扶養内で働くために知っておきたい条件


この記事のポイント
- ✓税金の扶養と社会保険の扶養で基準がまったく違います
- ✓106万円と130万円の壁
- ✓2026年10月に変わる要件
まず、安心してください。扶養内で働く条件がややこしく感じるのは、皆さんの理解が足りないからではありません。「扶養」と一言で呼ばれているものが、実は税金の話と社会保険の話という別々の制度を指していて、それぞれ基準額も判定のしかたも違うからです。しかも2026年から2027年にかけて、社会保険の側の条件が段階的に変わります。
この記事では、扶養内条件を「税金の扶養」と「社会保険の扶養」の2本立てに分けて整理します。金額だけでなく、何月から数えるのか、在宅ワークの収入はどう扱うのか、一時的に超えてしまったらどうなるのかまで書きます。数字はすべて、日本年金機構、厚生労働省、国税庁、全国健康保険協会の公開情報で確認したものです。
扶養には2種類ある。まずここを分けて考える
扶養内条件を調べていて混乱する最大の原因は、税金の扶養と社会保険の扶養を1本の話だと思ってしまうことです。この2つは、管轄する役所も、判定する期間も、超えたときに起きることもすべて違います。
税金の扶養は、所得税と住民税の話です。配偶者や子どもの年間の所得が一定額以下であれば、扶養している側の税金が安くなります。判定するのは1月1日から12月31日までの1年間の実績で、年が明けてから確定します。超えた場合に起きるのは「扶養している側の税金が増える」ことであり、超えた本人が何かを支払うわけではありません。
社会保険の扶養は、健康保険と年金の話です。こちらは、扶養に入っている人自身が保険料を払わずに健康保険証を使え、国民年金にも加入したことになる仕組みです。判定するのは過去の実績ではなく、これから1年間の見込み収入です。超えた場合に起きるのは「扶養から外れて、自分で健康保険料と年金保険料を払うことになる」ことで、負担はそのまま本人に来ます。
家計への影響が大きいのは、圧倒的に社会保険の側です。税金の扶養を外れても、増える税額は数万円の範囲に収まることが多い。一方、社会保険の扶養を外れると、年間で20万円前後の保険料負担が新たに発生することもあります。優先して気にすべきはどちらか、と聞かれたら答えは社会保険です。
もうひとつ、会社独自の「配偶者手当」という3つめの壁があります。これは法律ではなく各社の就業規則で決まるもので、支給の条件に年収の上限が設けられていることがあります。厚生労働省は企業に見直しを促していますが、まだ残っている会社もあります。配偶者の勤務先の規程は、自分で確認するしかありません。
社会保険の扶養に入れる条件。130万円の中身
社会保険の扶養、正式には「被扶養者」に認定される条件を見ていきます。日本年金機構は、認定の要件をこう整理しています。
(1)収入要件 年間収入(※1)130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ 同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(※2) 別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満 出典: nenkin.go.jp
ここで押さえてほしい点が4つあります。
第一に、この130万円は「今年1月からいくら稼いだか」ではありません。認定を受ける時点から先の1年間の見込み額です。だから月々の収入で判断され、目安として給与収入なら月額108,333円以下、雇用保険の給付を受けている場合は日額3,611円以下であれば要件を満たすとされています。月10万円で働いていた人が9月から急に月15万円になれば、その時点で見込み年収は130万円を超えると判断されうるということです。
第二に、同居している場合は「収入が扶養している人の収入の半分未満」という条件も同時に満たす必要があります。夫の年収が240万円で妻が125万円なら、130万円未満という条件はクリアしていても半分未満という条件を満たしません。ただし、半分以上でも扶養者の年収を上回らない場合で、生計の中心をどちらが担っているかを総合的に見て認められることもあります。
第三に、年齢によって金額が変わります。60歳以上または障害がある方は180万円未満。そして2025年10月1日以降に認定を受ける19歳以上23歳未満の方は、150万円未満に引き上げられました。大学生の子どもをアルバイトさせている家庭にとっては、これは実務上とても大きな変更です。
第四に、収入に含まれるものの範囲が広いことです。給与だけでなく、雇用保険の失業給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も収入として数えます。非課税だから関係ないだろうと考えて申告せずにいると、後から扶養を遡って外されることがあります。
106万円の壁とは何だったのか。2026年10月に変わること
130万円とは別に、「106万円の壁」と呼ばれるものがあります。これは扶養の認定基準ではなく、パートやアルバイトで働く人が勤務先の健康保険と厚生年金に自分で加入することになる基準です。加入すれば扶養から外れます。
厚生労働省は、この仕組みの現状と今後をこう説明しています。
なお、令和7(2025)年の 年金制度改正法 により、所定内賃金が月額8.8万円以上(年収約106万円)とする 賃金要件 については、最低賃金の状況を踏まえ令和7(2025)年6月から3年以内に 撤廃 されるとともに、従業員50人超の企業を対象とする 企業規模要件 については、 段階的に縮小・撤廃 されることとなります。 出典: mhlw.go.jp
現在のところ、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く方が対象です。そのうえで、週の所定労働時間が20時間以上であることなどの条件をすべて満たすと、健康保険と厚生年金の加入対象になります。
ここから先が重要な変更点です。日本年金機構は、月額8.8万円という賃金の条件について「最低賃金以上で週20時間以上働く場合は、所定内賃金が月額8.8万円以上となるため、この要件は令和8年10月に撤廃されます」と案内しています。令和8年10月、つまり2026年10月です。さらに、企業の範囲についても「令和9年10月からは、企業等の範囲が『厚生年金保険の被保険者数が36人以上の企業等』に拡大されます」とされています。
これが何を意味するか、はっきり書きます。2026年10月以降は、賃金がいくらかではなく「週20時間以上働いているかどうか」が実質的な分かれ目になります。106万円という数字を基準に勤務日数を調整してきた方は、判断の軸を時給ベースの金額から労働時間に切り替える必要があります。
また、2026年10月からは、最低賃金の減額特例の対象となる方が健康保険と厚生年金に任意で加入できる制度も始まります。なお、2か月以内の期間を定めて雇われる方や臨時に使用される方などは、そもそも加入の対象から除かれます。
税金の扶養内条件。2026年分から金額が動く
ここから税金の話に移ります。こちらは2025年と2026年で大きく金額が変わったので、古い情報が残っているサイトを見て混乱しないよう注意してください。
国税庁の扶養控除の説明では、扶養親族に該当する要件として「年間の合計所得金額が58万円以下(給与のみの場合は給与収入が123万円以下)」とされ、そのうえで「令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用される金額は『62万円以下』です」と注記されています。給与収入に直すと136万円以下です。
長く「103万円の壁」と呼ばれてきたものが、2025年分(令和7年分)に123万円へ、2026年分(令和8年分)に136万円へと引き上げられたことになります。配偶者控除の要件も同じ動きで、配偶者の合計所得金額が令和7年分は58万円以下、令和8年分からは62万円以下、給与のみなら136万円以下です。
もうひとつ、本人に所得税がかからない年収の上限も動いています。国税庁の給与所得控除の表では、令和8年分と令和9年分は給与収入220万円までの給与所得控除額が74万円とされています。基礎控除は、合計所得金額132万円以下の方で令和8年分と令和9年分は104万円です。この2つを足すと178万円。つまり、給与収入が178万円までなら所得税はかからない計算になります(令和7年分は給与所得控除65万円と基礎控除95万円で160万円でした)。
ただし、注意点が2つあります。ひとつは、これが所得税の話であって住民税は別だということ。住民税が非課税になる基準は市区町村ごとに違うので、金額は住んでいる自治体の課税課に確認してください。もうひとつは、本人に税がかからないことと、配偶者や親が控除を受けられることは別の話だということです。控除の側の基準は136万円(令和8年分)であり、178万円まで働けば扶養控除や配偶者控除は使えなくなります。
なお、19歳以上23歳未満の子どもを扶養している場合の特定扶養親族の控除額は63万円と大きく、所得の要件を超えると親の税負担が一気に増えます。子どものアルバイト収入は、家計全体で見る必要があります。
在宅ワークや業務委託の場合、収入はどう数えるのか
パートやアルバイトではなく、在宅ワークや業務委託で報酬を受け取っている方の扶養判定は、給与とは数え方が違います。ここを知らずに損をしている方が多いので、丁寧に書きます。
社会保険の扶養では、自営業や業務委託による収入について「当該事業遂行のための必要経費を控除した額」で判断するとされています。つまり、受け取った報酬の総額そのままではなく、その仕事をするために実際にかかった費用を引いた後の金額で見ます。年間150万円の報酬を受け取っていても、業務に必要なソフトウェアの利用料、通信費、機材費などの経費が25万円あれば、判定上は125万円になる可能性があります。
ただし、ここは健康保険の運営主体によって扱いが分かれる部分です。協会けんぽと健康保険組合では、どこまでを必要経費と認めるかの基準が違うことがあります。所得税の確定申告で認められる経費の範囲と、健康保険が認める範囲は必ずしも一致しません。判定に必要な書類は直近の確定申告書の写しなので、申告の内容がそのまま判断材料になります。金額が境界に近いときは、配偶者の勤務先を通じて、加入している健康保険に事前に確認してください。
税金の側も、給与とは計算が変わります。業務委託の報酬は事業所得または雑所得として扱われ、給与所得控除は使えません。代わりに実際の経費を差し引きます。扶養控除や配偶者控除の要件は「合計所得金額」で判定されるので、報酬から経費を引いた後の金額が基準になります。令和8年分なら62万円以下です。給与の136万円という数字は、給与所得控除を引いた後に62万円になる収入額から逆算したものなので、業務委託の方がこの136万円をそのまま当てはめると判断を誤ります。
在宅の仕事を始めたばかりの方には、まず帳簿をつける習慣を作ることをおすすめします。経費を記録していなければ、経費を引いた額で判定してもらうこともできません。青色申告を選ぶかどうかは事業の規模次第ですが、収支の記録そのものは規模に関係なく必要です。
一時的に超えてしまったとき、どうなるのか
皆さんが心配されるのは、年末の繁忙期に頼まれて残業した結果、うっかり基準を超えてしまうケースだと思います。ここには救済の仕組みがあります。
厚生労働省は、被扶養者の認定について次のように説明しています。毎年の被扶養者認定の時に、人手不足による労働時間の延長などで一時的に年収が130万円以上になった場合には、過去の課税証明書や給与明細書、雇用契約書などに加えて、一時的な収入である旨の事業主の証明を添付することで、原則として連続2回までは引き続き扶養に入り続けることができます。この取扱いは恒久化されています。
大事なのは「連続2回まで」という上限と、「事業主の証明が要る」という手続きです。3年連続で超えれば、もう一時的とは言えないと判断されます。また、証明を出すのは勤務先なので、自分だけで完結する手続きではありません。超えそうだと分かった時点で、早めに勤務先に相談しておくのが現実的です。
もうひとつ、2026年4月1日以降の認定から使えるようになった仕組みがあります。収入が給与収入のみである場合、労働契約の内容(基本給や諸手当など)によって見込まれる年間収入が130万円未満であり、他に収入が見込まれないなら、原則として被扶養者に該当するものとして扱われるというものです。判定に労働条件通知書や雇用契約書を使うので、実際の振込額が月ごとに多少ぶれても、契約上の条件で見てもらえます。
反対に、基準を超えた状態を放置した場合はどうなるか。正直に書きますが、これは面倒なことになります。後から扶養を遡って外され、その期間に健康保険証を使って受けた医療費のうち、健康保険が負担した分を返すよう求められることがあります。さらに、その期間分の国民健康保険料と国民年金保険料をさかのぼって納めることにもなります。気づいた時点で、配偶者の勤務先に申し出てください。
扶養内で働くメリットと、超えたときに起きること
扶養内に収めるメリットは明確です。社会保険の扶養に入っている間は、健康保険料も年金保険料も払わずに、健康保険の給付を受けられ、国民年金に加入した扱いになります。将来の老齢基礎年金にもその期間が反映されます。保険料の負担がゼロで保障だけがある状態なので、金銭的には有利です。
一方、超えたときに何が起きるかも、冷静に見ておく必要があります。ここは2つのルートに分かれます。
ひとつは、勤務先の社会保険に加入するルートです。この場合、保険料は会社と折半なので負担は半分で済み、しかも保障が厚くなります。日本年金機構は「厚生年金保険に加入すると、年金が『2階建て』になり年金額が増えます」と説明しています。加えて、病気やけがで働けないときの傷病手当金は、休んだ期間のうち最初の3日を除き4日目から最大1年6か月、給与の3分の2の金額を受け取れます。出産で休むときの出産手当金は、産前42日から産後56日までの期間について給与の3分の2です。国民健康保険にはこれらの給付がありません。
もうひとつは、勤務先の社会保険に入れず、国民健康保険と国民年金に自分で加入するルートです。こちらは全額自己負担で、保障の内容も変わりません。この形になるのがいちばん不利です。週20時間未満で複数の仕事を掛け持ちしている方などが当てはまります。
だから、超えるなら中途半端に超えないことです。手取りが減る領域を抜けきるまで働くか、扶養内に収めるか。どちらかにはっきり寄せるほうが、家計としては合理的です。目安になる金額は、配偶者の年収、住んでいる自治体の保険料率、子どもの人数によって変わるので、一律の数字は出せません。勤務先の総務か、年金事務所の窓口で自分の条件を伝えて試算してもらってください。
手続きと書類。いつ、誰が、何を出すのか
扶養に入る手続きも、外れる手続きも、本人が直接役所に行くわけではありません。配偶者や親の勤務先を経由します。
扶養に入るときは、配偶者や親が勤務先に申し出て、勤務先が「健康保険 被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届」を日本年金機構に提出します。提出期限は事実が発生してから5日以内です。かなり短いので、退職や結婚のタイミングが決まったら早めに伝えておいてください。
添付書類は、続柄が確認できる書類(戸籍謄本または住民票の写し。提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの)と、収入要件を確認できる書類です。収入の書類は状況によって変わります。退職によって要件を満たす場合は退職証明書または離職票の写し、失業給付を受けている場合は雇用保険受給資格者証の写し、年金を受けている場合は年金額の改定通知書の写し、自営や業務委託の収入がある場合は直近の確定申告書の写しです。障害年金や遺族年金、傷病手当金、出産手当金など非課税の収入がある場合は、受取金額が分かる通知書のコピーも別途必要になります。
別居している親族を扶養に入れる場合は、仕送りの事実と金額が分かる書類(通帳の写しや振込明細書、現金書留の控えなど)も要ります。ただし、16歳未満の方や16歳以上の学生の場合は不要です。
扶養から外れるときも届出が必要です。年間収入が130万円以上(60歳以上または障害者の方は180万円以上)見込まれるようになったとき、同居で収入が被保険者の半分以上になったとき、自分が健康保険の被保険者になったときなどが該当します。そして、扶養を外れて厚生年金などに加入しない場合は、市区町村で国民年金第1号被保険者への加入手続きも自分で行う必要があります。ここを忘れると年金の未納期間になってしまうので、注意してください。
配偶者特別控除という「なだらかな坂」
税金の扶養について、もうひとつ知っておくと安心できる仕組みがあります。配偶者特別控除です。
配偶者控除は、配偶者の合計所得金額が一定額以下でなければ使えません。令和8年分なら62万円以下、給与収入で136万円以下です。ではこれを1円でも超えたら控除がゼロになるのかというと、そうではありません。国税庁の配偶者控除の説明には、控除を受ける本人の合計所得金額が1,000万円以下で、かつ配偶者の合計所得金額が62万円超133万円以下であれば、配偶者特別控除を受けられると書かれています。
この配偶者特別控除は、配偶者の所得が増えるにつれて控除額が少しずつ減っていく仕組みです。最高で38万円の控除があり、そこから段階的に下がって、133万円を超えたところでゼロになります。つまり、税金の扶養については「超えた瞬間に崖から落ちる」構造にはなっていません。
ここを知らないまま、103万円や123万円といった古い数字を境に働く時間を絞っている方がいます。税金の観点だけで言えば、その調整はあまり意味がありません。年収が増えれば控除は減りますが、世帯全体の手取りは増えるからです。税金の壁を強く意識する必要はない、と考えて差し支えありません。
気をつけるべきは、やはり社会保険の側です。こちらは配偶者特別控除のような段階的な仕組みがなく、130万円という基準を超えれば扶養から外れます。坂ではなく段差です。優先順位をつけるなら、社会保険の条件を先に確認し、税金は後から整理する。この順番が現実的です。
なお、配偶者控除の額は、控除を受ける側の合計所得金額によっても変わります。900万円以下なら38万円、900万円超950万円以下なら26万円、950万円超1,000万円以下なら13万円で、1,000万円を超えると受けられません。配偶者の年収だけでなく、自分の年収も関係してくるということです。
扶養を外れたとき、負担はどの項目で増えるのか
「超えると手取りが減る」と言われても、どの費目でいくら増えるのかが見えないと判断できません。増える項目を並べておきます。
勤務先の社会保険に加入する場合に増えるのは、健康保険料、厚生年金保険料、そして40歳以上なら介護保険料です。健康保険料は都道府県ごとに料率が決まっていて、協会けんぽの令和8年度の料率は東京都で9.85%、大阪府で10.13%、北海道で10.28%といった具合に地域差があります。これに全国一律の子ども・子育て支援金0.23%が加わり、40歳から64歳の方はさらに介護保険料率1.62%が上乗せされます。ただし、これらは会社と折半なので、本人が負担するのは半分です。厚生年金保険料も同じく労使折半です。
勤務先の社会保険に入れず、国民健康保険と国民年金に加入する場合は事情が違います。国民年金保険料は令和8年度で1か月あたり17,920円、年間で215,040円。これが全額自己負担です。国民健康保険料は、世帯の人数や前年の所得、住んでいる市区町村によって大きく変わるので一律の額は出せません。市区町村の国民健康保険担当課で試算してもらえます。
税金の側では、本人の所得税と住民税が増えます。ただし所得税は給与収入178万円まではかからず(令和8年分の場合)、扶養している側の税額が増える分も、配偶者特別控除が段階的に効くため急には増えません。
つまり、負担の中心は社会保険料です。そして勤務先の社会保険に入れるかどうかで、同じ収入でも負担がまったく変わります。ここを確認せずに働く時間だけを調整すると、いちばん不利な形に落ち着いてしまうことがあります。
ケース別に見る、判断のしかた
条件を並べても自分の場合はどうなのか分からない、という方のために、よくある4つのケースで整理します。
配偶者の扶養に入りながらパートで働いている方。優先して見るべきは、勤務先の厚生年金保険の被保険者数が51人以上かどうかと、週の所定労働時間が20時間以上かどうかです。両方に当てはまるなら、扶養を外れて勤務先の社会保険に入る形になります。2026年10月以降は月額8.8万円という賃金の条件がなくなるので、週20時間という線がより重くなります。時間を20時間未満に抑えるか、逆に増やして社会保険に入るかの二択で考えてください。
大学生の子どもがアルバイトをしている家庭。2025年10月1日以降に認定を受ける19歳以上23歳未満の方は、社会保険の扶養の収入要件が150万円未満に引き上げられました。税金の側も、19歳以上23歳未満は特定扶養親族として控除額が63万円と大きく設定されています。ただし金額の基準は税と社会保険で別なので、両方を確認する必要があります。子ども自身に確認させるのではなく、家計として把握しておくほうが確実です。
会社を辞めたばかりで、これから配偶者の扶養に入る方。退職によって収入要件を満たす場合、添付書類は退職証明書または離職票の写しです。注意したいのは失業給付で、基本手当が日額3,612円以上になると扶養から外れる扱いになります。待期期間中は収入要件を満たしていれば扶養に入れますが、給付が始まったら届出が必要です。給付が終わったらまた扶養に入り直せます。
在宅ワークで収入を得ている方。経費を差し引いた額で判定される点が最大の違いです。報酬の総額ではなく、確定申告で申告する所得の金額が基準になります。そのため、記帳の精度がそのまま判定の精度になります。複数の取引先から受けている場合は、合計で見る点も忘れないでください。
どのケースでも共通するのは、判断を先送りしないことです。後から遡って処理されるほうが、手間も金銭的な負担も大きくなります。
働き方から逆算して条件を決めるという考え方
ここからは、在宅ワークとフリーランスの市場を20年見てきた運営者の立場からの観察です。
扶養内条件の相談で最も多いのは、「いくらまで働けますか」という聞き方です。気持ちは分かります。ただ、運営者として見てきた限りでは、この問いの立て方をしている限り、数字が変わるたびに同じ悩みを繰り返すことになります。2025年に123万円へ、2026年に136万円へ、2026年10月には社会保険の要件が変わる。追いかけ続けるのは現実的ではありません。
順番を逆にするほうが、ずっと楽になります。まず「自分は月に何時間働けるのか」を決める。次に「その時間でいくらの報酬になる仕事なのか」を見る。その掛け算の答えが壁を超えるなら、超えきる方向に振る。超えないなら、時間単価を上げることに集中する。これなら、制度の数字が動いても方針は変わりません。
特に在宅ワークの場合、時間単価を上げる余地が会社勤めより大きいという特徴があります。同じ3時間でも、依頼者と直接つながって中間手数料が乗らない形で受けていれば、手元に残る額は変わってきます。手数料0%の直接取引が効いてくるのはここです。発注する側も、同じ予算でより多くの仕事を頼めるので、双方にとって無駄が出ません。長く続いている方ほど、案件の数ではなく「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っています。
自分の仕事がいくらの水準にあるのかを知りたい方は、職種別の相場から確認してみてください。文章を書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、公的統計をもとにした報酬水準をまとめています。開発系の仕事をしている方はソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。時間あたりの金額が見えてくると、「何時間まで働くか」という設計に落とし込めます。
これから仕事の幅を広げたい方には、需要が伸びている分野を先に知っておくことをおすすめします。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、在宅でも受けやすいこれらの分野の仕事内容と必要なスキルを整理しています。短い時間で成立する仕事を選べるかどうかが、扶養内で働く方にとっては単価そのものより効きます。
事務的な仕事から始めたい方は、ビジネス文書検定のような資格ガイドも見ておくと、応募の際に示せる材料が増えます。扶養の届出書類を自分で正確に書けることも、地味ですが実務の役に立ちます。
家計全体を見直すなら、30代の生命保険おすすめ|子育て世代の保障設計で保障の組み立て方を確認しておくのも一手です。扶養を外れて社会保険に加入すると傷病手当金などの保障が増えるので、民間の保険で備えるべき範囲も変わります。
最後に、いちばん大事なことを書きます。この記事の数字は公的機関の公開情報で確認したものですが、皆さんの家庭にそのまま当てはまるかどうかは、配偶者の年収、加入している健康保険、住んでいる自治体によって変わります。境界に近い金額で迷っているなら、配偶者の勤務先の総務か、年金事務所、市区町村の窓口に自分の条件を伝えて確認してください。窓口で聞くのは、遠慮すべきことではありません。
よくある質問
Q. 扶養内条件の130万円と106万円は何が違いますか?
130万円は、配偶者や親の健康保険の被扶養者でいられる収入の上限です。これから1年間の見込み額で判断され、給与なら月額108,333円以下が目安になります。106万円は、勤務先の健康保険と厚生年金に自分で加入する基準で、月額8.8万円という賃金の条件のことです。この賃金要件は2026年10月に撤廃され、週20時間以上働くかどうかが実質的な分かれ目になります。
Q. 在宅ワークの報酬は、そのままの金額で扶養の判定をされますか?
いいえ。社会保険の扶養判定では、自営や業務委託の収入は必要経費を差し引いた額で見るとされています。ただし、どこまでを経費と認めるかは加入している健康保険によって扱いが分かれます。判定には直近の確定申告書の写しが使われるので、日頃から経費を記録しておくことが前提になります。境界に近い場合は事前に確認してください。
Q. 年末に働きすぎて一時的に130万円を超えたら、すぐ扶養から外れますか?
人手不足による労働時間の延長などで一時的に超えた場合は、一時的な収入である旨の事業主の証明を添えることで、原則として連続2回までは扶養に入り続けられます。ただし3年連続では認められません。また証明を出すのは勤務先なので、超えそうだと分かった時点で早めに相談しておく必要があります。
Q. 扶養から外れたら、どんな手続きが必要ですか?
配偶者や親の勤務先を通じて被扶養者から外す届出をします。そのうえで、勤務先の社会保険に加入しない場合は、自分で市区町村に行き国民年金第1号被保険者への加入手続きと、国民健康保険への加入手続きを行います。この切り替えを忘れると年金の未納期間になってしまうので、扶養を外れると決まった時点で早めに進めてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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