未経験から有料老人ホームで働く|受け入れている募集と、慣れるまで


この記事のポイント
- ✓未経験から有料老人ホームで働くときに知っておきたいことを
- ✓職場の中で何が起きているかから整理しました
- ✓介護付きと住宅型で違う最初の仕事
先日、事務の仕事から介護の仕事に移ろうとしている方から相談を受けました。「有料老人ホームの求人に『未経験歓迎』とたくさん書いてある。でも、本当に何も知らない人が入って大丈夫なのか。入ってから『こんなはずじゃなかった』とならないか不安だ」と。
結論から言うと、有料老人ホームは、未経験の人を受け入れる仕組みを持っている施設が多い職場です。ただし、同じ「有料老人ホーム」でも、介護付きか住宅型かによって、未経験の人が最初に任される仕事も、資格の扱いも、まったく違います。ここを知らずに応募すると、入ってから戸惑うことになります。
これ、知らない人が本当に多いんです。求人票の「未経験歓迎」の一言の裏には、施設の種類と運営のしかたによって、いくつもの意味が隠れています。
私は行政書士として、介護事業を始める方の手続きや、雇用契約の書類の確認をお手伝いすることがあります。有料老人ホームの届出の書類を見ていると、施設の種類によって、職員の配置の考え方が根本から違うことがよく分かります。
この記事では、未経験から有料老人ホームで働くことを考えている方に向けて、職場の基本、未経験を受け入れている募集の中身、施設の種類で変わる最初の仕事、入ってから慣れるまでの流れ、つまずきやすいところ、契約で確かめること、求人票と見学で見る点を、順番に整理します。
有料老人ホームという職場の基本
まず、有料老人ホームがどんな職場なのかを確認しておきましょう。未経験の人にとっての働きやすさは、この仕組みから大きく変わります。
有料老人ホームは、老人福祉法にもとづいて、高齢者に食事の提供や介護、家事、健康管理などのサービスを行う住まいです。特別養護老人ホームのような公的な施設とは違い、多くは株式会社などの民間の事業者が運営しています。
働く側から見て大切なのは、有料老人ホームが大きく2つの種類に分かれていることです。
| 項目 | 介護付き有料老人ホーム | 住宅型有料老人ホーム |
|---|---|---|
| 介護サービスの提供 | ホームの職員が直接行う | 外部または併設の訪問介護などを利用 |
| 介護保険上の位置づけ | 特定施設入居者生活介護の指定 | ホーム自体は介護保険サービスではない |
| 人員の基準 | 要介護者3人に対し看護・介護職員1人以上など | 介護の人員基準はホームには課されない |
| 未経験の人の主な入り口 | 介護職員 | 生活支援の職員、または併設事業所の職員 |
介護付き有料老人ホームは、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていて、ホームの職員が24時間体制で介護を行います。人員の基準があり、要介護の入居者3人に対して看護職員と介護職員を合わせて1人以上を置くこと、夜間も介護職員を常に1人以上置くことなどが決められています。
住宅型有料老人ホームは、住まいと生活の支援を提供し、介護が必要になった入居者は、外部の訪問介護や通所介護などを個別に契約して利用します。実際には、同じ建物に運営会社の訪問介護事業所が併設されていて、ホームの職員がその事業所の職員を兼ねていることが多いです。
この違いが、未経験の人にとってなぜ大切なのかは、次の章で詳しく説明します。
ほかに、自立した高齢者を主な対象とする健康型もありますが、数はごく少なく、求人もあまり見かけません。また、介護付きの中でも、ホテルのようなサービスを提供する高価格帯のホームと、月々の費用を抑えたホームとでは、職員に求められる振る舞いが違います。高価格帯のホームでは、言葉づかいや身だしなみなど、接遇の水準が細かく決められていることがよくあります。
未経験を受け入れている募集の中身
有料老人ホームの求人を探すと、「無資格可」「未経験歓迎」の文字が並びます。実際の求人を見てみましょう。東京都練馬区の有料老人ホームの求人には、次のような条件が載っていました。
【仕事内容】<会社名>東京都練馬区の有料老人ホーム<給与>月給242000円~258000円...<資格・経験><歓迎条件>無資格可<休日/休暇>年間休日111日シフト制 出典: 求人ボックス
同じ地域の別の求人では、次のような条件も見られます。
【仕事内容】<会社名>東京都練馬区の有料老人ホーム<給与>月給219500円~...<資格・経験><歓迎条件>無資格可<休日/休暇>年間休日113日4週8休制(月9日程度)有給休暇前期・後期特別休暇あり 出典: 求人ボックス
この2つを比べると、月給の下限に2万2,500円の差があり、年間休日も111日と113日で違います。月給が高いほうは、夜勤の回数を前提にした金額になっている可能性があるので、「夜勤手当込みかどうか」を必ず確かめる必要があります。
「無資格可」には3つの意味がある
有料老人ホームの「無資格可」は、読み方によって、次の3つのどれかに当たることが多いです。
1つ目は、介護付き有料老人ホームの介護職員として、資格がなくても採用し、入職後に研修を受けてもらうという意味です。施設の中で行う身体介護には、法令上の資格要件がないので、この形が成り立ちます。
2つ目は、住宅型有料老人ホームの「生活支援」の職員として採用するという意味です。見守り、安否の確認、配膳、清掃、居室の環境整備などが中心で、身体介護は含まれないか、ごく一部に限られます。
3つ目は、住宅型に併設された訪問介護事業所の職員として、資格を取ってもらう前提で採用するという意味です。ここが大切なところで、訪問介護として身体介護を行うには、原則として介護職員初任者研修以上の資格が必要です。つまり、住宅型の「無資格可」は、「資格を取るまでは身体介護に入れない」という条件つきであることが多いのです。
求人票の職種名に「生活サポートスタッフ」「ライフサポート」などと書かれている場合は、2つ目の意味である可能性が高いと考えてよいでしょう。
介護付きと住宅型で、未経験の最初の仕事が違う
では、それぞれの施設で、未経験の人の1日はどう動くのでしょうか。日勤の例で比べてみます。
介護付き有料老人ホームの日勤
・8時半 出勤、夜勤からの申し送り ・9時 居室を回って体調の確認、水分補給 ・9時半 入浴の介助、または排泄の介助 ・11時半 昼食の準備、配膳、食事の介助、口腔ケア ・13時 休憩 ・14時 レクリエーションや体操の見守り、個別の外出の付き添い ・15時 おやつ、水分補給 ・16時 記録の入力 ・17時 夜勤への申し送り、退勤
介護付きのホームでは、入居者全体の生活を、ホームの職員がチームで見ます。未経験の人も、先輩と一緒に入浴や排泄の介助に入り、少しずつ任される範囲を広げていきます。特養に比べると、要介護度の低い入居者も多く、会話やレクリエーションの時間を取りやすいホームもあります。
住宅型有料老人ホームの日勤
・8時半 出勤、申し送り ・9時 安否の確認で居室を回る ・9時半 訪問介護の予定表に沿って、決められた時間に決められた居室へ(資格のある職員) ・10時 生活支援の職員は、居室の清掃、洗濯物の回収、配膳の準備 ・12時 昼食の配膳、見守り ・14時 入居者からの呼び出しへの対応、買い物の代行の受付 ・16時 記録、翌日の予定の確認 ・17時半 申し送り、退勤
住宅型の特徴は、介護が「予定表で区切られている」ことです。訪問介護のサービスは、ケアマネジャーが作ったケアプランにもとづき、「10時から30分、排泄の介助」のように時間と内容が決まっています。予定にない介助を頼まれても、原則としてその場で行うことはできません。
未経験の人にとっては、この仕組みが分かりにくい部分です。「目の前で困っているのに、なぜ手伝ってはいけないのか」と悩む人も多いのですが、これは介護保険のサービスを契約にもとづいて提供しているためです。つまり、手伝わないのは冷たいからではなく、ルールに沿って入居者を守っているということなのです。
どちらが未経験に向いているか
身体介護の技術を早く身につけたいなら、介護付きのほうが経験を積みやすいでしょう。一方、まずは高齢者と接することに慣れたい、体の負担が大きい介助から始めるのは不安だ、という人には、住宅型の生活支援から入る道もあります。どちらが正しいということはなく、自分がどこから始めたいかで選んでよいのです。
ほかの介護の職場と比べたときの違い
未経験の人が介護の仕事を探すと、有料老人ホームのほかに、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、デイサービスなどの求人も目に入ります。同じ「介護職員」でも、職場によって未経験の人が置かれる状況はかなり違います。
特別養護老人ホームとの違い
特養は、原則として要介護3以上の人が入所する施設で、入居者の多くが食事、排泄、移動に介助を必要とします。身体介護の量が多く、未経験の人にとっては体の負担と覚える技術の量が大きい職場です。運営は社会福祉法人が中心で、給与の体系や昇給が安定している一方、研修の形は法人によってさまざまです。
介護付き有料老人ホームは、要介護度の低い人から高い人まで幅広く受け入れているので、介助の量に波があり、会話や生活の支援の比重が特養より大きくなる傾向があります。
介護老人保健施設との違い
老健は、リハビリを受けながら在宅復帰を目指す施設で、医師や看護職、リハビリ職が多く、職種の間の連絡がとても多い職場です。入所と退所が頻繁で、新しい入所者の情報を短期間で覚えることが求められます。
有料老人ホームは「住まい」なので、同じ入居者と長く関わります。顔と名前を覚える負担は老健より小さい一方で、入居者一人ひとりの好みや生活の習慣に合わせることが求められます。
グループホームとの違い
認知症の人が9人を1つの単位として共同で暮らすグループホームは、少人数で、料理や掃除などの家事を入居者と一緒に行うのが特徴です。夜勤は1つの単位を職員1人で見ることが多く、未経験の人がひとりで夜を担当するまでの負担は大きくなりがちです。
有料老人ホームの夜勤は、先ほど触れたように複数の職員で分担する体制が多く、困ったときに同じフロアや隣のフロアの職員に相談できる点で、未経験の人には心理的な負担が小さいと言えます。
デイサービスとの違い
デイサービスは日中だけの職場で、夜勤がありません。送迎や入浴、レクリエーションが中心です。夜勤をしたくない未経験の人には選ばれやすい一方、給与は夜勤手当がない分、施設系より低くなる傾向があります。
有料老人ホームは、夜勤の有無を選べる求人もあります。日勤のみで始めて、慣れてから夜勤に入る、という働き方を相談できるかどうかは、面接で確かめる価値があります。
入ってから慣れるまでの流れ
未経験の人が有料老人ホームに入ってから、ひとり立ちするまでの流れは、多くのホームで次のような形になっています。
入職から1週間:座学と見学
運営会社の研修センターや本社で、介護の基本、感染症の対策、個人情報の扱い、接遇のマナーを学ぶ期間です。民間の会社が運営するホームが多いので、研修の内容が会社ごとに整えられていて、座学から始められるのは、未経験の人にとって心強い点です。
2週目から1か月:先輩との同行
フロアに出て、先輩と一緒に動きます。最初は、入居者の名前と顔、居室の場所、1日の流れを覚えることに集中します。移乗や入浴の介助は、先輩の手順を見て、少しずつ一緒に行います。
1か月から3か月:日勤でのひとり立ち
日勤の決まった業務を、ひとりで任されるようになります。この時期に多いのが、「記録が追いつかない」「入居者に同時に呼ばれて、どちらを先にすればよいか分からない」という悩みです。迷ったら、まず安全に関わるほう(転倒の危険、体調の変化)を優先し、判断がつかないときは先輩か看護職に聞く、と決めておくと落ち着いて動けます。
3か月から半年:夜勤の見学と開始
夜勤のあるホームでは、先輩の夜勤に何回か一緒に入ってから、ひとりで夜勤を担当するようになります。介護付きのホームの夜勤は、入居者50〜60人ほどを介護職員2〜3人で見る体制が珍しくありません。看護職は夜間はオンコール(電話で呼ばれたら対応する)というホームも多いです。
夜勤の1晩の流れ
介護付きのホームの夜勤は、16時半ごろに入り、翌朝9時半ごろまでの長い勤務になることが多いです。夕食と服薬の介助、就寝の準備を終えると、夜間は2時間おきなどの決まった時間に居室を回り、呼吸や寝返りの様子、排泄の状況を確かめます。休憩と仮眠は、ほかの職員と交代で取ります。
未経験の人が最初の夜勤で戸惑うのは、入居者が夜中に起きて歩き回ったり、体調が急に変わったりしたときの判断です。多くのホームでは、夜間の連絡の手順(看護職のオンコールに電話する基準、救急車を呼ぶ基準)が決められています。ひとりで夜勤に入る前に、この手順を先輩と一緒に読み合わせておくと、いざというときに慌てずに済みます。
半年から1年:資格の取得を考える時期
仕事の流れに慣れたら、介護職員初任者研修や実務者研修の受講を考える時期です。資格を取ると、資格手当がついたり、住宅型では訪問介護の身体介護に入れるようになったりと、任される範囲が広がります。
私自身、行政書士として独立する前に、まったく経験のない分野の事務所に転職したことがあります。最初の1か月は、分からないことを聞くたびに「前にも言ったよね」と言われるのが怖くて、聞けずに間違えることを繰り返しました。あるとき先輩から「聞かれないほうが困る」と言われて、メモ帳に質問をためておき、手の空いた時間にまとめて聞くようにしたところ、ずいぶん楽になりました。未経験で入る職場では、分からないことがあるのは当たり前です。聞き方を工夫するほうが、我慢するよりずっと早く慣れます。
未経験がつまずきやすいところと、その対処
慣れるまでの間に、未経験の人がつまずきやすいところを、有料老人ホームならではの事情と合わせて整理します。
腰と体の負担
移乗や入浴の介助は、腰に負担がかかります。厚生労働省は、職場における腰痛予防対策の指針で、介護作業での腰痛予防のために、人を抱え上げる介助を原則として避け、福祉用具を使うことを勧めています。リフトやスライディングボードなどの用具がそろっているかは、ホームによって差があります。入職前に確かめておくとよいでしょう。
業務中の介助で腰を痛めた場合は、労災保険の対象になり得ます。「新人だから」と遠慮して報告しないと、後で請求しにくくなるので、痛めたらその日のうちに上司に報告し、記録に残してください。
入居者や家族からの期待
有料老人ホームは、入居者が費用を払って選んだ住まいです。入居時にまとまった一時金を払っている入居者もいて、サービスへの期待が高くなりがちです。言葉づかいへの指摘や、「前の担当の人はやってくれた」という要望に戸惑う未経験の人は多いです。
要望の中には、ホームの契約の範囲を超えるものもあります。自分だけで判断して引き受けず、「確認してお返事します」と伝えて、上司に相談するのが基本です。カスタマーハラスメントに当たるような言動については、事業者に対策を講じることを義務づける法改正も行われており、ひとりで抱え込む必要はありません。
記録
介護の記録は、職員どうしの引き継ぎの材料であると同時に、入居者や家族への説明の根拠にもなります。未経験の人は、「何を書けばよいか分からない」と悩みがちです。まずは、「いつ、何を見て、何をしたか」を事実だけで書くことを心がけてください。「機嫌が悪かった」ではなく、「昼食を半分残し、『食べたくない』と話された」と書くと、読んだ人に状況が伝わります。
急変や看取り
有料老人ホームは、終の住まいとして看取りまで行うホームも増えています。入居者の急な体調の変化や、亡くなる場面に立ち会うことは、未経験の人にとって大きな負担になります。看取りを行っているホームかどうか、そのときの職員への研修やフォローがあるかは、事前に確かめておきたい点です。
雇われる前に確かめる契約と法律の話
未経験で転職するときこそ、雇用の条件を丁寧に確かめてください。入ってからでは言い出しにくくなります。
労働条件は書面で明示される
事業主は、雇い入れのときに、賃金、労働時間、休日、契約の期間などの労働条件を、書面などで明示することが労働基準法で義務づけられています。2024年4月からは、就業の場所と業務について、将来変わる可能性がある範囲も明示することになりました。
有料老人ホームの運営会社は、複数のホームを持っていることが多いので、「入職後に別のホームへ異動することがあるか」は、この明示の中で確かめられます。つまり、家から近いホームに応募したのに、遠くのホームに配属される可能性があるかどうかを、書面で確認できるということです。
試用期間
試用期間中の給与や手当が、本採用後と違う場合があります。期間の長さと、その間の条件を確かめておきましょう。試用期間であっても、合理的な理由のない解雇は認められません。
資格取得支援の条件
「資格取得支援あり」の求人で、補助を受けたあとに一定期間内に辞めると費用の返還を求める規定を設けている会社があります。労働基準法は違約金の定めを禁じていますが、費用の貸付けと返還の免除という形の制度は、内容によっては有効とされる場合があります。つまり、条件によって判断が分かれる難しい領域です。補助を受ける前に、返還の条件を書面で受け取ってください。
※返還を求められて納得できない場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーや、弁護士に相談してください。
面接で聞かれることと、未経験の伝え方
未経験で有料老人ホームの面接を受けると、ほぼ必ず聞かれる質問があります。面接官が何を知りたいのかを先に理解しておくと、落ち着いて答えられます。
「なぜ介護の仕事をしようと思ったのですか」
未経験の人がいちばん聞かれる質問です。面接官は、立派な理由を求めているわけではありません。「続けられそうか」を確かめたいのです。
家族の介護を経験した、接客の仕事で高齢のお客さんと話すのが好きだった、人の役に立っている実感がほしい。どんな理由でもかまいませんが、「その気持ちが、実際の仕事のどこで活かせると思うか」を一言添えると、具体的に考えている人だと伝わります。
「なぜ有料老人ホームなのですか」
ほかの介護の職場ではなく有料老人ホームを選んだ理由を聞かれます。前の章で触れたように、住まいとして同じ入居者と長く関われること、会話や生活の支援の比重が大きいこと、研修が整っている会社が多いことなどは、理由として自然です。接客業の経験がある人なら、「入居者に心地よく過ごしてもらうための接遇を大切にしているところに惹かれた」と話すと、経験と結びつきます。
「夜勤はできますか」
できる回数を正直に伝えてください。未経験のうちは日勤で慣れたい、という希望も伝えてかまいません。無理に「何回でも入れます」と答えると、入ってから体と生活が追いつかなくなります。
「体力に不安はありますか」
移乗や入浴の介助があるので、腰や膝に不安があるかを聞かれることがあります。持病がある場合、仕事に影響がないなら詳しく話す義務はありませんが、配慮が必要なことがあるなら、先に伝えておくほうが配属の段階で考慮してもらいやすくなります。
前の仕事の経験は、言い換えて伝える
事務の経験は「記録を正確に残せる」、販売の経験は「相手の要望を聞いて、できることとできないことを伝えられる」、飲食の経験は「同時にいくつもの頼まれごとに優先順位をつけて動ける」と言い換えられます。未経験であっても、介護の仕事に通じる力はすでに持っているのです。
求人票と見学で見る点
未経験の人が、有料老人ホームの求人票と見学で確かめたい点をまとめます。
求人票で見る点
・介護付きか、住宅型か(職種名が「生活サポート」などになっていないか) ・無資格の間に担当する業務の範囲 ・入職時の研修の期間と、同行の期間 ・月給に夜勤手当が含まれているか、夜勤の想定回数 ・年間休日の日数(110日前後か、120日前後か) ・資格手当と、資格取得支援の内容 ・異動の可能性(複数のホームを運営しているか)
見学で見る点
・職員が入居者に話しかけるときの言葉づかいと表情 ・リフトなどの福祉用具が実際に使われているか ・新人や未経験の職員が、今どれくらい働いているか ・ナースコールや呼び出しへの対応が落ち着いているか ・職員が休憩を取れている様子があるか
見学のときに、「未経験で入った方は、今どんなお仕事をされていますか」と聞いてみてください。具体的に答えてもらえるホームは、未経験の人を育てた経験があると判断できます。
相場と、未経験から次に進む道
最後に、給与の相場と、未経験から働き始めたあとの道筋を整理します。
介護職の給与は、資格、経験年数、夜勤の回数で大きく変わります。先ほど見た練馬区の求人のように、無資格可でも月給20万円台前半から後半まで幅があります。自分の条件が相場の中でどこにあるのかは、介護職員の年収・単価相場で、地域や経験年数ごとの目安を確かめられます。未経験で入る時点の給与だけでなく、資格を取ったあとにどう変わるかも合わせて見ておくと、ホーム選びの判断材料になります。
有料老人ホームには、看護職も働いています。介護の仕事を続けるうちに看護の道に関心を持つ人もいますし、看護職の方がブランクのあとに有料老人ホームから復帰する例もあります。看護職の働き方と給与の目安は、看護師の年収・単価相場にまとまっています。
未経験で飛び込むこと自体に迷いがある、自分に介護の仕事が合うかどうかを整理したい、という場合は、キャリアの相談を仕事にしている人の力を借りる方法もあります。どんな相談に乗ってもらえるのかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介しています。
介護や在宅ワークの求人の市場を長く見てきた立場から言えば、未経験で入って長く続く人ほど、最初の職場を「給与の額」だけで選んでいません。研修の期間、同行の期間、分からないことを聞ける雰囲気。こうした「慣れるまでの支え」を確かめてから入った人は、最初の3か月を乗り越えやすい傾向があります。
未経験であることは、弱みではありません。前の仕事で身につけた接客の経験や、事務の正確さは、有料老人ホームの仕事でも必ず活きます。施設の種類と契約の中身を知ったうえで選べば、不安の多くは準備で小さくできます。法律も、職場の仕組みも、あなたの味方です。
よくある質問
Q. 未経験で有料老人ホームに入るなら、介護付きと住宅型のどちらがよいですか?
身体介護の技術を早く身につけたいなら、ホームの職員が介護を直接行う介護付きが経験を積みやすいです。まず高齢者と接することに慣れたい場合は、住宅型の生活支援の職員から始める道もあります。ただし住宅型では、併設の訪問介護で身体介護に入るには初任者研修以上の資格が原則必要なので、無資格の間の業務の範囲を確認してから応募しましょう。
Q. 有料老人ホームで、未経験からひとり立ちするまでどれくらいかかりますか?
多くのホームでは、1週間ほどの座学と見学、1か月ほどの先輩との同行を経て、1〜3か月で日勤の業務をひとりで任されます。夜勤のあるホームでは、先輩の夜勤に何回か同行してから、3か月から半年ほどで夜勤を始める流れが一般的です。研修や同行の期間はホームによって違うので、求人票や見学で確かめておくと安心です。
Q. 無資格可の求人で、月給に差があるのはなぜですか?
夜勤手当が月給に含まれているかどうか、想定している夜勤の回数、年間休日の日数、処遇改善の手当の扱いなどが違うためです。月給が高く見えても、夜勤の回数が多い前提の金額であることがあります。求人票で夜勤手当の扱いと回数、年間休日を確認し、分からない場合は面接で内訳を聞いてから比べるのが確実です。
Q. 資格取得支援を受けたあとに辞めると、費用を返さないといけませんか?
会社によっては、一定期間内に辞めた場合に費用の返還を求める規定を設けています。労働基準法は違約金の定めを禁じていますが、費用の貸付けと返還の免除という形の制度は、内容によって有効とされる場合があり、判断が分かれます。補助を受ける前に条件を書面で受け取り、納得できない請求を受けたときは総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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