順がある職場で、勤務の時間帯が変わる可能性があります。

5つ目は「担当製品」です。手術で使う製品か、検査機器か、在宅医療の機器か。製品の種類で、病院との関わり方と1日の時間の使い方が大きく変わります。

6つ目は「フレックスタイム制」「裁量労働制」「みなし労働時間」という言葉です。開発や品質保証の求人ではフレックスタイム制がよく見られ、朝の時間を自分で調整しやすくなります。営業職で「事業場外みなし労働時間制」と書かれている場合は、外回りの時間を一定の時間働いたとみなす仕組みなので、実際の時間と残業代の関係を確かめておくと、入社後の食い違いを防げます。

7つ目は「研修期間」です。医療機器メーカーでは、入社後に製品の知識や法令のルールを学ぶ研修が数週間から数か月あることが多く、その期間は本社や研修施設に通う1日になります。遠方での研修がある場合、その間の住まいや交通費の扱いも確かめておきましょう。

面接では、「入社した人の典型的な1日を教えてください」と聞いてみてください。具体的な時刻で答えてくれる会社は、働き方の実態を把握し、隠さずに伝えようとしている会社です。そう聞くのは失礼ではありませんよ。長く働くために必要な確認です。

1日の流れを知ることは、長く働くための準備になる

フリーランスや在宅ワークの市場を長く運営してきた立場から見ると、仕事が続く人と続かない人の違いは、能力よりも「1日の流れを事前に知っていたかどうか」にあることが多いと感じます。

仕事の中身に惹かれて入っても、朝の時間や移動の多さ、急な呼び出しが生活と合わなければ、どこかで無理が出ます。反対に、1日の姿を知ったうえで選んだ人は、大変な時期があっても「分かっていたこと」として受け止められます。

医療機器メーカーへの転職で、前の職場とどんな落差があり、何を決め手に選んだのかは、医療機器メーカーへの転職をまとめた記事で詳しく書いています。未経験から入る場合に、どんな募集があり、慣れるまでにどんな時間がかかるのかは、未経験から医療機器メーカーで働く方法を解説した記事が参考になります。

医療の知識を持つ人の中には、メーカーでの経験を生かして、医療機器の説明資料の作成や、マニュアルの翻訳、製品レビューの監修などを個人で請け負う人もいます。臨床工学技士の知識を在宅の仕事につなげる方法は、臨床工学技士の在宅の副業をまとめた記事で紹介しています。

運営者として見てきた限りでは、こうした個人の仕事で長く信頼される人は、自分の1日の中で使える時間を正直に伝えています。「平日の夜なら対応できる」「急ぎの依頼は受けられない」。条件を先に示すことが、無理のない関係の土台になります。

そして、個人で仕事を受けるときには、仲介の手数料が重く乗らない形を選ぶことも大切です。中間の取り分が少なければ、依頼する側は同じ予算で頼みやすく、受ける側は手元に残る報酬が厚くなります。手数料0%の直接のやり取りは、双方が無理なく続けられるという点で意味があります。

自分のキャリアをどう組み立てるか一人で整理しきれないときは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で、転職やキャリアの相談を受ける仕事の形を紹介しています。第三者と話すことで、自分に合う1日の姿が見えてくることもあります。

医療機器メーカーの1日は、職種によってまったく違います。あなたが大切にしたい時間の使い方と、その職種の時計が合うかどうか。そこを確かめてから選べば、大丈夫です。

よくある質問

Q. 医療機器メーカーの営業職は朝何時から働きますか?

手術で使う製品を担当する営業職は、手術の開始に合わせて朝7時台に病院へ直行する日があります。一方、検査機器など手術に関わらない製品の担当なら、9時前後から病院を回る決まった流れが中心です。担当する製品が手術に関わるかどうかで朝の時間が大きく変わるため、応募前に確認してください。

Q. 医療機器メーカーのサービスエンジニアは夜間や休日の勤務がありますか?

あることが多いです。定期点検は病院が機器を使っていない時間に行う必要があり、診療前後の時間帯や、手術の無い土日に作業が入ります。緊急の故障に備えて待機の当番を置く会社もあります。求人票の土日祝作業や待機の記載を確かめ、頻度と代休の取り方を面接で聞いておくと安心です。

Q. 医療機器メーカーの製造の仕事は1日の流れが決まっていますか?

始業と終業がはっきりしていて、時間の見通しが立てやすい職種です。朝礼で生産計画を確かめ、手順書に沿って組立や検査を行い、ロットごとに記録を残します。クリーンルームでの作業では着替えやエアシャワーの手順があり、準備に時間がかかります。交替制の工場では勤務の時間帯が週ごとに変わります。

Q. 病院から医療機器メーカーに転職すると1日の過ごし方はどう変わりますか?

患者さんの状態が優先だった時間から、病院の予定や工場の生産計画、法令の手続きの期限に合わせる時間へ変わります。多くの職種で交替制の夜勤は無くなりますが、営業の早朝の立会いやサービスエンジニアの休日作業など、職種によって時間外の勤務は残ります。職種ごとの違いを確かめて選ぶことが大切です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月12日最終更新:2026年9月16日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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