居宅介護支援事業所の人間関係|狭い職場での距離の取り方


この記事のポイント
- ✓居宅介護支援事業所の人間関係は
- ✓サービス事業所・医療機関・利用者家族という事業所外の二層でできています
- ✓担当の振り分けや管理者との距離
居宅介護支援事業所の人間関係について調べている方に、結論から書きます。
居宅介護支援事業所の人間関係は、2つの層でできています。1つは、ケアマネジャーが数人しかいない事業所の中の関係。もう1つは、サービス事業所、病院、利用者とご家族といった、事業所の外の関係です。そして居宅のケアマネジャーが消耗しやすいのは、多くの場合、外の関係のほうです。事業所の中は人数が少ない分、相性が合わないと逃げ場がありませんが、日中は顔を合わせる時間が短いという特徴もあります。
つまり、「狭い職場だから人間関係が濃い」というイメージは、半分正しく、半分ずれています。この記事では、2つの層それぞれで何が起きているのか、どこで距離を取ればよいのか、そして求人の段階でどう見抜くのかを、職場の構造から整理します。
居宅介護支援事業所の人間関係は「内」と「外」の二層でできている
まず、居宅介護支援事業所がどんな関係の中で仕事をしているかを確認します。ある事業所は、自らの役割を次のように紹介しています。
在宅での介護でお困りの方、介護保険を利用していろいろなサービスを受けてみたいとお考えの方、お気軽にご相談下さい。ご本人やご家族の希望をもとにその人らしさを大切にしたケアプランを作成します。施設入所をご希望の場合は老人保健施設やグループホームなどへのご紹介、その他のサービス調整を行います。 出典: kyotaku-niji.tochigihoken.or.jp
この短い紹介文の中に、居宅のケアマネジャーが関わる相手がほぼ全員出てきます。ご本人、ご家族、サービスを提供する事業所、そして施設。ここに主治医や病院の医療連携室、地域包括支援センター、行政の担当者が加わります。
居宅のケアマネジャーは、この全員の「間」に立つ仕事です。ケアを直接提供するのではなく、提供する人たちを調整する。だから、仕事の大部分が人とのやり取りで占められます。
一方で、事業所の中にいる人は、とても少ないという特徴があります。人員の基準で置く必要があるのは、ケアマネジャーと、主任ケアマネジャーである管理者だけです。ケアマネジャーが2人から5人程度の事業所が多く、事務員がいる事業所でも総勢で数人です。
この構造を図にすると、事業所の中の小さな円と、その周りを取り囲む大きな外の円、という形になります。内の円は小さく濃い。外の円は広く、相手が次々と入れ替わる。人間関係の悩みを考えるときは、自分がどちらの円で消耗しているのかを、まず分けて考えることが大切です。
事業所の中:少人数で、日中は顔を合わせない職場
事業所の中の人間関係から見ていきます。
居宅介護支援事業所の中の関係には、一般的な職場とは違う特徴があります。それは、人数が少ないのに、一緒にいる時間が短いことです。
ケアマネジャーは、1人あたり30件から40件程度の利用者を担当し、月に1回以上はそれぞれの自宅を訪問します。サービス担当者会議や病院での退院前の打ち合わせも入ります。そのため、朝に予定を確認して出ていき、事務所に戻るのは夕方、という人がほとんどです。日中の事務所には、事務員か、その日たまたま記録の作業をしている人しかいません。
この「少人数で、顔を合わせる時間が短い」という構造は、人間関係に2つの影響を与えます。
1つ目は、関係が薄くなりやすいことです。同じ事業所で働いていても、同僚がどんな利用者を担当し、どんなことで困っているのかを知らないまま過ぎていく、ということが起こります。困っていても気づいてもらえない。逆に、自分が困っているときに声をかけるタイミングがない。これが孤立感につながります。
2つ目は、夕方の短い時間に関係が凝縮されることです。事務所に全員がそろうのは、夕方の1時間程度だけ、という事業所も珍しくありません。その時間に、記録を書き、電話をかけ、翌日の準備をしながら、同僚と情報を共有します。全員が疲れて余裕のない時間帯なので、ちょっとした言葉がきつく聞こえやすくなります。
正直なところ、居宅介護支援事業所の中の人間関係が悪化するきっかけは、性格の不一致より、この構造から来る「情報の行き違い」であることが多いという印象です。聞いていない、伝えたはず、という食い違いが積み重なって、関係がこじれていきます。
私が小さな編集チームで働いていたとき、メンバーの大半が外で取材をしていて、全員がそろうのは夕方の打ち合わせだけ、という時期がありました。そのとき揉めた原因を振り返ると、ほとんどが「誰がその情報を持っているか分からない」ことでした。チャットのルールと共有の場所を決めただけで、関係はかなり改善しました。職種は違いますが、構造はよく似ています。
事業所の中で摩擦が起きやすい5つの場面
居宅介護支援事業所の中で、人間関係の摩擦が起きやすい場面は、ある程度決まっています。
1つ目は、新規ケースの振り分けです。病院からの退院調整や地域包括支援センターからの紹介で新しい利用者が来たとき、誰が担当するか。件数に余裕がある人が受けるのが基本ですが、「あの人はいつも断る」「私ばかり受けている」という不満が生まれやすい場面です。
2つ目は、困難ケースの偏りです。虐待が疑われるケース、ご家族との関係が難しいケース、医療依存度が高いケースは、担当する人の負担が大きくなります。経験のある人や主任ケアマネジャーに集中しやすく、件数では同じでも、負担に大きな差が出ます。
3つ目は、時間外の当番です。夜間や休日の連絡を受ける当番携帯を、誰がどのくらいの頻度で持つか。家庭の事情で当番に入れない人がいると、その分が特定の人に回ります。
4つ目は、職員が辞めたときの担当の振り分けです。少人数の事業所では、1人が辞めると、その人の担当30件前後を残りの人で分けることになります。この時期は全員に余裕がなく、関係がぎくしゃくしやすくなります。
5つ目は、仕事の進め方の違いです。ケアマネジャーの基礎資格は、介護福祉士、看護師、社会福祉士などさまざまで、利用者の見方にもそれぞれ癖があります。看護師出身の人は医療的なリスクを重く見て、介護福祉士出身の人は暮らしの様子を重く見る、といった傾向の違いがあります。どちらも正しいのですが、事例を検討する場面で意見がぶつかることがあります。
こうして並べると分かるように、摩擦のほとんどは「担当の配分」と「負担の見えにくさ」から生まれています。個人の性格の問題に見えても、根っこには件数と負担の配分の仕組みがあることが多いのです。
この点で差が出るのが、特定事業所加算を取っている事業所かどうかです。この加算の条件には、ケアマネジャー同士で定期的に会議を開いて利用者の情報や留意事項を共有すること、困難なケースを受け入れる体制をつくることなどが含まれています。つまり、情報共有と負担の分担を「仕組みとして」行うことが、報酬の条件として求められているのです。こうした仕組みがある事業所では、配分の不満が個人間の感情に変わりにくい傾向が見られます。
顔を合わせない職場で、情報の行き違いを減らす仕組み
事業所の中の摩擦の多くが情報の行き違いから来るなら、対策も情報の流れを整えることが中心になります。居宅介護支援事業所で実際に効果が見られる方法を整理します。
1つ目は、共有する情報の置き場所を1つに決めることです。利用者の急な入院、サービス事業所の担当者の交代、地域の事業所の空き状況の変化。こうした情報が、ある人は口頭で、ある人は付箋で、ある人は介護ソフトの記録で共有していると、必ず漏れが出ます。事務所のホワイトボード、事業所内のチャット、介護ソフトの申し送り欄など、どこでもよいので「ここを見れば分かる」という場所を1つに決めるだけで、「聞いていない」という食い違いはかなり減ります。
2つ目は、不在時の対応の範囲を決めておくことです。担当者が訪問に出ているときに、その利用者のご家族から電話がかかってくる場面は毎日のようにあります。事務員や事務所にいる別のケアマネジャーが、どこまで答えてよいのか。伝言だけにするのか、日程の変更くらいは受けてよいのか。この範囲があいまいだと、「勝手に答えられた」「答えてくれなかった」という不満が双方に生まれます。
3つ目は、夕方の短い時間に「共有の時間」を設けることです。全員がそろう夕方に、10分だけでも、その日に起きた気になることを1人ずつ話す。特定事業所加算を取っている事業所では、定期的な会議の開催が条件になっていますが、それとは別に、日々の小さな共有の場を持っている事業所は、職員同士の関係が安定している傾向があります。
4つ目は、困難ケースの担当を「個人」ではなく「事業所」で持つ意識を形にすることです。主担当とは別に副担当を決めておき、主担当が不在のときや判断に迷うときに相談できるようにする。これだけで、困難ケースを抱える人の孤立感はかなり和らぎます。
こうした仕組みは、どれも特別な費用がかかるものではありません。ただ、新しく入った人が一人で提案するのは難しいことです。見学や面接の段階で「事業所の中での情報共有は、どのようにしていますか」と聞いてみると、仕組みがあるかどうかが分かります。答えが具体的であれば、人間関係の摩擦を仕組みで減らそうとしている事業所だと判断できます。
管理者との距離:主任ケアマネジャーでもあり、同僚でもある
事業所の中の関係で、特に比重が大きいのが管理者との関係です。
居宅介護支援事業所の管理者は、原則として主任ケアマネジャーであることが求められています。主任ケアマネジャーは、一定の実務経験を積み、専門の研修を修了したケアマネジャーです。そして多くの事業所で、管理者は自分自身も利用者を担当しながら、事業所の運営と職員の指導を行っています。
つまり、管理者は「上司」であると同時に、同じ仕事をしている「同僚」でもあります。この二重の立場が、距離の取り方を難しくします。
大きな組織なら、上司と合わなくても、部署の中にほかの相談相手がいます。居宅介護支援事業所では、管理者と合わないと、相談できる経験者が事業所の中にいなくなることがあります。困難ケースで判断に迷ったとき、相談相手が管理者しかいない。その管理者に相談しにくい。これが、居宅のケアマネジャーが人間関係で追い詰められる典型的なパターンです。
管理者との距離を適切に保つために、効果が見られる方法は次のようなものです。
・報告は、事実と判断と相談を分けて伝える:「何が起きたか」「自分はどう判断したか」「どこを相談したいか」を分けると、短い時間でも伝わりやすくなります。 ・相談のタイミングを決めておく:夕方の忙しい時間に思いつきで話しかけるより、「週に1回、困難ケースの相談の時間をもらう」と決めると、双方の負担が減ります。 ・事業所の外にも相談先を持つ:地域包括支援センターの主任ケアマネジャー、地域のケアマネジャーの勉強会や職能団体など、事業所の外に相談できる相手を持っておくと、管理者との関係に過度に依存せずに済みます。
最後の点は重要です。事業所の外に相談先があると、管理者との関係が多少うまくいかなくても、仕事の判断の質を保てます。そして、管理者に相談するときも「外ではこういう意見をもらった」と材料を持って話せるようになります。
事業所の外1:サービス事業所との「紹介する側」という立場
ここからは、事業所の外の人間関係です。冒頭で書いたとおり、居宅のケアマネジャーが消耗しやすいのは、多くの場合こちらです。
まず、訪問介護、デイサービス、福祉用具などのサービス事業所との関係です。
この関係には、構造的な力の偏りがあります。サービス事業所から見ると、ケアマネジャーは「利用者を紹介してくれる相手」です。ケアプランにその事業所が位置づけられなければ、サービス事業所には利用者が来ません。つまり、ケアマネジャーは意図していなくても、取引の入口を握る立場になりやすいのです。
この構造から、次のようなことが起こります。
・サービス事業所の担当者が、ケアマネジャーに対して過度に気をつかう ・ケアマネジャーが頼んだことを、サービス事業所が断りにくい ・逆に、ケアマネジャーが無理を言っていることに気づきにくい ・特定の事業所との関係が深くなり、ほかの事業所との関係が薄くなる
正直なところ、この力の偏りに無自覚なケアマネジャーは、地域のサービス事業所から「頼みにくい人」「言っても聞いてもらえない人」と見られてしまうことがあります。そうなると、急なサービスの変更が必要になったとき、協力を得にくくなります。
制度の面でも、ケアマネジャーには公正中立な立場が求められています。利用者に対して、複数の事業所の紹介を求められることを説明する義務があり、特定の法人のサービスに一定の割合を超えて集中すると「特定事業所集中減算」の対象になります。
サービス事業所との距離を適切に取るためのポイントは、次のとおりです。
・依頼は早めに、理由を添えて伝える:急な変更が続くと、相手の現場の負担が大きくなります。 ・サービス事業所からの報告に、必ず反応を返す:ヘルパーさんが気づいた利用者の変化を伝えてくれたとき、受け取ったことを返すだけで関係は変わります。 ・物品や接待を受け取らない:季節の贈り物など、小さなことでも公正中立を疑われるきっかけになります。
事業所の外2:医療との関係と、利用者・ご家族との距離
外の関係で、もう2つ見ておくべき相手がいます。医療と、利用者・ご家族です。
医療との関係で難しさを感じるケアマネジャーは多いです。主治医に連絡をとる敷居が高い、病院の医療連携室の担当者が忙しくて話を聞いてもらえない、専門用語についていけない。特に介護福祉士や社会福祉士を基礎資格とするケアマネジャーから、こうした声がよく聞かれます。
一方で、制度は医療との連携を強く求めています。利用者が入院したときに病院へ生活の情報を提供する「入院時情報連携加算」、退院に向けて病院と情報を共有する「退院・退所加算」などが用意されているのは、その表れです。
医療との関係では、相手の時間を短く使う工夫が効きます。伝えたい内容を1枚の書面にまとめて先に送る、電話では最初に要件と所要時間を伝える、といった方法です。医師や看護師にとって、要点がまとまった連絡をくれるケアマネジャーは、とても助かる存在です。
利用者・ご家族との関係では、「近すぎず、遠すぎず」が基本になります。居宅のケアマネジャーは、自宅という生活の場に入り、家族の事情や経済的な事情まで知る立場です。長く担当するうちに、親しくなりすぎて、業務の範囲を超えた頼みごとをされることがあります。反対に、事務的すぎると、ご家族が本当に困っていることを話してもらえません。
距離を保つために有効なのは、契約のときに「ケアマネジャーができること、できないこと」と、営業時間外の連絡の扱いを具体的に説明しておくことです。最初に線が見えていると、後から線を引くよりずっと楽です。
利用者やご家族からの言動が限度を超える場合、それはハラスメントとして事業所で対応すべき問題です。介護サービスの事業者には、ハラスメント対策をとることが運営基準で求められています。一人で抱え込む必要はありません。
事業所をまたいだケアマネジャー同士のつながり
居宅のケアマネジャーの人間関係には、もう1つ見落とされがちな層があります。それは、ほかの居宅介護支援事業所のケアマネジャーとの関係です。
同じ地域で働くケアマネジャー同士は、一見すると競合する立場です。しかし実際には、事業所をまたいで協力する場面がたくさんあります。
・利用者が引っ越したり、事業所の担当件数に余裕がなくなったりしたとき、別の事業所に担当を引き継ぐ ・地域のサービス事業所の空き状況や、評判の情報を交換する ・困難ケースについて、地域の事例検討会で意見をもらう ・行政からの通知や、報酬改定の解釈について情報を共有する
地域によっては、市区町村や地域包括支援センターが中心となって、ケアマネジャーの連絡会や研修会を定期的に開いています。特定事業所加算の条件にも、他の事業所と共同で事例検討会や研修会を行うことが含まれており、事業所の外とのつながりが制度の上でも重視されています。
こうした場で顔見知りが増えると、事業所の中の人間関係に悩んだときの支えになります。管理者に相談しにくいことを、別の事業所の経験豊富なケアマネジャーに聞けることがあります。転職を考えたとき、地域のどの事業所がどんな体制かという、求人票には出てこない情報が得られることもあります。
一方で、事業所をまたいだ関係にも注意点があります。利用者の個人情報は、事例検討の場であっても、名前や住所が特定されない形で扱う必要があります。また、地域のケアマネジャーの間では評判が伝わるのが早いため、ほかの事業所やサービス事業所の悪口は、思わぬ形で相手に届くことがあります。狭い業界であることを意識した振る舞いが求められます。
正直なところ、地域の連絡会や研修に「時間がないから」と参加しないケアマネジャーは少なくありません。業務が詰まっている中で、気持ちは理解できます。ただ、事業所の中が小さな円である以上、外の円に自分の居場所を少しでも持っておくことは、長く働くうえでの保険になります。年に数回でも顔を出しておくと、いざ困ったときに声をかけられる相手ができます。
併設型と独立型で、人間関係の質が変わる
居宅介護支援事業所の人間関係を考えるうえで、見落とされがちなのが、事業所の形態の違いです。
居宅介護支援事業所には、大きく分けて2つの形があります。
・併設型:訪問介護、デイサービス、施設などを運営する法人の中にある事業所 ・独立型:居宅介護支援だけを行っている事業所
併設型の事業所では、同じ法人のサービス事業所の職員との関係が加わります。同じ建物の中にデイサービスがあれば、日常的に顔を合わせます。情報が早く入り、急な調整もしやすいという利点があります。
一方で、併設型ならではの人間関係の難しさもあります。それは、同じ法人のサービスをプランに入れてほしいという期待です。はっきり言われなくても、「うちのデイに空きがあるんだけど」という声が届くことはあります。利用者の利益を基準に別の事業所を選んだとき、同じ法人の職員との関係がぎくしゃくすることがあります。公正中立な立場を守ろうとするほど、法人の中で板挟みになる、という構造です。
独立型の事業所では、この板挟みはありません。どのサービス事業所とも等しい距離で付き合えます。その代わり、事業所の規模が小さいことが多く、ケアマネジャーが1人か2人だけ、というところもあります。事業所の中に相談相手がほとんどいないため、外に相談先を持つことがより重要になります。
どちらが良い悪いではなく、人間関係の悩みの種類が違う、ということです。前の職場で法人の方針との板挟みに疲れた人は独立型、事業所の中で孤立して疲れた人は複数のケアマネジャーがいる事業所、というように、自分が消耗した場面から逆算して選ぶと、同じ悩みを繰り返しにくくなります。
見学と求人票で、人間関係の実態を見抜く方法
最後に、居宅介護支援事業所の人間関係を、入職前にどう見抜くかを整理します。人間関係は求人票に書かれないため、見学と面接での確認が中心になります。
求人票で見るべきところは、次のとおりです。
・常勤のケアマネジャーの人数と、主任ケアマネジャーの人数 ・特定事業所加算を取っているか(定期的な会議や情報共有の仕組みがあるか) ・事務員がいるか(ケアマネジャーの負担が分散されているか) ・併設型か独立型か ・同じ求人が長期間出続けていないか
見学や面接では、次のことを聞いてみると、事業所の中の関係が見えてきます。
・新規ケースの担当は、どのように決めていますか ・困難ケースは、どのように相談していますか ・時間外の当番は、どのように回していますか ・職員が辞めたとき、担当はどのように振り分けましたか ・ここ数年で、何人くらいの方が入れ替わりましたか
答えの中身と同じくらい、答え方も判断材料になります。「そのときどきで」「みんなで話し合って」という答えは、一見柔らかいのですが、実際には配分のルールがないことを意味している場合があります。具体的な手順が返ってくる事業所は、摩擦を仕組みで減らそうとしている事業所です。
見学の時間帯を選べるなら、夕方をおすすめします。ケアマネジャーが事務所に戻ってくる時間帯に、どんな会話が交わされているか、声をかけ合っているか、黙々と作業しているかを見ると、職場の空気がかなり分かります。
介護分野で働く人の給与の水準を知っておくと、条件面の比較もしやすくなります。介護職全体の給与の分布は介護職員の年収・単価相場で、看護師の資格からケアマネジャーになった方は看護師の年収・単価相場で確認できます。
人と人の間で働く仕事を長く見てきた立場からの考察
ここからは、フリーランスや在宅ワークの市場を長く運営してきた立場からの観察です。
20年この市場を見てきた立場から言えば、少人数で、日中は一人で動く働き方で人間関係に悩む人の多くは、「相手の性格」ではなく「情報の流れ方」でつまずいています。在宅で働くフリーランスと依頼者の関係でも、トラブルの多くは、誰が何を知っているかが共有されていないことから始まります。居宅介護支援事業所の中で起きる摩擦と、驚くほど似ています。
運営者として見てきた限りでは、長く続く人は、依頼者との間に「この人に任せると楽」という関係を時間をかけて築いています。連絡が早い、報告が分かりやすい、できないことを最初に伝える。サービス事業所や医療機関から信頼される居宅のケアマネジャーも、同じ条件を満たしています。人間関係の距離の取り方は、結局のところ、相手の時間と立場を尊重する具体的な行動の積み重ねです。
もう1つ、紹介する側と紹介される側の間に力の偏りが生まれるという構造は、仲介の仕組みでも同じように見られます。仲介の手数料が乗らない直接のやり取りでは、同じ予算で依頼者はより多くを頼め、受け手の手取りも厚くなります。手数料0%の直接取引が長く続く関係を生みやすいのは、間に立つ者の都合が入らず、当事者同士が対等に条件を話し合えるからです。
居宅のケアマネジャーとして身につく「立場の違う人たちの間に立ち、話を整理してつなぐ力」は、職場や働き方の相談の仕事でも生かせます。そうした相談の仕事がどのような形で募集されているかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で見ることができます。また、働く人の相談を専門にする資格については、キャリアコンサルタントで紹介されています。
居宅介護支援事業所の人間関係は、狭い事業所の中と、広い事業所の外の二層でできています。自分がどちらの層で消耗しているのかを分けて考え、配分のルールと情報共有の仕組みがある事業所を選べば、人間関係の悩みの多くは避けられます。
よくある質問
Q. 居宅介護支援事業所の人間関係は、施設と比べて難しいですか?
難しさの種類が違います。居宅介護支援事業所は数人の少人数で、管理者と合わないと逃げ場がない一方、日中は各自が訪問に出ているため、顔を合わせる時間は施設より短い傾向があります。むしろサービス事業所や医療機関、ご家族といった事業所の外の関係で消耗する人が多いのが特徴です。
Q. 管理者と合わないとき、どうすればよいですか?
報告を事実、判断、相談に分けて伝える、相談の時間を定期的に決めてもらう、といった工夫で関係が改善することがあります。あわせて、地域包括支援センターの主任ケアマネジャーや地域の勉強会など、事業所の外にも相談先を持っておくと、判断の質を保ちながら管理者との関係に依存せずに済みます。
Q. 併設型と独立型の居宅介護支援事業所では、人間関係に違いがありますか?
あります。併設型は同じ法人のサービスとの連携がしやすい反面、法人のサービスをプランに入れてほしいという期待との板挟みが起きやすくなります。独立型はその板挟みがない代わりに、ケアマネジャーが1人か2人の小規模な事業所が多く、事業所内に相談相手が少ない傾向があります。
Q. 入職前に、事業所の人間関係を確かめる方法はありますか?
見学のときに、新規ケースの振り分け方、困難ケースの相談の仕方、時間外の当番の回し方、職員の入れ替わりの状況を聞くのが有効です。具体的な手順が返ってくる事業所は、配分の不満が生まれにくい傾向があります。ケアマネジャーが戻ってくる夕方に見学すると、職場の空気も分かりやすくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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