障害者雇用で在宅のデザイン職に就くには|求人の探し方と配慮の相談

長谷川 奈津
長谷川 奈津
障害者雇用で在宅のデザイン職に就くには|求人の探し方と配慮の相談

この記事のポイント

  • ✓障害者雇用で在宅のデザイン職を目指す人に向けて
  • ✓法定雇用率2.7%への引き上げで変わった求人の状況
  • ✓面接で伝える配慮の整理の仕方

障害者雇用で在宅のデザイン職を探している方は、「在宅でできるデザインの求人は本当にあるのか」「通勤が難しいことや体調の波を、どこまで会社に伝えればよいのか」「デザインの経験が浅くても応募できるのか」といった迷いを抱えていることが多いはずです。

結論から書きます。障害者雇用の枠で在宅勤務のデザイン職に就く道はあります。企業に義務づけられている障害者の雇用の割合は2026年7月に引き上げられ、在宅勤務を前提にした障害者求人も一定数出ています。ただし、デザイン職の求人は事務職に比べると数が少なく、応募のときには作品の提出が求められることが多いため、求人の探し方と準備の仕方に工夫が要ります。また、障害者雇用では、働くうえで必要な配慮を会社に求めることが法律で認められています。どの配慮が必要かを自分の言葉で整理しておくことが、在宅で長く働き続けるための土台になります。

この記事では、厚生労働省の資料で確かめた制度の内容をもとに、求人の状況、探し方、配慮の伝え方、相談先、雇用以外の在宅での働き方までを順に解説します。

障害者雇用と在宅のデザイン職をめぐる現状

まず、障害者雇用の仕組みを確認しておきます。障害者雇用促進法では、一定の規模以上の企業に、従業員のうち決まった割合以上の障害者を雇うことを義務づけています。この割合を法定雇用率といいます。厚生労働省の障害者雇用対策のページには、現在の法定雇用率が次のように書かれています。

障害者の雇用対策としては、障害者雇用促進法において、企業に対して、雇用する労働者の2.7%に相当する障害者を雇用することを義務付けています(障害者雇用率制度)。 出典: mhlw.go.jp

民間企業の法定雇用率は、令和6年4月に2.5%へ、令和8年7月に2.7%へと段階的に引き上げられました。あわせて、障害者を雇う義務がある企業の範囲も、従業員40.0人以上から37.5人以上へと広がっています。つまり、これまで障害者を雇う義務がなかった規模の会社にも義務が生じ、障害者を採用しようとする企業は増える方向にあります。

一方で、実際の雇用の状況を見ると、厚生労働省が令和7年12月に公表した「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」では、民間企業に雇用されている障害者の数は704,610.0人で、22年連続で過去最高を更新しました。ただし、当時の法定雇用率2.5%を達成している企業の割合は46.0%にとどまっています。半数以上の企業がまだ必要な人数を雇えていない状況で、法定雇用率がさらに引き上げられたことになります。

この状況は、働く側から見ると、企業が採用の方法を広げる理由になります。通勤できる範囲に住む人だけを対象にしていては、必要な人数を確保できない企業もあります。そのため、在宅勤務を前提にして全国から応募を受け付ける障害者求人が出てきています。在宅勤務であれば、通勤の負担が大きい身体障害のある人や、人の多い環境で体調を崩しやすい人も応募しやすくなります。

ただし、在宅勤務の障害者求人の多くは、データ入力や書類の作成、問い合わせメールへの対応といった事務の仕事です。デザインの仕事は、Webサイトのバナーやチラシ、社内資料の作成、商品画像の加工など、事務の仕事の一部として組み込まれていることも少なくありません。デザインだけを専門にする求人は限られているため、「デザインを含む在宅の仕事」まで広げて探すことが、現実的な出発点になります。

障害者雇用の対象になる人と、障害者手帳の役割

障害者雇用の求人に応募するには、原則として障害者手帳を持っていることが前提になります。企業が法定雇用率を計算するときに数える対象が、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を持っている人だからです。厚生労働省の在宅就業障害者への支援の資料でも、制度の対象は身体障害者、知的障害者、精神障害者保健福祉手帳を持つ精神障害者と書かれています。

手帳を持っていない場合でも、一般の求人に応募することはできます。また、障害者手帳がなくても、難病のある人や、発達障害の診断を受けている人が、ハローワークなどで相談や支援を受けられる場合があります。手帳を取るかどうかは、医療機関や支援機関とも相談しながら、本人が決めることです。

働く時間の扱いも、雇用の形に関わります。厚生労働省のリーフレットによると、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者は、当分の間、雇用率の計算で1人として数えられるようになりました。また、令和6年4月からは、週10時間以上20時間未満で働く精神障害者、重度の身体障害者、重度の知的障害者も、0.5人として数えられるようになっています。

この変更は、短い時間から働き始めたい人にとって大きな意味があります。以前は週20時間未満の働き方は企業の雇用率に数えられなかったため、企業が短時間の求人を出しにくい面がありました。いまは週10時間から数えられるため、体調に合わせて短い時間から始め、慣れてきたら時間を延ばすという働き方を、企業も提案しやすくなっています。在宅のデザインの仕事は、1日の作業時間を区切りやすいので、短い時間から始める働き方と相性がよい仕事の1つです。

障害者雇用と一般雇用のどちらで働くかは、障害を開示するかどうかの選択でもあります。障害者雇用の枠で働く場合は、障害があることを会社に伝えたうえで採用されるため、配慮を受けやすくなります。一般雇用で障害を開示せずに働く場合は、求人の選択肢は広がりますが、配慮を求めにくくなる面があります。どちらがよいかは、障害の状態や仕事の内容によって変わるため、支援機関と相談しながら決めることをおすすめします。

在宅のデザイン職の求人の探し方

在宅のデザイン職の障害者求人を探す方法は、大きく分けて4つあります。

1つ目は、ハローワークです。厚生労働省の案内では、ハローワークは就職を希望する障害者の求職登録を行い、専門の職員や職業相談員が、障害の種類や程度に応じてきめ細かな職業相談や紹介を行うとされています。ハローワークには障害のある人のための専門の窓口があり、障害者求人の紹介を受けられます。ハローワークインターネットサービスでも、障害者求人を条件に入れて検索できます。勤務地の欄に「在宅勤務」や「テレワーク」と書かれた求人を絞り込み、仕事内容にデザインや画像の作成が含まれているかを確かめていきます。

2つ目は、障害者向けの民間の求人サイトや人材紹介サービスです。在宅勤務の求人を専門に扱うところもあり、デザインやWeb制作の経験を生かせる求人が見つかることがあります。人材紹介の担当者に、デザインの経験と在宅勤務の希望をあらかじめ伝えておくと、該当する求人が出たときに案内を受けやすくなります。

3つ目は、企業の採用ページです。特例子会社とは、障害者の雇用のために設立され、一定の要件を満たして親会社の雇用率にまとめて数えられる子会社のことです。特例子会社の中には、親会社のWebサイトの更新や販促物の制作を在宅で請け負っているところもあります。関心のある企業の採用ページを直接確認する方法も有効です。

4つ目は、就労移行支援事業所を通じた紹介です。就労移行支援とは、一般企業への就職を目指す障害のある人に、職業訓練や就職活動の支援を行う福祉サービスのことです。デザインやWeb制作の訓練に力を入れている事業所もあり、訓練を受けながら作品を作り、事業所を通じて企業の実習や求人につなげる道があります。

求人を見るときに確かめたい点は、次のとおりです。

確認する点 見るべきところ 理由
在宅勤務の頻度 完全在宅か、週に何日かの出社があるか 入社後の研修期間だけ出社が必要な求人もある
デザインの仕事の割合 仕事内容の欄に、制作の業務がどれくらい書かれているか 事務が中心で、デザインはごく一部という求人もある
使うソフト 指定のソフトがあるか、会社から貸与されるか 自宅のパソコンで有料のソフトを用意する必要がある場合がある
勤務時間 週の所定労働時間、始業と終業の時間の柔軟さ 体調に合わせた働き方ができるかに関わる
連絡の方法 チャット、ビデオ会議、電話のどれが中心か 障害の特性によって、合う連絡手段が違う

求人票の言葉の違いにも注意してください。「在宅勤務」「完全在宅」と書かれた求人は、原則として出社せずに働く前提です。これに対して「テレワーク可」「在宅勤務制度あり」と書かれた求人は、出社が基本で、条件を満たせば在宅で働ける日がある、という意味であることが多くあります。通勤が難しい人は、求人票の表現だけで判断せず、応募の前に出社の頻度を問い合わせておくと、面接に進んでから条件が合わないと分かる事態を避けられます。

また、勤務地が会社の所在地になっていても、実際には全国から在宅で働ける求人もあります。気になる求人があれば、ハローワークの窓口や人材紹介の担当者を通じて、住んでいる地域から応募できるかを確かめてください。

応募の前に準備したい作品と、伝えたい配慮

デザイン職の求人では、障害者雇用であっても、作品の提出を求められることがよくあります。作品の一覧をまとめたものをポートフォリオと呼びます。ポートフォリオとは、これまでに作ったデザインを、制作の目的や担当した範囲とあわせて見せるための作品集のことです。

在宅のデザイン職に応募するポートフォリオでは、作品の見た目のよさだけでなく、在宅で仕事を進められることが伝わる内容を入れると評価されやすくなります。たとえば、依頼の内容をどう受け取って、どんな手順で作り、修正の依頼にどう対応したかを書き添えると、文字のやり取りで仕事を進める力が伝わります。訓練や自主制作の作品しかない場合でも、架空の依頼を想定して、目的と工夫した点を説明すれば、十分に判断の材料になります。

もう1つ準備しておきたいのが、働くうえで必要な配慮の整理です。厚生労働省の案内では、障害のある人が、働くうえでの自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮などを支援機関と一緒に整理し、事業主にわかりやすく伝えるための道具として、就労パスポートが紹介されています。就労パスポートの形式を使わなくても、次のような項目を書き出しておくと、面接で落ち着いて説明できます。

  • 得意な作業と、時間がかかる作業
  • 体調の波が出やすい時間帯や季節と、そのときの対処の方法
  • 通院の頻度と、通院のために必要な時間の調整
  • 連絡の方法で、助かるものと苦手なもの(電話よりチャットが助かる、など)
  • 指示の受け方の希望(口頭よりも文字で、締め切りは日付で、など)
  • 作業環境で必要なもの(画面の読み上げソフト、拡大表示、休憩の取り方など)

面接では、障害の名前や診断の経緯を詳しく説明するよりも、「どんな配慮があれば、どんな仕事ができるか」を具体的に伝えるほうが、企業は採用後の働き方を想像しやすくなります。たとえば、「午前中は体調が安定しないため、始業を10時にしてもらえれば、1日5時間の制作作業ができます」といった伝え方です。

一般的な相談の場でよくあるのが、面接で配慮の希望を伝えると不利になるのではないかと考え、何も伝えずに入社した結果、仕事の進め方が合わずに短期間で退職してしまうケースです。在宅勤務は、職場の人が様子に気づきにくい働き方でもあります。困ったときに早めに相談できる関係を作るためにも、入社前に必要な配慮を伝えておくことが大切です。

合理的配慮とは何か:会社に求められることと限界

障害者雇用の話でよく出てくる言葉が、合理的配慮です。合理的配慮とは、障害のある人が、障害のない人と同じように働けるようにするために、会社が個々の事情に合わせて行う調整や工夫のことです。厚生労働省の案内では、平成28年4月から改正障害者雇用促進法が施行され、雇用の分野での障害者への差別は禁止、合理的配慮の提供は義務とされています。

ここでいう義務は、障害者雇用の枠で採用された人だけが対象ではありません。募集や採用の段階でも、採用後でも、障害のある人が配慮を申し出た場合には、会社は話し合いのうえで必要な配慮を行う義務があります。たとえば、採用面接をビデオ会議で行ってほしい、筆記の試験に時間の延長がほしい、といった申し出も配慮の対象になり得ます。

在宅のデザイン職でよく話し合われる配慮には、次のようなものがあります。

  • 体調に合わせた始業時間や休憩の取り方の調整
  • 通院のための時間の確保
  • 指示を文字で残し、締め切りを明確にすること
  • 電話ではなく、チャットやメールを中心にした連絡
  • 画面の拡大や読み上げなど、作業に必要なソフトや機器の用意
  • 業務量を段階的に増やすこと

一方で、合理的配慮には限界もあります。会社にとって過重な負担になる場合は、配慮の義務を負わないとされています。過重な負担かどうかは、会社の規模や財務の状況、配慮にかかる費用などを総合して判断されます。そのため、希望したことがすべてそのまま実現するとは限りません。会社が別の方法を提案することもあり、話し合いで折り合いをつけていくことが前提の仕組みです。

ここで大切なのは、配慮の内容は一方的に決めるものではなく、話し合いで決めるものだという点です。在宅勤務そのものを配慮として求めることも、仕事の内容によっては話し合いの対象になります。ただし、会社の仕事の進め方によっては、在宅勤務が難しいと判断されることもあります。最初から在宅勤務を前提にした求人を選ぶほうが、話し合いの負担は小さくなります。

もし、配慮を求めたことを理由に不利な扱いを受けたと感じたときは、1人で抱え込まないでください。都道府県の労働局では、障害者雇用促進法に関する相談を受け付けており、会社との間の紛争を解決するための援助も行っています。具体的な事情によっては弁護士への相談が必要になる場合もあるため、早めに専門の窓口に状況を伝えることをおすすめします。

相談できる機関と、使い分けの考え方

障害者雇用で在宅の仕事を目指すときに相談できる機関は、いくつかあります。厚生労働省の「障害者の方への施策」のページでは、次のような相談・支援機関が紹介されています。

機関 主な役割 相談に向いている場面
ハローワーク 求職登録、職業相談、障害者求人の紹介、職場定着の指導 求人を探したい、応募の相談をしたい
地域障害者職業センター 職業評価、職業指導、職業準備訓練、職場適応の援助 自分に合う仕事を専門的に見極めたい
障害者就業・生活支援センター 就業と生活の両面からの支援 仕事と生活の両方に不安がある
就労移行支援事業所 職業訓練、就職活動の支援、就職後の定着支援 訓練を受けてから就職したい
発達障害者支援センター 発達障害のある人と家族への相談、関係機関との連携 発達障害の特性に合った働き方を考えたい
難病相談支援センター 難病のある人の療養や生活、就労の相談 難病と仕事の両立を考えたい

地域障害者職業センターは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が各都道府県に設けている機関です。職業評価とは、どんな仕事にどの程度向いているかを、作業の体験や検査を通じて確かめることです。デザインの仕事に向いているかを客観的に知りたい人や、在宅勤務で必要な配慮を整理したい人にとって、役立つ相談先です。

ハローワークを中心に、福祉の関係者などで支援のチームを組む「障害者就労支援チーム」の仕組みもあります。就職の準備の段階から職場に定着するまで一貫して支援を受けられるので、どこに相談すればよいか分からない場合は、まずハローワークの障害者の窓口に連絡するのが近道です。

また、障害者トライアル雇用という制度もあります。厚生労働省の案内では、障害者を一定期間(原則3か月)試行雇用することで、適性や能力を見極め、求職者と事業主の相互理解を深める制度とされています。在宅勤務の仕事が自分に合うかどうかを、実際に働きながら確かめられるので、在宅での仕事の経験がない人にとって検討する価値があります。

在宅勤務を始める前に整えたい作業環境と1日の組み立て

在宅のデザイン職に採用が決まったら、働き始める前に作業環境と1日の過ごし方を整えておくと、最初の数か月を乗り切りやすくなります。在宅勤務は通勤がない分だけ体の負担は軽くなりますが、仕事と生活の境目があいまいになりやすく、気づかないうちに疲れをためてしまう人も少なくありません。

作業環境で最初に確かめたいのは、パソコンとソフトの扱いです。会社からパソコンが貸与されるのか、自分のパソコンを使うのか、デザインのソフトの利用料はどちらが負担するのかを、入社前に確認しておいてください。画面の大きさや明るさ、文字の大きさの設定は、目の疲れや集中の続きやすさに直結します。画面の拡大や読み上げのソフトが必要な人は、会社のパソコンに入れてよいかを、配慮の話し合いの中で確かめておくと安心です。

次に、作業をする場所です。家族と暮らしている場合は、ビデオ会議の時間帯に静かに話せる場所を確保できるかを考えておきます。机と椅子の高さが合っていないと、長時間の作業で肩や腰に負担がかかります。在宅勤務でかかる費用を会社が一部負担する制度を設けているところもあるので、就業規則や入社時の案内を確認してください。

1日の組み立てでは、始業と終業の時間を決め、休憩の時間をあらかじめ予定に入れておくことが大切です。デザインの作業は集中すると時間を忘れやすく、気づくと何時間も同じ姿勢で画面に向かっていることがあります。作業を1時間程度で区切り、そのたびに短い休憩を取るなど、自分に合った区切り方を見つけてください。体調の記録をつけておくと、どんな日に作業が進みやすいか、どんな日に疲れが出やすいかが見えてきます。その記録は、会社と配慮の内容を見直すときの材料にもなります。

連絡の取り方も、働き始める前に決めておきたい点です。チャットにすぐ返信しなければならないと考えると、作業に集中できなくなります。「作業中は1時間ごとにまとめて確認する」「急ぎの連絡だけは電話で」といった取り決めを、上司やチームと共有しておくと、互いに安心して仕事を進められます。

働き始めてから困ったときの相談の順番

在宅勤務で働き始めると、職場の人の顔が見えにくい分だけ、困りごとを1人で抱え込みやすくなります。困ったときにどこへ相談すればよいかを、働き始める前に知っておくことが大切です。

最初の相談先は、会社の中です。障害者雇用で採用された場合、配属先の上司のほかに、人事の担当者が相談の窓口になっていることが多くあります。仕事の量が多すぎる、指示の出し方が合わない、体調が崩れて作業が遅れているといった困りごとは、早めに伝えるほど調整がしやすくなります。在宅勤務では、上司が様子に気づくことは期待しにくいので、自分から定期的に話す時間を設けてもらうよう頼んでおくとよいでしょう。

会社の中で話しにくい場合や、話しても解決しない場合は、社外の支援機関に相談できます。就職のときに支援を受けたハローワークや就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センターは、就職後の定着の支援も行っています。厚生労働省の案内では、知的障害や精神障害のある人など、職場への適応に課題のある人に対して、職場適応援助者(ジョブコーチ)を事業所に派遣し、きめ細かな支援を行う仕組みも紹介されています。ジョブコーチとは、本人と会社の間に入って、仕事の進め方や職場の人との関わり方を調整する専門の支援者のことです。

それでも解決しない場合や、配慮を求めたことで不利な扱いを受けたと感じる場合は、都道府県の労働局に相談できます。この段階では、いつ、誰に、何を伝えたかの記録が重要になります。チャットやメールのやり取りは、相談の材料として残しておいてください。

相談の順番を決めておくと、困ったときに迷わず動けます。会社の上司、人事の担当者、社外の支援機関、労働局という順番を目安にし、自分の状況に合わせて早めに次の窓口へ進むことをおすすめします。

雇用だけではない:在宅就業という働き方

障害のある人が在宅でデザインの仕事をする方法は、会社に雇われる形だけではありません。個人で仕事を受ける在宅就業という働き方もあります。

厚生労働省は、在宅就業障害者に対する支援として、在宅で就業する障害者に仕事を発注する企業に、障害者雇用納付金制度の中から特例調整金や特例報奨金を支給する仕組みを設けています。在宅就業障害者とは、自宅などで就業する障害者のことで、会社に雇われるのではなく、仕事を請け負う形で働く人を指します。企業は、障害者を直接雇わなくても、在宅の障害者に仕事を発注することで、この支援を受けられます。

この仕組みには、在宅就業支援団体を通じて発注する形もあります。在宅就業支援団体とは、在宅で働く障害者に仕事を提供したり、職業講習や就職の支援を行ったりする団体として、厚生労働大臣の登録を受けた法人です。厚生労働省の資料では、在宅就業支援団体が企業からホームページ作成の業務を受注し、在宅就業障害者に提供する例が紹介されています。デザインやWeb制作は、この仕組みと相性のよい仕事の1つです。

在宅就業は、勤務時間に縛られずに自分のペースで仕事ができる点が利点です。一方で、雇用と違って最低賃金や有給休暇、雇用保険といった働く人を守る仕組みの対象にならず、報酬は仕事の成果に対して支払われます。仕事の量も安定しないことがあります。体調に合わせて少しずつ仕事を受けたい人には向いていますが、毎月決まった収入が必要な人には、雇用の形のほうが合っていることが多いでしょう。

個人で仕事を受けるときは、契約の内容をよく確認することが大切です。報酬の額や支払日、修正の回数、納品の方法は、仕事を始める前に文章で残しておいてください。発注書や契約書で確かめておきたい項目は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで一覧にしています。万が一報酬が支払われなかったときの対応は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で手順を解説しています。

デザインの経験が浅い人が、在宅の仕事に近づく方法

デザインの経験がほとんどない状態から、在宅のデザイン職を目指す人もいます。その場合は、いきなりデザインだけの仕事を目指すより、段階を踏んで近づくほうが現実的です。

最初の段階として考えられるのが、デザインの要素を含む事務の仕事です。社内資料の作成、Webサイトの簡単な更新、画像の切り抜きやサイズの変更といった作業は、在宅の事務職の求人にも含まれていることがあります。こうした仕事で在宅勤務の働き方に慣れながら、デザインの作業の比重を少しずつ高めていく道があります。

次の段階は、デザインのソフトを使った制作の経験を積むことです。公共職業訓練の中には、障害のある人を対象にした訓練もあります。厚生労働省の案内では、企業や社会福祉法人、NPO法人、民間の教育訓練機関などに委託して、障害の状態に応じた多様な職業訓練を行っているとされています。訓練の内容は地域によって違うため、ハローワークで、デザインやWeb制作の訓練があるかを確認してください。

デザインと合わせて身につけておくと評価されやすいのが、文章の力です。在宅の仕事では、依頼の内容を文字で受け取り、制作の意図を文字で説明する場面が多くなります。報告や連絡を分かりやすく書く力は、デザインの力と同じくらい仕事の続けやすさに関わります。ビジネス文書の基本を体系的に学びたい人は、ビジネス文書検定の内容と試験の概要が参考になります。

文章を書く仕事そのものに関心がある人は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、書く仕事の収入の幅や働き方の傾向を確認できます。デザインと文章の両方ができると、Webサイトの更新や販促物の制作など、在宅で任される仕事の幅が広がります。

在宅ワークの現場から見えること

ここからは、在宅ワークの仲介を長く続けてきた運営者の立場から、障害のある人の在宅の働き方について見てきたことを書きます。

運営者として見てきた限りでは、在宅で長く仕事を続けている人には、自分の働き方の条件を言葉にできているという共通点があります。「平日の午後に週15時間」「納期は1週間以上あると助かる」「連絡はチャットで」といった条件を、仕事を受ける前に依頼主と共有している人は、無理な依頼を受けずに済み、結果として仕事が長続きしています。障害者雇用の面接で配慮を伝えるのと同じことを、個人で仕事を受けるときにも行っているわけです。

もう1つ見えているのは、在宅のデザインの仕事は、制作の技術だけでなく、相手の意図をくみ取る力が評価されるということです。依頼主と直接やり取りできる取引では、要望の背景を確かめやすく、修正の回数も減りやすくなります。仲介の手数料が乗らない直接取引であれば、同じ予算でも受け取る報酬の手取りが厚くなり、無理に仕事の量を増やさなくても生活の計画が立てやすくなります。手数料0%で直接取引できる形は、体調に合わせて仕事の量を調整したい人にとって、選択肢の1つになります。

在宅でできる仕事の種類も広がっています。生成AIを業務に取り入れる支援や、マーケティングの運用、アプリの開発など、デザインの経験を生かせる周辺の仕事も増えました。それぞれの仕事の中身と求められるスキルは、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事やアプリケーション開発のお仕事で確認できます。開発にも関心がある人は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場で、在宅で受けられる開発の仕事の収入の目安を見ておくと、将来の選択肢を考える材料になります。

法定雇用率の引き上げで、障害のある人を採用しようとする企業は増えています。在宅勤務の求人も、以前に比べれば見つけやすくなりました。まずはハローワークの障害者の窓口や地域障害者職業センターに相談し、自分に必要な配慮と、目指したいデザインの仕事の形を整理するところから始めてください。

よくある質問

Q. 障害者手帳がなくても、障害者雇用の求人に応募できますか?

障害者雇用の求人は、原則として障害者手帳を持っていることが前提です。企業が法定雇用率を計算するときに数える対象が、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を持つ人だからです。手帳がない場合は一般の求人に応募することになりますが、難病や発達障害のある人はハローワークなどで相談や支援を受けられる場合があります。

Q. デザインの実務経験がなくても、在宅のデザイン職に応募できますか?

求人によりますが、デザインの職種では作品の提出を求められることが多くあります。実務経験がない場合は、訓練や自主制作の作品で、制作の目的と工夫した点を説明できるように準備してください。デザインの要素を含む在宅の事務職から始めて、制作の比重を少しずつ高めていく方法もあります。公共職業訓練や就労移行支援で技術を学ぶ道もあります。

Q. 面接で、どこまで障害のことを伝えればよいですか?

障害の名前や診断の経緯を詳しく話すよりも、どんな配慮があればどんな仕事ができるかを具体的に伝えるほうが、企業は採用後の働き方を想像しやすくなります。体調の波、通院の頻度、助かる連絡の方法、指示の受け方の希望などを事前に書き出しておくと、落ち着いて説明できます。支援機関と一緒に整理する就労パスポートも役立ちます。

Q. 会社に在宅勤務を配慮として求めることはできますか?

合理的配慮は会社との話し合いで決めるもので、在宅勤務を求めることも話し合いの対象になり得ます。ただし、会社にとって過重な負担になる場合は、配慮の義務を負わないとされており、仕事の内容によっては在宅勤務が難しいと判断されることもあります。最初から在宅勤務を前提にした求人を選ぶと、話し合いの負担は小さくなります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月14日最終更新:2026年10月6日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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