副業について就業規則にどう書くか|許可と届け出の定め方

長谷川 奈津
長谷川 奈津
副業について就業規則にどう書くか|許可と届け出の定め方

この記事のポイント

  • ✓副業を就業規則にどう書くか
  • ✓厚生労働省のモデル就業規則が示す条文
  • ✓禁止や制限ができる4つの事由

副業を認めることにしたが、就業規則にどう書けばよいか分からない。あるいは、禁止と書いてあるが、このままでよいのか不安がある。就業規則の副業の条文についての相談は、この2つの形で持ち込まれます。

結論から言うと、書き方の土台は厚生労働省のモデル就業規則に用意されており、そこには「労働者は勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という認める側の条文が置かれています。そのうえで、会社が禁止または制限できる場合が4つ列挙されています。この構造を理解せずに「副業禁止」だけを書いた規定は、いざ問題が起きたときに会社の側を守りません。これ、知らない人が本当に多いのです。

この記事では、モデル就業規則の条文の中身、許可制と届出制の選び方、記載例、届出させる項目、労働時間の通算と割増賃金の扱い、社会保険と雇用保険の手続きまでを、公的資料に沿って順に整理します。

出発点。勤務時間外の使い方は基本的に労働者の自由

就業規則の条文を書く前に、前提となる考え方を押さえておく必要があります。

厚生労働省のモデル就業規則の解説では、裁判例の考え方が次のように整理されています。労働者の副業や兼業について、裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であることが示されている、というものです。この前提に立って、モデル就業規則は第1項で労働者が副業や兼業をできることを明示する形を取っています。

つまり、副業を全面的に禁止する規定は、その前提と衝突します。実際に会社が副業を理由として懲戒処分をした事案で、処分が無効と判断された例があります。どのような場合に無効になるかは、その副業が会社の業務にどう影響したか、処分が重すぎないかといった個別の事情で判断されます。

もう1つ、規定を書くときに見落とされやすい点があります。モデル就業規則の解説には、この「副業・兼業」について、他の会社等に雇用される形での副業や兼業のほか、事業主となって行うものや、請負や委託、準委任契約により行うものも含むことに留意が必要である、と記載されています。

つまり、「他社に雇用されて働くこと」だけを想定して条文を書くと、業務委託でフリーランスとして受注する形が条文の対象から漏れます。近年の副業の実態は、雇用よりも業務委託の形が多いので、この漏れは実務上の問題になります。

さらに同じ解説には、副業や兼業に係る相談や自己申告等を行ったことにより不利益な取扱いをすることはできない、とも書かれています。届出をした社員を評価で下げる、配置で不利に扱う、といった運用は認められません。規定に届出制を置くのであれば、この点を運用の側でも守る必要があります。

モデル就業規則の条文をそのまま読む

厚生労働省が公開しているモデル就業規則の令和7年12月版では、副業と兼業は第14章に置かれ、第70条として次のように示されています。

(副業・兼業) 第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。 2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。 ① 労務提供上の支障がある場合 ② 企業秘密が漏洩する場合 ③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 ④ 競業により、企業の利益を害する場合 出典: mhlw.go.jp

この条文の構造を分解すると、3つの要素で成り立っています。

第1項は「できる」と書いている。 許可を条件にしていません。勤務時間外の副業は原則としてできる、という宣言です。

第2項は「届出に基づき」と書いている。 許可を得なければ始められない形ではなく、届出をしてもらったうえで、問題があれば禁止または制限するという形です。

禁止または制限できる場合は4つに限定されている。 労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為、競業による企業の利益の侵害。この4つ以外の理由では、条文上、禁止や制限の根拠がありません。

なお、厚生労働省のウェブサイトの副業に関するページの本文では、この条文が「第68条」と古い番号で記載されている箇所が残っています。実際のモデル就業規則の最新版では第70条です。条文番号を引用する場合は、PDFの本文で確認してください。

この4つの事由は、そのまま自社の条文に写して使えます。ただし、モデル就業規則の解説には、本規程例は副業や兼業に関するモデル規定であり、就業規則の内容は事業場の実態に合ったものとしなければならないことから、導入の際には労使間で十分検討するようにしてください、と書かれています。写すだけで終わらせず、自社の業務に照らして中身を詰める作業が必要です。

許可制か届出制か。どちらを選ぶか

実務で最初に決める分岐がここです。両方の特徴を整理します。

許可制。 副業を始める前に会社の許可を得る形です。会社が事前に内容を審査でき、問題のある副業を始まる前に止められます。一方で、許可を出さない判断をした場合、その理由が4つの事由のどれに当たるのかを説明する責任が会社に生じます。合理的な理由なく不許可にすると、争われたときに会社の側が不利になります。加えて、許可を待つ期間が発生するため、短期の案件に社員が応じられなくなります。

届出制。 始める前または始めた時点で会社に届け出る形です。モデル就業規則が取っている形です。手続きが軽く、社員が申告しやすいため、会社が実態を把握しやすくなります。問題がある場合は届出を受けた後に禁止または制限します。デメリットは、届出の内容が不十分だと判断の材料が足りないことです。

両者の中間。 原則は届出制とし、競業に当たる可能性がある業種や、同業他社での就労については事前の協議を求める形です。実務ではこの形が最も収まりがよいことが多いです。

判断の目安を示します。企業秘密の管理が業務の中心にある会社、同業他社との競合が激しい業界、専門的な技術情報を扱う会社は、許可制または中間の形が向きます。逆に、社員の業務が社外の情報と直接つながらない業種では、届出制で足ります。

どの形を取る場合も、判断の基準を条文または社内の運用ルールとして文字にしておいてください。「会社が認めた場合」という書き方だけでは、判断が担当者ごとにぶれます。ぶれた運用は、不利益取扱いの主張につながります。

※ 自社の業務が競業に当たるかの線引きは、業界の慣行と個別の事情で変わります。判断に迷う事案は、弁護士または社会保険労務士に相談してください。

記載例。3つの段階で書き分ける

条文の書き方を、管理の強さの順に3つ示します。いずれも自社の実態に合わせて調整してください。

記載例その1。届出制のみ(モデル就業規則に近い形)

第〇条(副業・兼業)

  1. 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
  2. 前項の業務に従事しようとする労働者は、あらかじめ会社に所定の様式により届け出るものとする。届出の内容に変更が生じたときも同様とする。
  3. 会社は、前項の届出に基づき、当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。 (1)労務提供上の支障がある場合 (2)企業秘密が漏洩する場合 (3)会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 (4)競業により、企業の利益を害する場合

記載例その2。届出制に健康確保と報告を加えた形

前記の第3項に続けて、次の項を置きます。

  1. 労働者は、副業・兼業に従事する時間が会社の業務に支障を生じない範囲となるよう自ら管理し、会社の求めに応じてその実労働時間を報告するものとする。
  2. 会社は、労働者の健康状態に問題が認められる場合には、労働者と協議のうえ、副業・兼業の内容又は時間について変更を求めることができる。

記載例その3。同業他社での就労に事前協議を求める形

2項の次に、次の項を挿入します。

  1. 前項の業務が、会社と競合する事業を行う者のもとで行われるものである場合、労働者は届出に先立ち会社と協議するものとする。

条文を書くときに避けたい表現も挙げておきます。「会社の許可なく他の業務に従事してはならない」だけの規定は、許可の基準が示されていないため、争われたときに根拠を欠きます。「副業を禁止する」という一文だけの規定も同様です。「会社に不利益を与える副業を禁止する」という書き方は、不利益の内容が不明確なため、判断の基準になりません。4つの事由のように、具体的な場面を列挙する形が実務では有効です。

届出書に何を書かせるか

条文を作っただけでは運用できません。届出の様式に何を書かせるかが、実務の質を決めます。

厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインには、労働者から確認する事項として次のものが挙げられています。

・ 他の使用者の事業場の事業内容 ・ 他の使用者の事業場で労働者が従事する業務内容 ・ 労働時間通算の対象となるか否かの確認 出典: mhlw.go.jp

同じガイドラインでは、労働時間通算の対象となる場合には、併せて次の事項について確認し、各々の使用者と労働者との間で合意しておくことが望ましいとして、他の使用者との労働契約の締結日と期間、他の使用者の事業場での所定労働日と所定労働時間と始業・終業時刻、他の使用者の事業場での所定外労働の有無と見込み時間数と最大時間数、他の使用者の事業場における実労働時間等の報告の手続、これらの事項について確認を行う頻度、が列挙されています。

この列挙をそのまま届出書の項目にできます。実務上の様式としては、次の構成が使いやすいです。

・副業先の名称と事業内容 ・従事する業務の内容 ・契約の形態(雇用契約か、業務委託か、自ら事業を営むか) ・雇用契約の場合は、契約の締結日と期間、所定労働日、所定労働時間、始業と終業の時刻 ・所定外労働の有無と、その見込みの時間数 ・開始の予定日 ・実労働時間の報告の方法と頻度

契約の形態を最初に書かせるのが要点です。雇用契約であれば労働時間の通算が必要になり、業務委託や自ら事業を営む形であれば通算の対象になりません。この区別が届出書の入口にないと、後の判断で毎回混乱します。

労働時間の通算。通算されるものと、されないもの

ここが実務で最も間違えられる部分です。ガイドラインの記述に沿って整理します。

労働基準法第38条第1項は、労働時間は事業場を異にする場合においても労働時間に関する規定の適用については通算すると定めています。そして、この「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含むと、昭和23年の通達で示されています。つまり、別の会社で働いた時間も通算されます。

通算されない働き方。 ガイドラインは、労働時間が通算されない場合を具体的に列挙しています。労働基準法が適用されない場合の例として、フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事等が挙げられています。労働基準法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合として、農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度が挙げられています。

つまり、社員が業務委託で副業をする場合、労働時間の通算は不要です。実務上の負担が大きく違うため、届出書で契約の形態を確認する意味がここにあります。ただし、同じガイドラインには、これらの場合においても過労等により業務に支障を来さないようにする観点から、その者からの申告等により就業時間を把握すること等を通じて、就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましいとも書かれています。通算が不要でも、把握は望ましいということです。

通算して適用される規定。 法定労働時間(労働基準法第32条)、そして時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内という要件が、通算して適用されます。

通算されない規定。 ガイドラインは、通算されない規定も明示しています。36協定により延長できる時間の限度時間と、特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限は、個々の事業場における36協定の内容を規制するものであるため、それぞれの事業場における延長時間を定めることになります。また、休憩(第34条)、休日(第35条)、年次有給休暇(第39条)については、労働時間に関する規定ではないため、通算されません。

この区別を知らないと、他社での労働時間を自社の36協定の枠に入れて計算してしまい、実態より厳しい管理をすることになります。逆に、法定労働時間の通算を忘れると、割増賃金の不払いが発生します。

割増賃金は誰が払うか。管理モデルという簡便な方法

通算した結果、法定労働時間を超える部分が出たとき、誰が割増賃金を払うのか。ガイドラインは、支払の義務を次の順序で判断すると示しています。まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算する。そのうえで、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について割増賃金を支払う必要がある、というものです。

割増賃金の率については、自らの事業場における就業規則等で定められた率(2割5分以上の率)であり、所定外労働の発生順によって通算して法定労働時間を超える部分が1か月について60時間を超えた場合には、その超えた時間の労働のうち自ら労働させた時間については5割以上の率になるとされています。

この計算を毎日行うのは現実的ではありません。そこでガイドラインは、簡便な労働時間管理の方法として「管理モデル」を示しています。副業や兼業の開始前に、時間的に先に労働契約を締結していた使用者の事業場における法定外労働時間と、後から労働契約を締結した使用者の事業場における労働時間とを合計した時間数が単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内で、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定し、各々の使用者がその範囲内で労働させる方法です。

この方法を取ると、先に契約していた会社は自らの事業場における法定外労働時間について、後から契約した会社は自らの事業場における労働時間について、それぞれ割増賃金を支払うことになります。日々の相互の申告と計算が不要になるため、実務の負担が大きく下がります。

実労働時間の把握についても、ガイドラインは現実的な方法を示しています。他の使用者の事業場における実労働時間は、必ずしも日々把握する必要はなく、労働基準法を遵守するために必要な頻度で把握すれば足りるとされ、一定の日数分をまとめて申告させる、所定労働時間どおりに働いた場合は申告を求めず所定外労働があった場合のみ申告させる、上限規制の水準に近づいてきた場合に申告させる、といった方法が例示されています。

就業規則に置く条文としては、「会社の求めに応じて実労働時間を報告するものとする」という一文を入れておけば、報告の頻度は運用側で決められます。

条文を作る前に決めておく5つのこと

条文の文言から着手すると、後戻りが発生します。先に決めておく事項を順に挙げます。

対象者の範囲。 全社員を対象にするのか、試用期間中の社員を除くのか、管理監督者を別扱いにするのか。管理監督者は労働時間規制の適用外であるため、労働時間の通算の扱いが一般の社員と異なります。条文で一律に書くと運用が合わなくなります。

既存の社員の扱い。 規定を新設する時点で、すでに副業をしている社員がいます。この社員に遡って届出を求めるのか、規定の施行日以降に開始するものだけを対象にするのか。実務では、施行日から一定の期間を設けて既存の副業もまとめて届出してもらう形が収まりがよいです。遡って処分の対象にすると、届出が出てきません。

届出から回答までの期間。 届出を受けてから会社が禁止または制限の判断をするまでの期間を決めておきます。この期間が示されていないと、社員は開始できるのかどうか分かりません。5営業日以内、10営業日以内といった形で明示してください。

判断する部署と決裁者。 人事部が判断するのか、所属長が判断するのか、両方の合議とするのか。決裁者が定まっていないと、同じ内容の届出で結論が変わります。

様式と保管の方法。 届出書の様式を用意し、どこで保管し、誰が閲覧できるかを決めます。副業先の情報は社員の個人情報に当たるため、閲覧できる範囲を限定してください。

この5点を決めてから条文を書くと、条文が短く済みます。逆に、条文で全部を表現しようとすると読めない長文になり、社員が理解できません。細かい運用は社内の規程や様式に落として、就業規則の本体は骨格だけにしておくのが実務的です。

3か所以上で働く場合と、届出内容が変わったとき

現実には、副業先が2か所以上になる社員が出てきます。この場合の扱いもガイドラインに示されています。労働者が事業主を異にする3以上の事業場で労働する場合についても、同じ考え方により、副業や兼業の確認、開始前の所定労働時間の通算、開始後の所定外労働時間の通算を行うとされています。つまり、社数が増えても考え方は変わりません。

ただし、実務の負担は社数に応じて増えます。3か所以上になる場合は、前の節で触れた管理モデルの適用を検討してください。各々の事業場での上限をあらかじめ決める方式であれば、社数が増えても日々の相互申告が不要になります。

届出の内容が変わったときの扱いも、条文に入れておくべき項目です。副業先の所定労働時間が変わった、業務の内容が変わった、副業先が増えた、副業を終了した。このいずれの場合も、会社が把握していなければ労働時間の通算が実態から外れます。記載例で示したとおり「届出の内容に変更が生じたときも同様とする」という一文を入れておけば、変更の届出の根拠になります。

副業を終了した場合の届出も忘れないでください。終了の届出がないと、会社の記録上は副業が続いていることになり、労働時間の管理が過剰になります。社員の側にとっても、終了しているのに報告を求められる状態は負担です。

社会保険と雇用保険の手続き

副業を認めると、社会保険と雇用保険の手続きが発生することがあります。就業規則の条文には書かない部分ですが、運用として押さえておく必要があります。

厚生年金保険と健康保険。 2か所以上の事業所で厚生年金保険と健康保険の被保険者となる要件を満たす場合、被保険者本人が届出をします。日本年金機構の案内では、手続きの時期と提出先が次のように示されています。事実発生から10日以内に被保険者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出し、提出先は選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所とされています。提出方法は電子申請、郵送、窓口持参のいずれかです。この届出により、どちらの事業所を主として扱うかを選択し、保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額を基に按分されます。

短時間労働者が社会保険の対象になる要件は段階的に広がっています。厚生労働省の案内では、賃金の要件については2026年10月に撤廃する予定とされており、現時点では月額8.8万円以上という要件が残っています。企業規模の要件も段階的に拡大する予定が示されています。副業先が小規模な事業所であっても、将来的に加入の対象になる可能性があるため、社員に副業先の事業所規模を確認させる運用にしておくと、手続きの漏れを防げます。

雇用保険。 雇用保険は、原則として主たる事業所の労働条件で判断されます。ただし、65歳以上の労働者については特例があります。厚生労働省の案内では、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること、2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であることを満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで特例的に被保険者となることができる制度が示されています。令和4年1月1日から始まった制度で、加入できるのは2つの事業所までです。

高年齢の社員が副業をする場合、この制度の対象になる可能性があります。申出は本人が行うため、制度の存在を社内で周知しておくと、社員が自分で判断できます。

規定を作った後の運用で守ること

条文が整っても、運用が伴わなければ意味がありません。実務で問題になりやすい4点を挙げます。

不利益取扱いをしない。 モデル就業規則の解説に明記されているとおり、副業や兼業に係る相談や自己申告等を行ったことによる不利益な取扱いは認められません。届出をした社員の評価を下げる、昇進の対象から外す、といった扱いは避けてください。運用でこれが起きると、社員が届出をしなくなり、会社が実態を把握できなくなります。規定を置いた目的そのものが崩れます。

健康状態の確認を仕組みにする。 モデル就業規則の解説には、副業や兼業の開始後に状況について労働者からの報告等により把握し、労働者の健康状態に問題が認められた場合には適切な措置を講ずることが、ガイドラインに記載されていると示されています。年1回の面談に副業の状況を確認する項目を加えるだけでも、仕組みとして機能します。

競業行為の範囲を注意喚起する。 同じ解説には、副業や兼業を行う労働者に対して、禁止される競業行為の範囲や、自社の正当な利益を害しないことについて注意喚起することが挙げられています。届出を受け付けたときに、この点を文書で伝える運用にしておくと、後の争いを避けられます。

秘密保持の条文と連動させる。 副業の条文だけを整えても、秘密保持の条文が弱ければ企業秘密の漏洩は防げません。両方の条文を突き合わせて、副業先で扱う情報の範囲について定めを置いてください。業務委託で社外の仕事を受ける場合の契約の要点については、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに、書面に記載すべき項目が整理されています。社員が業務委託で副業をするときに何を確認すべきかを伝える材料になります。

資格を持つ社員の副業については、その資格に固有の制限が別にあります。会計や監査の資格を持つ人の副業の可否と留意点を整理した会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】のように、職種ごとの事情を確認する必要があります。就業規則の一般的な条文だけで判断すると、資格の側の規制を見落とします。

20年この市場を見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、副業の規定を整えた会社と整えていない会社の差は、社員の副業の有無ではありません。社員が副業をしていることを会社が知っているかどうかの差です。規定がない会社でも社員は副業をしています。規定がないので届出がなく、会社は把握していないだけです。

運営者として見てきた限りでは、届出制を置いた会社で最初に起きるのは、想定より多くの届出が出てくることです。これを「管理が増えた」と受け取るか、「実態が見えるようになった」と受け取るかで、その後の運用が分かれます。実態が見えれば、長時間の労働が積み上がっている社員を先に見つけられます。見えていない状態のほうが、会社にとってのリスクは大きいのです。

社員の側から見た副業の意味も、この20年で変わりました。以前は収入の補填が主でしたが、近年は社内では得られない経験を取りに行く動きが目立ちます。技術職では特にその傾向が強く、社外の案件で扱った技術を本業に持ち帰る例が増えています。技術系の職種でどのような業務が社外にあるかはアプリケーション開発のお仕事に業務の種類が整理されており、社員がどこに向かおうとしているのかを理解する材料になります。

仲介の手数料が引かれない直接の取引についても、同じ構図が見えます。手数料が乗らない取引では、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側の手元に残る金額は厚くなります。手数料0%の意味は、金額が少し変わるという話ではありません。同じ時間を使って残る金額が厚いから、短い時間でも副業として成り立つという質の違いです。会社の側から見ると、社員が少ない時間で副業を完結させられるほうが、本業への影響が小さくなります。

副業として社員が向かう先の報酬の水準を知っておくと、社内の処遇を考えるうえでの参考になります。技術職の相場についてはソフトウェア作成者の年収・単価相場に職種別の数字がまとまっています。社外の水準を知らないまま処遇を決めると、副業が本業になっていく流れを止められません。

文書の作成そのものを整えたい場合、社内規定や届出様式の書き方は文書の技能の問題でもあります。ビジネス文書検定の出題範囲は、社内で使う様式の書き方を見直す手がかりになります。届出書の項目が読み取りにくいと、社員が書き間違え、会社が判断を誤ります。

最後に、就業規則を変更する際の手続きに触れます。就業規則の変更には労働者の意見を聴く手続きが必要で、変更後は労働基準監督署への届出と、社員への周知が求められます。条文を作っただけで周知していない規定は、効力を主張できません。社内の掲示、電子データでの配布、説明の場のいずれかを必ず実施してください。法律は、手続きを踏んだ会社の側にも立ちます。

よくある質問

Q. 就業規則で副業を全面的に禁止することはできますか?

できません。裁判例では、労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的に労働者の自由であるとされており、厚生労働省のモデル就業規則も副業ができることを明示する形を取っています。禁止または制限できるのは、労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、名誉や信用を損なう行為、競業による利益侵害の4つの場合です。

Q. 許可制と届出制はどちらを選ぶべきですか?

企業秘密の管理が業務の中心にある会社や同業他社との競合が激しい業界では許可制または中間の形が向き、社員の業務が社外の情報と直接つながらない業種では届出制で足ります。モデル就業規則は届出制を取っています。どちらを選ぶ場合も判断の基準を文字にしておいてください。

Q. 社員が業務委託で副業をする場合も労働時間を通算しますか?

通算しません。厚生労働省のガイドラインは、フリーランス、独立、起業、共同経営、顧問などは労働基準法が適用されないため労働時間が通算されないと明示しています。ただし過労を防ぐ観点から、申告等により就業時間を把握し長時間にならないよう配慮することが望ましいとされています。

Q. 副業先でも社会保険の対象になった場合、どんな手続きが必要ですか?

2か所以上で被保険者となる場合、被保険者本人が事実発生から10日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。提出先は選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所で、電子申請、郵送、窓口持参のいずれでも可能です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月21日最終更新:2026年9月29日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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