障害者支援施設を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと


この記事のポイント
- ✓障害者支援施設を辞めたいと感じたときに
- ✓出ていく前に切り分けておきたいことを整理します
- ✓入所施設ならではの夜勤や閉じた人間関係
障害者支援施設を辞めたい。そう思いながら、今日も夜勤明けの帰り道でこのページを開いた人もいるかもしれません。
まず、お伝えしたいことがあります。辞めたいと感じるのは、あなたが弱いからではありません。
障害者支援施設は、利用者の暮らしを24時間支える職場です。夜は少ない人数で見守り、昼は介助と活動に追われ、同じ建物で同じ顔ぶれと何年も過ごします。心と体に負担がかかりやすい条件が、最初からそろっている職場なんです。
ただ、「辞めたい」という気持ちの中身は、人によってまったく違います。仕事そのものが合わないのか、今の施設の条件が合わないのか、体と心が限界に来ているのか。ここを分けないまま辞めると、次の職場で同じつらさを繰り返すことがあります。
この記事では、障害者支援施設で「辞めたい」が生まれやすい理由を整理し、出ていく前に切り分けておきたいことを順番にお話しします。辞めると決めたときの手順も、最後にまとめました。
「辞めたい」は1つの気持ちに見えて、いくつもの理由が重なっている
こういう相談がよくあります。
「何がつらいのか、自分でもよく分からないんです。ただ、もう行きたくない」
この「よく分からない」は、とても自然なことです。
障害者支援施設で働く人のつらさは、1つの出来事から来ていることは少なく、小さな負担がいくつも積み重なって、ある日あふれ出すことが多いからです。障害福祉の現場で働く人の発信にも、そのことがよく表れています。
障害者支援員として働いていると、ふとした瞬間にそう感じることがあります。 人手不足、責任の重さ、感情労働、給料の低さ…。決して一つだけが原因ではなく、いくつもの要因が積み重なって「辞めたい」という気持ちになる人は少なくありません。 出典: note.com
人手不足、責任の重さ、感情労働、給料の低さ。
どれか1つだけなら、なんとか持ちこたえられるかもしれません。でも、それが同時に来ると、人はどこから手をつけていいか分からなくなります。そして「全部いやだ」「辞めるしかない」という1つの結論に、気持ちがまとまってしまうんです。
心理学では、強いストレスがかかると視野が狭くなり、選択肢が少なく見える状態が起きることが知られています。日常の言葉で言えば、「疲れていると、辞めるか我慢するかの2択しか見えなくなる」ということです。
だからこそ、最初にやってほしいのは、決めることではなく、分けることです。
紙を1枚用意して、「最近つらかったこと」を思いつくまま書き出してみてください。夜勤明けに眠れない。先輩の言い方がきつい。ある利用者の介助が怖い。家族からの電話に疲れる。給料が上がらない。
書き出したら、それぞれの横に「仕事内容」「この職場の条件」「人間関係」「自分の体と心」のどれに近いかを書いてみます。きれいに分けられなくても大丈夫です。このあとの節で、1つずつ一緒に見ていきましょう。
入所施設だから起きやすい、つらさの正体
書き出したつらさの中には、障害者支援施設という職場だからこそ起きやすいものがあります。それを知っておくと、「自分がだめなんだ」という思い込みから少し離れられます。
1つ目は、夜勤の重さです。入所施設では、夕方から翌朝までの長い夜勤が組まれることがあります。国の基準では、夜間の生活支援員は、利用者60人以下なら1人以上とされています。これは最低限の基準で、実際にはもっと多く配置している施設もありますが、日中に比べると夜はずっと少ない人数です。何かあったとき、少ない人数で判断しなければならない緊張感は、経験した人にしか分かりません。
2つ目は、利用者の行動によるつらさです。障害者支援施設には、言葉で気持ちを伝えるのが難しい人も多く暮らしています。不安や体の不調が、大きな声や、叩く、かむといった行動で表れることがあります。頭では「理由がある」と分かっていても、何度も続くと、体も心も疲れます。怖いと感じるのは当然のことです。
3つ目は、閉じた人間関係です。同じ建物で、同じ職員と、同じ利用者と、長い時間を過ごします。職員同士の関係がこじれたとき、逃げ場がありません。夜勤で2人きりになる相手と気まずい、というだけでも、出勤前の気持ちはずいぶん重くなります。
4つ目は、利用者の重度化と高齢化です。移乗、入浴、排せつの介助が増え、腰や膝を痛める人も少なくありません。「福祉の仕事がしたくて入ったのに、体力勝負の介護ばかり」と感じている人もいます。
5つ目は、ご家族との関係です。入所している方のご家族は、長い年月をかけて施設に大切な人を託しています。その思いの強さが、ときに厳しい言葉として職員に向くこともあります。
こうして並べてみると、つらさの多くは、あなたの資質ではなく、職場の構造から来ていることが分かると思います。
大丈夫ですよ。構造から来ているつらさは、職場や働き方を変えることで軽くなる可能性があります。次の節からは、それを確かめるための切り分けに進みます。
切り分け1:「この仕事」がつらいのか、「この施設」がつらいのか
1つ目の切り分けは、つらさの原因が「障害のある人を支える仕事そのもの」にあるのか、「今の施設の条件」にあるのかです。
これを分けるために、自分に3つの質問をしてみてください。
「利用者さんと過ごす時間の中に、うれしいと感じる瞬間はまだあるか」
「もし夜勤の回数が半分になったら、続けられそうか」
「もし人間関係が今と違ったら、同じ仕事を続けたいと思うか」
1つ目の質問に「ある」と答えられて、2つ目か3つ目に「続けられそう」と感じたなら、つらさの原因は仕事そのものより、今の施設の条件にある可能性が高いです。この場合、福祉の仕事を辞める必要はないかもしれません。施設を変える、働き方を変えるという選択肢が残っています。
反対に、利用者さんと過ごす時間そのものに、もう何も感じられなくなっている場合。それは、心が疲れ切っているサインかもしれません。この場合は、次の「切り分け2」を先に読んでください。
私自身、以前いた職場で、仕事が好きなのか嫌いなのか分からなくなった時期がありました。毎朝、職場の最寄り駅に着くと足が重くなる。でも、休みの日に同じ分野の本を読むのは苦にならない。そのとき、信頼していた人に「仕事が嫌いなんじゃなくて、今の場所が合っていないだけかもしれないね」と言われて、はっとしたことを覚えています。
仕事と職場を分けて考えるだけで、選べる道はずいぶん増えます。
障害者支援施設の中でも、施設によって条件は大きく違います。利用者の障害の重さ、夜勤の組み方、職員の人数と経験、法人の研修の手厚さ。同じ「生活支援員」でも、ある施設では毎日が綱渡りで、別の施設では落ち着いて支援に向き合える、ということは珍しくありません。
給料への不満も、仕事と職場を分けて考えられるものの1つです。
「こんなに大変なのに、給料が見合わない」。この気持ちは、多くの人が抱えています。障害福祉の職員の給与は、国が決める報酬の中から支払われるので、施設が自由に大きく上げられるわけではありません。ただ、職員の賃金を改善するための仕組みとして、国は処遇改善の加算を設けていて、2024年度にはそれまで複数あった加算が「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。
ここで知っておいてほしいのは、同じ加算の仕組みがあっても、それを取っているかどうか、どの区分を取っているか、職員にどう配分しているかは、施設ごとに違うということです。基本給に組み込んでいる施設もあれば、毎月の手当として出している施設、年に数回まとめて一時金として出している施設もあります。
つまり、今の給料への不満は、「福祉の仕事だから仕方ない」とあきらめる前に、「この施設の出し方が自分に合っていないのかもしれない」と分けて考える余地があるということです。今の給与明細を見て、基本給、夜勤手当、処遇改善の手当がそれぞれいくらなのかを書き出してみてください。そのうえで、ほかの施設の求人票と、同じ項目どうしで比べてみると、差がどこにあるのかが見えてきます。
夜勤手当の金額も、施設によってかなり違います。夜勤の回数は同じでも、1回あたりの手当が違えば、月の手取りは変わります。反対に、給与の総額が高く見える求人でも、夜勤の回数を多く前提にしていることもあるので、「夜勤なしなら月いくらか」を面接で確かめておくと安心です。
また、同じ障害福祉の中でも、入所施設以外の職場があります。日中だけの生活介護事業所、グループホーム、就労継続支援の事業所、相談支援の事業所。夜勤がつらいなら日中の事業所、介助の負担がつらいなら就労系の事業所、というように、つらさの種類に合わせて行き先を考えられます。
切り分け2:自分の体と心が、今どこまで来ているか
2つ目の切り分けは、とても大切なことです。
今のあなたの体と心が、「考えて選べる状態」なのか、「まず休まなければいけない状態」なのかを確かめてください。
次のようなことが2週間以上続いているなら、辞めるかどうかを考える前に、休むことを優先してほしいんです。
・夜勤明けや休みの日でも、ほとんど眠れない ・食欲がなく、体重が目に見えて減った ・出勤前に吐き気や動悸がする ・涙が止まらない、何をしても楽しいと感じない ・「消えてしまいたい」と考えることがある
これは、心が限界に近づいているサインです。
意志の強さでどうにかなる段階ではありません。心療内科や精神科、かかりつけの内科を受診してください。「こんなことで受診していいのかな」と迷う必要はありません。こういう相談、本当によくあります。そして、受診して「もっと早く来ればよかった」と話す人がほとんどです。
医師から休養が必要と言われたら、すぐに退職するのではなく、休職という選択肢を考えてみてください。会社員や施設の職員として健康保険に入っている人は、病気やけがで仕事を休み、給料が出ない場合に、健康保険から傷病手当金を受け取れることがあります。連続した3日間の休みのあと、4日目から支給の対象になり、金額はおおむね給料の3分の2程度が目安です。※細かい条件は加入している健康保険によって違うので、職場の担当者か健康保険の窓口に確かめてください。
受診の前に、職場の中で使える仕組みを思い出しておくのもよいと思います。労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者がいる事業場に、年に1回のストレスチェックと、産業医の選任が義務づけられています。入所施設は職員数が多いので、この対象になっている施設も少なくありません。ストレスチェックで高いストレスがあると判定された人は、本人が申し出れば医師の面接指導を受けられます。
「職場の医師に相談したら、上司に知られてしまうのでは」と心配する人もいます。ストレスチェックの結果は、本人の同意なしに施設に伝えてはいけないことになっています。つまり、自分の状態を知るための道具として、安心して使ってよいということです。
休職の制度があるかどうか、何か月まで休めるかは、施設の就業規則で決まっています。まずは就業規則を見せてもらうか、担当者に聞いてみましょう。
もう1つ、体のけがについても触れておきます。利用者の介助中に腰を痛めた、行動によってけがをした。そういう業務中のけがは、労災保険の対象になりえます。
「自分の介助の仕方が悪かったから」と、我慢して黙っている人がいます。でも、それはあなた1人の責任ではありません。けがをしたら、その日のうちに記録を残して、施設に報告してください。
体と心が回復してから考えると、「辞めたい」の中身が変わっていることもよくあります。今は決めなくて大丈夫です。休んでから決めても、遅くはありません。
切り分け3:職場の中で変えられることは、まだ残っているか
体と心に少し余裕があるなら、3つ目の切り分けに進みましょう。今の職場の中で、変えられることがまだ残っているかどうかです。
辞めることは、いつでもできます。だからこそ、その前に「言ってみる」「頼んでみる」ことを一度だけ試してみてほしいんです。
たとえば、次のようなことは、施設によっては相談に応じてもらえることがあります。
夜勤の回数を減らす、または夜勤のない勤務に変える。担当するユニットやフロアを変える。特定の利用者の介助を、しばらく複数の職員で担当する体制にしてもらう。同じ法人が運営する通所の事業所やグループホームへ異動する。
社会福祉法人の多くは、入所施設のほかに、通所の事業所やグループホーム、相談支援の事業所をいくつも運営しています。法人の中で異動できれば、退職金の積み立てや有給休暇の日数を引き継いだまま、働き方を変えられることがあります。これは、辞めて別の法人に移るよりも、ずっと負担の少ない選択です。
相談するときのこつがあります。
「つらいです」「もう無理です」だけだと、聞いた側もどう動けばいいか分かりません。「夜勤明けに眠れない日が続いていて、月の夜勤を今の回数から減らしてもらえると続けられそうです」というように、困っていることと、こうなれば続けられるという希望を、セットで伝えてみてください。
人間関係のつらさについては、施設にも責任があります。国の基準では、障害者支援施設は、職場でのパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントによって職員の働く環境が害されないよう、方針を明確にするなどの措置をとらなければならないとされています。
つまり、先輩からの強い言葉や、無視や、人格を否定するような扱いに悩んでいるなら、それは「あなたが我慢すべきこと」ではなく、「施設が対応すべきこと」なんです。施設の相談窓口、法人の本部、苦情解決の第三者委員など、上司以外の相談先がないか確かめてみてください。
言ってみても何も変わらなかった。そのときは、「やれることはやった」と自分を認めてあげてください。その経験は、次の職場を選ぶときに「この条件だけは譲れない」という大切な物差しになります。
見てしまったこと、言えなかったことがあるとき
ここは、少し重いお話になります。
障害者支援施設で「辞めたい」と感じている人の中には、同僚が利用者に乱暴な言葉を使っている、必要以上に体を押さえつけている、といった場面を見てしまい、それを誰にも言えずに苦しんでいる人がいます。
「自分が辞めれば見なくて済む」と考える気持ちは、よく分かります。
障害者虐待防止法の第16条では、障害者福祉施設の職員による虐待を受けたと思われる障害者を見つけた人は、速やかに市町村に通報しなければならないと定められています。そして同じ条文で、施設の職員は、通報したことを理由に解雇などの不利益な扱いを受けないとされています。
通報は、仲間を裏切ることではありません。声を出せない利用者を守るための、法律で認められた行動です。そして、通報した人は法律で守られています。
施設の側にも、虐待を防ぐための委員会を定期的に開くこと、職員に研修を行うこと、担当者を置くことが、国の基準で求められています。まずは施設の虐待防止の担当者に相談するという方法もあります。施設の中で相談しにくい場合や、相談しても改善されない場合は、施設がある市町村の障害福祉の窓口に連絡してください。
見てしまったことを1人で抱え続けるのは、とてもつらいことです。その苦しさが、「辞めたい」の大きな理由になっているなら、辞める前でも、辞めたあとでも、通報することはできます。
あなたは一人じゃありません。
次の職場で同じつらさを繰り返さないために
辞めるかどうかを決める前に、もう1つだけ一緒に考えておきたいことがあります。
それは、「次の職場で、同じつらさを繰り返さないか」ということです。
こういう相談もよくあります。「前の施設がつらくて辞めたのに、次の施設でもまた同じところで苦しくなってしまった」。
原因の多くは、次の職場を「今の職場から早く離れたい」という気持ちだけで選んでしまったことにあります。つらいときほど、求人票の給与や通勤時間だけを見て決めがちです。でも、あなたを苦しめていたのは、給与や通勤時間ではなかったはずです。
そこで、最初に書き出した「つらかったこと」のメモを、もう一度見てください。そして、それぞれのつらさを、次の職場で確かめるための質問に書き換えてみましょう。
夜勤がつらかったなら、「夜勤は月に何回くらいですか」「夜勤は何時から何時までで、仮眠の時間は取れていますか」「夜勤は何人で担当していますか」と聞きます。
利用者の行動への対応がつらかったなら、「行動が難しい方への対応は、職員1人で担当することがありますか」「対応の方法を職員同士で話し合う場はありますか」と聞きます。
人間関係がつらかったなら、「新しく入った人には、決まった相談相手の先輩がつきますか」「職員の方の勤続年数はどのくらいの人が多いですか」と聞きます。
体の負担がつらかったなら、「移乗の介助にリフトなどの用具は使っていますか」「入浴の介助は何人で行っていますか」と聞きます。
こうした質問は、面接や見学のときに、遠慮せずに聞いてかまいません。答えをはぐらかされたり、「入ってみれば分かります」とだけ言われたりしたら、それも1つの答えです。
見学ができるなら、ぜひ行ってください。見るポイントは、職員同士の声のかけ方と、利用者さんへの話しかけ方です。忙しい時間帯でも、職員が利用者さんに落ち着いた声で話しかけているか。職員同士が「これお願いできる?」「ありがとう」と声をかけ合っているか。数十分いるだけでも、職場の空気はかなり伝わってきます。
もう1つ大切なのは、「次は何を優先するか」を1つに絞ることです。夜勤がない、人間関係が穏やか、給与が高い、家から近い。全部がそろう職場は、なかなかありません。今回いちばんつらかったことを避けられる職場を、まず選ぶ。それが、同じつらさを繰り返さないいちばんの近道です。
つらかった経験は、決して無駄ではありません。「自分には何が合わないのか」がはっきり分かったということは、次の職場を選ぶ物差しを手に入れたということでもあるんです。
辞めると決めたときの手順
いろいろ切り分けた結果、やはり辞めると決めた。それも、立派な選択です。ここからは、トラブルなく辞めるための手順をお話しします。
まず、退職を伝える時期です。期間の定めのない雇用契約(いわゆる正職員など)の場合、民法の第627条では、退職の申し入れから2週間がたつと雇用契約が終わるとされています。一方で、多くの施設の就業規則には「退職の1か月前までに申し出ること」といった決まりがあります。夜勤のシフトは1か月以上先まで組まれていることが多いので、できれば就業規則に沿って、余裕をもって伝えるほうが、残る職員にも利用者にも負担をかけずに済みます。
契約社員やパートなど、期間の定めのある契約の場合は少し違います。原則として契約期間の途中で辞めることはできず、民法の第628条で、やむを得ない事由があるときに限って、すぐに契約を解除できるとされています。体調を崩して働けない、というのはやむを得ない事由にあたりうるので、医師の診断書があれば相談してみてください。※契約期間中の退職でもめそうなときは、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。
次に、有給休暇です。労働基準法の第39条で、一定の期間働いた人には年次有給休暇が与えられます。残っている有給休暇を退職日までに使いたい場合は、引き継ぎの予定と合わせて早めに相談しましょう。
引き継ぎは、障害者支援施設では特に大切です。あなたが担当していた利用者について、「この人はこの時間帯に不安が強くなる」「この声かけだと落ち着く」といった、記録に書ききれていないことがあるはずです。それを短くまとめて残しておくと、利用者の暮らしが途切れずに済みます。そして、あなた自身も、気持ちよく次へ進めます。
退職を伝えるときの言葉に迷う人も多いので、1つ例を書いておきます。
「お時間をいただきありがとうございます。体調のことも考えて、〇月末で退職させていただきたいと考えています。担当している方の引き継ぎはきちんと行いますので、進め方をご相談させてください」
理由を細かく説明する必要はありません。人間関係のことや、職場への不満を並べる必要もないんです。引き留められたときに、条件を変えてもらえるなら続けたいという気持ちがあるなら、そのときに「夜勤の回数が減らせるなら」と伝えればよいですし、気持ちが決まっているなら「気持ちは変わりません」と、落ち着いて繰り返して大丈夫です。
直属の上司に伝えにくい事情がある場合は、施設長や法人の人事の担当者に伝えてもかまいません。口頭で伝えたあと、就業規則で決まっている形式があれば、退職届を出しておきましょう。
最後に、退職のときに受け取る書類です。雇用保険の離職票、年金手帳や基礎年金番号の分かる書類、源泉徴収票などがあります。また、労働基準法の第22条では、退職した人が求めた場合、使用期間や業務の種類、退職の理由などを記した証明書を、施設が遅れずに出さなければならないとされています。次の職場で経験を説明するときに役立つことがあります。
障害者支援施設での経験は、次の場所でどう生きるか
辞めたあとのことが不安で、なかなか決められない人もいると思います。
でも、障害者支援施設で身につけたことは、思っている以上に、ほかの場所で生きます。
言葉で伝えられない人の気持ちを、表情や行動から読み取る力。少ない人数で夜を守った判断力。事実を分けて書く記録の力。利用者やご家族との長い関係を保つ力。どれも、介護や福祉、医療の現場では大切にされる力です。
同じ障害福祉の中なら、日中だけの生活介護事業所やグループホーム、就労継続支援の事業所など、入所施設とは違うリズムの職場があります。高齢者の介護施設に移る人もいます。介護の仕事全体の中で、給与や働き方がどのくらい違うのかを知りたいときは、介護職員の年収・単価相場で相場を確かめておくと、次の職場を比べるときの目安になります。
福祉の現場で人の話を聴いてきた経験を、相談の仕事に生かしたいと考える人もいます。働く人の悩みに向き合う国家資格として、キャリアコンサルタントがあり、試験の内容や受験の要件が紹介されています。すぐに目指さなくても、そういう道があると知っておくだけで、気持ちが少し軽くなるかもしれません。
この市場を長く見てきた立場から感じるのは、福祉の仕事から一度離れた人が、数年後に別の形で戻ってくることがとても多い、ということです。入所施設の夜勤で体を壊した人が、日中の事業所で長く働いている。現場を離れて在宅で事務の仕事をしながら、週末だけ地域の支援に関わっている。辞めることは、終わりではなく、自分に合う関わり方を探し直すことなんだと思います。
1人で考えがまとまらないときは、話を聴いてくれる人の力を借りてください。職場・転職・キャリア相談のお仕事では、キャリアの相談にどんな種類があり、どんな人が相談を受けているのかが紹介されています。
辞めたいと思った自分を、責めないでください。そう感じるほど、あなたは真剣に利用者さんと向き合ってきたんです。まずは分けて、休んで、それから選ぶ。その順番さえ守れば、どの道を選んでも大丈夫です。
よくある質問
Q. 障害者支援施設を1か月で辞めるのは早すぎますか?
早すぎるかどうかより、なぜ辞めたいのかを分けて考えることが大切です。夜勤や介助の負担が体に合わない、虐待が疑われる場面を見たなど、続けることで心身を壊すおそれがあるなら、期間にかかわらず離れる判断は間違いではありません。次の職場を選ぶときに、つらかった条件を具体的に書き出しておくと役立ちます。
Q. 辞める前に、職場の中でできることはありますか?
夜勤の回数を減らす、担当フロアを変える、同じ法人の通所事業所やグループホームへ異動するなど、施設によっては相談に応じてもらえることがあります。困っていることと、どうなれば続けられるかをセットで伝えるのがこつです。人間関係の悩みは、施設が対応すべき問題でもあるので、相談窓口も確かめてください。
Q. 何日前までに退職を伝えればよいですか?
期間の定めのない雇用契約なら、民法では申し入れから2週間で契約が終わるとされています。ただし多くの施設は就業規則で1か月前までの申し出を求めており、夜勤のシフトも先まで組まれているため、就業規則に沿って余裕をもって伝えるほうが円満です。期間の定めのある契約は扱いが違うので注意してください。
Q. 心身の不調で働けないときは、すぐ退職したほうがよいですか?
まず受診し、医師から休養が必要と言われたら、休職の制度が使えないか就業規則を確かめてください。健康保険に加入していれば、仕事を休んで給料が出ない期間に傷病手当金を受け取れる場合があります。体と心が回復してから考えると、辞めたい気持ちの中身が変わっていることもあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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