国民健康保険が高いと感じたときの対処法


この記事のポイント
- ✓国民健康保険が高いのには理由があります
- ✓所得控除が効かない仕組み
- ✓自動で当たる軽減と申請が要る減免
国民健康保険の納付書を開いて、金額を二度見した。そこから検索窓に「国民健康保険 高い」と打ち込む。この流れをたどる人は毎年、同じ時期に大量に発生します。結論から言えば、高く感じるのには明確な理由が3つあり、そのうち2つは仕組みを知れば納得でき、1つは手続きで下げられる可能性があります。この記事では、国民健康保険料がどう計算されているのかを分解したうえで、いま下げられる手段、来年以降に効く手段、そしてどうしても払えないときに窓口でできることを、順に整理します。数字は令和8年度の制度をもとにしています。
高く感じる3つの理由
最初に、なぜ高く感じるのかを言葉にしておきます。理由は3つあります。
1つ目は、会社負担がなくなったことです。会社員が加入していた健康保険は、保険料を会社と本人で半分ずつ負担していました。給与明細に載っていたのは半分の金額です。国民健康保険にはこの会社負担がありません。同じ年収でも、手元から出ていく金額はおよそ倍に見えます。
2つ目は、前年の所得で計算されることです。国民健康保険料は前年の所得をもとに決まります。退職した年は、働いていた頃の収入で計算された保険料が、収入が下がったあとに届きます。このずれが「今の収入では払えない」という感覚を生みます。
3つ目は、世帯単位でかかることです。会社員の健康保険には被扶養者という制度があり、配偶者や子どもを扶養に入れても保険料は増えませんでした。国民健康保険にその仕組みはなく、加入する人数分の均等割がかかります。4人家族なら4人分です。独立や退職を機に世帯全員が国民健康保険へ移ると、この差がそのまま金額に出ます。
3つのうち、1つ目と2つ目は制度の設計なので変えられません。しかし2つ目については、翌年に所得が下がれば保険料も下がります。そして3つ目には、後で触れるように手の打ちようがあります。まずは自分の保険料がどう計算されているかを確かめるところから始めます。
保険料はどう計算されているのか
国民健康保険料は、いくつかの部品の合計です。多くの自治体で、次の4つに分かれています。医療分、後期高齢者支援金分、40歳から64歳の人にかかる介護分、そして令和8年度から加わった子ども・子育て支援金分です。
それぞれの部品に、所得に比例する「所得割」と、加入者1人あたりで一律にかかる「均等割」があります。自治体によっては、1世帯あたりでかかる「平等割」も置いています。東京23区のように平等割がない自治体もあります。つまり保険料は、所得に応じた部分と、人数に応じた部分と、世帯に対する部分の合計です。
上限も決められています。名古屋市の説明では、年間の保険料は医療分が67万円、支援金分が26万円、介護分が17万円、子ども分が3万円を超えることはないとされています。合計すると1世帯あたりの年間上限は113万円です。令和7年度の109万円から4万円引き上げられ、子ども・子育て支援金分という新しい区分も加わりました。
名古屋市は、この構成を次のように説明しています。
年間の保険料は、世帯ごとに計算し、世帯主に納付していただきます。医療分、支援金分、介護分、子ども分のそれぞれについて、被保険者数に応じて計算する均等割額、所得額に応じて計算する所得割額があり、すべてを合算した額が年間の保険料です。 出典: city.nagoya.jp
ここで押さえておきたいのが「世帯ごとに計算し、世帯主に納付していただきます」という部分です。国民健康保険は世帯単位の制度で、納付の義務を負うのは世帯主です。世帯主本人が会社の健康保険に入っていて国民健康保険には加入していない場合でも、同じ世帯に加入者がいれば納付書は世帯主宛てに届きます。これを擬制世帯主と呼びます。納付書の宛名が自分になっている理由が分からない、という相談はこの仕組みによるものです。
所得割の料率と均等割の金額は自治体ごとに違います。同じ年収でも、住んでいる市区町村によって年間で数万円の差が出ることがあります。これは、各自治体が都道府県に納める事業費納付金をもとに、加入者数と所得の状況を踏まえて料率を決めているためです。引っ越しの前後で金額が変わるのは、この仕組みによるものです。
所得控除が効かないという落とし穴
ここが、多くの人がつまずく部分です。所得税や住民税を計算するときには、扶養控除や社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などを差し引きます。ところが、国民健康保険料の所得割を計算するときは、これらの控除がほとんど効きません。
新宿区は、この点を次のように説明しています。
所得割額は、算定基礎額(前年中の総所得金額等から基礎控除額43万円(合計所得金額2,400万円以下の場合)を差し引いた額)を基に計算します。 出典: city.shinjuku.lg.jp
同じページには、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、医療費控除などの各種所得控除や、住宅ローン控除などの税額控除は適用されないことも明記されています。差し引けるのは基礎控除の43万円だけです。
この違いは、実務で効いてきます。たとえば、小規模企業共済や個人型確定拠出年金の掛金は、所得税と住民税の計算では全額が所得控除になります。しかし国民健康保険料の計算では差し引かれません。節税のつもりで掛金を増やしても、国民健康保険料は下がらないということです。掛金を検討するときは、この点を織り込んでおく必要があります。
逆に、事業所得そのものを減らす経費や、青色申告特別控除は効きます。青色申告特別控除は所得控除ではなく、事業所得を計算する段階で差し引かれるためです。国民健康保険料を意識するなら、所得控除を積むより、事業所得の段階で正しく計上することのほうが効果があります。ただし、経費として認められる範囲は事業の実態で決まります。判断に迷う支出は、税務署か税理士に確認してください。
申請しなくても下がる軽減がある
まず確かめたいのが、自動的に適用される軽減です。世帯主と加入者全員の前年の所得の合計が一定額を下回ると、均等割と平等割が7割、5割、2割減ります。令和8年度の基準は次のとおりです。
| 軽減割合 | 世帯の所得の合計がこの額以下 |
|---|---|
| 7割 | 43万円+(給与所得者等の数−1)×10万円 |
| 5割 | 43万円+(給与所得者等の数−1)×10万円+(31万円×加入者数) |
| 2割 | 43万円+(給与所得者等の数−1)×10万円+(57万円×加入者数) |
読み方のこつが3つあります。1つ目は、43万円が基礎控除額にあたること。所得が43万円以下なら単身世帯でも7割軽減に届きます。2つ目は、5割と2割は加入人数が多いほど基準が上がること。家族4人なら5割の基準は43万円に31万円を4人分足した額まで広がります。3つ目は「給与所得者等の数」の上乗せです。世帯に給与や年金の収入がある人が2人以上いる場合だけ、1人につき10万円ずつ基準が上がります。
この軽減は申請が要りません。ただし、いちばん多い取りこぼしは「所得の申告忘れ」です。所得がゼロでも、収入がなかったことを申告していないと役所は所得を把握できず、軽減が当たりません。独立したばかりで売上が立っていない人、扶養から外れたばかりの人は、住民税の申告だけでも済ませておいてください。世帯の中に1人でも未申告の人がいると、世帯全体が軽減の対象外になります。
会社都合で辞めた人は保険料が大きく下がる
退職して国民健康保険に入った人にとって、いちばん効くのがこの制度です。倒産や解雇、雇い止めで職を失った人を対象に、前年の給与所得を実額の100分の30とみなして保険料を計算し直します。名古屋市も、会社都合等で退職した人を対象とした保険料軽減制度に該当した場合は給与所得金額を100分の30として計算する、と説明しています。
年収400万円だった人なら、給与所得を3割に圧縮したうえで保険料が決まるので、所得割が大きく下がります。しかも、この圧縮された所得は7割や5割の軽減判定にも使われるため、均等割まで下がることがあります。効果の大きさで言えば、退職直後にできる手続きの中で最上位に来ます。
対象になるのは、雇用保険の受給資格者証などで特定受給資格者または特定理由離職者と確認できる人です。自己都合の退職は原則として対象外ですが、病気や家族の介護など、やむを得ない事情による離職が特定理由離職者と判定される場合があります。ハローワークで受け取る書類の離職理由コードで確認できます。
期間は、離職日の翌日が属する月から、その翌年度の末日までです。手続きは市区町村の国民健康保険の窓口で行い、雇用保険受給資格者証またはマイナンバーカードで確認できる情報が必要になります。自動では適用されないので、該当しそうなら必ず窓口へ申し出てください。
出産と子どもに関する軽減
所得に関係なく効く軽減もあります。
1つは、産前産後期間の免除です。令和6年1月に始まった制度で、国民健康保険に加入している人が出産する場合、出産予定月または出産月の前月から翌々月までの4か月分の所得割額と均等割額が免除されます。多胎妊娠なら出産予定月の3か月前から計6か月分に広がります。対象は妊娠85日以上の出産で、死産、流産、早産、人工妊娠中絶の場合も含まれます。出産予定日の6か月前から届け出ることができ、出産後の届出も可能です。
もう1つは、未就学児の均等割軽減です。令和4年4月から、小学校に上がる前の子どもにかかる均等割額が一律で半分になりました。所得の条件はありません。低所得の軽減がすでに効いている場合は、軽減後の残りからさらに半分が引かれます。申請は不要です。
自治体によっては、これに上乗せする独自の軽減を設けているところもあります。名古屋市は、令和8年度から加わった子ども分について、18歳未満の子どもの均等割額を全額減額するとしています。同じ国民健康保険でも、住んでいる場所で扱いが変わるということです。子育て中で保険料が重いと感じているなら、自治体のページを確認する価値があります。
任意継続と比べてみる
退職直後の人には、もう1つ選択肢があります。会社員時代の健康保険を、退職後も最長2年間続ける任意継続です。
要件は2つで、退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること、そして退職日の翌日から20日以内に手続することです。この20日という期限は厳格で、郵送で申請する場合も20日以内に必着させる必要があります。過ぎてしまうと選べません。
保険料は全額が自己負担になります。在職中は会社と折半していたので、単純に考えれば2倍です。ただし上限があります。協会けんぽの場合、退職時の標準報酬月額が上限を超えていれば、上限の額で計算されます。令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限は32万円で、前年度から変更されていません。協会けんぽの東京都の保険料率は令和8年度で9.85%です。40歳から64歳の人には介護保険料率が上乗せされます。
任意継続が有利になりやすいのは、退職時の給与が高かった人と、扶養家族が多い人です。任意継続には被扶養者の制度が残るため、配偶者や子どもを扶養に入れても保険料は増えません。国民健康保険は人数分かかるので、家族が多いほど任意継続が下回りやすくなります。
判断の手順は単純です。市区町村の窓口または試算ページで国民健康保険の年額を出し、協会けんぽの支部に任意継続の保険料を確認して、2年分を並べます。2年目は前年の所得が下がるぶん国民健康保険が安くなることが多いので、1年目と2年目を分けて考えてください。任意継続は途中でやめて国民健康保険に移ることもできます。
家族の健康保険の扶養に入る道
見落とされがちな選択肢が、家族の健康保険の被扶養者になることです。配偶者や親、子どもが会社員として健康保険に加入しているなら、その扶養に入れる可能性があります。扶養に入れば、自分の保険料負担はゼロになります。
条件は、年間の収入が一定額未満であることと、その家族に主として生計を維持されていることです。個人事業主の場合、収入から必要経費を差し引いた額で判断されますが、どこまでを必要経費として認めるかは健康保険組合ごとに基準が異なります。全国健康保険協会と企業の健康保険組合でも判断が分かれることがあります。
つまり、フリーランスだから扶養に入れない、と決めつける必要はありません。収入が下がっている時期であれば、扶養の対象になる可能性があります。判断は加入先の健康保険が行うので、家族の勤務先を通じて健康保険組合に直接確認してください。個別の事情で結論が変わるため、ここは一般論で決めずに問い合わせるのが確実です。
扶養に入った場合、国民年金の扱いも変わります。配偶者の扶養に入るケースでは、第3号被保険者として国民年金保険料の負担がなくなる場合があります。令和8年度の国民年金保険料は月17,920円なので、こちらの影響も小さくありません。ただし対象になるのは配偶者に限られ、年齢の条件もあります。あわせて年金事務所で確認してください。
国保組合という選択肢
業種によっては、市町村の国民健康保険ではなく国民健康保険組合に加入できる場合があります。国保組合とは、同じ業種の人たちが集まって作った国民健康保険の運営団体で、国民健康保険法に基づく公法人です。
多くの国保組合は、保険料を所得に比例させず定額で決めています。たとえば文芸美術国民健康保険組合の令和8年度の保険料は、組合員1人が月26,000円、家族1人あたり月15,700円、40歳から64歳の介護保険料が月6,100円、子ども・子育て支援金分が月600円です。建設連合国民健康保険組合は年齢に応じた段階制で、組合員本人が月11,200円から26,100円の範囲です。
所得が高い人ほど、定額制の国保組合が有利になります。上限113万円まで伸びる市町村国保と比べると、差が大きくなるのは自然な結果です。ただし、家族1人ごとに保険料が加算されるため、扶養家族が多い世帯では逆転することがあります。
注意したいのは、国保組合の保険料には所得による軽減がほとんどないことです。市町村国保の7割、5割、2割の軽減にあたる仕組みが定額制の組合にはないため、所得が落ち込んだ年には相対的に重くなります。加盟団体の年会費がかかる場合、その分も合わせて総額で比べる必要があります。
加入には資格審査があります。その業種に実際に従事していること、原則として個人事業主であること、多くの場合は加盟団体の会員であることが求められます。確定申告書の控えや作品例の提出を求める組合もあります。自分の業種に組合があるかどうかは、業種名に「国民健康保険組合」を付けて検索するか、所属している職能団体に問い合わせると分かります。
払えないときに窓口でできること
どうしても払えない場合、いちばんやってはいけないのが放置です。納付書を開かずに置いておくと、督促と延滞金が積み上がり、最終的には財産の差押えに進みます。保険証の有効期間が短くされたり、医療費を一度全額立て替える扱いになったりすることもあります。
先に動けば、使える手が複数あります。1つ目は分割納付の相談です。年額を通常より細かく分けて納める取り決めができる場合があります。2つ目は徴収の猶予です。災害、病気、事業の休廃止、事業の著しい損失など一定の事情があるときは、申請によって納付を待ってもらえる制度があります。認められれば延滞金の一部または全部が免除されることもあります。3つ目は、自治体が条例で定めている減免です。所得が前年と比べて大きく減った場合や、災害を受けた場合などに、申請して認められれば保険料そのものが減ります。基準と申請期限は自治体ごとに異なり、納期限を過ぎてからでは受け付けられないこともあります。
どれも共通しているのは、自分から窓口に行かないと始まらないという点です。電話で「払えない」と伝えるだけでも相談の記録が残り、次の手続きにつながります。窓口では、前年と今年の収入が分かる資料、支出の状況、いくらなら払えるかの見通しを持っていくと話が早く進みます。
なお、どの制度が使えるかは個別の事情で変わります。この記事に書いたのは全国で共通する枠組みで、実際の判断は住んでいる市区町村が行います。必ず自分の自治体の窓口で確認してください。
手続きを進める順番
選択肢が多いと、どれから手を付けるか迷います。優先順位を付けるなら、次の順番になります。
第1に、所得の申告が済んでいるかを確認します。未申告だと自動で当たるはずの軽減が当たりません。ここが土台です。第2に、退職して国民健康保険に入った人は、会社都合の軽減に該当しないかを確かめます。効果がいちばん大きく、しかも申し出ないと適用されません。第3に、出産の予定があるなら産前産後の免除を届け出ます。第4に、退職から20日以内であれば任意継続と比べます。この期限だけは取り返しがつかないので、退職が決まった時点で試算を始めます。第5に、家族の健康保険の扶養に入れないかを確認します。第6に、業種によっては国保組合を検討します。第7に、それでも払えない場合は窓口で分割や猶予を相談します。
この順番で進めると、効果の大きいものから手が付きます。逆に、いきなり世帯分離や国保組合の話から入ると、手間の割に効果が出ないことがあります。
窓口に行く前の準備も決まっています。前年の確定申告書の控えまたは源泉徴収票、届いている納付書、退職した人は雇用保険受給資格者証、マイナンバーが分かるもの、本人確認書類。この5点を持っていけば、ほとんどの相談はその場で進みます。何を持っていけばよいか分からない場合は、電話で先に聞いておくと二度手間になりません。
世帯を分ければ安くなるのか
軽減の判定が世帯単位で行われると知ると、世帯を分ければ軽減が当たるのではないか、と考える人がいます。理屈の上では、そういう場面はあります。同じ世帯に所得の多い人がいると、本人の所得がゼロでも軽減がかからないからです。
ただし、この判断は慎重にしてください。住民票の世帯は、保険料だけのために動かすものではありません。分けることで、均等割が減るどころか平等割が世帯の数だけかかって合計が増えることがあります。自治体によっては平等割を置いていないので、効果が出ない場合もあります。さらに、扶養の判定、各種手当の所得制限、公営住宅の入居条件など、保険料以外の場面にも影響します。
実際に生活の実態として世帯が分かれているなら、住民票を実態に合わせること自体は正しい手続きです。しかし、実態が変わらないのに保険料だけを目的に届け出るのは勧められません。効果があるかどうかは自治体の料率と家族構成で変わるため、窓口で「世帯を分けた場合の試算」を依頼し、保険料以外への影響も含めて確認してから判断してください。
医療費そのものの負担も確かめておく
保険料の話と並行して、医療費の側にも上限があることを知っておくと安心できます。高額療養費制度といい、同じ月にかかった医療費の自己負担が一定額を超えると、超えた分が払い戻されます。国民健康保険の加入者も対象です。
上限は年齢と所得で決まります。一般的な所得区分では、80,100円に総医療費のうち267,000円を超えた部分の1パーセントを足した金額が1か月あたりの上限です。所得が低い区分では月額35,400円、上位の区分では252,600円に総医療費のうち842,000円を超えた部分の1パーセントを足した金額になります。
さらに、直近12か月のうちに3か月以上この払い戻しを受けた場合、4か月目からは上限がさらに下がります。長期の治療になるほど、月あたりの自己負担は抑えられていく設計です。
事前に手続きをしておけば、窓口での支払いを最初から上限までに抑えることもできます。マイナンバーカードを健康保険証として使う場合は、受診時に情報提供に同意すれば限度額の適用が受けられます。カードを使わない場合は、市区町村の窓口で限度額適用認定証を申請します。保険料が重いと感じている時期ほど、医療費の立て替えは家計に響きます。入院や高額な治療の予定があるなら、先に手続きを済ませておいてください。
納め方の工夫でできること
保険料の総額は変えられなくても、納め方で負担感を和らげられる場合があります。
多くの自治体は、年額を6回から10回程度に分けた納期を設定しています。1回あたりの金額が大きいと感じるなら、口座振替に切り替えると引き落とし日が固定されるため、納付忘れによる延滞金を防げます。自治体によっては、納付方法としてクレジットカードやスマートフォンの決済アプリを選べるところもあります。手数料の有無は自治体ごとに違うので、確認してから選んでください。
前納の割引を設けている自治体もあります。一括で納めることで一定額が割り引かれる仕組みですが、実施していない自治体のほうが多いのが実情です。国民年金保険料には前納割引の制度があり、こちらは全国共通です。あわせて資金繰りを考えると、どちらを先に前納するかの判断材料になります。
納期限を過ぎると延滞金がかかります。延滞金の率は年度ごとに決まっていて、納付が遅れるほど積み上がります。うっかり忘れを防ぐいちばん確実な方法は口座振替です。手続きは金融機関か市区町村の窓口、自治体によってはオンラインでもできます。
来年以降を下げるためにできること
今年の保険料は前年の所得で決まっているので、いま変えられる部分は限られます。しかし、来年以降に効く手は打てます。
1つ目は、確定申告を正確に行うことです。事業に必要な支出を漏れなく計上し、青色申告の承認を受けているなら特別控除を使います。事業所得の段階で下がれば、国民健康保険料にも反映されます。所得控除は効かない一方で、事業所得の計算は効くという原則を思い出してください。
2つ目は、収入の波をならすことです。ある年に大きく稼ぎ、翌年に落ち込むという形は、保険料の面では不利に働きます。前年の所得で計算されるため、収入が落ちた年に高い保険料が届くからです。取引先を分散し、継続的に受注できる関係を持っておくと、この波が小さくなります。仕事の種類によって継続のしやすさは違うので、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事やアプリケーション開発のお仕事のように、依頼の中身が具体的に書かれた資料を見て、自分の技能と接続する領域を探しておくと選択肢が広がります。
3つ目は、単価の水準を把握することです。同じ時間を使うなら、相場より低い報酬で数をこなすより、適正な単価で受けたほうが所得は安定します。ソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような職種別のデータを見ておくと、提示された金額が妥当かどうかを判断できます。技能を客観的に示す材料が欲しいなら、ビジネス文書検定のような検定も使えます。
保険料の税務上の扱いは、個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法に整理があります。国民健康保険料は事業の必要経費ではなく社会保険料控除として扱われるのが一般的ですが、扱いは状況で変わることがあるため、税務署か税理士に確認してください。
20年この市場を見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、国民健康保険が高いという相談の大半は、実は保険料の問題ではなく、収入の谷の問題です。
保険料は前年の所得で決まります。だから、去年たくさん稼いで今年が細っている人ほど苦しくなります。逆に、毎月の収入がある程度そろっている人は、納付書の金額に驚くことがありません。つまり、保険料を下げる手続きを探すのと同じくらい、収入の谷を浅くする工夫が効きます。
運営者として見てきた限りでは、収入がそろっている人には共通点があります。1回きりの仕事を追いかけるのではなく、同じ相手から繰り返し頼まれる関係を作っていることです。そして、間に入る手数料が薄い直接の取引をしている人ほど、その関係が続いています。理由は双方にあります。依頼する側は同じ予算でより多く頼めるようになり、受ける側は手取りが厚くなるので1件あたりに時間をかけられる。手数料0%で受発注が完結する仕組みは、単に得をするという話ではなく、この関係を作りやすくする条件として効いてきます。
もうひとつ、長く見てきて確信していることがあります。保険料の高さに驚いた年は、家計の設計を見直す絶好の機会だということです。納付書が届いたその日に、前年と今年の所得を並べ、来年の見通しを書き出し、使える軽減がないかを窓口で確認する。この3つをやっておけば、翌年に同じ驚きを繰り返さずに済みます。放置して延滞金を払うより、半日を使って窓口へ行くほうが、金額にして何倍も得になります。国民健康保険は、黙っていても最適な金額になってくれる制度ではありません。動いた人にだけ、制度が用意している下げ幅が届きます。
よくある質問
Q. 国民健康保険はなぜ会社員のときより高いのですか?
会社員の健康保険は保険料を会社と本人で折半していましたが、国民健康保険には会社負担がないためです。さらに前年の所得で計算されるため、退職した年は収入が下がったあとに高い保険料が届きます。加えて扶養の制度がなく、加入する人数分の均等割がかかることも金額を押し上げます。
Q. 小規模企業共済やiDeCoの掛金で国民健康保険料は下がりますか?
下がりません。国民健康保険料の所得割は、前年の総所得金額等から基礎控除43万円だけを差し引いた額で計算されます。扶養控除、社会保険料控除、医療費控除、小規模企業共済等掛金控除といった所得控除は適用されません。事業所得の段階で効く経費や青色申告特別控除のほうが、保険料には反映されます。
Q. 会社都合で退職した場合はどのくらい下がりますか?
倒産や解雇、雇い止めで離職した人は、前年の給与所得を実額の100分の30とみなして保険料が計算されます。所得割が大きく下がるうえ、圧縮された所得が7割や5割の軽減判定にも使われるため、均等割まで下がることがあります。自動では適用されないので、雇用保険受給資格者証を持って窓口へ申し出てください。
Q. 保険料が払えないときはどうすればよいですか?
放置せず、納期限より前に市区町村の窓口へ相談してください。分割納付の取り決め、災害や事業の休廃止などを理由とする徴収の猶予、自治体が条例で定める減免という3つの道があります。納期限を過ぎてからでは受け付けられない制度もあります。放置すると延滞金が積み上がり、最終的に差押えに進みます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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