WBSのExcelテンプレートの作り方と、案件が増えたときに管理が崩れる場面


この記事のポイント
- ✓WBSのExcelテンプレートを自分で作る手順を
- ✓条件付き書式でのガントチャート
- ✓遅れを示す数式まで解説
WBSのExcelテンプレートを探している人の多くは、手元の案件の作業を洗い出して、誰がいつまでに何をするのかを1枚の表で見られるようにしたい、と考えています。配布されているテンプレートを使うのも1つの方法ですが、仕組みを理解して自分で作れるようになると、案件に合わせて列を変えたり、数式を直したりできるようになります。
この記事では、WBSの考え方から、Excelでの列の構成、作業の分け方、条件付き書式を使ったガントチャートの作り方、遅れを自動で示す数式までを順に説明します。後半では、案件の数が多くなったときにExcelのWBSがどんな場面で崩れるのか、Excelのまま続けるための工夫と、専用のツールに移る目安も整理します。
WBSとは何か
WBSは、Work Breakdown Structureの略で、日本語では「作業分解構成図」と呼ばれます。プロジェクトで作るもの(成果物)を出発点にして、それを作るための作業を、大きな単位から小さな単位へと段階的に分けていく考え方です。
たとえば「会社の紹介サイトを作る」という案件なら、まず「企画」「原稿」「デザイン」「構築」「公開」のような大きな作業に分けます。次に「原稿」を「取材」「下書き」「確認」「修正」に分け、さらに「取材」を「質問を用意する」「日程を調整する」「取材をする」に分けます。こうして、1人が数日で終えられる大きさまで分けたものが、WBSの一番下の単位になります。この一番下の単位を「ワークパッケージ」と呼びます。
WBSを作る目的は、作業の漏れを防ぎ、全体の量を見積もり、担当と日程を決める土台を作ることです。作業を細かく分けておくと、「何から手を付ければよいか分からない」という状態がなくなり、進み具合も「全体の何割が終わったか」で測れるようになります。
なぜExcelで作る人が多いのか
WBSは、表の形で作業を一覧にし、担当者や日付を書き込んでいくものなので、表計算ソフトとの相性がよいのが特徴です。Excelは多くの職場のパソコンで使える道具で、取引先とファイルをやり取りするときも形式の違いで困りません。行を加えれば作業を追加でき、列を加えれば管理したい項目を追加できる柔軟さも、Excelが選ばれる理由です。
一方で、Excelには、ガントチャートを作るための専用の機能はありません。Microsoftのサポートページでも、次のように説明されています。
Excel には事前定義されたガント チャートの種類はありませんが、次のように、タスクの開始日と終了日を表示するように積み上げ横棒グラフをカスタマイズすることで、ガント チャートをシミュレートできます。 出典: support.microsoft.com
グラフで作る方法のほかに、セルを色で塗り分ける条件付き書式を使う方法もあります。WBSでは、作業が追加されたり日付が変わったりしても自動で塗り直される、条件付き書式の方法が扱いやすいので、この記事ではそちらを中心に説明します。
ExcelのWBSに入れる列の構成
まず、WBSの表にどんな列を用意するかを決めます。多くの案件で使える基本の構成は次のとおりです。
| 列 | 項目 | 入れる内容 |
|---|---|---|
| A | WBS番号 | 1、1.1、1.1.1のような階層の番号 |
| B | 作業名 | 動詞で終わる作業の名前 |
| C | 担当者 | 作業を進める人 |
| D | 開始日 | 作業を始める日 |
| E | 終了日 | 作業を終える日 |
| F | 日数 | 開始日から終了日までの稼働日数 |
| G | 進捗率 | 0%から100% |
| H | 状態 | 未着手、進行中、完了、遅れ |
| I | 先行作業 | 先に終わっている必要がある作業の番号 |
| J以降 | 日付の列 | ガントチャートとして塗る部分 |
WBS番号の付け方
WBS番号は、階層を数字で表すものです。大きな作業に1、2、3と番号を振り、その下の作業に1.1、1.2、さらにその下に1.1.1、1.1.2と振ります。番号を見るだけで、どの作業の一部なのかが分かるので、行を並べ替えたときにも構造を見失いません。
番号は手で入力するのが確実です。数式で自動に振る方法もありますが、作業を途中に差し込んだときに番号がずれ、ほかの資料に書いた番号と食い違う原因になります。
作業名は動詞で終える
作業名は「トップページのデザイン」ではなく「トップページのデザイン案を作る」のように、動詞で終える形にします。名詞だけだと、作るのか、確認するのか、直すのかが分かりません。動詞で終えると、何をしたら終わりなのかがはっきりします。
WBSの作り方の手順
列の構成が決まったら、実際に作業を書き出していきます。手順は次の6つです。
1. 成果物を書き出す
最初に、この案件で最終的に納めるものを書き出します。サイトの制作なら「公開されたサイト」「操作の手引き」、経理の仕組みづくりなら「勘定科目の一覧」「月次の締めの手順書」などです。作業から考え始めると漏れが出やすいので、まず「何を作るのか」から始めます。
2. 大きな作業に分ける
成果物を作るために必要な大きな作業を、3〜7個程度に分けます。工程の順(企画、制作、確認、納品)で分けるか、成果物の部品ごと(ページごと、書類ごと)で分けるかは、案件に合わせて選びます。
3. 細かい作業に分ける
大きな作業を、さらに細かく分けていきます。どこまで分けるかの目安として、1つの作業が「1人で1日から5日程度で終わる」大きさまで分けるとよい、とされることが多くあります。それより大きいと進み具合が見えにくく、それより小さいと表が長くなりすぎて管理の手間がかさみます。
分けるときに大切なのは、下の作業をすべて終えたら上の作業が終わる、という関係を保つことです。上の作業に含まれるのに、下の作業として書かれていないものがあると、そこが漏れになります。
4. 担当者と日付を入れる
作業ごとに担当者を1人決め、開始日と終了日を入れます。日付を入れるときは、先に終わっている必要がある作業(先行作業)を意識します。「原稿の確認」は「下書き」が終わらないと始められない、というような順番を、先行作業の列に番号で書いておきます。
5. 余裕を見込む
日付を詰め込みすぎると、1つの遅れが後ろのすべてに響きます。取引先の確認待ちの期間や、修正が出たときの対応の期間を、あらかじめ見込んでおきます。特に、相手の確認が必要な作業は、自分の作業より日数が読みにくいので、余裕を多めに取ります。
6. 関係者で見直す
WBSができたら、担当者や依頼主と一緒に見直します。作業の漏れ、日程の無理、担当の偏りは、作った本人より、ほかの人のほうが気づきやすいものです。見直しで決まった変更は、その場で反映しておきます。
作り方の例:紹介サイトの制作案件
手順だけでは想像しにくいので、小さな紹介サイトの制作を例に、WBSの中身を具体的に書き出してみます。
・1 企画 ・1.1 依頼主に目的と読者を聞き取る ・1.2 ページの構成案を作る ・1.3 構成案を依頼主に確認してもらう ・2 原稿 ・2.1 取材の質問を用意する ・2.2 取材をする ・2.3 各ページの下書きを書く ・2.4 下書きを依頼主に確認してもらう ・2.5 指摘を反映して原稿を確定する ・3 デザイン ・3.1 トップページのデザイン案を作る ・3.2 デザイン案を依頼主に確認してもらう ・3.3 下層ページのデザインを作る ・4 構築 ・4.1 ページを組み上げる ・4.2 スマートフォンでの表示を確かめる ・4.3 問い合わせの送信を試す ・5 公開 ・5.1 依頼主に最終確認してもらう ・5.2 公開する ・5.3 操作の手引きを渡す
この例で注目したいのは、「依頼主に確認してもらう」という作業を独立した行にしている点です。確認は自分の作業ではありませんが、ここで止まると後ろの作業がすべて止まります。行として見えるようにしておくと、確認待ちの期間を日程に組み込めます。また、「2.4 下書きを依頼主に確認してもらう」が終わらないと「2.5 原稿を確定する」は始められないので、2.5の先行作業の列には「2.4」と書きます。
作業の数は多く見えますが、1つ1つは数時間から数日で終わる大きさです。この大きさなら、毎週の更新で「どこまで終わったか」を迷わずに判断できます。
条件付き書式でガントチャートを作る
WBSの右側に日付の列を並べ、作業の期間に当たるセルを自動で塗ると、ガントチャートになります。
日付の列を作る
たとえば、J列の3行目に開始の日付を入れ、K列の3行目に「=J3+1」と入れて右へコピーすると、1日ずつ進む日付の列ができます。日付が長くなりすぎて見にくい場合は、セルの表示形式を「d」にすると日だけが表示されます。2行目に月を表示しておくと、どの月の日付かが分かります。
期間のセルを塗る
日付の列の範囲(たとえばJ5からAM50)を選び、「ホーム」の「条件付き書式」から「新しいルール」を開き、「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選びます。数式には次のように入れます。
=AND(J$3>=$D5, J$3<=$E5)
この数式は、「その列の日付が、その行の開始日以上で、終了日以下なら塗る」という意味です。$の付け方が大事で、日付の行(3行目)と、開始日と終了日の列(D列とE列)を固定しておくと、範囲全体に同じルールが正しく効きます。書式で塗りつぶしの色を選べば、作業の期間が横棒のように塗られます。
土日を塗り分ける
土日の列を薄い灰色にすると、稼働日がひと目で分かります。同じ範囲に次のルールを追加します。
=WEEKDAY(J$3, 2)>5
WEEKDAY関数に2を指定すると、月曜を1、日曜を7として数えるので、5より大きい土曜と日曜が塗られます。
今日の列に印を付ける
今日の日付の列に色を付けると、どの作業が今日の時点で進んでいるべきかが分かります。
=J$3=TODAY()
TODAY関数は、ファイルを開いた日の日付を返します。毎日開くたびに今日の列が移動するので、進み具合の確認に役立ちます。
Microsoftのテンプレートの紹介でも、条件付き書式を使った依存関係の表現が案内されています。
Excel のガント チャート テンプレートから始めて、開始日と終了日を含む依存タスクを追加します。条件付き書式を使用して、他のタスクに依存するタスク名を強調表示できます。 出典: excel.cloud.microsoft
一から作るのが手間な場合は、こうした公式のテンプレートから始め、列を自分の案件に合わせて直していく方法もあります。
日数と遅れを自動で示す数式
稼働日数を数える
開始日から終了日までの日数を、土日を除いて数えるには、NETWORKDAYS関数を使います。
=NETWORKDAYS(D5, E5)
祝日も除きたい場合は、別のシートに祝日の一覧を作り、その範囲を3つ目の引数に指定します。
=NETWORKDAYS(D5, E5, 祝日!$A$2:$A$30)
祝日の一覧は年ごとに変わるので、年が変わるときに更新する作業を忘れないようにします。ここは意外と見落としがちな部分です。祝日の一覧が古いままだと、日数の計算が1日、2日とずれていきます。
遅れている作業を示す
終了日を過ぎているのに進捗率が100%になっていない作業に「遅れ」と表示するには、状態の列に次のように入れます。
=IF(G5=1, "完了", IF(AND(TODAY()>E5, G5<1), "遅れ", IF(TODAY()>=D5, "進行中", "未着手")))
進捗率が100%なら完了、終了日を過ぎて100%未満なら遅れ、開始日を過ぎていれば進行中、それ以外は未着手、と順に判定します。さらに、状態が「遅れ」の行全体を赤く塗る条件付き書式を加えると、遅れている作業が一目で分かります。
全体の進捗率を出す
全体の進み具合は、作業ごとの日数で重みを付けて計算すると実態に近くなります。
=SUMPRODUCT(F5:F50, G5:G50)/SUM(F5:F50)
単純に進捗率の平均を取ると、1日で終わる作業と10日かかる作業が同じ重さで数えられてしまいます。日数で重みを付ければ、大きな作業の進み具合が全体に正しく反映されます。たとえば、10日の作業が50%、1日の作業が2つとも100%の場合、単純な平均だと約83%になりますが、日数で重みを付けると7日分の作業が終わっている計算になり、12日中7日で約58%になります。
進捗率の付け方をそろえる
WBSの進捗率は、人によって付け方がばらつきやすい項目です。同じ「半分くらい終わった」でも、ある人は50%、別の人は30%と書くことがあり、全体の進捗率が実態とずれる原因になります。
ばらつきを抑えるには、進捗率の付け方の基準を先に決めておきます。よく使われるのは、次のように段階を決めてしまう方法です。
・0%:まだ手を付けていない ・50%:作業を始めている ・100%:作業が終わり、確認も済んでいる
段階を3つに絞ると細かさは失われますが、誰が付けても同じ値になります。1つ1つの作業を1日から5日程度の大きさに分けていれば、この粗さでも全体の進み具合は十分に読み取れます。もう少し細かく見たい場合は、「下書きが終わったら60%、確認が済んだら100%」のように、作業ごとに区切りの基準を決めておく方法もあります。
大切なのは、「作業は終わったが、相手の確認がまだ」という状態を100%にしないことです。確認で修正が出れば作業は戻るので、確認が済むまでは100%にしない、と決めておくと、終わったはずの作業が後から戻ってくる混乱を防げます。
経理や事務の仕事でWBSを使う例
WBSは、制作や開発の案件だけでなく、経理や事務の仕事にも使えます。決まった期日までに複数の作業を順に片付ける仕事なら、同じ考え方が当てはまります。
たとえば、取引先の月次の締めを代行する仕事なら、「請求書の発行」「入金の確認」「経費の領収書の回収」「仕訳の入力」「残高の照合」「月次の報告書の作成」といった作業に分けられます。経費の領収書の回収は依頼主の協力が必要なので、ここが遅れると後ろの仕訳と照合がすべて遅れます。WBSで先行作業を書いておくと、「領収書が何日までに届かないと、報告書の期日に間に合わない」という締め切りを、依頼主に具体的に伝えられます。
確定申告の時期のように、同じ種類の仕事を複数の依頼主から並行して受ける場合は、依頼主ごとのWBSを1つのシートにまとめ、「依頼主名」の列で区別すると、どの週に作業が集中するかが見えます。資料の到着が遅れがちな依頼主には、早めに催促の連絡を入れる、といった手も打ちやすくなります。
依頼主とWBSを共有するときの工夫
WBSは、自分のための管理表であると同時に、依頼主との約束を見える形にする資料でもあります。共有するときは、次の点に気をつけると伝わりやすくなります。
まず、依頼主に見せる版は、細かすぎない階層にとどめます。一番下の作業まで全部見せると、相手は読み切れません。大きな作業と、依頼主の確認が必要な作業だけを残した版を用意すると、相手が押さえるべき日程がはっきりします。
次に、依頼主の作業を明示します。「素材の提供」「原稿の確認」のように、相手にお願いする作業には担当者の欄に依頼主の名前を書き、期日を入れておきます。相手の作業が遅れたときに、全体の日程にどう響くかを説明する根拠になります。
最後に、日程を変えたときは、変えた理由を一言添えて共有します。日付だけが黙って変わっていると、相手は何が起きたのか分からず不安になります。変更の履歴を別のシートに残しておくと、後から経緯を確かめるときにも役立ちます。
WBSを作るときにつまずきやすい点
WBSの作り方そのものは単純ですが、初めて作る人がつまずきやすい点がいくつかあります。
人で分けてしまう
「Aさんの作業」「Bさんの作業」のように、担当者で大きな作業を分けてしまうと、成果物との関係が見えなくなります。担当者が入れ替わったときに表を組み直す必要も出てきます。WBSは成果物と作業で分け、担当者は列で示すのが基本です。
作業の大きさがそろっていない
ある作業は「サイトを作る」、別の作業は「ボタンの色を変える」というように、大きさがばらばらだと、進捗率の重みも日程の読みもずれます。同じ階層の作業は、おおむね同じくらいの大きさにそろえると、全体の見通しが立てやすくなります。
余裕をすべて最後にまとめる
日程の余裕を、最後の公開の前にまとめて取る人がいます。ところが、途中の作業が遅れると、その余裕は早い段階で使い切られ、後半の作業には余裕がなくなります。相手の確認が必要な作業や、初めて扱う作業の後ろに、少しずつ余裕を分けて入れておくほうが、遅れを吸収しやすくなります。
作ったまま更新しない
最も多いのが、案件の始めにWBSを作り、その後は一度も更新しないケースです。WBSは日程の約束を見える形にするものなので、実態と合わなくなった時点で役に立たなくなります。更新の曜日と担当を最初に決めておくことが、WBSを生きた資料として保つ一番の方法です。
テンプレートを使うときの注意
配布されているWBSのテンプレートは便利ですが、使うときに気をつけたい点があります。
祝日と稼働日の扱いを確かめる
テンプレートによっては、土日だけを除いて日数を数えていたり、祝日の一覧が古い年のままだったりします。使い始める前に、日数の計算に祝日が含まれているか、祝日の一覧が今年のものかを確かめます。
セルの結合を避ける
見た目を整えるために、大きな作業の行のセルを結合しているテンプレートがあります。セルが結合されていると、並べ替えやフィルタがうまく動かず、行を挿入したときに数式がずれることがあります。自分で直して使う場合は、結合をやめて、文字の字下げで階層を表すほうが扱いやすくなります。
数式が壊れていないか確かめる
テンプレートの数式は、行を挿入したり削除したりするうちに、範囲が合わなくなることがあります。全体の進捗率の数式が、新しく加えた行を含んでいるかどうかは、ときどき確かめる必要があります。数式のセルに色を付けておくと、誤って上書きするのを防げます。
印刷の範囲を決めておく
取引先との打ち合わせで紙に印刷して配る場合は、印刷の範囲と改ページを決めておきます。日付の列が長いと、1枚に収まらず、作業名と横棒が別のページに分かれてしまいます。印刷するときは、表示する期間を絞ったシートを別に作るのが見やすくする方法です。
案件が多くなったときに管理が崩れる場面
1つの案件をExcelのWBSで管理するのは、難しくありません。崩れ始めるのは、並行する案件が3つ、4つと重なったときです。現場でよく見られる場面を挙げます。
ファイルが案件ごとに分かれる
案件ごとにWBSのファイルを作ると、自分が今週どの案件で何をするのかを見るために、すべてのファイルを開く必要が出てきます。ファイルを開き忘れた案件の作業が漏れ、締め切りの直前に気づく、ということが起きます。
担当者の負荷が見えない
案件ごとのWBSでは、ある人が複数の案件で同じ週に作業を抱えていても、それぞれのファイルの上では問題が見えません。全部のファイルを横に並べてはじめて、特定の週に作業が集中していることに気づきます。気づいたときには、すでに調整の余地がないこともあります。
どれが最新か分からなくなる
WBSのファイルをメールで送り合っていると、「WBS_最新.xlsx」「WBS_最新_修正.xlsx」のようなファイルが次々に生まれます。誰かが古いファイルに書き込み、もう1人が新しいファイルに書き込むと、どちらの内容も正しくない状態になります。
更新が止まる
WBSは、作って終わりではなく、毎週更新して初めて役に立ちます。ところが、案件が多くなると更新の手間もかさみ、忙しい週ほど更新が後回しになります。更新が2週、3週と止まると、表の内容が実態と合わなくなり、誰も見なくなります。
連絡が別の場所に散らばる
Excelには、作業ごとのやり取りを残す場所がありません。作業についての相談はメールやチャットで行うことになり、「この作業の締め切りが延びた理由」はWBSのファイルには残りません。後から経緯を確かめようとしても、どこで話したのかが分からなくなります。
Excelのまま続けるための工夫
案件が多くなっても、すぐにExcelをやめる必要はありません。次の工夫で、崩れにくくすることができます。
全案件を1つのシートに集める
案件ごとにファイルを分けず、1つのシートに全案件の作業を並べ、「案件名」の列を追加します。フィルタで案件を絞り込めば、案件ごとの表としても使えます。担当者で絞り込めば、その人が全案件で抱えている作業が一覧になります。
担当者ごとの負荷を数える
担当者ごとに、日付ごとの作業の数を数えるシートを作ると、作業が集中している日が分かります。COUNTIFS関数で、担当者がその人で、開始日がその日以前、終了日がその日以後の作業を数えます。
=COUNTIFS(WBS!$C:$C, $A2, WBS!$D:$D, "<="&B$1, WBS!$E:$E, ">="&B$1)
数が3以上の日に色を付けておけば、作業が重なっている日がすぐに分かります。
ファイルを1か所で共同編集する
ファイルをメールで送り合うのをやめ、OneDriveやSharePointなどに保存して、関係者が同じファイルを開いて編集する形にします。最新版が1つに定まるので、版の食い違いがなくなります。
更新の曜日を決める
毎週決まった曜日に、担当者が自分の作業の進捗率を更新するルールにします。更新が済んだら、全体の進捗率と遅れている作業を確認し、必要なら日程を調整します。更新の時間を30分と決めて予定表に入れておくと、後回しになりにくくなります。
専用のツールに移る目安
工夫を重ねても、次のような状態が続くなら、プロジェクト管理の専用のツールに移ることを検討する時期です。
・並行する案件が5つ以上あり、担当者も3人以上いる ・毎週のWBSの更新に1時間以上かかっている ・作業ごとのやり取りの記録を、後から何度も探している ・取引先にも進み具合を見せたいが、ファイルを送るのが手間になっている
専用のツールでは、作業を登録すると、ガントチャートやカンバンが自動で作られ、担当者ごとの負荷も画面で確かめられます。作業ごとにコメントを残せるので、経緯がWBSと同じ場所に残ります。ただし、ツールにも学ぶ手間と費用がかかるので、Excelで困っていることが何かを先に書き出し、それを解決できるかどうかで選ぶのが失敗しない方法です。
移るときは、ExcelのWBSをすぐに捨てないことも大切です。新しいツールに慣れるまでの数週間は、元のWBSを読み取り用として残し、ツールに登録した作業と突き合わせて漏れがないかを確かめます。WBS番号をツールの作業名の先頭に付けておくと、対応関係を追いやすくなり、移行の途中で作業が抜け落ちる事故を防げます。
Excelの次に試せる選択肢
ExcelのWBSから移る先として、無料から試せるツールの1つがPinatecaです。
公式サイトによると、Pinatecaは、カンバン、ガントチャート、カレンダー、リストなど8種類のボードと、チャットを備えた国産のプロジェクト管理ツールです。ガントチャートのボードでは、カードの期間がそのまま横棒で並び、横棒をドラッグすると開始日と締め切りがその場で変わると説明されています。人やチームごとに負荷の偏りを見る「リソースボード」もあり、ExcelのWBSで見えにくかった担当者の負荷を画面で確かめられます。
料金は、5人まで、ボード10個までのチームなら期限なしで無料で、ガントチャートやチャットも無料プランから使えると案内されています。人数やボードが上限を超える場合は、スタンダードプランが1人あたり月額500円(税抜、年払いなら1人あたり月額400円)です。業務委託の稼働を記録して請求の根拠にする「稼働タイムシート」は、1人あたり月額980円(税抜)の追加のオプションとして用意されています。まずはExcelのWBSのうち1つの案件を移してみて、更新の手間がどれだけ変わるかを比べてから判断するとよいでしょう。
Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
フリーランスの仕事から見たWBSの価値
WBSは、大きな組織のプロジェクトだけのものではありません。在宅で仕事を受けるフリーランスにとっても、見積もりと進行管理の両方で役に立つ道具です。
見積もりの場面では、WBSで作業を洗い出しておくと、必要な日数の根拠を取引先に示せます。「一式で何円」と伝えるより、「この作業にこれだけの日数がかかる」と分けて示したほうが、金額の根拠が伝わり、値下げの交渉で削る作業も選びやすくなります。たとえば、稼働1日あたり3万円で、WBSで洗い出した作業の合計が12日なら、見積もりは36万円という計算になります。作業ごとの日数を出しておくと、範囲が変わったときの追加の費用も説明しやすくなります。
20年この市場を見てきた立場から言えば、継続して依頼が続く人は、作業の見通しを相手と共有するのが上手な人です。WBSを1枚添えて「今週はここまで進みます」と伝えるだけで、依頼する側の不安は大きく減ります。運営者として見てきた限りでは、仲介の手数料が乗らない直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多くの作業を頼めて、受ける側は手取りが厚くなります。手数料0%で直接取引できる関係では、見積もりも進行管理も当事者どうしで担うので、WBSで根拠を示せることがそのまま信頼になります。
開発の仕事で求められる進め方や案件の種類はアプリケーション開発のお仕事で整理しており、報酬の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場で統計をもとに確かめられます。文章を書く仕事でも、取材から納品までの工程をWBSで分けると進行が安定します。執筆や編集の報酬の目安は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。企業の業務の進め方そのものを改善する支援に関心があるなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事も参考になります。
よくある質問
Q. WBSとガントチャートの違いは何ですか?
WBSは、プロジェクトの成果物を作るための作業を、大きな単位から小さな単位へ分けて一覧にしたものです。ガントチャートは、その作業の期間を横棒で並べて、日程を見えるようにした図です。Excelでは、WBSの表の右側に日付の列を並べ、条件付き書式で期間を塗ると、1枚のシートで両方を扱えます。
Q. 作業はどこまで細かく分ければよいですか?
1つの作業が、1人で1日から5日程度で終わる大きさまで分けるのが目安とされることが多くあります。それより大きいと進み具合が見えにくく、それより小さいと表が長くなって更新の手間がかさみます。下の作業をすべて終えたら上の作業が終わる、という関係が保たれているかも確かめます。
Q. Excelでガントチャートの色が正しく塗られないのはなぜですか?
条件付き書式の数式で、$の付け方が合っていないことが多い原因です。日付の行と、開始日と終了日の列を固定しておく必要があります。また、開始日や終了日のセルが文字として入力されていると、日付として比べられず塗られません。セルの表示形式が日付になっているかも確かめます。
Q. ExcelのWBSから専用のツールに移るのはどんなときですか?
並行する案件が多くなり、担当者の負荷が見えなくなったときや、毎週の更新に時間がかかりすぎるときが目安です。作業ごとのやり取りの記録を何度も探している場合も、ツールに移ると経緯を作業と同じ場所に残せます。移る前に、Excelで困っていることを書き出し、それを解決できるかで選びます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
織田 莉子@SOHO編集部
FP2級・フリーランス経理サポーター
会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。
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