未経験から特別養護老人ホームで働く|受け入れている募集と、慣れるまで


この記事のポイント
- ✓特別養護老人ホームで未経験から働くときに知っておきたいことをまとめました
- ✓無資格・未経験を受け入れている募集の種類と見分け方
- ✓従来型とユニット型の違い
未経験から特別養護老人ホーム(特養)で働けるのか。結論から言うと、働けます。求人サイトで「特別養護老人ホーム 無資格」「未経験OK」と検索すると、驚くほど多くの募集が出てきます。ただ、その「未経験OK」の中身は施設によってかなり違い、入ってから「こんなはずじゃなかった」となる人がいるのも事実です。
この記事では、特養という職場の中で何が起きているのかを先に整理したうえで、未経験者を受け入れている募集の種類と見分け方、入職してから慣れるまでの流れ、資格を取る順番、つまずきやすい場面までを、順番にまとめます。介護の仕事とは何か、という一般論ではなく、「特養で働く」ことに絞って書きます。
特養はどんな職場か:入居者と1日の流れ
特別養護老人ホームは、介護保険法上の「介護老人福祉施設」です。公的な施設で、運営主体の多くは社会福祉法人や自治体です。2015年4月から、新たに入居できるのは原則として要介護3以上の方になりました。つまり、入居者のほとんどが、食事、排泄、入浴、移動のどれか、あるいはすべてに手助けが必要な方だということです。
認知症のある方も多く、終の住処として最期まで暮らす方も少なくありません。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅と比べると、入居者の介護の必要度が高く、看取りまで担う施設が多いのが特養の特徴です。
人員の基準は、介護職員と看護職員を合わせて、入居者3人に対して常勤換算で1人以上です。入居者100人の施設なら、介護・看護職員は34人以上が必要になります。ただし、これは24時間365日を通した人数なので、ある時間帯に目の前にいる職員の数は、ずっと少なくなります。
特に差が出るのが夜間です。従来型の特養では、入居者25人以下なら夜勤職員1人以上、26〜60人なら2人以上、61〜80人なら3人以上と決まっています。つまり、夜間は1人の職員が20〜30人の入居者を担当することが珍しくありません。この数字は、未経験の方にはあまり知られていません。これ、知らない人が本当に多いんです。
1日の流れを、日勤の介護職員の目線で書くと次のようになります。
・7時台:夜勤者から申し送りを受ける。起床介助、着替え、朝食の配膳と食事介助 ・9時台:排泄介助(おむつ交換やトイレ誘導)、水分補給 ・10時前後:入浴介助(週2回以上の入浴を曜日ごとに回す)、レクリエーション ・12時台:昼食の食事介助、口腔ケア、服薬の確認(服薬は看護職員と連携) ・13時台:休憩を交代で取る。排泄介助 ・14〜15時台:入浴介助の続き、おやつと水分補給、記録 ・16〜17時台:夕食前の排泄介助、夜勤者への申し送り
特養の日課は、入居者全員の食事・排泄・入浴を、決まった人数で確実に回すことが軸になっています。どの業務も入居者の体に直接触れるので、慣れるまでは「覚えること」と「体の使い方」の両方に時間がかかります。
未経験の方が比べがちな、ほかの高齢者施設との違いも整理しておきます。
| 施設 | 主な入居者 | 未経験者から見た特徴 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 要介護3以上、長期入居、看取りあり | 身体介護の量が多く、介護の基礎が一通り身につく |
| 介護老人保健施設 | 在宅復帰を目指す方、入所は数か月単位 | リハビリ職や医師が常勤し、医療との連携が密 |
| 住宅型有料老人ホーム | 自立から要介護まで幅広い | 生活支援の比重が大きく、介護度は施設差が大きい |
| グループホーム | 認知症の方、1ユニット9人以下 | 家事を入居者と一緒に行い、少人数で関わる |
同じ「介護職員」の求人でも、特養は身体介護の経験を短期間で集中して積める職場です。そのぶん、最初の数か月の体の負担は、ほかの施設より大きくなりやすいと考えておいてください。
未経験者を受け入れている募集の種類と見分け方
「特養 未経験OK」の募集は、大きく分けて4種類あります。どれに応募するかで、入ってからの仕事がまったく変わります。
1. 介護職員(日勤・夜勤あり)
もっとも多い募集です。身体介護を中心に、入居者の生活全般を支えます。最初は日勤のみで始め、数か月後に夜勤に入る流れが一般的です。実際の求人では、次のような書き方が見られます。
【仕事内容】「案件名」特別養護老人ホーム|職場環境良好 無資格・未経験OK!スキルUP可 無料駐車場あり (白石区)...無資格・未経験OK「特徴」終業16時以前日中勤務シフト勤務... 出典: 求人ボックス
「終業16時以前」「日中勤務」とあるように、夜勤なしの条件で未経験者を募る施設もあります。夜勤の有無と、夜勤に入るとしたらいつからかは、最初に確かめたい点です。
2. 入浴や食事など、業務を絞った担当
特養の中には、入浴介助だけ、食事の時間帯だけを担当するスタッフを募集する施設があります。
特別養護老人ホームでの入浴介助業務【業務内容】入浴業務全般(入浴前準備・清掃業務を含みます)※機械浴中心の業務となります。※365日24時間看護師体制を構築しています。【施設概要】従来型80床ユニット型70床ショートステイ10床【応募要件】資格・経験不問 出典: co-medical.com
機械浴(寝たまま、または座ったまま入れる機械を使う入浴)が中心なら、手順を覚えれば比較的早く独り立ちできます。一方で、業務の幅が狭いため、介護全般の経験を積みたい人には物足りなく感じることもあります。
3. 介護助手・生活サポートスタッフ
配膳や下膳、シーツ交換、居室の清掃、洗濯物の整理、見守りなど、身体に直接触れない周辺業務を担う職種です。介護職員が身体介護に集中できるよう、業務を分ける施設が増えています。体力や介護への不安がある人が、まず職場の雰囲気に慣れる入口としては向いています。
4. 夜勤専従
夜勤だけを担当する働き方です。求人には「無資格可」と書かれていることもありますが、未経験者にはおすすめしにくいです。先ほど書いた通り、夜間は少ない職員で多くの入居者を担当し、急変や転倒が起きたときに、その場で判断する必要があるからです。夜勤専従を考えるなら、日勤で仕事を覚えてからにしたほうが安全です。
どの募集でも、「未経験OK」とだけ書かれていて、研修の内容や期間が具体的に書かれていない場合は注意が必要です。面接で「最初の1か月は誰と、どのように仕事を覚えますか」と聞き、答えが具体的に返ってくる施設を選んでください。
従来型とユニット型で、慣れ方が違う
特養には、大きく分けて「従来型」と「ユニット型」があります。未経験者が慣れるまでの道のりは、この違いで変わります。
従来型は、多床室(2〜4人部屋)が中心で、1つのフロアに多くの入居者が暮らします。食事はフロアの食堂に集まって取り、入浴は曜日と時間を決めて順番に行います。介護職員は、フロア全体の業務を「食事係」「入浴係」「排泄係」のように分担して回すことが多いです。
未経験者にとって従来型は、業務の手順が決まっているので、何をいつすればいいかを覚えやすい面があります。一方で、1人の入居者とじっくり向き合う時間は取りにくく、「流れ作業のように感じる」と戸惑う人もいます。
ユニット型は、全室個室で、おおむね10人前後の入居者を1つの「ユニット」として、少人数の生活単位で暮らします。日中はユニットごとに常時1人以上の職員を置くことが基準で、同じ職員が同じ入居者を継続して担当するのが基本です。食事の時間や入浴のタイミングも、入居者一人ひとりの生活リズムに合わせる考え方をとります。
ユニット型は、入居者一人ひとりの好みや癖を覚えられるので、関係を作りやすいのが魅力です。ただし、日中にユニットの職員が1人になる時間帯があり、その間は食事の準備も、排泄介助も、見守りも、1人で判断して動く必要があります。未経験者にとっては、独り立ちしたあとの「1人でいる時間」の緊張感が大きいです。
どちらが未経験者に向いているかは、一概には言えません。手順を覚えてから応用したい人は従来型、入居者との関係を大切にしたい人はユニット型が合いやすい、という傾向はあります。求人に「従来型80床ユニット型70床」のように両方が書かれている施設では、どちらに配属されるかを面接で確認してください。
もう1つ知っておきたいのが、ショートステイ(短期入所)の併設です。ショートステイは数日から数週間だけ泊まる利用者が入れ替わるので、毎日違う方の状態を把握する必要があります。未経験の最初の配属としては負担が大きいので、配属先を確認するときに一緒に聞いておくと安心です。
なお、ユニット型では、各ユニットに研修を受けたユニットリーダーを置くことになっています。未経験者にとっては、このリーダーが実質的な指導役になります。配属予定のユニットのリーダーが何年目の職員か、同じユニットに先輩が何人いるかを聞いておくと、慣れるまでの支えがどのくらいあるかを想像しやすくなります。
最初の3か月で任される範囲
入職してから独り立ちするまでの流れは施設によって違いますが、よくある形を書きます。
最初の1〜2週間:オリエンテーションと見学、同行
法人の理念や就業規則、感染症対策、個人情報の扱いなどの研修を受けたあと、先輩職員について業務を見学します。入居者の名前と顔、それぞれの介助の注意点(嚥下の状態、立ち上がりの可否、認知症の症状など)を覚えるのが最初の仕事です。
3週目〜1か月:先輩と一緒に介助する
先輩が横について、食事介助、排泄介助、移乗(ベッドから車いすへの移動など)を実際に行います。移乗は、体の使い方を間違えると自分の腰を痛め、入居者を転倒させる危険もあるので、繰り返し練習します。福祉用具(スライディングボードやリフトなど)を導入している施設では、その使い方も覚えます。
2〜3か月:日勤で独り立ち
日勤の業務を1人で任されるようになります。ただし、判断に迷う場面では、リーダーや看護職員に相談することが前提です。記録の書き方や、家族からの問い合わせへの対応も、このころから担当します。
3か月以降:夜勤に入る
夜勤は、先輩との2人体制で数回経験してから1人で入るのが一般的です。夜勤デビューの時期は、施設によって入職1か月から半年まで幅があります。「夜勤に入るのはいつからか」「独り立ちの判断は誰がするか」は、入職前に必ず聞いてください。
無資格の人に義務づけられている研修
ここは、知らない人が本当に多い点です。2021年度の介護報酬改定で、医療・福祉関係の資格を持たない介護職員には「認知症介護基礎研修」の受講が義務づけられ、経過措置を経て2024年4月から完全に適用されています。新しく採用された無資格の職員は、採用から1年以内に受講することになっています。つまり、未経験・無資格で特養に入った場合、施設はこの研修を受けさせる必要があるということです。eラーニングで受講できる形も用意されています。
未経験者がやってはいけないこと
痰の吸引や経管栄養は、医師法上の医行為に当たるため、介護職員が行うには介護福祉士の資格か、所定の研修(喀痰吸引等研修)の修了と登録された事業所であることが必要です。未経験の段階で「人が足りないから」と頼まれても、応じてはいけません。※そのような指示が常態化している場合は、施設の上長や、必要に応じて外部の相談窓口に相談してください。
資格はいつ、どれを取るか
特養の介護職員は、無資格でも働けます。ただし、資格を取ると任される範囲と給与が変わるので、どの順番で取るかを考えておくと得です。
介護職員初任者研修
介護の基礎を学ぶ研修で、130時間のカリキュラムです。身体介護の基本、認知症の理解、介護の倫理などを学びます。受講費用はスクールによって異なりますが、数万円から10万円前後が相場です。特養では、入職後に働きながら取る人が多く、受講費用を補助する施設もあります。
介護福祉士実務者研修
450時間のカリキュラムで、医療的ケア(痰の吸引や経管栄養の基礎)も含まれます。初任者研修を修了していれば一部の科目が免除されます。介護福祉士の国家試験を受けるための要件の1つです。
介護福祉士
介護分野の国家資格です。実務経験ルートでは、介護の実務経験3年以上(従業期間3年以上かつ従事日数540日以上)と実務者研修の修了で受験できます。特養で3年働いて受験する、というのが未経験から入った人の典型的な道筋です。
費用を抑える方法
資格の費用を抑える方法はいくつかあります。1つ目は、施設の資格取得支援制度を使うことです。受講費の全額または一部を施設が負担する、受講日を勤務扱いにする、といった制度があります。ただし、「取得後2年以内に退職したら費用を返還」という条件が付いている場合があるので、規程を必ず確認してください。
2つ目は、ハローワークの公共職業訓練(ハロートレーニング)です。離職中の人が対象で、受講料が無料の介護系コースがあります。3つ目は、自治体の介護人材確保事業で、研修費用の助成を行っているところがあります。お住まいの自治体の制度は、厚生労働省や都道府県の案内から確認できます。
資格の返還条件について補足すると、労働基準法は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額をあらかじめ決めたりすることを禁止しています。資格の費用返還の取り決めがすべて無効になるわけではありませんが、実質的に退職を妨げるような内容だと問題になり得ます。※具体的な条件に疑問がある場合は、労働問題に詳しい専門家に相談してください。
未経験者がつまずきやすい場面と、その乗り越え方
特養で未経験者が辞めてしまうきっかけは、ある程度決まっています。前もって知っておくだけで、乗り越えやすくなります。
腰を痛める
移乗や体位変換で腰に負担がかかり、数か月で腰痛を抱える人は多いです。自分の力で持ち上げようとせず、ベッドの高さを調整する、体を近づける、福祉用具を使う、2人で介助する、という基本を守ることが大切です。施設によっては、持ち上げない介護(ノーリフティングケア)に取り組み、リフトを積極的に導入しています。応募時に福祉用具の導入状況を聞いておくと、その施設の姿勢が分かります。
認知症の方への対応に戸惑う
同じ質問を繰り返される、介助を拒まれる、強い口調で怒られる、といった場面は、未経験者にとってつらく感じられます。これは本人の性格ではなく、病気の症状によるものです。認知症介護基礎研修で学ぶ内容に加え、先輩がその方にどう声をかけているかを観察するのが、いちばん早く身につく方法です。
看取りに立ち会う
特養では、入居者の最期に立ち会うことがあります。初めての看取りで気持ちが追いつかず、仕事を続けられるか悩む人もいます。看取りの経験がある施設では、看取り後に職員同士で振り返りの時間を設けているところもあります。つらさを1人で抱えず、言葉にして共有することが大切です。
夜勤で1人になる不安
夜勤では、少ない職員で多くの入居者を担当します。急変時の連絡手順(看護職員へのオンコール、救急要請の判断基準)が明確になっているかどうかで、不安の大きさは変わります。手順書があるか、夜勤前に一緒に確認してもらえるかを、遠慮せずに聞いてください。
記録と申し送りが追いつかない
特養では、食事量、水分量、排泄の状況、体調の変化などを細かく記録します。慣れるまでは介助と記録の両立が大変です。タブレットや介護記録ソフトを導入している施設では、その場で入力できるので負担が軽くなります。
私が以前相談を受けた方は、未経験で特養に入って2か月目に、先輩から「なぜこの記録を書いていないのか」と強く注意され、辞めるかどうか迷っていました。話を聞くと、記録のルールを誰からも教わっていなかったんです。つまり、本人の能力ではなく、教える仕組みの問題でした。その方は、リーダーに「記録のルールを一覧にしてもらえないか」と相談し、改善されてから落ち着いて働けるようになりました。困ったときは、自分を責める前に、仕組みに穴がないかを疑ってみてください。
給与の相場と、雇用契約で確かめること
未経験で特養に入るときの給与は、地域や法人によって幅があります。求人の中には、未経験者でも賞与を含めた年収を明示しているものがあります。
キープする求人を見る特別養護老人ホームゆーとりあの介護職/ヘルパー求人(正職員)NEW全室個室のユニット型特養!賞与年2回あり(年間計3.7ヶ月分)。無資格・未経験の方も年収366万円~。車・バイク通勤も可能で無料駐車場も完備。充実した研修プランで安心してスタート出来ます! 出典: job-medley.com
これは1つの求人の例ですが、特養の給与を見るときに押さえておきたい点が詰まっています。賞与が何か月分か、夜勤手当が含まれているか、処遇改善の手当がどう支払われるか、です。
介護職員の給与は、2024年度から「介護職員等処遇改善加算」として一本化された加算によって底上げされています。特養は加算を取得している事業所が多く、他の介護サービスと比べて給与水準が高めになりやすい傾向があります。夜勤に月4〜5回入ると、夜勤手当だけで月に数万円の差になります。介護職全体の年収の水準を、年齢や地域別に比べたい場合は、公的統計をもとにまとめた介護職員の年収・単価相場を見ておくと、提示された金額が相場のどのあたりかを判断できます。
雇用契約を結ぶ前に、次の点を書面で確かめてください。
・基本給と各種手当(夜勤手当、処遇改善手当、資格手当)の金額と内訳 ・賞与の算定基準(「基本給の2か月分」のような固定の基準なのか、「前年度実績」なのか) ・試用期間の長さと、その間の給与や条件の違い ・夜勤の回数の目安と、1回あたりの夜勤手当 ・資格取得支援制度の内容と、費用返還の条件 ・残業代の支払い方(固定残業代が含まれていないか)
求人票と契約書の内容が違うことは、実は珍しくありません。職業安定法では、求人を出す側に、労働条件を明示する義務があります。つまり、面接で聞いた条件と契約書が違えば、署名する前に質問してよいということです。
見学と面接で、施設の中身を確かめる方法
求人票に書かれていることだけでは、未経験者をどう育てる施設なのかは分かりません。見学と面接は、施設を選ぶための時間でもあります。聞きにくいと感じる質問ほど、入ってからの働きやすさに直結します。
見学で見ておきたいこと
見学のときは、設備のきれいさよりも、職員の動きを見てください。食事の時間帯に見学できるなら、職員が入居者に声をかけてから介助しているか、急かすような空気がないかが分かります。職員同士が声を掛け合って応援に入っているか、1人の職員が走り回っていないかも、人員の余裕を知る手がかりになります。
また、廊下や居室の前で、職員が入居者を名前で呼んでいるか、呼び方が丁寧かも見ておきたい点です。入居者への接し方は、職員への接し方と似ていることが多いからです。
面接で聞いておきたいこと
面接では、次の質問を具体的に聞いてみてください。
・未経験で入った職員は、今何人くらい働いていて、どのくらい続いているか ・最初の指導担当は決まっているか(プリセプターのような担当者がいるか) ・独り立ちまでに、どんな項目をチェックしているか ・夜勤に入る前に、何回くらい先輩と一緒に夜勤を経験するか ・腰痛予防のために、どんな福祉用具を使っているか ・看取りのときに、職員へのフォローはあるか
答えが「現場で慣れてもらいます」「人によります」だけで終わる施設は、教える仕組みが整っていない可能性があります。反対に、「最初の1か月はこの表に沿って進めます」とチェック表を見せてくれる施設は、未経験者の受け入れに慣れています。
離職の多さを見分ける手がかり
「常に求人を出している」施設は、人が定着していない可能性があります。求人サイトで同じ施設の募集がいつから出ているかを見る、面接で職員の平均勤続年数を聞く、といった方法で、ある程度は見分けられます。ただし、新しい施設が開設したばかりで大量に採用しているケースや、ユニットを増やすために増員しているケースもあるので、理由まで聞くのが公平です。退職理由を直接聞きにくい場合は、「最近入った方は、どのくらいで独り立ちしていますか」と聞くと、定着の様子が自然に分かります。
これ、遠慮して聞かずに入職する人が本当に多いんです。職場を選ぶ段階で質問するのは、わがままではなく、長く働くための準備です。
20年市場を見てきた立場から、未経験で入って長く続く人について
最後に、フリーランスや在宅ワークを含む働き方の市場を20年見てきた運営者の立場から、未経験で新しい職場に入り、長く続いている人の共通点を書いておきます。
運営者として見てきた限りでは、未経験から長く続く人ほど、最初の3か月で「全部できるようになること」を目標にしていません。代わりに、「分からないことを誰に聞けばいいか」を最初に押さえています。特養で言えば、介助の方法はリーダーに、体調の変化は看護職員に、食事の形態は管理栄養士に、家族との関係は生活相談員に、というように、相談先を早く覚えた人ほど、1人で抱え込まずに済んでいます。これは、個人で仕事を受ける人が、分からない分野の相談先を持っているかどうかで続くかが決まるのと、同じ構造です。
もう1つは、条件を曖昧にしたまま始めないことです。仲介の手数料が乗らない直接のやり取りでは、同じ予算で依頼する側は多く頼め、受ける側は手取りが厚くなりますが、その分、条件を自分で確かめる責任が伴います。職場選びも同じで、夜勤の開始時期、研修の中身、資格支援の条件を最初に確認した人ほど、入職後のギャップが小さくなっています。
3つ目に、最初の職場を「一生の職場」と思い詰めていないことも挙げられます。特養で数年働くと、身体介護、認知症ケア、看取り、多職種との連携という、介護の仕事の中心になる経験がひと通り身につきます。その経験は、介護福祉士の資格を取ったあと、ユニットリーダー、生活相談員、ケアマネジャーへと進む土台にもなりますし、デイサービスや訪問介護に移るときにも評価されます。長く続く人は、目の前の3か月を乗り越えることと、3年後にどうなっていたいかを、分けて考えています。
未経験から特養で働くことは、決して無謀な選択ではありません。ただ、職場の中身を知らないまま飛び込むと、つまずく場面が増えます。自分に合う募集を選び、慣れるまでの道筋を確かめ、困ったときの相談先を持つこと。自分の適性や、次の職場で何を優先するかを整理したいときは、キャリア相談の専門家であるキャリアコンサルタントの役割を知っておくと、転職相談を使うときの判断材料になります。法律と制度は、働く人の味方です。
よくある質問
Q. 無資格・未経験でも特別養護老人ホームの介護職員になれますか?
なれます。特養の介護職員は資格がなくても働けますし、無資格・未経験を受け入れる募集も多くあります。ただし、医療・福祉関係の資格を持たない介護職員は、採用から1年以内に認知症介護基礎研修を受講することが義務づけられています。研修の受け方や費用を施設が負担するかを、入職前に確認してください。
Q. 未経験で入った場合、夜勤はいつから始まりますか?
施設によって異なりますが、入職から1〜3か月ほど日勤で仕事を覚え、先輩との2人体制で数回経験してから独り立ちする流れが一般的です。早い施設では1か月、慎重な施設では半年ほどかけます。夜勤の開始時期と独り立ちの判断基準は、面接の段階で具体的に聞いておくと安心です。
Q. 特養で働きながら介護福祉士を取るにはどのくらいかかりますか?
実務経験ルートの場合、介護の実務経験3年以上(従事日数540日以上)と実務者研修の修了で国家試験を受験できます。未経験で入職した人は、1年目に初任者研修、2〜3年目に実務者研修を修了し、3年目以降に受験する流れが一般的です。資格取得支援制度がある施設なら費用負担を抑えられます。
Q. 未経験者には従来型とユニット型のどちらが向いていますか?
一概には言えません。従来型は業務の手順が決まっていて覚えやすく、ユニット型は少人数の入居者と継続して関われる一方で、日中に1人で判断する時間帯があります。手順を覚えてから応用したい人は従来型、入居者との関係を大切にしたい人はユニット型が合いやすい傾向です。配属先は面接で確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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