65歳までの再雇用で知っておきたいこと

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
65歳までの再雇用で知っておきたいこと

この記事のポイント

  • ✓65 歳まで再雇用の仕組みを整理しました
  • ✓法律で決まっている範囲
  • ✓高年齢雇用継続給付と在職老齢年金

結論から書きます。65歳までの再雇用で損をする人と損をしない人の差は、交渉の上手さではありません。提示された条件の中で、法律で決まっている部分と会社が自由に決められる部分を区別できているかどうかです。区別できていないと、変えられる条件を諦め、変えられない条件に文句を言うことになります。この記事では、法律で決まっている範囲、給与が下がる仕組み、使える給付と年金の調整、条件提示を受けたときの確認項目、そして再雇用を選ばない場合の選択肢までを整理します。

65歳までの再雇用は何が法律で決まっているのか

まず前提を固めます。高年齢者雇用安定法は、事業主に65歳までの雇用確保措置を義務づけています。取れる方法は3つで、定年の廃止、65歳までの定年の引き上げ、そして65歳までの継続雇用制度の導入です。多くの企業が3つめを選んでいるため、60歳で定年を迎えて、そこから継続雇用という形が一般的になっています。

ここで押さえておくべき点が2つあります。

1つめは、希望者全員が対象だということです。かつては労使協定で基準を定めて、継続雇用の対象者を選別できる経過措置がありました。この経過措置は2025年3月末で終了しています。つまり現在は、本人が希望すれば65歳までは雇用が確保される仕組みになっています。「会社が選ぶ」という前提で話をされたら、それは正しくありません。

2つめは、雇用の形と待遇は法律が決めていないことです。ここが誤解の温床になっています。法律が義務づけているのは「雇用を確保すること」であり、「同じ職種で、同じ給与で雇うこと」ではありません。だから、正社員から契約社員になり、職務が変わり、給与が下がるという形が広く行われています。これは違法ではありません。

70歳までについては、2021年4月から就業確保措置が努力義務になりました。義務ではなく努力義務なので、企業によって対応が分かれます。70歳まで働きたいなら、65歳の時点で会社に制度があるかどうかを確認する必要があります。制度の全体像は厚生労働省の案内で確認できます。

企業の側も、この運用に苦心しています。実務の解説にはこう書かれています。

法制度を理解し、就業規則を整備した上で、次に重要となるのが実際の運用です。65歳以上の従業員の再雇用をスムーズに進め、彼らが意欲を持って働き続けられるようにするためには、きめ細やかな実務対応が求められます。 出典: biz.moneyforward.com

つまり、会社側も正解を持っていないまま運用しているケースがあります。この点は交渉の余地があるという意味でもあります。制度として固まっていないなら、個別の相談で職務や勤務日数が変わることは実際にあります。

再雇用で最も多い誤解は「同じ仕事なら同じ給与」

再雇用の相談で一番多い不満は、仕事の内容が変わらないのに給与が大きく下がったというものです。正直なところ、この状態は納得しづらいと思います。ただ、法律の建て付けを理解しておく必要があります。

定年で一度雇用契約が終了し、新たに契約を結ぶのが継続雇用の形です。新しい契約なので、職務、勤務時間、給与を新しく決めることになります。前の契約の条件が自動的に引き継がれるわけではありません。実務で見ていると、提示額が現役時の5割から7割の範囲に収まる例が目立ちます。

一方で、無制限に下げられるわけでもありません。同じ事業主のもとで、職務の内容と責任の範囲が変わっていないのに待遇に不合理な差があるという状態は、法的に問題になり得ます。ここが交渉の起点です。「なぜこの金額なのか」を会社に説明させて、職務の内容が変わるのか変わらないのかを書面で確認する。変わらないと言われたなら、その根拠を聞く価値があります。

現実的な落とし所は2つあります。ひとつは、給与の水準を受け入れて、代わりに職務の範囲を軽くしてもらうこと。管理業務や後輩の育成を外して、自分の担当業務に集中する形です。もうひとつは、勤務日数を減らすことです。週5日で給与が6割なら、週4日にして給与が5割のほうが時間あたりでは有利になる場合があります。

ここで注意したいのは、勤務時間を減らすと社会保険の加入要件から外れる可能性があるという点です。厚生年金と健康保険の加入が続くかどうかで、将来の年金額と保険料の負担が変わります。日数を減らす交渉をするなら、社会保険の扱いを必ず同時に確認してください。ここを確認せずに日数を減らして、後で保険料の負担に驚く例があります。

もうひとつ、正直に書いておきます。再雇用の条件に不満があっても、その会社の中で大きく変えられる余地は限られています。だから、条件提示を受ける前に「この水準なら受ける、この水準なら別の道を探す」という線を自分の中で決めておくべきです。線がないまま提示を受けると、比較対象がないので受け入れるしかなくなります。

給与が下がったときに使える給付と年金の調整

給与が下がる前提で、補える仕組みを確認します。ここを知らずに働いている人が実際にいます。

雇用保険には高年齢雇用継続給付という制度があります。制度の説明はこうなっています。

高年齢雇用継続給付は、高年齢者の就業意欲を維持、喚起し、65歳までの雇用の継続を援助、 促進することを目的とした給付金であり、 60歳到達時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60~65歳未満の一定の雇用保険の一般被保険者に対して支給されます。支給手続きは、事業主の方を経由して行います。 出典: mhlw.go.jp

ポイントは3つあります。第一に、60歳到達時点の賃金と比べて75%未満に下がっていることが条件です。第二に、手続きは事業主を経由して行うので、会社に申請してもらう必要があります。会社が手続きを忘れているケースがあるので、給与が下がった時点で人事に確認してください。第三に、この給付の率は段階的に縮小される方向で制度改正が進んでいます。以前の水準を前提に計算すると見込みが狂うので、自分の場合の支給率はハローワークで確認してください。

年金についても調整があります。厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、賃金と年金の合計が一定の基準を超えると、年金の一部が支給停止になります。基準額は年度ごとに改定されるので、具体的な金額は日本年金機構で確認してください。

この2つを合わせて計算すると、意外な結果が出ることがあります。給与を上げると年金が止まり、手取りの合計が思ったほど増えないという場面です。だから、再雇用の条件を検討するときは「給与」ではなく「給与と年金と給付の合計」で比べる必要があります。ここを計算せずに給与の額面だけで判断すると、有利な選択を取り逃がします。

社会保険と年金の仕組みを自分で理解しておきたいなら、社会保険労務士の学習範囲がそのまま該当します。合格までの学習量は大きい試験ですが、労働法と社会保険の全体像を体系的に扱うため、自分の条件を自分で検証できるようになります。資格として使わなくても、学習した内容が直接役に立つ珍しい領域です。

条件提示を受けたら確認する6項目

会社から再雇用の条件が提示されたときに、その場で署名しないでください。確認すべき項目を6つに整理します。

1 契約の形態と期間 契約社員か、パートタイムか、嘱託か。契約期間が1年ごとの更新なのか、65歳まで一括なのか。更新の条件が何なのか。1年更新の場合、更新されない条件が書かれているかを確認します。

2 職務の内容と責任の範囲 何をするのか、何をしなくてよくなるのかを書面で確認します。「これまでと同じ」と言われたら、それを書面に残してもらってください。後で待遇差を議論するときの根拠になります。

3 勤務日数と勤務時間 週何日、1日何時間か。減らす選択があるかどうか。減らした場合に社会保険の加入がどうなるか。

4 給与の内訳 基本給、手当、賞与の有無。賞与がなくなる場合、年収の下がり幅は月給の下がり幅より大きくなります。月給だけ見て判断すると誤ります。

5 高年齢雇用継続給付の手続き 会社が申請してくれるのか、自分で何かする必要があるのか。60歳到達時点の賃金の記録を確認しておきます。

6 退職金と企業年金の扱い 定年時に受け取るのか、再雇用の終了時に受け取るのか。受け取る時期によって税の扱いが変わります。

この6つを確認するには、提示から回答までに時間が必要です。「今日決めてください」と言われることはまずないので、1週間もらって計算してください。計算した結果を持って相談すれば、会社側も具体的な話に応じやすくなります。

職務の内容で迷ったら、その職種の市場水準を確認しておくのも有効です。人事や庶務の職務であれば庶務・人事事務員の年収・単価相場に全国平均と都道府県別の水準がまとまっています。提示された額が市場のどのあたりにあるかを知っていると、交渉の言葉が変わります。

メリットとデメリットをフェアに並べる

再雇用を選ぶ判断のために、両側を並べます。どちらか一方に寄せた説明はあまり役に立たないので、公平に書きます。

メリットの側 第一に、収入と社会保険が継続します。転職や独立と比べて、切れ目がないのが最大の価値です。第二に、仕事を覚え直す必要がありません。60歳から新しい職場で一から覚えるのは、想像以上に負荷が高い。第三に、通勤経路や人間関係が変わりません。生活のリズムを維持できることは、体力面で意味があります。第四に、厚生年金の加入が続くので、将来の年金額が増えます。

デメリットの側 第一に、給与が下がります。しかも同じ仕事を続ける場合、納得感が得にくい。第二に、立場が変わります。これまで部下だった人が上司になる場面があり、ここで辞める人が一定数います。第三に、65歳という期限があります。65歳で必ず終わる契約なので、その先の準備を別にする必要があります。第四に、新しい経験が増えません。65歳以降も働くつもりなら、この5年間で何も積み上がらないのは損失です。

デメリットの3つめと4つめは、つながっています。65歳までの再雇用を選ぶ人ほど、65歳以降の準備を後回しにします。ところが65歳で契約が終わった後、新しく雇われるのは非常に難しい。だから、再雇用の期間中に65歳以降の収入源を作っておくことが、実は最重要の課題です。正直なところ、この点を会社は教えてくれません。会社の関心は65歳までの雇用確保であって、その先ではないからです。

企業側には、65歳を超えた雇用や高齢者の雇用管理の整備に対する助成の仕組みも用意されています。

65歳以上への定年引上げ等や高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換する措置を講じた場合に助成を受けることができます。 出典: mhlw.go.jp

つまり、会社が65歳を超えて働ける制度を整えることには、公的な後押しがあります。自社にそういう制度があるかどうか、なければ検討の予定があるかどうかを人事に聞いてみる価値はあります。聞かれて初めて検討を始める会社も実際にあります。

再雇用を選ばない場合の3つの道

再雇用を断るという選択も、同じ精度で検討するべきです。選択肢は3つあります。

転職する 60歳での転職は、書類の通過率が明確に下がります。ただ、人手不足が続いている分野では条件が成立します。警備、施設管理、介護、運輸などは年齢の幅が広い。たとえば警備員の年収・単価相場で水準を確認すると、再雇用の提示額との比較ができます。同じ収入なら、勤務地や時間帯が選べるほうが生活の質は上がります。

業務委託で働く 雇用ではなく、仕事の単位で契約する形です。年齢の上限が実質的にありません。納品物の品質で判断されるからです。これまでの職務経験がそのまま商品になる分野を選んでください。人事や労務の経験が長い方なら、企業の採用や労務の業務を遠隔で請ける仕事があります。内容は採用・労務・人事代行のお仕事で確認できます。文書を扱ってきた方には、原稿の確認や整える仕事が向いています。範囲と進め方は編集・校正・リライトのお仕事にまとまっています。

独立や開業をする 店舗や設備を持つ形は、退職金を投じることになるためリスクが大きい。この年齢で始めるなら、初期投資が小さく、失敗しても損失が時間だけで済む形を選ぶべきです。

この3つのうち、私が最も現実的だと考えるのは2つめです。理由は単純で、再雇用を続けながら並行して始められるからです。転職や開業は、辞めてからでないと始まりません。業務委託は週に数時間から始められるので、再雇用の期間中に育てられます。

再雇用と在宅の仕事を組み合わせる

前の章の続きです。再雇用を受けるか断るかという二択ではなく、受けたうえで2本目を作るという進め方を具体的に書きます。

なぜこれを勧めるかというと、65歳という期限が確定しているからです。5年後に必ず収入がゼロになると分かっている状態で、何も準備しないのは合理的ではありません。しかも再雇用の期間は、現役時代より時間の余裕がある場合が多い。管理業務から外れて残業が減っていれば、平日の夜に使える時間があります。

始めるなら、これまでの職務経験の延長線上にあるものを選んでください。全く新しい分野を60歳から始めると、成果が出るまでに時間がかかります。経理をやってきた方は数字を扱う仕事、総務をやってきた方は書類と調整の仕事、営業をやってきた方は顧客対応の仕事。すでに持っているものを売るほうが早い。

会社の勤務と両立させる具体的な形は60歳 在宅 副業|再雇用と両立できる無理のない仕事5選に、時間の使い方まで整理されています。仕事の探し方そのものが分からないという方には60代からのクラウドソーシング|年金と両立する在宅ワーク入門が入口になります。

道具の話も1つ書きます。在宅の仕事では表計算ソフトの操作が前提になる場面が多い。関数とピボットテーブルが使えるかどうかで、受けられる仕事の幅が変わります。操作技能を短期間で証明したいならMOS Excel(Microsoft Office Specialist)が現実的です。学習期間が短く、費用も専門学校と比べて桁が小さい。

私自身、会社に勤めながら別の仕事を受けていた時期に、時間配分を間違えて本業の質を落としたことがあります。週末に詰め込みすぎて、月曜の集中力が落ちた。そこから、週に使う時間の上限を決めて、それを超える依頼は断るようにしました。両立で失敗するのはほぼこの点なので、始める前に上限を決めておくことを勧めます。

65歳で契約が終わった後に何が起きるかを先に見る

再雇用の話をするとき、65歳がゴールとして語られます。ただ、平均寿命を考えれば65歳はゴールではありません。その先に何が起きるかを先に見ておきます。

まず年金です。老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給が本格的に始まりますが、金額を見て「これだけか」と感じる方が多い。厚生年金の受給額は現役時代の報酬と加入期間で決まるため、人によって大きく違います。自分の見込み額を知らないまま65歳を迎えると、そこで初めて生活設計をやり直すことになります。年金事務所で試算を取るのは、再雇用を検討している今がちょうどよい時期です。

次に雇用です。65歳で契約が終わった後、新しく雇われるのは非常に難しい。求人に年齢の条件を書くことは原則できませんが、実際の選考では差が出ます。ここで多くの方が直面するのが、選択肢が「シルバー人材センターの軽作業」か「何もしない」の二択になってしまう状態です。悪い選択肢ではありませんが、それしかないのは準備の結果です。

3つめに健康保険です。雇用が終われば、国民健康保険に入るか、家族の被扶養者になるかを選びます。75歳になると後期高齢者医療制度に移ります。保険料の水準が変わるので、収入の設計と合わせて確認が必要です。

4つめに、時間の使い方です。これは金額の話ではありませんが、実際に一番影響が大きい。40年以上、平日の日中を仕事に使ってきた生活が、ある日から全部自由になります。使い道を決めていないと、生活のリズムが崩れます。仕事を通じた人とのつながりも減ります。少額でも仕事が続いている方のほうが、生活の張りを保てているというのが、見てきた限りの実感です。

この4つを並べると、65歳以降に必要なのは「大きな収入」ではなく「続く収入と続く役割」だと分かります。月に数万円でも、自分の判断で受けて納める仕事が続いている状態を作れるかどうか。これが65歳までの5年間の課題です。

再雇用の5年間で作る収入の3段階

では、その5年間で具体的に何をするのか。3段階に分けます。焦らず順番にやれば足ります。

1年目から2年目 経験を棚卸しして、売れる単位に分解する これまでの職務を書き出して、「他社の人に単独で頼まれ得る作業」に分解します。たとえば経理なら、月次の記帳、決算の資料作成、経費の精査。総務なら、規程の整備、契約書の確認、備品と契約の管理。ここで大事なのは、役職名ではなく作業の単位で書くことです。「部長として管理した」は売れませんが、「毎月の締めの手順を作って運用した」は売れます。分解した項目が10個できれば十分です。

2年目から3年目 小さく1件受けて、値段と時間を測る 分解した項目のうち1つを選んで、実際に受けてみます。金額は小さくて構いません。測るべきは2つです。その作業に何時間かかるか、そして依頼者が何を求めていたか。会社の中でやっていた仕事は手順が決まっていますが、外から頼まれる仕事は前提がありません。ここで初めて「自分の仕事は何を渡せば完成なのか」を考えることになります。この経験が、その後の受注の質を決めます。

4年目から5年目 取引先を2社から3社にして、月の下限を作る 1社だけの取引は、相手の方針が変わった時点でゼロになります。常時2社から3社と取引がある状態にしておくと、1社が止まっても残ります。目標は金額ではなく安定です。月に一定額が入る形ができていれば、65歳の契約終了が断崖ではなくなります。

この3段階を5年でやると、65歳の時点で「収入が続いている状態」になります。逆に、5年間を再雇用の仕事だけで過ごすと、65歳の時点でゼロから探すことになります。同じ5年の使い方で、結果が大きく変わる部分です。

注意点を1つ書きます。会社の副業に関する規程を先に確認してください。届け出が必要な場合があり、無断で始めると問題になります。多くの企業は、本業に支障がなく競業しなければ認める運用になっていますが、規程の文面を読んで、必要なら届け出を出してから始めてください。

相談は無料でできる窓口から使う

情報を集める段階で、お金を払う必要はありません。無料で使える窓口を順に並べます。

最初はハローワークです。職業相談、履歴書と職務経歴書の添削、求人紹介が無料です。高年齢雇用継続給付の支給額や、基本手当の扱いについても窓口で確認できます。生涯現役支援窓口を設けているところもあり、65歳以上の求職に特化した相談ができます。

次が年金事務所です。在職老齢年金の調整で自分の年金がいくら止まるのか、繰上げや繰下げの損得はどうなるのかは、個別の記録を見ないと出せません。窓口で自分の記録を使った試算をしてもらえます。これは無料です。有料の相談に行く前に、必ずここで数字を出してください。

3つめが自治体の相談窓口です。シルバー人材センターや、高齢者の就業支援の窓口があります。仕事の内容は軽作業や地域の業務が中心ですが、体力に合った選択肢を知る意味では使えます。

4つめが労働局の相談窓口です。再雇用の条件に納得できない、待遇差が不合理だと感じる場合の相談先です。会社と直接やり合う前に、制度上どこまで主張できるのかを確認しておくと、話が早く進みます。

この4つを使い切ってから、有料の相談を検討してください。順番を逆にすると、無料で分かることにお金を払うことになります。

20年市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた立場から、2つ書きます。

1つめは、65歳を越えて仕事が続く方の共通点です。技術の高さではありません。続く方は、依頼者の手間を減らす動き方をしています。質問をまとめて一度に送る、納品に判断の根拠を1行添える、期限の前日に進捗を知らせる。長く会社にいた方は、この段取りが身についています。若い世代より明確に強い部分で、しかも本人がそれを強みだと認識していないことが多い。

2つめは、手取りの構造です。仲介の手数料が乗る取引では、依頼者が払った金額と受け手が受け取る金額が一致しません。中間マージンが乗らない直接の取引なら、依頼者は同じ予算でより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の仕組みが効いてくるのは、単価の大小の話ではなく、双方が無理をしなくて済むという質の話です。年金と組み合わせて働く時期には、この差が生活の余裕に直結します。

長く見てきて分かったのは、65歳までの再雇用で成功したと言える方は、再雇用の条件を勝ち取った方ではないということです。再雇用の5年間を使って、65歳以降に続く仕事の形を作った方です。条件の交渉で月に数万円を積むことより、期限のない収入源を1つ持つことのほうが、10年後の差が大きい。

今日できることは1つです。年金事務所で自分の記録を使った試算をしてもらうこと。予約は電話で取れます。数字が出ると、再雇用の条件を受けるべきかどうかも、いつから2本目を始めるべきかも、自然に決まります。

よくある質問

Q. 会社は再雇用の対象者を選別できますか?

できません。労使協定で対象者の基準を定められる経過措置は2025年3月末で終了しており、本人が希望すれば65歳までは雇用が確保される仕組みです。ただし法律が義務づけているのは雇用の確保で、職務や給与の水準までは定めていません。

Q. 再雇用で給与が下がるのは違法ではないのですか?

定年で一度契約が終わり新たに契約を結ぶ形なので、給与を新しく決めることは違法ではありません。ただし職務の内容と責任の範囲が変わっていないのに待遇に不合理な差がある状態は、法的に問題になり得ます。職務が変わるのかを書面で確認してください。

Q. 高年齢雇用継続給付はいくら受け取れますか?

60歳到達時点の賃金と比べて75%未満に下がっていることが条件です。支給率は段階的に縮小される方向で制度改正が進んでいるため、以前の水準で計算すると見込みが狂います。自分の場合の支給率はハローワークで確認してください。手続きは会社を経由します。

Q. 再雇用の条件を検討するとき、給与の額面だけで比べてよいですか?

よくありません。厚生年金に加入して働くと、賃金と年金の合計が一定額を超えた分で年金が止まります。給与を上げると年金が減るため、手取りの合計で比べる必要があります。年金事務所で自分の記録を使った試算をしてから判断してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月26日最終更新:2026年9月24日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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