著作権を譲渡するときに決めておくこと


この記事のポイント
- ✓著作権譲渡は「全部渡す」か「渡さない」かの二択ではありません
- ✓特掲しないと移らない権利
- ✓契約書に落とす前に決めておくべき項目を条文の根拠つきで整理します
発注書に「本件成果物の著作権は納品と同時に甲へ譲渡する」と書かれていて、署名していいのか迷って検索した人が多いはずです。著作権譲渡は、渡すか渡さないかの二択ではありません。どの権利を、いつから、どの範囲で、いくらで渡すのかを分けて決められます。この記事では、譲れない権利、書かないと移らない権利、一部だけ渡す方法、対価と印紙税の扱いまでを、条文の根拠を示しながら整理します。読み終えたときに、目の前の契約書のどこを直せばいいかが分かる状態を目指します。
著作権は作った瞬間に発生する
出発点の確認です。著作権は登録して取るものではありません。著作権法の第17条は、著作者が著作者人格権と著作権を享有すると定めたうえで、その享有にはいかなる方式の履行をも要しないと規定しています。つまり、文章を書いた瞬間、デザインを描いた瞬間、写真を撮った瞬間に、作った人のところで権利が発生します。
ここが特許や商標と違う点です。特許は出願して審査を通らないと権利になりませんが、著作権は何もしなくても生まれます。逆に言えば、何もしていないのに権利を持っている状態なので、「誰が権利者なのか」が書面に残っていないことが多い。取引のたびに揉めるのは、この構造が原因です。
権利が続く期間も確認しておきます。第51条は、著作権の存続期間は著作物の創作の時に始まり、著作者の死後70年を経過するまで存続すると定めています。会社が著作者になる場合や映画の著作物には別の定めがありますが、個人が作ったものは死後70年が原則です。数十年先まで効き続ける権利を、1本の契約書で動かすことになります。
なお、著作権と呼ばれるものは単一の権利ではなく、複製権、上演権、公衆送信権、譲渡権、翻案権など、複数の権利の束です。第17条が「第21条から第28条までに規定する権利」をまとめて著作権と呼んでいるのは、そのためです。束だからこそ、一部だけを渡すという選択ができます。
譲れる権利と、そもそも譲れない権利
契約書を読むときに最初に分けるべきなのは、著作権と著作者人格権です。
著作権のほうは譲渡できます。第61条第1項が、著作権はその全部または一部を譲渡することができると明記しています。
一方、著作者人格権は譲渡できません。第59条が、著作者人格権は著作者の一身に専属し、譲渡することができないと定めています。著作者人格権とは、公表するかどうかを決める権利、名前を出すかどうかを決める権利、そして作品を勝手に改変されない権利のことです。作った人の人格と結びついた権利なので、お金で移せない、という考え方になっています。
ここで実務上よく登場するのが、著作者人格権の不行使特約です。「乙は甲に対し著作者人格権を行使しない」という一文で、譲渡はできないけれど行使しないと約束する形にします。発注者としては、納品後にロゴの色を変えたり文章を編集したりする必要があるため、この条項を入れたがります。
受注する側がこの条項をどう扱うかは、作るものによって変わります。文章や図版のように、公開後に編集が入るのが当たり前のものであれば、不行使を受け入れないと取引が成立しません。一方、作品性の高いイラストや写真では、「改変する場合は事前に協議する」「名前の表示は残す」といった例外を書き足す交渉が成り立ちます。全面的に不行使を拒むのではなく、譲れない一点を決めて、そこだけ守る。この順番で交渉すると話が進みます。
書かないと移らない権利がある
ここが著作権譲渡でいちばん事故が起きる場所です。
第61条第2項は、著作権を譲渡する契約において、第27条または第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定すると定めています。
第27条は翻訳権と翻案権等です。著作物を翻訳する、編曲する、変形する、脚色する、映画化する、その他翻案する権利を指します。第28条は二次的著作物の利用に関する原著作者の権利で、元の作品をもとに作られた別の作品について、元の作者が同じ種類の権利を持つというものです。
つまり「本件著作物に関する著作権を甲に譲渡する」とだけ書いた契約書では、作り替える権利と、作り替えたものを使う権利が、作った側に残っていると推定されます。発注した側は、納品されたイラストをアニメーションにする、記事を英語版にする、といった作り替えができない可能性があります。
この規定の趣旨について、契約実務を扱うメディアは次のように説明しています。
この規定は、経済的に弱者の地位にある著作者を保護することを趣旨とする規定であるなどと説明されていますが、いずれにしても、これらの権利についても譲渡の目的に含ませる場合には、著作権譲渡契約書にその旨を特掲する必要があります。 出典: keiyaku-watch.jp
だから実務では「著作権法第27条および第28条に規定する権利を含む一切の著作権を譲渡する」という書き方が定着しています。この一文があるかないかで、譲渡の範囲がまるごと変わります。
受注する側から見ると、ここは交渉の余地がある場所でもあります。作り替えまで含めて渡すのか、元の用途に限って渡すのか。後者を選ぶなら、第27条と第28条を特掲しない形にしたうえで、「二次的著作物の制作については別途協議する」と書いておきます。ただし、発注者が知らずに特掲を落としていただけという場合もあるので、あとから揉めないよう、どちらの意図なのかを納品前に文章で確認しておきます。
全部渡す以外の選択肢
譲渡は全か無かではありません。第61条第1項は「その全部又は一部を譲渡することができる」と書いているので、一部だけを渡せます。分け方は3つあります。
一つ目が、権利の種類で分ける方法です。複製権だけを渡す、公衆送信権だけを渡す、といった形です。たとえば写真を撮る仕事で、「ウェブサイトに掲載するための権利は渡すが、商品パッケージに使う権利は別途」という切り分けができます。
二つ目が、期間で分ける方法です。契約から3年間は発注者が独占し、期間が過ぎたら作った側に戻るという設計です。広告のキャンペーンのように使う期間が決まっている案件と相性が良い分け方です。
三つ目が、地域で分ける方法です。日本国内の権利だけを渡し、海外展開のときは別の条件で話す、という形になります。
一部譲渡を選ぶときに欠かせないのが、範囲の書き方です。契約実務のメディアは次のように注意を促しています。
「著作権の一部譲渡」に記載のとおり、著作権はその一部のみを譲渡することも可能ですが、著作権の一部のみを譲渡する場合、どのような権利が譲渡されているかについて当事者の認識に齟齬が生じないよう、著作権譲渡契約書において明確に特定する必要があります。 出典: keiyaku-watch.jp
「ウェブでの利用に限る」といった曖昧な書き方は、後から解釈が割れます。SNSへの投稿は含まれるのか、動画広告の背景に使うのは含まれるのか。使う場面を具体的に列挙するか、権利の条文名で特定するか、どちらかの形まで落とします。
譲渡ではなく利用許諾という選び方
そもそも譲渡する必要があるのか、という問いもあります。著作権法の第63条第1項は、著作権者は他人に対しその著作物の利用を許諾することができると定めています。いわゆるライセンスです。同条第2項は、許諾を得た者は、許諾に係る利用方法および条件の範囲内でその著作物を利用できると規定しています。
譲渡とライセンスの違いは、権利が移るかどうかです。譲渡すると権利者が入れ替わり、作った側は自分の作品を自由に使えなくなります。ポートフォリオへの掲載すらできなくなる可能性があります。ライセンスなら権利者は変わらないので、作った側は別の相手に同じものを使わせることも、自分で使い続けることもできます。
発注者が譲渡を求める理由はいくつかあります。自社のロゴやサービス名のように独占が必要なもの、将来どう使うか分からないので制限を持ちたくないもの、投資家や取引先から権利関係の整理を求められているもの。この理由を聞いてみると、実はライセンスで足りるケースが少なくありません。
一方で、譲渡で構わない場面もあります。定型的な作業の成果物、再利用の見込みがないもの、金額が十分に上乗せされているもの。全部を守ろうとすると交渉に時間がかかりすぎるので、守る対象を絞るほうが合理的です。
なお第63条第3項は、許諾によって生じる利用権は著作権者の承諾を得ない限り譲渡できないと定めています。ライセンスを受けた側が勝手に第三者へ又貸しすることはできない、という意味です。発注者が制作物を関連会社にも使わせたい場合、この点を契約書で手当てしておく必要があります。
契約書に落とす8つの項目
譲渡契約書を作るとき、最低限そろえる項目を並べます。
一つ目が、対象の特定です。何を譲渡するのかを、ファイル名、納品日、仕様書の番号などで一意に決めます。「本件業務に関して作成した一切の著作物」という書き方は広すぎて、打ち合わせ用のラフまで含まれる解釈になり得ます。
二つ目が、譲渡する権利の範囲です。全部なのか一部なのか、第27条と第28条を含むのか。ここが本体です。
三つ目が、譲渡の時期です。納品時か、検収完了時か、対価の支払い完了時か。実務上は支払い完了時とするのが受注側にとって安全です。支払いが滞ったまま権利だけ移る事態を避けられます。
四つ目が、対価です。金額と支払時期、そして著作権譲渡の対価が制作費に含まれるのか別建てなのかを書きます。
五つ目が、著作者人格権の扱いです。不行使とするのか、例外を設けるのか。
六つ目が、保証と責任の範囲です。第三者の権利を侵害していないことを作った側が保証するのが一般的ですが、無制限の保証は危険です。損害賠償の上限を報酬額までとする条項を入れておきます。
七つ目が、実績公開の可否です。譲渡した後でも、制作実績としてポートフォリオに載せられるかどうか。これを書き忘れると、仕事を取るための材料が手元に残りません。守秘義務の条項とあわせて、公開できる範囲と時期を決めておきます。
八つ目が、素材の扱いです。有償のフォント、ストックフォト、テンプレートを使った場合、その利用条件は譲渡の後も付いて回ります。使用した素材の一覧と、ライセンスの制約を納品時に伝えておくと、後日のトラブルを防げます。
こうした条項を過不足なく書き、相手に伝わる形で残す力は、実務の基礎体力にあたります。書面の型を押さえたいならビジネス文書検定で扱う範囲が土台になります。より踏み込んだ注意点は著作権譲渡契約の注意点|デザイン・ライティング案件でトラブルを避ける「帰属」と「譲渡」の境界線にも整理されています。
対価をどう決めるか
著作権譲渡の対価に決まった相場はありません。ただし、考え方の軸はあります。
軸の一つが、制作費と譲渡対価を分けることです。「制作費20万円、うち著作権譲渡の対価5万円」と内訳を示すと、譲渡しない場合の金額も自然に決まります。譲渡を求められたら上乗せを交渉する、という流れを作りやすくなります。
もう一つの軸が、相手の使い方です。社内資料に使うだけなのか、全国の広告に使うのか、商品化して販売するのか。使う範囲が広いほど、作った側が手放す機会損失は大きくなります。金額の根拠を「範囲」で説明すると、値引き交渉ではなく条件交渉になります。
継続的に使われるものでは、買い切りではなく期間を区切る方法も現実的です。3年で契約し、更新時に条件を見直す。その間に作品の価値が上がっていれば、更新時の金額に反映できます。
対価の支払いについては、法律の枠もあります。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の第4条は、発注した側が成果物を受け取った日から起算して60日以内、かつできる限り短い期間内に報酬の支払期日を定めなければならないと規定しています。同じ法律の第3条は、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面または電磁的方法で明示するよう求めています。譲渡の範囲と対価は、この明示の対象に含まれる情報です。
さらに2026年1月1日から、下請代金支払遅延等防止法は中小受託取引適正化法へと改められ、規制の内容と対象が広がりました。制度の概要は公正取引委員会のページで確認できます。取引の相手や規模によってどの法律の対象になるかが変わるため、迷う場合は公正取引委員会の相談窓口に確認するのが確実です。
印紙税はかかるのか
紙の契約書を作る場合、印紙税の検討が必要です。国税庁が公開している印紙税額の一覧表では、第1号文書として「不動産、鉱業権、試掘権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書」が挙げられており、その注記で無体財産権には著作権が含まれると明記されています。
税額は契約金額によって決まり、1万円以上10万円以下で200円、10万円を超え50万円以下で400円、50万円を超え100万円以下で1千円、100万円を超え500万円以下で2千円という刻みです。契約金額の記載がない場合は200円とされています。詳細は国税庁の印紙税額一覧表で確認できます。
注意したいのは、制作の請負契約と著作権譲渡が1通の契約書に混ざっている場合です。請負に関する契約書は第2号文書にあたり、税額の刻みが第1号文書とは異なります。どちらの文書として扱われるかは記載内容によって判断されるため、金額が大きい契約では税務署に確認するのが安全です。判断を誤ると過怠税の対象になり得ます。
電子データだけでやり取りする場合の取扱いは紙の契約書と異なります。自分のケースがどうなるかは、契約の形と金額で変わるので、税務署または税理士に確認してください。税務の個別判断はここで断定できる領域ではありません。税理士に相談する手順を知りたい場合は税理士の独立開業ガイド|準備から集客まで【2026年版】に業界の内側が書かれていて、どんな相談ができる相手なのかの見当が付きます。
発注する側が知っておくこと
譲渡してもらう立場からも整理しておきます。
まず、社内で作らせたものと外注したものでは扱いが違います。著作権法の第15条は、法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、別段の定めがない限りその法人等とすると定めています。社員が業務で作ったものは会社が著作者になり得ますが、外部のフリーランスに発注したものはこの規定の対象になりません。外注分は契約で譲渡を受ける必要があります。
次に、譲渡を受ける時期です。支払い完了時に移転する設計にしておくと、二重払いの防止にもなります。検収前に公開してしまうと、権利が移っていない状態で使っていることになるため、社内の公開手順と契約の条件を合わせておきます。
そして、孫請けの扱いです。受注者が外部の協力者に一部を任せている場合、その協力者との間でも権利が整理されていないと、発注者のところまで権利が届きません。契約書に「受注者は第三者に作業を委託する場合、当該第三者から必要な権利を取得したうえで甲に譲渡する」といった条項を入れておきます。
取引先が法人なら、経理や監査の場面で権利関係の資料を求められることもあります。権利の所在を書面で示せる状態にしておくのは、制作の都合だけでなく会社の事務の都合でもあります。関連する職域の話は会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】にも触れられています。
作るものによって落としどころが変わる
同じ著作権譲渡でも、何を作ったかによって現実的な落としどころは違います。代表的な5つを並べます。
ロゴやシンボルマークは、譲渡が前提になる領域です。企業の顔として長く使われ、商標登録の対象にもなるため、権利が制作側に残っていると相手の事業に支障が出ます。ここで粘るより、譲渡を前提にして対価と実績公開の条件を詰めるほうが建設的です。商標として登録する予定があるかどうかを聞いておくと、相手の本気度も見えます。
イラストやキャラクターは、二次利用の幅が広いため交渉の余地が大きい領域です。グッズ化、アニメーション化、他媒体への展開。使う範囲を列挙して、それ以外は別途協議とする形が取りやすい分野です。第27条と第28条の特掲を求められたら、その先の展開予定を確認してから返事をします。
写真は、被写体の権利が別に絡みます。人が写っていれば肖像権、建物や作品が写っていればその権利。著作権を譲渡しても、被写体側の許諾までは移りません。モデルリリースを取っているかどうか、撮影場所の使用条件はどうだったかを、譲渡の条件とあわせて整理しておきます。
記事や原稿は、編集されることが前提の成果物です。著作者人格権の不行使を求められるのが普通で、そこを拒むと取引が成立しません。代わりに、署名記事にするかどうか、転載の範囲、加筆修正後の内容について責任を負わないこと、といった点を書き込む方向で調整します。
プログラムやソースコードは、他の分野と事情が違います。オープンソースのライブラリを組み込んでいれば、そのライセンス条件は譲渡後も残ります。著作権を渡したつもりでも、使用しているライブラリの条件によっては公開義務が発生することがあるため、依存関係の一覧を納品物に添えておきます。汎用的に使い回すユーティリティ部分は譲渡の対象から外し、利用許諾の形にするという整理も一般的です。
生成ツールを使った部分をどう扱うか
近年の制作では、生成系のツールで作った素材が一部に混ざることが珍しくありません。ここは契約書のひな型がまだ追いついていない領域なので、当事者間で決めておく必要があります。
決めておきたいのは3点です。第一に、生成ツールを使ってよいかどうか。使用を禁止している発注者もいれば、効率化のために歓迎する発注者もいます。第二に、使った場合にどこに使ったかを開示するか。第三に、生成された部分について作った側がどこまで保証するか。
保証の範囲は特に慎重に扱います。「第三者の権利を侵害していないことを保証する」という条項は、生成ツールの出力についてまで無制限に責任を負う形になり得ます。保証の対象を「自ら創作した部分」に限定する、損害賠償の上限を報酬額までとする、といった修正を提案しておくと、後日の負担が読める状態になります。
使用したツールの利用規約も確認します。出力物の権利を利用者に帰属させると定めているサービスが多い一方、商用利用の条件や、出力物を第三者へ譲渡する場合の制限が書かれていることもあります。譲渡できない前提の素材を譲渡する契約を結んでしまうと、契約違反になります。
相手にどう切り出すか
条文の知識があっても、切り出し方が分からなければ使えません。実務で通りやすい伝え方を3つ挙げます。
一つ目は、確認の形にすることです。「第27条と第28条を含む形で譲渡、という理解で合っていますか」と聞けば、反対しているわけではないので相手も答えやすくなります。答えが返ってきた時点で、意図が文字として残ります。
二つ目は、代案を添えることです。「全部譲渡でも対応できますが、その場合の対価は〇〇円になります。ウェブでの利用に限った許諾であれば△△円です」と並べて出すと、値引き交渉ではなく条件の選択になります。
三つ目は、実績公開だけは必ず聞くことです。「納品から半年後以降、実績として概要を掲載してもよいでしょうか」という質問は、権利の主張ではなく相談の形になるため、断られにくくなります。守秘義務が厳しい案件でも、社名を伏せた形なら認められることがあります。
メールの文面にするなら、次のような形です。
「〇〇株式会社 △△様 いつもお世話になっております。本件の契約書について、2点だけ確認させてください。1点目は著作権の範囲で、第27条および第28条を含む譲渡という理解でよろしいでしょうか。2点目は制作実績の公開で、納品から6か月後以降、社名を伏せた形で掲載させていただくことは可能でしょうか。ご確認のうえ、ご返信いただけますと幸いです。」
質問を2つに絞り、それぞれに具体的な条件を添えるのがコツです。指摘が多すぎると、相手は法務に回して時間がかかりますし、面倒な相手だという印象だけが残ります。
揉めやすい場面を先に潰す
現場で実際に起きる揉め事は、だいたい次の5つに集約されます。
一つ目が、途中で打ち切られた案件です。作業は進んだが納品前に中止になった場合、その時点の成果物の権利はどちらにあるのか。契約書に中途解約時の扱いを書いておかないと、作りかけのデータを巡って話が止まります。
二つ目が、修正回数を超えた追加作業です。譲渡の対象は最終版だけなのか、途中のバージョンも含むのか。ラフやボツ案の扱いを決めておきます。
三つ目が、類似案件の受注です。同じ業界の競合から似た依頼が来たとき、前の案件の譲渡が足かせにならないか。譲渡したのは特定の作品であって、作風や技法ではありません。ただし競業避止の条項が別に入っていると話が変わるので、契約書全体を見て判断します。
四つ目が、実績公開です。前述のとおり、書き忘れると載せられません。「納品から6か月後以降、氏名と概要に限り公開できる」といった形で、時期と範囲を決めておきます。
五つ目が、第三者の権利です。参考にした資料、使った素材、生成系のツールで作った部分。どこまでが自分のオリジナルなのかを、納品時に整理しておきます。保証条項で無制限の責任を負う形になっている契約書では、ここが直接のリスクになります。
この5つは、どれも契約書に2行ずつ書き足すだけで防げるものです。トラブルが起きてから弁護士に相談すると、着手金の段階でまとまった費用がかかりますし、解決まで数か月かかることもあります。事前に2行書く手間と、あとから数か月かける手間を比べれば、どちらが安いかは明らかです。
そして、揉めたときに効くのは記憶ではなく記録です。打ち合わせの内容をその日のうちにメールで送って残す、修正指示をチャットの履歴に残す、納品の連絡を書面で行う。この習慣がある人は、話がこじれたときに主張を裏付けられます。契約書の条項を完璧にすることより、日々の記録を残すほうが現実的な防御になる場面は多いです。
20年市場を見てきて分かること
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、権利の話で損をしている人には共通点があります。契約書を読んでいないのではなく、読んだうえで「言い出しにくい」と感じて黙っていることです。
運営者として見てきた限りでは、条件の確認を丁寧にする人ほど、同じ相手から繰り返し依頼されています。理由は単純で、発注する側も権利関係が曖昧なまま進むのは怖いからです。「第27条と第28条まで含めて渡す前提でよいですか」と先に聞いてくれる相手は、発注側にとって安心できる相手になります。言い出しにくいと感じている確認事項は、たいてい相手も気にしています。
もう一つ、中間の手数料が乗らない直接の取引では、同じ予算でも依頼者はより多くを頼めますし、受け手の手元に残る額は厚くなります。金額の話というより、条件を細かく詰める余地が生まれるという意味で効いてきます。仲介が入ると条件が定型化されて、権利の範囲を個別に交渉する余地が狭くなりがちです。
文章や編集の仕事における報酬の水準を知りたい場合は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に業種別の数字が整理されています。開発や技術寄りの仕事へ広げたいならアプリケーション開発のお仕事やAIコンサル・業務活用支援のお仕事の領域が参考になります。
著作権譲渡の契約は、署名した瞬間に数十年先まで効きます。だからこそ、全部渡すか渡さないかで悩むのではなく、どこを渡してどこを残すかを分けて考える。第27条と第28条の特掲を確認し、著作者人格権の扱いを決め、実績公開の可否を書き足す。この3つを押さえるだけで、契約書の質は大きく変わります。
よくある質問
Q. 「著作権を譲渡する」と書けば、すべての権利が移りますか?
移りません。著作権法第61条第2項は、翻訳権や翻案権等を定めた第27条と、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利を定めた第28条について、譲渡の目的として特掲されていないときは譲渡した者に留保されたものと推定すると定めています。作り替える権利まで渡す契約にするなら、条文を名指しで書き込む必要があります。
Q. 著作者人格権も譲渡できますか?
できません。著作権法第59条が、著作者人格権は著作者の一身に専属し譲渡することができないと定めています。実務では「著作者人格権を行使しない」という不行使特約を入れる形が一般的です。改変の範囲や氏名表示について譲れない点があるなら、不行使の例外を書き足す交渉をしてください。
Q. 譲渡と利用許諾はどちらを選ぶべきですか?
発注者が独占を必要としているかどうかで決まります。譲渡すると権利者が入れ替わり、作った側は自分の作品を自由に使えなくなります。利用許諾なら権利者は変わらないので、実績への掲載や別案件での利用が残ります。まず相手に譲渡が必要な理由を聞いてみると、許諾で足りる場合も少なくありません。
Q. 著作権譲渡の契約書に収入印紙は必要ですか?
紙の契約書を作る場合は検討が必要です。国税庁の印紙税額一覧表では第1号文書の無体財産権に著作権が含まれるとされ、契約金額1万円以上10万円以下で200円、10万円超50万円以下で400円といった税額が定められています。請負契約と混在する場合は扱いが変わるため、金額が大きい契約では税務署に確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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