就労移行支援事業所へ転職するという選択|前の職場との落差と、決め手


この記事のポイント
- ✓就労移行支援への転職で実際に何が変わるのかを
- ✓身体介護のない業務内容
- ✓就職定着率で決まる報酬構造
先日、介護施設で8年働いてきたという方から相談を受けました。腰を痛めて夜勤が続けられなくなり、就労移行支援事業所への転職を考えている。ただ、求人票を読んでも「支援員」という言葉が何を指しているのか分からない、と。
これ、本当に多い相談です。同じ障害福祉の枠の中にあっても、就労移行支援は他のサービスとかなり毛色が違います。結論から言うと、前の職場との最大の落差は、体を使う仕事から言葉を使う仕事に変わることと、事業所の収入の決まり方が変わることの2つです。この2つを理解しないまま転職すると、入ってから「話が違う」と感じることになります。
この記事では、就労移行支援事業所という職場に移ったときに何が起きるのかを、業務内容の変化、報酬構造の違い、確認しておくべき労働条件、面接で聞くべきことの順に整理します。法律の話も出てきますが、必ず噛み砕いて書きます。
就労移行支援は「訓練の場」であって「生活の場」ではない
まず前提を揃えます。就労移行支援は、障害者総合支援法にもとづく訓練等給付のひとつです。一般企業への就職を目指す障害のある方が、原則2年という期限の中で通います。ここが他の障害福祉サービスと決定的に違う点です。
生活介護や施設入所支援は、そこが生活の場です。利用者は何年も通い続けます。就労継続支援B型も期限がありません。一方で就労移行支援は、卒業を前提に設計された場所です。利用者は訓練を受け、実習に行き、就職活動をして、就職して出ていく。事業所は、その出口までを設計する場所です。
つまり、というのがここで必要になる言い換えなのですが、就労移行支援の支援員の仕事は「その人の今日を支える」よりも「その人が2年後に職場で働いている状態を作る」方に重心があります。これが、他の福祉職からの転職で最初に戸惑うところです。
具体的にどう違うか。生活介護では、その日の入浴や食事、排泄の支援が業務の中心にあります。利用者の快適さが直接の目標です。就労移行支援では、遅刻せずに来られるか、指示を正確に聞き取れるか、体調が崩れそうなときに自分から申し出られるか、といった「職場で必要になること」が目標になります。だから、支援員があえて手を出さない場面が出てきます。本人ができることを代わりにやってしまうと、訓練にならないからです。
介護や保育から移ってきた方が最初に違和感を覚えるのは、たいていここです。困っている人を見ると手が出る。それが身についている人ほど、就労移行支援では「待つ」ことに慣れるまで時間がかかります。これ、知らない人が本当に多いんです。
もうひとつ、就労移行支援の利用者には原則として工賃が発生しません。A型やB型は利用者に賃金や工賃を支払いますが、就労移行支援は訓練なので支払いません。事業所側に作業の受注ノルマがないぶん、納期に追われる場面は少なくなります。この点は、B型から移ってきた方が「楽になった」と感じる部分です。
身体介護がなくなる代わりに増える仕事
転職を考えている方の動機として多いのが、体力面の限界です。腰痛、夜勤の負担、シフトの不規則さ。就労移行支援は、この3つがほぼ解消されます。
身体介護はほとんど発生しません。利用者は自力で通所し、自力で日中の活動ができる方が中心です。入浴介助も排泄介助もありません。夜勤もありません。事業所は日中のみの開所で、土日は閉まっているところが多数派です。
ひとつは記録です。就労移行支援では、日々の支援記録が個別支援計画の見直しの材料になります。誰が何をして、何ができて、どこでつまずいたか。これを文章で残します。介護記録も文章ですが、書く中身が違います。介護記録が「何をしたか」の記録だとすれば、就労移行支援の記録は「本人がどう動いたか」の観察記録です。同じ作業をしていても、指示を一度で理解したのか、二度目で理解したのか、周りを見て真似したのか。ここを書き分ける必要があります。
ふたつ目は、面談です。利用者と定期的に一対一で話します。就職活動の進捗、体調、家族との関係、職場に対する不安。これを聞き取り、次の一手を一緒に決めます。人と話すのが得意でない方には、ここが負荷になります。
3つ目は、外部との調整です。ハローワーク、企業、医療機関、相談支援専門員、時には家族。関わる相手の数が多い。介護の現場でもケアマネジャーや医療機関とのやり取りはありますが、就労移行支援では就職先の企業という、福祉の外側にいる相手との調整が入ります。企業の人事担当者に障害特性を説明し、必要な配慮を伝える。この説明力が問われます。
前職で企業に勤めていた方は、ここで強みが出ます。企業側の論理が分かるからです。「この配慮を求めたら、企業側はどこを心配するか」が想像できる人は、実習先との調整がうまくいきます。福祉一筋で来た方より、一般企業を経験した方の方がこの場面では有利です。
報酬構造が変わる。事業所の数字の見え方
ここは、転職前に必ず理解しておいてほしい部分です。
就労移行支援事業所の基本報酬は、就職した利用者がその後も働き続けているかどうかで区分が変わる仕組みになっています。就職させただけでは評価されず、就職後に一定期間定着している人がどれだけいるかで、事業所が受け取る報酬の単価が上下します。
この仕組みが現場に与える影響は小さくありません。まず、無理な就職をさせにくくなります。とりあえずどこかに入れて実績にする、という運用では報酬が上がらないからです。次に、就職後のフォローが業務に組み込まれます。卒業した人の職場を訪問する、電話で様子を聞く、企業側から相談を受ける。この部分が事業所の収入に直結します。
もうひとつ、定員の充足も経営に効きます。利用者が集まらなければ収入が立ちません。だから、事業所によっては支援員の業務に見学対応や説明会、相談支援事業所への挨拶回りが含まれます。求人票にもそれが現れます。
就労移行支援事業所の支援員として、障害のある方の就労支援全般、研修・実習トレーニング実施、面談実施、そして事業所運営全般に携わっていただきます。売上を意識した施策遂行や新規利用者募集、サービス改善なども担当し、チーム支援を大切にする環境です。未経験者歓迎で、対人折衝経験があれば応募可能です。完全週休2日制で、フルフレックス制度や残業少なめ、在宅・リモートワークも可能です。賞与年2回、副業OK、自己啓発支援など、ライフステージに寄り添った働き方ができます。 出典: 求人ボックス
「売上を意識した施策遂行や新規利用者募集」という一文に注目してください。福祉の求人でこの表現が出てくることに驚く方もいると思いますが、事業所の運営を支える業務として明記されています。つまり、この事業所では支援員が集客にも関わるということです。
これを良い悪いで判断する必要はありません。重要なのは、事前に分かるということです。福祉の現場だけをやりたい人がこの求人に応募すると、入ってから「営業をさせられる」と感じます。逆に、企業の営業職から転職してきた人にとっては、前職のスキルが活きる場所になります。
求人票にこの記載がない事業所でも、経営状況によっては同じ業務が発生します。面接で「利用者の募集や見学対応は、どの職種が担当していますか」と聞いておくと、実態が分かります。
期限があるという関わり方
就労移行支援の原則2年という期限は、支援員の働き方にも影響します。
利用者は、いつかいなくなります。就職して卒業するか、期限が来て別のサービスに移るか、途中で通えなくなるか。どの形であれ、関わりには終わりがあります。
長く同じ利用者と関わってきた方にとって、この点は想像以上に大きな違いです。生活介護や施設で10年同じ人を見てきた、という関わり方はここではできません。代わりに、短期間で深く関わり、送り出す。この繰り返しになります。
送り出した後に何も残らないかというと、そうでもありません。就職後の定着支援があるので、卒業生の職場を訪問する機会があります。半年前にここで震えながら面接練習をしていた人が、職場で普通に働いている。この場面を見られるのは、他の福祉サービスにはない経験です。
一方で、2年たっても就職に至らない方もいます。このときの支援が、この仕事のいちばん重い部分です。本人の力の問題ではなく、体調の波、家庭の事情、求人市場の状況が重なることがあります。期限が来たら、就労継続支援B型など別のサービスにつなぐことになります。この判断と説明を、誰がどのタイミングでするのか。事業所によって運用が違うので、見学時に確認しておく価値があります。
職種によって、転職後に任される範囲が変わる
就労移行支援事業所に置かれる職種は、管理者、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員、就労支援員です。求人票では単に「支援員」と書かれることも多いのですが、実際にはどの職種で採用されるかで日々の業務が変わります。
生活支援員は、体調管理、生活リズム、対人関係の調整を担当します。通所が続くよう支える役割です。介護や保育から移ってきた方の経験が活きやすい職種です。
職業指導員は、作業訓練やパソコン訓練、ビジネスマナー訓練を担当します。一般企業での事務経験やIT系の経験がある方が担当することが多い職種です。
就労支援員は、ハローワークや企業との連絡、実習先の開拓、面接同行、就職後のフォローを担当します。外回りが多く、企業の担当者と話す機会が最も多い職種です。営業経験や人事の経験がある方が力を発揮します。
サービス管理責任者は、個別支援計画の作成と見直しを担当します。この職種になるには一定年数の実務経験と研修の修了が必要です。介護や障害福祉での実務経験がある方は、その年数が通算できる場合があるので、転職時に自分の経験年数を整理しておくと選択肢が広がります。
転職の面接では、「どの職種としての採用か」を必ず確認してください。求人票が「支援員」とだけ書いてある場合、労働条件通知書に記載される職種名で確認します。入職後に職種が変わることもありますが、最初の想定を共有しておくことが後のずれを防ぎます。
労働条件通知書で必ず確認する5つの項目
ここからは法務の話です。入職前に書面で確認しておくべき項目を、実際に相談が多い順に挙げます。
1. 業務の内容。労働条件通知書には従事すべき業務の内容を記載することになっています。ここに「就労移行支援事業所における支援業務」としか書かれていない場合、送迎、利用者募集、他事業所への応援が含まれるのかが読み取れません。口頭で確認した内容は、メールで残しておくのが確実です。※実際にトラブルになったとき、口頭の合意は立証が難しくなります。
2. 就業の場所。運営法人が複数の事業所を持っている場合、異動の可能性があります。「変更の範囲」を明示することが求められるようになっているので、将来どこまで異動しうるのかを書面で確認してください。通勤時間が倍になる異動を想定していなかった、という相談は実際にあります。
3. 始業・終業時刻と、時間外労働の有無。就労移行支援は残業が少ない職場ですが、固定残業代が設定されている場合は、何時間分が含まれているのかを確認します。月20時間分の固定残業代が入っていて、実際の残業が月5時間なら実質的な時給は上がりますが、逆のケースもあります。
4. 賃金の内訳。基本給、資格手当、処遇改善に関する手当の内訳を確認します。福祉分野には処遇改善のための加算の仕組みがあり、事業所が受け取った加算をどう職員に配分しているかは事業所ごとに違います。一時金として年1回配分するのか、毎月の手当にするのか。ここは面接で聞いて問題ない範囲です。
5. 試用期間中の労働条件。試用期間中の賃金が本採用後と違う場合、その旨が明記されている必要があります。試用期間だからといって自由に解雇できるわけではありませんが、本採用拒否のハードルが本採用後の解雇より低いのは事実です。※このあたりで不安があるときは、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。
労働条件通知書は、書面またはメール等での明示が義務づけられています。「うちは出していない」と言われたら、その時点で一度立ち止まる判断材料になります。法律はあなたの味方です。
事業所が法令上そろえているべきもの
障害福祉サービスの事業所には、運営基準で求められる体制がいくつかあります。転職先を見極めるうえで、この体制が整っているかどうかは有力な判断材料になります。
虐待防止委員会の設置と、定期的な研修。障害福祉サービス事業者には、虐待の防止のための措置として委員会の設置、指針の整備、研修の実施、担当者の配置が求められています。見学の際に「虐待防止の研修は年に何回ありますか」と聞けば、形式だけなのか実質的に動いているのかが分かります。
身体拘束等の適正化のための措置。やむを得ず身体拘束を行う場合の記録と、適正化のための検討委員会、指針、研修が求められます。就労移行支援では身体拘束が発生する場面は多くありませんが、体制が整っているかどうかは事業所の姿勢を示します。
業務継続計画(BCP)の策定と研修・訓練。感染症や自然災害が起きたときにサービスをどう継続するかの計画です。策定と、それにもとづく研修・訓練が求められています。
個人情報の取り扱い。利用者の障害特性、通院歴、家族構成は、個人情報保護法上の要配慮個人情報にあたります。事業所が第三者提供の同意をどう取っているか、記録の保管方法がどうなっているかは、働く側にとっても重要です。自分が書いた記録が不適切に扱われれば、責任を問われる可能性があるからです。
守秘義務と、退職後の扱い。雇用契約書や誓約書に守秘義務条項が入るのが通常です。退職後も一定期間続く形が一般的で、これ自体は問題ありません。ただし、退職後に同業への転職を禁じる競業避止の条項が広すぎる場合は注意が必要です。期間、地域、職種の範囲が過度に広い条項は無効と判断されることがありますが、争いになること自体が負担です。署名前に読んでください。※内容に不安があれば、署名前に弁護士へ相談してください。
面接と見学で聞くべきこと
転職の可否を判断するために、面接と見学で確認したい項目を挙げます。
利用者数と職員数。定員と実際の利用者数は違います。定員20人でも実利用者が8人という事業所はあります。職員が何人いて、そのうち常勤が何人か。人員配置基準ぎりぎりで回している事業所は、誰かが休んだ日の負担が偏ります。
就職実績の中身。何人が就職したかだけでなく、どんな職種に、どんな雇用形態で就職したかを聞きます。就職後の定着状況まで答えられる事業所は、フォローが機能しています。
記録の方法と、記録にかける時間。電子システムか紙か。記録を勤務時間内に書き終えられるか。ここが崩れている事業所は、持ち帰り仕事が発生します。
サービス管理責任者の在籍状況。サービス管理責任者が不在になると、報酬が減算される仕組みがあります。1人しかいない状態で、その人が長期離脱したらどうなるのか。この質問に慌てる事業所は、体制が脆弱です。
離職率。直球で聞きにくければ、「今いる職員の方は、平均どのくらい勤続されていますか」という聞き方があります。開所から3年たっているのに全員が1年未満なら、理由があります。
研修体制。未経験で入る場合、最初の3か月で何を教わるのか。同行するのか、いきなり一人で担当するのか。
送迎の有無。就労移行支援では送迎を実施する事業所と、しない事業所があります。実施している場合、運転業務が日常的に発生します。社用車なのか自家用車なのか、運転が必須なのか、事故時の責任がどう整理されているのか。求人票の「要普通免許」の一行の裏に毎日の送迎が隠れていることがあるので、必ず確認してください。
利用者の障害種別の構成。精神障害が中心の事業所、発達障害が中心の事業所、知的障害が中心の事業所では、日々の支援の中身がかなり違います。精神障害が中心なら体調の波への対応が多く、知的障害が中心なら作業手順の構造化が中心になります。自分の前職の経験がどちらに近いかで、立ち上がりの早さが変わります。
見学は、できれば利用者が通所している時間帯にお願いしてください。誰もいない事業所を見ても、その職場で何が起きているかは分かりません。見学中に見ておきたいのは、スタッフ同士の声のかけ方です。利用者の前で他のスタッフに指示を飛ばしている、記録のことで言い争っている、といった場面が見えたら、そこは風通しではなく緊張が高い職場です。逆に、スタッフが利用者を呼ぶときの呼び方が統一されているかどうかは、事業所として支援の方針が共有されているかの目安になります。
同じ障害福祉の中で移る場合、何が引き継がれて何が変わるか
障害福祉の他のサービスから就労移行支援に移る方が気にするのが、これまでの経験が引き継がれるかどうかです。ここは制度の話になるので、整理して書きます。
実務経験年数は通算されます。サービス管理責任者や相談支援専門員の要件となる実務経験は、障害福祉サービスや介護保険サービス、医療機関などでの従事期間を通算する仕組みになっています。生活介護で5年、就労移行支援で2年という積み上げ方ができます。転職の際は、前職の法人から実務経験証明書を出してもらう必要があるので、退職時に依頼しておくのが確実です。退職してから何年もたつと、法人が書類を探せなくなったり、担当者が代わって手続きが進まなくなったりします。これ、実際によくあるトラブルです。
研修の修了実績も残ります。サービス管理責任者の基礎研修や実践研修は、修了証が個人に発行されます。転職しても有効です。ただし更新研修の期限があるので、期限管理は自分でしてください。事業所が管理してくれると思っていたら期限が切れていた、という相談を受けたことがあります。
変わるのは、支援の目標設定です。生活介護や施設入所支援では、その人の生活の質が目標になります。就労移行支援では、就労という具体的な出口が目標になります。この違いは個別支援計画の書き方に直結します。生活介護の計画に慣れていると、就労移行支援の計画で求められる具体性の水準に驚くことがあります。「3か月後までに週4日の通所を安定させる」「6か月後までに実習に参加する」というように、期限と到達点をはっきり書きます。
加算の仕組みも違います。障害福祉サービスの報酬は基本報酬に各種の加算が乗る構造で、どの加算が算定できるかはサービス種別ごとに違います。就労移行支援では、就職後の定着状況にかかわる部分が大きい。前の職場では算定していた加算が、ここでは存在しないということが普通に起きます。事務を担当することになったら、最初に加算の一覧を確認しておくと業務の全体像がつかめます。
就労定着支援という別サービスがあります。就労移行支援を利用して就職した方が、就職から一定期間経過した後に利用できる別のサービスです。同じ法人が両方を運営していることが多く、就労移行支援の支援員が就労定着支援も兼務するケースがあります。求人票に「就労定着支援業務あり」と書かれている場合、企業訪問が定期的に発生すると読んでください。
決め手をどこに置くか
最後に、転職の判断軸を整理します。
給与の額で決めようとすると、たいてい迷います。福祉分野の給与は事業所間の差がそこまで大きくないからです。差がつくのは、残業の量、通勤時間、記録の負担、そして自分が担当する範囲の明確さです。
私が相談を受けるときに必ず聞くのは、「前の職場で、いちばん消耗していたのは何ですか」ということです。夜勤なのか、身体介護なのか、人間関係なのか、責任の重さなのか。就労移行支援はそのうちのいくつかを解消しますが、すべてではありません。夜勤と身体介護は確実になくなります。人間関係と責任の重さは、事業所によります。
もうひとつの軸が、自分の前職の経験がどう使われるかです。就労移行支援は、福祉の資格だけでなく一般企業の経験が直接活きる珍しい職場です。事務職の経験があればビジネス文書の指導に、IT系の経験があればパソコン訓練に、営業経験があれば企業開拓に転用できます。
自分の経験がどの職種で評価されるかを考えるとき、まず一般の労働市場でその職種がどう位置づけられているかを知っておくと、話が具体的になります。IT系の職種の報酬水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場に、文章を扱う職種は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、それぞれ年収の分布がまとまっています。訓練プログラムで「この仕事はこういう働き方で、報酬水準はこのくらいです」と説明できる支援員は、利用者にとって心強い存在になります。
ネットワークやITの基礎を体系的に確認したい場合は、CCNA(シスコ技術者認定)の解説で試験範囲と学習の進め方を確認できます。IT系の訓練プログラムを担当するなら、自分が何を教えられて何を教えられないかの線引きが必要になります。
在宅ワークやフリーランスの市場を20年運営してきた立場から見ると、この10年で明確に変わったのは、障害のある方の就労の選択肢に在宅勤務が入ってきたことです。以前は通勤が前提で、通勤ができるかどうかが就職の可否をほぼ決めていました。今は、在宅で働く前提の求人が現実的な選択肢になっています。就労移行支援の訓練内容も、それに合わせて変わりつつあります。オンライン会議の進め方、チャットでの報告の仕方、自宅での勤務時間の管理。これらを訓練に組み込んでいる事業所は、出口の幅が広い。
運営者として見てきた限りでは、仲介が入らない直接の取引ほど、依頼する側と受ける側の双方が納得しやすい傾向があります。同じ予算でも中間のマージンが乗らなければ依頼側はより多くを頼めて、受ける側の手取りは厚くなる。手数料0%という条件が効いてくるのは、金額の大小というより、働いた分がそのまま残るという構造そのものです。
就労移行支援への転職は、待遇の改善だけを目的にすると期待外れになることがあります。逆に、体を使う仕事から言葉と記録の仕事に軸足を移したい人、一般企業の経験を福祉の現場で使いたい人にとっては、他に代えがたい選択肢になります。労働条件通知書を読み、見学して、職種を確認する。この3つを踏んでから決めてください。
よくある質問
Q. 介護職から就労移行支援に転職すると、給与は下がりますか?
夜勤手当がなくなる分、月収ベースでは下がるケースがあります。一方で日勤のみ、土日休みの事業所が多く、時間あたりの条件で比べると大きく変わらないことも多いです。基本給、資格手当、処遇改善に関する手当の内訳を労働条件通知書で確認し、前職の夜勤手当を除いた金額と比較するのが実態に近い判断になります。
Q. 未経験・無資格でも就労移行支援に転職できますか?
職業指導員と生活支援員には制度上の資格要件がないため、未経験・無資格での応募は可能です。むしろ一般企業での事務、営業、IT系の経験は訓練プログラムや企業開拓で直接活きます。ただしサービス管理責任者は実務経験と研修修了が要件なので、そこを目指す場合は経験年数の通算を確認してください。
Q. 求人票に「新規利用者募集」と書いてあるのは何をするのですか?
事業所の見学対応、説明会の実施、相談支援事業所やハローワークへの案内といった業務です。事業所は利用者数が収入に直結するため、支援員がこの部分を担当する事業所があります。福祉の支援業務だけを希望する場合は、面接で「募集や見学対応はどの職種が担当していますか」と確認しておくと入職後のずれを防げます。
Q. 就労移行支援は残業が少ないと聞きますが本当ですか?
夜勤やオンコールがなく、利用者が帰ったあとに緊急対応が発生する業務ではないため、平常時の残業は少ない職場です。ただし記録が勤務時間内に終わるかは事業所によります。固定残業代が設定されている場合は何時間分が含まれるかを労働条件通知書で確認し、見学時に記録の運用も聞いておいてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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