保育士が独立するという道|準備することと、始めたあとの現実


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この記事のポイント
- ✓保育士が独立するときの働き方の種類
- ✓始めたあとに訪れる心の変化までを順番に整理しました
- ✓判断に迷っている方が現実を把握するための記事です
「このまま園で働き続けるのか、それとも独立するのか」。この問いを抱えたまま、何年も過ごしている方がいます。
そのご相談、本当に多いんです。そして共通しているのが、「独立したい」というより「今の働き方を続けられる気がしない」という気持ちが出発点になっていることです。
大丈夫です。まず、独立という言葉の中身を分けていきましょう。保育士の独立には、いくつもの形があります。全部を一度に背負う必要はありません。この記事では、働き方の種類、始める前に整えておくこと、そして始めたあとに実際に起きることを、順番に見ていきます。
保育士の独立には、いくつもの形がある
独立というと、園を辞めて自分の施設を立ち上げる、という絵が浮かぶかもしれません。でも、実際にはもっと段階があります。
フリーランスとして働く場合、一般的に自分でスケジュール管理をしながら、自分の都合や好きな時間にあわせて勤務できることが特徴です。個人事業主として組織に属さず柔軟に働けるため、魅力に感じる方も多いでしょう。実際に、保育士資格を活かして、起業・独立する方はたくさんいるようです。 出典: sitter.kidsna.com
形を大きく分けると、4つになります。
1つめは、子どもと直接関わる仕事を個人で受ける形です。ベビーシッター、訪問保育、一時預かり、産前産後のサポート。今までしてきた仕事に近く、移行しやすい形です。
2つめは、自分で保育の場を持つ形です。家庭的保育や小規模な施設の運営がこれにあたります。設備や届出が必要になり、準備の量が一段上がります。
3つめは、保育の経験を知識として提供する形です。子育ての相談、講座やセミナー、保護者向けの講演、保育士を目指す人への指導。人の前で話す仕事です。
4つめは、保育以外の分野で経験を使う形です。記事の執筆、教材や玩具の企画、園向けサービスの支援、子ども向けの音楽や造形。ここは保育の外に出る選択になります。
つまり、独立といっても入口はばらばらで、必要な準備も違います。まずは「自分がどの形に近いのか」を決めてから、準備の話に進んでください。順番を逆にすると、何を用意すればいいのか分からないまま時間が過ぎます。
こういうご相談もよくあります。「独立したいけれど、何から手を付けていいか分からない」。それは、形が決まっていないからです。決まれば、必要なことは自然と絞られます。
ベビーシッター・訪問保育として働く
いちばん移行しやすいのが、この形です。
ご家庭に伺って、お子さんを預かります。働き方としては、シッターのマッチングサービスに登録する方法と、個人で直接依頼を受ける方法があります。
登録型は、依頼の獲得を自分でしなくてよい点が大きな利点です。保険や保護者の確認がサービス側で用意されている場合もあります。
KIDSNAシッター(キズナシッター)は、時給1600円から、短時間やWワーク歓迎、自宅近くで週1もOK!保育士資格・幼稚園教諭免許・看護師免許をお持ちの方だけができるベビーシッター/キッズシッターのお仕事求人です。 ベビーシッター保険に加入済み、利用保護者は全員審査済みで安心してお仕事をしていただけます。ベビーシッター未経験者も歓迎のテレビ電話登録会も実施中。ご登録お待ちしています。 出典: sitter.kidsna.com
こうしたサービスでは、保育士資格や幼稚園教諭免許を持っていることが登録の条件になっていることがあります。資格を持っている方にとっては、そこが強みになります。あわせて確認しておきたいのが、保険と保護者側の審査をサービス事業者が用意しているかどうかです。この2つを自分で手配しなくてよいことは、始める段階では想像以上に大きい差になります。
直接受ける形は、条件を自分で決められる代わりに、集客も契約も保険も自分で用意することになります。最初から直接だけで組み立てるのは負担が大きいので、登録型で経験を積みながら、直接の依頼を少しずつ増やしていく方が現実的です。
ここで大事な注意があります。子どもを預かる事業は、規模や形態によって自治体への届出が必要になる場合があります。認可外保育施設としての届出、居宅訪問型保育の扱い、事業を始めるときの手続き。これらは自治体ごとに案内が異なりますので、必ずお住まいの市区町村の担当窓口で確認してください。ここは記事の情報で判断せず、直接聞いていただきたい部分です。
体力面の話もしておきます。訪問の仕事は、移動が入ります。園なら1つの建物の中で完結していたものが、移動時間を含めた組み立てになります。1日に何件回るか、移動をどう見積もるか。ここを甘く見ると、思ったより早く疲れます。
自分で保育の場を持つという選択
自分の施設を持つ形は、準備が最も大きくなります。
家庭的保育(いわゆる保育ママ)、小規模な保育施設、認可外の保育施設、一時預かりの場。どれを選ぶかによって、必要な要件が変わります。設備の基準、職員の人数、面積、避難の経路、給食の提供方法。
これらの要件は、制度と自治体によって定められています。国の制度の枠組みは厚生労働省やこども政策を所管する省庁が示していますが、実際の運用は自治体ごとに異なります。開設を本気で検討する段階になったら、必ず自治体の保育担当課に相談してください。事前相談を受け付けている自治体が多く、そこで要件と手順が分かります。
資金の面も見ておきます。物件の取得や改修、備品、人件費、開設までの生活費。これらを合わせると、まとまった資金が必要になります。日本政策金融公庫では創業に関する融資制度が用意されていますので、資金の相談先として日本政策金融公庫の案内を確認しておくとよいでしょう。制度の内容は改定されますので、最新の情報は公式の案内で確認してください。
準備の量が多いぶん、この形は「いつか」で終わりやすい選択でもあります。相談を受けていて感じるのは、開設まで進む方は、必ず期限を切っているということです。何年後に何をするか、そのために今年は何を終えるか。漠然と憧れているうちは、動きません。これは意志の強さの問題ではなくて、計画の形の問題です。
もう1つ。この形を選ぶ方には、必ずお伝えしていることがあります。開設したら、あなたは保育者であると同時に経営者になります。人を雇い、労務を管理し、資金を回す立場です。保育が好きだから独立する、という動機だけで進むと、この部分で苦しくなります。逆に言えば、ここを想定しておけば準備ができます。
保育の外で、経験を活かすという道
体力面の不安がある方、家庭の事情がある方、あるいは子どもと直接関わる形から少し離れたい方に向けた選択肢です。
子育ての相談を受ける仕事があります。保護者からの相談に応じ、発達や生活のことを一緒に整理する。園で日々していた保護者対応が、そのまま仕事の形になります。オンラインで対応する形なら、場所の制約もありません。子育て中の家庭からの相談に応じる仕事の内容は子育て・教育・進学相談のお仕事にまとまっています。どんな依頼があるのかを知るところから始めてみてください。
書く仕事もあります。保育や子育てに関する記事、園向けの資料、保護者向けの通信。現場を知らない人には書けない領域です。文章を扱う仕事の報酬水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。数字を見ておくと、どのくらいの量を書けば生活の足しになるのかが具体的に想像できます。
講座や研修を行う仕事もあります。保育士向けの研修、保護者向けの子育て講座、地域の子育て支援センターでの講話。人の前で話すことに抵抗がなければ、ここは経験がそのまま価値になります。
子ども向けの音楽や表現の分野で活動する方もいます。園で使う歌や手遊び、音源の制作、劇の伴奏。音を扱う仕事の形は作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事にまとめられています。専門的に見えますが、園で日常的に音楽に触れてきた経験が土台になります。
園の広報や情報発信を支える仕事もあります。採用の記事、園のホームページ、保護者向けの発信。この領域はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で全体像が確認できます。現場の言葉が分かる人が書くと、内容が具体的になります。
こうした形を選んだ方は、実際に増えています。
実際に保育士で保育園や認定こども園での経験を積んだ後、フリーランスや個人事業主として独立した人も増えています。 出典: for-good.net
独立する前に整えておく5つのこと
形が決まったら、準備に入ります。順番に見ていきます。
第1に、生活費の見通しです。独立してすぐに収入が安定することは、ほとんどありません。最低でも6か月分、できれば12か月分の生活費を用意してから動くことをおすすめしています。この蓄えは、お金の問題であると同時に、心の問題です。残高が減っていく不安は、判断を狂わせます。焦って条件の悪い仕事を受けてしまう方を、何人も見てきました。
第2に、開業の手続きです。個人事業主として事業を始める場合、税務署に開業届を提出します。あわせて、青色申告の承認申請をしておくと、確定申告のときに使える制度の幅が広がります。手続きや要件の詳細は国税庁の案内で確認してください。
第3に、健康保険と年金の切り替えです。園を退職すると、健康保険と厚生年金から抜けることになります。国民健康保険と国民年金への切り替え、あるいは任意継続という選択肢もあります。年金の手続きについては日本年金機構で案内が出ています。ここは退職後に期限がありますので、辞める前に確認しておいてください。
第4に、保険です。子どもを預かる仕事では、万一の事故に備えた賠償責任保険への加入が実質的に必須になります。登録型のサービスを使う場合はサービス側で加入していることがありますが、直接受ける場合は自分で用意します。これは費用の問題ではなく、預ける側の安心の問題です。
第5に、契約書と記録の形です。誰と、どんな内容を、いくらで、どういう条件で。これを書面にしておく習慣は、独立した最初の日から持っておいてください。口約束で始めた仕事ほど、後で食い違います。
お金の管理を、最初に仕組みにしておく
独立して最初につまずくのが、この部分です。
園で働いていたときは、給与が振り込まれ、税金と社会保険料は天引きされていました。独立すると、この全部を自分でやります。
やることは3つです。収入と支出を記録すること。年に1回、確定申告をすること。納める税金と保険料を、あらかじめよけておくこと。
3つめが、いちばん見落とされます。入ってきたお金を全部使ってしまい、翌年の納付の時期に困る。この相談も、よくあります。売上の一部を別の口座によけておく習慣を、最初から作ってください。
記録は、会計ソフトを使うと楽になります。freeeやマネーフォワードのようなサービスは、銀行口座と連携して取引を取り込めます。手書きの帳簿で始めて挫折する方が多いので、最初から仕組みに乗せておくほうが続きます。
領収書やレシートは、その日のうちに扱いを決めてください。溜めると、年末に何時間もかかります。私も独立した最初の年、確定申告の直前に1年分の領収書を前にして途方に暮れた経験があります。あれは本当につらかったです。翌年から月に1度まとめる形に変えたら、負担がまるで違いました。同じ失敗をしないでください。
収入の見通しを立てるときは、相場を知っておくことも役に立ちます。職種別の報酬レンジをまとめた保育士の年収・単価相場では、雇用形態や地域による差を確認できます。園で働いていたときの収入と、独立後にどのくらいの仕事量が必要になるかを比べる材料になります。
独立したあとに訪れる、心の変化
ここからは、私が普段お伝えしている話です。
独立して最初の数か月、多くの方が同じ変化を経験します。
まず、人と話す量が急に減ります。園にいたときは、同僚がいて、保護者がいて、子どもがいました。それが、一日誰とも話さない日が出てきます。これは特別なことではなくて、ほとんどの方が通る道です。
次に、評価してくれる人がいなくなります。園では、良くも悪くも誰かが見ていました。独立すると、自分の仕事がうまくいっているのかどうかを、自分で判断することになります。この不確かさは、思ったよりこたえます。
そして、休む理由が自分で作れなくなります。休んだ日は収入がゼロになる。この計算が頭にあると、体調が悪くても動いてしまいます。
対処法をお伝えします。3つあります。
1つめは、人と話す予定を先に入れることです。仕事の予定ではなく、話す予定です。同業の集まりでも、以前の同僚とのお茶でも構いません。週に1回でいいので、カレンダーに入れておいてください。
2つめは、休む日を先に決めることです。仕事が入らなかった日を休みにするのではなく、休みを先に置いて、残りに仕事を入れる。順番を逆にするだけで、休めるようになります。
3つめは、自分の仕事を記録することです。何をしたか、何が良かったか。短くて構いません。誰も評価してくれない環境では、自分で記録を残しておくことが支えになります。
大丈夫ですよ。この変化は、対策できるものです。あなたが弱いから起きているのではありません。環境が変わったから起きている、それだけです。
※ 眠れない日が続いている、気持ちの落ち込みが2週間以上続いている、といった場合は、対処法を試す前に医療機関を受診してください。判断が難しい状態のときに大きな決断をすると、後で選び直すことになります。
収入が安定するまでの、進み方
いきなり全部を切り替えないでください。これが、いちばんお伝えしたいことです。
現実的な進み方は、重なりを作ることです。園で働きながら、休みの日にシッターの仕事を1件受けてみる。副業として記事を1本書いてみる。この段階で、自分に合うかどうかがかなり分かります。
※ 勤務先の就業規則で副業の扱いが定められている場合があります。始める前に必ず確認し、許可が必要な場合は手続きを踏んでください。
重なりの期間を持つ利点は3つあります。収入が途切れないこと。実際にやってみて判断できること。そして、辞める決断を「今の職場から逃げるため」ではなく「次に進むため」にできることです。
この3つめが、後から効いてきます。逃げるために独立すると、次の場所でも同じ問題に見えてしまうことがあります。何から離れたいのかを言葉にしてから動くと、進む先が具体的になります。
独立の準備の進め方は、他の職種でも共通する部分があります。専門性を持つ人がどう独立していくかを整理した通訳のフリーランス独立ガイド|オンライン通訳の需要と年収【2026年版】では、需要の見つけ方と単価の考え方がまとめられています。職種は違っても、依頼を得る仕組みを作るという課題は同じです。
未経験の分野に移る場合の進め方は、Webマーケターのフリーランスの始め方|未経験からの独立ロードマップ【2026年版】が参考になります。学ぶ順番と、実績の作り方が段階で整理されています。
資格を取ることで独立に近づけるかを考えている方もいると思います。資格そのものが仕事を運んでくるわけではない、という現実を整理したCSR検定やサステナビリティ・プランナーは役に立つ?就職・独立への影響は、判断の材料になります。資格を取る前に読んでおくと、期待の置き方が変わります。
書類や連絡文の書き方に不安がある方にはビジネス文書検定があります。見積書や請求書、依頼者へのメールを書く場面が独立後は毎日来ますので、土台があると楽です。技術寄りの領域に関心があればCCNA(シスコ技術者認定)のような資格もありますが、保育の独立と直接結びつくものではありません。オンラインで仕事をする環境を自分で整える必要が出てきたときに、知識があると困らないという程度に考えてください。
依頼をどう見つけるか
独立の相談で、次に多いのがこの質問です。「仕事は、どうやって取るんですか」。
正直にお伝えすると、ここがいちばん時間のかかる部分です。保育の腕があることと、依頼が来ることは別の話だからです。
方法は、大きく3つに分かれます。
1つめは、登録型のサービスを使うことです。シッターのマッチングサービス、仕事を紹介するサイト、地域の子育て支援の登録制度。自分で探す手間が省ける代わりに、条件はサービス側の枠組みに沿うことになります。始めたばかりの時期は、この形が現実的です。
2つめは、これまでのつながりから受けることです。以前の勤務先、実習で関わった園、地域の子育てサークル、保護者のつながり。相談を受けていて感じるのは、最初の依頼はここから来ることが多いということです。辞めるときに関係を丁寧に終えておくと、後で効いてきます。
3つめは、自分で発信することです。ブログ、SNS、地域の掲示板、講座の開催。時間はかかりますが、続けると、自分に合う依頼が向こうから来るようになります。
大事なのは、この3つを同時に持っておくことです。1つに頼ると、その経路が細くなったときに一気に困ります。
発信のときに気をつけていただきたいことがあります。子どもの写真や、預かったご家庭の様子を出さないでください。守秘義務の問題であると同時に、依頼する側が見ているのはそこではありません。どんな考えで保育をしているか、どんな場面でどう関わるか。それが伝われば十分です。
こういうご相談もあります。「自分を売り込むのが苦手で」。大丈夫です。売り込む必要はありません。何ができるかを正確に書いておくこと、返事を早く返すこと、約束を守ること。この3つで、たいていの依頼は続いていきます。
独立後の1日を、どう組み立てるか
園にいたときは、時間割が決まっていました。独立すると、それを自分で作ります。ここでつまずく方が、思いのほか多いです。
自由になる、と聞くと良いことのように感じますが、実際には「いつでもできる」は「いつまでもやらない」に変わりやすいのです。だから、枠を先に作ってください。
おすすめしているのは、1日を3つの時間に分けることです。依頼を受けている仕事の時間、事務や連絡の時間、そして自分のための時間。この3つを、朝のうちに配置します。
事務の時間を意識して置くのがコツです。請求書の作成、領収書の整理、問い合わせへの返信、次の依頼の調整。これらは「仕事の合間にやるもの」と思っていると、いつまでも終わりません。30分でいいので、毎日同じ時間に置いてください。
もう1つ、終わりの時刻を決めることです。会社員のときは、退勤という区切りがありました。独立するとそれがなくなり、夜まで机に向かってしまいます。終わりの時刻を決めて、そこで手を止める。難しく感じるかもしれませんが、これができるかどうかで、半年後の疲れ方がまったく違います。
働く場所も、決めておくと切り替えやすくなります。自宅の一角でも構いません。そこに座ったら仕事、離れたら休み。体が場所で覚えてくれます。
私も独立した最初の数か月は、朝から夜までだらだらと仕事をして、休んだ実感がないまま週末を迎えていました。時間を区切るようにしてから、こなせる量はむしろ増えました。長く座っていることと、進むことは別なのだと実感しました。
家族との話し合いと、生活の設計
独立は、あなただけの話ではありません。同居しているご家族がいるなら、生活の形が変わります。
話しておくべきことは3つあります。
1つめは、収入の見通しです。しばらく不安定になること、そのために蓄えをどのくらい使う予定か。数字で共有しておくと、後から責められることが減ります。曖昧にしたまま始めて、半年後に「聞いていない」となる例を見てきました。
2つめは、家の中の時間の使い方です。在宅で仕事をする場合、家にいるけれど働いている時間ができます。家族から見ると、家にいる人は手が空いているように見えます。ここは先に伝えておいてください。何時から何時までは声をかけないでほしい、といった具体的な形で共有するのがおすすめです。
3つめは、家事や育児の分担です。独立すると時間の融通が利くぶん、家のことが自分に寄ってきます。気づいたら仕事の時間が削られていた、という相談は本当に多いです。融通が利くことと、引き受けることは別だと、最初に決めておいてください。
社会保険の面でも、家族との関係で確認が要ります。配偶者の扶養に入るかどうか、収入の見込みによって扱いが変わります。健康保険の扶養の要件は加入している保険者によって異なりますので、必ず加入先に確認してください。
※ 保険や年金の要件は個別の事情で結論が変わります。判断に迷う場合は、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口、あるいは社会保険労務士にご相談ください。
家族の理解があると、独立した後の心の負担がかなり違います。応援してもらう必要まではありません。何が起きるかを知っておいてもらう。それだけで十分です。
住まいの環境も、先に見ておくと後が楽です。オンラインで相談や講座を行うなら、通信が安定していること、背景に生活感が映り込まないこと、静かに話せる時間帯があること。この3つが揃っているかどうかで、仕事の受けられる幅が変わります。集合住宅で防音が難しい場合は、地域のコワーキングスペースや公共施設の会議室を使う方もいます。完璧な部屋を用意する必要はありませんが、依頼を受ける前に一度、実際に接続して映り方と音を確かめておいてください。
名刺や自己紹介の文章も、早い段階で用意しておいてください。名乗り方が決まっていないと、人に会うたびに説明が変わってしまいます。何をする人で、誰の役に立てるのか。この2行が固まっていれば十分です。
独立に向いている人と、慎重になったほうがいい人
はっきり書きます。独立は、誰にとっても良い選択ではありません。
向いている傾向として、次のような点があります。決めることが苦にならない。1人で作業する時間に耐えられる。分からないことを自分で調べる習慣がある。断ることができる。収入の波を受け止められる。
慎重に考えたほうがいい傾向もあります。今の職場のつらさから逃れたい気持ちが動機の中心になっている。生活費の蓄えがない。誰かに認められないと不安になる。断るのが苦手で、頼まれると全部引き受けてしまう。
このうち、最後の項目は特にお伝えしています。独立すると、断る場面が必ず来ます。条件の合わない依頼、時間の合わない依頼、内容に不安がある依頼。断れないと、抱えきれない量を引き受けて、体を壊します。
ただ、これらは変えられない性質ではありません。断る練習はできますし、蓄えは作れます。今その状態にあるから独立できない、という話ではなくて、今は準備の段階だという話です。
こういうご相談もあります。「向いていないと思うけれど、園には戻れない」。この場合、独立か園かの二択で考えないでください。園以外の雇用の形もありますし、雇われながら少しずつ個人の仕事を増やす形もあります。二択にすると苦しくなります。
失敗しやすいパターンを、先に知っておく
相談として持ち込まれる失敗には、型があります。
第1に、価格を安く設定しすぎることです。最初は自信がないので、相場より低い金額を提示してしまう。ところが、一度決めた金額を上げるのは難しく、そのまま量でこなす形になります。相場を調べたうえで、その範囲の中で決めてください。
第2に、契約書を作らないことです。知り合いからの依頼、園の紹介、地域のつながり。関係が近いほど書面を省きがちですが、近いからこそ揉めたときに戻れなくなります。金額、内容、期間、キャンセルの扱い。この4つだけでも書面にしておいてください。
第3に、休みを取らないことです。独立直後は、依頼が来ることが嬉しくて全部受けてしまいます。半年ほど経ったころに、疲れが抜けなくなります。これは本当に多いです。
第4に、1つの依頼先に頼りきることです。収入の大半を1件に依存していると、その依頼が終わったときに一気に困ります。3件以上に分けておくと、揺れが小さくなります。
第5に、相談する相手を持たないことです。園にいたときは、迷ったら先輩に聞けました。独立すると、聞く相手を自分で作る必要があります。同業のつながり、地域の創業支援の窓口、税務の相談先。1人で全部を抱えないでください。
手取りの構造が変わる、ということ
最後に、在宅ワークや業務委託の市場を運営してきた立場からの観察を書いておきます。
20年この市場を見てきた限りでは、独立した方が最初に驚くのは、手取りの構造です。会社員のときは、額面と手取りの差を天引きとして受け取っていました。独立すると、依頼者が払った金額から、仲介の手数料が引かれ、その残りから税金と保険料を自分で納めることになります。
ここで効いてくるのが、仲介の段数です。何段も入る形では、依頼者が払った額と受け手が受け取る額の差が広がっていきます。直接やり取りする形であれば、依頼する側は同じ予算でより多く頼めますし、受け手は手数料0%のぶん手取りが厚くなります。この差は、1件では小さく見えますが、続けるほどはっきりしてきます。
運営者として見てきた限りでは、長く続いている方ほど、単発の依頼を積み上げるより「この人に任せると楽だ」と思ってもらえる関係づくりに時間を使っています。保育の仕事は、まさにその力が問われる仕事です。保護者との関係を丁寧に作ってきた経験は、独立後の仕事の取り方にそのまま移せます。営業が苦手だと感じている方ほど、実はこの部分の力を持っていることが多いのです。
独立するかどうかは、今日決めなくて構いません。まず、自分がどの形に近いのかを考えてみてください。そして、生活費の見通しを立ててみてください。それだけでも、ぼんやりした不安が、扱えるものに変わります。あなたは一人ではありません。窓口も、相談先も、同じ道を通った人も、ちゃんといます。
よくある質問
Q. 保育士が独立するには、どんな働き方がありますか?
大きく4つに分かれます。ベビーシッターや訪問保育として個人で依頼を受ける形、家庭的保育や小規模施設など自分で保育の場を持つ形、相談や講座など知識を提供する形、そして執筆や企画など保育以外の分野で経験を活かす形です。必要な準備の量が形ごとに違うため、最初に方向を決めることをおすすめします。
Q. 独立するのに、どれくらいの貯えが必要ですか?
働き方によって差がありますが、収入がすぐに安定することはほとんどありません。最低でも6か月分、できれば12か月分の生活費を用意してから動くことをおすすめします。蓄えはお金の問題であると同時に心の問題で、残高への不安があると条件の悪い依頼を受けてしまいがちです。
Q. ベビーシッターを始めるのに、届出は必要ですか?
子どもを預かる事業は、規模や形態によって自治体への届出が必要になる場合があります。認可外保育施設としての扱いや居宅訪問型保育の扱いは、自治体ごとに案内が異なります。始める前に必ずお住まいの市区町村の保育担当窓口で確認してください。あわせて賠償責任保険への加入も検討してください。
Q. 園で働きながら独立の準備を進めてもよいですか?
重なりを作る進め方をおすすめしています。休みの日に1件だけ受けてみる、記事を1本書いてみるといった形で、実際に試してから判断できます。ただし勤務先の就業規則で副業の扱いが定められている場合がありますので、始める前に必ず確認し、許可が必要なら手続きを踏んでください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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