団体長期障害所得補償保険の中身を知っておく

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
団体長期障害所得補償保険の中身を知っておく

この記事のポイント

  • 団体長期障害所得補償保険(GLTD)は
  • 病気やケガで長く働けなくなったときの収入減を会社単位で補う保険です
  • 公的な傷病手当金が切れる時期

結論から書きます。団体長期障害所得補償保険は、病気やケガで長期間働けなくなったときに、給料の代わりになるお金を毎月受け取れる保険です。会社が契約者になって従業員をまとめて加入させる形を取るため、個人で入る保険より保険料が安く、健康状態の告知も簡略化されることが多いという特徴があります。英語の Group Long Term Disability を略して GLTD と呼ばれます。

この保険が注目される理由は単純で、公的な保障に空白期間があるからです。会社員が病気で働けなくなったとき最初に頼るのは健康保険の傷病手当金ですが、これは支給開始から通算1年6か月で終わります。その後に障害年金へつながればよいものの、障害等級に当てはまらなければ収入はゼロのままです。この記事では、団体長期障害所得補償保険が埋めようとしている空白がどこにあるのか、補償の中身を左右する数字は何か、加入前に確認すべき落とし穴はどこか、そして会社に制度がない人やフリーランスがどう備えるかまでを順に整理します。

団体長期障害所得補償保険とは何か。会社がまとめて入る収入の保険

団体長期障害所得補償保険は、損害保険会社が企業向けに提供している商品です。契約者は会社や健康保険組合、労働組合などの団体で、そこに所属する従業員が被保険者になります。保険金が支払われるのは、従業員が病気やケガで「就業障害」の状態になり、働けなくなったときです。支払われ方は一時金ではなく、毎月の年金のような形が基本になります。

大手損害保険会社は、この保険の中身をこう説明しています。

GLTDの補償とは 団体長期障害所得補償保険(GLTD)とは、従業員の皆さまが病気やケガにより働けなくなった場合に、収入を補償する制度です。 出典: sompo-japan-gltd.jp

ここで言う「就業障害」は、日常生活が送れないという意味ではありません。約款上は、その人が本来していた業務に従事できない状態を指すのが一般的です。つまり、身のまわりのことはできても、これまでの仕事に戻れないなら支払いの対象になりうるということです。ただし定義は商品ごとに違うため、後半で詳しく触れます。

もうひとつの特徴は補償の長さです。名称に「長期」と付いているとおり、支払いが何年も続く設計になっています。1年や2年で終わる医療保険や所得補償保険とは性格が異なり、定年に近い年齢まで支払いが続く型もあります。長く働けない状態が続いたときの生活費をどう確保するか、という問いに正面から答える商品だと考えてください。

補償の対象になる事由も広めです。仕事中のケガに限らず24時間が対象で、入院中だけでなく通院や自宅療養、リハビリテーション中でも、支払い条件を満たすかぎり補償が続きます。労災保険が業務上の事由に限られるのと対照的な設計です。

団体長期障害所得補償保険(GLTD)の特徴 従業員のみなさまへのメリット 働けなくなった場合の収入の減少を補償 病気やケガで就業障害となり、長期間働けなくなった場合、保険金をお支払いします。お仕事中にかぎらず24時間補償の対象になりますし、入院中にかぎらず通院・自宅療養・リハビリテーション中でも、保険金のお支払条件を満たすかぎり補償されます。 出典: sompo-japan-gltd.jp

公的な保障はどこで切れるのか。1年6か月という区切り

団体長期障害所得補償保険を理解するには、先に公的な制度がどこまで面倒を見てくれるのかを押さえる必要があります。順番としては、健康保険の傷病手当金が先で、その次が障害年金です。

傷病手当金とは、病気やケガで働けない間に健康保険から出るお金のことです。全国健康保険協会は、支給の条件を「業務外の事由による療養であること」「仕事に就くことができないこと」「連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと」「休業した期間について給与の支払いがないこと」の4つと示しています。最初の3日間は待期期間で支払いがなく、4日目以降が対象です。

金額は、支給開始日以前の12か月間の標準報酬月額を平均し、それを30で割った額の3分の2です。ざっくり言えば、月給のおよそ3分の2が入ってくると考えれば近い水準になります。裏を返すと、残りの3分の1は最初から自分で埋めなければなりません。

そして最大の論点が支給期間です。全国健康保険協会は、傷病手当金の支給期間を「支給を開始した日から通算して1年6か月」と明記しています。通算という言葉が入ったのは、途中で復職して再び休んだ場合に、働いていた期間を差し引いて計算できるようにするためです。いずれにせよ、支払いの総量は1年6か月で打ち止めになります。

では1年6か月を過ぎたらどうなるか。ここで登場するのが障害年金です。日本年金機構によると、障害基礎年金の年金額は令和8年4月分から1級が1,059,125円、2級が847,300円(いずれも昭和31年4月2日以後生まれの場合)で、ここに子の加算額が付きます。厚生年金に入っていた人はこれに障害厚生年金が上乗せされ、3級の最低保障額は635,500円です。

問題は、障害年金が誰にでも出るわけではない点にあります。障害等級に当てはまる状態であること、初診日の前日時点で保険料の納付要件を満たしていることが条件です。腰痛や慢性疲労、がんの治療中で通院しながら働けない状態など、生活はできるが従来の仕事には戻れないというケースでは、等級に該当せず不支給になることが珍しくありません。

つまり、公的な保障には「傷病手当金が切れた後、障害年金にもつながらない」という空白が生まれうるということです。団体長期障害所得補償保険は、まさにこの空白を埋めるために設計されています。多くの商品で免責期間(支払いが始まるまでの待ち時間)が傷病手当金の支給期間に合わせて設定されているのは、そのためです。

補償の中身を決める5つの数字

団体長期障害所得補償保険は、商品名が同じでも条件の設定次第で中身がまったく変わります。パンフレットを読むときに真っ先に確認すべき数字は次の5つです。

1つ目は免責期間です。 就業障害になってから保険金の支払いが始まるまでの待ち時間を指します。60日、90日、180日、365日、545日(1年6か月)といった選択肢が用意されており、長くするほど保険料は安くなります。傷病手当金との重複を避けたい会社は545日を選び、短期の所得補償保険と組み合わせる会社は90日を選ぶ、といった設計の違いが出ます。

2つ目はてん補期間です。 保険金が支払われ続ける最長の期間のことで、2年、5年、10年、あるいは60歳や65歳といった年齢までという形で決まります。長期と名乗る以上ここが短いと意味が薄れるため、年齢満了型を選ぶ会社が多い傾向にあります。

3つ目は補償割合です。 月々の給与の何割を補うかという数字で、50%から70%程度に設定されるのが一般的です。全額を補償しない理由は、働けるのに保険金を受け取り続けるほうが得になる状態を避けるためです。

4つ目は保険金額の上限です。 補償割合を掛けた結果が青天井になるわけではなく、1口いくらという形で上限が置かれます。高収入の人ほど、補償割合の計算どおりの金額が出ない可能性が高くなります。

5つ目は他制度との調整規定です。 傷病手当金、障害年金、労災保険の休業補償給付、会社の休職給与などを受け取っている場合、その分を差し引いて支払う設計が一般的です。この調整を知らずに「給与の70%が別途もらえる」と誤解すると、実際の受取額との差に驚くことになります。

この5つのうち、加入者が自分で選べるのは団体の契約形態によります。会社が全員分を一律で決めている場合もあれば、口数を自分で選べる場合もあります。制度の案内が配られたら、まず免責期間とてん補期間の2つを確認してください。この2つで商品の性格はほぼ決まります。

保険料は誰が払うのか。3つの導入形態

導入のしかたは大きく3つに分かれます。どれを採っているかで、従業員の負担も補償の厚みも変わります。

全員加入型は、会社が保険料の全額または大半を負担し、従業員全員を自動的に加入させる形です。加入の手続きも健康状態の告知も不要なことが多く、従業員から見れば最も手間がかかりません。福利厚生として打ち出しやすい反面、補償の水準は控えめに設定されがちです。

任意加入型は、会社が制度の枠だけを用意し、保険料は従業員が給与天引きで負担する形です。団体扱いの割引が効くため、同じ補償を個人で買うより安くなります。ただし加入は本人の意思に任されるため、案内が来ても放置したまま入り損ねる人が一定数出ます。

併用型は、会社負担で基本部分を全員に付け、そこから上積みしたい人だけが自己負担で口数を足す形です。実務では、この併用型が最も納得感を得やすい設計だと言われています。

自分の会社がどの型かは、給与明細と福利厚生の案内で確認できます。給与から保険料が引かれているなら任意加入型か併用型、引かれていないのに加入者証がある場合は全員加入型です。正直なところ、この確認をしている人は多くありません。制度があるのに知らないまま働けなくなり、請求しないまま期限を過ぎてしまう例は、実際に起きています。

近年は、補償だけでなく予防や健康支援を組み合わせた商品も出てきました。

健康経営支援保険は、GLTD(団体長期障害所得補償保険)の「万一の補償」に「予防(アプリ)」「コンサルティング」の機能を追加し、企業の健康経営と従業員の健康増進の双方を支援する商品です。 出典: aioinissaydowa.co.jp

保険が「起きてから払うもの」から「起きないようにする仕組みを含むもの」へ広がっている流れが読み取れます。

メンタルヘルスの不調はどこまで補償されるのか

団体長期障害所得補償保険を検討する会社が最も気にするのが、精神疾患による休職の扱いです。身体の病気と違って回復の見通しが立てにくく、休職が長引きやすいためです。

基本の約款では、精神障害による就業障害は補償の対象外とされていることが多く、対象に含めるには精神障害補償特約を付ける必要があります。この特約を付けると、うつ病などのメンタルヘルスの不調で働けなくなった場合も保険金が支払われます。

ただし、特約を付けても条件は本体より厳しく設定されるのが通例です。てん補期間が本体より短く設定される、支払いの上限年数が別に決められる、といった違いが出ます。会社の制度案内を読むときは、精神疾患についてだけ別表が用意されていないかを確認してください。

ここで注意したいのは、診断名の扱いです。同じ「働けない」でも、適応障害と診断された場合とうつ病と診断された場合で保険の扱いが変わることがあります。また、就業障害の判定は医師の診断書に基づいて行われるため、主治医に「どの業務ができないのか」を具体的に書いてもらえるかが結果を左右します。単に休養が必要と書かれた診断書では、就業障害の証明として弱くなります。

この保険を検討しているのが会社側の立場であれば、精神障害補償特約は付ける前提で見積もりを取るほうが現実的です。特約なしの見積もりは保険料こそ安く見えますが、実際に起きる長期休職の多くをカバーできません。

加入前に確認しておきたい6つの落とし穴

団体長期障害所得補償保険は、加入した後で「思っていたのと違う」となりやすい商品です。よくある行き違いを6つ挙げます。

第一に、退職したら補償が続かない場合があります。 契約者は会社なので、退職すると被保険者の資格も失うのが原則です。ただし、在職中に発生した就業障害については退職後も支払いが続く設計の商品もあります。この一点は必ず確認してください。

第二に、既往症の扱いです。 加入前から治療を受けていた病気が原因で働けなくなった場合、一定期間は支払いの対象外とする規定が置かれることがあります。全員加入型で告知が不要な代わりに、こうした制限が設けられている商品もあります。

第三に、待期のカウント方法です。 免責期間が90日の商品で、80日休んで復職し、また休んだ場合に日数が通算されるのか、リセットされるのかは商品によって異なります。再発の多い病気では、この違いが大きく効きます。

第四に、復職後の減収への対応です。 完全に働けない状態ではなく、時短勤務で戻って収入が減った場合に部分的な保険金が出るかどうかは、約款の「部分就業障害」の定義次第です。治療と仕事の両立を前提に考えるなら、ここが実用性を分けます。

第五に、税務上の扱いです。 保険料を会社が負担している場合の従業員側の扱い、受け取った保険金の課税関係は、契約形態によって変わります。一般には所得補償の保険金は非課税として扱われる例が多いものの、契約の内容や負担者によって結論が変わるため、会社の経理か税務署、税理士に確認してください。個人事業主が自分で所得補償保険に入っている場合の経費処理については、個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法で、保険の種類ごとの扱いと仕訳の考え方を整理しています。

第六に、請求の期限です。 保険金の請求には時効があり、就業障害の発生から一定期間を過ぎると請求できなくなります。休職中は手続きに気が回らなくなるため、家族に制度の存在を伝えておくことが実質的な備えになります。

月収40万円の人が働けなくなったとき、お金はどう動くか

制度の説明だけでは実感がわかないので、数字を並べて追ってみます。月収40万円の会社員が、業務外の病気で働けなくなった場合を想定します。前提として、標準報酬月額は40万円、勤務先の休職規定では給与の支払いがないものとします。

最初の3日間は待期期間で、健康保険からは何も出ません。4日目から傷病手当金が始まります。計算は、標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2です。40万円を30で割るとおよそ13,330円、その3分の2はおよそ8,890円。これが1日あたりの支給額で、30日分でおよそ26万円になります。月収40万円の人が、月26万円前後で暮らすことになる計算です。

この状態が続くのは、支給開始日から通算して1年6か月です。545日を超えると、傷病手当金はその時点で終わります。

次に障害年金を検討します。障害基礎年金の2級に該当すれば年額847,300円、月あたりにすると約7万円です。厚生年金に入っていた人はここに障害厚生年金が加わります。3級であれば障害基礎年金は出ず、障害厚生年金だけになり、最低保障額は年額635,500円、月あたり約5万円です。傷病手当金の月26万円と比べると、水準が大きく下がることが分かります。

そして最も厳しいのは、障害等級に該当しないと判定された場合です。このときの公的な支給はゼロになります。通院を続けながら以前の業務には戻れない、という状態はここに当たりやすく、団体長期障害所得補償保険が本来の出番を迎えるのもこの局面です。補償割合60%の契約に入っていれば、月24万円前後が支払われる計算になります。ただし他制度との調整規定があるため、障害年金を受け取っている間はその分が差し引かれます。

住宅ローンや教育費といった固定費は、働けなくなっても減りません。月26万円でも足りるのか、さらに月7万円まで落ちたときにどうするのか。この2段階で家計を試算しておくと、必要な補償額が具体的な数字として見えてきます。

労災保険との違い。業務上か業務外かで窓口が変わる

もうひとつ混同しやすいのが労災保険との関係です。線引きは単純で、業務上の事由や通勤によるケガ・病気は労災保険の担当、それ以外は健康保険の担当になります。

全国健康保険協会は傷病手当金の支給対象を「業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること」と定め、業務上や通勤災害によるものは労災保険の給付対象なので支給対象外だと明記しています。つまり、仕事が原因の病気で働けなくなったなら、傷病手当金ではなく労災保険に請求することになります。

団体長期障害所得補償保険が「24時間補償」をうたうのは、この線引きをまたいで補償するという意味です。仕事中のケガでも、休日のスポーツでのケガでも、就業障害の状態になれば支払いの対象になります。労災保険の給付を受けている場合は調整の対象になりますが、補償が届かない領域が残らないという点では意味があります。

実務で問題になりやすいのは、長時間労働やハラスメントによる精神疾患のように、業務上かどうかの判断が分かれるケースです。労災認定には時間がかかり、その間の生活費が問題になります。この期間をどう乗り切るかまで考えておくと、備えの設計が現実に即したものになります。なお、労災に当たるかどうかの判断は事案ごとに異なるため、迷ったら労働基準監督署に相談してください。

請求から支払いまでの流れと、そろえておく書類

保険金を受け取るまでの手順も、あらかじめ知っておくと動きやすくなります。大きくは5つの段階に分かれます。

第一段階は、勤務先への連絡です。契約者は会社なので、請求の窓口も人事や総務になるのが通例です。休職の手続きと同時に、団体長期障害所得補償保険の対象になりうることを伝えてください。

第二段階は、必要書類の受け取りです。保険金請求書、医師の診断書、就業状況を証明する書類などが渡されます。診断書は保険会社所定の様式であることが多く、通常の診断書を持っていっても受け付けられません。

第三段階は、主治医への依頼です。ここが結果を大きく左右します。診断書に書いてもらうべきなのは、病名だけではなく「どの業務が、なぜできないのか」です。座位を長時間保てない、集中力が続かず判断を伴う作業ができない、といった具体的な記述があるかどうかで、就業障害の認定のされ方が変わります。

第四段階は、保険会社の審査です。免責期間が終わったかどうか、就業障害の状態が続いているかを確認したうえで支払いが決まります。審査には数週間かかるのが普通です。

第五段階は、支払いの開始とその後の継続確認です。支払いは一度決まって終わりではなく、一定の間隔で状態の確認が入ります。診断書の提出を求められることもあるため、通院を続けて記録を残しておくことが大切になります。

そろえておくとよいのは、給与明細(直近12か月分)、雇用契約書、休職を認める会社の通知、通院の記録と領収証、そして就業規則の休職に関する条文です。休職中は判断力も体力も落ちるので、元気なうちに保管場所をひとつにまとめておくことを勧めます。

会社側が導入を検討するときの進め方

ここからは、制度を導入する側の視点です。団体長期障害所得補償保険は福利厚生の一種ですが、導入の判断材料は「他社が入れているから」ではありません。

最初にやるべきは、自社の休職者の実績を数えることです。過去3年から5年で、何人が何日休んだのか。病名の内訳はどうか。復職率はどのくらいか。この数字がないまま見積もりを取ると、必要な免責期間もてん補期間も決められません。

次に、既存の制度との重なりを確認します。就業規則で休職中の給与をどこまで支払うと定めているか、健康保険組合に付加給付があるか。これらが手厚い会社では、免責期間を長めに取って保険料を抑える設計が合理的になります。

3つ目は、加入形態の決定です。全員加入型は導入の公平感が高い一方、保険料は会社の固定費になります。任意加入型は会社の負担がない代わりに、加入率が上がらなければ制度としての意味が薄くなります。実際には、基本部分を会社負担で全員に付け、上積みを任意にする併用型が落としどころになることが多い形です。

4つ目は、周知の設計です。導入して終わりにすると、制度があることを知らないまま休職する従業員が出ます。入社時の説明資料、休職手続きの案内、産業医面談の場など、休職に近づいた人が必ず目にする場所に情報を置いてください。制度の価値は、使われて初めて生まれます。

最後に、複数の保険会社から見積もりを取ることです。免責期間、てん補期間、補償割合、精神障害補償特約の有無という4つの条件をそろえて比べないと、保険料の高低は判断できません。条件がずれた見積もりを並べても、安いほうが得だとは限りません。

自分の勤務先に制度があるかを30分で確認する手順

読んでいて「そもそも自分の会社に制度があるのか分からない」と感じた人のために、確認の手順を具体的に書いておきます。所要時間はおよそ30分です。

第一に、社内のイントラネットや共有フォルダで「福利厚生」「団体保険」「GLTD」「所得補償」の4語を検索します。制度があれば、加入案内か制度概要の資料が出てくるはずです。年に一度、加入や口数変更の募集案内が配られている会社もあります。

第二に、直近の給与明細を1枚開いて、控除欄を上から順に見ます。健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税以外に、団体保険や共済の名目で引かれている項目があれば、それが任意加入型の保険料である可能性があります。名称だけで判断できないときは、人事に項目名を伝えて内容を尋ねてください。

第三に、就業規則の休職に関する条文を読みます。休職できる期間は何か月か、その間の給与はどう扱われるか。この2点が分かれば、保険で埋めるべき期間の長さが計算できます。

第四に、健康保険証に記載されている保険者を確認します。全国健康保険協会なのか、勤務先の健康保険組合なのか。組合健保であれば、傷病手当金に上乗せされる付加給付が用意されていることがあります。付加給付がある会社では、必要な補償額が変わります。

第五に、ここまでで分からない点を箇条書きにして、人事か総務に1通のメールで尋ねます。聞くべきことは「団体長期障害所得補償保険に加入しているか」「加入しているなら免責期間とてん補期間、補償割合はいくつか」「精神障害補償特約は付いているか」「退職後の扱いはどうなるか」の4つです。この4点が分かれば、自分で追加の備えをどれだけ持つべきかを判断できます。

健康なうちにこの確認を終えておくことに意味があります。体調を崩してから調べ始めると、判断も手続きも遅れるからです。

会社に制度がない人、フリーランスはどう備えるか

団体長期障害所得補償保険は会社が用意する制度なので、勤務先に制度がなければ使えません。フリーランスや個人事業主も対象外です。では何もできないのかというと、そうではありません。

まず、フリーランスには傷病手当金がないという前提を押さえてください。国民健康保険には傷病手当金の仕組みが原則としてなく、働けなくなればその日から収入が途切れます。会社員より公的な備えが薄い分、自前の準備の重みが増します。

選択肢は3つあります。1つ目は、損害保険会社が個人向けに出している所得補償保険です。てん補期間が1年や2年と短めの商品が中心で、保険料は比較的手頃です。2つ目は、生命保険会社が出している就業不能保険で、こちらは60歳や65歳までの長期の支払いに対応した商品があります。3つ目は、フリーランス向けの共済や業界団体の制度です。所属している団体があるなら、団体扱いの割引が効く場合があります。

保険に頼らない備えも現実的です。収入源を1つの取引先に集中させず、稼働が落ちても一定の収入が残る形を作っておくこと。そして、働けない期間の生活費を現金で持っておくことです。目安として、生活費の6か月分を用意できていれば、治療に専念しながら次を考える時間が取れます。

収入の水準そのものを把握しておくことも備えの一部です。自分の職種の相場を知らなければ、保険金額をいくらに設定すべきかも決められません。ソフトウェア作成者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、職種ごとの年収と単価の分布を公的統計に基づいて整理しています。まずは自分の年収がどの位置にあるかを確認し、その7割前後を補償の目安にするのが実務的な考え方です。

体調を崩しても続けやすい働き方に軸足を移しておく、という備え方もあります。移動や常駐を前提としない在宅の仕事は、通院しながらでも続けやすい類型です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事アプリケーション開発のお仕事は、成果物で評価される仕事の代表例で、働く時間や場所の自由度が高い分、体調に合わせた調整がしやすくなります。あわせて、文書で意思疎通する力があると在宅の仕事は格段にやりやすくなります。ビジネス文書検定は、報告書や依頼文の型を体系的に学べる資格で、対面での説明に頼らない働き方の土台になります。

運営者の視点から見た、収入の空白という問題

在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた立場から言うと、働けなくなったときに本当に効くのは保険金の多寡よりも「収入の入口がいくつあるか」でした。取引先が1社だけの人は、体調を崩した瞬間に収入がゼロになります。3社と付き合いがある人は、1社を休んでも残りが回り続けます。保険は現金を埋めてくれますが、仕事を失わずに済むかどうかまでは面倒を見てくれません。

もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど単発の作業を積み上げるのではなく、「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っていました。そうした関係がある人は、療養のために数か月離れても戻る場所が残ります。逆に、毎回ゼロから応募し直す働き方だと、離脱した時点で関係も消えます。就業不能への備えとして、この差は保険の補償割合より大きく効きます。

報酬の構造も無関係ではありません。仲介手数料が積み重なる取引では、同じ予算でも受け手に届く額が薄くなり、休むための蓄えを作りにくくなります。中間マージンが乗らない手数料0%の直接取引は、依頼者から見れば同じ予算でより多く頼めて、受け手から見れば手取りが厚くなる構造です。この差は1件では小さく見えますが、働けない期間の生活費を何か月ぶん積めるかという形で効いてきます。

最後に、制度の話に戻ります。団体長期障害所得補償保険を「会社が入ってくれている保険」で終わらせず、免責期間とてん補期間、補償割合、他制度との調整の4点だけでも把握しておいてください。この4点を知っている人と知らない人では、実際に働けなくなったときに動き出すまでの速さが違います。加入している制度の内容を確認するのに費用はかかりません。今日できることのなかで、費用対効果は最も高い部類に入ります。生命保険や医療保険との重複を整理したい場合は、30代の生命保険おすすめ|子育て世代の保障設計で、保障の優先順位の付け方を年代別にまとめています。

よくある質問

Q. 団体長期障害所得補償保険は個人でも加入できますか?

できません。契約者が会社や健康保険組合などの団体で、そこに所属する従業員が被保険者になる仕組みだからです。会社に制度がない人や、フリーランス、個人事業主が同じ性格の備えを持ちたい場合は、損害保険会社の所得補償保険か、生命保険会社の就業不能保険を個人で契約する形になります。

Q. 傷病手当金をもらっている間も保険金は出ますか?

商品によりますが、多くは重複しないよう調整されます。免責期間を傷病手当金の支給期間である1年6か月に合わせ、そこから支払いを始める設計が一般的です。免責期間が短い商品では、傷病手当金や障害年金の受給額を差し引いて支払う調整規定が置かれます。加入している制度の約款で確認してください。

Q. うつ病など精神疾患でも補償されますか?

基本の約款では対象外とされていることが多く、精神障害補償特約を付けることで対象になります。ただし特約を付けた場合も、支払われる期間が本体より短く設定されるのが通例です。制度の案内に精神疾患だけ別の表が用意されていないかを確認し、分からなければ会社の担当部署か代理店に問い合わせてください。

Q. 退職したら補償は終わりますか?

原則として、退職すると被保険者の資格を失います。ただし、在職中に発生した就業障害については退職後も支払いが続く設計の商品もあります。扱いは契約ごとに異なるため、退職を検討している段階で、在職中に発生した事由の扱いがどうなるかを勤務先か保険会社に確認しておくことをおすすめします。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月10日最終更新:2026年9月23日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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