ハンドメイド販売は受注数の上限を先に書いておくと楽になる


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この記事のポイント
- ✓持病・通院がある方が在宅でハンドメイド販売を続けるための実務ガイド
- ✓収益構造と手数料の内訳
- ✓無理のない受注量の決め方
結論から書きます。持病があって定期通院をしている方がハンドメイド販売を在宅で続けること自体は、十分に可能です。ただし、成功するかどうかは「作る技術」ではなく「受注量と納期の設計」でほぼ決まります。
そして、もうひとつ最初にお伝えしておきたいことがあります。ハンドメイド販売は、在宅ワークの中でいちばん収益構造が読みにくい仕事です。原価があり、送料があり、販売手数料があり、その上に自分の作業時間が乗る。この4つを計算せずに始めると、売れているのに手元に何も残らない、という状態になります。
正直なところ、この点をきちんと書いている記事は少ないと感じています。「好きなことを仕事に」「未経験でも始められる」という入り口の話ばかりで、続けるための数字の話が抜けている。
この記事では、市場の実態、収益構造、体調に波がある方の受注量の決め方、そして購入者への納期の伝え方までを、順番に整理していきます。
ハンドメイド販売と「ハンドメイドの在宅求人」はまったく別の仕事
最初に区別すべき2つの働き方
「ハンドメイド 在宅」で検索すると、性質のまったく違う2種類の情報が混ざって出てきます。この区別ができていないと、記事を読んでも自分に当てはまるかどうか判断できません。
販売型(自分で作って自分で売る) 自分で企画し、材料を仕入れ、制作し、販売サイトに出品して売る。売上はすべて自分のものですが、原価も在庫リスクも自分持ちです。売れなければ収入はゼロ。
受託型(誰かの作業を請け負う) 企業や作家から部品組み立て、検品、梱包などを請け負う。単価は決まっており、作業した分だけ報酬になります。在庫リスクはありませんが、単価は低めです。
求人サイトで「ハンドメイド 在宅」を検索すると、実際に出てくるのは主に後者です。
ハンドメイド好きな方に!在宅ワークの職人 大募集!数珠製作など / デコ素材やハンドメイド雑貨の軽作業 / ハンドメイド製品づくり / 住み込みOK/ハンドメイド用品の梱包/軽作業デビューにも最適 / 「コツコツ派が主役になれる!」ハンドメイド用パーツセットの製造・検品スタッフ/未経験歓迎 出典: 求人ボックス
ご覧のとおり、数珠製作、デコ素材の軽作業、パーツセットの製造・検品といった内容が並びます。これらは「ハンドメイド販売」ではなく、内職に近い受託作業です。
どちらが良い悪いという話ではありません。ただ、体調に制約がある方にとって、この2つは検討軸がまったく違います。
受託型が向いているケース ・収入の変動を避けたい ・企画や集客に体力を使いたくない ・単価が低くても、作業した分が確実に報酬になるほうが安心
販売型が向いているケース ・自分のペースで数量を調整したい ・作るもののジャンルを自分で決めたい ・単価を自分で設定したい
この記事は主に販売型を扱いますが、受託型も選択肢として頭に置いておいてください。特に、体調が不安定な時期は「作業した分だけ確実に報酬になる」形のほうが精神的に楽です。
在宅でできる仕事の全体像を先に見比べたい方は、在宅でできる仕事おすすめ【2026年版】|スキル別ランキングにスキル別の整理があります。ハンドメイド以外の選択肢も含めて眺めてから決めるほうが、後悔が少ないはずです。
ハンドメイド市場のいま
国内のハンドメイド市場は、販売プラットフォームの整備によって個人が参入しやすい環境になっています。minne、Creema、メルカリ、BASE、STORES。手数料や客層に違いはありますが、初期費用をほとんどかけずに出品できる点は共通しています。
一方で、参入障壁が下がったということは、競合が増えたということでもあります。同じジャンルの作品が大量に並ぶ中で選ばれるためには、写真、説明文、価格、発送スピードといった「作品以外の要素」が効いてきます。
ここが、体調に制約がある方にとって難しいポイントです。作ることには体力を使える。でも、写真を撮り、説明文を書き、SNSで発信し、問い合わせに答える。この周辺作業が、実は制作より時間を食います。
通院しながらハンドメイド販売をするメリットと、正直なデメリット
メリットとして挙げられる5点
1. 作業を細かく分割できる 制作工程は分割可能です。10個作るなら、1日2個ずつ5日に分けても成果物は同じ。体調に合わせた配分ができます。
2. 締切を自分で設定できる(在庫販売の場合) あらかじめ作ったものを出品する形なら、外部から締切を課されません。これは他の在宅ワークにはない大きな利点です。
3. 座ったまま、短時間でも進められる工程がある パーツの仕分け、包装資材の準備、値札の作成。こうした軽い工程は、調子が悪い日でも進められます。
4. 対人コミュニケーションの負荷が比較的低い 購入者とのやり取りはテキスト中心で、電話や打ち合わせがほぼありません。会話に体力を使う方には向いています。
5. 初期投資が小さい 材料費と出品手数料だけで始められるジャンルが多く、無料で開設できる販売サイトも複数あります。失敗したときの損失が限定的です。
デメリットも正直に書きます
1. 収入が読めない これが最大の問題です。出品しても売れない期間があり、その間の収入はゼロ。生活費を依存させるには不安定すぎます。
2. 原価と手数料で手元に残る額が薄い 後で詳しく計算しますが、売上の半分以上が消えることは珍しくありません。
3. 梱包・発送という物理作業が必ず発生する データを送って終わりの仕事と違い、箱に詰めて郵便局やコンビニに持ち込む必要があります。この物理的な移動が、体調によっては負担になります。
4. オーダーメイドを受けると納期に縛られる 在庫販売なら自由ですが、受注制作を始めた瞬間、締切が発生します。ここが体調の波と衝突します。
5. 周辺作業の負荷が想像以上に大きい 撮影、画像編集、説明文の執筆、SNS投稿、問い合わせ対応、在庫管理、発送。制作時間の1.5倍から2倍の時間が、これらに消えます。
私が編集の仕事でハンドメイド作家の方々を取材していたとき、いちばん驚いたのがこの点でした。「制作は好きだけど、それ以外が続かない」という声が本当に多い。作品づくりを楽しみたくて始めたのに、気づけばパソコンの前で写真を加工している時間のほうが長い。
だから、始める前に「周辺作業をどこまで減らせるか」を設計してください。これが続くかどうかを分けます。
収益構造を正確に把握する
売上のうち、手元にいくら残るか
ここが本記事でいちばん重要なセクションです。具体的に計算します。
仮に、3,000円のアクセサリーを1点販売したとします。
引かれるもの ・材料費:600円(売価の20%と仮定) ・販売手数料:300円(プラットフォームによって売価の5%から15%程度) ・送料:350円(小型郵便を想定、出品者負担の場合) ・梱包資材:100円(箱、緩衝材、台紙、シール) ・振込手数料:200円(月ごとの引き落としを1点あたりに按分)
合計で1,550円。残るのは1,450円です。
ここに制作時間が乗ります。1点作るのに2時間かかったとすれば、実質時給は725円。撮影や出品作業の時間まで含めれば、さらに下がります。
正直なところ、この数字を見て「思っていたより厳しい」と感じる方が多いはずです。でも、これが現実です。そして、この現実を知ったうえで対策を打てば、数字は改善できます。
実質時給を上げる4つのレバー
レバー1:手数料の低い経路を併用する 販売手数料は、プラットフォームによって売価の5%から15%程度と幅があります。年間50万円売る作家なら、手数料の差だけで年間5万円変わります。
この考え方は、ハンドメイド以外の在宅ワークでも同じです。仲介手数料が引かれる仕組みと、手数料0%で直接やり取りできる仕組みでは、同じ労力でも手元に残る額が変わる。稼働時間を増やせない方ほど、この差は効いてきます。
レバー2:送料込みの価格設計にする 送料を出品者負担にするなら、最初から価格に織り込む。「送料無料」と書きながら実質赤字、という設計をしている方が本当に多い。
レバー3:ロット制作で1点あたりの時間を減らす 同じ工程をまとめて処理すると、1点あたりの制作時間が下がります。10点分の材料をまとめて切り出し、まとめて組み立て、まとめて撮影する。段取り替えの時間が消えます。
レバー4:単価の高いジャンルに寄せる 1,000円の商品も8,000円の商品も、梱包と発送と問い合わせ対応の手間はほぼ同じです。低単価品を数多く売るほうが、圧倒的に体力を消耗します。
体調に制約がある方にとって、レバー4は特に重要です。「安く作って数を売る」戦略は、体力がある人の戦略であって、稼働時間に上限がある人が取るべき道ではありません。
年収の目安をどう見るか
ハンドメイド販売の収入は幅が極端に大きく、平均値にほとんど意味がありません。月に数千円の方もいれば、事業として成立させている方もいます。
体調に制約がある方が現実的に設計するなら、次のように考えてください。
月の安全稼働時間 × 目標実質時給 = 月の目標利益
仮に月30時間が安全圏で、実質時給1,000円を目指すなら、月の利益目標は3万円。利益率が50%なら、必要な売上は月6万円です。
この逆算をすると、「単価3,000円なら月20点」という具体的な数字が出ます。20点を30時間で作れるか。作れないなら、単価を上げるか、制作時間を短縮するか、目標を下げるか。判断材料がはっきりします。
「月にいくら欲しいか」から始めると必ず無理が出ます。「月に何時間動けるか」から始めてください。
無理のない受注量の決め方
在庫販売とオーダーメイドは、別の仕事だと考える
体調の波と最も衝突するのが、この論点です。
在庫販売(作り置きを出品する) 先に作ってから出品するので、締切がありません。体調が悪い期間は制作を止めればいいだけです。売れなければ収入は落ちますが、誰にも迷惑をかけません。
受注制作・オーダーメイド 注文が入ってから作るため、納期が発生します。単価は上げやすいのですが、体調を崩したときに逃げ場がありません。
結論として、通院がある方は在庫販売を主軸にすべきです。受注制作を完全に断つ必要はありませんが、主軸にはしない。この判断が、長く続けられるかどうかを分けます。
受注制作を受けるなら、必ず次の3つを設定してください。
- 同時進行の受注上限を決める(「常時3件まで」など)
- 制作日数に余裕を持たせる(実作業3日なら、提示は2週間)
- 上限に達したら受付を止める(多くの販売サイトに受注停止の機能があります)
安全稼働時間の計算方法
受注量を決める手順は明確です。
手順1:稼働できる日数を数える 月30日から、通院日と「ほとんど動けない日」の見込みを引きます。通院2日、動けない日6日なら、稼働できるのは22日。
手順2:1日の作業時間を控えめに見積もる 3時間できると思っても、2時間で計算します。22日×2時間で44時間。
手順3:周辺作業の時間を引く 撮影、出品、梱包、発送、問い合わせ対応。これらに全体の40%が消えると見ておきます。44時間×0.6で約26時間。
手順4:さらにバッファを引く 26時間から20%を引いて、約21時間。
この21時間が、純粋な制作に使える時間です。ここから逆算して、月に何点作れるかを決めます。
多くの方は手順3を飛ばします。制作時間だけで計画を立てて、周辺作業の分だけ超過する。これが破綻の典型パターンです。
「作りすぎ」も体調を崩す原因になる
意外に思われるかもしれませんが、調子がいい日に作りすぎるのも問題です。
理由は2つあります。1つ目、その反動で数日動けなくなることがある。2つ目、在庫が増えると管理と保管の負担が増える。
「今日は調子がいいから8時間やろう」ではなく、「今日は調子がいいけれど、決めた3時間で止める」。この自制ができる方は、長く続きます。
作業の区切り方については在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックに具体的な手法があります。時間で強制的に区切る方法は、つい没頭してしまう方にこそ有効です。
納期と発送の伝え方
発送日数の設定を甘くしない
販売サイトでは、出品時に「発送までの日数」を設定します。ここを短く設定する方が非常に多い。「1〜2日で発送」と書いたほうが売れやすいからです。
正直なところ、これはやめたほうがいい。体調に波がある方が短い発送日数を設定すると、体調を崩した瞬間に評価が下がるリスクを抱えることになります。
設定は「4〜7日」あるいは「7〜14日」で構いません。実際にはもっと早く発送できるなら、それは「思ったより早く届いた」という良い評価につながります。
遅く設定して早く出す。これが鉄則です。逆をやると、必ず苦しくなります。
プロフィールと商品説明に条件を書いておく
購入前に読んでもらえる場所に、あらかじめ条件を書いておくと、後のトラブルが激減します。
書いておくとよい内容の例です。
・発送は週◯回(例:火曜と金曜)にまとめて行っています ・お問い合わせへのお返事は、平日の10時から16時の間にいたします ・受注制作は同時◯件までとさせていただいております ・体調により発送が遅れる場合は、必ず事前にご連絡いたします
ここで重要なのは、病名や症状を書く必要はないということです。購入者が知りたいのは「いつ届くか」と「連絡が取れるか」だけ。理由の説明は不要です。
事情ではなく条件を書く。この原則を守れば、必要な配慮は得られますし、余計な詮索も受けません。
遅れそうなときの連絡
体調を崩して発送が遅れそうなとき、連絡には型があります。
悪い例は「体調不良のため発送が遅れます。すみません」だけ。これでは購入者が「いつ届くのか」を判断できず、不安だけが残ります。
良い連絡には、次の3点が入っています。
1. 現在の状況 「ご注文いただいた商品は完成しております」
2. 新しい発送予定日 「◯月◯日に発送いたします」
3. 相手が選べる選択肢 「お急ぎの場合はキャンセルも承ります。お手数ですがご意向をお知らせください」
謝罪は1回で十分です。それより、次の見通しと選択肢を示すほうが相手の役に立ちます。そして、連絡は早いほど選択肢が多く残ります。
文例を挙げておきます。
〇〇様
このたびはご注文いただきありがとうございます。
△△(商品名)の発送についてご連絡いたします。
商品は完成しておりますが、発送の手配が
◯月◯日となる見込みです。
当初のご案内より遅くなり申し訳ございません。
お急ぎの場合はキャンセルも承りますので、
ご希望をお知らせいただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
体調の波を吸収する制作の段取り
工程を「重い」「軽い」に分ける
ハンドメイドの制作工程は、必要な集中力によってはっきり分かれます。この分類が、続けるための土台になります。
重い工程(判断と集中が要る) ・デザインの設計、色の組み合わせを決める ・細かい作業(縫製、彫金、レジンの気泡処理など) ・撮影と画像の調整 ・商品説明文の執筆
軽い工程(手順で回せる) ・材料の仕分け、在庫の確認 ・パーツの下ごしらえ ・梱包資材の準備、台紙やタグの作成 ・発送用のラベル作成 ・保管場所の整理
調子が悪い日に「何もできなかった」と落ち込む方が多いのですが、軽い工程を30分やっておくだけで、翌日の重い工程が楽になります。ゼロか百かにしないこと。この中間を作れるかどうかが、続けられるかどうかを分けます。
まとめ作りとロット化
これが実質時給を上げる最大のレバーです。
1点ずつ最初から最後まで作るのではなく、工程ごとにまとめて処理します。
たとえばアクセサリーなら、10点分のパーツをまとめて切り出す日、まとめて組み立てる日、まとめて撮影する日、というふうに分ける。道具の出し入れや準備の時間が1回で済むため、1点あたりの時間が明確に下がります。
体調に合わせて工程を割り振れるという副次的な利点もあります。「今日は切り出しだけ」「今日は撮影だけ」と決められる。
撮影と出品作業をまとめる
周辺作業の中で、いちばん時間を食うのが撮影と出品です。
対策は明快で、撮影セットを固定化すること。背景、照明の位置、カメラの角度、小物の配置。これを毎回決め直していると、1点あたり30分かかります。
一度セットを決めて、写真に撮って手順を残しておく。次からは10分で終わります。撮影日をまとめて設定すれば、さらに効率が上がります。
在宅で家事や通院と並行しながら予定を組んでいる方の実例は在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開にあります。制約のある中で時間割を作っている例なので、応用が効く部分が多いはずです。
梱包と発送の負荷を下げる
物理作業をどう軽くするかは、体調に制約がある方にとって死活問題です。
発送日をまとめる 毎日発送するのではなく、週2回に固定する。移動の回数が減ります。
集荷サービスを使う 配送業者の集荷を依頼すれば、外に出る必要がありません。これは体力の消耗を大きく減らします。
梱包資材を先に準備しておく 調子がいい日に、箱を組み立て、緩衝材を切り、宛名以外を書いておく。注文が入ったら詰めるだけの状態にしておくと、発送作業が5分で終わります。
法務・税務まわりで押さえておくこと
販売時の表示義務
個人がインターネットで継続的に商品を販売する場合、特定商取引法に基づく表示が必要になる場合があります。氏名、住所、連絡先などの表示が求められるのが原則ですが、販売プラットフォームによっては一部の取り扱いが異なることもあります。
自宅住所を公開したくない場合の対応方法についても、プラットフォームごとにルールが違います。出品前に、利用するサービスの規約と表示ルールを必ず確認してください。制度の適用範囲についてはご自身の販売形態によって変わりますので、判断に迷う場合は公的な相談窓口にご確認ください。
また、取引条件や表示に関する一般的なルールについては公正取引委員会が情報を公開しています。
作品づくりで注意すべき権利関係
これ、知らずにトラブルになる方が本当に多い領域です。
・キャラクターや企業ロゴを使った作品の販売は、権利者の許諾なしにはできません ・購入した型紙やレシピには「商用利用不可」の条件が付いていることがあります ・生地やパーツにも、商用利用の可否が定められている場合があります ・他の作家の作品を模倣することは、意匠や著作権の問題になり得ます
材料を買うとき、型紙をダウンロードするとき、必ず利用条件を確認してください。「みんなやっているから大丈夫」は根拠になりません。
確定申告と経費
販売による収入が一定額を超えると、確定申告が必要になる可能性があります。要件はご自身の状況や他の所得の有無によって変わりますので、国税庁の情報を確認するか、税務署の窓口でご相談ください。
ハンドメイド販売の場合、材料費、梱包資材、送料、販売手数料、撮影機材、作業用の道具などが経費になり得ます。医療費が一定額を超えた場合の取り扱いも、通院がある方には関係する項目です。
記帳の負担を軽くするなら、freeeやマネーフォワードのようなクラウド会計サービスが実用的です。ハンドメイドは取引の件数が多く、1件あたりの金額が小さいため、手作業での記帳は現実的ではありません。
なお、雇用されて働く場合の治療と仕事の両立支援については厚生労働省が情報を公開しています。年金や保険の扱いについては日本年金機構の情報を確認したうえで、不明な点は年金事務所にお問い合わせください。制度の適用可否はご自身の状況で変わりますので、必ず窓口でご確認ください。
危ない話の見分け方
ハンドメイド関連には、作家を対象にした怪しい勧誘が一定数存在します。
・高額な講座や資格を受講すれば仕事が紹介されると謳うもの ・「代理で販売する」と言って作品を預かるが、契約書がない ・材料をセットで購入させる内職商法(作った分を買い取ると言いながら、品質を理由に買い取らない) ・応募前に登録料や教材費の支払いを求めてくる
前払いを求められる話、身元が確認できない相手との取引は、金額の大小にかかわらず、いったん立ち止まってください。まっとうな取引であれば、契約書の締結を嫌がることはありません。
制作以外の道も知っておく
体調の状態によっては、細かい手作業そのものが難しくなる時期があります。そのとき、ハンドメイドで培ったスキルを別の形で使う道があることを知っておくと、選択肢が増えます。
書く仕事 作品の説明文を書き続けた経験は、そのままライティングのスキルです。商品紹介、レビュー、制作手順の解説。この方向の相場感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。手を細かく動かせない時期でも、文章なら書ける、という方は少なくありません。
販売のノウハウを活かす仕事 出品、価格設定、写真、レビュー対応。これらの経験は、他の事業者のネットショップ運営を支援する仕事に転用できます。マーケティング寄りの職域についてはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に整理があります。
AIツールを使った効率化の支援 商品説明文の下書き生成、画像の背景処理、問い合わせ対応の効率化。こうしたツールの使い方を知っている人は、まだ多くありません。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、ツールの導入や業務設計を支援する仕事の内容が整理されています。
技術方向へ進む道 在庫管理や受注処理を自動化する仕組みを作れるようになると、単価の水準が変わります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場が示す通り開発職の相場は高く、アプリケーション開発のお仕事で扱われる領域と接続していきます。
取引先とのやり取りが増える段階になれば、書類作成の基礎を示すビジネス文書検定のような資格が信頼材料になることもあります。優先順位は高くありませんが、選択肢として頭に置いておく価値はあります。
運営者の視点から見た、続けられる人の共通点
在宅ワークとフリーランスの市場を20年運営してきた立場から、いくつか観察を共有します。
長く続いている方に共通しているのは、作品の完成度そのものではありません。「この人から買うと安心だ」という状態を作れている点です。
具体的には、発送が早い、連絡が丁寧、条件が明記されている、トラブル時の対応が早い。この4つが揃っている作家は、リピーターがつきます。そして、リピーターがつくと集客の労力が下がる。新規顧客を追い続けるより、はるかに体力の消耗が少なくなります。
これは、体調に制約がある方にとって重要な事実です。作品の量を増やせなくても、この4つは作れる。運営者として見てきた限り、制作量の多さより、購入者に対する予測可能性のほうが継続率に効いています。
もうひとつ、報酬構造についての観察です。中間の手数料が乗らない直接の取引では、依頼側や購入側は同じ予算でより多くを得られますし、作り手は同じ労力で手元に残る額が厚くなります。体力に余裕がある方にとっては「多少得をする」程度の話かもしれません。
けれど、通院や体調の制約で稼働時間を増やせない方にとっては、意味がまったく違います。1時間あたりに残る額が薄いと、生活を成り立たせるために時間を増やすしかなくなり、その結果として体を壊す。この循環に入って市場から離れていった方を、これまで何人も見送ってきました。手数料0%という条件が持つ意味は、金額の大小ではなく「同じ体力でどこまで続けられるか」という持続性の話です。
データから読み取れる、現実的な進め方
最後に、実行順に整理します。
第1段階(1〜3か月) 作品を5点から10点作り、在庫販売として出品します。この期間の目的は売上ではなく測定です。1点あたりの制作時間、材料費、撮影と出品にかかる時間を記録してください。この記録がないまま次に進むと、価格設定を必ず誤ります。
同時に、月に何時間動けるかも記録します。通院日、動けなかった日、集中できた日を数えるだけで構いません。この数字が、以後の受注量を決める根拠になります。
第2段階(3〜6か月) 実質時給を計算し、価格を見直します。低すぎる単価の商品は整理し、単価を上げられるジャンルに寄せていく。同時に、ロット制作と撮影セットの固定化に取り組み、周辺作業の時間を削ります。
この段階で「利益が出ない商品」がはっきりします。感情的には切りにくいのですが、体力に上限がある以上、赤字の商品を作り続ける余裕はありません。
第3段階(6〜12か月) リピーターがつく仕組みを作ります。発送の速さ、連絡の丁寧さ、条件の明記。この3つを徹底するだけで、再購入率は変わります。受注制作を始めるなら、この段階からです。同時受注の上限を決め、納期に十分な余裕を持たせたうえで、少数だけ受ける。
この順番を守れば、体調の波を織り込みながら積み上げられます。逆に、第1段階の測定を飛ばして第3段階の受注制作から入ると、まず納期で潰れます。
ハンドメイド販売は、通院という制約と組み合わせても成立します。ただし、成立させるのは情熱ではなく設計です。原価と手数料を計算する。安全稼働時間から逆算する。発送日数は遅めに設定して早く出す。工程を重い軽いで分ける。条件はあらかじめ書いておく。
やることは決まっています。そして、そのどれもが、自分で決められることです。
よくある質問
Q. ハンドメイド販売で、売上のうちどのくらいが手元に残りますか?
3,000円の商品を1点売った場合、材料費600円、販売手数料300円、送料350円、梱包資材100円、振込手数料200円が引かれ、残るのは1,450円程度です。ここに制作時間が乗るため、2時間かかっていれば実質時給は725円になります。撮影や出品の時間まで含めるとさらに下がるので、価格設定の前に必ず計算してください。
Q. 体調に波がある場合、受注制作は受けないほうがよいですか?
在庫販売を主軸にすることをおすすめします。作り置きを出品する形なら締切がなく、体調が悪い期間は制作を止めるだけで済みます。受注制作を受ける場合は、同時進行の上限を3件程度に決め、実作業3日なら提示は2週間というように納期に十分な余裕を持たせ、上限に達したら受付を停止してください。
Q. 発送までの日数は何日に設定すべきですか?
4日から7日、あるいは7日から14日で設定してください。短く設定したほうが売れやすいのは事実ですが、体調を崩した瞬間に評価が下がるリスクを抱えることになります。遅めに設定しておいて実際は早く発送すれば、思ったより早く届いたという良い評価につながります。遅く設定して早く出すのが鉄則です。
Q. 持病があることを購入者に伝える必要はありますか?
病名や症状を書く必要はありません。購入者が知りたいのは、いつ届くかと連絡が取れるかだけです。プロフィールや商品説明に「発送は週2回まとめて行っています」「お問い合わせへのお返事は平日10時から16時の間にいたします」といった条件を書いておけば十分です。事情ではなく条件を伝えてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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