行政書士が独立したときの年収の実態|平均と中央値の差を読む


この記事のポイント
- ✓行政書士として独立した場合の年収の実態を
- ✓開業初年度に起きること
- ✓兼業という選択肢まで含めて整理しました
行政書士として独立したら年収はいくらになるのか。この疑問に対して、まず正直にお伝えしたいことがあります。この職業の年収は、平均値で語ると実態から大きくずれます。理由は、上位のごく一部が平均を引き上げる構造になっているからです。皆さんが知りたいのは「自分が独立したらどうなるか」でしょうから、この記事では平均ではなく分布の話をします。
私は43歳でメーカーを辞めて独立しました。資格は行政書士ではありませんが、独立して収入がどう立ち上がるかという構造は、士業でも同じです。最初の数か月がどうなるか、営業に何が必要か、固定費がどう効いてくるか。そのあたりの現実を、隠さずに書いていきます。
平均年収という数字が、なぜ実態とずれるのか
行政書士の年収について調べると、数百万円台の幅広い数字が出てきます。この幅の正体は、分布の形です。
この職業は、開業して自分で仕事を取る形が基本です。つまり、収入は営業の結果です。法人相手の許認可業務を継続的に受けている事務所と、開業したばかりで紹介案件を待っている個人事務所では、売上が桁で違います。この2つを平均すると、どちらの実態も表さない数字になります。
実際、実務に携わっている方からは、平均値と中央値の乖離について厳しい指摘が出ています。
まず無理です。自宅を事務所として登録して個人開業するお考えかと思いますが、どこかに広告を掲載すれば、ちょうどいい塩梅に仕事が舞い込むとお考えなら甘いです。そんなにうまくは行きません。どの方面を専門になさるのかは知りませんが、軌道に載せるまでは相応の営業努力が必要です。 行政書士の平均年収は600万円と言われますが、これはごく一部の成功者が平均を押し上げた結果であり、恐らく中央値は300万円くらいでしょう。また、開業者の7~8割が3年以内に廃業するとのデータもあります。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
この指摘のうち、数字の正確性については確かめようがない部分もあります。ただ、平均が上位に引かれているという構造の説明は、独立型の職業全般に当てはまります。会社員の給与のように分布が真ん中に集まる形ではなく、下側に厚く、上側に長く伸びる形になるのが、開業型の収入分布の特徴です。
ですから、独立を検討する段階で見るべき数字は平均ではありません。見るべきなのは、自分が受けられる業務の単価と、月に何件処理できるかという2つです。単価と件数の掛け算が、自分の売上見込みです。平均年収の数字を自分の見込みに代入するのは、実務的に意味がありません。
開業初年度に、実際に何が起きるか
独立の話で一番抜け落ちるのが、立ち上がりの期間です。ここを見積もり損なうと、能力とは無関係に資金が尽きます。
開業直後の売上は、知人と身内からの依頼で始まるのが典型です。これは行政書士に限りません。私が独立したときも、最初の2か月は前職の関係者からの依頼が中心でした。問題は、この層は有限だということです。知人経由の依頼は一巡すると止まります。そこから先、見知らぬ相手から依頼が来る状態に持っていくまでが、最初の壁です。
開業直後の実情については、次のような投稿があります。
行政書士 開業して1ヶ月。月収3万円。フットワーク軽く営業してます。(今のところ個人宅ばかりですが)ガソリン代もかなりかかりました。それなのに、身内と知り合いからいただいたお仕事2件で3万円。 早くも後悔ムードです。バイトをしようかと考え始めています。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
まず、安心してください。この状態は失敗ではありません。開業1か月で依頼が2件あったなら、動き出しとしては普通です。問題は、この水準が何か月続くかを事前に想定していたかどうかです。半年続くつもりで資金を用意していれば耐えられますが、3か月で軌道に乗る前提で用意していれば、4か月目に判断を迫られます。
私の経験から申し上げると、収入が読めるようになったのは独立して8か月目でした。それまでは、来月の売上が分からない状態が続きました。この期間に必要なのは、能力ではなく資金と精神的な余裕です。だからこそ、辞める前に副業として小さく始めておくことを強くお勧めしています。ゼロから立ち上げるのと、既に月数万円の入りがある状態から始めるのでは、判断の落ち着き方がまったく違います。
売上の中身を、業務分野ごとに分解する
年収を考えるには、売上の中身を分解する必要があります。行政書士の業務は幅が広く、分野によって単価も継続性もまったく違います。
許認可申請の分野は、1件あたりの報酬が比較的まとまります。建設業の許可、飲食店の営業許可、運送業の許可、産業廃棄物の関連手続きなどです。特に建設業許可は、更新や変更の届出が定期的に発生するため、一度取引が始まると継続しやすい性質があります。法人相手であることも多く、単価と継続性の両方が期待できる分野です。
相続と遺言の分野は、個人が相手になります。1件あたりの報酬は許認可より小さくなることが多く、継続性もありません。ただし件数の母数が大きく、地域に根ざした事務所であれば紹介が回りやすい分野です。
自動車の登録関係は、1件あたりの単価が低い代わりに、件数を処理できる分野です。ディーラーや販売店と継続的な関係を作れれば、安定した売上の土台になります。逆に、この分野だけで高い年収を作るのは、処理量の上限があるため難しい。
契約書や内容証明の作成といった書類作成業務は、単発が中心です。文書を書く仕事という点では、報酬の考え方が文筆系の業務と近い部分があります。文書作成を業務の柱にする場合の報酬水準の考え方は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっている業務委託の相場と見比べると、時間単価の感覚がつかめます。書類1通あたりの報酬を、かかった時間で割ってみてください。単価表の数字が、実際に何時間の仕事なのかが分かります。
重要なのは、分野を絞ることです。全分野を扱う事務所は、結局どの分野でも専門と見られません。単価が上がるのは、その分野で経験が蓄積し、判断が速くなったときです。開業時点で1つか2つに絞り、そこから広げる順序のほうが、立ち上がりが早くなります。
廃業率の話を、どう受け取るか
開業した行政書士の多くが数年で廃業するという話を、独立を考える方は必ず目にします。この数字の扱い方を書きます。
まず、廃業という言葉には2種類が混ざっています。1つは、生活が成り立たず撤退したケース。もう1つは、登録だけして実際には活動していなかったケースです。試験に合格したあと、会社員を続けながら登録だけしていて、更新時にやめる方は少なくありません。この2つを分けずに数えると、実態より厳しく見えます。
とはいえ、撤退が多い職業であることは事実です。理由は明確で、この仕事の難しさが法律知識ではなく営業にあるからです。試験勉強で身に付くのは前者です。後者は、独立してから一から覚えることになります。ここのギャップが、撤退の主な原因だと私は見ています。
営業と言っても、飛び込み訪問をしろという話ではありません。実務的には、他の専門職との関係づくりが軸になります。税理士、司法書士、社会保険労務士、不動産業者、建設業者。それぞれが、自分では扱えない手続きを日常的に抱えています。そこに入れるかどうかが、案件の流れを決めます。個人宅を回るより、はるかに効率が良い経路です。
もうひとつ、情報の出し方も営業です。自分の専門分野について、実務で聞かれることを整理して公開しておくと、探している人から連絡が来ます。この方法は時間がかかりますが、一度積み上がると継続して効きます。公開する文章の型を整えておくと効率が上がるので、文書作成の基礎を体系化しておくのは無駄になりません。ビジネス文書検定のような、社内外の文書の型を扱う資格の学習内容は、こうした情報発信にもそのまま使えます。
年収を伸ばしている人が、実際にやっていること
厳しい話が続きましたので、ここからは伸ばしている側の話をします。共通点は3つあります。
1つ目は、単発の手続きを継続の関係に変えていることです。建設業許可を取った会社には、決算変更届が毎年発生し、更新が定期的に来ます。許可を取った時点で終わりにせず、その後の手続きを一括で預かる形にすると、1社あたりの生涯売上が大きく変わります。営業のコストは新規獲得のほうが圧倒的に高いので、継続に持っていけるかどうかで収益性が変わります。
2つ目は、手続きをパッケージにしていることです。会社を立ち上げる方は、許可の申請だけでなく、設立、契約書の整備、補助金の情報、労務の手続きなど、複数の困りごとを同時に抱えています。自分が扱える範囲をまとめて提示し、扱えない部分は提携先に渡す。この形にすると、1件あたりの単価が上がり、相手の手間も減ります。
3つ目は、業務の効率化に投資していることです。同じ許認可を何度も扱うなら、必要書類の一覧、顧客への確認事項、進行の管理を仕組みにしておく。1件あたりの処理時間が半分になれば、同じ時間で倍の件数を扱えます。近年は、こうした事務作業の自動化を業務に取り入れる士業事務所が増えました。業務への技術活用の考え方についてはAIコンサル・業務活用支援のお仕事に、企業が何に困って外部に頼むのかが整理されています。自分の事務所の業務改善を考えるうえでも、参考になる視点だと思います。
ちなみに、年収と手取りは別です。これは次の節で詳しく書きますが、売上を伸ばすだけでは手取りは増えません。固定費の構造を先に押さえておく必要があります。
売上から手取りまでの、実際の引き算
独立して初めて驚くのが、売上と手取りの差です。会社員時代の感覚で計算すると、大きくずれます。
行政書士として開業すると、まず会に登録する必要があり、登録時の費用と、毎月の会費が発生します。これは仕事が1件もない月にも出ていきます。固定費という意味で、最初に把握しておくべき項目です。
次に、事務所の費用です。自宅を事務所にすれば抑えられますが、来客対応を考えると外に借りる選択もあります。地域によって幅が大きい部分ですが、月額で見ると固定費の中では最も重くなりやすい項目です。
そのほか、賠償責任に備える保険、専門書籍と法令の更新情報、業務ソフト、通信費、交通費が継続的に出ます。特に見落とされやすいのが交通費と時間です。役所への提出や現地確認で動く仕事は、移動時間が売上を生みません。1件あたりの報酬を移動時間まで含めて割り直すと、想定より時間単価が低いことに気付きます。
そして、社会保険と税金です。国民健康保険と国民年金を自分で払い、所得税と住民税を申告して納めます。事業が一定規模になると消費税の課税事業者になります。会社員時代は給与から引かれていたものを、自分で計算して払う側になります。
こうした引き算を全部済ませた残りが、生活に使える金額です。売上が年間500万円あっても、固定費と社会保険と税を引いた手取りは、会社員の年収400万円の手取りと同じか、それより下になることがあります。独立を考えるときは、売上の目標ではなく、手取りの目標から逆算してください。順序を逆にすると、働いているのに生活が苦しいという状態になります。
兼業という選択を、最初から視野に入れる
独立した行政書士が、他の収入源を持つことは珍しくありません。これは失敗の証ではなく、立ち上がり期の合理的な設計です。
兼業の形は3つあります。1つ目は、他の士業資格との兼業です。宅地建物取引士、社会保険労務士、司法書士などを併せ持つと、扱える手続きの範囲が広がり、1件あたりの単価が上がります。ただし、資格を追加する学習コストは大きいので、独立直後に始める話ではありません。
2つ目は、まったく別の業務との兼業です。文書作成の能力を活かしたライティング、法律知識を活かした企業向けの研修や講師、事務代行など。行政書士の仕事は依頼のタイミングが不規則なので、時間の空く期間に別の収入を入れられると、資金繰りが安定します。
3つ目は、勤務しながらの登録です。会社員として勤めながら登録し、休日に小さな案件を受ける形です。収入の基盤があるぶん、案件を選べます。安い仕事を断れるのは、実はかなり大きな利点です。急いでいると、単価の低い仕事で予定が埋まり、単価の高い案件を受ける余裕がなくなります。
どの形でも、事務作業を効率よく回す力が要ります。パソコンでの作業環境を整えておくことは投資として効きます。技術寄りのスキルを持つ方であれば、事務所の業務システムを自分で作るという選択もあり、その方面の技術の市場価値はソフトウェア作成者の年収・単価相場で確認できます。士業と技術の両方が分かる人は、実は非常に少ないので、差別化の材料になります。
独立前の1年で、準備しておくべきこと
ここまでの話を踏まえて、独立前にやっておくべきことを順番にまとめます。
第1に、資金の確保です。生活費と事業の固定費を合わせて、最低12か月分を用意してください。半年分では足りません。収入が読めるようになるまでの期間に幅があるためです。
第2に、専門分野の決定です。開業してから決めるのではなく、決めてから開業します。その分野の実務の流れ、必要書類、役所の運用、報酬の相場を、開業前に調べ尽くしておく。調べる過程で、その分野の事業者と接点を作れれば、それが最初の案件につながります。
第3に、案内する媒体の準備です。事務所のページ、名刺、業務の説明資料。依頼を検討する人が最初に見るものなので、開業日に揃っている状態にしておきます。内容は、扱う業務、報酬の目安、連絡方法の3点で十分です。
第4に、収入源の分散の設計です。行政書士の業務だけで立ち上げるか、別の収入と組み合わせるかを先に決めます。組み合わせる場合、その別の収入を独立前に作っておいてください。独立後に新しいことを2つ同時に立ち上げるのは、かなり厳しいです。
第5に、経歴の整理です。会社員としての経験は、専門分野を選ぶうえでも、営業でも武器になります。製造業にいた方は建設業や運送業の許認可で話が通じますし、金融にいた方は補助金や事業計画の話ができます。自分の職歴の何が使えるのかを言葉にしておいてください。整理の方法は職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】の棚卸しの手順が、そのまま応用できます。
報酬額を自分で決めるという、最初の難所
独立して最初につまずくのが、いくらで受けるかという判断です。会社員時代には考えなくてよかった部分なので、ここで迷う方が多い。
安く受ければ仕事が来るという考えは、実務では逆に働くことがあります。相場より大幅に安い見積もりは、経験が浅いと受け取られたり、後で追加料金が発生するのではと疑われたりします。依頼する側は、手続きの相場を調べたうえで問い合わせてきます。そこから大きく外れた数字は、安心材料になりません。
報酬を決める手順を書きます。まず、その手続きにかかる自分の作業時間を実測してください。書類の収集、作成、役所との事前相談、提出、補正対応、報告。全部を足した時間です。次に、自分が確保したい時間単価を決めます。固定費と目標手取りから逆算して出します。この2つを掛けた金額が、下限です。下限を割る依頼は、受けるほど資金が減ります。
そのうえで、相場との差を確認します。同じ手続きを扱う事務所の公開されている報酬額を見て、自分の下限が相場のどのあたりにあるかを把握する。下限が相場の上限を超えてしまう場合は、作業時間が長すぎるか、目標単価が高すぎるかのどちらかです。前者なら手順の整理で短縮できます。
依頼者の側が持っている年収のイメージも、価格感に影響します。実際、この職業の収入について次のような認識を持っている方もいます。
行政書士って平均年収どの程度でしょうか?100万円程度ですか?上位資格であり行政書士の資格も付属してる弁護士でも300万円前後だと聞いたんですが。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
この種の認識が広まっていると、報酬の説明に時間がかかります。対策は、金額の内訳を示すことです。何にどれだけの作業が必要で、なぜその金額になるのかを書面で示す。内訳がある見積もりは、金額の交渉ではなく作業範囲の相談になります。値引き交渉を避ける最も確実な方法は、内訳の提示です。
試験に合格してから、開業までにやること
合格後、すぐに開業できるわけではありません。手続きと費用の流れを押さえておきます。
まず、業務を行うには登録が必要です。事務所を置く都道府県の会を経由して登録します。登録には申請書類のほか、事務所の要件を満たしていることの確認が入ります。自宅を事務所にする場合、業務の独立性が保てる状態かを見られます。生活空間と業務空間の区分、鍵のかかる書類の保管場所、来客への対応。このあたりは会によって運用が異なるので、事前に確認してください。
費用は、登録時に一括で発生する分と、その後毎月かかる分に分かれます。一括の分は登録手数料と入会金などで、まとまった金額になります。毎月の分は会費で、仕事の有無に関係なく出ていきます。この毎月の固定費を、資金計画の最初に入れておいてください。
登録の前後でやっておくとよいのが、実務の型の入手です。試験の知識と、実際の申請書の書き方は別物です。研修の機会は会が用意しているほか、先輩の事務所を訪ねて話を聞く、書式集を揃える、といった手段があります。最初の1件を受ける前に、その手続きの流れを一度通しで追っておくと、事故が減ります。
もうひとつ、事務所の体制です。連絡手段を電話だけにすると、外出中に取り逃がします。問い合わせを受ける経路を複数用意し、記録が残る形にしてください。誰から、いつ、何の相談が来たかを残しておくことは、後で案件の傾向を分析するときの材料になります。開業から1年分の問い合わせ記録があれば、自分のところに何の相談が集まるのかが見えてきます。その傾向が、伸ばすべき専門分野を教えてくれます。
地域によって、稼ぎ方の前提が変わる
同じ資格でも、事務所を置く場所で収入の作り方が変わります。ここは意外と語られないので書いておきます。
都市部では、事業者の数が多く、許認可の案件の母数が大きい。一方で、同じ手続きを扱う事務所も多いため、価格と専門性の両面で比較されます。都市部で立ち上げる場合、分野を狭く絞って、その分野で探されたときに見つかる状態を作るのが現実的です。広く扱うと、埋もれます。
地方では、事業者の数が少ない代わりに、対応できる事務所も少ない。ひとつの分野に絞りすぎると案件が足りなくなるため、複数分野を扱う形になりやすい。そのぶん、地域内での紹介が回りやすく、一度信頼を得れば継続します。移動距離が長くなるので、交通費と移動時間を報酬に織り込む設計が必要です。
もうひとつ、オンラインでの受任をどこまで取り入れるかという軸があります。手続きの種類によっては、対面が必須ではないものもあります。書類のやり取りと面談を遠隔で完結できる分野を持っていれば、地理的な制約から外れられます。この形を取っている事務所は、地方にいながら都市部の依頼を受けています。ただし、役所への提出や現地確認が必要な手続きは動かせません。自分が扱う分野のうち、どこまで遠隔で完結できるかを整理しておくと、対象地域を広げられます。
私が独立して実感したのは、住んでいる場所と仕事の範囲が必ずしも一致しないということです。技術文書の仕事は、依頼元がどこにあるかをほとんど意識しません。士業の場合は手続きの性質上、完全に切り離すことはできませんが、遠隔でできる部分を増やすほど、母数が増えます。3割でも遠隔化できれば、探せる範囲はかなり変わります。
市場を見てきた立場からの観察
在宅と業務委託の市場を20年運営してきた立場から、独立して続く人と続かない人の差について書きます。行政書士に限らず、共通する話です。
続く人は、単発の仕事をこなす関係ではなく、この人に任せると楽だという関係を作っています。許可を1件取って終わりではなく、その後の届出も、関連する相談も、自分のところに来る状態を作る。そのために必要なのは、価格の安さではありません。連絡が早いこと、進行状況を相手が聞く前に伝えること、できないことを早めに言うことです。運営者として見てきた限りでは、継続率の差は専門知識の差より、この部分の差で説明できることが多いです。
もうひとつ、報酬の構造についても触れておきます。仲介が入る取引と、直接やり取りする取引では、同じ契約金額でも手元に残る額が違います。手数料0%の直接取引であれば、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。双方の条件が良くなるので、関係が長く続きます。士業の場合も、紹介経路に依存しすぎると、この構造の不利を受け続けることになります。自分で直接相談を受けられる入口を、時間をかけてでも作っておく価値があります。
最後に、年収の見方をもう一度整理します。行政書士として独立した場合の年収は、平均値では測れません。自分が扱う分野の単価、月に処理できる件数、継続案件の割合、固定費の合計。この4つで決まります。そして立ち上がりには時間がかかります。皆さんには、平均年収の数字を追うのではなく、自分の単価と件数を具体的に見積もることから始めていただきたいと思います。準備さえすれば、40代からでも遅くありません。私自身がそうでした。
よくある質問
Q. 行政書士として独立したら、年収はどのくらいになりますか?
平均値では測れません。この職業の収入分布は下側に厚く、上側に長く伸びる形をしており、上位の一部が平均を引き上げています。実際に見るべきなのは、自分が扱う分野の1件あたりの報酬と、月に処理できる件数です。この掛け算が売上の見込みになります。開業初年度は、知人からの依頼が中心で数万円台という例も普通にあります。
Q. 独立するのに、どのくらいの資金が必要ですか?
生活費と事業の固定費を合わせて、最低12か月分が目安です。半年分では足りません。収入が読めるようになるまでの期間に幅があるためです。固定費としては、会への登録費用と月々の会費、事務所の費用、賠償責任の保険、書籍と法令の更新、業務ソフト、通信費、交通費が継続して発生します。
Q. 開業後、何から営業すればよいですか?
他の専門職との関係づくりが最も効率が良い経路です。税理士、司法書士、社会保険労務士、不動産業者、建設業者は、自分では扱えない手続きを日常的に抱えています。並行して、自分の専門分野について実務で聞かれることを整理して公開しておくと、探している人から連絡が来ます。個人宅への訪問営業は、労力に対して効率が低い方法です。
Q. 他の仕事と兼業しても問題ありませんか?
問題ありません。立ち上がり期の合理的な設計です。文書作成能力を活かしたライティング、法律知識を活かした研修や講師、事務代行などが組み合わせやすい選択肢です。勤務しながら登録し、休日に案件を受ける形もあります。収入の基盤があると単価の低い仕事を断れるため、結果的に条件の良い案件を受けやすくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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