自社サイトで決算公告を済ませる方法|電子公告の条件

前田 壮一
前田 壮一
自社サイトで決算公告を済ませる方法|電子公告の条件

この記事のポイント

  • ✓決算公告を電子公告で済ませたい人向けに
  • ✓自社サイトに載せる条件を整理しました
  • ✓公告方法を電子公告に変える場合との違い

決算公告を電子公告で済ませたい。そう考えて調べ始めると、解説ページごとに書いてあることが違って見えます。「公告方法を電子公告に変える必要がある」と書くページもあれば、「官報のままでも自社サイトに載せられる」と書くページもある。どちらも間違いではなく、別の制度の話をしているだけです。この記事では、まずその2つを切り分けたうえで、自社サイトに決算を載せるために満たすべき条件、必要な登記、5年間の運用、そして官報との費用差を、法令と公式の料金表で確かめた範囲で整理します。

「決算公告を電子公告で」には2つの意味がある

話が噛み合わなくなる原因はここにあります。会社法には、インターネットで決算を出すための道が2本あり、名前も手続きも費用も違います。

1本目が、公告方法そのものを「電子公告」にする道です。会社が出す公告全般、つまり合併のお知らせも、資本金を減らすときのお知らせも、解散のお知らせも、まとめて自社サイトで出せるようにする変更です。定款を書き換えて、登記も変えます。

2本目が、公告方法は官報のままにしておいて、決算の内容だけをインターネットに置く道です。会社法440条の第3項がこれを認めています。

前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。 この場合においては、前二項の規定は、適用しない。 出典: laws.e-gov.go.jp

最後の「前二項の規定は、適用しない」が効いています。この措置をとれば、官報に載せる義務も、新聞に載せる義務もなくなる、という意味です。公告方法の欄が「官報に掲載する方法」のままでも構いません。

中小企業にとって実用的なのは、ほぼ2本目です。理由は後で費用の比較として出しますが、先に結論を言うと、1本目には調査機関への支払いという毎回の費用がつき、2本目にはつかないからです。

まず、安心してほしい点を1つ。2本目を選ぶのに、特別な許可も審査も要りません。自社のウェブサイトに決まった形で載せて、そのアドレスを1回だけ登記する。手続きはそれだけです。

その前に、自社に義務があるかを確かめる

載せ方の話に入る前に、そもそも義務があるのかを確認しておきます。ここを飛ばして準備を進めてしまった会社を何度か見てきました。

決算の公告を義務づけているのは会社法440条で、名指ししているのは株式会社です。合同会社、合名会社、合資会社には同じ定めが置かれていません。合同会社なら、決算をどこにも出さなくて構いません。解散したときに債権者へ知らせる公告のように、別の場面で必要になる公告はありますが、毎年の決算公告は関係ありません。

上場会社など、有価証券報告書を国に提出している株式会社も対象外です。すでにもっと詳しい開示をしているので、重ねて公告する必要がないという整理になっています。

一般社団法人と一般財団法人には、別の法律で似た義務があります。貸借対照表を定時社員総会の後に公告し、規模が大きい法人は損益計算書も出す、という組み立てまでほぼ同じです。インターネットに置いて済ませる道も同じように用意されています。会社ではないから関係ない、とはなりません。

自社がどれに当たるかは、登記簿を1通取れば分かります。会社の種類と、公告方法の欄。この2つを見てから先に進んでください。

自社サイトに載せるために満たす5つの条件

2本目の道を選ぶ場合、満たすべきことは5つです。順に見ていきます。

1つ目は、株主総会が終わった後、遅れずに載せることです。 決算を承認する定時株主総会が終わったら、そこから間を置かずに載せます。何日以内という数字は決まっていませんが、半年も空けていれば「遅滞なく」とは言えません。総会の後の作業予定に組み込んでおくのが確実です。

2つ目は、5年間そのまま置き続けることです。 株主総会が終わった日から5年を経過する日まで、誰でも見られる状態を保ちます。つまり、5期分が常に並んでいる状態になります。ページを作り替えたときに古い年度が消えていた、というのがいちばん起きやすい失敗です。サイトのリニューアルを外部に頼むときは、決算公告のページは触らないでほしいと最初に伝えておくといいでしょう。

3つ目は、誰でも見られる場所に置くことです。 会員登録やパスワードの向こう側に置くのは認められません。インターネットにつながったサーバーで、一般の人がそのまま開ける状態にします。法務省令でも、インターネットに接続された装置を使う方法によることが明記されています。

4つ目は、載せる中身が貸借対照表そのものになることです。 官報や新聞に載せる場合は「要旨」、つまり主な項目だけを並べた短い形で足りますが、インターネットに置く場合は要旨ではなく貸借対照表の内容を載せます。ここは見落としやすいところです。

5つ目は、そのページのアドレスを登記することです。 登記事項に追加されるので、法務局への申請が1回必要になります。これをしていないと、外から見たときに公告の所在が分かりません。

この5つは、どれも1回決めてしまえば毎年の負担にはなりません。手間がかかるのは初年度だけです。

載せる中身をどう作るか

形は会社計算規則が決めています。難しい言い回しを外して並べると、こうなります。

まず、表を資産・負債・純資産の3つの部に分けます。資産の部は流動資産・固定資産・繰延資産に、負債の部は流動負債・固定負債に区分します。引当金があるなら、他の負債と分けて書きます。株式の譲渡に会社の承認が要る非公開会社であれば、この大きな括りのままで足ります。株式に譲渡制限がない公開会社の場合は、財産の状態が分かるようにもっと細かく分ける必要があります。

金額の単位について補足しておきます。官報や新聞に載せる要旨は百万円単位または十億円単位で表示する決まりですが、それは要旨についての定めです。自社サイトに載せるのは要旨ではなく貸借対照表の内容なので、決算書で使っている単位のまま載せて構いません。

そして、見落としがちな点が1つあります。貸借対照表だけを載せる会社であっても、公告の中で明らかにしなければならない事項が別に決められていて、その中に当期純損益金額が入っています。つまり、損益計算書を出さない会社でも、その年に最終的にいくら残ったか、いくら足が出たかという1行は出すことになります。「貸借対照表だけなら利益は見えない」という前提で準備を進めると、後で想定外のものを載せることになります。

同じく明らかにする事項として並んでいるのは、会社が今後も事業を続けられるか疑いがある場合の注記、採用している会計処理の方針、貸借対照表に関する注記、税効果会計、関連当事者との取引、一株当たり情報、重要な後発事象です。いずれも、その年の個別注記表に書いた内容がある場合に限られます。書いていない項目まで無理に埋める必要はありません。

なお、資本金が5億円以上か、負債の合計が200億円以上の会社は「大会社」にあたり、貸借対照表に加えて損益計算書も公告します。中小企業のほとんどはここに入りません。

ファイル形式は、HTMLでもPDFでも構いません。どちらでも、ブラウザで開いて中身が読めれば条件を満たします。PDFで置く場合は、リンクが切れていないかを年に1度は確かめてください。

アドレスを登記する手続きと費用

自社サイトに決算を載せる道を選んだら、そのページのアドレスを登記します。会社の登記簿に、決算公告を見るために必要な情報として載る形です。

手続きの流れはこうなります。法務局のウェブサイトから変更登記の申請書様式をダウンロードし、登記すべき事項の欄にアドレスを書きます。申請書様式のページには、役員変更、商号や目的の変更、本店移転といったよく使う様式が並んでいますが、決算公告のアドレス専用の様式は用意されていません。変更登記の様式を流用する形になります。

登録免許税は、国税庁の税額表にある「登記事項の変更、消滅または廃止の登記」にあたり、申請1件につき3万円です。他の変更登記と同時に出すなら、申請が1件にまとまるかどうかで金額が変わるので、まとめて出す予定があるなら先に法務局へ確認してください。

申請の方法は3通りあります。電子証明書を持っているならオンライン申請、持っていないなら二次元バーコード付きの書面申請、あるいは通常の書面申請です。法務局は2番目を勧めています。電子証明書がなくてもオンライン申請と同じ利点が得られる、という説明です。

期限にも注意が必要です。登記すべき事項に変更があったときは2週間以内に登記する決まりになっています。法務局のページには、期間を過ぎてから申請しても、そのことだけで申請が却下されることはないが、代表者に対して裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があると書かれています。アドレスを決めたら、そのまま登記まで進めてしまうのが安全です。

司法書士に頼む場合は、登録免許税とは別に報酬が乗ります。金額は事務所によって違うので、見積もりを取って比べてください。自分で申請すれば登録免許税だけで済みます。

5年間落とさないための運用

いちばん現実的なリスクは、罰ではなく運用です。5年という期間は、サイトの担当者が変わり、サーバーの契約が変わり、デザインが一新されるには十分な長さです。

そこで、次のような作りにしておくと事故が減ります。

決算公告のページは、トップページからたどれる固定のアドレスに置きます。年度ごとにページを分けず、1つのページに5期分を縦に並べる形にすると、アドレスが変わりません。登記したアドレスと実際のアドレスがずれる事故を防げます。

ページの位置は、会社概要やIRのようなコーナーの下に置くのが一般的です。フッターからも行けるようにしておくと、取引先が探すときに迷いません。

サイトを作り直すときは、決算公告のページだけは同じアドレスのまま残すよう、発注の条件に書いておきます。制作会社は法律上の制約を知らないことが多いので、伝えていなければ普通に作り替えられます。

サーバーが落ちることもあります。これについては救済の定めがあり、次の3つをすべて満たしていれば、止まっていた時間があっても公告の効力には影響しないとされています。1つ目は、止まったことについて会社に悪意も重い過失もないか、正当な理由があること。2つ目は、止まっていた時間の合計が、載せるべき期間の10分の1を超えないこと。3つ目は、止まったことを知った後すみやかに、止まった旨と時間と内容を、その公告に付け加えて公告することです。

5年間の10分の1はおよそ6か月ですから、決算公告に関してはかなり余裕のある基準です。一晩サーバーが落ちた程度で公告が無効になる、という心配は要りません。ただし3つ目の「知った後すみやかに付け加えて公告する」は忘れられがちなので、長時間止まったときは記録を残しておいてください。

公告方法そのものを電子公告に変える場合

ここまでは2本目の道の話でした。1本目、つまり公告方法そのものを電子公告に変える場合はどうなるか。

できることは増えます。合併するとき、資本金を減らすとき、解散するとき。これらの公告も自社サイトで出せるようになるので、その都度の官報代がかかりません。

代わりに、義務が1つ増えます。電子公告で公告を出すときは、その内容が本当にインターネット上に置かれていたかを、法務大臣の登録を受けた調査機関に調べてもらわなければなりません。この調査には費用がかかり、金額は調査機関ごとに異なるので、検討するなら見積もりを取ることになります。

ここで大事なのが、調査の対象から決算公告だけが明確に外されていることです。条文が対象を定めるところで、決算の公告を除くと書かれています。つまり、決算公告をウェブで出すのに調査は要りません。

載せ続ける期間も公告の種類で変わります。決算公告なら株主総会の終結日から5年。期間内に異議を述べてもらう種類の公告なら、その期間が終わる日まで。それ以外は、始めてから1か月です。

変更の手続きも必要です。公告方法は定款に書いてあることなので、変えるには株主総会で定款を書き換えます。それから登記を変えます。電子公告を選ぶ場合は、事故などでウェブに出せないときの代わりの方法として、官報か日刊新聞紙を決めておくこともできます。1人で株式を持っている会社なら総会の負担は軽いですが、株主が複数いるなら議決権の3分の2以上の賛成が要ります。

合併も減資も解散も予定がない会社にとって、増えるのは義務だけです。だから中小企業の現実的な最適解は、公告方法は官報のままにしておき、決算公告だけ自社サイトに載せる形になります。

官報・新聞・自社サイトの費用を並べる

金額を比べると、判断は早くなります。

官報に決算公告を載せる場合、全国官報販売協同組合が公開している料金表では、会社等の枠付公告が普通で1枠あたり税込40,882円、ページを指定するなら税込54,979円です。1枠の大きさは2.9センチメートル×6.1センチメートル、活字は8ポイント。貸借対照表の要旨は2枠を使うことが多く、その場合は税込81,765円になります。行単位で載せる形なら、会社等は1行あたり税込3,947円で、1行は22文字詰めです。料金は全国一律で、校正のための追加費用はかかりませんが、クレジットカードは使えません。

時間もかかります。決算公告は本紙ではなく号外に載るため、申し込みから掲載までに間が空きます。2026年9月18日に申し込んだ場合の号外掲載の目安は10月15日で、およそ4週間先です。校了の連絡をした後は原則として修正も取消しもできないので、数字の確認は校正の段階で終わらせます。

日刊新聞紙は、官報よりさらに高くつきます。

購読者が官報より多いため広く通知することが可能ですが、掲載料は官報より高額であるため、実際には上場企業以外に利用されることはほとんどありません。決算公告の内容は、官報と同様に、貸借対照表(大会社においては貸借対照表と損益計算書)の「要旨」を掲載すれば足ります(会社法440条2項)。 出典: kigyou-houmu.com

自社サイトの場合は、初回の登録免許税3万円だけです。すでにコーポレートサイトを持っているなら、以後の追加費用はサーバー代の範囲に収まります。

5年で比べると差がはっきりします。官報を2枠で5年続ければ40万8千円ほど。自社サイトなら初回の3万円で、その後はゼロに近い。13倍以上の開きです。

もう1つ、見落とされやすい違いがあります。官報を読む場所は官報発行サイトで、直近90日間は無料で閲覧できます。つまり、官報に載せた決算公告は、3か月を過ぎると誰でも無料で見られる状態ではなくなります。自社サイトに置けば5年間ずっと同じアドレスで見てもらえます。取引先に「うちの決算はここで見られます」と伝えたいなら、自社サイトのほうが実用的です。

決算日から逆算したスケジュールの組み方

初年度は、やることが4つ並びます。順番を決めておかないと、株主総会が終わった後で慌てることになります。

3月決算の会社を例に並べてみます。決算日が3月31日。定時株主総会は6月下旬に開くことが多いので、ここを基準にします。

総会の2か月前、つまり4月のうちに、載せるページのアドレスを決めます。会社概要の下に置くのか、独立したコーナーを作るのか。制作会社に頼むなら、この時点で見積もりを取ります。

総会の1か月前、5月のうちに、登記の準備をします。申請書に書くアドレスが確定していれば、あとは書類を作るだけです。ここで司法書士に頼むかどうかも決めます。

総会が終わったら、決算の数字を公告の形に組んで、ページを公開します。そして登記を申請します。登記は変更が生じてから2週間以内という決まりがあるので、ページの公開と登記申請はセットで動かします。

翌年からは、総会の後にページへ1期分を追加するだけです。作業時間は1時間程度に収まります。

すでに官報に載せている会社が切り替える場合は、ウェブに載せた年から官報をやめる形になります。切り替えの年に両方出しても問題はありませんが、費用が二重にかかるだけなので、どちらか一方で構いません。

出したときに見られるもの、見られないもの

公開に踏み切る前に、何が外から見える状態になるのかを把握しておきます。メリットだけを並べるのはフェアではないので、正直に書きます。

見られるのは、決算日時点で何を持っていて、どれだけ借りているかです。現金がいくらあるか、借入金がいくら残っているか、純資産がプラスかマイナスか。そして、その年の最終的な損益の金額です。

見られないのは、売上高です。損益計算書を出す義務があるのは大会社だけなので、中小企業が貸借対照表と当期純損益金額だけを出す限り、年商は表に出ません。原価率も、人件費も、役員報酬も出ません。ここを誤解して「全部さらすことになる」と思い込み、公開をためらっている会社があります。

競合に見られて困るかどうかは、業種によります。相見積もりの場面で財務の体力を測られる業種なら、資金に余裕がある会社にとっては有利に働きます。逆に、純資産が薄い時期に公開を始めると、そこだけ切り取られる可能性はあります。始めるタイミングを選ぶのは自由なので、決算の内容を見てから判断しても構いません。

ただし、一度始めたら続けるのが前提です。ある年だけ載っていない状態は、載せていない会社よりかえって目立ちます。

官報を選んだほうが安心なケースもある

自社サイトのほうが安いのは事実ですが、全部の会社に当てはまるわけではありません。逆の見方も紹介しておきます。

会社設立の手続きを進めていると、定款の項目に「公告方法」というものが出てきます。「官報」と「電子公告」、選択肢を見て「電子公告の方が今っぽいし、無料っぽくて良さそう」と感じた方もいるのではないでしょうか。実はそこに、ちょっとした落とし穴があります。非上場の中小企業であれば、結論としては「官報」を選んでおく方が安心です。その理由を、費用面の見落としポイントとあわせて解説します。 出典: hitodeki.com

この指摘が向いているのは、公告方法そのものを電子公告に変えてしまう選択です。調査機関への費用が毎回かかり、掲載を切らせない義務も負うので、合併や減資の予定がない会社には荷が重い。その意味では妥当な助言です。

一方、この記事が勧めている形、つまり公告方法は官報のままにしておいて決算だけウェブに置く形なら、その落とし穴を踏みません。調査は不要で、官報の枠も残したままです。用語が似ているために同じものとして語られがちですが、負担がまったく違います。

自社サイトを持っていない会社の場合は、話が変わります。公告のためだけにサイトを立ち上げて5年間維持するより、官報に載せるほうが手間もコストも読みやすい場面があります。サイトの有無が判断の分かれ目になります。

載せるページを、項目の並びで作ってみる

条件だけを読んでも、実際のページの姿は見えてきません。非公開会社が自社サイトに置く貸借対照表を、数字を入れて組んでみます。

区分 金額
流動資産 32,500,000
固定資産 18,000,000
繰延資産 0
資産合計 50,500,000
流動負債 12,300,000
固定負債 8,000,000
負債合計 20,300,000
資本金 5,000,000
利益剰余金 25,200,000
純資産合計 30,200,000
負債・純資産合計 50,500,000

この表の下に、当期純利益として4,100,000円と書きます。貸借対照表だけを載せる会社でも、その年の最終的な損益は明らかにすることになっているためです。

そして、どの会社の、いつ時点の、どの事業年度の貸借対照表なのかを表の上に書きます。商号、事業年度の期間、決算日、そして決算を承認した定時株主総会の日付です。日付が書かれていないページは、いつの数字なのかが読む側に伝わりません。

個別注記表に書いた内容のうち、公告で明らかにすることになっている項目があれば、表の下に続けます。会計処理の方針、貸借対照表に関する注記などです。書いていない項目を無理に埋める必要はありません。

金額の単位は、決算書で使っている単位のまま載せて構いません。円単位で作った決算書をわざわざ百万円単位に丸め直す作業は要りません。丸めるのは官報や新聞に要旨を載せる場合の決まりです。

同じページに、翌年から1期分ずつ足していきます。新しい年度を上に置き、古い年度を下に積む形にすると、5期分が並んだときに読みやすくなります。6期前のものは条件を満たしたので消して構いませんが、残しておいても差し支えありません。

登記の申請書に何を書くか

申請書の「登記すべき事項」の欄には、貸借対照表の内容である情報の提供を受けるために必要な事項として、そのページのアドレスを書きます。会社のトップページではなく、決算公告を置いたページそのもののアドレスです。

アドレスは1文字も違わないように書き写します。エイチティーティーピーエスから始まる部分を省略したり、末尾の記号を落としたりすると、登記簿に載ったアドレスで開けないページができます。申請書を作ったら、書いたアドレスをそのままブラウザに貼って開けるかを確かめてください。

添付する書類と、社内で誰が決めるべきかは、取締役会を置いているかどうかなど会社の機関設計によって変わります。申請書を作る前に、管轄の法務局か司法書士に1度確認しておくと、補正の連絡を受けずに済みます。

アドレスを後から変える場合も、登記の変更が必要になります。サイトのアドレス体系を見直す予定があるなら、公告のページだけは動かさない前提で設計してください。変えるたびに登録免許税が発生します。

合同会社と一般社団法人では、どこが違うか

決算公告の義務があるのは株式会社です。合同会社、合名会社、合資会社には、毎年の決算を公告する定めが置かれていません。合同会社で事業をしている人は、この記事の手続きを一切行う必要がありません。

ただし、合同会社にも公告が必要になる場面はあります。解散して清算に入るときに債権者へ知らせる公告、資本金を減らすときの公告などです。これらは決算公告とは別の制度で、期間も内容も違います。合同会社が定款で公告方法を定めている場合、その方法に従うことになります。

一般社団法人と一般財団法人は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律で、貸借対照表を定時社員総会の終結後に公告することになっています。インターネットに置いて済ませる道も同じように用意されていて、置き続ける期間も5年です。会計監査人を置く法人は損益計算書も公告します。株式会社ではないから関係ないという整理にはなりません。

なお、株式会社でも有価証券報告書を国に提出している会社は対象から外れます。すでに詳しい開示をしているためです。中小企業でここに当たる会社はほとんどありません。

勘違いしやすい5つ

ひとつ目は、自社サイトに載せるには公告方法を電子公告に変えなければならないと考えることです。公告方法が官報のままでも、決算の内容をインターネットに置き続ければそれで足ります。

ふたつ目は、官報と同じ要旨を載せればよいと考えることです。インターネットに置く場合は要旨ではなく貸借対照表の内容そのものを載せます。

みっつ目は、貸借対照表だけなら利益は見えないと考えることです。当期純損益金額は明らかにすることになっているので、その年の最終的な損益は出ます。

よっつ目は、決算公告にも電子公告調査が必要だと考えることです。調査の対象から決算公告は外されています。費用がかかるのは、合併や資本金の減少などを電子公告で出す場合です。

いつつ目は、年度ごとにページを新しく作ればよいと考えることです。登記したアドレスと実際のアドレスがずれると、登記の変更が必要になります。1つのページに積み上げる形にしておくほうが安全です。

手続きを回す人をどう確保するか

ここからは、市場を長く見てきた立場からの観察です。

自社サイトでの決算公告は、法律の話としては簡単な部類です。詰まるのはたいてい、決めた後の実務のほうです。決算書の数字を公告の形に組み直す人がいない。HTMLを触れる人がいない。サーバーの管理を頼んでいた会社との契約が切れていて、誰もページを更新できない。この3つで止まっている会社を何度も見てきました。

正社員を雇うほどの量ではありません。年に1度、数時間の仕事です。外部に業務委託で頼むのが現実的な解になります。

サイトの更新やページの新設を頼める相手を探すなら、まず相場を知っておくと交渉が早く終わります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場は、開発系の職種の年収と単価を並べたページで、短期の作業にどの程度の予算を見ておけばよいかの目安になります。

依頼する仕事の中身を整理したいときは、アプリケーション開発のお仕事が参考になります。どんな工程があり、どこを切り出して外に出せるのかが具体的に書かれているので、自社で何を頼むべきかの言語化に使えます。

サーバーやネットワークの管理まで含めて任せたい場合は、その人が基礎を押さえているかを確かめたくなります。CCNA(シスコ技術者認定)のページでは、この資格が何を測るもので、どういう業務に結びつくのかを整理しています。必須ではありませんが、選ぶときの材料になります。

外に出すときは、契約の形も先に決めておきます。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストは、発注書に何を書いておくべきかを項目ごとに並べた記事です。発注する側が最初に整えておけば、後の行き違いが減ります。

そして、運営者として見てきた限りで言えることがあります。仲介の手数料が乗らない直接の取引では、同じ予算で依頼する側はより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。手数料0%の強みは、金額そのものよりこの構造にあります。年に1度しか発生しない決算公告の更新のような仕事は、単発で安い相手を毎年探すより、同じ人に続けて頼めるほうが圧倒的に楽です。長く続く関係を作れている会社は、1回ごとの値段ではなく、来年も頼める状態を作ることに時間を使っています。

5年間の掲載という条件は、裏を返せば5年分の関係を前提にした制度です。載せる場所を決めるのと同じくらい、更新する人を決めておくことが、この制度を使い切るための条件になります。

よくある質問

Q. 公告方法を電子公告に変えないと、自社サイトに決算公告は載せられませんか?

変える必要はありません。公告方法が「官報に掲載する方法」のままでも、貸借対照表の内容を株主総会の終結日から5年を経過する日までインターネットで公開し続ければ、官報にも新聞にも載せなくてよいことになっています。必要なのは、そのページのアドレスを登記することだけです。

Q. 自社サイトに載せる場合、要旨だけでよいですか?

要旨では足りません。官報や日刊新聞紙に載せる場合は要旨で済みますが、インターネットに置く場合は貸借対照表の内容そのものを載せます。あわせて当期純損益金額も明らかにする必要があるため、損益計算書を出さない会社でも最終的な損益は公開されることになります。

Q. 電子公告調査は決算公告にも必要ですか?

決算公告には必要ありません。電子公告で公告する場合は法務大臣の登録を受けた調査機関に調査を求める義務がありますが、条文でその対象から決算公告が明確に除かれています。合併や資本金の減少などを電子公告で出す場合は調査が必要になり、費用は調査機関ごとに異なります。

Q. サーバーが止まって公告が見られない時間があったらどうなりますか?

3つの条件をすべて満たせば効力に影響しないとされています。止まったことに会社の悪意も重い過失もないか正当な理由があること、止まった時間の合計が掲載期間の10分の1を超えないこと、知った後すみやかに中断の旨と時間と内容を公告に付け加えることです。決算公告の5年なら10分の1はおよそ6か月にあたります。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月24日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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