ダブルワークで休みなしは労働基準法に触れるか、休日の数え方

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
ダブルワークで休みなしは労働基準法に触れるか、休日の数え方

この記事のポイント

  • ✓ダブルワーク休みなし労働基準法の関係を
  • ✓割増賃金を払う会社の決まり方まで条文と国のガイドラインで整理しました
  • ✓どこから会社の義務違反になるのかが分かります

ダブルワークで1週間まったく休みがない状態は、労働基準法に触れるのか。結論から書きます。多くの場合、法律に触れているのは「休みがないこと」ではありません。それぞれの会社が週1回の休日を与えていれば、結果として本人に休みがなくても、会社の側が休日の義務に反しているとは言えないのです。

その代わり、労働時間には別の決まりが働きます。労働時間は会社をまたいで合計され、合計が法定の枠を超えた部分については、どちらかの会社に割増賃金を払う義務が生まれます。つまり、問われるのは休日の数ではなく労働時間の合計です。

この記事では、休日の数え方、労働時間の通算のしかた、割増賃金を払うのがどちらの会社になるのか、そして休みのない状態が続いているときに何をすればいいのかを、条文と国のガイドラインの記載で整理します。

実際に多い相談は、この形をしている

まず、現場で起きている状況を確認しておきます。

ダブルワークで1日7時間が週二回、もう片方が週5で8時間。 一週間に休み1日もなしで一週間53時間働くのは労働違反ですか? 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

この例を分解すると、判断すべき点が2つに分かれます。1つは、7日間ずっと働いていることが休日の決まりに反するかどうか。もう1つは、合計53時間という労働時間が法定の枠を超えているかどうかです。

答えを先に書くと、前者は各社が休日を与えていれば会社の違反にはなりません。後者は週40時間を大きく超えているため、超えた部分の割増賃金の問題が生じます。同じ相談の中に、扱いの違う2つの論点が入っているわけです。ここを分けずに考えるから、話がこじれます。

労働基準法が決めている休日の数え方

条文を見るのがいちばん早いので、そのまま引きます。

使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。 出典: e-Gov法令検索(労働基準法)

主語が「使用者」であることに注目してください。義務を負っているのは会社で、その会社が雇っている労働者に対して週1回の休日を与えるという構造です。労働者が他社で働いているかどうかは、この条文の中に出てきません。

たとえば、A社で月曜から金曜まで働き、B社で土曜と日曜に働いている人がいるとします。A社は土日を休日として与えていて、B社は平日を休日として与えている。それぞれの会社は週1回以上の休日を与えているので、どちらも休日の義務は果たしています。本人の暦の上では休みがゼロですが、会社が法律に反しているとは言えないのです。

この構造を国のガイドラインも明確にしています。

休憩(労基法第 34 条)、休日(労基法第 35 条)、年次有給休暇(労基法第 39 条)については、労働時間に関する規定ではなく、その適用において自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間は通算されない。 出典: 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

休憩、休日、年次有給休暇は通算されない。労働時間だけが通算される。この線引きが、ダブルワークの法律関係を理解する土台になります。

正直なところ、この結論は納得しにくいと思います。休みなく働いている本人の負担は現実にあるのに、法律の側からは誰も違反していない形になるのですから。ただ、だからこそ次に説明する労働時間の通算が重要になります。制度が守っている入口はそこだけです。

4週4日という例外の意味

休日については、もう1つの決まりがあります。同じ条文の2項で、前項の規定は四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しないと定められています。

つまり、4週間を通じて4日以上の休日を与える会社には、毎週1回という決まりを適用しないという内容です。変形週休制と呼ばれます。条文の言い回しは硬いのですが、やっていることは単純で、休日をまとめて与える運用を認める仕組みです。

これがあるため、たとえば第1週に休みがなく、第2週に2日の休みがある形も、4週間で4日以上あれば認められます。シフト制の職場ではこの形が使われることがあります。自分の勤務先がどちらの方式を取っているかは、就業規則か雇用契約書に書かれています。

ここで注意したいのは、4週4日の方式を使うには就業規則などで起算日を定める必要があるという点です。単に「今月は休みが少ないがまとめて来月に」という運用が認められるわけではありません。自分のシフトが4週4日に達していないと感じたら、就業規則を確認したうえで会社に聞いてください。

労働時間は会社をまたいで合計される

休日と対照的に、労働時間は合計されます。これも条文がはっきりしています。

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。 出典: e-Gov法令検索(労働基準法)

事業場を異にする場合というのは、同じ会社の別の事業所だけを指すのではありません。国のガイドラインでは、事業主を異にする複数の事業場で働く場合も通算されるという解釈が示されています。つまり、A社とB社で働いた時間は合計して考えるということです。

合計したうえで見る基準は、1週間40時間と1日8時間です。労働基準法32条で、休憩時間を除いて1週間について40時間を超えて労働させてはならない、1日について8時間を超えて労働させてはならないと定められています。

先ほどの相談の例に戻ると、週の合計は53時間です。40時間を13時間超えています。この13時間については、どちらかの会社が割増賃金を払う義務を負う形になります。単純に「合計しても違法ではない」で終わる話ではないのです。

割増賃金を払うのはどちらの会社か

ここが実務でもっとも分かりにくいところです。ガイドラインには順番が書かれています。

・ まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、 ・ 次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって、 それぞれの事業場での所定労働時間・所定外労働時間を通算した労働時間を把握し、その労働時間について、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金(労基法第 37 条第1項)を支払う必要がある。 出典: 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

要点は2つです。1つ目は、最初に契約した会社の所定労働時間から順に積み上げるということ。2つ目は、その積み上げの結果として法定の枠を超えた部分のうち、自社で働かせた時間について、その会社が割増賃金を払うということです。

先に契約したA社で週40時間働き、あとから契約したB社で週13時間働く場合、B社の13時間はすべて法定の枠を超える部分に当たります。この場合、割増賃金の義務はB社に生じるのが基本の形になります。つまり、あとから契約した側が負担する構造になりやすいのです。

割増の率も条文で決まっています。時間外労働の割増賃金は通常の賃金の2割5分以上で、1か月について60時間を超えた部分は5割以上です。ガイドラインにも同じ内容が書かれています。

ここで実務の問題が出ます。B社は、A社での労働時間を自分では把握できません。だからガイドラインは、労働者からの申告等によって把握するという仕組みを示しています。つまり、自分が申告しない限り会社は通算できず、割増賃金も計算されません。掛け持ちを会社に伝えていない人が「割増がついていない」と言っても、会社の側には把握する手段がなかったということになります。

管理モデルという簡便な方法

申告と通算の手間を軽くするために、ガイドラインは管理モデルという方法も示しています。

先に契約した会社をA、あとから契約した会社をBとして、Aの法定外労働時間とBの労働時間を合計した時間が単月100時間未満、複数月の平均で80時間以内に収まる範囲で、それぞれの会社が上限を決めておく方法です。この方式を採ると、各社はあらかじめ決めた上限の中で働かせる限り、相手の会社の実際の労働時間を把握しなくても法律を守れる形になります。

この方式では、Aは自社の法定外労働時間について、Bは自社の労働時間について、それぞれ割増賃金を払います。実務では、この方式を採用している会社のほうが手続きがはっきりしています。副業の届出を求められたときに、この管理モデルの話が出てきたら、条件を紙で受け取って保管しておいてください。

休憩の決まりは会社ごとに発生する

休憩も通算されません。労働基準法34条では、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与えなければならないと定められています。

この6時間や8時間は、その会社での労働時間で判断します。A社で4時間、B社で4時間働いて合計8時間になっても、それぞれの会社は6時間を超えていないため、休憩を与える義務は生じません。結果として、8時間働いて休憩がゼロという日ができます。

移動の時間も、原則として労働時間には入りません。A社を出てB社へ向かう時間は、どちらの会社の指示で動いているわけでもないため、賃金の対象にならないのが一般的な扱いです。ここも個別の事情で判断が変わる部分なので、通勤の時間が長い掛け持ちを考えている人は、その時間を含めて1日の拘束時間を計算しておくべきです。

制度は休ませてくれません。だから、自分でシフトを組むときに休憩と移動を先に確保する必要があります。ここを軽く見た掛け持ちは、2か月から3か月で体に出ます。

年次有給休暇は、それぞれの会社で別に発生する

年次有給休暇も通算されません。条文では、雇入れの日から6か月間続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10労働日の有給休暇を与えなければならないとされています。

つまり、A社で6か月働けばA社の年休が発生し、B社で6か月働けばB社の年休が発生します。日数はそれぞれの会社での所定労働日数によって変わります。週1日だけ働いているB社でも、条件を満たせば日数に応じた年休が発生します。ここを知らずに権利を使っていない人が多い部分です。

年休を使う日は、それぞれの会社に対して別に申し出ます。A社の年休を取った日にB社で働くこともできますが、休むために取った年休であれば、その日は本当に休んだほうが意味があります。

1日8時間を超える日ができるときの扱い

週の合計だけでなく、1日の合計にも枠があります。労働基準法32条2項では、1週間の各日については休憩時間を除いて1日8時間を超えて労働させてはならないと定められています。この8時間も通算の対象です。

午前にA社で4時間、午後にB社で5時間働けば、合計9時間になります。8時間を1時間超えているため、この1時間は時間外労働として扱われる部分になります。あとから契約したB社の側でこの超過が生じる形が基本です。

掛け持ちをしている人の多くが、この1日の枠を意識していません。週の合計が40時間に届いていなくても、1日の合計が8時間を超える日があれば、その日について割増賃金の問題が生じます。土曜日にA社で6時間、日曜日にB社で6時間という形なら1日の枠は超えませんが、同じ日に詰め込むと超えます。同じ週12時間でも、入れ方で扱いが変わるわけです。

ここも会社は相手の勤務時間を知りません。だから、自分でシフト表に両社の勤務を書き込んで、1日の合計を見る習慣を持つしかありません。紙でもスマートフォンの予定表でも構いません。2社の勤務を1つの表に並べる。これだけで、どの日が危ないかが見えます。

シフト表で自分の状況を判定する手順

法律の話を自分の状況に当てはめるための手順を、表にしておきます。1か月分のシフトを並べて、上から確認してください。

確認する項目 見る場所 判定の目安
A社の休日 A社のシフト 毎週1回以上、または4週間で4日以上あるか
B社の休日 B社のシフト 毎週1回以上、または4週間で4日以上あるか
1日の合計労働時間 両社を並べた表 8時間を超える日があるか
1週間の合計労働時間 両社を並べた表 40時間を超える週があるか
休憩 各社の勤務時間 6時間を超える勤務で45分以上あるか
割増賃金 給与明細 超過分に割増が付いているか
申告 就業規則と届出 掛け持ちを届け出ているか

この7項目のうち、上の2つが満たされていれば、休日についての会社の義務は果たされています。3つ目と4つ目で超過があるのに6つ目の割増が付いていない場合は、申告の有無を確認したうえで会社に聞く順番になります。

判定の結果として「どの会社も違反していないが、自分は限界に近い」という状態が見えることもあります。その場合に効くのは法律ではなく、シフトの組み替えです。次の節で書きます。

労災と雇用保険は、掛け持ちでどう扱われるか

体を守る仕組みについても、決まりが変わってきています。国のガイドラインには、労災保険の給付額の計算が改正されたことが書かれています。令和2年法律第14号による改正で、災害が起きた就業先の賃金だけでなく、災害が起きていない就業先の賃金額も合算して労災保険の給付を計算することになり、あわせて複数の就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災と認めるかを判断する形に変わりました。ガイドラインやその関連資料は、厚生労働省の副業・兼業のページからたどれます。

これは掛け持ちをしている人にとって大きな内容です。以前はけがをした会社の賃金だけで給付額を計算していましたが、両方の賃金を合算して計算する形に変わりました。さらに、複数の就業先の負荷を総合的に見て労災と認めるかを判断することになっています。長時間働いた結果として体を壊した場合に、片方の会社の時間だけで判断されるわけではないということです。

移動中の事故についても書かれています。両方の会社で雇われている人が、一方の就業先から他方の就業先へ移動する途中で起きた災害は、通勤災害として労災保険の給付の対象になります。移動の時間が賃金の対象にならないことと、その間の事故が保険の対象になることは別の話です。ここは覚えておく価値があります。

雇用保険については、同じガイドラインに扱いが整理されています。同時に複数の事業主に雇われていて、それぞれの雇用関係で被保険者の要件を満たす場合は、生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者になります。つまり、2社で要件を満たしても雇用保険は1つです。そして、1週間の所定労働時間が20時間未満の人、31日以上雇用される見込みがない人は被保険者になりません。短い時間の仕事を2つ重ねている形では、どちらも対象外になることがあります。

36協定と時間外労働の上限は、どこまで合計されるのか

時間外労働には上限の決まりがあり、その一部は会社をまたいで合計されます。ここは細かい話になりますが、長時間の掛け持ちをしている人には効いてきます。

ガイドラインでは、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月の平均で80時間以内という要件について、労働者個人の実際の労働時間に着目する規制だとして、自社の労働時間と他社の労働時間を合計して適用すると整理されています。つまり、2社の時間外を合わせて単月100時間に近づくような働き方は、それぞれの会社が守るべき枠に触れてきます。

一方で、通算されないものもあります。36協定で延長できる時間の限度や、特別条項を設けた場合の1年の上限は、それぞれの事業場の協定の中身を規制するものなので、会社ごとに判断されます。会社Aの協定の枠を、会社Bでの労働時間が食うわけではないということです。

36協定というのは、会社が労働者の代表と書面で結んで労働基準監督署に届け出る協定のことで、これがないと法定の枠を超えて働かせることができません。掛け持ちで時間外が発生する場合、それぞれの会社に協定があるかどうかが前提になります。

実務での意味はこうなります。単月100時間に迫るような合計時間は、どちらの会社にとっても看過できない水準です。この水準に近づいているなら、法律の議論より先に、シフトを減らす相談を始めるべき段階です。過労による健康被害は、あとから請求で取り戻せるものではありません。

よくある誤解を5つ整理する

調べているうちに混ざりやすい話を、まとめて外しておきます。

1つ目、「合計で週40時間を超えたら違法」という理解は正確ではありません。36協定があり、割増賃金が支払われていれば、40時間を超えて働くこと自体は法律の枠の中で成り立ちます。問われるのは、協定と割増賃金の有無です。

2つ目、「休みがないのは会社が悪い」とも言い切れません。前に書いたとおり、休日は会社ごとに判断されます。両社が休日を与えているなら、休みが消えているのはシフトの組み方の結果です。

3つ目、「掛け持ちは会社に禁止されている」という思い込みです。ガイドラインでは、労働時間以外の時間の使い方は基本的に労働者の自由であり、会社が制限できるのは労務の提供に支障がある場合などに限られるという裁判例の整理が示されています。ただし届出の定めがあれば、それには従う必要があります。

4つ目、「先に働いた会社が割増を払う」という誤解です。順番は働いた時間ではなく契約を結んだ先後で見ます。あとから契約した会社の時間が、法定の枠を超える部分に当たりやすくなります。

5つ目、「個人事業の副業も労働時間に合計される」という誤解です。ガイドラインでは、労基法が適用されない場合として、フリーランス、独立、起業、共同経営、顧問などが挙げられており、これらの時間は通算されません。雇われている時間だけが合計の対象です。

この5つを外しておくと、自分の状況を判断するときに迷いません。

休みがない状態が続いているときの順番

法律の整理が済んだところで、実際にどうするかを書きます。順番を守ると解決が早くなります。

1つ目は、記録を作ることです。1か月分のシフトを紙に書き出し、A社とB社の勤務時間、休日、休憩の実際を並べます。この記録がないまま相談しても、話が前に進みません。

2つ目は、週あたりの合計時間を出すことです。40時間を超えているか、超えているなら何時間か。そして、その超過分に対して割増賃金が支払われているかを給与明細で確認します。

3つ目は、申告の状況を確認することです。それぞれの会社に掛け持ちを伝えているか。伝えていなければ、会社は通算できません。伝えるかどうかは、就業規則の届出の定めを見て判断します。

4つ目は、シフトを組み直す相談です。合計時間を減らす、休日を同じ日にそろえる、片方の勤務日を減らす。どれも交渉になりますが、記録を持って話せば通りやすくなります。

5つ目は、伝える順番を決めることです。両社に同時に切り出すより、調整しやすい側から始めるほうが通りやすくなります。勤務日を減らしたい理由は、体調でも家庭の事情でも構いません。「他社の勤務があるので」と伝えると、相手の会社にとっては優先度が下がる理由になり得ます。減らしたい日数と、いつからにしたいかを具体的に言うのが要点です。

6つ目は、それでも改善しないときの相談先です。労働基準監督署に相談すれば、会社の義務違反があるかどうかを判断してもらえます。無料で相談できます。ただし、休日の義務については前に書いたとおり各社ごとに判断されるため、相談の中心は労働時間と割増賃金になります。

相談の前に用意しておくものも決まっています。両社の雇用契約書、直近3か月の給与明細、シフトの記録、就業規則の副業に関する部分。この4つがあれば、相談は1回で終わります。記憶で説明すると、事実の確認だけで時間が過ぎます。

会社に掛け持ちを伝えるかどうかの判断

伝えることの利点と、伝えないことの危険を並べておきます。

伝える利点は3つあります。労働時間の通算が行われるため、割増賃金が正しく計算されます。健康管理への配慮を受けられる可能性があります。そして、あとで発覚して信頼を失う事態を避けられます。

伝えない場合の危険は、就業規則との関係です。国のガイドラインでは、労働時間以外の時間をどう使うかは基本的に労働者の自由であり、会社が制限できるのは、労務の提供に支障がある場合、業務上の秘密が漏れる場合、競業により会社の利益が害される場合などに限られるという裁判例の整理が示されています。つまり、副業そのものを全面的に禁じることは難しい一方、届出を定めている会社でそれを出さなかった場合は、手続きの違反として扱われる余地があります。

実務での判断としては、届出制が就業規則にあるなら出すのが安全です。競業に当たらないか、勤務に支障が出ないかを自分で確認したうえで、時間と業務の内容を書いて提出する。これで多くの会社は手続きが終わります。

契約の条件を書面で残す習慣は、雇用でも業務委託でも同じです。取引の条件を書面にする作法はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにある項目の並びが参考になります。会社への届出でも、口頭で済ませずに控えを残しておくほうがあとで守られます。

休みを確保できる掛け持ちの組み方

法律が守ってくれない部分は、設計で埋めるしかありません。掛け持ちを続けている人の組み方を、型として並べます。

まず、休む日を先に決めます。シフトの希望を出す順番を変えるだけです。空いている日に仕事を入れるのではなく、休む日を確保してから残りに仕事を入れる。これだけで7日連続の勤務は消えます。月の初めに、休む日を4日先に押さえてしまうのが確実です。あとから空きを探す形では、繁忙の要請に押し出されます。

次に、両社のシフト提出の期限を把握します。A社の締め日がB社より早いなら、A社に希望を出す時点で休む日を確保しておく必要があります。逆の順番だと調整ができません。

3つ目は、週の合計時間の上限を自分で決めておくことです。法定の40時間を目安にするか、48時間までとするか。数字を決めておけば、シフトの追加を頼まれたときに断る根拠になります。「その週はもう上限です」と言えるかどうかで、生活が変わります。

4つ目は、片方を時間の融通が利く仕事に替える検討です。決まった時間に出勤する仕事を2つ重ねると、休みを合わせる自由がありません。在宅で自分の時間に進められる仕事を片方に置き換えると、休日の設計が一気に楽になります。文章を扱う仕事の単価の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、開発の仕事の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっています。掛け持ちの片方を時間の縛りがない仕事にするという選択は、現実的な解決になります。

書類のやり取りが増える仕事に移るなら、基本の型を押さえておくと手戻りが減ります。ビジネス文書検定は、確認の取り方や期日の書き方といった実務の形をそのまま扱います。需要が新しく立ち上がっている分野の内容はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で確認できます。

20年この市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークと業務委託の市場を長く運営してきた立場から見ると、掛け持ちで疲れ切ってしまう人には共通の形があります。両方を時間で売る仕事にしていることです。時間で売る仕事を2つ重ねると、収入は時間に比例するしかなく、増やす方法が勤務日を重ねることだけになります。だから休みが消えます。

運営者として見てきた限りでは、この状態から抜ける人は、片方を成果で受け取る仕事に替えています。作業した時間ではなく、仕上げたものに対して報酬が決まる形です。最初は時間あたりの取り分が低くても、慣れると同じ時間で受け取る額が変わっていきます。時間を売り続ける限り、休みは増えません。

もう1つの観察は、取り分の構造です。仲介が重なるほど、依頼する側が出した予算と受ける側の手取りの差が開きます。中間の手数料が乗らない直接の取引なら、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%の取引をどれだけ持てるかで、同じ時間で残るお金が変わります。休みを取り戻す方法は、働く時間を重ねることではなく、1時間あたりの取り分を変えることです。

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最後にもう一度、結論を置きます。ダブルワークで休みがない状態それ自体は、各社が休日を与えている限り会社の義務違反ではありません。問われるのは労働時間の合計と、それに対する割増賃金です。そして、休みを確保する設計は自分で組むしかありません。個別の事情で判断が変わる部分もあるので、自分のシフトが法律に照らしてどうなのかを確かめたいときは、労働基準監督署の相談窓口で記録を見せて聞いてください。

よくある質問

Q. ダブルワークで1週間まったく休みがないのは労働基準法違反ですか?

それぞれの会社が週1回以上の休日を与えていれば、会社の義務違反にはなりません。国のガイドラインでは、休憩と休日と年次有給休暇について、会社をまたいだ労働時間の通算は行わないと明記されています。問題になるのは休日の数ではなく、通算した労働時間が法定の枠を超えているかどうかです。

Q. 2社の労働時間を合計して週40時間を超えたら、どちらが割増賃金を払いますか?

国のガイドラインでは、まず労働契約を結んだ先後の順に所定労働時間を通算し、次に所定外労働の発生順に通算すると示されています。その結果、法定労働時間を超える部分のうち自社で働かせた時間について、その会社が割増賃金を払います。あとから契約した会社が負担する形になりやすいです。

Q. 会社に掛け持ちを伝えていないと、割増賃金はもらえませんか?

会社は他社での労働時間を自分では把握できません。ガイドラインでも、労働者からの申告等によって把握するとされています。伝えていなければ通算が行われず、割増賃金も計算されません。就業規則に副業の届出の定めがあるなら、提出しておくほうが安全です。

Q. 休憩や有給休暇も2社で合計されますか?

合計されません。休憩は、その会社での労働時間が6時間を超えるか8時間を超えるかで判断します。年次有給休暇も会社ごとに発生し、雇入れから6か月続けて勤務して全労働日の8割以上出勤すれば、その会社で10労働日が与えられます。週1日だけ働く会社でも条件を満たせば発生します。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月7日最終更新:2026年9月26日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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