任意継続の社会保険料はどう決まるか|計算式と国保との比較


この記事のポイント
- ✓任意継続の社会保険料は退職時の標準報酬月額と保険者の平均額のどちらか低い額で決まります
- ✓保険料が在職中の2倍になる理由
- ✓国民健康保険との比べ方
退職が決まって、健康保険をどうするか調べている人が最初につまずくのが任意継続の保険料です。「在職中の2倍になる」と書かれている記事もあれば「上限があるから思ったより安い」と書かれている記事もあって、結局いくらなのかが分からない。両方とも正しいのですが、説明が足りていません。
結論から書きます。任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額と、加入している保険者の全被保険者の標準報酬月額の平均額を比べて、低いほうに保険料率を掛けて計算します。そして会社負担がなくなるため、掛け算の結果は全額が自分の負担になります。給与が高かった人は上限で止まるので2倍になりません。給与が平均以下だった人は、きれいに2倍になります。この違いが、記事によって説明が変わる理由です。
私はEC運営の支援とSNS運用でフリーランスをしています。数字で判断するのが仕事のやり方なので、この記事も制度の建前より計算式を先に出します。自分の給与明細を1枚用意して読んでください。それだけで答えが出ます。
任意継続とはどんな制度か。2年だけ使える橋渡し
まず制度の枠を確認します。任意継続被保険者制度は、会社を辞めた後も、それまで入っていた健康保険に引き続き加入できる仕組みです。協会けんぽでも健康保険組合でも、この制度があります。
条件は2つです。第1に、退職の日までに継続して2か月以上の被保険者期間があること。第2に、退職日の翌日から20日以内に申請すること。この20日という期限が非常に短いので、退職が決まった時点で試算を始める必要があります。期限を過ぎると、原則として任意継続は選べません。国民健康保険か、家族の被扶養者になるかの二択になります。
加入できる期間は最長2年です。2年を過ぎると自動的に資格を失い、その時点で国民健康保険に入るか、再就職して勤務先の健康保険に入るか、家族の被扶養者になるかを選ぶことになります。つまり、任意継続は「次の形が決まるまでの橋渡し」として設計された制度です。
ここで重要な誤解を1つ解いておきます。任意継続は健康保険の制度であって、年金は対象になりません。会社員だった人は厚生年金に入っていますが、退職すると厚生年金の資格は失われ、国民年金の第1号被保険者になります。任意継続を選んでも、この切り替えは必要です。市区町村の窓口で国民年金の手続きをしてください。「社会保険をそのまま継続できる」と書いてある説明を見て、年金も含まれると思い込む人がいます。含まれません。
雇用保険と労災保険も対象外です。退職すればどちらも終わります。失業給付を受ける手続きは、ハローワークで別に進めます。継続されるのは健康保険の部分だけだと覚えておいてください。
給付の内容は、在職中とほぼ同じです。医療費の自己負担割合は変わらず、高額療養費も使えます。被扶養者の制度も続くので、家族を扶養に入れたままにできます。ただし、傷病手当金と出産手当金は原則として対象外になります。在職中から受けていた傷病手当金を継続して受けられるケースはありますが、退職後に新たに病気になった場合の手当は出ません。ここは在職中との大きな違いです。
保険料はどう決まるのか。2つの上限で決まる
計算式を分解します。健康保険の保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けて求めます。在職中はこの結果を会社と本人が半分ずつ負担していました。任意継続では会社負担がなくなるので、全額が自分の負担になります。
つまり、給与明細に書かれている健康保険料の欄の額を2倍すると、任意継続の保険料の目安が出ます。ここまでが「2倍になる」という説明の中身です。
しかし、これには上限があります。任意継続の保険料計算に使う標準報酬月額は、次の2つのうち低い額になります。1つは退職時の標準報酬月額、もう1つは加入している保険者の全被保険者の標準報酬月額の平均額です。協会けんぽの場合、この平均額は年度ごとに見直され、近年は30万円台の水準で推移しています。
この上限が効くのはどういう人か。退職時の標準報酬月額が平均額を超えていた人です。たとえば標準報酬月額が50万円だった人は、上限の30万円台で計算されます。在職中の保険料の2倍にはならず、実際にはそれより低い額になります。逆に、標準報酬月額が20万円だった人は上限に達しないので、素直に2倍になります。
つまり、任意継続が有利になるのは給与が高かった人です。ここを知らずに「2倍になるなら国保のほうが安いはず」と決めつけて、実際には任意継続のほうが安かったというケースが起きます。給与が高かった人は必ず試算してください。
なお、健康保険組合に加入していた場合は、規約によってこの上限を設けない扱いにしているところもあります。2022年1月の法改正で、組合が規約で定めれば退職時の標準報酬月額をそのまま使えるようになりました。大企業の組合健保に入っていた人は、自分の組合がどちらの扱いかを確認してください。上限がない場合、高給だった人の保険料は想定よりかなり高くなります。
40歳から64歳までの人は、介護保険料も加わります。これも全額自己負担です。39歳と40歳では同じ給与でも負担が変わるので、40歳が近い人は注意してください。
料率の話も補足します。協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに決まっていて、毎年度見直されます。全国平均は9.90%の水準で、地域による開きがあります。
地域によって最大1.34%の開きがあります。実際の保険料は、この率を会社と従業員で折半(半分ずつ負担)して支払います。正確な料率は、会社(事業所)の所在地がある都道府県の支部情報を確認してください。 出典: biz.moneyforward.com
任意継続の場合、この折半がなくなるという点が計算のすべてです。料率そのものは在職中と同じものが使われます。
実務的な確認方法を書きます。一番早いのは、退職する会社の総務や人事に「任意継続にした場合の保険料はいくらになりますか」と聞くことです。会社は標準報酬月額を把握しているので、その場で答えてくれます。協会けんぽの場合は、都道府県ごとの保険料額表が公開されているので、自分の標準報酬月額の行を見れば全額の負担額が分かります。この数字を先に押さえてから、次の比較に進んでください。
前納の割引と、納付の期限。1日遅れると資格を失う
保険料の納め方には注意が必要です。任意継続でもっとも多い事故が、納付の遅れによる資格喪失です。
納付の期限は、原則として毎月10日までです(初回は保険者が指定する日)。そして、期限までに納付しないと、その翌日に資格を失います。これは他の制度と比べて厳しい扱いです。国民健康保険なら滞納しても即座に資格を失うわけではありませんが、任意継続は1回の納め忘れで終わります。そして、いったん資格を失うと元に戻せません。
だからこそ前納が有効です。協会けんぽの案内にはこう書かれています。
保険料の前納制度を利用して、保険料を事前に一括して納付すると、毎月納付の手間が省けるほか、納め忘れの防止になります。また、保険料が割引[年4%(複利現価法による)]になります。 出典: kyoukaikenpo.or.jp
年4%の割引が受けられて、納め忘れの心配もなくなります。半年分または1年分をまとめて納める形が用意されています。手元の資金に余裕があるなら、前納を選ぶのが合理的です。
ただし、前納には1つ注意点があります。前納した期間の途中で再就職して勤務先の健康保険に入った場合、資格を失った月以降の分は還付されます。つまり捨てになるわけではありません。ここは安心して選んでよい部分です。逆に、前納した後で「国保のほうが安かった」と気づいて切り替えたい場合は、簡単にはいきません。任意継続から国民健康保険へ、自分の都合だけで移ることには制約があります(後で改正の話をします)。前納の前に、比較を終わらせておいてください。
口座振替を選べる場合もあります。毎月の納付を自動化できるので、納め忘れのリスクを下げられます。前納の割引と、自動化の安心を比べて選んでください。個人的には、退職直後は手元の現金を厚く持っておきたい時期なので、まず口座振替にして、資金の見通しが立ってから前納に切り替えるという順番も現実的だと思います。
退職直後の現金管理について、実務で気づいたことを書きます。私が独立したとき、健康保険料と住民税と国民年金保険料が同じ時期に重なって、想定より現金が減りました。売上の見込みは立てていたのに、支出のカレンダーを作っていなかったからです。翌年からは、税と社会保険の支払い月を一覧にして、その分を別の口座に分けておく運用にしました。金額を正確に読めなくても、口座を分けるだけで判断が楽になります。退職する人は、辞める前にこの一覧を作ってください。
保険料を確定申告でどう扱うかも押さえておきましょう。任意継続で払った健康保険料は、社会保険料控除として所得から差し引けます。事業の経費ではありません。経費と控除では帳簿上の扱いが違うので、独立した人はここを混同しないでください。保険料の種類ごとに経費になるものとならないものを仕訳の例つきで整理した記事として個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法が参考になります。
国民健康保険とどちらが安いか。比べる手順
ここが本題です。手順は4ステップで終わります。
第1ステップは、任意継続の保険料を出します。退職する会社に聞くか、協会けんぽの保険料額表で自分の標準報酬月額の行を見ます。上限が効く人はそこで止まるので、思ったより低い額になることがあります。40歳以上の人は介護保険料を含んだ額で確認してください。この月額を12倍して年額を出します。
第2ステップは、国民健康保険の保険料を出します。住んでいる市区町村のサイトに料率と均等割の額が載っていますし、多くの自治体が試算ページを用意しています。ここで入れるのは前年の所得です。売上ではありません。給与だった人は給与所得控除を引いた後の額を使います。家族を加入させる場合は、その人数分の均等割が加わります。
第3ステップは、家族の被扶養者になれるかを確認します。配偶者や親が会社員で健康保険に入っていて、自分の年収の見込みが原則130万円未満なら、被扶養者になれる可能性があります。この場合、保険料の追加負担はゼロです。3つの選択肢の中で最も軽いので、可能性があるなら先に確認してください。
第4ステップは、3つを並べて選びます。数千円の差なら、被扶養者の制度が続く任意継続を選ぶ意味があります。家族がいる人はここで差が出るので、次の章で詳しく書きます。
傾向としては、こうなります。給与が高かった人は、上限が効くので任意継続が有利になりやすい。給与が平均以下だった人は、国民健康保険が有利になりやすい。そして独立して所得が大きく下がる見込みの人は、2年目以降は国民健康保険のほうが安くなります。国民健康保険の保険料は前年の所得で決まるので、独立1年目は高く、2年目に下がるからです。任意継続の保険料は2年間ずっと同じです。
この時間差を使う考え方があります。1年目は任意継続、2年目から国民健康保険という組み合わせです。所得が下がる見込みなら、これが最も安くなる場合があります。ただし任意継続から自分の都合で抜ける手続きには条件があるので、次の章で説明します。
退職後の所得の見込みを立てるには、自分がどの仕事でいくら稼げるかの相場を知る必要があります。継続契約になりやすい領域の仕事の中身はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に整理されています。単発の制作だけで独立するより、月額の契約を1本持っておいたほうが所得の見込みが立ち、保険料の計画も作りやすくなります。
扶養家族がいる人は任意継続が有利になりやすい
独身の人と家族がいる人で、有利不利が逆転します。理由は扶養です。
任意継続は健康保険の制度なので、被扶養者の仕組みが続きます。収入が一定額未満の配偶者や子どもを被扶養者として入れておけば、保険料の追加負担はありません。子どもが3人いても、払う保険料は変わりません。
国民健康保険には被扶養者の制度がありません。世帯の加入者全員に均等割がかかり、所得がある人には所得割がかかります。4人家族なら4人分です。
つまり、家族が多い世帯ほど任意継続が有利になります。独身なら任意継続と国民健康保険の差は保険料の計算式だけの勝負になりますが、扶養家族が2人3人いると、任意継続の側に大きなアドバンテージが生まれます。ここを計算に入れないで「任意継続は2倍だから高い」と判断すると、世帯の負担を大きく増やすことになります。
もう1つ、世帯全体で組み替える発想を持ってください。配偶者が会社員として働いているなら、自分と子どもがその健康保険の被扶養者になれないかを確認する。これができれば、保険料の追加負担なしで世帯全員の保障が確保できます。任意継続も国民健康保険も不要になります。独立して最初の年の所得が小さい見込みなら、この選択肢を最優先で検討してください。
扶養の判定について実務的な注意を1つ。事業所得で稼ぐ場合の収入の数え方は、給与とは違います。収入から必要経費を引いた額で判定されるのが一般的ですが、どこまでを経費として認めるかは保険者の判断になります。私がEC運営の仕事を始めたころ、入金額だけを見て年間の収入を管理していて、後から書類を出す段階で数字が合わなくなりました。請求書の総額、源泉徴収された額、経費を1つの表で管理する形に変えたら混乱はなくなりました。扶養の判定を受ける予定がある人は、この表を最初から作っておいてください。
なお、任意継続の期間中に家族の状況が変わった場合は届出が必要です。配偶者が就職して自分の健康保険に入った、子どもが就職した、といった変化があれば、被扶養者から外す手続きをします。放置すると資格の確認で指摘されます。
2年たった後、どうなるのか。出口の設計
任意継続は最長2年です。この出口を先に決めておかないと、2年後に慌てます。
2年が経過すると、自動的に資格を失います。通知は届きますが、次の加入先は自分で手続きします。選択肢は3つです。国民健康保険に入る、再就職して勤務先の健康保険に入る、家族の被扶養者になる。
多くの人は国民健康保険に移ります。このとき、資格を失った日から14日以内に市区町村の窓口で届出をします。任意継続の資格喪失を証明する書類が必要になるので、保険者から届く通知を保管しておいてください。
2年目の所得によって、移った後の保険料が決まります。独立して所得が安定してきた人は、前年の所得で計算された国民健康保険の保険料が想定より高くなることがあります。逆に所得が低い年は軽減措置の対象になる場合があります。2年目の終わりが近づいたら、自治体の試算ページで次の年の保険料を確認しておくと、資金の準備ができます。
そして、所得が伸びてきた人には別の選択肢もあります。業種ごとの国民健康保険組合です。建設業、美容、医療、文筆やデザインの分野には、所得に連動しない定額の保険料を採用している組合があります。所得が高い自営業者にとっては、市区町村の国保より安くなることが多い。自分の職種に該当する組合があるかを、2年目のうちに調べておく価値があります。
もう1つの出口として、法人化があります。法人を作って役員報酬を取る形にすれば、社会保険に加入できます。健康保険と厚生年金の両方に入れるので、将来の年金も増えます。ただし会社負担分も実質的に自分の会社が払うことになるので、単純に負担が半分になるわけではありません。売上が伸びてきた段階で、税理士に社会保険の観点を含めて相談してください。
出口を決めるときに軸になるのは、自分の所得がこれからどう動くかです。文章や編集の仕事の単価や年収の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっています。自分の分野の相場と照らして所得の見込みを立てると、どの制度が合うかが決まります。
2022年の改正で変わった点
任意継続について古い情報が残っているので、変わった点を整理します。
以前は、任意継続被保険者が自分の意思でやめることができませんでした。2年の経過、再就職、保険料の未納のいずれかでしか資格を失えず、「国保のほうが安いと分かったから移りたい」という理由では抜けられませんでした。だから、あえて保険料を納めないで資格を失う、という方法が実務では使われていました。
2022年1月の改正で、任意継続被保険者が自ら申し出て資格を喪失できるようになりました。申出が受理された月の末日で資格を失います。これにより、1年目は任意継続、2年目から国民健康保険という組み合わせが正式な手続きで選べるようになりました。所得が大きく下がる見込みの人にとっては、実務上の効果が大きい改正です。
同時に、保険料の算定に使う標準報酬月額の上限についても改正がありました。健康保険組合が規約で定めた場合は、平均額の上限を使わず、退職時の標準報酬月額をそのまま使えるようになりました。組合健保に入っていた人は、自分の組合の規約を確認する必要があります。
どちらの改正も、判断の順番を変えます。以前は「一度任意継続を選んだら2年動けない」という前提で慎重に決める必要がありましたが、いまは1年ごとに見直せます。ただし、抜けた後に任意継続に戻ることはできません。一方通行です。任意継続から国民健康保険へは移れますが、逆はありません。この非対称性を理解したうえで、初年度は任意継続から始めるという判断も合理的になりました。
手続きの書類の書き方や、保険者とのやりとりに慣れていない人は、ここで手間取ります。事業に必要な文書作成の基礎を体系的に押さえられる資格としてビジネス文書検定があります。行政や保険者への届出に直接使うものではありませんが、記録を残して説明する型が身につくので、独立後の事務全般で役に立ちます。
申請の手続きと、必要になる書類
保険料の話が中心になりましたが、手続きの実務も押さえておきましょう。ここで詰まると20日の期限に間に合いません。
協会けんぽに加入していた人は、健康保険任意継続被保険者資格取得申出書を、住所地を管轄する協会けんぽの支部に提出します。会社に出すのではなく、自分で保険者に出す点に注意してください。書類は協会けんぽのサイトからダウンロードできます。健康保険組合に入っていた人は、その組合に提出します。組合ごとに様式が違うので、退職前に窓口を確認しておいてください。
書類に書く内容は、退職日、被保険者の情報、そして扶養する家族の情報です。家族を被扶養者として継続する場合は、続柄と収入の状況を記入します。収入を証明する書類(課税証明書など)を求められることがあるので、家族が働いている場合は先に用意しておくと早く進みます。
提出したら、保険証が届くまでの期間があります。この間に医療機関にかかる必要が出たら、いったん全額を立て替えて、後から払い戻しの手続きをします。持病があって定期的に通院している人は、この空白を意識しておいてください。退職日の前に通院を済ませておくのが現実的な対処です。
初回の保険料は、保険者が指定する日までに納めます。この初回の納付が期限に間に合わないと、任意継続の資格そのものが成立しません。振込先と期限が書かれた通知が届いたら、その日に処理してしまうのが安全です。
そして、国民年金の手続きを忘れないでください。任意継続は健康保険だけの制度なので、年金は自分で市区町村の窓口に行って第1号被保険者への切り替えをします。この2つを同じ週に済ませてしまうのが効率的です。所得が少ない期間は国民年金の保険料の免除や納付猶予を申請できる場合もあるので、窓口で相談してみてください。
もう1つ、失業給付との関係です。失業給付を受けている期間も、任意継続の保険料は払い続ける必要があります。失業給付は所得として扱われないため、国民健康保険の保険料の計算には含まれませんが、家族の健康保険の被扶養者になる場合の収入の判定には含まれます。日額によっては被扶養者になれないことがあるので、そこを狙う人は基本手当日額を確認してください。
退職後の保障を、保険料以外の視点でも見直す
健康保険の選択と同時に、保障全体を見直すタイミングでもあります。会社員のときに気づかなかった穴が見えてきます。
まず、団体保険の扱いです。会社を通じて加入していた団体の生命保険や医療保険は、退職すると継続できないものがあります。保険料が安かったのは、会社が窓口になっていたからです。退職の案内に含まれているはずですが、見落とすと無保険の状態になります。退職の書類を受け取ったら、保険関係のページを必ず読んでください。
次に、就業不能への備えです。任意継続でも国民健康保険でも、退職後は傷病手当金が原則として受けられません。会社員のときは1年6か月まで所得の一部が補われていましたが、それがなくなります。自営業として働くなら、この穴を貯蓄か民間の保険で埋める必要があります。目安として、生活費の3か月から6か月分を現金で持っておくのが現実的です。
生命保険の見直しも同時にやるべきです。独立すると収入の性質が変わるので、必要な保障額も変わります。子育て期の世帯がどこまで保障を持つべきかを年代別に整理した記事として30代の生命保険おすすめ|子育て世代の保障設計が参考になります。必要な保障額の出し方から書かれているので、保険会社の営業を受ける前に読んでおくと判断の軸ができます。
そして、収入の構造です。単発の仕事だけで構成された収入は、手が止まった瞬間にゼロになります。傷病手当金がない状態でこれをやると、体調を崩した時点で家計が直撃されます。月額で継続する契約を1本でも持っておくことが、実質的には一番効く保険になります。金額が小さくても構いません。継続する収入があるだけで、判断の余裕が生まれます。
私が独立して数年たって実感したのは、制度で守られる範囲には限界があるということです。公的な制度は医療費の負担を軽くしてくれますが、仕事がなくなった期間の生活費までは面倒を見ません。健康保険の比較をきっかけに、そこまで一度に整えてしまうのが効率的だと思います。
20年この市場を見てきて分かること
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、1つ観察を書きます。
退職の相談を受けていて多いのが、健康保険の比較に何週間もかけて、本業の準備が止まってしまう人です。運営者として見てきた限りでは、独立して長く続く人はこの判断を早く終わらせています。理由は、制度の差で動く金額よりも、仕事の取り方で動く金額のほうがずっと大きいからです。年間で数万円を詰めるために10日を使うなら、その10日を1件の継続契約に使ったほうが結果が良い。何度も見てきた傾向です。しかも任意継続の申請期限は20日しかありません。迷っているうちに選択肢が消えます。
もう1つ、手取りの話をします。同じ売上でも手元に残る額は人によって大きく違います。差を作るのは、税と社会保険の設計、そして仕事を受けるときに間に誰が入っているかです。仲介の手数料が乗らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側は手取りが厚くなります。金額の大小の話ではなく、手取りの質が変わるという意味です。長く続いている人は例外なく、単発の案件を追うのではなく「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っています。その関係ができると、単価の相談も納期の相談もできるようになる。傷病手当金がない働き方において、相談できる相手がいることは制度以上の備えになります。
最後に、やることを整理します。退職が決まったら、給与明細を1枚出して健康保険料の欄を2倍する。会社に任意継続の保険料を聞く。自治体のサイトで国民健康保険の試算を出す。家族の健康保険の被扶養者になれるかを確認する。この4つを1枚の紙に書けば、判断は30分で終わります。そして退職日の翌日から20日以内に手続きを済ませてください。この期限だけは、他の何より先に手帳に書いておいてください。
よくある質問
Q. 任意継続の保険料は在職中の2倍になりますか?
会社負担がなくなるため全額が自己負担になり、原則として2倍です。ただし計算に使う標準報酬月額には上限があり、退職時の標準報酬月額と保険者の全被保険者の平均額のうち低いほうが使われます。給与が高かった人は上限で止まるため、2倍にはなりません。
Q. 任意継続と国民健康保険はどちらが安くなりますか?
給与が高かった人や扶養家族が多い人は任意継続が有利になりやすく、給与が平均以下だった人や独立後に所得が大きく下がる人は国民健康保険が有利になりやすいです。任意継続の月額と、自治体の試算で出した国保の年額を並べて比べてください。
Q. 任意継続の申請にはいつまでに手続きが必要ですか?
退職日の翌日から20日以内です。この期限を過ぎると原則として任意継続は選べず、国民健康保険か家族の被扶養者になるかの二択になります。退職が決まった時点で保険料の試算を始め、期限を手帳に書いておいてください。
Q. 任意継続でも傷病手当金は受けられますか?
原則として受けられません。任意継続では傷病手当金と出産手当金が対象外です。在職中から受けていた傷病手当金を継続して受けられる場合はありますが、退職後に新たに病気になったときの手当は出ません。貯蓄や民間の保険で備えてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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