基本情報技術者を活かせる年収と仕事

前田 壮一
前田 壮一
基本情報技術者を活かせる年収と仕事

この記事のポイント

  • 基本情報技術者年収の実態を
  • 求人データと職種別の構造から整理しました
  • 資格だけでは上がらない理由

まず、結論を正直に書きます。基本情報技術者の資格を取っただけで年収が大きく上がることは、ほとんどありません。基本情報技術者年収という言葉で検索している皆さんが期待している答えとは違うかもしれませんが、これが実態です。ただし、この資格が年収に無関係だという話でもありません。効き方が間接的なのです。

この記事では、資格保有者の年収が実際にどの水準にあるのか、年収を決めているのは何なのか、この資格がどの職種でどう効くのかを、求人のデータと職種の構造から整理します。そのうえで、資格手当の相場、上位資格への繋げ方、40代以降で取る意味、独立した場合の単価まで書きます。読み終えたときに、次に何を積むかが決まっている状態を目指してください。

基本情報技術者試験は、どういう位置づけの資格なのか

最初に前提を共有します。基本情報技術者試験は、情報処理技術者試験の中で入門から基礎にあたる位置にあります。受験者の規模はかなり大きい。

年間約15万人が受験する人気の資格です。この記事では、基本情報技術者試験取得者の概要、年収や資格を活かせる職種などを紹介していきます。 出典: tenshoku.mynavi.jp

年間15万人という規模から分かることが2つあります。1つ目は、この資格が業界で広く認知されているということです。求人票や社内の評価制度で名前が通るので、書類の段階で説明が不要になります。2つ目は、希少性が低いということです。毎年多数の合格者が出る資格に、高い希少価値は付きません。これが「資格だけでは年収が上がらない」理由の半分です。

試験の中身は、コンピュータの仕組み、アルゴリズムとプログラミング、データベース、ネットワーク、セキュリティ、プロジェクト管理、経営や法務まで含む広い範囲です。現在は通年で受験できる方式に変わり、科目Aで知識、科目Bでアルゴリズムとセキュリティの考え方を問う構成になっています。

この範囲の広さは、実務上で意味があります。皆さんがもし開発の現場にいるなら、自分が担当している範囲の外側で何が動いているかを知らないまま仕事をしている部分があるはずです。ネットワークの設定、データベースの設計、セキュリティの前提。そこを一度体系的に通すと、他の担当者との会話が変わります。年収に直接効かなくても、仕事の進め方に効く。私はこの部分が資格の実質的な価値だと考えています。

資格保有者の年収は、実際どのくらいなのか

数字の話に入ります。この資格の保有者の年収を語るとき注意が必要なのは、「資格保有者の年収」という統計が、実際には「その資格を求める求人の年収」であることが多い点です。

求人ベースの数字は、経験の有無で明確に差が出ています。

求人内容を見てみると、未経験者歓迎は102件あり、加重平均の年収は617万円と、経験者よりも47万円低い結果となっており、即戦力として期待できる経験者を望んでいることが分かります。 出典: tenshoku.mynavi.jp

この数字の読み方を説明します。未経験者歓迎の求人で加重平均が617万円というのは、かなり高い水準です。ただしこれは「未経験でも617万円もらえる」という意味ではありません。この資格名で検索して出てくる求人には、実務経験を前提とした高い年収帯の募集が多く含まれており、その中で「未経験者歓迎」と書かれた求人の平均が617万円だという構造です。多くの場合、未経験者歓迎と書かれていても、別の分野での職務経験や学習歴が評価の対象になっています。

重要なのは、経験者との差が47万円という点です。つまり同じ資格を持っていても、経験の有無で年収が47万円動く。これが資格より経験が効くという事実の数字での裏付けです。資格を取ることで得られるのは入口の広さで、金額を動かすのは経験の方だと理解してください。

もう1つ、企業の規模と地域による差も無視できません。同じ職種でも、大手の元請けと下請けの開発会社では年収帯がまったく違います。この差は資格では埋まりません。年収を上げたいなら、資格の階段を登るより、取引の階層を上げる方が効果が大きい。これは皆さんが所属している会社の位置を確認するところから始まる話です。

職種の平均と比べて、自分がどこにいるかを測る

資格保有者の年収を語る前に、その職種そのものの平均を知っておく必要があります。自分の年収が低いのか高いのかは、比べる相手を決めないと判断できません。

システムエンジニアの平均年収は厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」を参考にすると、574万円(※2025年8月執筆時点)です。また、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」における「エンジニア/プログラマ」の平均年収を参考にすると、592万円でした。 出典: tenshoku.mynavi.jp

この数字を、民間企業全体の平均と並べると位置が見えます。国税庁の民間給与実態統計調査による民間企業の平均年収は459万円です。つまりシステムエンジニアの職種平均は、全産業の平均より100万円以上高い水準にあります。IT職種は、平均で見れば恵まれた位置にいます。

ただし平均という数字の扱いには注意が必要です。この職種の年収は分布の幅がきわめて広く、同じ肩書きでも300万円台から1,000万円超まで存在します。平均574万円という数字は、その幅の真ん中付近にある点でしかありません。自分が平均より低い場合、原因は能力ではなく所属している会社の取引の位置である可能性が高い。逆に平均より高い場合も、個人の実力より会社の位置によるところが大きいことがあります。

だから測り方を変えてください。職種の平均と自分を比べるのではなく、同じ職種で同じ経験年数の人が集まる求人票の年収帯と比べます。経験5年の開発職を募集している求人を20件集め、提示されている年収の下限を並べる。その中央値が、今の自分の市場価格に近い数字です。現在の年収がそれを大きく下回っているなら、交渉か移動の余地があります。上回っているなら、今の環境には金額以上の理由があるかを確認します。

そしてもう1つ、業界の外と比べる視点も持ってください。IT職種は平均が高いかわりに、技術の移り変わりへの対応を求められ続けます。学習をやめた時点で市場価格が下がる職種です。年収の水準だけを見て入ってくると、この継続的な負担を見落とします。この資格の学習を「一度で終わる作業」だと思わず、以後も続く習慣の入口だと捉えてください。

年収を決めているのは、資格ではなく3つの要素です

1つ目は職種です。同じIT業界でも、開発、インフラ、社内の情報システム、テストと品質保証、サポートでは年収帯が違います。一般に上流の設計や要件定義に関わる職種が高く、運用や保守が中心の職種は抑えられます。基本情報技術者の資格は、このどの職種にも入口として使えますが、選んだ職種の水準が天井を決めます。

2つ目は業界と取引の位置です。同じシステム開発の仕事でも、発注元に近い位置で働くのか、二次請けや三次請けの位置で働くのかで単価が変わります。中間に入る会社が多いほど、現場のエンジニアに届く金額は減ります。年収に不満がある人は、自分の仕事がどの階層で発生しているかを確認してください。ここが構造的な原因である場合、個人の努力では動きません。

3つ目は雇用の形です。正社員、契約社員、派遣、業務委託。同じ業務でも金額の決まり方が違います。業務委託は変動が大きいかわりに、単価交渉が直接できます。正社員は安定するかわりに、社内の給与テーブルの上限が効きます。

この3つを押さえたうえで資格の位置を確認すると、役割が見えてきます。資格は職種を変えるとき、業界を変えるとき、雇用形態を変えるときに「話が通る証明」として機能します。証明があるから話が通る。話が通るから交渉の場に立てる。交渉の場に立てるから金額が動く。3段階を経て効くので、取っただけでは動かないわけです。

基本情報技術者を活かせる職種を5つ挙げます

資格が入口として効く職種を、具体的に見ていきます。

1つ目は、システム開発の職種です。設計、実装、テストの工程を担当します。基本情報の範囲はこの職種の基礎とほぼ重なっているため、学習した内容が直接業務に繋がります。年収を上げる道筋は、実装から設計、設計から要件定義へと担当範囲を上流に広げることです。開発職の金額帯を確認したい方は、職種別の相場をまとめたソフトウェア作成者の年収・単価相場で水準を確認しておくと、自分の位置が測れます。

2つ目は、インフラの職種です。サーバ、ネットワーク、クラウドの構築と運用を担当します。基本情報のネットワークとセキュリティの範囲が土台になります。この分野は資格が評価されやすい領域で、ベンダーの認定資格を積み上げると単価に直結します。ネットワークの基礎を証明する資格として広く使われているCCNA(シスコ技術者認定)は、インフラの求人票で名前を見る機会が多い資格です。

3つ目は、社内の情報システム部門です。自社のシステムの企画、導入、運用、社内からの問い合わせ対応を担当します。技術の幅が求められる反面、深さは求められないことが多く、基本情報の範囲が実務とよく合います。事業会社の一員として働くため、開発会社より勤務条件が安定しやすい点も特徴です。

4つ目は、テストと品質保証の職種です。仕様どおりに動くかを検証し、不具合を見つけて記録します。地味に見えますが、システムの全体像を理解していないと務まらない仕事です。開発の経験が浅い段階から入りやすく、そこから開発職へ移る人も多くいます。

5つ目は、サポートやヘルプデスクの職種です。年収帯は上の4つより低い傾向にありますが、未経験からの入口としては現実的です。ここに留まると年収は伸びにくいので、数年で別の職種へ移ることを前提に考えてください。

職種選びで一番大事なのは、年収の高さではなく、そこから次に移れるかどうかです。次の移動先が見えない職種に入ると、資格を取っても停滞します。

資格手当と昇給の実態を、正直に書きます

社内での金銭的な扱いについて書きます。期待しすぎないでほしいので、正直に書きます。

資格手当を設けている企業では、基本情報技術者の手当は月3千円から1万円程度が一般的な範囲です。一時金として支給する会社もあり、その場合は合格時に数万円が支払われて終わりという形になります。年間で見ると、大きな金額にはなりません。

ただし、評価制度の中での位置づけは別の話です。多くのIT企業では、等級や職位を上げる条件に資格の保有が組み込まれています。この場合、資格そのものの手当は小さくても、昇格の条件を満たすことで基本給が動きます。資格が効くのは手当ではなく昇格の条件としての部分です。自社の制度を確認してみてください。人事の規程に「昇格要件」として書かれているなら、取る価値は明確にあります。

もう1つ、受験費用や教材費を会社が負担する制度があるかも確認してください。合格時に受験料を還付する制度は、比較的多くの企業が持っています。制度があるなら使わない理由がありません。

昇給への効き方について、私自身の経験から1つ書いておきます。私がメーカーにいたころ、資格を取った同僚と取らなかった同僚で、その年の昇給額に差はほとんどありませんでした。差が出たのは数年後で、担当する案件の種類が変わったことによる差でした。資格を持っている人に、新しい領域の仕事が回ってきたのです。金額が動くのは資格の直後ではなく、仕事の内容が変わった後だという順序を覚えておいてください。

上位資格へどう繋げるかで、効き方が変わります

基本情報技術者は入門から基礎の位置にある資格です。ここで止めると効果は限られ、次に繋げると効果が変わります。道筋を示します。

最も一般的な次の一歩は、応用情報技術者試験です。範囲は基本情報と重なりますが、問われ方が深くなり、記述式の解答が入ります。この資格は求人票で「歓迎」として名前が出る頻度が高く、社内の昇格要件にも組み込まれていることが多い。基本情報の合格から半年から1年で挑戦する人が多く、学習の内容が繋がっているので効率的です。

分野を絞る道もあります。インフラならネットワークやセキュリティの専門資格、データベースならその分野の試験、プロジェクト管理なら管理系の資格。自分が進みたい職種が決まっているなら、応用情報より専門資格を先に取った方が単価に直結する場合があります。

クラウドやベンダーの認定資格も選択肢です。実務で使う製品の認定は、求人票で具体的に指定されることが多く、書類選考で効きます。ただし認定には有効期限があり、更新の手間と費用が発生します。この点は先に確認してください。

選び方の目安を示します。転職を考えているなら、応募したい求人票を10件集めて、そこに書かれている資格名を数えてください。頻出する資格を取る。求人票に出てこない資格を取っても、書類の通過率は変わりません。私はこの方法を皆さんに勧めています。資格の一覧を見比べて迷うより、実際の需要から逆算した方が早いのです。

40代以降で取る意味はあるのか

年齢の話をします。40代や50代でこの資格を取る意味があるのかという質問をよく受けます。答えは、目的次第です。

転職の武器として期待するなら、基本情報技術者だけでは足りません。この年代の採用で見られるのは、実務経験とマネジメントの経験です。資格が経験の代わりになることはありません。厳しいことを書きますが、40代で未経験からIT業界に入る場合、資格の有無より受け入れ体制のある会社を見つけられるかどうかで結果が決まります。

一方で、社内での立ち位置を変える目的なら、意味は十分にあります。長く働いてきた分野の知識に、システムの基礎が加わると、業務とシステムの間を繋ぐ役割が務まります。業務を知っている人がシステムを理解すると、要件を言葉にできる。この能力を持っている人は社内に多くありません。情報システム部門への異動、業務改善の担当、システム導入のプロジェクトへの参加といった形で、役割が変わる可能性があります。

もう1つの目的は、独立や業務委託への準備です。私は43歳で会社を辞めました。辞める前の1年間、在宅で仕事を受けながら準備していました。このとき実感したのは、技術の詳しさより「業務の言葉と技術の言葉を両方話せること」が価値になるという点でした。基本情報の範囲は、その橋渡しに必要な最低限の語彙を提供してくれます。皆さんが長く働いてきた業界の知識と組み合わせると、若い技術者には出せない価値になります。

年齢を理由に諦める必要はありませんが、資格に期待する役割は年代で変えてください。20代は入口として、30代は職種を変える証明として、40代以降は業務と技術を繋ぐ役割の裏付けとして使う。これが現実的な使い方です。

学習の進め方と、費用の目安

実際に取ると決めた方向けに、進め方を書きます。

学習時間の目安は、IT業務の経験がある方で100時間前後、未経験の方で200時間から300時間程度と言われます。1日1時間なら、経験者で3か月、未経験者で半年から1年です。範囲が広いので、短期間で詰め込む方式は向きません。毎日少しずつ進める方が確実です。

進め方は、科目Aの知識分野を参考書で一周し、過去問を繰り返すのが基本です。科目Bのアルゴリズムとセキュリティは、読むだけでは身につきません。実際にコードを追い、トレース表を手で書いてください。ここを飛ばして落ちる人が最も多い領域です。

費用は、受験料が1万円弱、参考書と問題集で数千円。合計で2万円以内に収まります。会社に還付制度があれば実質的な負担はさらに下がります。オンラインの講座を使う場合は数万円かかりますが、独学で続かなかった経験がある方には選択肢になります。

学習と並行して進めてほしいことが1つあります。手を動かす習慣です。資格の勉強だけでは、面接で話せる材料になりません。小さなプログラムを書く、自宅のパソコンで仮想環境を作る、データベースに実際のデータを入れて集計する。何でも構いません。作ったものが1つあると、書類と面接の中身が変わります。書類の組み立て方が分からない場合は、職歴と成果の並べ方を段階的に説明した職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】を先に読むと、学習歴の置き場所が決まります。

求人票の年収の読み方を覚えておく

年収の話をするときに欠かせないのが、求人票の読み方です。ここを誤解したまま応募すると、入社後に「思っていた金額と違う」という事態になります。押さえる点を4つ挙げます。

1つ目は、資格が「必須」と書かれているか「歓迎」と書かれているかの違いです。必須なら、その資格がないと書類で落ちます。歓迎なら、なくても応募できます。基本情報技術者が必須条件になっている求人はそれほど多くなく、歓迎条件として並んでいるのが一般的です。つまりこの資格は、応募の可否を決めるものではなく、並んだ候補者の中での比較材料として働きます。

2つ目は、年収の幅の読み方です。「年収400万円から800万円」と書かれている場合、上限の800万円は管理職や高度な経験を持つ人向けの数字です。未経験や経験の浅い段階で提示されるのは下限に近い金額になります。幅の中央値ではなく、下限が自分に提示される金額だと考えてください。

3つ目は、年収に何が含まれているかです。固定残業代が含まれた提示は珍しくありません。月20時間分の残業代が年収に組み込まれている場合、残業をしなくても同額ですが、それ以上働いても増えません。時間で割り戻して比較してください。賞与も「業績連動」と書かれている場合、実績の月数を確認する必要があります。

4つ目は、昇給の仕組みです。年に1回の定期昇給があるのか、等級が上がらないと動かないのか。等級制の会社では、昇格しない限り数年間ほぼ同じ金額のままという場合があります。ここで資格が昇格要件として効いてくるので、面接で制度を確認する価値があります。

求人票を10件並べて、この4点を表にしてみてください。同じ年収帯に見えていた求人が、実際にはかなり違う条件であることが分かります。この作業をやった方は、内定が出たときに落ち着いて比較できます。

年収を上げるための動き方は、4つしかありません

構造の話をしてきたので、実際の動き方をまとめます。年収を上げる方法は、大きく4つです。

1つ目は、担当の工程を上流へ動かすことです。実装から設計、設計から要件定義へ。上流の工程は、判断の責任が重いかわりに単価が高くなります。動くために必要なのは資格ではなく、顧客や利用部門と話をした経験です。社内で機会があるなら、要件を聞く場に同席させてもらうところから始めてください。

2つ目は、取引の階層を上げることです。二次請けや三次請けの位置で働いている場合、現場に届く金額は構造的に抑えられます。元請けに近い会社へ移る、あるいは事業会社の情報システム部門に入る。この移動は年収の水準そのものを変えるため、個人の努力で得られる昇給より効果が大きい場合があります。

3つ目は、社内で扱う領域を増やすことです。開発だけをしていた人がクラウドの構築もできるようになる、インフラだけの人がデータベースの設計もできるようになる。領域が2つ重なる人は、社内で代えがたい存在になります。等級の昇格もしやすくなります。基本情報の範囲が広いのは、この重なりを作る土台として役に立ちます。

4つ目は、雇用の形を変えることです。業務委託にすると単価の交渉が直接できるため、上限が外れます。かわりに収入の安定性は下がり、社会保険の負担の形も変わります。どちらが有利かは状況によりますが、選択肢として持っておく価値はあります。

4つのうち、最もリスクが低いのは3つ目です。今の会社に居ながら着手でき、失敗しても失うものがありません。私が皆さんに最初に勧めるのはここです。領域を1つ増やしてから、1つ目や2つ目の移動を考える。順番を守った方が、結果として早く着きます。

額面より手取りを見る習慣を持ってください

年収の話で最後に触れておきたいのが、額面と手取りの差です。ここを見ないまま転職や独立を決めると、想定と違う結果になります。

正社員の場合、額面から社会保険料と税が引かれます。会社が半分を負担している厚生年金と健康保険があるため、同じ額面なら手取りは比較的厚くなります。転職で額面が上がっても、住宅手当や通勤手当がなくなると、実際の手取りは変わらないことがあります。求人票の年収を比較するときは、手当の内訳まで確認してください。

業務委託の場合、額面から必要経費を引いた額に税がかかり、社会保険は全額自己負担になります。同じ600万円でも、正社員の年収600万円と業務委託の売上600万円は、手元に残る額がまったく違います。独立を考える方は、必ず手取りベースで比較してください。逆に、経費として認められる支出が多い働き方なら、額面が低くても手取りは近づきます。

もう1つ、時間で割る習慣も勧めます。年収が50万円上がっても、残業が月20時間増えているなら、時間単価は下がっているかもしれません。私は会社を辞めるとき、この計算を先にやりました。額面だけを見ていたら、別の判断をしていたと思います。

皆さんが年収を上げたいと考えているのは、数字を大きくしたいからではなく、生活を良くしたいからでしょう。そうであれば、見るべきなのは額面ではなく、手元に残る額と、それを得るために使った時間です。この2つで比べる癖を付けてください。判断の精度が上がります。

業務委託で働く場合の金額と、市場を見てきた立場からの観察

最後に、雇用されずに働く場合の話をします。年収の上限を動かしたい方には、こちらの方が現実的な選択になる場合があります。

業務委託では、月額の単価で契約する形が一般的です。金額は職種と経験で決まり、資格の有無で決まることはほとんどありません。ただし、契約前の面談で技術の範囲を確認される場面があり、そこで体系的な知識があることを示せるかどうかが判断に影響します。資格はその場面で効きます。

20年この市場を見てきた立場から言えば、単価が上がっていく人には共通点があります。技術の詳しさで勝っているのではなく、依頼者の業務を覚えているのです。「この会社ではこの数字を月末に締める」「この画面は現場の誰が使う」と分かっている相手には、説明の手間がかかりません。運営者として見てきた限りでは、単発の作業を安く速くこなす人より、依頼者の事情を理解して「この人に任せると楽だ」と思われている人の方が、長く続いて単価も上がっています。

お金の構造も正直に書きます。仲介が入る取引と、依頼者と直接やり取りする取引では、同じ予算でも手元に残る額が変わります。仲介手数料が乗らない形なら、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなる。手数料0%が意味するのは、派手に儲かることではなく、同じ仕事で残る額が違うという地味な差です。1件では見えませんが、1年続けた方には見えます。

需要の方向も押さえておいてください。企業がAIを業務へ取り込む動きが進み、何をどこまで任せられるかを判断できる人が足りていません。仕事の中身を整理したAIコンサル・業務活用支援のお仕事や、周辺領域をまとめたAI・マーケティング・セキュリティのお仕事を読むと、基礎知識を持っている人の理解がそのまま価値になる構造が見えます。開発寄りに進みたい方は、仕事の分類を整理したアプリケーション開発のお仕事も合わせて確認してください。

基本情報技術者年収の実態をまとめると、資格は金額を直接動かす道具ではなく、職種と雇用形態を変えるための証明です。年収を決めているのは職種、取引の位置、雇用の形の3つでした。だから取るべき行動は、資格を取ったあとに職種を上流へ動かすか、取引の階層を上げるか、雇用の形を変えるかのいずれかです。焦らずに、どれを狙うのかを先に決めてください。順番を決めた人から、金額は動き始めます。

よくある質問

Q. 基本情報技術者を取れば年収は上がりますか?

資格そのものでは、ほとんど動きません。資格手当は月3千円から1万円程度が一般的な範囲で、年間で見れば小さな金額です。効くのは昇格要件として制度に組み込まれている場合と、職種や雇用形態を変えるときに話が通る証明として使う場合です。金額を動かすのは資格ではなく、その後に積む経験です。

Q. 未経験でもこの資格があれば採用されますか?

入口は広がりますが、経験者との差は残ります。求人データでは未経験者歓迎の求人の加重平均年収が617万円で、経験者より47万円低い水準でした。未経験者歓迎と書かれていても、別分野の職務経験や学習歴が評価の対象になります。小さなプログラムや環境構築など、手を動かした成果を1つ用意してください。

Q. 合格までにどのくらいの学習時間が必要ですか?

IT業務の経験がある方で100時間前後、未経験の方で200時間から300時間程度が目安です。1日1時間なら経験者で3か月、未経験者で半年から1年かかります。範囲が広いため短期間での詰め込みは向きません。科目Bのアルゴリズムは読むだけでは身につかないので、コードを追ってトレース表を手で書いてください。

Q. 次に取るべき資格は何ですか?

一般的な次の一歩は応用情報技術者試験で、範囲が重なるため学習が繋がります。ただし進みたい職種が決まっているなら、インフラならネットワークやセキュリティ、データベースならその分野の専門資格を先に取る方が単価に直結します。応募したい求人票を10件集め、頻出する資格名を数えて決めるのが確実です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月10日最終更新:2026年9月24日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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