種類株式がある会社の議事録|もう一つの決議が要る場面

丸山 桃子
丸山 桃子
種類株式がある会社の議事録|もう一つの決議が要る場面

この記事のポイント

  • ✓普通株式とは別枠の株主だけで決議したことを残す書類です
  • ✓どんな場面で必要になるのか
  • ✓決議に何人の賛成が要るのか

出資を受け入れたあとの会社で、定款を変えようとして「種類株主総会議事録も要ります」と言われ、手が止まる人は少なくありません。種類株主総会議事録とは、普通の株主総会とは別に、特定の種類の株式を持つ株主だけを集めて決めた内容を残す書類のことです。似た名前の書類が二つ並ぶので、どちらを作ればよいのか、両方作るなら順番はどうするのか、書き漏らすと何が起きるのかが分かりにくい。この記事では、必要になる場面の見分け方から、決議に要る賛成の数、議事録に書く項目、登記と費用までを、法令の原文を確認しながら順番に整理します。

出資を受ける会社が増えるほど、この書類を作る場面も増える

株式会社は、内容の違う二種類以上の株式を発行できます。配当を先に受け取れる株式、議決権のない株式、会社の承認がないと譲渡できない株式などです。こうした株式を発行している会社を、法律の言葉では種類株式発行会社と呼びます。

種類株式は、かつては上場企業や大型の資金調達だけの話でした。ところが、ベンチャーキャピタルからの出資、事業承継での議決権の整理、従業員への株式付与といった場面で、資本金1,000万円に満たない規模の会社でも使われるようになっています。出資する側が、配当や残余財産の分配で普通株式より有利な条件を求めるため、優先株式を発行する形が定着したからです。

ここで起きるのが、決議がもう一つ必要になるという問題です。普通株式しかない会社なら、定款を変えるときは株主総会で決めれば終わります。ところが種類株式を発行していると、株主総会で決めただけでは効力が生じず、不利益を受けるおそれのある種類の株主だけを集めた会議でも賛成をもらわなければならない場面が出てきます。この会議が種類株主総会で、そこで決めた内容を残すのが種類株主総会議事録です。

種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(中略)の決議がなければ、その効力を生じない。 出典: laws.e-gov.go.jp

読みどころは「その効力を生じない」という部分です。手続を飛ばした場合、罰金を取られるという話ではなく、決めたこと自体が効かない。定款変更が効いていないのに登記だけ通ってしまうと、あとから株主に指摘されたときに、その時点までの増資や配当まで巻き戻す話になりかねません。だからこそ、出資を受けたことのある会社では、定款をいじる前に「種類株主総会が要るかどうか」を最初に確認する順番が定着しています。

「もう一つの決議」が要るのはどんなときか

必要になる場面は、法律に列挙されています。定款の変更のうち、株式の種類を追加する、株式の内容を変える、発行できる株式の総数を増やす、という三つ。それから、株式の併合や分割、株式を無料で割り当てる手続、新しく株式や新株予約権を引き受ける人を募る手続、合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付です。

ただし、列挙された行為に当てはまれば必ず必要になるわけではありません。条件がもう一つあります。「ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき」です。つまり、その行為によって不利益を受けるかもしれない種類の株主がいる場合に限られます。

ここが実務で一番迷うところです。損害を及ぼすおそれがあるかどうかは、金額として計算できるものではなく、権利の中身が相対的に弱くなるかどうかで判断します。たとえば、新しくA種優先株式を追加して、配当の順位を既存のB種優先株式より上に置く場合、B種の株主は配当を受け取れる順番が後ろに下がります。これは損害を及ぼすおそれがあると考えるのが自然です。逆に、既存の種類株式の権利にまったく触れず、発行可能な株式の総数だけを増やす場合でも、将来の持分比率が薄まる可能性があるため、おそれありと見る扱いが一般的です。

判断に幅が出る領域なので、登記まで進める予定があるなら、申請先の法務局か司法書士に事前に確認するのが確実です。おそれがないと自己判断して種類株主総会を開かずに進め、あとで登記が通らずに日程が崩れるより、先に聞いておくほうが早く終わります。

一方で、定款であらかじめ「この種類の株式については種類株主総会の決議を要しない」と決めておくこともできます。出資契約を結ぶときに、将来の資金調達をスムーズにする目的でこの定めを置く会社もあります。ただし注意点が二つあります。第一に、この定めを置いていても、株式の種類の追加や内容の変更といった定款変更を行う場合は、単元株式数の変更を除いて種類株主総会が必要なままです。第二に、株式を発行したあとで、この定めを新しく設けようとするときは、その種類の株主全員の同意が要ります。一人でも反対すれば置けません。

賛成の数は、普通の株主総会より重い

種類株主総会の決議は、原則として、その種類の株式の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で成立します。これは普通の株主総会と同じ考え方です。

ところが、実務でよく出てくる場面、つまり損害を及ぼすおそれがある行為についての決議は、原則ではなく重いほうのルールが適用されます。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席したうえで、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要ります。定款で出席の基準を3分の1以上まで下げることは認められていますが、賛成の割合を3分の2より下げることはできません。

種類株式の株主は人数が少ないことが多く、一社のベンチャーキャピタルが全株を持っているケースもあります。その場合は形式的な手続で済みますが、複数の投資家に分かれていると、一社が反対しただけで3分の2に届かないことがあります。議事録を作る作業そのものより、事前に誰がどれだけ持っていて、賛成が集まる見込みがあるかを数えておくことのほうが重要です。

さらに重いルールが適用される場面もあります。譲渡に会社の承認が必要な株式に変える定款変更などでは、頭数の半数以上かつ議決権の3分の2以上という、二つの条件を同時に満たす必要があります。頭数が入ってくると、持ち株数の少ない株主の意向も無視できません。どのルールが当てはまるかは議案ごとに違うので、議事録を書き始める前に、その議案がどの区分に入るかを確認してください。

議事録に書く項目と、書き漏らしたときのリスク

議事録に何を書くかは、会社法の細かい決まりを定めた法務省令に一覧があります。株主総会の議事録についての決まりが、種類株主総会にもそのまま当てはまります。

書くべき項目は次の六つです。

項目 具体的に書く内容
日時と場所 開催した年月日と開始時刻、開催場所。その場にいない役員や株主がオンラインで出席した場合は、その出席方法も書く
議事の経過の要領と結果 誰が何を提案し、どんな説明や質疑があり、賛成がどれだけ集まって可決したか
述べられた意見や発言 役員の選任や解任、報酬、会計監査についてなど、法律が定める場面で意見が出たときはその概要
出席した役員の氏名 出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人の名前
議長の氏名 議長を置いた場合のみ
議事録を作った取締役の氏名 作成の職務を行った取締役の名前

見落としやすいのは、最後の「議事録を作った取締役の氏名」です。ひな形によっては作成者の欄がなく、出席取締役の署名だけで終わっている形式があります。その形式で登記を申請すると、法務局から補正を求められることがあります。

もう一つ、議事の経過の要領と結果についても注意が要ります。「満場一致で可決した」の一行だけで済ませる議事録をよく見かけますが、種類株主総会では決議の要件が重いので、議決権のある株式の総数、出席した株主の議決権の数、賛成した議決権の数を具体的な数字で書いておくほうが安全です。あとから要件を満たしていたかどうかを検証できる状態にしておくのが、書類の役目です。

議事録を作らなかったり、書くべき事項を書かなかったり、事実と違うことを書いた場合は、100万円以下の過料の対象になると法律に書かれています。過料は前科がつく刑罰ではありませんが、裁判所から通知が届き、会社ではなく取締役個人が支払う点が特徴です。

保管の期間も決まっています。議事録の原本は会議の日から10年間本店に備え置き、支店がある場合は写しを5年間支店に置きます。電子データで作っていて、支店から閲覧できる仕組みを整えているときは、支店の写しは不要です。株主と債権者は、営業時間内であればいつでも閲覧や写しの交付を請求できます。

開く順番を間違えると、やり直しになる

定時株主総会と種類株主総会を同じ日に開くケースでは、順番が問題になります。

考え方はシンプルです。種類株主総会は、株主総会で決めた内容の効力を発生させるための追加の条件です。したがって、株主総会で議案を可決したあとに種類株主総会を開いて承認する流れが基本になります。先に種類株主総会を開いて承認しておく形も、実務では認められる場面がありますが、その場合は「株主総会で同一内容の決議がされることを条件として承認する」という趣旨を議事録に残しておく必要があります。

順番よりもさらに間違いが多いのは、議事録を別々の書類として作らず、一枚にまとめてしまうことです。株主総会と種類株主総会は、出席する株主の範囲も、決議に必要な賛成の数も違う別々の会議です。一枚にまとめると、どちらの会議でどの決議が成立したのかが読み取れなくなります。登記の申請では、決議を要する会議ごとに議事録を添付することになっているため、別々に作るのが原則です。

複数の種類の株式があり、複数の種類株主総会を開く必要がある場合も同じです。A種とB種の両方で決議が要るなら、A種の議事録とB種の議事録を別々に作ります。会議を同じ時間帯に続けて開くこと自体は問題ありませんが、書類は分けてください。

招集の通知は何日前に出すのか

会議を実際に開く場合、いつまでに株主へ知らせるかも決まっています。株主総会についての決まりが、種類株主総会にもそのまま当てはまります。

原則は、会議の日の2週間前までに通知を発することです。ただし、株式の譲渡に会社の承認が必要な会社、いわゆる非公開会社では1週間前までに短縮されます。さらに取締役会を置いていない会社なら、定款で1週間よりも短い期間を定めることもできます。出資を受けたばかりの小さな会社は、非公開会社で取締役会を置いていない形が多いので、定款を読めば実際の期限はもっと短いことがあります。

通知を書面で出さなければならないのは、取締役会を置いている会社と、書面や電子的な方法で議決権を行使できる仕組みを用意した場合です。それ以外なら、口頭やメールでの通知でも法律上は足ります。ただし、あとから「聞いていない」と言われたときに証明できないので、記録の残る方法で出しておくほうが安全です。株主の承諾を得ていれば、電子的な方法での通知が書面での通知とみなされます。

そして、株主の全員が同意しているときは、招集の手続そのものを省いて開催できます。株主が数人しかいない会社では、この方法で当日に集まって決議し、議事録に「株主全員の同意があったため招集手続を省略した」と記載する運用が一般的です。ただし、書面や電子的な方法で議決権を行使できる仕組みを定めた場合は省略できません。

期限の数え方でつまずく人が多いので補足すると、2週間前は通知を発する日と会議の日の間に中14日を置く、という数え方をします。発した日と当日は含めません。日程がぎりぎりのときは、通知の日付を一日前倒ししておくと安全です。

集まらずに決める方法と、そのときの書類

株主が遠方にいる、あるいは投資家が一社だけで形式的な手続にすぎない、という場合、実際に集まらずに決める方法があります。取締役または株主が議案を提案し、議決権を行使できる株主の全員が書面か電子データで同意の意思を示したときは、その議案を可決する決議があったものとみなされます。この仕組みは種類株主総会にも使えます。

注意点は、全員の同意が必要だという点です。3分の2ではなく全員なので、一人でも返事がない状態では成立しません。人数が多い場合は、実際に会議を開いて決議したほうが早いこともあります。

このやり方で決めた場合、作る書類は通常の議事録とは形が変わります。書く項目は、決議があったものとみなされた事項の内容、提案をした人の氏名または名称、決議があったものとみなされた日、そして議事録を作った取締役の氏名の四つです。日時や場所、出席者といった項目は、会議を開いていないので書きません。この違いを知らずに通常の議事録の形式で作ると、実態と書類が食い違うことになります。

また、同意を示した書面や電子データそのものも、みなし決議の日から10年間本店に備え置く義務があります。議事録だけ残して同意書を捨ててしまうケースがあるので、セットで保管してください。登記の場面でも、議事録に代えて、この方法で決議があったことを証明する書面を添えることになります。

株主リストは、種類株主総会の分も別に作る

登記の添付書類として求められる株主リストにも、種類株主総会があると独特の扱いが出てきます。商業登記規則は次のように定めています。

登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合には、申請書に、総株主(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の総株主)の議決権(当該決議(会社法第三百十九条第一項(同法第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があつたものとみなされる場合を含む。)において行使することができるものに限る。以下この項において同じ。)の数に対するその有する議決権の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であつて、次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数の株主の氏名又は名称及び住所、当該株主のそれぞれが有する株式の数(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の数)及び議決権の数並びに当該株主のそれぞれが有する議決権に係る当該割合を証する書面を添付しなければならない。 一 十名 二 その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し、その加算した割合が三分の二に達するまでの人数 出典: laws.e-gov.go.jp

条文が長いので要点を抜き出します。種類株主総会の決議を要する場合、分母になるのは会社全体の株主ではなく、その種類の株式の総株主です。書く株式の数も、その種類の株式の数になります。つまり、株主総会の分と種類株主総会の分で、まったく違う数字が並んだ株主リストを2枚作ることになります。

A種優先株式を3社の投資家が持っている会社で考えます。株主総会の株主リストは、創業者と全投資家を議決権の多い順に並べ、上位10名か、割合を足して3分の2に達するまでの人数で切ります。A種の種類株主総会の株主リストは、A種を持つ3社だけを並べ、A種の議決権の合計に対する割合を書きます。創業者が普通株式だけを持っているなら、こちらには登場しません。

複数の種類で決議が要る場合は、その種類ごとに1枚ずつ作ります。A種とB種の両方で決議したなら、株主総会の分、A種の分、B種の分で合計3枚になります。議事録を種類ごとに分けるのと同じ考え方です。

証明するのは会社の代表者です。書式とExcelの記載例は法務省のページから入手できます。割合を手で計算すると端数でずれやすいので、配布されている様式を使うほうが確実です。

登記が必要になる場面と、費用と期限

種類株主総会で決めた内容が、登記されている事項に関わる場合は、変更の登記が必要です。株式の種類の追加、株式の内容の変更、発行可能株式総数や発行可能種類株式総数の増加は、いずれも登記事項です。

期限は、変更が生じてから2週間以内に本店の所在地で申請すること、と法律に定められています。この期限を過ぎても申請自体は受け付けてもらえますが、登記を怠ったこととして100万円以下の過料の対象になります。実際の運用では、遅れの期間や事情によって金額が決まり、数万円程度の通知が取締役個人宛に届く例が知られています。

費用として最初に発生するのが登録免許税です。国税庁が公開している税額表では、次のようになっています。

登記の種類 登録免許税
登記事項の変更、消滅または廃止の登記 申請1件につき3万円
取締役や代表取締役、監査役などの変更の登記 申請1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社は1万円)
株式会社の設立の登記 資本金の額の1,000分の7(15万円に満たないときは15万円)
資本金の増加の登記 増加した資本金の額の1,000分の7(3万円に満たないときは3万円)

出典は国税庁のタックスアンサー「登録免許税の税額表」です。増資と定款変更を同時に行う場合、区分が違う登記は別々に課税されるため、合計額は単純に足し算になります。見積もりを作るときは、どの区分がいくつ発生するかを先に数えてください。

司法書士に依頼する場合の報酬は、これとは別にかかります。金額は案件の複雑さで大きく変わるため一律の相場はありませんが、種類株式が絡む変更登記は普通の役員変更より手間がかかる部類に入ります。自分で申請するか依頼するかは、登記の期限と、社内で手続を検証できる人がいるかどうかで決めるのが現実的です。

取締役を種類株主総会で選ぶ仕組みもある

出資を受けた会社でよく設計されるのが、投資家が持つ種類株式に「この種類の株主だけで取締役を1人選べる」という内容を持たせる形です。会社法は、発行できる株式の内容として、その種類の株主を構成員とする種類株主総会で取締役または監査役を選任すること、という項目を挙げています。投資家が取締役を1人送り込む根拠を、契約ではなく定款に置く作りです。

この定めを置く場合、定款には、その種類株主総会で選任することと、選任する取締役または監査役の数を書きます。他の種類の株主と共同で選任する形にすることもできます。

ここには使える会社の制限があります。指名委員会等設置会社と公開会社は、この内容の株式を発行できません。公開会社とは、発行する株式の全部または一部について、譲渡に会社の承認が要らない会社のことです。出資を受けた直後の会社は、たいてい全株式に譲渡の承認を要する形になっているので、この制限に当たらないことが多いのですが、上場を目指す過程で公開会社になる段階では、この種類の株式を残せません。出資契約を作る段階で、いつまで有効な仕組みなのかを確認しておく必要があります。

この定めがある会社では、取締役を選ぶ会議そのものが株主総会から種類株主総会に移ります。その種類株主総会で選ばれた取締役を解任する場合も、原則としてその種類株主総会で決めます。株主総会で全取締役を選ぶという普通の形とは、書類の構成が根本から変わります。議事録の表題も「臨時株主総会議事録」ではなく「A種種類株主総会議事録」になります。

登記の場面では、取締役の就任を登記する際に添える議事録が種類株主総会のものになり、株主リストもその種類の株主で作ることになります。ひな形を探すときに株主総会議事録の書式を使うと、会議の名前から合わなくなります。自社の定款に役員を選ぶ定めがあるかどうかを先に確認してください。

A種優先株式を追加する場面で、書類と費用をぜんぶ並べる

具体的な場面に落とします。普通株式とB種優先株式を発行している資本金1,000万円の会社が、新しい投資家からの出資を受けるためにA種優先株式を作り、配当の順位をB種より上に置く。増資の額は2,000万円とします。

決めることは2つです。定款を変えてA種優先株式という種類を追加すること。そのA種を引き受ける人を募る条件を決めること。どちらも、B種の株主に不利益が及ぶおそれのある行為に当たります。

用意する書類は次のようになります。

・株主総会議事録(定款変更と募集事項の決定。いずれも特別決議) ・株主総会の分の株主リスト ・B種種類株主総会議事録(上の決議を承認する。出席したB種の議決権の3分の2以上の賛成が必要) ・B種の分の株主リスト ・引き受ける人からの申込みを証する書面 ・払込みがあったことを証する書面 ・資本金の額の計上に関する証明書 ・登記の申請書と、代理人に頼む場合は委任状

登録免許税は区分ごとに計算します。A種という種類の追加と発行可能種類株式総数の変更は登記事項の変更なので3万円。資本金が2,000万円増える分は、増えた額の1,000分の7で14万円です。合計は17万円になります。増資の額が大きくなるほど、ここが支出の中心になります。

日程も逆算しておきます。招集の通知を出す期限、株主総会と種類株主総会の日、払込みの期日、登記の申請期限が並びます。登記の期限は払込みの期日から2週間なので、払込みの日をいつにするかが全体のしめきりを決めます。払込みを月末に置くなら、翌月の中旬までに書類がそろっていなければなりません。

書類が8点あるので、誰がどれを用意するかを先に割り振っておくと止まりません。会社が作るのは議事録と株主リストと証明書、投資家に用意してもらうのは申込みの書面、銀行から取るのが払込みの記録です。相手の確認に時間がかかるものから先に頼むのが実務の順番になります。

無料のひな形を使うときに確かめる三つのこと

議事録のひな形は、法務局のサイトや民間の契約書サービスで無料配布されています。ゼロから書くより速いので使う価値はありますが、そのまま流用すると合わない箇所が出ます。確かめるべきは次の三点です。

一つ目は、自社の定款との整合です。決議の要件を定款で加重している会社は珍しくありません。出資契約に合わせて「出席した株主の議決権の4分の3以上」と定めているのに、ひな形の「3分の2以上」のまま書いてしまうと、議事録の記載と実際の要件がずれます。ひな形を開く前に、自社の定款の該当条文を読んでください。

二つ目は、議案の書き方です。定款変更なら、変更前の条文と変更後の条文を並べて書くのが一般的です。ひな形には「第○条を次のとおり変更する」とだけ書かれている場合があり、変更前の内容が残らないと、あとから経緯を追えません。

三つ目は、利用規約です。無料で配布されているひな形にも利用条件が付いていることがあり、再配布や商用利用が制限されている場合があります。自社で使う分には問題にならないことがほとんどですが、書類作成を仕事として受けている場合は、配布元の条件を読んでおく必要があります。

なお、ひな形を配布しているサービスの多くは、その書類が個別の案件に対する法的な助言ではないと明記しています。判断が分かれる論点、たとえば「損害を及ぼすおそれがあるかどうか」については、ひな形では答えが出ません。そこだけは専門家か法務局に確認する、と割り切るのが効率的です。

勘違いしやすい5つ

同じ場面で繰り返し起きる取り違えを並べます。

1つめは、種類株式を発行していれば必ず種類株主総会が要るという思い込みです。要るのは、法律が列挙した行為に当たり、かつその種類の株主に損害を及ぼすおそれがある場合だけです。役員報酬を決める、事業年度を変えるといった議案では出てきません。

2つめは、賛成の数の取り違えです。損害を及ぼすおそれがある行為についての決議は、出席した株主の議決権の3分の2以上が必要です。原則どおりの過半数と書いた議事録は、要件を満たしていない書類になります。

3つめは、株主リストを1枚で済ませることです。種類株主総会の分は、その種類の株式の総株主を分母にして別に作ります。株主総会の分をそのまま使うと、割合の数字が合いません。

4つめは、議事録を1枚にまとめることです。株主総会と種類株主総会は別の会議なので、書類も分けます。複数の種類で決議したなら、その種類ごとに1枚ずつ作ります。

5つめは、決議を要しない旨の定款の定めを万能だと思うことです。この定めを置いていても、株式の種類の追加や株式の内容の変更を伴う定款変更では、種類株主総会が必要なままです。単元株式数の変更だけが例外になっています。しかもこの定めを後から設けるには、その種類の株主全員の同意が要ります。出資を受ける前の段階で入れておくかどうかを決める話になるので、契約の交渉のときに論点として出しておいてください。

書類づくりを請け負う立場から見た、この分野の位置づけ

在宅で仕事を受けている人にとって、議事録や規程の作成補助は、意外と需要のある領域です。会社の側は、弁護士や司法書士に頼むほどではない下書きの段階で困っていることが多いからです。ただし、種類株主総会が必要かどうかの判断や、登記申請の代理は、それぞれ弁護士と司法書士の仕事です。受けられるのは、決まった内容を文書の形に整える作業、過去の議事録の体裁をそろえる作業、保管のルールを作る作業などに限られます。境界を最初に伝えておくと、依頼する側も安心して任せられます。

こうした文書作成の基礎を証明したい場合、ビジネス文書検定のような資格が判断材料になります。文部科学省後援の検定で、正確で効率的なビジネス文書を作る力を測るものです。法律知識そのものを証明するわけではありませんが、書式や敬語、構成の正しさを担保できることは、法務まわりの書類を扱う仕事では評価されます。また、企業の文書業務全体を見直す方向に広げたい人は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、生成AIの活用戦略から社内研修までを支援する案件も視野に入ります。定型書類の作成は自動化と相性がよく、ひな形の整備とチェックリスト化までを含めて請け負う形が増えています。

報酬の水準を考えるときは、職種ごとの相場を確認しておくと交渉の基準になります。文書作成を主軸にするなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になりますし、書類の作成と業務システムの構築をセットで請ける方向ならソフトウェア作成者の年収・単価相場も見ておくとよいでしょう。全国平均と都道府県別の数字が出ているので、居住地や取引先の所在地に合わせて読み替えられます。

フリーランス・在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、法務まわりの書類を扱う仕事で長く続く人には共通点があります。難しい判断に踏み込むのではなく、依頼する側が判断しやすい状態まで材料を整えることに時間を使っている点です。種類株主総会の例で言えば、「この定款変更は種類株主総会が要ります」と断定するのではなく、「定款のこの条文と、株主名簿のこの構成だと、確認が必要な論点はここです」という形で渡す。判断は会社と専門家がする。この線引きができている人のところに、次の依頼が戻ってきます。

もう一つ、運営者として見てきた限りでは、報酬の話は額面より手取りで考えている人のほうが息が長い。同じ10万円の仕事でも、仲介手数料が引かれる経路と引かれない経路では、年間で見ると差がはっきり出ます。仲介手数料が差し引かれない手数料0%の形で直接やり取りできる経路を一つ持っておくと、依頼する側も同じ予算でより多く頼めるようになり、結果として仕事が続きやすくなります。書類作成のように一度覚えれば繰り返し受けられる領域では、この構造の差がそのまま積み上がります。

取引の条件面では、報酬の支払いが遅れたときの備えも要ります。下請取引のルールを押さえておくと、発注書や契約書の段階で防げる問題が多いので、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにある必須項目のチェックリストを、受注時の確認用に使ってみてください。万一未払いが起きた場合の進め方は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で費用と手順が整理されています。会計や税務の知識を持つ人が法務書類の領域に広げていく道もあり、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】では、本業との両立の考え方が具体的に書かれています。

種類株主総会議事録は、作るだけなら一枚の書類です。ただし、その一枚が効力の条件になっている以上、書式より先に「そもそも必要か」「賛成は足りるか」「順番は合っているか」を確認する順番を守ってください。法令の原文はe-Gov法令検索で誰でも読めます。判断に迷う論点だけを専門家に持ち込めば、費用も時間も抑えられます。

よくある質問

Q. 種類株式を発行していれば、定款を変えるたびに種類株主総会が必要ですか?

必要とは限りません。法律が列挙した行為(株式の種類の追加、株式の内容の変更、発行可能株式総数の増加、株式の併合や分割、合併など)に当てはまり、かつその種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるときに限られます。判断に幅が出る部分なので、登記まで進める予定があるなら法務局か司法書士に事前に確認するのが確実です。

Q. 株主総会議事録と種類株主総会議事録は、一枚にまとめてもよいですか?

別々に作るのが原則です。出席する株主の範囲も決議に必要な賛成の数も違う、別の会議だからです。一枚にまとめるとどちらでどの決議が成立したのか読み取れなくなり、登記の申請でも会議ごとに議事録を添付する扱いになっています。複数の種類で決議が要る場合も、種類ごとに分けて作成してください。

Q. 種類株主総会の決議には、何割の賛成が必要ですか?

損害を及ぼすおそれがある行為についての決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。定款で出席の基準を3分の1以上まで下げることはできますが、賛成の割合を3分の2より下げることはできません。議案によってはさらに重い要件が適用されます。

Q. 議事録を作らないと、どうなりますか?

議事録を作らない、書くべき事項を書かない、事実と違うことを書いた場合は、100万円以下の過料の対象になると会社法に定められています。過料は会社ではなく取締役個人が支払うものです。また、議事録は会議の日から10年間本店に備え置く義務があり、株主と債権者はいつでも閲覧や写しの交付を請求できます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月24日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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