小規模多機能型居宅介護の人間関係|狭い職場での距離の取り方


この記事のポイント
- ✓小規模多機能型居宅介護の人間関係がこじれやすい理由を
- ✓少人数で通い・訪問・泊まりを回す職場の仕組みから整理しました
- ✓看護職員や管理者との関係
小規模多機能型居宅介護の人間関係について調べている方は、すでに働いていて職場の空気に疲れているか、応募を前に「少人数の職場は人間関係が大変そう」と不安を感じているかのどちらかだと思います。
結論から言うと、小規模多機能で人間関係がこじれる原因の多くは、職員の性格ではありません。「仕事の境目があいまいなこと」です。通い、訪問、泊まりを同じ職員で回す職場では、誰がどこまでやるのかが日によって変わります。その境目のあいまいさが、少人数という条件と重なって、摩擦を生みやすくなっています。
だからこそ、距離の取り方にもコツがあります。感情の問題として向き合うより、業務の問題として扱う。自分だけが知っている情報を抱えず、チームに渡す。特定の一人に寄りかからない。この記事では、こじれやすい場面を具体的に挙げながら、狭い職場での距離の取り方と、入職前に人間関係を見抜く方法を整理します。
小規模多機能の人間関係が濃くなる構造的な理由
まず、なぜこの職場で人間関係が濃くなるのかを、仕組みから説明します。理由が分かると、「自分の人付き合いが下手だからつらい」と思い込まずに済みます。
1つ目の理由は、職員の人数です。小規模多機能は、登録定員29人以下、1日の通いは原則15人以下、泊まりは9人以下という小さな単位で運営されています。職員は非常勤を含めても十数人から20人程度という事業所が多く、特養のように何十人もの職員が複数のフロアに分かれて働く職場とは、人との距離がまったく違います。
2つ目の理由は、24時間365日の運営です。
「看護小規模多機能型居宅介護事業所 絆」は、24時間365日の運営で、それぞれの方の予定や体調に合わせて「通い」「泊まり」「訪問看護」「訪問介護」を柔軟に組み合わせ、サービスを提供いたします。利用料が月定額なので(食費、宿泊費は別途)、安心してご利用いただけます。 出典: ina.or.jp
この引用は看護小規模多機能の事業所のものですが、通常の小規模多機能も同じく24時間365日の体制で動いています。利用者の予定や体調に合わせて柔軟に組み合わせる、ということは、職員の側から見ると、日勤、遅番、夜勤と、少ない人数でシフトを回し続けるということです。休みの日にも「明日の訪問、代わってもらえないか」と連絡が来ることがあります。
3つ目の理由は、仕事の持ち回りです。多くの事業所では、同じ職員が通いのフロアに入り、訪問に出て、夜勤もします。そのため、「あの人は訪問に出たがらない」「あの人の夜勤明けはいつも記録が残っている」といった、互いの働き方が全員に見えます。大きな施設なら気にならない小さな差が、ここではすぐに目につきます。
4つ目の理由は、一緒にいる時間の長さです。送迎の車の中、利用者宅への訪問に2人で行くとき、夜勤の引き継ぎ。業務の合間に2人きりになる時間が多く、仕事以外の話もしやすい反面、関係がこじれたときの逃げ場もありません。
こうして並べると分かるとおり、人間関係が濃くなるのは、この職場の仕組みそのものです。誰が働いても、ある程度は濃くなります。問題は、濃くなった関係が「支え合い」に向かうか、「押しつけ合い」に向かうかです。その分かれ目を次から見ていきます。
こじれやすい場面1:当日の組み直しと「誰が訪問に出るか」
小規模多機能で最も摩擦が起きやすいのが、当日の予定変更です。
料金が月額定額なので、家族は「今日は夕方まで預かってほしい」「午後に一度、様子を見に行ってほしい」と頼みやすくなります。事業所がそれを受けると、その日の職員の配置を組み直すことになります。
ここで問題になるのが、「誰が訪問に出るか」「誰が残業して夕方まで残るか」です。
フロアで入浴介助をしている職員は、手を離せません。送迎から戻ったばかりの職員は、記録がたまっています。そんな中で「誰か訪問に行ける人」と声がかかると、全員が少しずつ目をそらします。結果として、断れない性格の職員や、手が空いているように見えた職員に負担が偏ります。
これが何度も続くと、「いつも私ばかり」という不満がたまり、「あの人はいつも逃げる」という見方が生まれます。個人の性格の問題に見えますが、根っこにあるのは、組み直しのルールが決まっていないことです。
正直なところ、組み直しの判断を現場の職員同士の話し合いに任せている事業所は、人間関係がこじれるのを放置しているのと同じだと思います。本来は、管理者や事業所の介護支援専門員が、依頼を受けた時点で「この訪問は○○さんにお願いします。フロアは△△さんが入浴を代わってください」と決めるべきところです。
働いている側としてできることは、組み直しの負担が特定の人に偏っていると感じたら、個人ではなくルールの問題として持ち出すことです。「急な訪問が入ったとき、誰が行くかを決める順番を作りませんか」「その日の担当表に、急な依頼が入ったときの第一候補を書いておきませんか」。こうした提案は、特定の誰かを責める話にならないので、角が立ちにくくなります。
もう1つ見落とされがちなのが、残業の偏りです。夕方に急な延長の依頼が入ると、誰かが送り出しの時間まで残ることになります。子育て中の職員は保育園のお迎えがあり、残れません。その結果、独身の職員や、家族の事情を話していない職員に残業が集まります。
残れない事情のある職員を責めるのは筋違いですが、残る側の職員の負担が見えないままだと、不満は静かにたまっていきます。延長対応の回数を月ごとに記録して偏りが見えるようにする、延長を受けた職員には翌週の早上がりを優先する。こうした目に見える調整があると、「私ばかり」という気持ちは和らぎます。職員の側からも、「今月、延長が私に続いているので、来月の調整をお願いできますか」と数字で伝えれば、感情的な対立にならずに済みます。
こじれやすい場面2:ケアのやり方の違い
2つ目の摩擦は、ケアのやり方の違いから生まれます。
小規模多機能では、同じ利用者に通いでも訪問でも泊まりでも関わるので、職員一人ひとりが利用者の生活歴や好み、苦手なことをよく知っています。これはこの職場の強みです。ところが、よく知っているからこそ、「この方には、こうするのが一番いい」という自分なりのやり方が強くなります。
たとえば、入浴を嫌がる認知症の方への声のかけ方。ある職員は「お風呂」という言葉を使わず、着替えの話から誘う。別の職員は、好きな歌を一緒に歌いながら浴室に向かう。どちらも利用者のことを考えたやり方ですが、日によってやり方が違うと、利用者は混乱します。そして、うまくいかなかった日に「あの人のやり方が悪いから」という話になります。
もう1つ多いのが、訪問先での支援の範囲です。「この方の家では、ついでに洗濯物も取り込んでいる」職員と、「それはケアプランにないからやらない」職員。どちらにも理由がありますが、利用者や家族からは「前の人はやってくれたのに」と言われ、職員同士の不満になります。
このこじれを防ぐには、ケアのやり方を個人の工夫に任せず、チームで統一することです。うまくいった声のかけ方は、申し送りやケース記録に具体的に残す。支援の範囲に迷ったら、その場で判断せず、事業所の介護支援専門員に確認してケアプランに反映してもらう。
私が取材で話を聞いたある事業所では、利用者ごとに「うまくいった関わり方」を1枚のシートにまとめ、ホワイトボードの横に貼っていました。管理者は「誰かのやり方を否定する話し合いより、うまくいった方法を増やす話し合いのほうが続く」と話していました。当時の私は、少人数の職場なら口頭で十分に共有できるだろうと思っていたので、あえて紙に残す手間をかけていることに意外な印象を持ったのを覚えています。
経験年数の違いも、この摩擦を大きくします。特養やグループホームで長く働いてきた職員は、自分のやり方に自信を持っています。未経験で入った職員は、先輩ごとに違うことを言われて混乱します。「Aさんにはこう教わったのに、Bさんには違うと言われた」。新人がこう感じ始めると、先輩同士の関係にも気まずさが生まれます。
新人の側としては、教わったやり方が人によって違うときに、どちらかを選ぶのではなく「この方の場合、どちらのやり方で統一しますか」と、申し送りの場や管理者に確認するのが安全です。先輩の側としては、自分のやり方を教えるときに「これは私のやり方で、事業所の決まりはこうです」と分けて伝えるだけで、新人の混乱はずっと減ります。
こじれやすい場面3:夜勤の引き継ぎと申し送り
3つ目の摩擦は、夜勤の前後の引き継ぎです。
小規模多機能の夜間は、夜勤の職員1人以上と宿直の職員1人以上を置く基準です。泊まりの利用者を見ているのは実質1人、という時間帯が長くあります。そのため、夜勤に入る職員は、日中に何があったかを正確に知っておく必要があります。
ここで起きやすいのが、「聞いていない」問題です。
「今日の午後から熱っぽかった」「夕食をほとんど食べなかった」「家族から、今夜は電話がかかってくるかもしれないと言われた」。こうした情報が夜勤者に伝わっていないと、夜中に慌てることになります。そして翌朝、「どうして言ってくれなかったのか」という不満が、日勤の職員に向かいます。
逆の方向もあります。夜勤明けの職員が疲れていて、申し送りが短くなる。日勤の職員が「夜に何があったのか分からない」と困る。記録が残っていないと、「夜勤はちゃんと見ていたのか」という疑いにつながります。
夜勤明けの申し送りの時間は、夜勤者にとっては一刻も早く帰りたい時間であり、日勤者にとっては朝の送迎の準備で慌ただしい時間です。互いに余裕がない時間に、大事な情報のやり取りが集中する。これが、夜勤の前後に摩擦が起きやすい理由です。
対策は、口頭の申し送りに頼りすぎないことです。申し送りで必ず伝える項目(体温、食事量、排泄、服薬、転倒の有無、家族からの連絡)を決めておき、記録用紙や記録システムに書く欄を作る。夜勤者は、何もなかった項目も「特になし」と書く。こうしておくと、「言った」「聞いていない」のやり取りが減ります。
もう1つ、夜勤明けの職員を気遣う一言も効きます。「お疲れさまでした。夜中の転倒のこと、記録を見ておきますね」。これだけで、夜勤者は一人で夜を背負った気持ちから少し解放されます。
夜勤の回数の偏りも、関係をこじらせる原因になります。夜勤ができる職員が限られている事業所では、夜勤に入れる数人に月5回、6回と回数が集まります。夜勤に入らない職員には事情があるのですが、夜勤が続いている職員から見ると「なぜ自分ばかり」という気持ちが生まれます。
これも、個人同士で解決しようとするとこじれます。夜勤の回数の上限を事業所として決める、夜勤に入れる職員を増やすための採用を管理者に求める、といった形で、運営の問題として扱うのが筋です。夜勤に入れない側の職員は、日中の訪問や記録の負担を多めに引き受けるなど、目に見える形で役割を分け合うと、互いの不公平感が小さくなります。
職種の違いから生まれる関係:看護職員、介護支援専門員、管理者
人間関係の悩みは、介護職員同士だけではありません。職種の違いから生まれる摩擦もあります。
看護職員との関係
小規模多機能には看護職員を1人以上置く決まりですが、常勤でなくてもかまいません。そのため、看護職員が1人か2人しかおらず、週に数日だけ来るという事業所もあります。
介護職員から見ると、「看護師がいない日に何かあったらどうするのか」「電話で相談しても、来てくれない」という不満が生まれます。看護職員から見ると、「バイタルの記録が不十分で判断できない」「何でも電話してくる」という不満が生まれます。
この摩擦は、どちらかが悪いのではなく、相談の基準が決まっていないことが原因です。「体温が37.5度以上なら連絡」「転倒して痛みを訴えたら連絡」というように、看護職員に連絡する基準を事前に決めておくと、介護職員は迷わず、看護職員も判断しやすくなります。
介護支援専門員との関係
事業所の介護支援専門員は、利用者のケアプランを作り、通い・訪問・泊まりの組み合わせを調整します。現場の職員から見ると、「家族の要望をそのまま受けて、現場の負担を考えてくれない」と感じることがあります。介護支援専門員から見ると、「現場の職員が利用者の変化を報告してくれない」と感じることがあります。
ここも、情報の流れを作ることで改善します。月に1回でも、現場の職員と介護支援専門員が利用者の状態について話す時間を持つ。現場で気づいたことを、介護支援専門員に伝える記録の欄を作る。
管理者との関係
少人数の職場では、管理者との相性が職場の居心地をほぼ決めます。管理者が現場に入り、職員の話を聞き、組み直しの判断を引き受けている事業所では、人間関係の摩擦が表に出る前に吸収されます。管理者が事務所にこもり、現場で起きていることを知らない事業所では、摩擦が職員同士の対立に変わりやすくなります。
管理者との関係に悩んでいる場合は、同じ法人の本部や、別の事業所の管理者に相談できる窓口がないか確認してください。
管理者自身も、実は板挟みの立場にいます。法人からは登録者を増やすことや人件費を抑えることを求められ、家族からは柔軟な対応を求められ、職員からは負担を減らしてほしいと言われる。少人数の事業所では、管理者が夜勤や送迎に入って人手の穴を埋めていることも珍しくありません。
管理者に要望を伝えるときは、この立場を踏まえておくと話が進みやすくなります。「負担が大きいのでなんとかしてほしい」ではなく、「夜勤の回数を月4回までにできれば続けられます」「急な訪問の担当表を作れば、組み直しの時間が短くなると思います」と、具体的で実行しやすい形にして持っていく。管理者にとっても、判断しやすい提案は受け入れやすいものです。
利用者や家族との距離:なじみの関係の落とし穴
人間関係の話の中で、見落とされがちなのが利用者や家族との距離です。
小規模多機能の強みは、なじみの職員が通い・訪問・泊まりのすべてで関わることです。利用者はなじみの顔に安心し、家族は「あの職員さんに任せれば大丈夫」と信頼を寄せます。
ところが、この関係が近くなりすぎると、いくつかの問題が起きます。
1つ目は、特定の職員への依存です。「あの方は私でないと入浴してくれない」「あの家の家族は、私にしか本音を話さない」。やりがいを感じる一方で、その職員は休みにくくなり、他の職員は「あの人が独り占めしている」と感じます。職員同士の関係にも、ひびが入ります。
2つ目は、家族からの個人的な連絡です。送迎や訪問で家族と顔を合わせる機会が多いので、個人の携帯電話の番号を聞かれたり、休みの日に相談の電話がかかってきたりすることがあります。断りにくい雰囲気の中で応じてしまうと、職員の私生活に仕事が入り込み、疲れがたまります。
3つ目は、利用者の生活への踏み込みすぎです。独り暮らしの方の訪問で、頼まれるままに買い物や金銭の管理まで手伝ってしまう。善意からであっても、トラブルが起きたときに職員個人が責任を問われることになりかねません。
距離を保つためには、関係を個人ではなく事業所としてのものにしておくことです。うまくいく関わり方は記録に残して他の職員と共有する。家族との連絡は事業所の電話を通す。支援の範囲に迷ったら、その場で判断せずに持ち帰る。こうしたことを徹底すると、利用者や家族との信頼関係を保ちながら、自分を守ることができます。
利用者との距離の問題は、職員同士の関係にも直結しています。ある職員が家族と個人的に親しくなり、家族からの要望をその職員だけが受けるようになると、他の職員には情報が回ってこなくなります。「家族はそう言っていたけれど、私は聞いていない」というすれ違いが起き、職員同士の不信感につながります。
また、利用者が亡くなったり、状態が悪化して特養などに移ったりしたときの受け止め方も、職員によって違います。深く関わっていた職員ほど喪失感が大きく、周囲の職員が普段どおりに仕事をしている様子に傷つくことがあります。こうした気持ちを話せる場、たとえば看取りのあとに短い振り返りの時間を持つ事業所では、職員同士の関係も穏やかに保たれやすいです。
狭い職場での距離の取り方
ここまでの場面を踏まえて、少人数の職場で人間関係に疲れないための距離の取り方をまとめます。
不満は「人」ではなく「業務」の話にする
「あの人が訪問に出ない」ではなく「急な訪問が入ったときの担当の決め方がない」。「あの人のやり方が雑」ではなく「この方の入浴の声かけが職員によって違う」。主語を人から業務に変えるだけで、同じ内容でも受け取られ方が大きく変わります。
自分だけが知っている情報を抱えない
利用者のことをよく知っていることは強みですが、それを自分だけのものにしておくと、周囲との関係がゆがみます。うまくいったことは、その日のうちに記録に残す。「私がいないと回らない」状態を自分から作らないことが、長く働くための距離の取り方です。
仲のよい一人に寄りかからない
少人数の職場では、話しやすい同僚が1人いると、とても心強いです。ただ、その人とだけ話し、愚痴を言い合う関係になると、周囲からは「グループ」に見えます。また、その人が辞めたときに、自分の居場所がなくなります。仲のよい人を大切にしつつ、業務の話は誰とでも同じようにする意識を持っておくと、関係が偏りません。
仕事以外の時間の線を引く
休みの日の連絡に、すべて応じる必要はありません。緊急時の連絡のルールは事業所で決めてもらい、それ以外は次の出勤日に対応する。送迎の車の中で私生活の話をどこまでするかも、自分で決めてかまいません。
小さなお礼を言葉にする
「訪問、代わってくれてありがとう」「昨日の記録、分かりやすくて助かりました」。少人数の職場ほど、こうした一言の効果は大きくなります。お礼を言葉にすることは、相手に借りを作らない関係を保つことにもつながります。
噂話の輪に入らない
少人数の職場では、休憩室での噂話がすぐに全員に広がります。誰かの悪口に相づちを打っただけでも、「あの人も同じ意見だった」と伝わることがあります。噂話が始まったら、否定も同意もせずに業務の話題に切り替える、休憩の時間をずらす。小さな工夫ですが、どの輪にも属さない立場を保つことは、狭い職場で自分を守るうえでとても効果があります。
距離を取ることと、冷たくすることは違う
ここまで読むと、距離を取ることが「人付き合いを避けること」のように感じるかもしれません。そうではありません。挨拶や声かけは誰にでも丁寧にする。困っている同僚がいれば手を貸す。そのうえで、私生活の話や感情のぶつけ合いには深入りしない。この線引きができている人ほど、少人数の職場で長く働けています。
「合わない」の正体を見分ける:摩擦とハラスメントの線引き
人間関係に疲れたとき、それが「職場の仕組みから来る摩擦」なのか、「特定の人からのハラスメント」なのかを見分けておくことが大切です。対処のしかたがまったく違うからです。
ここまで書いてきた、組み直しの押しつけ合い、ケアのやり方の違い、申し送りの行き違いは、仕組みから来る摩擦です。ルールを作ったり、記録のしかたを変えたりすることで、改善できる余地があります。
一方で、人前で繰り返し怒鳴られる、無視される、必要な情報を意図的に渡されない、特定の人だけにきつい業務を押しつけられる、といった言動は、ハラスメントにあたる可能性があります。これは業務の工夫で解決する問題ではありません。
事業主には、パワーハラスメントを防ぐための措置を講じる義務があります。小さな事業所でも同じです。ハラスメントだと感じたら、日時と内容を記録に残し、管理者や法人の本部の相談窓口に相談してください。事業所の中で相談できない場合は、各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーで相談できます。
また、利用者や家族からの暴言や、訪問先でのハラスメントもあります。厚生労働省は介護現場のハラスメント対策について事業者向けの資料を公表しており、職員が一人で抱え込まずに事業所として対応することが求められています。訪問を2人体制にする、担当を変えるといった対応を、事業所に求めてかまいません。
摩擦なのかハラスメントなのかの判断に迷うときは、「同じことが、ほかの職員にも起きているか」を考えてみてください。職場全体で起きているなら仕組みの問題、自分だけに向けられているなら人の問題である可能性が高くなります。
もう1つの見分け方は、「相談したときの反応」です。仕組みの問題なら、管理者に具体的な改善を提案すれば、何かしらの反応が返ってきます。担当表を作る、申し送りの項目を決める、夜勤の回数を見直す。すべてが通るわけではなくても、話し合いの場は持てるはずです。
一方で、相談したことで逆に立場が悪くなる、相談の内容が相手に筒抜けになる、「そのくらい我慢して」と取り合ってもらえない、という場合は、職場の中で解決するのは難しい状況です。この段階まで来たら、法人の本部や外部の相談窓口を使うこと、あるいは職場を移ることを、ためらわずに考えてください。我慢を続けて心身を壊してしまうと、介護の仕事そのものを続けられなくなります。
入職前に人間関係を見抜く方法
これから小規模多機能で働こうとしている方は、入職前にある程度、人間関係の傾向を見抜くことができます。
数字で見る
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、事業所ごとに職員の人数、経験年数、前年度に採用した人数と退職した人数などを調べられます。少人数の職場で、毎年のように採用と退職が繰り返されている場合は、その理由を面接で聞いてみる価値があります。
見学で見る
・利用者の前で、職員同士が穏やかに声をかけ合っているか ・ホワイトボードや記録に、その日の訪問や担当が見える形で書かれているか ・管理者が現場に出て、職員と自然に話しているか ・見学者への挨拶が、特定の職員だけでなく全体からあるか ・休憩のとき、職員がばらばらに過ごしているか、特定の人たちだけで固まっているか
面接で聞く
・当日の予定変更が入ったとき、誰が職員の配置を決めていますか ・申し送りはどのような方法で行っていますか ・職員同士でケアのやり方を話し合う場はありますか ・今いる職員の方は、何年くらい働いていますか ・職員が困ったとき、管理者以外に相談できる窓口はありますか
面接の最後に「職員の方と少しお話しできますか」とお願いしてみるのも有効です。管理者のいない場で、現場の職員に「働いていて大変なことは何ですか」と聞くと、求人票や面接では出てこない実感のこもった答えが返ってくることがあります。
この5つの質問にすらすら答えられる事業所は、人間関係の摩擦を仕組みで減らそうとしている事業所です。答えがあいまいだったり、「うちはみんな仲がいいので」とだけ返ってきたりする場合は、仕組みではなく個人の相性に任せている可能性があります。
正直なところ、「アットホームな職場です」という求人票の言葉は、人間関係の良さを判断する材料にはなりません。少人数の職場はどこでも、ある意味でアットホームです。見るべきなのは、雰囲気を表す言葉ではなく、雰囲気を支える仕組みがあるかどうかです。
見学を申し込む時間帯も工夫できます。多くの事業所は、利用者が落ち着いている午後の早い時間に見学を案内します。可能であれば、朝の送迎が戻る時間や、夕方の送り出しの時間を見せてもらえないか相談してみてください。一番慌ただしい時間に、職員同士がどんな言葉を交わしているか。そこに、その職場の人間関係の本当の姿が出ます。
現場を長く見てきた立場から、少人数の職場で長く働く人について
働く人と職場の組み合わせを長く見てきた立場から言えば、少人数の職場で長く働いている人は、人付き合いが特別に得意な人ではありません。「人の問題に見えることを、仕組みの問題として扱える人」です。
少人数の職場では、誰かとの関係がこじれると、毎日の仕事がすべて重く感じられます。そのときに「あの人が悪い」で止まらず、「どういう決まりがあれば、この摩擦は起きなかったか」と一歩引いて考えられる人は、自分の気持ちも守れますし、職場全体も少しずつ働きやすくなります。
同時に、どれだけ工夫しても変わらない職場があるのも事実です。管理者が組み直しを引き受けない、相談しても取り合ってもらえない、ハラスメントが放置されている。そういう場合は、自分を責める前に、運営の違う別の事業所に移ることも選択肢に入れてください。小規模多機能という仕事そのものが合っていても、その事業所の運営が合わないことは十分にあります。
少人数の職場の人間関係には、よい面もあります。職員全員が利用者一人ひとりを知っているので、誰かが体調を崩したときにすぐ代われる。夜勤明けの職員に「昨夜は大変だったね」と声をかけられる。家族から感謝の言葉をもらったとき、チーム全員で喜べる。大きな施設では得にくい、この顔の見える支え合いが、小規模多機能で働き続ける人の支えになっています。
職場の人間関係や働き方の悩みを、第三者と一緒に整理したいときは、専門職に相談するのも1つの方法です。働き方や職場選びの相談にのる専門職については、キャリアコンサルタントの資格ガイドで役割と相談できる内容がまとめられています。また、職場の悩みや転職の迷いを聞く仕事の中身は、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。
職場を移るかどうかを考えるときには、給与の条件も比べることになります。介護職員の給与の相場や分布は介護職員の年収・単価相場にまとめられているので、今の条件と比べる材料にしてみてください。人間関係のつらさを我慢して続けるより、条件と環境を冷静に比べて選び直すほうが、介護の仕事を長く続けることにつながります。
よくある質問
Q. 小規模多機能型居宅介護は人間関係が大変ですか?
職員が十数人程度と少なく、通い・訪問・泊まりを同じ職員で回すため、互いの働き方がよく見え、関係は濃くなりやすい職場です。ただし、こじれる原因の多くは性格ではなく、当日の組み直しや訪問の割り振りなど業務の境目があいまいなことです。ルールや記録の仕組みが整った事業所では摩擦は小さくなります。
Q. 同僚と合わないとき、どう距離を取ればよいですか?
不満を人ではなく業務の話として伝えることが基本です。「あの人が訪問に出ない」ではなく「急な訪問の担当の決め方がない」と持ち出すと、角が立ちにくくなります。仲のよい一人に寄りかからず、業務の話は誰とでも同じようにすること、休日の連絡に応じる範囲を決めておくことも、少人数の職場で疲れないためのコツです。
Q. 小規模多機能で利用者や家族との距離はどう保てばよいですか?
なじみの関係は強みですが、特定の職員に依存が集まると休みにくくなり、職員同士の関係にも影響します。うまくいく関わり方は記録に残して共有し、家族との連絡は事業所の電話を通すことが大切です。支援の範囲に迷ったらその場で判断せず、事業所の介護支援専門員に確認しましょう。
Q. 入職前に小規模多機能の人間関係を見抜く方法はありますか?
介護サービス情報公表システムで職員の採用数と退職数、経験年数を確認できます。見学では職員同士の声のかけ方や管理者が現場に出ているかを見て、面接では当日の予定変更を誰が決めるか、申し送りの方法、職員の勤続年数を聞いてみてください。答えが具体的な事業所は、仕組みで摩擦を減らそうとしています。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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