児童養護施設はきついと言われる理由|負担が集まる場面と、続く人のやり方


この記事のポイント
- ✓児童養護施設がきついと言われる理由を
- ✓負担が集まる時間帯と場面に分けて具体的に説明します
- ✓感情をぶつけられる場面の意味
「児童養護施設はきつい」。この言葉を見て、応募をためらっている方からのご相談をよくいただきます。あるいは、すでに働いていて、自分だけがしんどいのではないかと感じている方からも。
先にお伝えしたいことがあります。きついという言葉は、中身を分けないと対処できません。分けてみると、そのうちのいくつかは職場の作り方の問題で、あなたの適性の話ではないことが分かります。そして、対処できるものと、対処しようがなく受け止めるしかないものも分かれます。
この記事では、負担がどの場面に集まるのかを具体的に見ていきます。そのうえで、長く続けている方が何をしているのかをお伝えします。大丈夫です。しんどさには形があって、形が分かれば手の打ちようがあります。
「きつい」と言われるものの中身は、5つに分かれる
まず整理します。児童養護施設で語られる負担は、おおむね次の五つに分けられます。
一つ目は、時間帯の集中です。仕事の負荷が一日のうちの限られた時間に固まります。
二つ目は、感情を向けられることです。子どもから強い言葉や態度をぶつけられる場面があります。
三つ目は、勤務のリズムです。早番、遅番、宿直が入れ替わることで、体にかかる負担です。
四つ目は、書類の量です。記録、計画、関係機関とのやりとり。見えにくいけれど確実に重い部分です。
五つ目は、職員同士の方針の食い違いです。これが、実はいちばんこたえます。
このうち、二つ目だけが子どもに由来するもので、残りの四つはすべて職場の設計に由来します。つまり、しんどさの多くは、施設の作り方によって軽くも重くもなります。ここを知っておくだけで、見え方が変わります。
順番に見ていきましょう。
施設の形をどう作っているかで、負担のかかり方が変わる
同じ児童養護施設でも、建物と生活単位の作り方で、しんどさの出方が違います。ここを知らないまま「児童養護施設はきつい」とひとくくりにすると、自分に合う場所を見落とします。
大舎制は、大きな建物に多くの子どもが生活し、食事は食堂で一斉に取る形です。職員の数が多く、その時間帯に誰かが必ず近くにいます。困ったときにすぐ聞ける、一人で抱える時間が短い、という点では負担が軽くなります。調理は厨房の職員が担当するため、支援員が台所に立つ場面も少なくなります。一方で、集団としての統制が必要になり、時間を守らせる場面が増えます。個別に寄り添いたい方には、そこが物足りなく感じられることがあります。
小規模グループケアは、施設の中を小さな生活単位に分ける形です。六人前後で一つの単位を作り、その単位ごとに生活します。家庭に近い環境になり、一人ひとりとの関係は深くなります。ただし、その時間帯に単位の中にいる職員は一人か二人です。判断を自分でする場面が増え、調理や洗濯といった家事も職員が担います。つまり、役割が広がるぶん、一人にかかる量が増えます。
地域小規模児童養護施設は、地域の一軒家などで少人数が生活する形です。職員の数がさらに限られます。一人で判断する時間が長く、孤立しやすい環境でもあります。経験を積んでから配属されるのが通常です。
国の方針としては、大規模な集団での養育から、家庭に近い小規模な形へ移す流れが続いています。子どもにとって望ましい方向であることは確かです。ただし、働く側から見れば、小規模化は一人あたりの負荷が集中しやすい構造でもあります。この両面を知ったうえで、自分がどちらの環境なら力を出せるかを考えてください。
人の多い環境で支え合うほうが合う方もいれば、少人数でじっくり関わるほうが合う方もいます。どちらが正しいという話ではありません。合う場所を選べるかどうかの話です。
負担は、夕方から就寝までの4時間に集まる
児童養護施設の一日は、朝と夕方の二つの山でできています。そのうち、負荷が大きいのは夕方です。
下校が始まるのが15時前後。小学生が最初に帰り、中学生、高校生と時間差で戻ってきます。部活の子は19時を過ぎることもあります。つまり、断続的に人が増え続けます。
帰ってきた子から順に、手洗い、おやつ、着替え。同時に学校であったことを聞き取ります。宿題を見る時間もあります。学習の遅れを抱えている子に個別で付くと、その間ほかの子を見る人手が減ります。
18時ごろに夕食。ここが摩擦の起きやすい時間です。理由は二つあります。全員が同じ空間に揃うこと。そして、学校で一日を過ごした後で、子ども自身に余裕がないこと。
夕食後は入浴です。順番、時間、物の管理。この時間帯は職員の目が分散するため、トラブルが起きやすい場面として知られています。
20時を過ぎると就寝の準備。眠れない子に付き添う時間が発生します。過去の経験から、暗くなることや一人になることに不安を感じる子がいます。そばにいて落ち着くまで待つ、という時間が必要になります。高校生は帰りが遅かったり、携帯電話の使用をめぐるやりとりが発生したりします。
全員が寝静まって、ようやく記録の時間です。
こうして並べると分かりますが、この四時間、職員は同時に三つか四つのことを進めています。宿題を見ながら、洗濯物を畳み、帰ってきた子に声をかけ、夕食の準備をする。優先順位を瞬時に決め続けることになります。
ここで大切なのは、この時間帯に何人の職員がいるかです。同じ人数の子どもを見ていても、職員が二人か三人かで、まったく違う仕事になります。求人を見るときは、必ずこの時間帯の配置を聞いてください。「きつい」と言われる施設の多くは、この四時間の人手が足りていません。
感情を向けられる場面で、実際に何が起きているのか
ここが、いちばん丁寧にお話ししたい部分です。
児童養護施設で働く方から、こういうご相談をよくいただきます。「自分だけ強く当たられる」「毎日否定される」「怖いと感じてしまう自分が嫌になる」。
まず、怖いと感じることは悪いことではありません。人が強い感情をぶつけられて平気でいられるほうが不自然です。その感覚を否定しないでください。
そのうえで、何が起きているのかをお伝えします。子どもが感情をぶつける相手は、多くの場合、安全だと感じている相手です。本当に警戒している相手には、そもそも感情を見せません。つまり、向けられているのは、あなたが受け止めてくれるかどうかを試している行為であることが多いのです。
もう一つ。これまでに大人との関係で傷ついてきた子は、関係が近づくと不安になります。近づいた分だけ、また離れられるのではないかという恐れが出ます。だから、あえて壊そうとするような言動が出ることがあります。心理の世界では試し行動と呼ばれる現象です。難しい言葉ですが、要するに「見捨てないか確かめている」ということです。
ただし、ここが大事なところです。理由が分かることと、受け止める側が疲れないことは、別の話です。「これは試し行動だから」と自分に言い聞かせて我慢を続けると、必ず溜まります。
だから、必ずその日のうちに他の職員に話してください。「今日、こう言われてこたえました」と口に出す。これが唯一の対処法です。強い人が抱え込まないのではなく、続く人が口に出しているのです。
こういうご相談も多いのですが、真面目な方ほど「自分の対応が悪かったからだ」と考えます。そして一人で反省します。反省は必要ですが、一人でやると精度が落ちます。他の職員と一緒に振り返れば、「その場面はその子の周期的なもので、誰が対応しても同じだった」と分かることがよくあります。
勤務のリズムが、体に効いてくる
三つ目は、体の話です。
児童養護施設は二十四時間、誰かが必ずいる場所です。そのため、シフトは早番、遅番、宿直に分かれます。早番は朝六時台から七時台の出勤、遅番は昼過ぎから二十一時台や二十二時台まで、宿直は夕方から翌朝までです。
この三つが入れ替わる勤務は、体に効きます。特に、遅番の翌日が早番になる組み方をしている施設では、睡眠が細切れになります。
宿直の回数も大きな要素です。月に四回程度の施設と、月に八回程度の施設では、負担がまったく違います。加えて、宿直明けの扱いも確認が必要です。そのまま休みになるのか、日中の会議に出てから帰るのか。ここで差がつきます。
夜間に何度も起こされる日が続くこともあります。眠れずに起きてくる子、体調を崩す子、悪夢で目を覚ます子。一晩に一度も呼ばれない日もあれば、何度も対応する日もあります。
体のしんどさは、気持ちのしんどさに直結します。よく眠れていない状態で、感情をぶつけられる場面に立つと、普段なら流せることが流せなくなります。逆に言えば、睡眠が確保できていると、同じ場面でも受け止め方が変わります。
だから、生活のほうから整えることを、どうか軽く見ないでください。休みの日にしっかり寝る。宿直の前後に予定を詰め込まない。これは怠けではなく、仕事を続けるための準備です。
私自身、カウンセリングの仕事を始めた頃、相談の予定を詰め込みすぎて眠れなくなった時期があります。相手の話をきちんと聞けなくなり、そこで初めて自分の状態に気づきました。人の気持ちに向き合う仕事は、自分の状態がそのまま道具の精度になります。整えるのは、自分のためであり、相手のためでもあります。
書類の量という、外から見えない負担
四つ目は、記録と書類です。
児童養護施設の記録は、その日の出来事を書くだけではありません。一人ずつ自立支援計画があり、その目標に対して何が起きたかを積み上げます。この記録が、児童相談所との協議や、進路の判断の材料になります。
書く内容にも精度が求められます。「落ち着かない様子だった」では、次の勤務の職員が使えません。「帰宅後すぐに部屋にこもり、夕食に呼んだ二度目で出てきた。食事中は会話なし。入浴後に自分から学校の話を始めた」と書けば、翌日の職員が同じ流れを予測できます。
この粒度で書けるようになるまで、だいたい二か月かかります。最初のうちは、書くこと自体に時間がかかり、それが負担になります。
記録以外にも書類はあります。学校とのやりとり、通院の記録、行事の準備、児童相談所への報告。施設によっては手書きで、毎回一から書くところもあります。
ここも、施設差が非常に大きい部分です。様式が整理されていて入力の仕組みがある施設と、そうでない施設では、同じ仕事でも必要な時間がまったく違います。記録を書く時間が勤務時間の中に組み込まれているかどうかも、確認すべき点です。組み込まれていない施設では、記録が終業後の持ち帰りになります。
面接や見学のときに、「記録はいつ書きますか」と聞いてみてください。答えが曖昧だったら、そこはすでに答えです。
職員同士の食い違いが、いちばんこたえる
五つ目です。ご相談の中で、辞める決め手になったと語られることがいちばん多いのが、これです。
同じ子に対して、待つ方針の職員と、促す方針の職員がいる。ルールを厳しく守らせる職員と、その場で緩める職員がいる。この違いがすり合っていないと、二つのことが起きます。
一つは、子どもが混乱します。誰の言うことを聞けばよいのか分からなくなり、職員によって態度を変えるようになります。
もう一つは、職員が消耗します。自分が守らせたルールを別の職員が緩めると、自分の対応が無意味だったように感じます。逆に、自分が待った場面を「甘い」と言われると、否定されたように感じます。
子どもから受ける負担は、理由が分かれば受け止められます。けれど、同僚との食い違いは、理由が分からないまま続きます。そして、話し合う場がない職場では、解消されないまま溜まります。
ここで大切なのは、これが人間関係の問題ではなく、仕組みの問題だと理解することです。支援の方針を揃える場、つまりケース会議や申し送りの場が機能していれば、食い違いは減ります。逆に、その場がない施設では、どんなに人柄の良い職員が集まっても、必ず起きます。
だから、しんどいと感じたときは、まず「揃える場があるか」を確認してください。無いのであれば、あなたが我慢する話ではなく、施設に必要なものが欠けているという話です。
退所後のことまで、抱えてしまう人がいる
もう一つ、外からは見えにくい負担についてお話しします。子どもの将来を、自分ごととして背負ってしまうことです。
児童養護施設を出た後の生活には、固有の難しさがあります。
児童養護施設をでたあと、家庭での生活経験がないことから区役所での手続きができなかったり、冠婚葬祭のマナーを間違えてしまうといった現状がありましたよね。 出典: tasukeai.co
家庭で自然に身につくことを、施設では意識して教える必要があります。手続きの仕方、お金の管理、冠婚葬祭の作法。だから職員は、日々の何気ない場面でそれを伝えます。
ここで起きるのが、抱え込みです。この子が出ていくまでに、あれも教えなければ、これも身につけさせなければ。そう考え始めると、際限がなくなります。
社会的養護の全体を見ると、子どもの育つ場所は一つではありません。
42.9%が家庭から、28.5%が乳児院から、14.9%が児童養護施設から里親家庭へ移り住むことになります。そして、里親家庭から新しい里親家庭へ変更する子は3.7%となっています。 出典: tasukeai.co
施設から里親家庭へ移る子もいます。つまり、一人の子の育ちには複数の場所と複数の大人が関わります。あなたが関わるのは、その子の人生の一部の期間です。
これは冷たい話ではありません。むしろ逆です。一人で全部を担わなくてよいという設計になっているのです。引き継ぎがあり、記録があり、関係機関があるのは、そのためです。
私がカウンセリングの仕事で先輩に言われて、いまも支えになっている言葉があります。「あなたが背負っても、その人の問題は解けない」。支援の仕事は、相手の人生を代わりに生きることではありません。関わる時間の中でできることをやる。それだけです。この線引きができてから、私は仕事を続けられるようになりました。
最初の3か月が、いちばんしんどい理由
働き始めてすぐの時期に「もう無理かもしれない」と感じる方は、とても多いです。ここには理由があります。
最初の二週間は、覚えることが一気に来ます。子どもの名前と顔、それぞれの生活のリズム、施設のルール、書類の様式、物の置き場所。覚えること自体が負荷です。そして、この時期は「役に立てていない」という感覚がつきまといます。
一か月目の終わりごろ、最初の壁が来ます。自分が声をかけても動かない、話しかけても返事がない。他の職員だと動くのに、という場面です。ここで多くの方が「自分には向いていない」と考えます。
でも、これは能力の差ではありません。子どもは、この人が自分にとって安全かどうかを時間をかけて確かめています。特に、大人との関係で傷ついてきた子ほど慎重になります。つまり、警戒されているのは当たり前の段階です。
二か月目に入ると、記録の書き方で迷います。何を書けばよいのか分からない。ここは遠慮せず、先輩の記録を読ませてもらってください。書き方には型があります。
そして二か月目から三か月目にかけて、今度は感情を向けられる場面が出てきます。関係ができ始めたからこそ出てくるものなのですが、受け止める側には区別がつきません。慣れていないところに、いちばん重い場面が来ます。
こうして並べると分かりますが、最初の三か月は、負荷が集中するようにできています。慣れていないのに、覚えることが多く、関係がまだ浅く、それでも感情は向けられる。しんどくて当然なのです。
三か月を越えた方は、その後も続いている割合が高いというのが、この分野で繰り返し言われることです。もし今、最初の数か月の中にいるのであれば、どうか一人で結論を出さないでください。この時期が特別に重いことを知っているだけで、越えられることがあります。
保育や介護から移ってきた人が、最初に戸惑うこと
保育園、学童保育、介護施設など、別の福祉の現場から移ってきた方が、共通してつまずく点があります。経験があるぶん、かえって戸惑うのです。
一つ目は、関わる時間の長さです。保育園は日中の数時間、介護施設は勤務時間の中での関わりです。児童養護施設は、その子の生活そのものが対象になります。朝起きるところから夜寝るところまで、そして何年にもわたって続きます。区切りがない、という感覚に慣れるまで時間がかかります。
二つ目は、保護者との関係です。保育園では、保護者は毎日顔を合わせる相手です。児童養護施設では、保護者と子どもの関係そのものに事情があります。面会や外泊のたびに子どもの状態が揺れることもあります。ここは、経験ではなく知識で理解する必要があります。
三つ目は、年齢の幅です。小学校低学年から高校生までが同じ場所で生活します。就学前の子どもを見てきた方にとって、中高生への関わり方は別の技術になります。体の大きさも言葉の力も違い、力で止めることはできません。言葉と関係性で対応することになります。
四つ目は、記録の目的です。保育園の連絡帳とは書く目的が違います。ここでは自立支援計画に紐づいて、目標に対して何が起きたかを書きます。「楽しく過ごしました」は記録として成立しません。
そして五つ目が、いちばん大きいかもしれません。自分がこれまで培ってきた関わり方が通用しない場面がある、ということです。経験のある方ほど、自分のやり方に確信があります。それが通じないと、自信そのものが揺らぎます。
ここでお伝えしたいのは、通じないのは経験が無駄だからではない、ということです。土台としての経験は確実に生きています。ただ、方法はこの職場のものに合わせる必要がある。この切り分けができた方は、半年もすればむしろ強い戦力になっています。
長期休暇と行事という、年に数回の山
日々の負担とは別に、年に数回、大きな山が来ます。ここを知らずに入ると、その時期に一気に消耗します。
長期休暇です。夏休みは四十日近く続きます。平日は分かれている朝と夕方の忙しさが、一日中つながります。朝から夜まで、子どもが施設にいる状態が続くのです。宿題の進み具合の管理、昼食の用意、外出や行事の準備。通常業務に上乗せされます。
しかも、この時期は職員自身も夏季休暇を取ります。つまり、いちばん忙しい時期に、いちばん人が薄くなります。夏の終わりに疲れが抜けないまま秋を迎える方が多いのは、偶然ではありません。
正月やお盆には、別の難しさがあります。家庭に帰れる子と、帰れない子がいるからです。施設に残る子にとって、この時期は気持ちが揺れます。周りが家族の話をする季節だからです。残った子と過ごす職員には、細やかな配慮が求められます。
行事も負担になります。誕生日会、季節の行事、進学や卒業の節目。子どもにとっては大切な思い出になるものですが、準備は職員の通常業務に上乗せされます。行事の多い施設は、その分だけ職員の時間が要ります。
ここで考えてほしいのは、これらが「予測できる負担」だということです。予測できるなら、備えられます。長期休暇の前に休みを取っておく、その時期に私生活の予定を詰めない、夏の終わりに回復の時間を確保する。こうした備えをしている方は、山を越えられています。
応募のときには、年間の行事の数と、長期休暇中の人員体制を聞いてください。「夏休みはどう回していますか」という質問への答え方で、その施設が備えをしているかどうかが分かります。
長く続いている人が、実際にやっていること
ここからは、対処の話です。性格ではなく行動なので、真似ができます。
その日のうちに記録を書き終えています。持ち帰らない。翌日に回さない。記録は時間が経つほど思い出すのに時間がかかります。書けない日が三日続くと、追いつくのに休日が消えます。
うまくいかなかった日を、他の職員に話しています。抱え込まない。これは強さではなく技術です。「今日の私の対応、よくなかったと思うんです」と口に出せる方は、次の日に引きずりません。
子どもの変化を、長い単位で見ています。一日単位では何も変わりません。半年前の記録を読み返して、「そういえば以前は食卓に来なかった」と気づく。この気づきが続ける力になります。記録を書く習慣と、この喜びは繋がっています。
自分の得意と苦手を、職場に伝えています。何でもできるように振る舞う方は、何でも回されます。「書類の整理は得意です、夜の対応はまだ自信がありません」と言えるほうが、周りが配置を工夫できます。
職場の外に、仕事と関係のない時間を持っています。趣味でも運動でも家族との時間でも構いません。気持ちを使う仕事は、使った分を戻す場所がないと、少しずつ減っていきます。
そして、休みの日に施設のことを考えない練習をしています。これは意外と技術が要ります。考えてしまうのが普通なので、意識して別のことをする時間を作るのです。
見学のときに、負担の大きさを見抜く方法
最後に、実務的な確認の仕方をお伝えします。求人票と見学で、かなりのことが分かります。
見学の時間帯を、夕方にしてもらってください。下校から夕食にかけての時間が、この職場のいちばん忙しい場面です。そこを見せてもらえる施設は、隠していることが少ないと考えてよいです。逆に、日中の静かな時間しか案内されない場合は、夕方も見たいと伝えてみてください。
見るべきは子どもではなく、職員です。職員同士が短い言葉でやりとりしているか。誰かが一人の子に付きっきりになったとき、別の職員が自然に他の子を見にいくか。この動きがあれば、その施設は回っています。
聞くべきことも整理しておきます。
夕方の時間帯に、何人の子どもに対して何人の職員がいるか。これが最も大事な数字です。
記録はいつ書くのか。勤務時間の中に組み込まれているか。答えが曖昧なら、持ち帰りが発生している可能性があります。
支援の方針を揃える場があるか。ケース会議や申し送りが、どのくらいの頻度で行われているか。
宿直は月に何回か。明けの扱いはどうか。仮眠の場所と時間は確保されているか。
直近の数年で、どのくらいの職員が入って、どのくらい辞めたか。答えにくい質問ですが、正直に答えてくれる施設は信頼できます。言葉を濁されたなら、それも一つの情報です。
そして、新しく入った職員が最初の一か月をどう過ごすのかを聞いてください。単独でシフトに入るのはいつからか。誰が相談相手になるのか。ここに答えが用意されている施設は、人を育てる仕組みを持っています。
質問をすること自体を、遠慮しないでください。長く働きたいから確認している、という姿勢は、採用する側にもきちんと伝わります。
それでも限界が来たときに、考えてほしいこと
最後に、いま実際にしんどい方へ。
まず、しんどさの原因がどこにあるかを分けてください。夕方の人手が足りないのか。記録の仕組みが整っていないのか。方針を揃える場がないのか。宿直の回数が多すぎるのか。それとも、感情を向けられることそのものが受け止めきれないのか。
このうち、最初の四つが原因であれば、それは職場の設計の問題です。施設を変えれば解決することがあります。自分には向いていないと結論を出す前に、ここを切り分けてほしいのです。
次に、体の状態を見てください。眠れているか、食べられているか。朝起きたときに動けるか。ここが崩れているなら、気持ちの問題として扱わないでください。休むことが必要な段階です。
そして、一人で決めないでください。職場の中に話せる人がいるなら、その人に。いないなら、施設外の相談窓口でも構いません。自治体の労働相談、職能団体の相談窓口、医療機関。選択肢はあります。
辞めるという選択も、選択肢の一つです。辞めることは逃げではありません。ただ、辞める前に一度、原因を分けてみてください。分けた結果として辞めるなら、それは納得のいく判断になります。分けずに辞めると、次の職場でも同じところでつまずくことがあります。
給与や条件の面で見直したい方は、数字を持っておくと判断しやすくなります。福祉の職場全体の水準は介護職員の年収・単価相場にまとめてあります。保育士資格をお持ちの方は保育士の年収・単価相場と比べると、今の条件の位置が見えます。
この分野を長く見てきた立場から
フリーランスと在宅の働き方の市場を20年運営してきた立場から、しんどさの扱い方について観察してきたことを書きます。
運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど、自分の勤務時間の中で「何をしない」かを決めています。すべてに全力で応じる人は、一年目は評価されますが、三年目に消えます。逆に、この時間はこの相手に集中する、この業務は次の人に渡す、と割り切れる人が残っています。これは業種を問いません。
もう一つ。続く人は、しんどさを言葉にして周りに渡しています。ため込まない人が強いのではなく、渡せる人が続いているのです。渡された側も、渡されることで相手の状態が分かるので、助け合いが成立します。
働き方の形も、常勤だけではありません。宿直だけ入る形、非常勤で特定の時間帯だけ入る形、学習支援として週に二回関わる形。負担の大きさを自分で調整する道はあります。間に仲介業者を挟まず、施設と直接やりとりできるなら、条件も自分で確かめられます。仲介の手数料が乗らなければ、施設は同じ予算でより多くの時間を頼めますし、働く側の手取りは厚くなります。金額の大小ではなく手取りの質の話で、手数料0%で直接つながる形が意味を持つのはこういう場面です。
自分の状態や進路を整理したい方は、第三者と話す方法もあります。キャリアの相談を職業にしている人がどう関わるのかは職場・転職・キャリア相談のお仕事にまとめました。その国家資格の中身はキャリアコンサルタントで確認できます。相手が何を根拠に話しているかが分かると、相談する側も安心できます。
きついという言葉は、分ければ対処できます。分けた結果、変えられるものは変えて、受け止めるものは一人で受け止めない。それだけで、続けられる可能性はずいぶん上がります。あなたは一人ではありません。
よくある質問
Q. 児童養護施設でいちばん負担が大きいのはいつですか?
下校が始まる15時ごろから就寝までの4時間です。時間差で子どもが帰ってくる中で、宿題、夕食、入浴、就寝準備が重なります。全員が同じ空間に揃う夕食から入浴の時間帯は摩擦も起きやすく、この時間帯に職員が何人いるかで仕事の重さがまったく変わります。
Q. 子どもから強い言葉をぶつけられるのは、自分が悪いからでしょうか?
違います。感情を向ける相手は安全だと感じている相手であることが多く、関係が近づいたことへの不安から出る言動もあります。ただし理由が分かることと疲れないことは別です。その日のうちに他の職員に話して共有してください。一人で受け止め続ける状態は、職場の回し方の問題です。
Q. 宿直は月に何回くらいが目安ですか?
施設によって差が大きく、月4回程度のところから月8回程度のところまであります。生活のリズムに直結するので、回数と、宿直明けがそのまま休みになるのか日中の会議に出るのかを、応募前に必ず確認してください。宿直手当の額も基本給とは別に確認が必要です。
Q. しんどくて辞めたいときは、どう判断すればよいですか?
まず原因を分けてください。夕方の人手不足、記録の仕組み、支援方針を揃える場の不在、宿直の回数が原因なら、それは職場の設計の問題で、施設を変えれば解決することがあります。あわせて睡眠や食事の状態を確認し、崩れているなら休むことを優先してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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