扶養内で働く場合の社会保険の扱い

前田 壮一
前田 壮一
扶養内で働く場合の社会保険の扱い

この記事のポイント

  • 扶養内で働くときの社会保険は
  • 年収130万円だけで決まりません
  • 勤務先の規模と働く時間で加入対象が変わり

まず、安心してください。扶養内で働くときの社会保険は、複雑に見えて、判断のポイントは2つしかありません。「年間の見込み収入がいくらか」と「勤務先が社会保険の加入対象になる規模かどうか」です。この2つを順番に確かめれば、自分がどの扱いになるかは決まります。

ただ、ひとつ気をつけてほしいことがあります。この分野は、ここ数年で基準が続けて動いています。2026年10月と2027年10月にも変更が予定されていて、いま扶養内に収まっている人が、働き方を変えていないのに対象になる場面が出てきます。古い記事の数字をそのまま信じると、思っていたのと違う結果になります。この記事では、公的な資料で今日時点の内容を確認しながら整理していきます。

扶養内という言葉が意味しているのは、保険料を自分で払わなくていい状態

社会保険の扶養内とは、家族が加入している健康保険に、自分の保険料負担なしで入っている状態のことです。会社員や公務員の配偶者であれば、国民年金についても第3号被保険者という扱いになり、こちらも保険料を納める必要がありません。

つまり、扶養内にいる間は、健康保険証が使えて、将来の老齢基礎年金にも期間が積み上がっていくのに、自分の財布からは1円も出ていきません。これがどれだけ有利な状態かは、外れたときの金額を見るとよく分かります。国民年金の保険料は全国一律で、日本年金機構は2026年度(令和8年度)の金額を1カ月あたり17,920円としています。ここに国民健康保険の保険料が加わります。

だから、扶養内で働きたいという希望そのものは、まったく合理的です。問題は、その枠の輪郭がどこにあるかを正確に知らないまま働いてしまうことにあります。

扶養内でいられる収入の基準は年間130万円未満

まず収入の側です。日本年金機構が示している被扶養者の認定要件は、次のとおりです。

(1)収入要件 年間収入(※1)130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ 同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(※2) 別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満 出典: nenkin.go.jp

ここで皆さんに押さえてほしいのは、この年間収入が、去年いくら稼いだかではないという点です。年金機構は、被扶養者に該当する時点と認定された日以降の1年間の見込み収入額だと説明しています。給与だけであれば月額108,333円以下、雇用保険などの受給者であれば日額3,611円以下が目安になります。

月額で考える習慣をつけておくと、失敗が減ります。年収ベースで「まだ100万円だから大丈夫」と思っていても、月の収入が108,333円を超える状態が続いていれば、その時点で見込みは130万円を超えています。

もうひとつ、年齢による例外があります。2025年10月1日以降に認定を受ける人で、19歳以上23歳未満の場合(配偶者は除く)は、この基準が年間収入150万円未満に変わりました。年齢の判定は、認定日が属する年の12月31日時点で行います。大学生のお子さんを扶養に入れている家庭は、ここが広がったことを知っておくと役に立ちます。

そして2026年4月1日以降は、判定のやり方にも選択肢が増えました。扶養に入る人の収入が給与だけの場合、労働契約の内容によって年間収入を判定できるようになっています。労働条件通知書や雇用契約書と、給与収入だけである旨の申立書を添えて出す形です。実際の入金額を毎月追いかけなくても、契約の内容で見てもらえるという意味で、働く側にとっては見通しが立てやすくなりました。

130万円未満でも、扶養を外れて社会保険に入る場合がある

ここが、扶養内社会保険という言葉で調べている人がいちばん引っかかるところです。収入が130万円に届いていなくても、勤務先の社会保険に加入する対象になることがあります。

日本年金機構の案内では、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く人は、一定の条件をすべて満たすと健康保険と厚生年金保険の加入対象になるとされています。条件の中心にあるのが、週の所定労働時間が20時間以上であることと、所定内賃金が月額8.8万円以上であることです。なお、2カ月以内の期間を定めて使用される人や臨時に使用される人などは、加入の対象から除かれます。

月額8.8万円は、年に直すとおよそ105万6,000円です。130万円よりかなり手前にあります。これが「106万円の壁」と呼ばれてきた数字の正体です。

つまり、扶養内で働きたい人にとって、確かめる順番はこうなります。まず勤務先の規模を確かめる。51人以上なら、週の所定労働時間が20時間を超えていないかを確かめる。ここに当たるなら、収入が130万円未満でも扶養からは外れて、勤務先の社会保険に入ることになります。51人未満であれば、130万円の基準だけを見ればよい。

勤務先の規模は、正社員と、正社員の4分の3以上の労働時間で働いている従業員の数で数えます。厚生労働省は、法人の場合は法人全体の従業員数で判断すると案内しています。店舗が小さくても、全国にチェーン展開している会社であれば対象になる、ということです。パート先の人数を数えて判断しないでください。

2026年10月と2027年10月に、基準が動く

いま扶養内に収まっている人にとって、いちばん影響が大きいのがこの部分です。

※最低賃金以上で週20時間以上働く場合は、所定内賃金が月額8.8万円以上となるため、この要件は令和8年10月に撤廃されます。また、最低賃金の減額特例(最低賃金法第7条)の対象者が健康保険・厚生年金保険に任意加入することができる制度が令和8年10月に始まります。なお、2カ月以内の期間を定めて使用される方や臨時に使用される方等は健康保険・厚生年金保険の加入対象から除かれます。 出典: nenkin.go.jp

短くまとめると、月額8.8万円という賃金の要件が2026年10月になくなります。理由も書かれているとおりで、最低賃金が上がった結果、週20時間働けばどのみち8.8万円を超えるようになったからです。要件として意味を持たなくなったので外す、という整理です。

結果として、2026年10月以降は、51人以上の企業で週20時間以上働いていれば、賃金の額にかかわらず加入対象になります。いま「月8.8万円を超えないように」とシフトを調整している人は、その調整が効かなくなります。見るべき数字が、金額から時間に変わるということです。

さらに、2027年10月からは企業の規模の範囲が広がります。年金機構は、対象となる企業等の範囲が「厚生年金保険の被保険者数が36人以上の企業等」に拡大されると案内しています。いま51人未満で対象外だった勤務先が、順に対象になっていきます。

この2つは、自分が何もしなくても訪れる変化です。扶養内で働き続ける前提で家計を組んでいるなら、いまのうちに勤務先の人数と自分の週あたりの所定労働時間を確認しておいてください。

扶養から外れて勤務先の社会保険に入ると、何が増えるか

保険料の負担が増える話ばかりが先に立ちますが、リスクだけを書くのはフェアではないので、増える側も書きます。

厚生年金保険と健康保険の保険料は、事業主と本人が半分ずつ負担します。年金機構はこれを労使折半と書いています。同じ金額の保障を自分ひとりで買う場合と比べれば、負担の構造がまったく違います。

年金は2階建てになります。国民年金の老齢基礎年金の上に、厚生年金が乗ります。扶養内にとどまっていた場合、第3号被保険者として老齢基礎年金の期間は積み上がりますが、その上には何も乗りません。ここが長い目で見たときの差になります。

健康保険の側では、休業中の保障が付きます。業務外の病気やけがで会社を休んだ場合、休んだ期間のうち最初の3日を除いた4日目から最大1年6カ月、給与の3分の2の金額を傷病手当金として受け取れます。出産のために休んだ場合も、産前42日から産後56日までの期間、給与の3分の2が出産手当金として出ます。さらに、産前産後休業や育児休業を取ったときの保険料免除、休業後の標準報酬月額の改定、養育期間中の特例措置といった子育て支援の仕組みも使えるようになります。

ここで、比較の相手を間違えないでください。扶養を外れる先には2つの道があり、行き先によって意味がまるで違います。国民健康保険と国民年金に移る場合は、保険料の負担が増えるのに、受け取れる保障は基本的に変わりません。年金機構自身が「保障内容に変化はありません」と書いています。一方、勤務先の社会保険に入る場合は、保険料の半分を会社が持ったうえで保障が増えます。

だから、扶養の枠をどうしても超えてしまう状況にあるなら、中途半端なところで止まるより、勤務先の社会保険に入る側まで行ったほうが条件はよくなります。正直に言って、ここを知らずに130万円の手前で止め続けている人は、かなり多いと感じています。

扶養内にとどまりたい場合に、見落とされやすいところ

働き方を変えず、扶養内を維持したい人向けに、実務で引っかかりやすい点を挙げておきます。

1つ目は、収入に何を含めるかです。社会保険の扶養の判定では、税金で非課税とされている収入も対象に入ります。年金機構は、被扶養者の収入には雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれると明記しています。所得税の計算で非課税だから数えなくていい、とはなりません。通勤手当のような手当をどう扱うかは、加入している健康保険の保険者によって判断が分かれるところなので、勤務先を通じて確かめておくのが確実です。

2つ目は、失業給付との関係です。退職して配偶者の扶養に入り、そのあとハローワークで手続きをして基本手当を受け取り始める人は珍しくありません。年金機構は、待期期間中でも収入要件を満たしていれば扶養として認定できるが、基本手当(日額3,612円以上)の支給が始まったら扶養削除の届出が必要になるとしています。支給が終わったら、また扶養に入り直す形になります。

3つ目は、勤め先が複数ある場合です。130万円という収入の基準は、すべての収入を合わせて数えます。一方、勤務先の社会保険に入るかどうかの判定は、それぞれの勤務先ごとに行われます。2か所で週15時間ずつ働いていても、それだけでは加入対象になりません。合算のルールは働き方によって扱いが変わることがあるので、2か所以上で働いている人は年金事務所で確認してください。

4つ目は、同居か別居かの条件です。収入が130万円未満であっても、同居している場合は被保険者の収入の半分未満、別居している場合は被保険者からの仕送り額未満という条件があります。共働きで、どちらの扶養に入れるかを決める場面では、年間収入の多いほうの被扶養者として認定されるという扱いになっています。

業務委託や在宅ワークで扶養内に収める場合

パート以外の働き方をしている人向けに、数え方の違いを書いておきます。

年金機構は、自営業などによる収入がある場合、その事業を行うために必要な経費を控除した額を収入額とする、と説明しています。添付書類として直近の確定申告書の写しを求める扱いです。つまり、受け取った報酬の総額ではなく、経費を引いたあとの金額で判定されます。

ただ、ここには落とし穴があります。税務上は経費として認められる支出でも、扶養の判定では差し引けないことがあります。どこまでを必要経費と見るかは、加入している健康保険の保険者の判断によります。協会けんぽと健康保険組合で扱いが違うことも、組合ごとに基準が違うこともあります。在宅の仕事を始める前に、扶養していただいている配偶者の勤務先を通じて、保険者の基準を確認しておいてください。

もうひとつ、業務委託で働く場合、勤務先の社会保険の適用拡大とは関係がありません。週20時間や企業規模の話は、雇用されて働く人の制度だからです。業務委託だけで働いている限り、見るのは130万円の基準だけになります。裏を返せば、厚生年金に入る道がないということでもあります。将来の年金を厚くしたいなら、国民年金の付加保険料(月額400円)を上乗せする、国民年金基金やiDeCoを使うといった別の手段を検討することになります。

収入の設計そのものを考え直す段階なら、職種ごとの単価を知っておくと判断が早くなります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場ソフトウェア作成者の年収・単価相場には、職種別の相場がまとまっています。同じ時間を使うなら単価の高い仕事に移したほうが、扶養内の枠に収めながら手元に残る金額を増やせます。

仕事の方向を変える選択肢を探しているなら、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、企業側の需要が伸びている領域の仕事内容がまとまっています。書類作成の仕事を安定させたい場合は、ビジネス文書検定のように形式を体系的に学べる資格が、提案の裏づけになります。

経費や保険料の扱いを帳簿の面から整理したい人は、個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法が参考になります。

手続きは誰がするのか。自分でやる部分と会社がやる部分

扶養内の社会保険は、手続きの主体が場面ごとに変わります。ここを整理しておくと、どこへ連絡すればいいか迷いません。

扶養に入るときの手続きは、扶養してくれる側(被保険者)の勤務先を通じて行います。年金機構の案内では、被扶養者の認定にかかる届出は事実発生から5日以内に、事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出することとされています。届書は健康保険の被扶養者異動届と、国民年金第3号被保険者関係届が一体になった様式です。つまり、健康保険と国民年金の手続きが1枚で済む作りになっています。

添付書類としては、続柄を確認する書類と、収入要件を確認する書類が必要です。退職して扶養に入る場合は退職証明書か雇用保険被保険者離職票の写し、失業給付を受けている場合や受給が終わった場合は雇用保険受給資格者証か受給資格通知の写し、年金を受け取っている場合は年金額の改定通知書などの写し、自営や不動産の収入がある場合は直近の確定申告書の写しです。何を求められるかは事情で変わるので、勤務先の担当者に自分の状況を伝えて、必要なものを先に聞いておくと一度で済みます。

扶養を外れるときの手続きも、同じく勤務先を通じて行います。こちらは提出時期が「その都度」とされていて、期限が切られていません。だからこそ後回しにされやすいのですが、遅れると保険証を無効な状態で使ってしまう事故につながります。

一方、自分で市区町村の窓口へ行く場面もあります。扶養を外れて勤務先の社会保険にも入らない場合の、国民年金第1号被保険者への切り替えです。年金機構は、住所地の市区役所または町村役場で手続きし、提出期限を退職日の翌日から14日以内としています。このときは国民健康保険の加入手続きも必要になるので、同じ日にまとめて済ませるのが効率的です。

第3号被保険者の届出漏れは、あとから効いてくる

扶養内で働く人にとって、いちばん静かに進行する問題がこれです。

国民年金の第3号被保険者は、自分で保険料を納める必要がありません。保険料を払っていないのに、払ったのと同じように期間が記録されます。ありがたい制度なのですが、裏を返せば「記録が正しく付いているか」を自分で確認しにくい制度でもあります。

起きやすいのは、配偶者が転職や退職をしたときです。年金機構は、健康保険と厚生年金に加入していた人が退職して自営業者などになった場合、その扶養に入っていた人は国民健康保険等へ、国民年金は第3号被保険者から第1号被保険者へ切り替える必要があると案内しています。配偶者が転職して引き続き厚生年金の適用事業所に勤めた場合は、条件を満たせば再び被扶養者となり、国民年金も引き続き第3号のままなので手続きは要りません。ただし、配偶者が共済組合等の事業所へ転職した場合は、第3号被保険者の種別確認の手続きが必要です。

この切り替えが漏れると、記録上は第3号のままなのに、実態は第1号だったという状態になります。あとから判明すると、その期間の保険料を納めることになります。月17,920円で計算すると、1年分で21万5,040円です。数年分たまってから気づくケースもあります。

防ぐ方法はひとつです。配偶者の勤め先が変わったとき、自分の年金の種別がどうなるかを、そのタイミングで確認する。ねんきんネットや、毎年届くねんきん定期便で、自分の記録に空白がないかを見る習慣をつけておいてください。

年に一度、扶養の条件を満たしているか確認される

扶養内で働いている人の多くが、年に一度この書類を受け取ります。被扶養者資格の再確認です。

健康保険の保険者が、扶養に入っている家族がいまも条件を満たしているかを確かめるために、勤務先を通じて書類を配ります。ここで収入が基準を超えていることが分かると、さかのぼって扶養を外れる扱いになります。

問題は、書類が来てから慌てて計算する人が多いことです。そのときにはすでに、超えている期間が数カ月分たまっています。さかのぼって外れると、その間の医療費のうち健康保険が負担した分を返すよう求められることがあります。

対策は、難しいことではありません。毎月の収入を記録しておくだけです。給与だけの人は月額108,333円、業務委託を含む人は経費を引いたあとの金額で、その月の分を書き足していく。表計算のシートを1枚作って、振り込みのたびに入力するだけで足ります。年末にまとめて集計しようとすると、そのときには手遅れになっていることがあります。

もうひとつ、記録を残しておくと、再確認の書類が来たときに説明が早く終わります。契約書と支払調書、通帳の入金履歴をひとつのフォルダにまとめておいてください。

手取りの動き方を、段階で把握しておく

損得の金額は断言できません。住んでいる市区町村、加入する健康保険、家族の構成で結論が変わるからです。ただ、動き方の形は共通しているので、段階として押さえておくと自分の位置がわかります。

第1段階は、扶養内にとどまる範囲です。保険料の自己負担はゼロなので、稼いだ分がほぼそのまま手取りになります。

第2段階は、扶養を外れて国民健康保険と国民年金に入る場合です。国民年金の月17,920円に国民健康保険の保険料が加わり、収入が増えても手取りの増え方がいったん鈍ります。世間で働き損と呼ばれているのは、この区間のことです。ただ、ここは抜けられます。収入が増えていけば、保険料の増え方より収入の増え方が上回り、手取りは再び伸びていきます。

第3段階は、勤務先の健康保険と厚生年金に加入する場合です。保険料の半分を会社が負担するため、同じ収入で比べたときの自己負担は第2段階より軽くなることが多くなります。そのうえで傷病手当金と出産手当金が使えて、将来の年金も増えます。

判断の順序としては、まず第3段階に行けるかどうかを確かめる。行けないなら、第2段階をどれくらいの速さで抜けられるかを見る。抜けられないなら第1段階にとどまる。この順で考えると、迷う時間が短くて済みます。

そして、忘れられやすいのが、扶養してくれている側の税金です。配偶者が扶養の枠を超えると、養っている側の配偶者控除や配偶者特別控除が減ることがあります。自分の手取りだけで計算すると、世帯全体では別の結果になります。源泉徴収票を2人分そろえて、世帯としての数字を一度出してみてください。

税金の扶養は別の制度。基準も金額も違う

社会保険の話をしていると必ず混ざってくるのが、税金の扶養です。名前は同じでも、別の制度なので、基準も動き方も違います。

国税庁の配偶者控除の解説によると、配偶者控除の対象になる配偶者は、年間の合計所得金額が62万円以下である必要があります。給与だけの場合は、給与収入が136万円以下です。これは2026年12月1日に施行され、2026年分から適用される金額です。2025年分は合計所得58万円以下(給与収入123万円以下)、2024年分以前は48万円以下(給与収入103万円以下)でした。

長く語られてきた103万円という数字は、もう現在の基準ではありません。2年続けて動いているので、去年の記事を読んでいると、それだけでずれます。

控除額は、養っている側の合計所得金額によって変わります。合計所得900万円以下なら38万円、900万円超950万円以下なら26万円、950万円超1,000万円以下なら13万円です。合計所得が1,000万円を超えると配偶者控除は受けられません。

そして、この枠を超えても、いきなりゼロにはなりません。配偶者の合計所得が62万円超133万円以下であれば、配偶者特別控除の対象になります。控除額は最高38万円で、配偶者の所得が増えるにつれて段階的に減っていきます。

ここで大事なのは、税金の基準と社会保険の基準が連動していないことです。税金の側で配偶者特別控除がまだ使える状態でも、社会保険の130万円を超えていれば扶養からは外れます。「控除が残っているから扶養のままだろう」という読み違えが、あとからの保険料の請求につながります。

個別の金額や、給与以外の収入がある場合の扱いは、事情によって結論が変わります。数字が近いところで迷ったら、税務署か市区町村の税の窓口で確かめてください。

枠の内側で選べることは、まだ残っている

扶養内にとどまると決めた場合でも、できることはあります。制度の枠は収入の上限を決めているだけで、その収入をどう作るかまでは決めていないからです。

同じ130万円でも、時給1,100円で年間1,180時間働くのと、時給2,000円で年間650時間働くのとでは、残る時間がまったく違います。空いた時間を学び直しに充てれば、次の年の単価がまた変わります。枠を守ること自体は変えなくても、時間あたりの単価を上げる方向には動けます。

年金の上積みも、枠の内側でできます。扶養を外れて国民年金第1号被保険者になった場合は、月額400円の付加保険料を上乗せする道があります。第3号被保険者のままであれば、この付加保険料は使えませんが、iDeCoのような自分で積み立てる仕組みは、第3号被保険者でも利用できます。扶養内で働く期間が長くなるほど、将来の年金が老齢基礎年金だけになりやすいので、別の積み上げを1つ持っておくと安心感が違います。

そして、制度の基準が動く年には、必ず一度計算し直してください。2026年10月と2027年10月は、自分が何もしなくても扱いが変わりうる時期です。勤務先の人数、自分の週あたりの所定労働時間、月ごとの見込み収入。この3つを手帳に書き出しておけば、そのときに迷いません。

市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークと業務委託の市場を20年運営してきた立場から言えば、扶養内の枠を守ることそのものが目的になってしまうと、数年後に選択肢が減ります。理由は単純です。枠に収まる範囲で受けられる仕事は、どうしても小さく切り出された作業になり、そこにとどまる限り単価が上がる場面が来ないからです。

長く続いている人の共通点は、作業の量を増やしたのではなく、任される範囲を広げているところにあります。原稿を書くだけだった人が構成から入るようになる。入力を請けていた人が、集計の設計まで引き受けるようになる。1時間あたりの報酬が変わるのは、この移行が起きたときです。枠を守りながらでも、この移行はできます。

もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、間に何社も入る取引と、発注者と直接つながる取引では、同じ仕事でも手元に残る額がはっきり違います。中間の手数料が乗らない分、発注側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなる。手数料0%の直接取引が効いてくるのは、限られた時間でどれだけ残せるかを問われる、まさに扶養内の働き方です。

制度の基準は今後も動きます。2026年10月に賃金の要件が消え、2027年10月に企業の規模が広がる。枠に合わせて働き方を調整し続けるやり方は、そのたびに組み直しが必要になります。枠の内側で単価を上げる方向に少しずつ寄せておくと、基準が動いたときの揺れが小さくなります。

よくある質問

Q. 年収130万円を超えなければ、必ず扶養内でいられますか?

いいえ。厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業で、週の所定労働時間が20時間以上などの条件を満たすと、収入が130万円未満でも勤務先の健康保険と厚生年金に加入する対象になります。まず勤務先の規模を確かめ、次に週の所定労働時間を確かめてください。企業の規模は法人全体の従業員数で判断します。

Q. 月8.8万円を超えないようにシフトを調整すれば大丈夫ですか?

2026年10月からは、その調整が効かなくなります。日本年金機構は、最低賃金以上で週20時間以上働けば所定内賃金は月8.8万円以上になるため、この要件を令和8年10月に撤廃すると案内しています。以降は金額ではなく、週の所定労働時間が判断の軸になります。

Q. 扶養の判定に使う収入には、失業給付も含まれますか?

含まれます。日本年金機構は、被扶養者の収入には雇用保険の失業等給付、公的年金、傷病手当金や出産手当金も含まれると明記しています。待期期間中は収入要件を満たしていれば扶養のままで構いませんが、日額3,612円以上の基本手当の支給が始まったら扶養を外れる届出が必要です。

Q. 業務委託の収入は、そのままの金額で判定されますか?

いいえ。日本年金機構は、自営業などによる収入額は事業を行うために必要な経費を控除した額とし、直近の確定申告書の写しを添付書類としています。ただし、どこまでを経費と認めるかは加入している健康保険の保険者によって判断が分かれるため、始める前に勤務先を通じて基準を確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月14日最終更新:2026年9月23日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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