Excelテンプレートの販売を始めるまで|作る書類の選び方と値段の付け方


この記事のポイント
- ✓Excelテンプレートの販売を始めるまでにやることを
- ✓作る書類の選び方から値段の付け方まで順に整理しました
- ✓無料で配られているものと競わない設計
Excelテンプレートの販売を調べていると、始め方の説明はどこにも書いてあるのに、「何の書類を作れば売れるのか」だけが曖昧なまま終わります。出品の手順は10分で覚えられますが、作る書類を間違えると何点作っても売れません。この記事はその選び方から始めます。
結論を先に書きます。売れるExcelテンプレートは「探されていて」「自分で作るのが面倒で」「作り方が毎年変わらない」書類です。この3つがそろっていない書類は、作っても無料で配られているものに負けます。以下では、書類の選び方、無料のものと競わない作り込み、マクロを入れるかの判断、値段の付け方、出品先の選び方、通信販売として必要な表示、複製への備え、税金の扱いまでを順に整理します。
Excelテンプレートが売れる仕組みと市場の土台
テンプレートが売れるのは、買う人が「作る時間」を金額で買っているからです。請求書の様式を自分で作ると、罫線を引き、計算式を入れ、印刷の範囲を調整し、消費税の端数の処理を決めるところまでで2時間から3時間かかります。その作業を数百円で済ませられるなら買う、という判断です。
この取引が成り立つ土台は、デジタルの商品がネットで売られる規模そのものです。経済産業省の調査では、消費者向け電子商取引のうちデジタル系分野の市場規模が示されています。
デジタル系分野の BtoC-EC 市場規模の内訳をみると、「オンラインゲーム」(1 兆 2,553 億円)が大きな割合を占めていますが、市場規模は前年比マイナス 0.58%と前年比ほぼ横ばいとなっています。 出典: 経済産業省
同じ調査では、デジタル系分野の全体が2兆6,776億円、そのうち電子出版が6,722億円、有料動画配信が4,873億円と示されています。テンプレートはこの区分に直接含まれる商品ではありませんが、形のない商品をネットで買う行為が一般的になっていることは、この数字から読み取れます。
一方で、テンプレートの販売には固有の弱点があります。買う人が1回買えば終わりで、繰り返しは起きません。しかも同じ書類の無料の様式が大量に配られています。この2つを踏まえずに始めると、作ったのに売れない状態になります。だから最初の判断が、何の書類を作るかになります。
作る書類を選ぶ3つの軸
書類を選ぶ軸は3つです。順番に当てはめて、3つとも通ったものだけを作ります。
1つ目の軸は、探されているかどうかです。その書類の名前で実際に検索されているか、出品先の検索機能でその語を入れて商品が並ぶかを見ます。商品が1つも並ばない場合、需要がないのか、誰も作っていないのかの2つの可能性があります。前者なら作っても売れません。判断の材料として、出品先の売れ筋の一覧に似た書類が載っているかを確かめてください。
2つ目の軸は、自分で作るのが面倒かどうかです。単純な表は誰でも作れるので売れません。面倒になるのは、計算の条件が分岐する書類、集計と一覧が連動する書類、印刷の体裁が決まっている書類です。たとえば、勤務の時間から残業と深夜の時間を分けて集計する表は、条件の分岐が多く、自分で作ると時間がかかります。
3つ目の軸は、作り方が毎年変わらないかどうかです。制度や税率に連動する書類は、制度が変わるたびに作り直す必要があります。作り直せば売り続けられますが、放置すると古い様式を売っている状態になり、購入者から指摘が来ます。副業として無理なく続けるなら、制度に依存しない書類から始めるほうが楽です。
この3つを通った書類を10個ほど書き出して、作るのにかかる時間の短い順に並べてください。最初の1点は、時間がかからないものから作ります。1点目で出品の手順と反応を確かめてから、時間のかかる書類に取りかかる順番が安全です。
売りやすい書類と売りにくい書類を具体的に分ける
3つの軸を具体的な書類に当てはめると、傾向が見えてきます。
売りやすいのは、業種や用途を絞った書類です。「請求書」は無料の様式が大量にあり、会計ソフトの機能とも競合します。ところが「建設業の出来高請求に対応した請求書」「美容室の施術記録と回数券の管理表」のように業種を絞ると、無料の様式では足りない項目が出てきます。項目が足りない書類は、自分で作り足す手間があるので、買う理由が生まれます。
同じ理屈で、複数の書類が連動する組も売りやすくなります。見積書から請求書へ数字を引き継ぐ、受注の一覧から月別の売上を集計する。1枚ずつなら無料で足りるのに、連動させると自分で作るのが面倒になる。この「連動」が価値になります。
売りにくいのは3種類です。1つは、無料の様式で足りる単純な書類です。出勤簿、住所の一覧、簡単な家計簿。2つ目は、専用のソフトが安く手に入る領域です。会計、給与計算、在庫管理は、月額の安いサービスが並んでいるためExcelで代わりを作る理由が弱くなります。3つ目は、法令の様式そのものを写した書類です。官公署が配っている様式をExcelに置き換えただけのものは、配布元が無料で用意している場合が多く、売る根拠が立ちません。
判断に迷ったときは、その書類を無料で探してみてください。10分探して満足できるものが見つかるなら、その書類は売りにくい領域です。10分探して「項目が足りない」「印刷が崩れる」と感じたなら、そこに作る余地があります。
もう1つ、判断の材料になるのが「その書類を使う人が毎月何回使うか」です。年に1回しか使わない書類は、買う人にとって金額を払う理由が弱くなります。毎月あるいは毎週使う書類なら、作業が楽になる効果が積み重なるので、数百円から数千円を払う判断がしやすくなります。売上の集計、勤務の記録、在庫の受け払い、顧客への連絡の記録。こうした日常の業務に組み込まれる書類のほうが、年に1回の申告用の様式より売れます。
無料で配られているものと競わない設計
テンプレートの販売で最初に立ちはだかるのが、無料の様式です。正面から競うと価格を下げるしかなくなるので、競わない形を設計します。
方法は3つあります。1つ目は、無料の様式に足りない機能を足すことです。入力の補助、入力の誤りを弾く設定、集計の自動化、印刷の体裁。この4つは無料の様式でほとんど手が入っていません。2つ目は、使い方の説明を付けることです。テンプレートだけを渡すと、使い方が分からない人は使えません。説明のシートを1枚入れ、どこに何を入れるかを書いておくだけで、価値の見え方が変わります。
3つ目は、更新に応えることです。「購入後に様式を更新したら無償で差し替えます」という条件を付けると、無料の様式との差がはっきりします。ただし更新を約束したら実行しなければなりません。自分が続けられる範囲で条件を決めてください。
無料の素材を戦略として使う手もあります。組の中から1点を無料で配り、気に入った人が組を買う流れを作る形です。無料で配る1点は、単体でも役に立つものにします。中身を削って使えなくした「お試し版」は、買う気を削ぐ結果になります。
テンプレートの作り込みで評価される6点
購入者が「これは買って正解だった」と感じるかどうかは、次の6点で決まります。ここを押さえていないテンプレートは、評価の欄に不満が書かれます。
1つ目は、入力する場所と計算する場所が分かれていることです。入力欄の背景色を変え、計算式が入っているセルには色を付けない。この区別があるだけで、使う人は迷いません。2つ目は、計算式を保護していることです。シートの保護をかけ、入力欄だけを編集できる状態にします。計算式を誤って消される事故が、問い合わせの最大の原因です。
3つ目は、印刷の設定です。印刷の範囲、用紙の向き、余白、改ページの位置、見出しの行の繰り返し。これらを設定していないテンプレートは、印刷すると崩れます。買った人が最初にやるのが印刷なので、ここで崩れると評価が下がります。4つ目は、表示の形式です。金額の桁の区切り、日付の表記、小数の桁数。書類の種類に合った形式を設定しておきます。
5つ目は、説明のシートです。使う手順、入力してよい場所、変えてはいけない場所、想定している使い方を書きます。6つ目は、ファイルの互換性です。古い版のExcelで開けるか、無料の表計算ソフトで開いたときに崩れないか。買う人がどの環境で使うかは分からないので、動作を確かめた環境を商品説明に書いておきます。
表計算ソフトの機能を体系的に確かめておきたい場合はMOS Excel(Microsoft Office Specialist)の出題範囲が、押さえておくべき機能の一覧として使えます。3つの資格をまとめて取る進め方はMOS Excel・Word・PowerPointの3資格セットで事務系副業を制覇する方法に整理されています。
マクロを入れるかどうかの判断
処理を自動化するマクロを入れると、テンプレートの価値は上がります。ただし入れることで生じる面倒も増えるので、判断を先にしておきます。
入れる利点は明確です。繰り返しの作業が1回の操作で終わり、入力の誤りが減ります。集計の更新、行の追加、印刷用の書式の整形といった作業を自動化できます。
面倒は3つあります。1つ目は、開いたときに警告が出ることです。マクロを含むファイルは、開くときに実行を確認する表示が出ます。買った人が「危険なファイルなのか」と不安になるため、商品説明と説明シートの両方で、マクロが何をするものかを書いておく必要があります。2つ目は、動く環境が限られることです。無料の表計算ソフトや、ウェブ版の表計算では動きません。3つ目は、中身を読まれることです。マクロは保護をかけても解除の方法が知られているため、完全に隠すことはできません。
権利の面も押さえておきます。著作権法は保護の対象になる著作物を例示しており、そこにプログラムが含まれています。
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物 二 音楽の著作物 三 舞踊又は無言劇の著作物 四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物 五 建築の著作物 六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物 七 映画の著作物 八 写真の著作物 九 プログラムの著作物 出典: e-Gov法令検索
同じ条文には、プログラムの著作物の保護は、それを作るために使うプログラム言語や規約や解法には及ばないとも書かれています。つまり、自分が書いたマクロのコードは保護の対象になり得ますが、「こういう処理をこういう順で行う」という考え方そのものは保護されません。他の人が同じ処理を自分で書いたものを止めることはできない、ということです。
判断の目安としては、最初の数点はマクロなしで作り、売れる傾向が見えた書類にだけマクロを足す形が無理がありません。マクロの作成を仕事として広げたい場合はVBAエキスパートで事務系副業の単価アップ|Excel自動化案件の始め方に、案件の取り方まで整理されています。
値段の付け方と、価格で競わない工夫
値段を決めるときの出発点は、同じ出品先で似た書類がいくらで売られているかです。10件ほど見て、価格の帯を確かめます。ここで自分の作業時間から逆算しないでください。作業に10時間かかったからといって、買う人がその分を払う理由はありません。
そのうえで、3つの工夫で価格を上げられます。1つ目は組で売ることです。見積書、請求書、領収書、納品書を連動させた組にして、単体の3倍から5倍の価格を付けます。買う人は「1つの様式で書類がそろう」ことに価値を感じるため、単価の比較から外れます。
2つ目は、対象を絞ることです。業種を絞った書類は、比べられる相手が減ります。汎用の書類は価格でしか比べられませんが、「訪問介護の記録と請求に対応した組」は比較する相手がほとんどいません。3つ目は、更新版を付けることです。制度に連動する書類なら、改定のたびに差し替えを配る条件にします。継続の価値が価格に乗ります。
価格を下げる判断は、条件を決めてから行います。3か月売れなかったら商品説明を書き直す、それでも売れなかったら組の構成を変える、それでも動かなければ出品を取り下げる。値下げを先にすると、戻せなくなります。
参考として、報酬の考え方を職種の側から見ておくのも役に立ちます。同じ表計算の作業を受託で請け負う場合の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場、説明や手順書を書く作業の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確かめられます。テンプレートを1点売る金額と、同じ時間を受託に充てた場合の金額を並べてみると、どこに時間を使うかの判断ができます。
出品する場所を4つに分けて選ぶ
テンプレートを売る場所は性質で4つに分かれます。手数料と、集客の手間と、買う人の層が違うので、1つに絞らず順に広げるのが現実的です。
1つ目は、形のない商品のダウンロード販売に対応したプラットフォームです。自分で価格を決められ、審査がないか簡単な場所が多く、始めやすい形です。手数料は販売価格に対する率で決まり、振込の手数料が別に必要な場合があります。買う人は個人の事業者や小さな会社の担当者が中心になります。
2つ目は、素材や書式を扱う専門のサイトです。審査があり、通れば継続して売れます。ただし価格は場所の側が決める形が多く、1点あたりの受け取りは小さくなります。企業の担当者が探しに来る場所なので、業務で使える水準に作り込まれているかが問われます。
3つ目は、自分で構えるショップです。手数料は決済のサービスの分だけで済みますが、買いに来る人を自分で集めなければなりません。すでに発信の場を持っている人に向く形です。この場合は、次の節で扱う通信販売の表示を自分で用意する必要があります。
4つ目は、テンプレートを売るのではなく、作る作業を請け負う形です。「自社の業務に合わせた集計表を作ってほしい」という依頼で、1件あたりの金額が大きく、継続します。テンプレートが並んでいることが実績の証明になるため、1つ目から4つ目へ進む順番が自然です。
始めるときは1つ目だけに絞ってください。複数の場所に同時に出すと、どの条件が効いたのかが分からなくなります。売れる傾向が見えてから2つ目の審査に出し、問い合わせが来るようになったら3つ目と4つ目に広げます。
買う人の環境を想定して作り、確かめる
テンプレートの評価が下がる原因の多くは、機能ではなく環境の違いです。作った本人の環境では問題なく動くのに、買った人の環境で崩れる。ここを潰しておくと、問い合わせと低い評価の大半が消えます。
確かめる環境は4つです。1つ目は、古い版の表計算ソフトです。新しい関数を使っていると、古い版ではエラーになります。使っている関数が、どの版から使えるものかを確かめてください。2つ目は、無料の表計算ソフトです。罫線の太さ、セルの結合、条件付きの書式、入力の制限。この4つは無料のソフトで開くと見え方が変わることがあります。
3つ目は、ウェブ版の表計算です。ブラウザで開く形では、マクロが動かず、一部の機能が制限されます。4つ目は、スマートフォンとタブレットです。買った人が外出先で内容を確認する場面を考えると、少なくとも表示が崩れない状態にしておきたいところです。
すべての環境で完全に動かすのは現実的ではありません。だからこそ、商品説明に「確かめた環境」を書きます。「Windows版の表計算ソフトで動作を確認。無料の表計算ソフトとウェブ版では条件付きの書式の一部が反映されません」と書いてあれば、買う人は自分の環境で使えるかを判断できます。書かずに売って後から指摘されるより、先に書いておくほうが評価は下がりません。
ファイルの形式も判断が必要です。マクロを含まないなら通常の形式、含むならマクロ有効の形式になります。両方を同梱して、マクロなしの版も入れておくと、環境の違いに対応できます。この配慮があるかどうかが、同じ内容のテンプレートで評価の分かれる点です。
売れ始めるまでの流れを5つのステップに区切る
出品してすぐに売れることはありません。次の5段階に分けて進めると、どこでつまずいているかが判断できるようになります。
ステップ1は、作る書類を5つ決めることです。3つの軸を当てはめて残ったものを、作るのにかかる時間の短い順に並べます。ステップ2は、1点目を作って印刷まで確かめることです。ここで作り込みの6点と、環境の確認を済ませます。
ステップ3は、1か所への出品です。題名に用途と業種を入れ、見本の画像を用意し、ライセンスの条件を書きます。見本の画像は、入力済みの状態の画面と、印刷した結果の2枚を入れてください。空欄の様式だけを見せても、買う人は完成形を想像できません。
ステップ4は、2週間の観察です。表示された回数、詳細を見られた回数、購入された回数の3つを記録します。表示が少ないなら題名と検索用の語句の問題、表示はあるが詳細が見られないなら見本の画像の問題、詳細は見られるが売れないなら価格と説明の問題です。原因の場所が分かれば、直す場所が決まります。
ステップ5は、同じ領域での拡張です。1点目が売れた書類と近い書類を4点から5点追加し、組として売る形を作ります。ここまでで最短でも2か月はかかります。1か月で結果が出ないことを前提に計画を組んでください。
通信販売として表示しなければならない事項
自分のショップでテンプレートを売る場合、特定商取引法の通信販売のルールが関わります。出品先のプラットフォームを使う場合は表示の多くを場所の側が担いますが、商品説明の中身の責任は出品者に残ります。
同法は、通信販売の広告に表示すべき事項を定めています。販売価格(送料が含まれない場合は価格と送料)、代金の支払いの時期と方法、商品の引き渡しの時期、申込みの期間に定めがあるときはその内容、申込みの撤回や解除に関する事項などです。ダウンロードで渡すテンプレートは送料が発生せず、引き渡しは購入後すぐになりますが、表示自体は必要になります。
返品の扱いには専用の条文があります。広告をした販売業者から商品を買った人は、引き渡しを受けた日から8日を経過するまでは申込みの撤回や契約の解除ができるとされ、ただし販売業者が撤回などについての特約を広告に表示していた場合はこの限りでないと書かれています。つまり「ダウンロード後の返品は受け付けません」という条件を、あらかじめ広告に表示しておく必要があるということです。
誇大な広告も禁じられています。商品の性能や、申込みの撤回や解除に関する事項について、著しく事実と違う表示や、実際より著しく優良または有利だと誤認させる表示をしてはならないとされています。「どの環境でも動きます」「すべての業種に対応」といった書き方は、動作を確かめていない環境が含まれるなら避けてください。法律と政令と省令の本文は、消費者庁の特定商取引法のページからまとめて確かめられます。
複製と再配布への備え方
テンプレートの販売で必ず聞かれるのが、買われたファイルを複製して転売されない仕組みはあるかという点です。結論から書くと、ファイルそのものの複製を止める仕組みはありません。
Excelのシートの保護やブックの保護は、シートの編集や構成の変更を制限する機能です。ファイルを複製したり、別の場所へ渡したりする行為を止める機能ではありません。パスワードを付けて開けないようにする設定も、パスワードを知っている人には複製できます。技術で完全に防ぐ前提は捨ててください。
そのうえで、現実的な備えが3つあります。1つ目は、ライセンスの条件を明記することです。購入した本人が使えること、社内で何人まで使えるか、再配布と転売を禁じること、改変して自分の商品として売ることを禁じること。この4点を商品説明と説明シートの両方に書きます。2つ目は、購入者ごとに区別できる形にすることです。ファイル名や説明シートに購入の番号を入れておくと、流出したときにどこから出たかが分かります。
3つ目は、価格の設計で対処することです。1点の価格を高く設定するほど、転売の動機は強くなります。逆に手が届く価格に設定して数を売る形なら、転売の被害は相対的に小さくなります。更新版を配る条件を付けている場合、転売された版は更新を受けられないため、正規に買う理由が残ります。
権利の側では、自分が作った様式に著作権が認められる場合があります。ただし、単純な表や、誰が作っても同じになる様式では、独自性がないとして保護されない可能性もあります。相手の行為が権利の侵害にあたるかどうかは個別の判断になるため、実際に転売を見つけたときは、出品先の場所に通報する手順を先に確かめておくのが現実的です。
税金の扱いと記録の付け方
テンプレートの販売で収入が入ったら、確定申告の対象になります。どの区分で申告するかは、国税庁が示している所得の区分に沿って考えます。
国税庁は所得を10種類に区分しており、副業による収入は雑所得の例として挙げられています。一方、製造業やサービス業などの事業から生じる所得は事業所得です。テンプレートの販売がどちらになるかは、継続して行っているか、相当の時間と労力をかけているか、収入がある程度の規模になっているかで判断されます。判断に迷う場合は、税務署の相談窓口で自分の状況を伝えて確認してください。
事業所得として申告する場合は、青色申告の制度が使えます。国税庁の解説では、正規の簿記の原則により記帳し、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して期限までに提出した場合、原則として最高55万円の控除が受けられるとされています。電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行っている場合は最高65万円、それ以外の青色申告者は最高10万円です。帳簿と書類の保存は原則として7年間で、請求書や見積書のように5年間でよいものもあると説明されています。詳しい要件は国税庁の青色申告制度の解説で確かめてください。
記録として残すのは4つです。出品先ごとの売上、手数料と振込の手数料、使ったソフトやサービスの料金、作業に使った機器の購入費。出品先が複数になると売上の集計だけで時間を取られるので、月に1回、同じ表に転記する形を最初から作っておいてください。
初心者がやりがちな失敗5つ
最後に、始めた人がつまずく形を5つ挙げます。
1つ目は、自分が使いたい書類を作ることです。自分に必要な書類は、他の人にも必要とは限りません。探されているかを確かめる作業を飛ばすと、この失敗になります。
2つ目は、機能を詰め込みすぎることです。シートが10枚あり、設定が細かく分かれているテンプレートは、買った人が使いこなせません。売れているのは、1枚か2枚で完結する簡潔なものです。3つ目は、印刷を確かめないことです。画面では整っていても、印刷すると罫線が切れ、2ページに割れます。出品の前に必ず印刷の結果を確認してください。
4つ目は、説明を書かないことです。作った本人には自明でも、買った人には分かりません。説明のシートがないテンプレートは、問い合わせが増え、評価が下がります。5つ目は、1点だけ出して様子を見ることです。1点では検索に引っかかる機会が少なく、判断の材料も集まりません。同じ領域で5点から10点そろえてから評価してください。テンプレート販売の進め方をほかの道具でも比べたい場合はテンプレート販売で副業|Canvaで作って月5万円稼ぐ方法【2026年版】が、作る道具の違いによる向き不向きの参考になります。
テンプレートの販売を足場に、受託の仕事へ広げる
テンプレートの販売は、作った物が売れるまで収入にならない形です。1点あたりの金額は小さく、繰り返しの購入も起きません。ここだけで収入を組み立てるのは現実には難しくなります。
20年この市場を見てきた立場から言うと、表計算の技能で収入が安定している人は、テンプレートの販売を看板にして、収入の柱を受託に置いています。並んでいるテンプレートが「この人はこういう表を作る」という証明になり、そこから「自社用に作ってほしい」という依頼が来る。逆に、テンプレートの販売だけを続けている人は、点数が増えても収入の水準が変わりません。
受託に移ると、報酬の構造の話が出てきます。企業からの依頼は、依頼側と作り手の間に制作会社や仲介サービスが入る形が多く、そこで手数料が引かれます。仲介の段数が1つ減れば、依頼側は同じ予算でより多く頼めるようになり、作り手の手取りは厚くなります。手数料0%の直接取引が効くのは、金額が大きく見えるからではなく、この双方が得をする構造が働くからです。運営者として見てきた限りでは、表計算の仕事で長く続いている人は、最初の実績を仲介のある場所で作り、本命の取引を直接の契約に移しています。
広げる方向は3つあります。業務の仕組みを整える側に回るならAIコンサル・業務活用支援のお仕事、集計や分析を業務として請け負うならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、表計算の枠を超えて仕組みを作る側に進むならアプリケーション開発のお仕事が、それぞれ次に積む経験の見取り図になります。最初のテンプレートを1点仕上げたら、同じ書類を「受託で作るとしたらいくらか」を一度考えてみてください。その金額が、次にどちらへ進むかを決める材料になります。
よくある質問
Q. どんな書類のテンプレートが売れますか?
「探されていて」「自分で作るのが面倒で」「作り方が毎年変わらない」書類です。単純な請求書や出勤簿は無料の様式で足りるため売れません。業種や用途を絞った書類、複数の書類が連動する組、条件の分岐が多い集計表のように、自分で作ると時間がかかるものに価値が生まれます。
Q. 値段はどう決めればよいですか?
同じ出品先で似た書類がいくらで売られているかを10件ほど見て、価格の帯を確かめるのが出発点です。自分の作業時間から逆算しないでください。価格を上げたい場合は、複数の書類を連動させた組にする、業種を絞る、制度の改定に応じて更新版を配る条件を付けるという3つの方法があります。
Q. ファイルを複製されて転売されるのを防げますか?
ファイルそのものの複製を止める仕組みはありません。シートの保護やブックの保護は編集を制限する機能で、複製を防ぐ機能ではありません。現実的な備えは、ライセンスの条件を商品説明と説明シートの両方に明記すること、購入の番号をファイルに入れて出どころが分かる形にすること、更新版を配る条件で正規に買う理由を残すことの3つです。
Q. マクロは入れたほうがよいですか?
最初の数点はマクロなしで作り、売れる傾向が見えた書類にだけ足す形が無理がありません。マクロを含むファイルは開くときに実行の確認が表示され、無料の表計算ソフトやウェブ版では動きません。入れる場合は、マクロが何をするものかを商品説明と説明シートの両方に書き、動作を確かめた環境を明記してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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