個人事業主と傷病手当金|出ない理由と、その穴を埋める手順 2026

前田 壮一
前田 壮一
個人事業主と傷病手当金|出ない理由と、その穴を埋める手順 2026

この記事のポイント

  • ✓個人事業主が傷病手当金を受け取れるのかを
  • ✓制度の条文と実務の両面から整理しました
  • ✓国民健康保険に傷病手当金がない理由

結論から書きます。個人事業主として国民健康保険に加入している人は、傷病手当金を受け取れません。制度として存在していないからです。これは自治体の運用の差でも、申請の仕方の問題でもなく、加入している保険の種類そのものによる線引きです。

ただし、話はここで終わりません。個人事業主が傷病手当金を受け取れる例外がいくつかあり、そのうちのひとつは、会社を辞めて独立した直後の人に実際に適用され得るものです。制度を知らずに諦めて、受け取れたはずのお金を取り逃がしている人がいます。

そしてもっと重要なのは、傷病手当金がない前提で「働けない3か月」をどう乗り切る設計にしておくかです。私は独立してから一度、腰を痛めて2か月ほど現場に出られなくなったことがあります。売上はほぼ止まりました。そのときに助かったのは保険ではなく、あらかじめ分けておいた現金と、固定費を下げる手続きを知っていたことでした。

この記事では、まず制度の線引きをはっきりさせ、例外として使える道筋を具体的に示し、そのうえで穴を埋める方法を優先順位をつけて並べます。相談を受けるたびに同じ順番で説明しているので、そのまま自分の状況に当てはめられるはずです。

傷病手当金は健康保険の給付で、国民健康保険にはほぼ存在しない

まず制度の位置を確認します。傷病手当金は、健康保険法に定められた給付です。ここでいう健康保険とは、会社に雇われている人が入る被用者保険、つまり協会けんぽと健康保険組合を指します。会社員が病気やケガで働けなくなったとき、給与が止まっている期間の生活を支える所得保障として設計されています。

一方、個人事業主が入る国民健康保険は、国民健康保険法という別の法律で運営されています。国民健康保険法では、傷病手当金は市町村や国民健康保険組合が条例や規約で定めれば行うことができる給付として位置づけられています。つまり、やってもよいが義務ではない任意給付です。

そして実際に、恒常的な制度として傷病手当金を設けている市区町村は、ほぼ存在しません。新型コロナウイルスの流行期には、感染して働けなくなった国保加入者に対する傷病手当金を国の財政支援付きで実施した自治体が多数ありましたが、あれは特例措置で、すでに終了しています。あのときの記憶で「国保にも傷病手当金がある」と思っている人がいますが、今は使えません。

なぜ任意給付なのか。理由は所得の把握の難しさです。被用者保険の傷病手当金は、標準報酬という形で給与が確定しているからこそ、その3分の2という計算ができます。ところが自営業者の場合、休業によって所得がどれだけ減ったのかを客観的に確認する手段がありません。店を閉めても仕入れは減り、逆に人を雇っていれば人件費は出続けます。所得の減少と休業の因果を保険者が判定できないため、法定給付として全国一律に運用することが難しいのです。

この構造は、出産手当金についても同じです。健康保険の被保険者は産前産後の休業期間に出産手当金を受け取れますが、国民健康保険にはありません。国民年金の産前産後期間の保険料免除はありますが、あれは保険料を払わなくてよくなる制度で、お金が入ってくる制度ではありません。個人事業主は、収入が止まる期間の所得保障を公的制度に期待できない、という前提から設計を始める必要があります。

協会けんぽの傷病手当金は、どういう条件で出るのか

例外の話に入る前に、傷病手当金の中身を正確に押さえておきます。ここを理解していないと、自分が例外に当たるかどうかを判断できません。

支給の条件は4つです。第一に、業務外の事由による病気やケガの療養であること。業務中や通勤中のケガは労災保険の対象になるので、こちらからは出ません。第二に、療養のために仕事に就くことができない状態、つまり労務不能であること。第三に、連続する3日間の待期を満たすこと。第四に、休んでいる期間について給与の支払いがないこと(給与が傷病手当金より少なければ差額が出ます)。

業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。 傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。 出典: kyoukaikenpo.or.jp

待期の3日間は連続していることが必要で、有給休暇や公休日も待期に数えられます。この3日は無給の期間になります。支給されるのは4日目からです。

支給期間が「通算して」1年6か月であるという点は、2022年1月からの変更です。それ以前は支給開始日から暦の上で1年6か月を数えていたため、途中で復職して再発した場合、残りの期間が使えないことがありました。現在は実際に支給された日数を通算するので、がんの治療のように復職と休職を繰り返すケースでも枠を使い切れます。

支給額は、支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2です。標準報酬月額の平均が30万円なら、日額はおよそ6,667円になります。月30日分で20万円ほどです。被保険者期間が12か月に満たない場合は、その期間の平均と、保険者の全被保険者の平均標準報酬月額のいずれか低い方で計算されます。

申請には、本人が記入する欄、事業主が記入する欄、そして療養を担当した医師が記入する欄があります。医師の意見欄に「労務不能と認められる期間」が書かれ、そこが実質的な判定の基礎になります。ここが埋まらないと、どれだけ本人が苦しくても支給されません。

退職して独立した人は「資格喪失後の継続給付」が使える

ここが本題です。会社を辞めて個人事業主になった人でも、傷病手当金を受け取れる場合があります。健康保険には資格喪失後の継続給付という仕組みがあるからです。

条件は2つです。第一に、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること。転職を挟んでいても、健康保険の資格が途切れずに続いていれば通算できます。空白が1日でもあると通算できないので、転職の間に国民健康保険を経由した期間があると条件を満たしません。第二に、退職日に傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあること。つまり、退職の時点で既に待期3日を満たして労務不能であることが必要です。

この2つを満たしていれば、退職して健康保険の資格を失った後も、同じ病気やケガについて、支給開始日から通算1年6か月の枠が残っている限り受け取り続けられます。国民健康保険に移っていても、家族の被扶養者になっていても、この継続給付には影響しません。給付の主体は、退職前に加入していた協会けんぽや健康保険組合のままです。

見落とされやすいのは、退職日に出勤してしまうと条件が崩れることです。最後の日に挨拶のために出勤すると、その日は労務可能だったと判断され、継続給付の要件を満たさなくなる扱いになり得ます。傷病で休んだまま退職日を迎える形にしておく必要があります。

そして、独立した人にとって決定的に重要な注意点があります。継続給付を受けている期間は、労務不能であることが前提です。開業届を出して事業を始め、実際に仕事をしていれば、労務不能とは認められません。「療養しながら少しだけ仕事をする」という状態は、金額の大小にかかわらず支給停止の理由になり得ます。退職と開業が近い人は、療養に専念する期間と事業を始める時期をはっきり分けて記録に残しておくことです。

事業を休んでいる期間に、次の準備として知識を積む人は多いです。実務に直結する資格を取っておくと、復帰後の単価交渉で使えます。お金の制度を体系的に押さえる意味では、税と保険と年金を横断して出題されるFP技能士2級の学習範囲が、自分の生活設計にそのまま効きます。

任意継続被保険者では、傷病手当金は出ない

退職後の健康保険の選択肢として、任意継続被保険者があります。退職前の健康保険に最大2年間継続して加入する制度です。ここに落とし穴があります。

任意継続被保険者は、傷病手当金の対象外です。健康保険法の規定で、任意継続被保険者には傷病手当金と出産手当金が支給されないと定められています。保険料を全額自己負担して同じ健康保険に残っても、所得保障の部分は付いてきません。給付されるのは、療養の給付(窓口3割負担)、高額療養費、埋葬料、出産育児一時金などです。

つまり、「任意継続にすれば傷病手当金がもらえるから安心」という理解は誤りです。任意継続を選ぶ理由は、保険料が国民健康保険より安く済む場合があること、扶養家族を被扶養者として引き続き入れられること、健康保険組合の付加給付が使えることです。所得保障は理由になりません。

ただし例外の中の例外があります。前の節で説明した資格喪失後の継続給付は、任意継続被保険者になっていても受けられます。継続給付は「資格喪失時点で受給要件を満たしていた」ことに基づく権利なので、その後に任意継続に入ったかどうかとは独立しています。ここは混乱しやすいので、順番で覚えてください。退職時点で労務不能かつ被保険者期間1年以上なら継続給付の権利がある。任意継続そのものからは新たに傷病手当金は発生しない。この2つは別の話です。

退職後の保険の選択は、金額だけで決めるとあとで後悔します。任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額または保険者の平均標準報酬月額のいずれか低い方に保険料率を掛けた額で、全額自己負担です。国民健康保険料は前年の所得で決まります。会社員として高い給与を得ていた年の翌年は、国民健康保険料が非常に高くなるため、任意継続のほうが安くなるケースが多いです。逆に2年目は前年の所得が下がっているので、国民健康保険に切り替えたほうが安くなることがよくあります。1年ごとに試算し直すのが正解です。

国民健康保険組合には、独自の傷病手当金がある場合がある

市区町村の国民健康保険に傷病手当金はありませんが、国民健康保険組合は別です。国民健康保険組合は業種ごとに組織された保険者で、規約で独自の給付を定めることができます。

医師や歯科医師の国保組合、建設業の国保組合、食品業や理美容業の国保組合などがあり、その一部は傷病手当金や傷病見舞金という名称で、入院時や休業時の給付を設けています。金額は日額数千円程度、支給日数に上限があるという設計が一般的です。健康保険の傷病手当金ほど手厚くはありませんが、何もないのとは違います。

自分の業種に対応する国保組合があるかどうかは、まず調べる価値があります。所得に関係なく保険料が定額である組合も多く、所得が伸びてきた個人事業主にとっては保険料そのものが下がる可能性もあります。加入には、その組合の母体となる業界団体や協会の会員であることなど条件が付くので、要件を確認してください。

注意点を2つ挙げます。第一に、国保組合に加入すると市区町村の国民健康保険からは抜けます。両方に入ることはできません。保険料と給付の両方を並べて比べる必要があります。第二に、扶養の概念は市区町村の国保と同じで、家族も加入者として保険料がかかります。世帯人数が多い場合は、定額の保険料でも総額が膨らむことがあります。

デザインや執筆のような制作系の職種では、加盟団体を通じて入れる国保組合があります。自分の仕事がどの職種分類に入るのかを確認しておくと、対象になる組合が見つかることがあります。開業届に書いた職業名と、組合が定める加入資格の業種が一致しているかどうかが分かれ目になるので、申し込む前に規約の該当箇所を読んでおいてください。

法人化して役員になれば対象になるが、判定は厳しい

もうひとつの道筋は、法人を設立して自分が役員になり、健康保険の被保険者になることです。法人は役員1人でも社会保険の強制適用事業所になるため、役員報酬を出していれば健康保険の被保険者になります。被保険者になれば、制度上は傷病手当金の対象です。

ただし、役員の傷病手当金は実際の支給ハードルが高いです。理由は労務不能の判定です。役員は具体的な作業をしていなくても、意思決定や代表権を持つことで報酬が支払われる立場にあります。そのため、入院していても報酬が支給され続けていると、支給要件である「給与の支払いがない」を満たしません。報酬を止める決議をして、実際に支給を停止したうえで申請する形になります。

また、役員報酬を低く設定していると、標準報酬月額が低くなり、傷病手当金の日額も低くなります。社会保険料を抑えるために役員報酬を月8万円にしていた人は、傷病手当金の日額も2,000円弱にしかなりません。保険料を下げる設計と、給付を厚くする設計は逆方向を向いているということです。

さらに、法人化には固定費が発生します。法人住民税の均等割は赤字でも年7万円前後かかり、社会保険料には事業主負担分が乗ります。決算申告を税理士に頼めば年20万円から40万円程度です。傷病手当金を目的に法人化するのは費用対効果が合いません。法人化は、取引先の与信、消費税の扱い、所得の分散、社会保険への加入など複数の理由が重なったときに検討する選択です。

法人化の判断に必要な数字の押さえ方や、事業に関わる保険料をどこまで経費として処理できるのかは、勘定科目の切り分けで結論が変わります。実務の境界線は、個人事業主の保険を経費にする境界線に具体例で整理してあります。

公的給付の穴は、所得補償保険と共済で埋める

ここから実務です。傷病手当金がないという前提で、働けない期間の収入をどう作るか。使える手段は3つあり、目的が違います。

1つ目は所得補償保険です。損害保険会社が扱う商品で、病気やケガで働けない期間に、あらかじめ設定した月額(平均所得の50%から70%程度が上限)を支払います。補償期間は1年や2年という短期のものが主流で、免責期間は4日や7日といった設定です。保険料は職業と年齢で変わりますが、月額20万円の補償で数千円から1万円台という水準が多いです。傷病手当金の代替として最も近い性質を持つのがこれです。

2つ目は就業不能保険です。生命保険会社が扱い、補償期間が60歳や65歳までと長いのが特徴です。免責期間が60日や180日と長く設定されていることが多く、短期の休業には向きません。長期にわたって働けなくなる事態、つまり生活が根本から変わるリスクに備えるものです。所得補償保険が短期、就業不能保険が長期、という住み分けで考えると整理しやすいです。

3つ目は、商工会議所や商工会が提供する休業補償プランです。団体契約のため保険料が個人契約より抑えられており、加入手続きも簡易な場合があります。商工会議所の会員であることが条件になりますが、会費自体が年1万円台からで、他の福利厚生や経営相談も使えます。個人事業主が最初に検討すると費用対効果が良いのはこの経路です。

3つとも、自分の事業の固定費を基準に金額を決めてください。生活費だけでなく、事業として止まらない支出、たとえば事務所の家賃、通信費、リース料、外注先への支払い、社会保険料を足した額が必要な補償額です。生活費だけで設計すると、休業中に事業の支出で貯金が溶けます。

そして最も優先度が高いのは、保険ではなく現金です。固定費の6か月分を手元に置くことが、どの保険よりも確実に効きます。免責期間があるため、保険金が入るまでの数週間から数か月は必ず自力で埋める必要があるからです。順番は、現金6か月分、次に所得補償保険、次に長期の就業不能保険です。

働けない期間に、出ていくお金を止める手続き

収入を作る話と同じくらい重要なのが、支出を止める話です。個人事業主には、収入が止まっても請求が来る固定費があります。ここに使える公的な手続きがあり、知っているかどうかで手元の現金が数十万円変わります。

国民年金保険料には、免除と納付猶予の制度があります。所得が一定以下であれば、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除のいずれかが適用されます。重要なのは、免除された期間も年金の受給資格期間に算入され、全額免除なら老齢基礎年金の額に2分の1が反映されることです。滞納すると受給資格期間に入らず、障害年金や遺族年金の対象からも外れる可能性があります。払えないなら申請してください。申請は年度単位で、過去2年1か月分まで遡れます。

国民健康保険料には減免の制度があります。災害、失業、事業の廃止や休止、所得の著しい減少などを理由に、申請によって保険料の一部または全部が減額されます。基準は市区町村の条例で決まっているので、窓口に自分の状況を持ち込んで確認するのが確実です。傷病による長期の休業は、多くの自治体で減免事由に該当します。

税についても、納付が困難なときの猶予制度があります。所得税や消費税は、一時に納付することができない事情があると認められれば、換価の猶予や納税の猶予で分割納付にできます。延滞税も軽減されます。何もしないまま滞納すると差押えに進みますが、申請すれば話が変わります。

そして、小規模企業共済に加入している人は、契約者貸付が使えます。掛金の納付月数に応じた掛金総額の範囲内で、事業資金や傷病災害時の資金を低利で借りられます。解約するのではなく借りるという選択があることを覚えておいてください。任意解約すると納付月数によって元本を割り込むため、一時的な資金不足で解約するのは損です。

これらの手続きは、どれも申請主義です。黙っていても誰も教えてくれません。働けない状態になったら、医療機関の次に市区町村の窓口へ行く、という順番を頭に入れておくことです。

長期化したら、障害年金という次の受け皿を見る

休業が長期化して、1年6か月を超える見通しになったときに検討するのが障害年金です。傷病手当金の支給期間が通算1年6か月であることと、障害年金の認定日が原則として初診日から1年6か月経過した日であることは、制度としてつながっています。傷病手当金が尽きるところで障害年金に移る設計です。

個人事業主が加入している国民年金からは、障害基礎年金が支給されます。障害等級1級と2級が対象です。会社員が加入する厚生年金には障害厚生年金があり、3級までカバーされるほか、1級と2級では障害基礎年金に上乗せされます。ここも被用者保険との差が出る部分です。

重要なのは、初診日の時点でどの年金に加入していたかで決まることです。会社員のときに初診を受けた病気であれば、その後に独立していても障害厚生年金の対象になり得ます。逆に、独立後に初診を受けた病気は障害基礎年金だけです。初診日を証明する書類が決定的に重要なので、最初にかかった医療機関の受診記録は必ず残しておいてください。

また、初診日の前日までの保険料納付要件があります。被保険者期間の3分の2以上が納付済みまたは免除済みであること、または直近1年間に未納がないことが必要です。ここで、前の節で書いた免除申請の意味が出てきます。滞納していると障害年金が受け取れません。免除しておけば要件を満たします。この一点だけでも、免除申請をする価値があります。

障害年金の請求は書類が多く、診断書の記載内容が結果を左右します。社会保険労務士に依頼する選択も現実的です。制度を理解して自分で動く場合も、年金事務所の相談窓口を早い段階で使ってください。1年6か月を待ってから動き始めると、書類を揃えるだけで数か月かかります。

休業を取引先へどう伝えるか、順番と文面を決めておく

制度とお金の話に続いて、実務の話をします。個人事業主が働けなくなったとき、収入を守るうえで意外に大きいのが、取引先への伝え方です。伝え方を間違えると、復帰しても仕事が戻ってきません。

伝える順番は、納期が近い相手からです。全員に同時に連絡しようとすると、文面を考えている間に納期が来ます。まず今週中に納品予定のある相手、次に月内に作業がある相手、最後に長期の相談だけしている相手。この順で連絡します。

文面に入れるのは3点だけです。いつまで作業できないか、その間の代替案、連絡が取れる手段。診断名や症状の詳細は書かなくて構いません。相手が知りたいのは病名ではなく、自分の予定をどう組み直せばいいかです。復帰時期が読めない場合は「2週間後に改めて状況をお知らせします」と期限を切ったほうが、曖昧に伏せるより信用されます。

代替案は、用意できる範囲で構いません。作業を引き継げる同業者を紹介する、納品物の一部だけ先に渡す、次回の分量を増やして調整する。どれも難しければ「今回は他の方にお願いしてください」と明言するのも代替案です。判断に必要な情報を渡すのが目的で、無理をして引き受け続けるのが誠実さではありません。

そして、この連絡を発症してから考え始めないことです。文面の下書きを1つ作って、パソコンの分かりやすい場所に置いておく。取引先の一覧と、それぞれの納期の周期を書いた表も同じ場所に置く。私は腰を痛めて動けなかった2か月の間、この一覧がなかったせいで、寝たままスマートフォンで過去のやり取りを掘り返すことになりました。健康なときに30分かけて作っておけば済んだ作業です。

復帰後の単価を守る意味でも、休業中の連絡の質は効きます。長く続いている人ほど、作業そのものの速さより、想定外が起きたときの情報の出し方で評価されています。自分の職種が市場でどう評価されているかは、著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような職種別の統計で確認できますが、その相場の中で上のほうに位置するかどうかを決めているのは、こうした場面での振る舞いです。

病気になる前にやっておく、3つの準備

最後に、健康なうちにやっておくべきことを3つに絞ります。順番も含めて、このままやれば足ります。

第一に、固定費の棚卸しです。月に必ず出ていく金額を、生活と事業に分けて書き出します。家賃、水道光熱費、通信費、食費、保険料、国民年金、国民健康保険料、事務所費、外注費、リース料、借入返済。この合計の6か月分が、最初に確保すべき現金の額です。この作業は30分で終わりますが、やっている人はほとんどいません。

第二に、所得補償の手当てです。商工会議所の休業補償プランと民間の所得補償保険を2つ見積もり、補償額を固定費の合計に合わせます。免責期間の長さと、精神疾患が対象になるかどうかを必ず確認してください。免責が長い商品は保険料が安いですが、その分を現金で埋める必要があります。

第三に、仕事が止まらない形を作ることです。自分が動かないと売上がゼロになる構造は、休業リスクに対して最も弱い形です。業務の一部を外に出せる状態にしておく、継続的な契約を持っておく、複数の取引先を持っておく。この3つで、休んだときの落ち込みを半分にできます。

取引の形そのものも効きます。間に何社も入る取引だと、同じ予算のうち受け手に届く額が削られます。仲介手数料が乗らない直接取引であれば、発注側は同じ予算でより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の条件が効いてくるのは、金額そのものより、同じ売上でも手元に積み上がる速度が変わる点です。備えの原資は、結局のところ手取りから作るしかありません。

制度の数字は毎年度見直されます。傷病手当金の計算方法、国民年金保険料の免除基準、国民健康保険料の減免要件は改定されることがあります。実際に動くときは、協会けんぽ、日本年金機構、そして自分の住む市区町村の最新の公表内容を確認してください。考え方の骨格は変わりませんが、当てはめる数字は必ず現在のものを使ってください。

よくある質問

Q. 国民健康保険に入っている個人事業主は傷病手当金を受け取れますか?

原則として受け取れません。傷病手当金は健康保険法に定められた被用者保険の給付であり、国民健康保険法では市町村や国保組合が条例や規約で定めれば実施できる任意給付とされています。恒常的な制度として実施している市区町村はほぼありません。新型コロナ流行期の特例給付は終了しています。

Q. 会社を辞めて独立した場合でも傷病手当金を受け取れることはありますか?

あります。退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態であれば、資格喪失後の継続給付として受け取り続けられます。支給開始日から通算1年6か月の枠内が対象です。ただし労務不能であることが前提なので、開業して働いている状態では支給されません。

Q. 任意継続被保険者になれば傷病手当金はもらえますか?

もらえません。健康保険法で、任意継続被保険者には傷病手当金と出産手当金が支給されないと定められています。任意継続で受けられるのは療養の給付、高額療養費、埋葬料、出産育児一時金などです。ただし退職時点で受給要件を満たしていた場合の資格喪失後の継続給付は、任意継続に入っていても受けられます。

Q. 傷病手当金の代わりになる備えは何を選べばよいですか?

短期の休業には損害保険会社の所得補償保険、長期には生命保険会社の就業不能保険が対応します。商工会議所や商工会の休業補償プランは団体契約で保険料が抑えられています。補償額は生活費だけでなく事務所費や外注費を含む固定費の合計に合わせ、免責期間を現金で埋められるよう固定費の6か月分の現金を先に確保してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月12日最終更新:2026年9月30日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人

介護職の転職・求人

介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人

医療職の転職・求人

医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方