失業保険をもらいながら業務委託で働けるか


この記事のポイント
- ✓失業保険と業務委託の関係を
- ✓ハローワークの公式な案内に沿って整理します
- ✓受給中に請け負い仕事をしたときの申告の仕方
まず、安心してください。会社を辞めたあとに業務委託の仕事を請け負ったからといって、失業保険が一律に打ち切られるわけではありません。決まりは公開されていますし、順番どおりに申告すれば普通に受け取れます。
ただし、正直に書いておきます。ここは「知らずにやってしまって、あとから返してくださいと言われる」事故がいちばん多い場所でもあります。請け負った仕事を書かなかった、事業を始めたのに黙っていた、という類いです。悪気がなくても結果は同じ扱いになります。
この記事では、失業保険と業務委託の関係を、ハローワークが公表している案内の書き方に沿って整理します。受給中に働いたときの申告、手続きと日数の数え方、金額の決まり方、そして辞めたあとそのまま独立する人が使える制度までを順番に見ていきます。
失業保険は「次の仕事を探している人」に出るお金
最初に、言葉を揃えておきます。世間で失業保険と呼ばれているものの正式な名前は、雇用保険の基本手当です。病気やけがへの見舞金でも、退職金の上乗せでもありません。次の仕事を探している間の生活を支えるために出るお金です。
受け取るには2つの条件があります。ひとつは、ハローワークに行って求職の申込みをし、働く意思と能力があるのに職に就けていないこと。もうひとつは、離職の日より前の2年間に、雇用保険に入っていた期間が通算12か月以上あることです。倒産や解雇などで辞めざるを得なかった人(特定受給資格者)や、契約が更新されずに辞めた人(特定理由離職者)は、離職前1年間に通算6か月以上でも受けられます。
ここで言う1か月は、暦の1か月ではありません。離職日から1か月ずつ区切って、その月に賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上か、または時間数が80時間以上あった月だけを1か月と数えます。週の勤務日数が少ないアルバイトを長く続けていた場合、在籍年数の割に月数が足りないことがあるのはこのためです。
そして重要なのが、失業の状態の定義です。ハローワークの案内には、次のような状態では基本手当を受けられないと明記されています。病気やけがですぐには就職できないとき、妊娠や出産や育児ですぐには就職できないとき、定年でしばらく休養しようと思っているとき、結婚などで家事に専念しすぐに就職できないとき、の4つです。
つまり基本手当は「働きたいのに働けていない」状態に出るお金であって、「収入がない」ことに出るお金ではありません。業務委託の話がややこしくなるのは、まさにここが理由です。請け負い仕事をどこまでやると「もう仕事を探していない人」と見なされるのか、という線引きの話だからです。
業務委託で働いた日は、どう申告することになるか
受給中は、原則として4週間に1度の認定日にハローワークへ行き、失業認定申告書を出します。この用紙には、前回の認定日から今回の前日までの間に働いたかどうかを書く欄があります。業務委託で請け負った仕事も、ここに書く対象です。
書き方は、働いた日を2つに分けて申告する形になっています。ひとつは就職または就労をした日、もうひとつは内職または手伝いをした日です。前者に当たる日は基本手当が出ませんが、その日数分は先送りされ、受給できる期間の範囲内であれば後ろにずれて支給されます。後者に当たる日は、収入額によって減額されることはあっても、日数そのものが消えるわけではありません。
この2つを分ける目安として、実務では1日の労働時間が4時間以上かどうかが案内されています。社会保険労務士が書いた解説にも、同じ趣旨が示されています。
【失業手当受給中の業務委託(アルバイト)日の取扱い】業務委託で働いた日の取扱いも時間で判定します。4時間以上働くと『就職又は就労』日、4時間未満だと『内職又は手伝い』日です。 出典: note.com
ただし、この時間の目安だけで決まるわけではないことも押さえてください。最終的に判断するのはハローワークで、継続して受けている契約なのか単発なのか、働く日数が週にどれくらいあるのか、自分で事業として始めたものなのかといった事情も見られます。金額や働き方が微妙なときは、認定日を待たずに窓口へ相談し、その場で扱いを確認しておくのが確実です。
実務のうえで迷いやすい点を3つ挙げておきます。
ひとつめ。納品した日ではなく、作業した日で数えます。1か月かけて書いた原稿の報酬が月末に振り込まれた場合でも、申告するのは作業に充てた日です。作業日を記録していないと、あとから再現できません。
ふたつめ。報酬がまだ振り込まれていなくても申告します。働いた事実が先にあり、入金はあとから来るのが請け負いの仕事です。入金月にまとめて書くと、ずれが生じます。
みっつめ。継続的に受ける契約を結んだ時点で、扱いが変わることがあります。毎月決まった業務を任される契約は、単発の手伝いとは見られません。契約書を交わす前に窓口で確認したほうが、あとの手戻りが少なくなります。
判断に迷いやすい場面を、表の形で並べておきます。いずれも最終的な扱いはハローワークが決めるので、目安として読んでください。
| 場面 | 申告書に書くこと | 見られやすい点 |
|---|---|---|
| 単発で3時間の作業を1日だけ請け負った | 作業した日と収入額 | 1日の作業時間、継続性があるか |
| 毎月決まった本数の原稿を請ける契約を結んだ | 契約を結んだこと、作業日 | 継続する契約かどうか |
| 開業届を出したが売上はまだない | 事業を始めたこと | 事業に専念し始めた日はいつか |
| 知人の作業を無報酬で手伝った | 手伝った日(収入は0円) | 働いた事実があるか |
| 会社の役員に名前だけ載せた | 就任した事実 | 名義だけでも申告の対象 |
共通しているのは、収入が発生したかどうかではなく、働いた事実や立場の変化があったかどうかが基準になっている点です。お金が動いていないから書かなくてよい、という考え方は通りません。
手続きの流れと、お金が入るまでの日数
日数の感覚を持っておくと、生活の計画が立てやすくなります。順番に見ていきます。
会社を辞めると、雇用保険被保険者離職票が届きます。これを持って、住んでいる地域を管轄するハローワークへ行き、求職の申込みをして離職票を提出します。ここで受給資格の決定が行われ、同時に離職理由も判定されます。自己都合と書かれているが実際は退職勧奨だった、というような食い違いがあるときは、この場で相談してください。事実関係を調べたうえで判定し直す仕組みがあります。
必要な持ち物は、離職票のほか、マイナンバーを確認できる書類、本人確認の書類、写真2枚、本人名義の預金通帳またはキャッシュカードです。マイナンバーカードを提示すれば写真を省略できます。手続きの受付は平日の8時30分から17時15分ですが、求職の申込みにも時間がかかるため、16時前までに行くことが勧められています。
受給資格が決まったあと、求職の申込みをしてから失業の状態にある7日間は、基本手当が出ません。これを待期といいます。ここは理由を問わず全員に共通です。
自己都合で辞めた場合は、待期が明けたあとにさらに給付制限があります。ハローワークの案内では、待期期間満了後2か月間は基本手当が支給されず、過去5年間に2回以上自己都合で離職している場合は3か月間とされています。この期間は、求職活動の実績も多めに求められます。通常の認定対象期間は原則2回以上ですが、給付制限が3か月の場合は原則3回以上です。
求職活動として数えられるのは、求人への応募、ハローワークの職業相談や職業紹介、許可のある民間職業紹介機関でのセミナー受講、公的機関が実施する職業相談や企業説明会への参加、再就職に役立つ国家試験や検定の受験などです。求人情報をただ眺めただけ、知人に紹介を頼んだだけでは実績になりません。ハローワークが利用先へ問い合わせて事実確認をすることもあります。
失業の認定を受けると、その日から通常5営業日で指定した口座に振り込まれます。休日や年末年始をはさむと遅れます。手続きの詳しい流れはハローワークの案内で確認できます。
離職理由の違いが、受け取れる額と時期を変える
同じ会社を同じ日に辞めても、離職理由の判定が違えば、もらえる日数も、お金が入り始める時期も変わります。ここは受給の総額に直結する部分なので、丁寧に見ておいてください。
倒産や解雇などで、再就職の準備をする時間的な余裕がないまま辞めることになった人は、特定受給資格者と呼ばれます。有期の契約が更新されなかったことで辞めた人のうち一定の範囲に当たる人は、特定理由離職者と呼ばれます。この2つに当たると、一般の離職者より所定給付日数が手厚くなる場合があります。また、被保険者期間の条件も、2年間で12か月ではなく1年間で6か月に緩みます。
特定理由離職者のうち一定の範囲に当たる人については、離職の日が令和9年3月31日までの間にある人に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同じ扱いになるという措置も設けられています。期限が決まっている措置なので、該当しそうな人は離職日を確認してください。
そして、自己都合で辞めた人に課される給付制限が、この判定の有無で変わります。特定受給資格者には給付制限がかかりません。待期の7日が明ければ、認定を経て支給が始まります。自己都合と判定されると、待期のあとにさらに2か月(過去5年間に2回以上自己都合で離職している場合は3か月)待つことになります。生活費の計画を立てるうえでは、この2か月の差は小さくありません。
離職票に書かれた離職理由に納得がいかない場合は、受給資格を決めるときに申し出てください。実際には退職勧奨を受けたのに自己都合と書かれている、というような食い違いは珍しくありません。ハローワークが事実関係を調べたうえで判定する仕組みになっています。退職の経緯を示すメールや通知書、面談の記録が残っているなら、持って行くと話が早く進みます。
判定は自分で決められるものではありませんが、事実を伝えないまま自己都合として処理されてしまうことは避けられます。辞める前から退職勧奨や労働条件の変更があった人ほど、ここを飛ばさないでください。
1日あたりいくらになるか
金額は、基本手当日額という1日あたりの単価で決まります。計算の土台になるのは賃金日額で、離職した日の直前6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割って出します。賞与は入りません。
そこから、賃金日額のおよそ50パーセントから80パーセント(60歳から64歳は45パーセントから80パーセント)が基本手当日額になります。賃金が低かった人ほど高い率が当てられる設計です。
年齢区分ごとに上限額も決まっています。令和8年8月1日現在の額は次のとおりです。
| 年齢 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|
| 30歳未満 | 7,450円 |
| 30歳以上45歳未満 | 8,270円 |
| 45歳以上60歳未満 | 9,110円 |
| 60歳以上65歳未満 | 7,830円 |
この上限は毎年8月1日に見直されます。前の年の数字を載せたままの解説が世の中には多く残っているので、金額を計算するときは公表されている年月を必ず確かめてください。
何日分もらえるかは、離職時の年齢、雇用保険に入っていた期間、離職の理由によって決まり、90日から360日の範囲です。倒産や解雇で辞めた人は、自己都合で辞めた人より手厚くなる場合があります。
そして、受け取れる期間には期限があります。原則として離職した日の翌日から1年間です。所定給付日数が330日の人は1年と30日、360日の人は1年と60日です。日数が残っていても、この期限を過ぎると受け取れません。病気やけが、妊娠、出産、育児などで引き続き30日以上働けなくなったときは、その日数分だけ期間を延ばせます。延長できるのは最長で3年間です。
そのまま独立する人が使える2つの制度
会社を辞めて、雇われる形ではなく自分で仕事を取る道に進む人にとって、押さえておく価値がある制度が2つあります。
ひとつめが、受給期間の特例です。離職日の翌日以後に事業を始めた人、事業に専念し始めた人、その準備に専念し始めた人は、事業を行っている期間を受給期間に算入しない扱いを申請できます。算入しない期間は最大で3年間です。
条件は4つあります。事業の実施期間が30日以上あること。事業を始めた日などから30日を経過する日が、受給期間の末日以前であること。その事業について就業手当または再就職手当を受けていないこと。そして、その事業で自立できると認められる実態があること。最後の点は、雇用保険の被保険者になる人を雇って事業主になるか、登記事項証明書や開業届の写し、事業許可証といった客観的な資料で事業の開始と実在を確認できるか、のいずれかで判断されます。
申請の期限が短いので注意してください。事業を始めた日などの翌日から2か月以内に、住んでいる地域を管轄するハローワークへ申請する必要があります。代理人でも郵送でも構いません。この特例を知らずに2か月を過ぎてしまうと、受け取れたはずの日数が期限切れで消えます。
ふたつめが、再就職手当です。基本手当の受給資格がある人が安定した職業に就いた場合に出るもので、事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合も対象に含まれます。支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あることなどが条件です。
| 支給残日数 | 給付率 |
|---|---|
| 所定給付日数の3分の2以上 | 70パーセント |
| 所定給付日数の3分の1以上 | 60パーセント |
支給額は、支給残日数に給付率と基本手当日額をかけて求めます。ただし、ここで使う基本手当日額には別の上限があり、6,745円(60歳以上65歳未満は5,454円)です。上限は毎年8月1日以降に変わることがあります。
再就職して賃金が下がった場合の就業促進定着手当や、就職が困難な人を対象とした常用就職支度手当もあります。詳しい条件は就職促進給付の案内にまとまっています。
この2つは目的が逆です。受給期間の特例は「今は受け取らず、うまくいかなかったときのために権利を取っておく」制度で、再就職手当は「早く決まったので残りをまとめて受け取る」制度です。同じ事業について両方を使うことはできません。独立の見通しがどれくらい立っているかで選ぶことになります。どちらが自分の状況に合うかは、開業届を出す前にハローワークで確認しておいてください。
申告を間違えると何が起きるか
ここは重く書きます。ハローワークは不正受給の典型例を具体的に公表しており、その中に業務委託の受け手が当てはまりやすいものが並んでいます。
・実際には行っていない求職活動を実績として書いた場合 ・就職や就労をしたのに、失業認定申告書にその事実を書かなかった場合 ・自営や請負により事業を始めているのに、その事実を書かなかった場合 ・内職や手伝いをした事実とその収入を書かなかった場合 ・会社の役員に就任していながら、名義だけであっても書かなかった場合
処分の重さも明記されています。
こういった不正行為が行われた場合、その不正行為があった日以降の日について、基本手当等が一切支給されず、不正に受給した基本手当等の相当額(不正受給金額)の返還が命ぜられます。さらに、返還が命ぜられた不正受給金額とは別に、直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額の納付(いわゆる「3倍返し」)が命ぜられることとなります。 出典: hellowork.mhlw.go.jp
受け取った額を返すだけでは終わらず、最大でその2倍に相当する額の納付を別に命じられる、という構造です。以後の支給も止まります。
請け負い仕事をしている人が引っかかりやすいのは、悪意のある嘘よりも「書かなくていいと思っていた」という取り違えです。報酬がまだ入っていないから書かなかった。知人の手伝いで無報酬だったから書かなかった。開業届を出しただけでまだ売上がないから書かなかった。どれも、事実としては働いた日や事業の開始があったことになります。迷ったら書く、そして窓口で相談する。この順番を守るだけで、ほとんどの事故は防げます。
会社を辞めた日から、医療保険はどう切り替わるか
失業保険の話と並んで、辞めた直後に決めなければならないのが医療保険です。ここを先延ばしにすると、病院にかかったときに全額を立て替えることになります。
協会けんぽの案内では、退職後の健康保険には3つの選択肢があるとされています。協会けんぽの任意継続、市区町村の国民健康保険、そして家族の健康保険の被扶養者になる、の3つです。
任意継続は、在職中に入っていた健康保険にそのまま2年間は残る仕組みです。条件は2つで、退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あることと、退職日の翌日から20日以内に手続きすることです。この20日はかなり短く、郵送の場合も20日以内に必着で届く必要があります。離職票を待っている間に期限が過ぎることがあるので、辞める日が決まった時点で日付を控えておいてください。
保険料は、在職中に給与から引かれていた額のおよそ2倍になります。会社が半分を負担していた分を自分で払うことになるためです。ただし上限があり、退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた場合は32万円として計算されます。給与が高かった人ほど、2倍よりは抑えられる形になります。40歳から64歳の人には介護保険料が加わります。
国民健康保険は、市区町村が運営するもので、保険料は世帯の人数と前年の所得で決まります。自治体ごとに額が違い、減免の制度もあります。前年の所得が高かった年に辞めると1年目の保険料が重く出るので、任意継続と比べて安いとは限りません。どちらが安いかは、両方の窓口で試算してもらうのが確実です。
家族の健康保険の被扶養者になる道もあります。この場合、保険料の負担はありません。ただし収入の条件があるため、受給する基本手当の額によっては入れないことがあります。判断は家族の勤務先の健康保険が行うので、先にそちらへ確認してください。
年金についても、会社を辞めると厚生年金から国民年金の第1号被保険者に切り替わります。保険料を納めるのが難しいときは、免除や納付猶予の申請ができます。未納のまま放置すると、将来の老齢基礎年金だけでなく、障害年金や遺族年金の受け取りにも影響します。手続きの窓口は住んでいる市区町村です。
業務委託で働く人には、失業保険そのものがない
ここまで読んで気づいた方もいると思いますが、失業保険は雇用保険に入っていた人のための制度です。業務委託で働く人は雇用保険に入れません。つまり、独立したあとに仕事が途切れても、基本手当は出ません。
雇用保険に入るのは、週の所定労働時間と雇用の見込み期間が一定以上ある「雇われて働く人」です。なお、この週の所定労働時間の要件は、2028年10月1日から20時間以上より短い時間へ広がることが決まっています。パートや短時間の働き方が対象に加わる改正ですが、請け負いで働く人が対象に含まれるわけではありません。
だからこそ、独立する前に2つの備えを用意しておく価値があります。ひとつは生活費の現金です。仕事が途切れても数か月は動ける額を手元に置いておくと、安い依頼を断れるようになります。もうひとつは、収入源を複数に分けておくことです。前の勤め先からの業務委託1本で始める人は多いのですが、その1本が終わった瞬間に売上が0円になります。
受給期間の特例が用意されているのは、まさにこの構造があるからです。独立してうまくいかなかったときに、雇われて働く道へ戻る選択肢を残しておくための仕組みだと考えると、申請の期限を逃す気にはならないはずです。
受給中にやっておくと後が楽になること
制度の話から離れて、実務の準備に触れます。受給期間は、次の働き方の土台をつくる時間でもあります。
作業日の記録を習慣にしてください。表計算でも手帳でも構いません。日付、案件名、作業時間、納品したかどうかの4つがあれば、認定日の申告でも確定申告でも困りません。あとから思い出して書くと、必ずどこかがずれます。
契約書の形も先に決めておくと安全です。業務委託は本来、仕事の進め方を細かく指示されず、決まった時間に拘束もされない働き方です。ここが崩れると、契約の名前が業務委託でも実態は雇われている人と判断されることがあります。判断材料になるのは、指示の細かさ、時間の拘束、報酬の決め方といった点です。報酬を時間に比例させず月額で決める、勤務時間を指定しない、といった形が取れているかを、契約の段階で確かめてください。
報酬の相場を知っておくことも準備のひとつです。仕事の種類ごとの単価の水準は、受ける前に見ておくと交渉の土台になります。文章を書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場、開発の仕事ならソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっています。いくらで受けるかを先に決めておくと、安い依頼に時間を取られずに済みます。
資格が直接の条件になる仕事は多くありませんが、取引先に説明しやすくなる場面はあります。書類のやり取りが多い仕事ならビジネス文書検定、インフラ寄りの技術職ならCCNA(シスコ技術者認定)が、話の入口として使えます。受給中は求職活動の実績としても数えられるので、受験を計画に入れるのは理にかなっています。
お金の受け取り方も、早めに形を決めておくと後戻りが減ります。事業用の口座を分けておくこと、請求書の様式を1つ決めておくこと、源泉徴収の有無を取引先に確認しておくこと。この3つを最初の案件の前に済ませておくと、確定申告の時期に慌てずに済みます。請け負いの仕事は、報酬から所得税が差し引かれて振り込まれる場合があり、その分は確定申告で精算します。振込額が請求額と違っていて驚く人が多い場所です。
そして、いちばん効くのは取引先を1社に絞らないことです。受給が終わったあと、収入が1社に依存していると、その1社の都合で生活が揺れます。受給中のうちに、声をかけられる先を複数つくっておいてください。
もうひとつ、求職活動の実績づくりと、独立の準備は両立できます。ハローワークの職業相談を受ける、公的機関が開くセミナーに出る、再就職に役立つ検定を受ける。いずれも実績として数えられる活動です。相談の場で、独立を考えていることを伝えて構いません。受給期間の特例や再就職手当の話も、そこから始まります。隠しながら進めるより、はっきり伝えたほうが使える制度が見つかります。
請け負う側から見た市場の変化と、手取りの話
在宅で請け負う仕事の市場そのものも、この10年で形が変わりました。かつては作業の単価をどれだけ下げられるかで案件が決まる場面が目立ちましたが、今は依頼する側が「誰に任せるか」で選ぶ割合が増えています。生成AIの普及で、量をこなすだけの作業が安く置き換わった反面、何を作るべきかを一緒に決められる人の需要が残った、という変化です。受給期間中に何を身につけるかを考えるなら、この向きは押さえておいてください。
20年この市場を見てきた立場から言えば、会社を辞めてから仕事を探す人と、辞める前から少しずつ請け負っていた人とでは、その後の落ち着き方がはっきり違います。前者は単価の交渉余地がないまま最初の案件を受けがちで、後者は相場を知ったうえで断る判断ができます。差がつくのは能力ではなく、比較対象を持っているかどうかです。
もうひとつ、長く続く人に共通しているのは、単発の作業をこなすことより「この人に任せると楽だ」という関係をつくることに時間を使っている点です。納品の速さより、連絡が返ってくること、こちらの前提を覚えていてくれること。依頼する側が次も声をかける理由は、たいていそこにあります。受給中の限られた時間をどこに使うかを考えるとき、この違いは知っておく価値があります。
手取りの話もしておきます。仲介が入る取引では、依頼する側が出した予算の一部が手数料として抜かれ、受け手に届く額はその分だけ薄くなります。手数料0%で直接やり取りできる形なら、同じ予算でも依頼側はより多く頼め、受け手の手取りは厚くなります。金額の大小ではなく、同じ働きに対して残る額が違うという話です。長く続けるほど、この差は積み上がります。
仕事の種類を選ぶ段階なら、需要の形も見ておいてください。人手が足りていない領域と、単価が下がり続けている領域があり、同じ在宅の仕事でも中身はかなり違います。企業の業務にどう取り入れるかを助ける仕事はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に、広告運用や情報管理まで含む仕事はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、開発を受ける仕事はアプリケーション開発のお仕事に、それぞれ仕事の内容と求められる前提がまとまっています。受給中に方向を決めておくと、期限が来てから慌てずに済みます。
最後に、制度の話に戻ります。失業保険と業務委託は、対立するものではありません。ハローワークに事実を申告したうえで、認められる範囲で働き、独立するなら特例や再就職手当を使う。この順番を踏めば、両立できる仕組みとして設計されています。判断に迷う場面は必ず出ますが、迷った時点で窓口に聞けば、ほとんどはその場で片づきます。基本手当そのものの条件はハローワークの基本手当の案内に、不正受給の扱いは公表されている典型例に、それぞれ書かれています。準備さえすれば、40代からでも50代からでも遅くありません。
よくある質問
Q. 失業保険を受け取りながら業務委託の仕事をしてもよいですか?
働いた事実を失業認定申告書に申告すれば、認められる範囲で働けます。働いた日は就職または就労をした日と、内職または手伝いをした日に分けて申告します。前者に当たる日はその日の基本手当が出ませんが、日数が消えるのではなく受給期間の範囲で先送りされます。判断に迷う働き方のときは、認定日を待たずに窓口で確認してください。
Q. 受給中に開業届を出したらどうなりますか?
事業を始めたことは申告の対象です。黙っていると不正受給の典型例に当たります。そのうえで、離職日の翌日以後に事業を始めた人は、事業を行っている期間を受給期間に算入しない特例を最大3年間まで申請できます。申請は事業を始めた日などの翌日から2か月以内と期限が短いので、開業届を出す前にハローワークへ相談しておくのが安全です。
Q. 自己都合で辞めた場合、いつからお金が入りますか?
求職の申込み後、失業の状態にある7日間の待期があり、そのあとに給付制限が入ります。ハローワークの案内では待期期間満了後2か月間、過去5年間に2回以上自己都合で離職している場合は3か月間とされています。失業の認定を受けた日から通常5営業日で口座に振り込まれます。給付制限がある間は求職活動の実績も多めに求められます。
Q. 1日あたりいくらもらえますか?
離職前6か月の賃金(賞与を除く)の合計を180で割った賃金日額の、およそ50パーセントから80パーセントです。賃金が低かった人ほど高い率になります。年齢ごとに上限があり、令和8年8月1日現在で30歳未満は7,450円、30歳以上45歳未満は8,270円、45歳以上60歳未満は9,110円、60歳以上65歳未満は7,830円です。上限は毎年8月1日に見直されます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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