漫画家として兼業で活動する|勤め先との両立と届け出の要点

前田 壮一
前田 壮一
漫画家として兼業で活動する|勤め先との両立と届け出の要点

この記事のポイント

  • 兼業漫画家として活動するときに必要な確認事項を整理しました
  • 原稿料の源泉徴収と確定申告
  • 出版契約で見るべき項目

まず、安心してください。会社に勤めながら漫画家として活動している人は、皆さんが思っているよりずっと多くいます。デビューしてから何年も兼業を続けている作家もいますし、連載を持ちながら本業を離さない人もいます。専業でなければ漫画家ではない、という決まりはどこにもありません。

ただ、兼業には専業とは違う確認事項があります。就業規則、原稿料から引かれる税金、確定申告の要否、開業届を出すかどうか、出版社との契約で何に署名するのか。このあたりを知らないまま進むと、あとで面倒なことになります。実際に多いのは、原稿料をもらったあとで「これは申告が必要だったのか」と気づくケースです。

この記事では、兼業漫画家として活動するために必要な制度の話を順番に整理します。勤め先との関係、税金と届け出、契約で見るべき項目、報酬が支払われなかったときの根拠、そして時間の作り方まで。描く技術の話ではなく、描いた後に困らないための話です。

私は43歳でメーカーを辞めてフリーランスになった人間です。漫画家ではありませんが、勤めながら別の仕事を始めた時期があり、そのときに就業規則を読み直したり、確定申告の準備で慌てたりしました。その経験から言えるのは、制度の確認は早いほど楽だということです。最初にやっておけば10分で済む確認が、あとになると数日かかります。

兼業漫画家とはどういう状態か

まず言葉を整理します。兼業漫画家とは、漫画以外の収入源を持ちながら商業で漫画を発表している人のことです。会社員、公務員、自営業、学生、主婦や主夫、どの立場でも当てはまります。同人活動だけをしている場合とは区別して考えたほうがいいです。商業で原稿料や印税を受け取ると、税の扱いが変わってきます。

兼業には、専業と比べてはっきりした利点があります。収入が途切れないことです。漫画の仕事は、連載が終わると次が決まるまで収入が止まります。読切が採用されるかどうかも確定しません。本業の収入があれば、この不確実さを受け止められます。描きたくないものを引き受けなくて済む、という余裕も生まれます。

一方で、不利な点も正直に書きます。時間が足りません。締切と本業の繁忙期が重なると、睡眠を削るしかなくなります。打ち合わせが平日の昼に入ることもあり、有給を使って対応している人もいます。それに、描く量が専業より少なくなるため、上達の速度も落ちます。ここは覚悟しておく必要があります。

長く兼業を続けている作家が、この働き方についてこう書いています。

兼業漫画家がこの世にどれだけいるのか私は知らないが、「兼業で漫画を描くこと」についてのアウトプットをあまり目にしない気がするので、雑に吐き出してみようと思う。 出典: note.com

情報が少ないという指摘は、実際に当てはまります。専業になるまでの物語は語られますが、兼業のまま続けている人の実務は表に出にくい。だから、制度の部分は自分で確認するしかありません。この記事はその代わりを目指しています。

兼業から専業に移る人もいますし、逆に専業から兼業に戻る人もいます。どちらが上ということはありません。皆さんが考えるべきなのは、今の生活の中で描き続けられる形はどれか、という点だけです。

勤め先との関係。就業規則をどう読むか

最初にやるべき確認は、勤め先の就業規則です。ここを飛ばして進める人が本当に多いのですが、あとで揉めると一番厄介な部分です。

就業規則の副業に関する条項は、大きく3つの型に分かれます。1つ目は、副業を原則禁止としている型。2つ目は、届け出や許可を条件に認めている型。3つ目は、特に定めがない型です。近年は2つ目に移行している会社が増えています。厚生労働省がモデル就業規則を公開しており、そこでは届け出を前提に副業を認める形が示されています。制度の考え方は厚生労働省のサイトで確認できます。

禁止と書かれていた場合でも、そこで終わりではありません。就業規則に違反したことが直ちに解雇の理由になるとは限らず、実際に問題になるのは本業に支障が出た場合、競合する事業を行った場合、会社の信用を損なった場合です。とはいえ、規則に反した状態で続けるのは気持ちの良いものではありません。届け出が可能な形になっているなら、出しておくほうが後が楽です。

ここで注意していただきたいのが、公務員の場合です。国家公務員法と地方公務員法には兼業の制限があり、営利企業への従事には許可が必要とされています。原稿料を受け取る創作活動がどう扱われるかは所属する組織の判断によるため、人事担当に確認してください。許可を得て執筆活動をしている公務員もいます。黙って進めるのが最も危険な選択です。

勤め先に伝えるかどうかの判断も、皆さんが悩む部分だと思います。届け出が必要な制度になっているなら出す。必要がないなら、伝えるかどうかは自由です。ただ、単行本が出たり誌面に名前が載ったりすれば、知られる可能性はあります。ペンネームで活動していても、社内の誰かが気づくことはあります。知られた前提で困らない状態にしておくのが安全です。

もう1つ、秘密保持の観点があります。本業で知った情報を漫画の題材にすると、秘密保持義務に違反する可能性があります。業界の内情を描く作品は魅力的ですが、特定できる形で書くのは避けてください。実在の企業や人物が推測できる描写は、名誉に関わる問題にもつながります。

原稿料の扱い。源泉徴収と確定申告

ここから税金の話です。難しく感じるかもしれませんが、押さえる点は少ないので落ち着いて読んでください。

原稿料は、所得税法で源泉徴収の対象とされている報酬の1つです。出版社から支払われる時点で、所得税と復興特別所得税があらかじめ引かれます。税率は支払額が100万円以下の部分について10.21%です。つまり原稿料10万円の仕事なら、手元に振り込まれるのは89,790円になります。減額されたわけではなく、税金を先に払っている状態です。

この「先に払っている」という点が大事です。引かれた金額は確定申告で精算されるので、経費が多ければ戻ってきます。申告しないと、払いすぎたままになります。つまり申告は義務であると同時に、取り戻す手続きでもあります。

給与をもらっている人が確定申告をしなければならないのは、給与以外の所得が年間20万円を超えたときです。ここで気をつけていただきたいのは、所得というのは収入から経費を引いた金額だという点です。原稿料の合計が30万円で、画材やソフトの費用が12万円かかっていれば、所得は18万円なので申告義務は生じません。ただし、源泉徴収された分を取り戻したいなら申告したほうが得になります。

もう1つ、住民税の扱いがあります。所得税の申告義務がない20万円以下の場合でも、住民税については申告が必要です。お住まいの自治体の窓口で手続きします。ここを知らずに放置している人がかなりいます。

経費として計上できるものも押さえておきます。液晶タブレット、パソコン、作画ソフトの利用料、資料として買った書籍、取材の交通費、仕事用の通信費の一部。自宅で作業しているなら、家賃や光熱費のうち作業に使っている割合分も対象になります。レシートと領収書は月ごとに封筒へ入れておいてください。税の一次情報は国税庁のサイトに解説があります。

私が最初に申告した年は、領収書を1年分ためてから整理しようとして、丸2日かかりました。翌年から月ごとに分けるようにしたら、作業は数時間で終わるようになりました。皆さんは最初から月ごとにしてください。

開業届と青色申告。出すべきかの判断

原稿料の所得は、金額や継続性によって雑所得として扱われる場合と、事業所得として扱われる場合があります。この区別が、届け出の話につながります。

継続して漫画の仕事を受け、それが独立した業務として行われている状態なら、事業所得として扱うのが自然です。その場合は開業届、正式には個人事業の開業・廃業等届出書を税務署に提出します。事業を始めた日の属する年分の所得税の確定申告期限までが原則です。提出は無料で、書類も1枚です。

事業所得として申告する利点は、青色申告を選べることです。青色申告特別控除として最大65万円の控除が受けられ、赤字が出た年は翌年以降の3年間に繰り越せます。デビュー前後は画材やパソコンへの支出が先に立つため、赤字の繰り越しは実際に効きます。青色申告を選ぶには、原則としてその年の3月15日までに青色申告承認申請書を出す必要があります。開業届と一緒に出すのが手間が少ないです。

一方で、年に1本か2本の読切だけという状態なら、雑所得として申告するほうが実態に合います。帳簿の作成義務も軽くなります。どちらに当てはまるかの判断に迷ったら、税務署の窓口で相談してください。無料で答えてもらえます。

ここで1つ注意書きを入れておきます。事業所得と雑所得のどちらに当たるかは、金額だけで機械的に決まるものではなく、継続性や独立性を含めて判断されます。単行本が出る、連載が始まる、といった段階になったら、一度税理士に相談することをおすすめします。顧問契約でなくても、単発の相談を受けてくれる事務所はあります。

社会保険の扱いについても触れておきます。勤め先で健康保険と厚生年金に加入している人が漫画の仕事を業務委託として受ける場合、副業側で新たに社会保険に加入する必要はありません。本業の加入が続きます。ただし、副業側の所得が増えると住民税や国民健康保険料に影響する場合があるため、専業を考える段階では試算が必要になります。

勤め先に知られる経路と、ペンネームの扱い

制度の話の中で、皆さんから質問が多い部分を取り上げます。副業の存在が勤め先に伝わる経路についてです。

まず、税務署が勤め先に副業の内容を通知する仕組みはありません。ただし、住民税の計算には影響します。住民税は前年の所得全体に対して計算され、会社員の場合は給与から引かれる特別徴収という方式が使われます。副業の所得が加わると住民税の金額が上がるため、給与額に対して不自然な金額になっていることに気づかれる可能性があります。

これを避けたい場合は、確定申告のときに住民税の徴収方法を選べます。申告書に、給与以外の所得に対する住民税を自分で納付する形を選ぶ欄があります。これを選ぶと、副業分の住民税は自分で納付書を使って払うことになり、給与からは引かれません。ただし自治体によって扱いが異なる場合があるため、窓口で確認してください。

ペンネームで活動している場合、契約や支払いの書類には本名を使います。出版社は支払調書を作成する必要があるため、本名と住所を伝えることになります。これは表に出る情報ではありません。誌面や単行本に載るのはペンネームだけです。

それでも、作品が広く読まれれば知られる可能性は残ります。社内の誰かが気づくこともありますし、SNSのつながりから推測されることもあります。隠すことを前提にした計画より、知られても困らない状態を作るほうが精神的に楽です。就業規則に反していないこと、本業に支障を出していないこと。この2つが揃っていれば、知られても問題にはなりません。

契約で確認する項目。著作権と二次利用

出版社との契約は、皆さんが最も注意を払うべき部分です。署名したあとに変えるのは難しいので、読む時間を確保してください。

まず押さえるのは、著作権そのものを譲渡するのか、利用する権利だけを許諾するのかという区別です。著作権法には出版権という仕組みがあり、著作者が著作権を持ったまま、出版社に出版する権利を設定する形が一般的です。一方で、契約書の中に著作権の譲渡が書かれている場合は、その作品を自分で自由に使えなくなる可能性があります。読み飛ばさないでください。制度の条文は法務省のサイトから関係法令をたどれます。

次に、二次利用の範囲です。電子書籍化、翻訳、アニメ化、グッズ化、ゲーム化。それぞれについて誰がどう決めるのか、収益の配分はどうなるのかが書かれているはずです。将来の話なので実感が薄いのですが、ここが後で大きな差になります。範囲が「一切の利用」のように包括的に書かれている場合は、具体的に何が含まれるのかを質問してください。

原稿料と印税の条件も確認します。原稿料は1ページあたりいくらか、支払いはいつか。印税は定価に対して何パーセントか、初版から発生するのか、実売部数に対してか。電子版の料率は紙と別に定められていることが多いです。

契約を交わす前の段階で、条件が口約束のまま進んでいることもあります。これは避けてください。金額、納期、修正の回数、支払日。この4つは文字で残しておくのが基本です。書面でなくても、メールのやり取りで確認しておけば証拠になります。取引条件を明示することの重要性についてはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに必須項目の一覧がまとまっていて、何を書面に残すべきかの目安になります。

報酬が支払われないときの根拠

起きてほしくない話ですが、備えとして書いておきます。

2024年11月に施行された特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、いわゆるフリーランス保護新法では、発注者に対していくつかの義務が定められました。取引条件を書面や電子メールなどで明示すること、成果物を受け取った日から60日以内に報酬を支払うこと、不当な減額や受領拒否をしないこと。個人で業務委託を受ける人が対象になります。

つまり「イメージと違った」という理由で支払いを拒むことは、正当な理由になりません。この点を知っているかどうかで、交渉のときの立ち位置が変わります。相談の窓口も設けられており、公正取引委員会と中小企業庁、厚生労働省が関係しています。制度の概要は公正取引委員会のサイトで確認できます。

実際に支払われない状況になった場合の順番は、まず書面で請求すること、次に内容証明郵便で催告すること、それでも動かなければ支払督促や少額訴訟を検討すること、という流れになります。弁護士に依頼する場合の費用の目安と回収までの流れは未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に整理されていて、金額によって取るべき手段が変わることがわかります。

ここで注意書きを1つ。契約の解釈が争点になるケースや、金額が大きいケースでは、自分で判断せず弁護士に相談してください。初回相談を無料で受けている事務所もあります。

同人活動と商業の境目。扱いが変わる点

兼業で描いている人の多くが、同人活動から始めています。ここで扱いが変わる点を整理しておきます。

まず税の話です。同人誌の販売による収入も、所得として扱われます。趣味の範囲だから関係ないと考えている人がいますが、そうではありません。給与所得がある人なら、同人の売上から経費を引いた金額と、商業の原稿料から経費を引いた金額を合わせて年間20万円を超えれば申告が必要になります。印刷費、イベントの参加費、交通費、告知に使った費用は経費です。売上を記録していないと、この計算ができません。即売会でもネット販売でも、何がいくつ売れたかは記録してください。

次に権利の話です。二次創作は、原作の著作権者が黙認しているという状態で成立している領域です。権利者がガイドラインを公開している作品もありますし、何も示していない作品もあります。黙認は許諾ではないので、規模が大きくなると指摘が入ることがあります。商業で活動を始めると名前が表に出るため、この点は以前より慎重に考える必要が出てきます。

商業の仕事を受けたあとの同人活動については、出版社との契約に制限が書かれている場合があります。連載作品のキャラクターを使った同人誌を自分で出すことについて、扱いが定められていることがあります。契約書を読むときに、この項目も探してください。何も書かれていなければ、担当編集に確認しておくと安心です。

もう1つ、商業誌に載った作品を自分のサイトやSNSで公開できるかという問題があります。出版権が設定されている期間中は、同じ作品を自分で公開することが制限される場合があります。掲載後にどこまで自分で使えるのかは、契約の段階で確認しておく項目です。

時間の作り方。両立している人の型

制度の話が続いたので、ここからは現実的な運用の話をします。兼業で続けている人のスケジュールには、いくつかの型があります。

1つ目は、平日の夜と週末に集中させる型です。平日は下描きやネームなど頭を使う作業、週末はペン入れや仕上げなど手を動かす作業に分ける。作業の種類で時間帯を分けると、疲れ方が違うので効率が上がります。

2つ目は、朝に描く型です。出勤前の1時間から2時間を使います。夜は本業の疲れで集中できないという人には、こちらのほうが向いています。朝は誰にも邪魔されないという利点もあります。

3つ目は、通勤時間と昼休みに細かい作業を詰める型です。ネームや構成の検討はスマートフォンやタブレットでもできます。まとまった時間が取れない人でも、細切れの時間を積むと1週間でかなりの量になります。

どの型を選んでも共通して必要なのが、締切から逆算した計画です。読切なら、ネーム、下描き、ペン入れ、仕上げのそれぞれに何日必要かを自分の実測値で持っておきます。実測値がないと、引き受けられる量の判断ができません。最初の1本で、工程ごとにかかった時間を記録してください。

それから、引き受けない判断も必要です。本業の繁忙期と重なる時期に締切を置かない、同時に複数の仕事を抱えない。断ることで機会を失うのは確かですが、納期を守れないほうが失うものは大きい。編集者との信頼は、面白さよりも締切で作られる部分があります。

私が独立する前の1年間、本業のあとに別の仕事の作業をしていました。そのときに一番効いたのは、作業する曜日を固定したことです。毎日少しずつやろうとしていた時期より、月曜と木曜の夜だけと決めてからのほうが進みました。皆さんにも、枠を先に決めることをおすすめします。

もう1つ、家族との合意についても書いておきます。夜や週末が作業時間になるということは、その分だけ家族と過ごす時間が減るということです。黙って始めると、必ずどこかで摩擦になります。何曜日の何時から何時までを作業に充てるのか、締切の週は生活がどう変わるのかを、先に話しておいてください。私の場合は、独立を決めたとき妻に何度も「大丈夫なのか」と聞かれました。数字を見せて説明したことで、ようやく納得してもらえた覚えがあります。創作は個人の活動ですが、時間の配分は家庭の問題でもあります。

打ち合わせの時間帯も、事前に伝えておいたほうがいい部分です。編集者の勤務時間は平日の日中なので、連絡や打ち合わせがその時間に入ります。昼休みに折り返す、夜にまとめて返信する、といった運用で問題なく進めている人もいますし、返信が遅くなる可能性を最初に伝えておけば配慮してもらえることもあります。伝えないまま返信が遅れると、やる気がないと受け取られかねません。

兼業に向いた働き方の比較

本業の種類によって、両立のしやすさは変わります。比較しておきます。

勤務時間が固定されている仕事は、計画が立てやすいという点で有利です。残業が少なく、繁忙期の波が読める職種なら、締切との調整ができます。逆に、繁忙期に長時間の残業が集中する職種や、突発的な対応が多い職種は、締切の管理が難しくなります。

在宅でできる仕事は、通勤時間がなくなる分だけ有利です。往復で2時間の通勤があるなら、それが丸ごと作業時間に変わります。ただし、家で本業と創作の切り替えができるかという別の問題が出てきます。

時間の単位で受けられる仕事も選択肢になります。業務委託で働く形なら、受ける量を自分で決められます。忙しい時期は減らし、余裕がある時期は増やす。収入は不安定になりますが、締切との調整はしやすい。文章を書く仕事や資料を作る仕事はこの形に向いており、相場の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に職種別の目安がまとまっています。

創作と近い分野で働く選択もあります。ただし注意が必要です。出版や映像の会社に勤めながら漫画を描く場合、競業に当たる可能性が出てきます。就業規則の競業避止に関する条項を必ず確認してください。

なお、資格を活かして時間の自由が利く仕事に移る道もあります。他の専門職が勤め先と両立している例として会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】には、勤務先の規則と折り合いをつけながら副業を組む考え方が書かれていて、職種が違っても手順の参考になります。

専業に切り替える判断と、市場を見てきた立場からの観察

専業に移るかどうかの判断について、無理に急がないでほしいというのが私の考えです。判断材料は3つあります。

1つ目は、収入の継続性です。1本の連載があるという状態は、収入があるという意味では心強いのですが、終わったあとの空白が読めません。複数の収入源があるか、次の企画が動いているか。ここを見てください。

2つ目は、固定費の水準です。住居費、保険、家族の状況。毎月出ていく金額が把握できていないと、必要な収入額も決まりません。専業に移ると国民健康保険と国民年金への切り替えが発生するため、その分も計算に入れる必要があります。

3つ目は、体力と生活の持続性です。兼業のまま続けられているなら、それは1つの完成形です。専業になれば時間は増えますが、収入の不安が加わります。どちらの不安のほうが自分に合うか、という問いだと思ってください。

20年この市場を見てきた立場から、2つ書き添えます。運営者として見てきた限りでは、長く創作を続けている人は、単発の成果よりも「またこの人に頼みたい」と思われる関係づくりに時間を使っています。締切を守る、連絡が早い、修正の意図を汲む。地味な部分ですが、次の仕事につながっているのはここです。

もう1つは、手取りの話です。仲介が入る取引では、その取り分が必ず乗ります。中間の取り分が乗らない直接のやり取りでは、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側は手取りが厚くなる。手数料0%という条件が意味を持つのは、金額の大小ではなく、同じ仕事に対して残る割合が変わるという質の話です。創作以外の仕事で生活の土台を作る場合、この差は数年で無視できない大きさになります。

最後にもう一度だけ整理します。就業規則を読む、原稿料の源泉徴収と申告の要件を押さえる、開業届と青色申告を判断する、契約で著作権と二次利用を確認する、支払いの根拠法を知っておく。この5つを済ませておけば、あとは描くことに集中できます。制度は皆さんの味方です。知っておくだけで守ってくれます。

よくある質問

Q. 会社員が兼業漫画家として活動しても問題ありませんか?

まず就業規則の副業に関する条項を確認してください。原則禁止、届け出制、定めなしの3つの型があり、近年は届け出制に移行する会社が増えています。届け出が可能な制度なら出しておくほうが安全です。公務員は国家公務員法と地方公務員法に兼業の制限があるため、人事担当への確認が必要です。

Q. 原稿料からいくら引かれますか?

原稿料は源泉徴収の対象で、支払額が100万円以下の部分について10.21%が引かれます。原稿料10万円なら振り込まれるのは89,790円です。これは税金を先に払っている状態なので、確定申告をすれば経費に応じて戻ってきます。申告しないと払いすぎたままになります。

Q. 確定申告はいくらから必要ですか?

給与所得がある人は、給与以外の所得が年間20万円を超えた場合に確定申告が必要です。所得とは収入から経費を引いた金額です。20万円以下で所得税の申告義務がない場合でも、住民税については自治体への申告が必要になります。画材やソフトの費用、資料代、取材の交通費は経費になります。

Q. 出版社との契約で特に注意すべき点は何ですか?

著作権を譲渡するのか、出版する権利だけを許諾するのかの区別が最重要です。加えて、電子書籍化や翻訳、映像化などの二次利用について誰がどう決めるのか、収益の配分はどうなるのかを確認してください。原稿料の単価と支払日、印税の料率、電子版の料率も書面で押さえます。金額が大きい契約は弁護士に相談してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月20日最終更新:2026年9月23日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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