看護師を辞めたいと思ったとき|辞める前に確かめる5つのこと【2026年版】


この記事のポイント
- ✓看護師を辞めたいと感じたときに
- ✓勢いで決める前に確かめておきたい5つの論点を整理しました
- ✓職場を変えたいのか職種を変えたいのかの切り分け
「看護師を辞めたい」と検索する人の多くは、実はまだ何を辞めたいのかを決めていません。結論から書きます。最初にやるべきなのは、辞めたい対象が「今の職場」なのか「看護師という職種」なのかを切り分けることです。この2つは必要な行動がまったく違います。前者なら職場を変えれば解決しますが、後者なら職種を変える準備が要ります。切り分けないまま動くと、転職を繰り返すか、辞めたあとで戻る道を探すことになります。この記事では、辞める前に確かめておきたい5つの論点と、実際に辞めると決めた場合の手順を整理します。
「辞めたい」には2種類ある
まず、この感情が特別なものではないという事実から確認します。
「辞めたい」と感じる看護師の中にも、「看護師として働くことを辞めたい」場合と「今の職場を辞めたい」場合の2つのパターンが存在することがわかりました。では、実際の看護師の離職率はどれくらいなのでしょうか。2020年「病院看護実態調査」によると2019年度の看護師の離職率は11.5%でした。全職種の離職率は11.4%とほぼ変わらず、看護師は離職率が高いとは言い切れないようです。 出典: co-medical.com
離職率が全職種と大きく変わらないという点は、押さえておく価値があります。「看護師は離職率が高い職種だ」という語られ方は広く流通していますが、データはそれを支持していません。つまり、辞めたいと感じることは職種の宿命ではなく、個別の職場や状況に原因があるケースが多いということです。この前提に立つと、「看護師を辞める」という大きな決断に飛ぶ前に、確かめるべき中間の選択肢が見えてきます。
検索の背後にある2つの声
実際に相談として書き込まれている内容を見ると、この2つのパターンははっきり分かれています。
看護師を辞めたい。医療以外の仕事に転職した方いますか
看護師として10年以上、病棟で働いてきました。現在40歳前半です。 ですが最近は心身ともに限界を感じていて、転職を考えています。 医療現場から離れたい気持ちが強いのに次に何をしたいのかも分からず不安です。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
ここで注目したいのは、「次に何をしたいのかも分からず不安」という部分です。辞めたい気持ちと、次の行き先が決まっていない状態は同時に存在します。そしてこの状態のまま辞めると、選択の質は下がります。収入が途切れた状態では、条件を比較する余裕がなくなるからです。
一方で、心身の不調を抱えたまま働き続けることを推奨する意図はありません。体調に関わる判断は、この記事の範囲外です。不調を感じている場合は、職場の産業医、健康管理部門、かかりつけの医療機関、あるいは公的な相談窓口に相談してください。厚生労働省は労働者向けの相談窓口に関する情報を公表しています(2026年8月時点、厚生労働省)。この記事で扱うのは、労働条件と進路の設計という側面だけです。
確認1:辞めたいのは職場か、職種か
最初の切り分けです。判断の材料は、次の問いに答えることで作れます。
「別の病院や施設で、同じ看護業務を、今より良い条件でできるとしたら、それでも辞めたいか」。この問いに「それでも辞めたい」と答えるなら、対象は職種です。「条件が良ければ続けたい」と答えるなら、対象は職場です。
この切り分けが重要なのは、必要な準備がまったく違うからです。職場を変えるだけなら、求人を探して面接を受ければ済みます。職種を変えるなら、経験の棚卸し、スキルの補強、収入が下がる期間の資金計画が必要になります。準備期間も、前者は数か月、後者は年単位になることがあります。
判断に迷う場合、もう1つの問いが役に立ちます。「看護の仕事のうち、どの部分が嫌なのか」を具体的に書き出すことです。夜勤の負担、人間関係、記録の量、急変対応の緊張、患者や家族への対応、委員会や勉強会の負担。書き出してみると、職種そのものではなく特定の業務や環境に問題が集中していることが多い。夜勤が原因なら日勤のみの職場に移る道があり、記録の量が原因なら記録システムの整った施設を選ぶ道があります。
理由の型ごとに打ち手は違う
書き出した理由は、いくつかの型に収まります。型が分かれば、打ち手も決まります。
| 辞めたい理由の型 | まず試す打ち手 | 職場を変えるべき場合 |
|---|---|---|
| 夜勤や勤務時間の負担 | 勤務の配慮制度、院内異動 | 制度が使えない、または申し出が通らない |
| 人間関係 | 部署異動、相談窓口の利用 | 部署を変えても構造が同じ、組織的な問題 |
| 業務量と残業 | 労働時間の記録、業務分担の見直し依頼 | 記録が改善されない、慢性的に人員が不足 |
| 給与への不満 | 昇給や手当の条件を確認 | 相場に対して明らかに低い水準 |
| 教育体制の不足 | 教育担当への相談、院内研修の活用 | 質問できる相手が構造的にいない |
| 業務内容そのものへの違和感 | 別の診療科や部門への異動 | 異動しても違和感が変わらない |
| ライフイベント(育児、介護) | 時短勤務、夜勤免除の制度 | 制度が整備されていない |
この表の左半分を試さずに右半分へ飛ぶと、次の職場でも同じ理由で辞めることになります。特に「人間関係」を理由に挙げる場合は注意が必要です。特定の個人との相性の問題なのか、組織として相談を受け止める仕組みがないのかで、打ち手はまったく違います。前者なら部署が変われば解決しますが、後者は施設ごと変える必要があります。
確認2:労働条件を事実として数字にする
「忙しすぎる」「休めない」という感覚は正しいのですが、そのままでは判断材料になりません。数字に変換してください。
具体的には、直近3か月について次を書き出します。月の時間外労働時間、休日出勤の回数、有給休暇の取得日数、夜勤の回数、始業前に出勤している時間、終業後に残っている時間。給与明細と勤務表があれば大半は再現できます。
この作業には2つの意味があります。1つは、転職先と比較するための基準ができることです。「今より良い条件」を数字で定義できていないと、面接で確認すべき項目も決まりません。もう1つは、労働条件そのものに問題がある場合、それが記録として残ることです。時間外労働の適正な把握については厚生労働省がガイドラインを示しており、労働条件に関する相談は各地の労働局や労働基準監督署でも受け付けています(2026年8月時点。窓口と手続きは厚生労働省を確認してください)。
正直なところ、この作業をやらずに辞める人が非常に多い。感覚だけで動くと、転職先でも同じ問題に当たったときに比較ができません。手間はかかりますが、1時間で終わる作業です。
数字にすると、自分の状況が相場のどこにあるかも見えてきます。たとえば給与への不満がある場合、看護師の年収・単価相場で全体の水準を確認すると、実際に低いのか、それとも業務量に対して割に合わないと感じているだけなのかが切り分けられます。金額が相場並みで、問題が業務量のほうにあるなら、転職しても給与は上がらず、業務量の条件だけを見て職場を選ぶことになります。この切り分けができていないと、転職先の選び方を間違えます。
確認3:制度で解決できる部分がないか
辞める前に確認すべき制度が3つあります。
1つ目は勤務の配慮に関する制度です。育児・介護休業法では、一定の要件を満たす労働者について所定外労働や深夜業の制限を請求できる仕組みが定められています(2026年8月時点。要件と手続きは厚生労働省の公表内容を確認してください)。夜勤や残業が主な原因なら、この制度で状況が変わる可能性があります。
2つ目は院内の異動です。同じ施設内でも、病棟、外来、手術室、健診部門、地域連携部門では業務の性質が大きく違います。施設を辞めずに環境を変えられるなら、勤続年数や退職金の条件を保ったまま問題を解決できます。異動の希望を出す窓口と時期を確認してください。
3つ目は休職制度です。就業規則に定めがある場合、一定期間休んでから復帰する道があります。制度の有無、期間、その間の給与や社会保険の扱いは施設によって異なるため、就業規則で確認する必要があります。
これらを確認せずに退職すると、勤続年数、退職金、有給休暇の残日数といった積み上げをすべて失います。制度で解決できる部分があるなら、そのほうが失うものは少なくなります。
制度を調べる順番は、就業規則、施設の人事や看護部、そして公的な窓口です。就業規則は労働者が閲覧できる状態に置かれているはずなので、まずそこを読んでください。制度の名前を知らないまま「そういう仕組みはありますか」と聞くより、規則の該当箇所を示して確認したほうが話が早く進みます。施設側が制度の存在を把握していないケースもあるため、根拠を持って聞くことに意味があります。
確認4:辞めた後のお金の見通しを立てる
退職後に発生する費用は、想像より多岐にわたります。主なものを整理します。
| 項目 | 発生するタイミング | 確認先 |
|---|---|---|
| 健康保険(任意継続または国民健康保険) | 退職の翌日から | 加入していた健康保険と居住地の自治体 |
| 国民年金の保険料 | 退職の翌日から | 日本年金機構と居住地の自治体 |
| 住民税 | 前年の所得に対して課税 | 居住地の自治体 |
| 所得税の精算 | 年末調整または確定申告 | 国税庁 |
| 雇用保険の基本手当 | 要件と待期期間による | 居住地のハローワーク |
見落とされやすいのは住民税です。住民税は前年の所得に対して課税されるため、収入が減った年にも前年基準の負担が来ます。在職中は給与から天引きされていた分を、退職後は自分で納付することになります。社会保険の手続きについては日本年金機構、税に関する手続きについては国税庁が情報を公表しています。制度の内容は改正が入るため、2026年8月時点の最新情報を一次情報で確認してください。
雇用保険の基本手当は、退職の理由(自己都合か会社都合か)によって受給開始の時期や日数が変わります。要件の判断は個別の事情によるため、手続きの前にハローワークで確認するのが確実です。
生活費については、最低でも数か月分の余力を確保してから動くのが安全です。次の職場が決まってから辞める形にできれば、この問題の大半は解消します。在職中の転職活動は時間の確保が難しいのですが、条件を妥協せずに済むという点で有利です。
確認5:辞める理由を言語化しておく
最後の確認です。辞める理由を、他人に説明できる形に整理しておいてください。これは面接対策のためだけではありません。自分の判断を検証するための作業です。
「人間関係が合わない」で止まると、次の職場でも同じ状況が起きたときに対処できません。何が、どういう場面で、どう問題だったのかを具体化すると、避けるべき条件が見えてきます。たとえば「教育体制がなく、質問できる相手がいなかった」なら、次の職場では教育担当の有無と新人への関わり方を確認すればいい。「業務範囲が曖昧で際限なく仕事が増えた」なら、業務分担が文書化されているかを確認すればいい。理由を具体化することは、そのまま次の職場選びの確認項目になります。
言語化のコツは、感情の言葉を事実の言葉に置き換えることです。「しんどい」は事実ではありません。「日勤の終業後に平均1時間半、記録のために残っていた」は事実です。「上司が厳しい」も事実ではありません。「質問すると業務が止まると言われ、確認せずに進めた結果を後で指摘された」なら事実です。事実に置き換えると、次の職場で確認すべき項目に直接変換できます。
この作業は、辞めない選択をした場合にも役に立ちます。事実として整理された内容は、上司や人事に改善を求めるときの材料になるからです。感情のまま伝えても状況は動きませんが、記録に基づいた話には対応が必要になります。
転職で後悔しやすいパターンは、この言語化を飛ばしたときに起きます。実際の失敗の型は看護師の転職失敗談から学ぶ|よくある後悔パターン5つで整理していますので、応募先を決める前に一度確認しておくと、確認漏れを減らせます。
看護師を続ける前提での選択肢
職種を辞めると決める前に、看護師のまま環境を変える選択肢を並べておきます。「病棟が合わない」を「看護師が合わない」と結論づけてしまう人は少なくありませんが、看護師の働く場は病棟だけではありません。
外来は、患者との関わりが短時間で完結し、夜勤がない場合が多い環境です。継続的な受け持ちの重さから離れたい人に向きます。手術室や検査部門は、業務の範囲が明確で、記録や家族対応の比重が下がります。訪問看護は、1人で判断する場面が増える代わりに、患者との関わり方を自分で設計できる度合いが高くなります。介護施設は、医療行為の範囲が限定され、日勤帯中心で業務の見通しが立ちやすい環境です。健診センターは、業務が定型的で、急変対応の頻度が低い環境です。企業の健康管理室や治験関連は、臨床から離れつつ資格を活かせる場です。
同じ看護師免許で、これだけ性質の違う環境があります。今の職場の業務内容だけを基準に「看護師が向いていない」と判断するのは、材料が足りません。可能なら、辞める前に別の環境で働く人の話を聞くか、非常勤として短期間だけ別の場を経験してみると、判断の精度が上がります。
一度離れて戻る道もある
看護師の資格は更新制ではないため、離職期間があっても失効しません。実際に、数年のブランクを経て復帰する人は一定数います。復帰時に不安になるのは、医療技術や制度の変化についていけるかという点ですが、これは復職支援の研修や、教育体制のある職場を選ぶことで補える部分です。
つまり「辞める」という選択は、多くの人が思うほど不可逆ではありません。この点を理解しておくと、判断が楽になります。ただし、離職期間が長くなるほど復帰先の選択肢は狭まる傾向があるため、戻る可能性を残しておきたいなら、非常勤で少しだけ現場と接点を保つという方法もあります。
辞めると決めたあとの実務
決めた場合の手順です。
退職の意思表示と時期
退職の申し出は、就業規則で定められた期間を確認したうえで行います。多くの施設では1か月から2か月前の申し出を求めています。医療機関は勤務表を先に組むため、早めに伝えるほど調整の余地が生まれます。年度替わりや人員の入れ替え時期に合わせると、引き継ぎが進めやすくなります。
有給休暇と引き継ぎ
有給休暇の残日数を確認し、退職日までの消化計画を立てます。引き継ぎ資料は、担当患者の情報だけでなく、自分が担っていた業務手順や係の役割まで含めて整理しておくと、退職後の問い合わせが減ります。手続き上の書類としては、離職票、雇用保険被保険者証、年金手帳や基礎年金番号の分かる書類、源泉徴収票の受け取りを確認してください。
退職の申し出で揉めやすい点
現場では、退職を伝えたあとに調整が難航することがあります。よくあるのは3つの型です。
1つ目は、退職日を後ろにずらすよう求められる型です。人員の補充が付かないという理由で、半年以上先を提示されることがあります。就業規則に定められた申し出期間を確認し、その範囲で退職日を提示するのが基本です。労働条件や退職に関する相談は、各地の労働局や総合労働相談コーナーでも受け付けています(2026年8月時点。窓口の情報は厚生労働省を確認してください)。
2つ目は、有給休暇の消化を認めない型です。残日数と、退職日までに消化できる日数を早い段階で確認し、勤務表が組まれる前に申し出るのが実務上は有効です。勤務表が確定してからでは調整が難しくなります。
3つ目は、引き止めの過程で条件改善を提示される型です。給与や勤務条件の見直しを示されることがありますが、判断の材料は「その改善が書面で確約されるか」の一点です。口頭の約束は、担当者が変われば残りません。
退職の理由を伝える際は、職場への不満を並べるより、次にやりたいことを軸にしたほうが調整は進みます。これは我慢しろという話ではなく、不満を理由にすると「それを改善するから残ってほしい」という交渉に入り、話が長引くという実務的な理由です。
看護師免許は返さなくていい
当たり前のようですが、退職しても看護師免許は失われません。数年のブランクがあっても、復帰する道は残ります。都道府県のナースセンターは看護職の無料職業紹介や復職支援を行っており、日本看護協会が運営に関わっています。辞める判断を「二度と戻らない決断」として重く考えすぎる必要はありません。
看護師の資格を活かせる進路
職種を変える場合でも、資格と臨床経験がゼロになるわけではありません。むしろ、医療の内容を正しく判断できる人材は、医療現場の外で慢性的に不足しています。
代表的なのは、医療・健康分野の文章に関わる仕事です。記事の執筆、内容の監修、事実確認といった業務は、専門知識を前提としており、在宅で完結するものが多いという特徴があります。進め方は看護師ライターとして月5万円稼ぐ方法|専門記事の書き方【2026年版】にまとめました。資格が現場の外でどう評価されるかについては看護師 メリットを徹底解説!フリーランスエンジニアが語るキャリアの魅力も参考になります。
収入水準を見積もりたい場合は、看護師の年収・単価相場と著述家,記者,編集者の年収・単価相場を並べてみてください。転職後の収入がどの程度になるかの当たりが付きます。時間を売る収入と成果物を売る収入では、単価の決まり方が違うという点も見えてきます。
医療以外の領域に進む場合は、在宅で動いている業務の種類を先に知っておくと選びやすくなります。AI活用の支援を扱うAIコンサル・業務活用支援のお仕事、マーケティングやセキュリティ領域を含むAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発系のアプリケーション開発のお仕事を見比べると、必要なスキルと報酬の関係がつかめます。文書作成の基礎を固めるならビジネス文書検定が実務に直結します。IT基盤の知識まで広げる道としてCCNA(シスコ技術者認定)もありますが、看護師のキャリアからは距離があるため、いきなり狙う対象としては優先度が低めです。
移行は小さく試してから決める
職種を変える場合、いきなり全部を切り替えないことをおすすめします。在職中に、あるいは非常勤に切り替えた状態で、新しい分野の仕事を小さく1件だけ受けてみる。この段階を挟むかどうかで、結果はかなり変わります。
理由は3つあります。第1に、想像と実際の作業内容は必ずずれます。書く仕事に憧れて始めた人が、実際には調査と確認に大半の時間を使うことに気づくのはよくある話です。第2に、単価と作業時間の関係が分かります。1件受けてみれば、時間あたりでどの程度になるかが計算でき、生活が成り立つかどうかを数字で判断できます。第3に、実績が1件あると次の依頼が受けやすくなります。まったく実績のない状態から始めるより、移行の速度が上がります。
小さく試す期間として、3か月から6か月を見ておくと現実的です。この期間に1件も進まないなら、その分野は自分に合っていないか、準備がまだ足りないかのどちらかです。判断材料としては十分な情報が得られます。
私が編集の仕事に移ったとき、最初の1年でいちばん苦労したのは、それまで積み上げた経験の翻訳でした。前の職場で当たり前にやっていたことが、外の世界でどう評価されるのかが分からなかったからです。結局、自分の経験を細かく分解して、どの部分が相手の役に立つのかを言葉にする作業を繰り返すことでしか進みませんでした。看護師の経験も同じで、そのままでは伝わりません。分解して、相手の仕事のどこに効くのかを説明できる形にする作業が必要です。
運営者の視点から見た「辞めたい」という判断
在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた立場から言えば、辞めた人の中で結果的にうまくいっているのは、辞める前に次の形を試していた人です。完全に移る前に、小さく試して感触を確かめている。この差はかなり大きい。収入が途切れた状態で新しい分野に飛び込むと、選択の基準が「早く決まること」になってしまい、条件を比較する余裕がなくなります。
運営者として見てきた限りでは、専門領域を持つ人が現場の外で評価されるのは、作業量ではなく判断の部分です。医療分野の文章で依頼側がいちばん助かるのは、事実関係の誤りを事前に止めてもらえることです。これは臨床経験がある人にしかできない仕事で、時間の切り売りとは性質が違います。長く続く人ほど、単発の作業を積み上げるのではなく、「この人に頼むと確認が楽だ」という関係づくりに時間を使っています。
もう1つ、仲介の構造の話をしておきます。仕事を受けるときに仲介が入ると、その手数料はどこかから出ています。依頼側と受け手が直接つながる形なら、同じ予算で依頼側はより多く頼めますし、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の直接取引が効くのは、金額の大きさそのものより「同じ仕事をして残る額が違う」という構造の部分です。収入が不安定になりやすい移行期こそ、この差は効いてきます。
最後にもう1つ。運営者として見てきた限りでは、辞めたあとに後悔している人の多くは、辞めた判断そのものではなく、準備をせずに辞めたことを悔やんでいます。逆に、準備をしたうえで残る判断をした人が後悔している例は、あまり見ません。準備は、辞めるためだけの作業ではないということです。
辞めたいと感じること自体は、判断の材料が揃ってきたサインでもあります。問題は、その感情のまま動くかどうかです。対象を切り分け、条件を数字にし、制度を確認し、お金の見通しを立て、理由を言語化する。この5つを終えてから決めれば、どちらを選んでも後悔は小さくなります。
よくある質問
Q. 看護師の離職率は他の職種より高いのですか?
2020年の病院看護実態調査によると、2019年度の看護師の離職率は11.5%でした。全職種の離職率11.4%とほぼ同水準で、看護師が特別に離職率の高い職種だとは言えません。辞めたいと感じる原因は職種そのものよりも、個別の職場環境や労働条件にあるケースが多いと考えられます。まずは対象の切り分けから始めてください。
Q. 辞める前に必ず確認すべきことは何ですか?
5つあります。辞めたい対象が職場か職種かの切り分け、直近3か月の労働条件を数字にすること、勤務の配慮制度や院内異動で解決できないかの確認、退職後のお金の見通し、辞める理由の言語化です。特に住民税は前年の所得に対して課税されるため、収入が減った年にも負担が来る点を見落とさないでください。
Q. 次の仕事を決めずに辞めても大丈夫ですか?
可能ですが、選択の質は下がります。収入が途切れると条件を比較する余裕がなくなり、早く決まることが優先されてしまうためです。最低でも数か月分の生活費を確保するか、在職中に活動を進めるのが安全です。ただし体調に不安がある場合は別の判断が必要なので、産業医や医療機関に相談してください。
Q. 看護師を辞めたら資格は無駄になりますか?
なりません。退職しても看護師免許は失われず、ブランクがあっても復帰の道は残ります。都道府県のナースセンターでは無料職業紹介や復職支援が行われています。また医療・健康分野の文章の執筆や監修のように、臨床経験が直接評価される仕事も現場の外にあります。資格と経験は職種を変えても資産として残ります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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