有料老人ホームで派遣として働く|直接雇われる場合との差と、合う場面

中西 直美
中西 直美
有料老人ホームで派遣として働く|直接雇われる場合との差と、合う場面

この記事のポイント

  • ✓有料老人ホームで派遣として働くときに知っておきたいことを
  • ✓職場の中で何が起きているかから整理しました
  • ✓ホームが派遣を使う理由

「派遣で有料老人ホームに行くのって、実際どうなんでしょう」

このご相談、本当に多いんです。

子育てが一段落して、時間を決めて働きたい。 前の職場の人間関係に疲れて、しばらく深入りせずに働きたい。 いきなり正社員で入るのは不安だから、まず職場を見てみたい。

理由は人それぞれですが、どの方も同じところで迷っています。 「派遣だと、直接雇われるより損をするのではないか」 「派遣だからと、職場で肩身の狭い思いをするのではないか」

大丈夫ですよ。 派遣という働き方には、はっきりした仕組みと、向いている場面があります。

それを知ったうえで選べば、派遣は「仕方なく選ぶ働き方」ではなく、「今の自分に合った働き方」になります。

私はキャリアコンサルタントとして、介護や医療の職場で働き方を見直したい方のご相談を受けています。 この記事では、有料老人ホームという職場の中で、派遣の人がどんな位置に置かれ、何を任されるのかを、直接雇われる場合と比べながらお話しします。

有料老人ホームで派遣が使われている理由

まず、有料老人ホームがなぜ派遣の人を受け入れているのかを見ておきましょう。 ここを知ると、派遣で入ったときに、ホームが何を期待しているのかが見えてきます。

人員の基準を、24時間守らなければならない

介護付き有料老人ホームは、介護保険の特定施設入居者生活介護の指定を受けていて、要介護の入居者3人に対して、看護職員と介護職員を合わせて1人以上を置くことが決められています。 夜間も、介護職員を常に1人以上置かなければなりません。

職員が急に辞めたり、産休や育休に入ったりすると、この基準を守るために、すぐに人を補う必要があります。 正社員の採用には時間がかかるので、その間を派遣で埋める、というのがよくある使われ方です。

民間の会社が運営していることが多い

有料老人ホームは、株式会社などの民間の事業者が運営していることが多く、人の配置を柔軟に考える傾向があります。 介護の派遣を扱う会社の求人の紹介でも、有料老人ホームについて次のように書かれています。

有料老人ホームは、主に60歳以上の自立高齢者が入居する施設です。施設によって部屋の形態や入居要件が異なり、なかにはホテルのようなサービスを提供する施設もあります。有料老人ホームの運営は、株式会社が行っているケースが多いため、教育制度がしっかりしており、介護の経験がない人でも安心してチャレンジできます。また、同じ施設で働く同僚の動きを見て勉強することができるため、介護の知識をしっかりと取り込むことができ、将来にとても役立ちます。レバウェル介護では、求人の掲載はもちろん、入職するまでのサポートをいちから徹底的におこなっているので、どなたでも安心してご応募いただけます。 出典: job.kiracare.jp

実際には、有料老人ホームには自立の人だけでなく、介護が必要な人も多く入居しています。 ホームの種類と入居者の状態によって、派遣の人に求められる介護の量は大きく変わります。

住宅型のホームにも、派遣の求人がある

外部の介護サービスを使う住宅型有料老人ホームでも、派遣の募集は見られます。

明るく開放感あふれる住宅型有料老人ホーム。やりがいを感じられる環境でスキルアップを目指せる介護派遣です。 出典: job.kiracare.jp

住宅型の場合、同じ建物に併設された訪問介護事業所の仕事を担うことが多く、身体介護に入るには原則として介護職員初任者研修以上の資格が必要です。 派遣の求人でも、資格の条件をよく確かめてくださいね。

派遣という働き方の仕組み

次に、派遣という働き方の基本を整理します。 仕組みを知っておくと、困ったときに誰に相談すればよいかが分かり、気持ちがずっと楽になります。

雇い主は、派遣会社

派遣で働くとき、あなたと雇用契約を結ぶのは派遣会社です。 給与を払うのも、社会保険に加入させるのも、有給休暇を与えるのも、派遣会社です。

一方、毎日の仕事の指示を出すのは、派遣先である有料老人ホームです。 つまり、「雇っている会社」と「指示を出す職場」が分かれている。これが派遣の特徴です。

この仕組みのおかげで、ホームで困ったことがあっても、派遣会社の担当者に相談して、間に入ってもらうことができます。 直接雇われている場合には、なかなか持てない相談先です。

働ける期間には決まりがある

労働者派遣法では、同じ派遣先の同じ組織の単位(たとえば同じホームの介護のフロア)で、同じ派遣の人が働けるのは原則として3年までとされています。 派遣会社に無期で雇われている人や、60歳以上の人などは、この制限の対象外です。

30日以内の短い派遣は、原則として禁止

働く期間が30日以内の日雇いの派遣は、原則として禁止されています。 ただし、60歳以上の人、昼間の学生、副業として働く人で本業の収入が一定以上の人などは、例外として認められています。

介護の単発の仕事を探すときは、派遣ではなく、別の形の募集になっていることが多いのはこのためです。

待遇の決め方にもルールがある

2020年4月から、派遣で働く人の待遇について、派遣先の社員との不合理な差をなくすためのルールが始まりました。 派遣会社は、派遣先の社員と比べて待遇を決める方法か、派遣会社の労使協定で賃金の水準を決める方法のどちらかをとります。

介護の派遣では、労使協定の方法をとる派遣会社が多いです。 この場合、地域や職種の一般的な賃金の水準以上になるように時給が決められ、退職金に当たる分も含めて考えることになっています。

紹介予定派遣という選び方

派遣の期間が終わったあとに、派遣先に直接雇われることを前提にした「紹介予定派遣」という形もあります。 派遣の期間は最長で6か月です。

「入ってみないと職場の雰囲気は分からない」という不安をお持ちの方には、この形がとても合っています。 実際に働いてみて、合わなければ直接雇用を断ることもできます。

派遣で入ったときの1日と、任される範囲

ここからは、派遣で有料老人ホームに入ったとき、職場の中で何が起きるのかを見ていきます。

最初の数日は、ホームのやり方を覚える

派遣の人は、介護の経験を前提に受け入れられることが多く、長い研修の期間は設けられていないのが一般的です。 初日から数日は、先輩の職員と一緒に動きながら、入居者の名前、居室の場所、ホームの手順を覚えます。

有料老人ホームは、運営する会社ごとに、記録の書き方、入浴の手順、言葉づかいの決まりが違います。 前の職場で身につけたやり方と違っても、まずはホームのやり方に合わせることが、派遣の人に一番求められていることです。

日勤の1日の例(介護付き)

・8時半 出勤、申し送りを聞く ・9時 居室を回って、体調の確認と水分補給 ・9時半 入浴の介助 ・11時半 昼食の配膳、食事の介助、口腔ケア ・13時 休憩 ・14時 レクリエーションの見守り、排泄の介助 ・15時 おやつ、水分補給 ・16時 記録 ・17時 申し送り、退勤

流れそのものは、直接雇われている職員と変わりません。 違いが出るのは、仕事の「範囲」です。

任される範囲は、派遣契約で決まっている

派遣の人がホームで行う仕事の内容は、派遣会社とホームの間の契約で決められています。 介護業務として契約されていれば、食事、排泄、入浴などの介助、見守り、記録が中心になります。

一方で、次のような仕事は、派遣の人には任されないか、限られることが多いです。

・フロアのリーダーや、新人の指導 ・事故防止や感染症対策などの委員会 ・家族との面談や、ケアプランの会議での発言 ・勤務表の作成や、物品の発注

「責任の重い仕事を任されない」ことを、物足りなく感じる方もいます。 でも、見方を変えると、介護そのものに集中できる、ということでもあるんです。

記録のシステムと情報の扱い

有料老人ホームでは、タブレットやパソコンで記録を入力するところが増えています。 派遣の人にも入力の権限が与えられるのが一般的ですが、閲覧できる情報の範囲が限られていることもあります。

入居者の個人情報を扱うので、派遣で入る前に、守秘の誓約書を求められることもあります。 これは、派遣の人を疑っているのではなく、どの職員にも同じように求められていることです。

夜勤専従の派遣

有料老人ホームの派遣には、夜勤だけを担当する「夜勤専従」の募集も多くあります。 夜勤は1回あたりの給与が高く、月に数回入るだけで一定の収入になるので、昼間は別のことをしたい方に選ばれています。

ただし、夜勤は職員の数が少なく、判断を求められる場面も増えます。 介護付きのホームでは、入居者50〜60人ほどを介護職員2〜3人で見て、看護職は電話で呼ばれたら対応するオンコール、という体制も珍しくありません。 夜勤の経験がない方は、いきなり夜勤専従を選ぶより、日勤で慣れてからにしたほうが安心です。

直接雇われる場合との差

では、派遣と、ホームに直接雇われる場合とで、何が違うのでしょうか。 よく比べられる点を、表にまとめました。

項目 派遣 直接雇用(正社員・パート)
雇い主 派遣会社 ホームの運営会社
給与の形 時給が中心 月給または時給
時給の水準 同じ地域のパートより高めのことが多い 正社員は月給、パートは地域の相場
賞与 ないことが多い 正社員はあることが多い
昇給・昇格 時給の見直しはあるが、役職への登用は基本的にない 経験や資格で昇給・昇格がある
仕事の範囲 契約で決まった業務 リーダー、委員会、指導なども含む
相談先 派遣会社の担当者 ホームの上司、本社の窓口
働ける期間 同じ職場は原則3年まで 期間の定めがない、または更新
職場を変えるとき 派遣会社を通じて次の職場を紹介してもらえる 自分で転職活動をする

時給は高く見えるけれど

有料老人ホームの派遣の求人を見ると、介護職で時給1,600円前後、看護職で時給2,000円を超える募集が、東京都内ではよく見られます。 同じ地域のパートの時給より高いことが多いです。

ただ、正社員の賞与や、長く勤めたときの昇給、退職金を含めて考えると、年間の収入では逆転することもあります。 「時給が高いから得」と決めてしまう前に、1年、3年という単位で比べてみてくださいね。

人との距離の取り方が違う

派遣の人は、委員会や会議に入らないことが多く、職場の中の人間関係に深く巻き込まれにくい立場です。 これは、前の職場の人間関係に疲れた方にとっては、大きな安心材料になります。

一方で、職場に長くいても「派遣さん」と呼ばれ、仲間として迎えられている実感を持ちにくい、というご相談もあります。 どちらを重く感じるかは、今のあなたの状態によって変わります。

処遇改善の手当の届き方

介護の職場には、国の処遇改善の加算があり、直接雇われている介護職員の給与に反映されています。 派遣の人への反映のしかたは、ホームと派遣会社の取り決めによって違います。 時給の中に含まれていることもありますが、直接雇われている職員と同じ形で届くとは限りません。

気になる場合は、派遣会社の担当者に「処遇改善の分は時給に含まれていますか」と聞いてみてください。

看護職が派遣で有料老人ホームに入る場合

看護職の方からも、派遣についてのご相談をよく受けます。 ここは、法律の決まりが関わるので、少し丁寧にお話ししますね。

労働者派遣法では、病院や診療所などでの医師や看護師の業務は、原則として派遣が禁止されています。 介護老人保健施設や介護医療院も、この禁止の対象に含まれます。 ただし、紹介予定派遣や、産休・育休などの代わりの場合は例外として認められています。

一方、有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの社会福祉の施設での看護業務は、派遣が認められています。 実際に、有料老人ホームでの看護職の派遣の求人は多く見られます。

【仕事内容】<求人概要>足立区/有料老人ホーム/派遣/准看護師未経験でも応募OKです!<仕事内容>有料老人ホームでの看護業務...【PR・職場情報など】介護付有料老人ホームでの看護職・派遣の求人です。 出典: 求人ボックス

有料老人ホームの看護職は、服薬の管理、体調の観察、医師の訪問診療への同行、介護職への助言が中心です。 病院と違って医師が常にいるわけではないので、体調の変化に気づいて、医師や家族に連絡する判断が求められます。

病院からの転職で、夜勤の少ない働き方を探している方や、ブランクのあとに復帰したい方にとって、有料老人ホームの派遣は入りやすい選択肢の1つです。

派遣が合う場面と、合わない場面

ここまでの内容をもとに、派遣が合う場面と合わない場面を整理します。 ご相談を受けていて感じるのは、同じ人でも、人生の時期によって答えが変わるということです。

派遣が合う場面

・子育てや家族の介護で、働ける曜日や時間を決めておきたい ・ブランクがあり、まずは現場の感覚を取り戻したい ・前の職場の人間関係に疲れていて、しばらく距離を置いて働きたい ・いくつかのホームを見て、自分に合う職場を探したい ・夜勤専従で、短い日数で収入を確保したい ・紹介予定派遣で、職場を確かめてから直接雇用に進みたい

こういう相談がよくあります。 「前の施設でリーダーを任されて、気づいたら毎晩眠れなくなっていた。介護の仕事は好きなのに、職場に行くのが怖い」

この方は、派遣で有料老人ホームの日勤に入り、半年ほど介護そのものに集中する時間を持ちました。 委員会も指導もない働き方の中で、「やっぱり介護は好きだ」という気持ちを取り戻し、その後、紹介予定派遣を使って別のホームに直接雇われています。

派遣が合わない場面

・リーダーや主任を目指して、キャリアを積み上げたい ・同じ職場で長く、入居者と深い関係を築きたい ・賞与や退職金を含めて、長期的な収入を安定させたい ・新しい職場に毎回慣れることが、大きな負担になる

とくに最後の点は、見落とされがちです。 派遣の期間が終わるたびに新しい職場に移るのは、思っている以上に心のエネルギーを使います。

私自身、会社員を辞めて独立する前、数か月ごとに職場が変わる働き方をしていた時期がありました。 仕事そのものより、毎回「はじめまして」から関係を作り直すことに疲れてしまい、あとで振り返ると、その疲れを自分でも気づかないまま抱えていました。 向き不向きは、能力ではなく、そのときの心の余裕で決まるんです。

派遣会社と求人を選ぶときに確かめること

最後に、派遣で有料老人ホームに入るときに、派遣会社と求人で確かめたいことをまとめます。

派遣会社で確かめること

・介護や看護の派遣を専門に扱っているか ・担当者が、派遣先のホームを実際に訪ねたことがあるか ・困ったときに、どれくらいの早さで連絡がつくか ・社会保険の加入の条件と、有給休暇の付与のしかた ・資格取得の講座や、研修の支援があるか

派遣会社の担当者は、あなたとホームの間に入ってくれる大切な存在です。 登録の面談で、「前の職場ではこういうことがつらかった」と正直に伝えておくと、合わないホームを避けて紹介してもらいやすくなります。

登録から働き始めるまでの流れ

派遣で有料老人ホームに入るまでの流れは、多くの派遣会社で次のような順番になっています。

・派遣会社に登録し、担当者と面談する(経験、資格、希望の曜日や時間、通勤の範囲を伝える) ・担当者から、条件に合うホームの紹介を受ける ・派遣先のホームの見学や、顔合わせをする ・派遣会社と雇用契約を結び、就業の条件を書面で受け取る ・働き始める

派遣では、派遣先が事前に面接をして人を選ぶことは法律で認められていないため、「顔合わせ」や「職場見学」という形で、お互いに雰囲気を確かめる場が設けられます。 紹介予定派遣の場合は、直接雇用を前提にしているので、面接が行われることがあります。

顔合わせのときは、緊張しなくて大丈夫です。 ホームの側も、あなたが安心して働けるかを気にしています。 入居者の方の様子や、夜勤の体制など、気になることは、この場で担当者を通じて聞いておきましょう。

求人で確かめること

・介護付きか、住宅型か ・担当する業務の範囲(身体介護が含まれるか、夜勤があるか) ・日勤と夜勤の時給、夜勤1回あたりの金額 ・派遣の期間と、更新の見込み ・紹介予定派遣かどうか ・ホームまでの交通費の支給

職場見学で確かめること

派遣でも、働き始める前に、派遣先のホームを見学できることがあります。 職員が入居者に話しかけるときの口調、フロアの落ち着き、派遣の人がほかにも働いているかを見ておくと、入ってからの様子が想像しやすくなります。

派遣で入った職場で、気持ちを保つために

派遣で働く方のご相談で、とても多いのが、仕事の中身ではなく「気持ち」の話です。 ここでは、よく聞くお悩みと、私がお伝えしている考え方をお話しします。

「派遣さん」と呼ばれるのがつらい

名前ではなく「派遣さん」と呼ばれると、自分がその場にいないような気持ちになりますよね。 その感覚は、とても自然なものです。

多くの場合、呼ぶ側に悪気はありません。 入れ替わりのある立場の人の名前を覚えきれていないだけ、ということがほとんどです。

名札をはっきり見える位置につける。 申し送りのときに、「今日から入る〇〇です」と自分から名乗る。 それだけで、名前で呼ばれるまでの時間はずっと短くなります。

前の職場のやり方と違って、もやもやする

経験のある方ほど、「前のホームのほうが安全だった」「このやり方は入居者さんにとってよくない」と感じる場面があります。

気づいたことを伝えるのは、悪いことではありません。 ただ、派遣で入ってすぐに意見を言うと、「来たばかりの人に言われたくない」と受け取られてしまうこともあります。

安全に関わること(転倒の危険、誤嚥の危険など)は、その場で職員に伝える。 それ以外のやり方の違いは、派遣会社の担当者に相談して、伝え方を一緒に考えてもらう。 この2つを分けておくと、あなた自身が責任を1人で背負わずに済みます。

仲間に入れない寂しさ

委員会にも会議にも入らない。 休憩室で、職員どうしの話についていけない。

派遣の立場では、こうした寂しさを感じることがあります。

職場の中に、1人でいいので、あいさつと短い会話ができる相手を作ってみてください。 心理学では、人とのつながりの「数」より、安心して話せる相手が「いるかどうか」が、心の支えになると言われています。 つまり、全員と仲良くなる必要はないんです。

契約の終わりが近づいて不安になる

派遣の期間の終わりが近づくと、「次の仕事は見つかるだろうか」と不安になりますよね。 不安が大きくなる前に、終わりの1か月前には、派遣会社の担当者に次の希望を伝えておきましょう。

更新の見込みがあるのか、ないのか。 分からないまま待つのが、いちばん心を消耗させます。

派遣から直接雇用に移るとき

派遣で働いているうちに、「このホームで長く働きたい」と思うことがあります。 ここでは、派遣から直接雇われる働き方に移るときに知っておきたいことをお話しします。

ホームから声をかけられたとき

働きぶりが評価されて、ホームから「うちで直接働きませんか」と声をかけられることがあります。 とても嬉しいことですよね。

ただ、派遣会社との契約の中で、派遣先がその派遣の人を直接雇う場合の取り決めが定められていることがあります。 自分だけで話を進めずに、まず派遣会社の担当者に相談してください。 これは、あなたとホームの両方を、あとのトラブルから守るための手順です。

紹介予定派遣なら、最初から移る前提

紹介予定派遣で入った場合は、派遣の期間が終わる時点で、あなたとホームの双方が合意すれば、直接雇用に移ります。 派遣の期間中に、直接雇われたあとの給与、勤務時間、夜勤の回数、担当する業務の範囲を、書面で確かめておきましょう。

派遣のときは任されなかったリーダーや委員会の仕事が、直接雇用になると加わることがあります。 「今と同じ働き方が続く」と思い込まずに、何が変わるのかを聞いておくと安心です。

直接雇用に移ると変わること

・時給から月給に変わり、月ごとの収入が安定しやすくなる ・賞与や昇給、退職金の対象になることがある ・処遇改善の手当が、給与の中で明確に示される ・勤務表の希望を出す順番や、夜勤の割り当てが、ほかの職員と同じになる ・異動の可能性がある会社では、別のホームに配属されることもある

とくに最後の点は、複数のホームを運営している会社で起こりやすいことです。 労働条件を明示する書面には、就業の場所が将来変わる可能性の範囲も書かれることになっているので、必ず目を通してください。

移るかどうか迷ったら

時給が下がる、夜勤の回数が増える、責任が重くなる。 直接雇用に移ることで、失うものもあります。

迷ったときは、「この職場で1年後、自分はどんな顔で働いていたいか」を思い浮かべてみてください。 その姿に近づくのが、派遣のままなのか、直接雇用なのか。 答えは、条件の表の中ではなく、あなたの気持ちの中にあることが多いんです。

相場と、次の働き方を考える材料

派遣か、直接雇用か。 迷ったときは、まず今の自分の条件が、相場の中でどこにあるのかを知ることから始めてみてください。

介護職の給与は、資格や経験年数、夜勤の有無で大きく変わります。 直接雇用の場合の目安は、介護職員の年収・単価相場で、地域や経験年数ごとに確かめられます。 派遣の時給と比べるときは、賞与や昇給を含めた年間の金額で見ると、判断を誤りにくくなります。

看護職の方は、有料老人ホームと病院、訪問看護の間での給与の違いを、看護師の年収・単価相場で比べられます。

働き方を1人で決めるのが難しいときは、話を聞いてくれる相手がいるだけで、考えが整理されることがあります。 キャリアの相談を仕事にしている人がどんな支援をしているのかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介しています。 相談を受ける側の資格については、キャリアコンサルタントの解説にまとまっています。

介護や在宅ワークの求人の市場を長く見てきた運営者の立場から言えば、派遣で働く人のうち長く介護の仕事を続けている人ほど、派遣を「つなぎ」ではなく「期間を区切った選択」として使っています。 ブランクを埋める半年、職場を見極める半年、心を休める半年。 目的と期間を決めて派遣を選んだ人は、その先の直接雇用でも、自分に合う職場を選べている傾向があります。

派遣は、損な働き方でも、逃げの働き方でもありません。 今のあなたに必要なものが、時間の自由なのか、職場との距離なのか、それとも長く安定して積み上げることなのか。 それが分かれば、答えは自然に見えてきます。

あなたは一人じゃありません。 迷ったら、派遣会社の担当者にも、周りの人にも、遠慮なく頼ってくださいね。

よくある質問

Q. 有料老人ホームの派遣は、未経験でも働けますか?

介護職の派遣は、経験者を前提にした募集が多いものの、未経験や無資格で応募できる求人もあります。ただし、派遣では長い研修の期間が設けられていないことが多く、初日から数日で現場の流れを覚えることが求められます。住宅型のホームで訪問介護の身体介護に入るには、原則として初任者研修以上の資格が必要なので、業務の範囲と資格の条件を確かめてから選びましょう。

Q. 派遣と直接雇用では、どちらが収入は多いですか?

時給だけを見ると、派遣は同じ地域のパートより高いことが多いです。一方で、正社員には賞与や昇給、退職金があることが多く、年間や数年単位の収入では直接雇用が上回ることもあります。夜勤の回数、処遇改善の手当の反映のしかた、社会保険の加入なども含めて、1年、3年という単位で比べるのが確実です。

Q. 看護師は有料老人ホームで派遣として働けますか?

働けます。病院や診療所、介護老人保健施設などでの看護業務は原則として派遣が禁止されていますが、有料老人ホームなどの社会福祉の施設での看護業務は派遣が認められています。服薬の管理、体調の観察、訪問診療への同行、介護職への助言が中心で、夜勤の少ない働き方やブランクからの復帰を考えている方に選ばれています。

Q. 派遣で同じ有料老人ホームに何年まで働けますか?

労働者派遣法では、同じ派遣先の同じ組織の単位で、同じ派遣の人が働けるのは原則として3年までです。派遣会社に無期で雇われている人や60歳以上の人などは、この制限の対象外になります。長く同じホームで働きたい場合は、派遣の期間のあとに直接雇われることを前提にした紹介予定派遣を選ぶ方法もあります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月7日最終更新:2026年9月22日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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