居宅介護支援事業所で任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

長谷川 奈津
長谷川 奈津
居宅介護支援事業所で任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

この記事のポイント

  • 居宅介護支援事業所の事務員の仕事内容を
  • その事業所の中で実際に何が起きているかという視点で解説します
  • 給付管理と毎月10日の締切

居宅介護支援事業所の事務員の仕事内容を調べている方は、たいてい2種類に分かれます。介護業界での勤務経験があって、現場から事務へ移りたい方。もう1つは、一般企業の事務経験があって、介護業界の事務職に応募しようとしている方です。どちらの方も、求人票の「介護事務」「ケアマネ補助」「事務員」という言葉から、実際の中身を想像できずに止まっています。

結論から言うと、居宅介護支援事業所の事務員は、いわゆる受付事務ではありません。この事業所には利用者が来所しません。ケアマネジャーは日中ほとんど外に出ています。つまり事務員は、誰もいない事務所で外部からの連絡を一手に受け、月に1度の請求業務を期日までに通す役割を担います。これ、知らない人が本当に多いんです。しかも事務員を配置しているかどうかが、事業所の介護報酬の計算方法そのものを変えます。以下で順に整理していきます。

居宅介護支援事業所は「人が来ない事務所」である

まず、この事業所が何をする場所なのかを正確に押さえます。居宅介護支援事業所は、介護支援専門員、つまりケアマネジャーが所属し、在宅で暮らす要介護者のケアプラン、正式には居宅サービス計画を作成する事業所です。訪問介護やデイサービスのようにサービスを直接提供する事業所ではありません。提供しているのは、計画の作成と調整という仕事です。

人員の基準はシンプルです。常勤の介護支援専門員を1人以上置くこと。そして利用者44人またはその端数を増すごとに1人を基準として配置すること(令和6年度の改定前は35人でした)。管理者は主任介護支援専門員であることが求められます。ここに事務員は含まれていません。つまり事務員は、法令上の必置職種ではないのです。

にもかかわらず事務員の求人が継続的に出ているのはなぜか。理由は後述する報酬の仕組みにありますが、その前に職場の空気を説明します。

居宅介護支援事業所の特徴は、日中に人がいないことです。ケアマネジャーの仕事は、利用者宅への訪問、サービス事業所との調整、サービス担当者会議の開催、医療機関との連携が中心です。1人が30件前後の利用者を担当し、月に1度は必ず自宅を訪問してモニタリングを行う義務があるため、午前も午後も外出しています。事務所に戻るのは夕方で、そこから記録の入力と翌日の段取りを行います。

その結果、日中の事務所には事務員だけが残ります。この状態で鳴るのが、電話です。利用者本人からの体調の相談、ご家族からの日程変更の依頼、訪問介護事業所からのサービス実績の確認、福祉用具の事業者からの納品日の連絡、地域包括支援センターからの照会、病院の医療連携室からの退院調整の打診。この全部を、担当ケアマネジャーが不在のまま受けることになります。

ここが一般企業の事務との最大の違いです。一般企業の電話対応は「担当者に取り次ぐ」で成立しますが、居宅介護支援事業所では取り次ぎ先が外にいます。事務員に求められるのは、誰の話なのか、緊急性はどの程度か、折り返しでよいのか、今すぐ携帯に転送すべきかを判断することです。この判断を毎日繰り返すうちに、担当者でなくても利用者の名前と状況が頭に入ってきます。

※注意点を1つ。ケアプランの内容そのものについて、事務員が利用者やご家族に説明することはできません。ケアプランの作成と説明は介護支援専門員の業務です。判断に迷う内容を聞かれたときは「担当の者から折り返します」で止めるのが正しい対応です。ここを踏み越えると、事業所の運営基準上の問題になります。

事務員を置くと報酬の計算方法が変わる

ここが居宅介護支援事業所の事務員という仕事の、最も特殊で、最も知られていない部分です。

介護報酬には逓減制という仕組みがあります。ケアマネジャー1人が担当する利用者の件数が一定数を超えると、超えた分の報酬単価が下がるという制度です。

なお、1人の介護支援専門員の担当件数が44件以上になると、減算の対象になります。この仕組みを「逓減制(ていげんせい)」と呼びます。 出典: wiseman.co.jp

つまり、担当件数を増やせば増やすほど儲かるわけではない設計になっています。1人のケアマネジャーが100人を抱えて質の低い計画を量産することを防ぐための仕組みです。

問題は、この件数の上限が事業所の経営を直撃することでした。そこで改定が入りました。

令和3年度の介護報酬改定によって、逓減制がこれまでの「40件以上」から「45件以上」へ緩和されました。緩和のための条件は、「事務職員の配置」または「ICTの活用」です。 出典: wiseman.co.jp

つまり、と言い換えます。事務職員を置くか、ケアプラン作成支援のシステムを導入するかすれば、ケアマネジャー1人あたりが受け持てる件数の枠が広がり、事業所全体の売上が上がる。事務員の人件費は、この枠の拡大によって回収される構造になっているわけです。

この仕組みが意味することは重大です。事務員は「余裕があるから雇う補助要員」ではなく、「置くことで事業所の収益構造が変わる職種」だということです。求人が出ている居宅介護支援事業所は、多くの場合この計算をした上で募集をかけています。だから面接でも、事務作業の速さより「ケアマネジャーの手を何時間空けられるか」という観点で見られます。

※なお、取扱件数の基準や緩和の要件は、介護報酬改定のたびに見直されています。令和6年度の改定でもさらに件数の枠が広がる方向で見直しが入りました。応募先の事業所がどの運用をしているかは、その時点の告示と事業所の体制によって変わるため、面接で「逓減制の緩和要件は事務員配置で満たしていますか、ICT活用ですか」と聞くのが確実です。この質問ができる応募者は、それだけで制度を理解していると評価されます。

令和6年度の改定の中身も、事務員の立場から読むと意味がはっきりします。基本の枠では、逓減がかかり始める件数が45件目からに引き上げられました。さらに枠を広げて50件目まで逓減をかけない区分を使うには、国のケアプランデータ連携システムを活用し、かつ事務職員を配置していることが要件になりました。以前は「どちらか一方」でよかったものが「両方」に変わったわけです。つまり、枠を最大まで広げたい事業所にとって、事務職員はシステムの代わりではなく、システムと並んで必要な存在になりました。これ、現場の事務員さん本人でも知らないことが多いんです。

この要件の変化は、事務員に任される仕事の中身も変えています。ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所とサービス事業所の間で、提供票や実績のデータを紙やFAXではなくデータで受け渡すための仕組みです。導入した事業所では、送信の操作、相手先事業所の対応状況の確認、まだ紙でしかやり取りできない事業所との二本立ての管理が事務員に回ってきます。求人票に「ICT推進」「データ連携の運用補助」といった言葉が入っている場合は、この運用を任される前提だと読んでください。

※取扱件数の数え方には、要支援者の介護予防支援を受託している場合の換算など、細かい決まりがあります。自分が件数管理の表を作る立場になったら、必ず管理者か主任介護支援専門員に数え方を確認してから作ってください。数え方を誤ると、事業所が報酬を過大に請求したことになり、返還を求められることがあります。

法令は難しく見えますが、この1点だけ理解しておけば、自分の役割が何に貢献しているのかが分かります。法律はあなたの味方です。

毎月10日という締切が、1か月のリズムを作る

居宅介護支援事業所の事務は、月の中で仕事の量が大きく波打ちます。これは施設の事務とも一般企業の事務とも違う点です。

波を作っているのが、給付管理という業務です。順を追って説明します。

前月の中旬から下旬にかけて、ケアマネジャーは翌月のケアプランを作り、利用者に説明して同意を得ます。そこから、実際にどのサービスを何回利用するかを一覧にしたサービス提供票を作り、訪問介護やデイサービスなどの各事業所に配ります。事務員はこの配布を担当することが多く、紙で郵送する事業所、FAXで送る事業所、システムで連携する事業所が混在しているため、送り先ごとに手段が違います。

月が明けると、今度は逆向きの流れになります。各サービス事業所から、実際に提供したサービスの実績が返ってきます。予定と実績が一致していれば話は早いのですが、一致しないことが日常的に起きます。利用者が体調を崩してデイを1回休んだ、訪問介護の時間が急遽延びた、入院して月の後半のサービスが全部なくなった。この差分を1件ずつ突き合わせる作業が、事務員の主要な仕事になります。

突き合わせが終わったら、給付管理票を作成します。これは、その利用者が受けたサービスの合計が、支給限度基準額の範囲に収まっているかを管理するための書類です。ここで限度額を超えていると、超過分が全額自己負担になります。超えていることに気づかないまま請求を通すと、あとで利用者に高額の請求が発生し、トラブルになります。

そして、国民健康保険団体連合会、いわゆる国保連へのデータ伝送が、毎月10日までという期限で設定されています。この日を1日でも過ぎると、その月の報酬の入金は翌月以降にずれ込みます。事業所の資金繰りが直接影響を受けるため、月初の10日間は事務所全体が緊張します。

さらに、伝送したデータに不備があると返戻として戻ってきます。保険者番号の誤り、被保険者番号の誤り、サービス事業所側の請求との突合不一致、資格喪失後のサービス提供。理由はさまざまですが、返戻の処理も事務員の担当になることが多い。この修正と再請求までが1つのサイクルです。

月の後半は、比較的落ち着きます。この時期に、実地指導に備えた書類の整備、契約書や重要事項説明書の差し替え、モニタリング記録の保管状況の確認といった作業を進めます。私が行政書士として実地指導後の相談を受けるとき、最も多い指摘は「書類が揃っていない」ではなく「書類はあるが署名や日付が抜けている」というものです。契約書の押印欄が空白のまま数年経っていた事業所もありました。こうした抜けを月末に拾っておくと、後で大きな手戻りになりません。

任される書類を具体的に並べる

事務員が扱う書類を、実際の名前で挙げます。ここを知っておくと、求人票の抽象的な表現が読めるようになります。

居宅サービス計画書、いわゆるケアプランは第1表から第7表まであります。第1表が居宅サービス計画書の全体方針、第2表が課題と目標とサービス内容、第3表が週間サービス計画表、第4表がサービス担当者会議の要点、第5表が居宅介護支援経過、第6表がサービス利用票、第7表がサービス利用票別表です。このうち第6表と第7表が、先ほど説明した給付管理の実務に直結します。

作成そのものはケアマネジャーの業務ですが、事務員は印刷、製本、利用者への郵送、控えの保管、システムへの入力補助を担います。事業所によっては、ケアマネジャーが手書きで書いたメモをシステムに打ち込む作業まで任されます。

契約関連では、居宅介護支援契約書、重要事項説明書、個人情報使用同意書があります。新規の利用者を受け入れるたびに一式を用意し、署名と押印を確認して保管します。ここは法的な効力を持つ書類なので、日付の抜けや訂正印の処理には注意が必要です。※訂正が必要になった場合、修正液での修正は避け、二重線と訂正印で処理するのが基本です。

会議関連では、サービス担当者会議の案内状と記録があります。会議には複数のサービス事業所の担当者が集まるため、日程調整が難航します。参加者が5者を超えることも珍しくなく、この調整が事務員に回ってくる事業所では、実質的にスケジュール管理が主要業務になります。

請求関連では、給付管理票、居宅介護支援介護給付費請求書、返戻の一覧表、入金の突合資料があります。これらはほぼすべて介護保険請求システム上で扱います。

その他に、職員の勤務表、研修記録、苦情受付簿、事故報告書、感染症対策の記録といった運営基準上の備え置き書類があります。地味ですが、実地指導で真っ先に見られるのがこの一群です。

書類の保管期間にも決まりがあります。居宅介護支援の記録は、運営基準で完結の日から2年間の保存が求められていますが、自治体の条例で5年間に延ばしているところが少なくありません。報酬の返還請求ができる期間との関係で、5年を基準に運用している事業所も多いです。つまり、事業所の所在地によって「捨ててよい時期」が変わります。書庫の整理を任されたときは、自己判断で廃棄せず、所在地の条例と事業所の規程を確認してから進めてください。個人情報を含む書類なので、廃棄の方法も溶解処理や裁断など、事業所の決まりに従います。

施設の介護事務や病院の医療事務と、どこが違うのか

同じ「介護事務」という言葉でくくられていても、働く場所によって中身はかなり変わります。比較しておきます。

特別養護老人ホームや老人保健施設の事務は、入所者の利用料の計算、食費や居住費の管理、家族への請求書の発行、来客対応、職員の労務関連が主な業務です。利用者は施設内にいるので、顔を見ながら仕事ができます。請求の単位も施設単位でまとまっていて、外部のサービス事業所との突合はほとんど発生しません。

デイサービスの事務は、送迎の調整、当日の出欠管理、実績の記録が中心です。1日の動きが目の前で完結するので、予定と実績の差はその日のうちに確定します。

訪問介護事業所の事務は、ヘルパーのシフト作成と、訪問先ごとの実績記録の回収が中心です。直行直帰のヘルパーが多いため、記録の提出が遅れがちで、月末から月初にかけて回収の催促に追われます。居宅介護支援事業所から見ると、この訪問介護事業所の実績が届かないと自分たちの給付管理が進みません。つまり、訪問介護の事務員は「実績を送る側」、居宅介護支援事業所の事務員は「実績を受け取って突き合わせる側」という関係にあります。同じ月初の繁忙期でも、立っている場所が反対なのです。訪問介護の事務を経験した人が居宅介護支援事業所に移ると、実績が遅れる側の事情が分かるため、催促の電話の言い方がうまくなります。

病院の医療事務は、診療報酬明細書、いわゆるレセプトの作成が主軸です。点数の算定が中心で、覚えるべき知識体系は介護保険とはまったく別物になります。

これらに対して居宅介護支援事業所の事務は、外部との突合が仕事の中心という点で際立っています。自分の事業所の中だけでは仕事が完結せず、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与、訪問看護といった複数の事業所から情報が集まってきて初めて書類が作れます。裏を返せば、地域にどんなサービス事業所があり、それぞれがどういう運用をしているかが自然と頭に入ります。

この知識は、他の職場では得られません。1つの施設で働いていると、その施設のやり方しか見えませんが、居宅介護支援事業所にいると、地域の介護サービス全体の地図が頭の中にできあがります。将来ケアマネジャーを目指す人、あるいは新しく事業所を立ち上げたい人にとって、この経験の価値は非常に大きい。ここでしか経験できないことは何かと問われれば、私はこの「地域全体が見える位置に座れること」を挙げます。

資格は必要か、未経験でも入れるのか

法令上、居宅介護支援事業所の事務員に必須の資格はありません。介護支援専門員の資格が必要なのはケアマネジャーの業務であって、事務員にそれは求められません。

ただし、実務上あると有利な資格はあります。ケアクラーク、介護事務管理士、介護報酬請求事務技能検定といった民間資格は、介護保険制度の仕組みと請求の流れを体系的に学べるため、未経験からの応募では意欲の証明になります。取得に必要な学習時間はおおむね50時間から100時間程度で、通信講座なら3か月前後が目安です。

実務で効くのは、資格そのものより表計算ソフトの操作です。予定と実績の突合、限度額の管理、返戻の一覧処理は、システム上で完結する部分と、手元の表計算で整理する部分に分かれます。関数を使って差分を洗い出せる人は、この仕事では即戦力になります。

もう1つ、意外に評価されるのが文書作成の正確さです。居宅介護支援事業所から外部に出る文書は、サービス事業所への依頼、医療機関への情報提供、利用者やご家族への通知と、相手が多岐にわたります。同じ内容でも、宛先によって書き方を変える必要がある。この技能は、独学だと型が身につきにくい領域です。宛先ごとの敬語の使い分けや、要件を先に書く文書の構成を、事業所に残っている過去の文書から学んでおくと効率的です。介護業界の書類にもそのまま応用できます。

給与の相場も見ておきます。求人サイトで居宅介護支援事業所の事務職を検索すると、正社員で月給18万円から24万円程度、パートで時給1,000円から1,300円程度が中心帯です。ケアマネジャーの資格を持った上で事務も兼ねる形であれば、水準は上がります。

参考までに、ケアマネジャー本体の募集条件がどう書かれているかも見ておくと、事業所の規模感がつかめます。

【仕事内容】<経験不問>居宅介護支援事業所でのケアマネジャー 【PR・職場情報など】<福岡市東区千早>月給23.5万円以上|賞与3ヶ月分|日勤のみ|日祝休み|居宅介護支援事業所|ケアマネジャー 出典: 求人ボックス

日勤のみ、日祝休みという条件が並ぶのは、この業態の特徴です。利用者宅への訪問は日中に行うため、夜勤がありません。事務員も同じ勤務時間で動きます。生活リズムを崩さずに介護業界で働きたい方にとって、ここは大きな利点です。

求人票のどこを見れば、その事業所の実態が読めるか

応募先を選ぶときに確認すべき項目を挙げます。

1つ目は、事業所の規模です。ケアマネジャーが何人在籍しているかを見てください。1人2人の小規模事業所では、事務員も1人で、休むと業務が止まります。5人以上いる事業所なら、事務も複数人で分担している可能性が高く、月初の繁忙期の負荷が分散されます。

2つ目は、併設事業所の有無です。同じ法人がデイサービスや訪問介護を運営していると、事務員がそちらの請求業務も兼ねることがあります。「法人内他事業所の事務補助あり」といった記載があれば、業務範囲は広いと考えてください。悪いことばかりではなく、覚えられる制度の幅は広がります。

3つ目は、使用しているシステム名です。求人票に介護ソフトの名前が書かれていれば、そのソフトの操作を覚えることになります。事前に名前が分かっていれば、面接前に公式サイトで機能を確認できます。

4つ目は、「ケアマネジャー資格取得支援あり」の記載です。これがある事業所は、事務員がゆくゆく介護支援専門員を目指すことを想定しています。介護支援専門員実務研修受講試験には実務経験の要件があるため、誰でもすぐ受けられるわけではありませんが、長期的なキャリアを描ける環境かどうかの判断材料になります。

5つ目は、勤務時間の幅です。9時から18時と書かれていても、月初の10日間だけ残業が集中する職場は多くあります。面接では「月初はどのくらい残業がありますか」と、平均ではなく繁忙期を聞いてください。

6つ目は、雇用形態と社会保険の記載です。※週の所定労働時間が20時間以上で一定の要件を満たすとパートでも社会保険の加入対象になります。求人票の記載と実際の勤務条件が食い違う場合は、労働条件通知書の交付を受けたうえで確認してください。労働条件の明示は使用者の義務です。

事務の技能は、介護業界の外にも持ち出せる

最後に、この仕事で身につくものが将来どこに繋がるかを整理します。

居宅介護支援事業所の事務で得られる技能は、大きく3つに分かれます。制度の知識、突合の技能、そして多方面との調整力です。

制度の知識は介護保険に限定されますが、突合の技能と調整力は業界を問いません。予定と実績を照らして差分を洗い出し、期限までに正確なデータを外部機関へ提出する。この一連の作業は、経理、受発注管理、業務委託先の管理といった仕事とほぼ同じ構造をしています。

20年この市場を見てきた立場から言うと、介護の事務を数年やった方は、在宅の事務代行やバックオフィス支援の仕事に移ったときに、驚くほどスムーズに立ち上がります。理由は単純で、期限が絶対に動かない仕事を経験しているからです。毎月10日という締切を何十回も守ってきた人は、納期の感覚が体に入っています。これは教えて身につくものではありません。

近年は、介護現場の記録や請求を効率化するためのシステム導入を支援する仕事も増えています。現場の運用を知らない人が設計したシステムは使われないので、実務を知っている人の価値が高い領域です。

また、制度や実務を文章にして伝える仕事にも需要があります。介護保険の仕組みを正確に説明できる書き手は市場で不足していて、事業所向けの資料作成や解説記事の作成といった仕事があります。こうした外の仕事を考える前に、介護の現場で働く人と事務職の収入の差を知っておくと、自分の立ち位置が見えます。介護職員の平均年収や単価の幅は介護職員の年収・単価相場で確認できます。

運営者として見てきた限りでは、長く安定して仕事を得ている人ほど、単発の作業を数多くこなすのではなく「この人に任せると確認の手間が減る」という関係を作ることに時間を使っています。中間に入る事業者が少ない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は手数料0%の分だけ手取りが厚くなります。この双方が得をする構造は、抽象的な理屈ではなく、実際に長く続く人たちの働き方を見てきて得た実感です。

なお、介護業界でも打ち合わせのオンライン化は進んでいます。サービス担当者会議をオンラインで実施する運用も一定の要件のもとで認められるようになりました。ツールの違いはZoom・Teams・Google Meetを比較|フリーランスの打ち合わせに最適なのは?【2026年版】にまとまっています。会議の設定を事務員が担当する事業所では、ここを押さえておくと最初の1か月が楽になります。

よくある質問

Q. 居宅介護支援事業所の事務員に資格は必要ですか?

法令上の必須資格はありません。ケアクラークや介護事務管理士などの民間資格は制度の全体像を学べるため未経験者の意欲の証明になりますが、実務で効くのは表計算ソフトの操作と文書作成の正確さです。学習時間は50時間から100時間程度が目安になります。

Q. 事務員がいると事業所にどんなメリットがあるのですか?

ケアマネジャー1人あたりの担当件数が一定数を超えると報酬単価が下がる逓減制という仕組みがあり、事務職員の配置またはICTの活用によってこの件数の枠が緩和されます。つまり事務員の配置は事業所の収益構造に直接影響します。要件は改定のたびに見直されるため面接で確認してください。

Q. 月のどの時期が忙しいですか?

月初から10日ごろまでが最も忙しくなります。前月のサービス実績を各事業所から集めて予定と突き合わせ、給付管理票を作成し、国民健康保険団体連合会へ期日までにデータを伝送する必要があるためです。月の後半は比較的落ち着き、書類整備などに充てられます。

Q. 施設の介護事務とはどう違いますか?

施設の事務は入所者の利用料計算や家族対応が中心で、業務が施設内で完結します。居宅介護支援事業所の事務は、訪問介護やデイサービスなど複数の外部事業所から実績を集めて突き合わせる作業が中心です。その分、地域の介護サービス全体の状況が見えるようになります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月7日最終更新:2026年9月16日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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