介護老人保健施設で派遣として働く|直接雇われる場合との差と、合う場面


この記事のポイント
- ✓介護老人保健施設(老健)で派遣として働くと
- ✓入浴専従や夜勤専従など時間と業務を絞った働き方ができます
- ✓老健の中で派遣職員が任される仕事
介護老人保健施設(老健)で、派遣として働いてみようか。そう考えている方は、きっと何かを大切にしたい事情をお持ちなのだと思います。子育てや介護との両立かもしれませんし、前の職場で疲れて、少し距離を保ちながら働きたいのかもしれません。
最初にお伝えしておくと、派遣という働き方は「正社員になれなかった人の選択」ではありません。老健の派遣求人を見ると、入浴の時間だけ、夜勤だけ、夕方の遅出だけ、と働く時間や業務を絞った募集がたくさん並んでいます。自分の生活に合わせて働き方を選べるのは、派遣の大きな良さです。
一方で、直接雇われる場合と比べて、給与の仕組みや任される仕事、職場での立ち位置には違いがあります。この記事では、老健の中で派遣職員がどう働いているのか、直接雇用との差、法律で決まっているルール、派遣が合う場面と気をつけたい場面を、順番にお話しします。
老健の派遣求人に並ぶ、時間と業務を絞った働き方
老健の派遣求人を眺めると、ほかの介護施設と比べて特徴的なことに気づきます。業務や時間帯を絞った募集が多いのです。
・入浴介助がメインの、週3日からの日勤派遣 ・11時から20時の遅出専従の派遣 ・週1日からの夜勤専従の派遣 ・併設のデイケア(通所リハビリテーション)での日勤派遣
なぜこうした募集が多いのかというと、老健という施設の1日の動き方に理由があります。
老健は、病院を退院した方がリハビリをして自宅に戻る準備をする施設です。入所している方は、午前中にリハビリと入浴、午後にもリハビリやレクリエーションと、1日の予定が時間ごとに決まっています。そのため、「入浴が集中する午前中だけ人手が足りない」「日勤者が帰ったあとの夕方が手薄になる」というように、人手が必要な時間帯がはっきりしています。
直接雇用の職員だけでその穴を埋めるのは難しいので、足りない時間帯に派遣職員を配置するわけです。つまり、老健の派遣は、施設の時間割の「すき間」を埋める役割を担っていることが多いと言えます。
老健の求人には、同じ施設の中でも雇用形態によって働き方が違う募集が並んでいます。
◆介護老人保健施設内にあるデイケアでの日勤のみ正職員! 出典: caresta.jp
同じデイケアの仕事でも、正職員として雇われるのか、派遣として働くのかで、給与の仕組みや責任の範囲が変わります。どちらが良い悪いではなく、いまの自分の暮らしにどちらが合うかで選ぶものです。
介護の人手不足は、この先も続くと見込まれています。厚生労働省は、介護職員が今後も数十万人単位で必要になると推計しています。老健に限らず、介護施設では直接雇用の職員と派遣職員が一緒に働く形が、珍しいものではなくなってきました。派遣という働き方を選んでも、現場で肩身の狭い思いをする必要はありません。
こういうご相談がよくあります。「前の特養で夜勤が続いて体を壊した。介護の仕事は好きだけれど、また正職員として責任を背負う自信がない」。そういう方にとって、時間と業務を絞れる派遣は、介護の仕事と自分の体の両方を守る選択肢になります。
老健の中で派遣職員が任される仕事と、任されにくい仕事
では、老健で派遣として働くと、実際にどんな仕事を任されるのでしょうか。施設によって違いはありますが、よく見られる傾向をお話しします。
派遣職員が任されやすい仕事
・入浴介助(着脱、洗身、浴室への移動) ・食事介助、配膳と下膳 ・排せつ介助、おむつ交換 ・ベッドから車いすへの移乗 ・リハビリ室への送り出しとお迎え ・夜間の巡回、体位変換、ナースコール対応(夜勤派遣の場合) ・日々のケアの記録
派遣職員には任されにくい仕事
・入所時のカンファレンスでの報告や、ケアの方針づくり ・ご家族との面談や、退所に向けた相談 ・新人職員の指導 ・委員会活動(感染対策、事故防止、身体拘束の廃止など) ・ユニットやフロアのリーダー業務
老健は、医師や看護職員、リハビリ職、支援相談員、ケアマネジャーが連携して在宅復帰を目指す施設です。方針を決めたり、ご家族と話し合ったりする仕事は、長く施設にいる直接雇用の職員が担うのが一般的です。派遣職員は、決まった方針に沿って日々のケアを行う役割が中心になります。
これは、良い面と悩ましい面の両方を持っています。
良い面は、会議や委員会、人間関係の調整に時間を取られず、目の前の利用者さんのケアに集中できることです。「介護の仕事は好きだけれど、会議や書類が負担だった」という方には、気持ちが楽になる働き方です。
悩ましい面は、老健の醍醐味である「利用者さんが回復して自宅に帰る過程」に、深く関われないことがある点です。入浴の時間だけ関わっていると、利用者さんの退所を後から知る、ということもあります。やりがいをどこに感じるかによって、この差の受け止め方は変わります。
もうひとつ知っておきたいのは、派遣の契約で決まっていない仕事は、本来頼まれないということです。入浴専従の契約なのに、人手が足りないからと送迎の運転を頼まれた。こうした場面では、派遣会社の担当者に相談するのが正しい順番です。派遣先の職員に直接断りにくいときも、派遣会社が間に入って調整してくれます。働き始める前に受け取る就業条件明示書には、業務の内容や就業場所、時間が書かれています。手元に保管して、迷ったときに見返せるようにしておきましょう。
派遣で働く老健の1日:入浴専従・遅出専従・夜勤専従
老健の派遣求人に多い3つの働き方について、1日の動きを具体的に見てみます。どの形が自分の暮らしと体に合いそうか、想像しながら読んでみてください。
入浴専従(日勤の午前から午後)
出勤したら、まずその日に入浴する方の一覧と、それぞれの注意点を確認します。老健では、看護職員がその日の体温や血圧を確認して、入浴してよいかを判断します。入浴できる方が決まったら、浴室の準備をして、順番にお連れします。
老健の浴室には、一般的な浴槽のほかに、座ったまま入れる機械浴や、寝たまま入れる特殊浴槽があることが多く、利用者さんの状態に合わせて使い分けます。1日に15人〜20人ほどの入浴を担当することもあり、浴室の中は湿度も温度も高いので、想像以上に汗をかきます。水分補給と休憩を意識的に取ることが大切です。
入浴専従の良さは、仕事の範囲がはっきりしていることです。一方で、体力を使う仕事が続くので、腰を守るための移乗の方法や、福祉用具の使い方を最初にしっかり教わっておきましょう。
遅出専従(昼前から夜)
11時から20時といった時間帯の遅出は、昼食介助から始まり、午後の排せつ介助、レクリエーションの補助、夕食介助、服薬の見守り、就寝の準備までを担います。日勤の職員が帰る夕方以降は、フロアの人手が一気に少なくなる時間帯です。遅出の派遣職員は、この手薄な時間を支える大事な存在です。
夕方は、日中のリハビリで疲れた利用者さんが多く、立ち上がろうとしてふらつく方もいます。転倒を防ぐ見守りに気を配りながら、食事と就寝の介助を順番に進めていきます。朝が苦手な方や、午前中に家の用事を済ませたい方には合いやすい時間帯です。
夜勤専従(夕方から翌朝)
夜勤専従は、夕方に出勤して翌朝に帰る働き方です。16時間程度の勤務の中で、仮眠や休憩をはさみながら、夜間の巡回、体位変換、おむつ交換、ナースコールへの対応を行います。老健は看護職員の配置が手厚く、夜勤に看護職員がいる施設が多いので、体調の変化があったときに相談しやすいのは安心材料です。
夜勤専従は1回あたりの収入が大きく、週1回や週2回から始められる募集もあります。ただ、生活のリズムが崩れやすいので、夜勤明けの過ごし方を自分なりに決めておくことが、長く続けるための鍵になります。夜勤の回数を増やしすぎて体を壊してしまっては、元も子もありません。
直接雇用との差:給与、賞与、有給休暇、社会保険
派遣を選ぶかどうかを考えるとき、いちばん気になるのはお金と待遇の違いだと思います。老健で働く場合を想定して、主な違いを整理します。
| 項目 | 派遣 | 直接雇用(正職員) | 直接雇用(パート) |
|---|---|---|---|
| 雇い主 | 派遣会社 | 老健を運営する法人 | 老健を運営する法人 |
| 給与の形 | 時給制が中心 | 月給制 | 時給制 |
| 時給・月給の水準 | 同じ地域のパートより高めのことが多い | 基本給と各種手当 | 地域の相場に沿う |
| 賞与 | 原則なしのことが多い | あり(年2回が多い) | 寸志程度かなし |
| 夜勤手当 | 夜勤1回あたりの額で設定 | 1回ごとの手当 | 夜勤がない契約が多い |
| 有給休暇 | 派遣会社から付与 | 法人から付与 | 法人から付与 |
| 社会保険 | 条件を満たせば派遣会社で加入 | 加入 | 条件を満たせば加入 |
| 勤務の調整 | 契約で曜日や時間を決める | シフトで調整 | シフトで調整 |
介護職の派遣の時給は、地域や資格、時間帯によって幅がありますが、日勤で1,300円〜1,800円程度の募集が多く見られます。介護福祉士の資格があると、時給が上がる傾向があります。夜勤専従の派遣は、1回あたり2万円〜3万円程度で設定されている募集が一般的です。
時給だけを見ると、派遣は直接雇用のパートより高く見えることがあります。ただ、年間で比べると話が変わります。正職員には賞与があり、処遇改善の手当も給与に上乗せされています。派遣では賞与がない代わりに時給が高めに設定されている、と考えると分かりやすいです。
たとえば、時給1,500円で1日8時間、月20日働くと、月の収入は24万円です。祝日や年末年始で勤務日が減る月は、その分収入も減ります。月給制の正職員は、勤務日数が多少変わっても基本給は変わりません。家計の見通しを立てるときは、この「月による波」も考えに入れておくと安心です。
介護職の給与の相場は、介護職員の年収・単価相場で、平均年収や経験年数による違いを確認できます。派遣の時給で年間いくらになるのかを、正職員の年収と並べて計算してみると、自分に合う働き方が見えやすくなります。
法律で決まっている派遣のルール
派遣には、働く人を守るための法律上のルールがあります。知っているだけで、不安がずいぶん軽くなります。
同じ職場で働けるのは原則3年まで
労働者派遣法では、同じ派遣職員が、派遣先の同じ組織単位(同じ部署やフロアなど)で働けるのは、原則として3年までと決められています。3年を超えて同じ老健で働きたい場合は、派遣先に直接雇ってもらう、別の部署に移る、派遣会社に無期雇用で雇われる、といった形になります。派遣会社には、3年に達する見込みの職員に対して、雇用を安定させるための措置を取ることが求められています。
待遇の差には理由が必要
2020年4月からは、派遣職員についても「同一労働同一賃金」の考え方が取り入れられました。派遣会社は、派遣先の職員と比べて不合理な待遇の差をつけないようにするか、労使で決めた基準に沿って賃金を決めることになっています。自分の待遇について、派遣会社に説明を求めることもできます。
老健では、看護師の派遣は原則として認められていない
これは老健ならではの大事な点です。労働者派遣法では、病院や診療所、介護老人保健施設などでの看護師などの医療関係の業務について、派遣を原則として禁止しています。紹介予定派遣や、産休・育休・介護休業を取る人の代わりとして働く場合などは例外です。
一方で、介護職員として介護の業務を行う派遣は、老健でも認められています。看護師の資格を持っている方が老健で派遣として働く場合は、この違いに注意が必要です。特養などの社会福祉施設では、看護師の派遣が認められているので、施設の種類によって扱いが変わります。看護師としての働き方の選択肢や給与の違いは、看護師の年収・単価相場で整理しています。
有給休暇と社会保険は派遣会社から
派遣職員の有給休暇は、雇い主である派遣会社から付与されます。直接雇用と同じく、働き始めて6か月続けて勤務し、決められた日の8割以上出勤していれば、所定の日数の有給休暇が付与されます。週の勤務日数が少ない場合も、日数に応じて付与されます。派遣先が変わっても、同じ派遣会社で働き続けていれば勤続期間は通算されるのが一般的です。
健康保険や厚生年金、雇用保険も、加入の条件を満たせば派遣会社で加入します。週の労働時間や見込まれる雇用期間によって条件が変わるので、最初の面談で確認しておきましょう。
困ったときの相談先
派遣先で困ったことがあったら、まずは派遣会社の担当者に相談します。派遣先にも苦情を受け付ける担当者を置くことが決められているので、派遣の契約書や就業条件の明示書で確認しておきましょう。解決しない場合は、都道府県の労働局に相談できます。
派遣が合う場面
ここまでの違いを踏まえて、老健で派遣として働くのが合いやすい場面を考えてみます。
ブランクがあって、少しずつ現場に戻りたいとき
出産や育児、ご家族の介護などで介護の仕事から離れていた方にとって、週3日の日勤派遣は、体と感覚を取り戻すのにちょうどよい働き方です。責任の重い仕事から入らなくていいので、焦らずに現場の空気に慣れていけます。
体調や心の回復を優先したいとき
前の職場で心身をすり減らした方が、いきなり正職員として夜勤や委員会を背負うのは、回復途中の心に負担がかかります。時間と業務を絞った派遣で、「介護の仕事ができる自分」を少しずつ取り戻していくのは、とても理にかなった選び方です。
老健という職場が自分に合うか確かめたいとき
特養やデイサービスで働いてきた方が、老健に興味を持つことがあります。老健はリハビリや医療職との連携が多い職場なので、合う合わないがはっきり分かれます。派遣で実際に働いてみてから、直接雇用に応募するかを決めるのは賢いやり方です。派遣期間の終わりに直接雇用に切り替えることを前提にした紹介予定派遣という仕組みもあり、この場合の派遣期間は最長6か月です。
家庭の予定に合わせて、曜日や時間を固定したいとき
子どもの送り迎えがある、ご家族の通院の付き添いがある、といった事情がある場合、契約で曜日と時間を決められる派遣は安心です。シフト制の直接雇用では、急な変更をお願いされることもあります。
ほかの仕事と組み合わせたいとき
夜勤専従の派遣を週1回から入れて、日中は別の仕事をする、という働き方もあります。ダブルワークをする場合は、合計の労働時間が長くなりすぎないよう、体調を最優先にしてください。
反対に、直接雇用のほうが合いやすい場面
公平のために、派遣より直接雇用のほうが合いやすい場面にも触れておきます。介護福祉士やケアマネジャーを目指して、ケアの方針づくりやカンファレンスに関わりたい方。利用者さんの入所から退所までを通して見届けたい方。賞与を含めた年収の安定や、長期的な昇給を重視したい方。こうした方は、老健に直接雇われて働くほうが、望む経験を得やすいでしょう。派遣か直接雇用かは、いまの自分が何をいちばん大切にしたいかで決めてよいのです。
派遣で気をつけたい場面と、心の守り方
派遣には良さがある一方で、気をつけておきたい場面もあります。
職場での孤立感
派遣職員は、朝礼や会議、職員の親睦の場に参加しないことが多いので、職場の輪に入りにくいと感じることがあります。「分からないことを誰に聞けばいいか分からない」「自分だけ情報が回ってこない」という寂しさは、派遣で働く方からよく聞くお悩みです。
私自身、会社勤めをしていたころ、プロジェクトの途中から外部のスタッフとして別の部署に加わった時期がありました。周りは長年一緒に働いてきた人たちで、雑談の輪に入れず、昼休みを一人で過ごす日が続きました。そのとき助けになったのは、最初の1週間で「この人に聞けば大丈夫」という人を一人見つけたことです。仕事の質問をきっかけに少しずつ話すようになり、気持ちがずいぶん楽になりました。
老健で派遣として働くときも、同じです。全員と仲良くなる必要はありません。フロアのリーダーや、同じ時間帯に働く職員の中で、質問しやすい人を一人見つけておくだけで、孤立感は大きく変わります。
利用者さんの情報が十分に伝わらないこと
老健では利用者さんの入れ替わりが多く、状態も回復に合わせて変わっていきます。派遣職員が週に数日しか入らないと、「前回は歩けていた方が、今日は車いすになっていた」ということが起こります。事故を防ぐためにも、勤務の始めに申し送りや記録を確認し、不安な点はその場で聞くようにしましょう。確認することは、恥ずかしいことではありません。
契約が更新されない不安
派遣の契約は、数か月ごとに更新されることが一般的です。「次も更新されるだろうか」という不安は、心に静かに負担をかけます。更新の見込みは、契約が切れる1か月前には派遣会社に確認しておくと、気持ちの準備ができます。
「派遣だから」と自分を小さく見てしまうこと
派遣という立場で働いていると、「どうせ自分は外の人間だから」と、意見を言うのをためらってしまうことがあります。けれど、利用者さんの小さな変化に気づいたときは、立場に関係なく伝えてください。週に数日しか入らない人だからこそ、変化に気づけることもあります。あなたの観察は、立派なケアの一部です。
派遣会社と求人を選ぶときに確かめること
老健で派遣として働くと決めたら、派遣会社と求人を選ぶ段階で、次の点を確かめておきましょう。
求人の中身で確かめること
・業務の範囲:入浴専従、遅出専従、夜勤専従など、どこまでの業務を担うのか ・配属先:入所部門か、併設のデイケアか、認知症専門棟か ・夜勤の体制:夜勤派遣の場合、夜勤は何人体制か、看護職員は夜勤にいるか ・研修:初日にどのくらいの時間、業務の説明や同行があるか ・交通費や、残業が出たときの扱い
派遣会社について確かめること
・介護の派遣を専門に扱っているか、担当者が介護の現場を理解しているか ・社会保険や有給休暇の説明が、最初の面談で丁寧にされるか ・困ったときの連絡がつきやすいか(夜勤派遣なら夜間の連絡先があるか) ・資格取得の支援制度があるか ・紹介予定派遣の求人を扱っているか
派遣会社の担当者との面談では、自分の事情を正直に伝えてください。「夜勤は月4回まで」「子どもの行事がある日は休みたい」「前の職場で体を壊したので、まずは週3日から」。こうした希望をはっきり伝えるほど、合った求人を紹介してもらいやすくなります。
老健の職場見学を派遣会社経由で申し込める場合もあります。見学では、職員同士の声かけの雰囲気、リフトなどの福祉用具が使われているか、派遣職員への説明が丁寧かを見ておくと、働き始めてからのギャップが小さくなります。
派遣から直接雇用に移るとき
派遣で働くうちに、「この老健で長く働きたい」と感じることがあります。そのときは、まず派遣会社の担当者に気持ちを伝えてください。派遣先が直接雇用を希望している場合も、派遣会社を通して話を進めるのが一般的です。紹介予定派遣ではない通常の派遣から直接雇用に切り替える場合、派遣会社と派遣先の間で紹介の手数料などの取り決めがあることもあるので、自分だけで派遣先と話を進めないほうが安心です。
直接雇用に移るときは、給与が時給から月給に変わるのか、賞与や夜勤手当の条件はどうなるのか、派遣のときと比べて任される仕事がどう増えるのかを、書面で確かめておきましょう。派遣のときに「気楽だった」部分が、直接雇用では委員会や会議として加わることもあります。それを負担と感じるか、成長の機会と感じるかは、人それぞれです。
また、介護福祉士の受験に必要な実務経験には、派遣で働いた期間も含めることができます。実務経験証明書は、派遣の場合は派遣会社が発行するのが一般的です。資格を目指している方は、働いた期間と日数の記録を早めに確認しておくと、受験の申し込みのときに慌てずに済みます。
20年この市場を見てきた立場から考える、雇われ方の選び方
最後に、フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、働き方の選び方についてお話しします。
運営者として見てきた限りでは、長く働き続けている人ほど、ひとつの雇われ方に自分を縛りつけていません。体調や家庭の状況に合わせて、正職員、パート、派遣、そして業務委託を行き来しています。介護の仕事も同じで、子育て中は派遣で時間を絞り、落ち着いたら正職員に戻る、という選び方をしている人は少なくありません。
介護の経験を持つ人の中には、老健での派遣の仕事を続けながら、介護職向けの研修資料づくりや、介護の現場の話を書く仕事を少しずつ引き受けている人もいます。長く続いている人ほど、最初から大きな仕事を狙わず、「この人は現場を分かっているから話が早い」と思ってもらえる関係を積み上げています。
こうした仕事では、依頼する側と受ける側が直接やり取りできるほうが、同じ予算でも受け手の手取りが厚く残ります。手数料0%で直接つながる形は、依頼者はより多くを頼めて、受け手は時間に見合った報酬を受け取れる、双方に無理のない構造です。派遣で働く時間を絞っている方にとって、残りの時間を自分で組み立てられることは、暮らしの安心につながります。
もうひとつ、運営者として感じていることがあります。雇われ方を変えるときにいちばん迷いを生むのは、お金や条件よりも「自分はこの働き方でいいのだろうか」という気持ちの揺れです。条件は数字で比べられますが、気持ちの揺れは比べようがありません。だからこそ、なぜいまこの働き方を選ぶのか、その理由を一文で書き出しておくことをおすすめします。「子どもが小学校に上がるまでは、時間を固定したいから派遣を選ぶ」。理由がはっきりしていれば、周りの声に揺らがずに済みます。
働き方や職場の悩みを誰かに相談したいときは、専門家の力を借りてもいいのです。職場・転職・キャリア相談のお仕事では、職場や転職についての相談の仕事がどのように行われているかをまとめています。相談を受ける側の仕事を知ると、自分が相談するときにも、何を準備して話せばいいかが見えてきます。
派遣という働き方は、あなたの暮らしと体を守りながら、介護の仕事を続けるための選択肢のひとつです。直接雇用との違いを知ったうえで選べば、きっと納得のいく働き方が見つかります。大丈夫。自分に合う形を、ゆっくり選んでいきましょう。
よくある質問
Q. 老健の派遣では、どんな仕事を任されますか?
入浴介助、食事介助、排せつ介助、移乗、リハビリ室への送り出し、夜勤の巡回などが中心です。入所時のカンファレンスやご家族との面談、委員会、新人指導などは直接雇用の職員が担うことが多く、派遣職員は決まった方針に沿った日々のケアに集中する役割になります。
Q. 老健で看護師として派遣で働くことはできますか?
労働者派遣法では、介護老人保健施設での看護師などの医療関係の業務について、派遣を原則として禁止しています。紹介予定派遣や、産休・育休を取る職員の代わりとして働く場合などは例外です。介護職員として介護の業務を行う派遣は、老健でも認められています。
Q. 派遣と正職員では、年収はどちらが高いですか?
派遣は時給が高めに設定されていることが多い一方、賞与が原則ないため、年間で比べると正職員のほうが高くなることが一般的です。派遣は祝日などで勤務日が減る月に収入が下がる点も考慮し、年間の収入で比べてから選ぶと安心です。
Q. 派遣で同じ老健にずっと働き続けられますか?
労働者派遣法では、同じ派遣職員が派遣先の同じ組織単位で働けるのは原則3年までです。3年を超えて働きたい場合は、派遣先に直接雇用してもらう、別の部署に移る、派遣会社に無期雇用で雇われるといった方法があります。更新の見込みは早めに派遣会社に確認しましょう。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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