育休中に副業をする|給付金との関係と職場への伝え方

長谷川 奈津
長谷川 奈津
育休中に副業をする|給付金との関係と職場への伝え方

この記事のポイント

  • 育休副業を考えるときに必ず確認したい論点を整理しました
  • 育児休業給付金の支給要件である就業日数と時間の基準
  • 賃金による停止の仕組み

育休副業について相談を受けるとき、最初に確かめることは決まっています。「その働き方は、育児休業給付金の支給要件に触れませんか」です。これ、知らない人が本当に多いんです。結論から言うと、育休中に副業をすること自体は法律で禁じられていません。ただし、育児休業給付金には支給されるための要件があり、その中に「就業した日数と時間」の基準があります。つまり、働き方の設計を間違えると、副業で得た金額より大きい給付金を失うことがあるのです。この記事では、給付金の要件を条文と公式の運用に沿って正確に整理し、職場への伝え方、そして税金の扱いまでを順番に説明します。

育休中の副業は禁止されていない、ただし前提がある

まず、法律の構造を整理します。

育児休業は、育児介護休業法に基づいて労働者が取得できる休業です。この法律には「休業中に他の仕事をしてはならない」という規定はありません。つまり、育休中に収入を得る活動をすること自体は、法律上の禁止事項ではありません。

一方で、育児休業給付金は雇用保険法に基づく給付です。これは「休業していること」を前提に支給されるものなので、どの程度働いたかによって支給の可否が変わります。ここが、多くの方が混乱するところです。

整理すると、確認すべきことは3つあります。

第一に、育児休業給付金の支給要件に触れないか。第二に、勤務先の就業規則に違反しないか。第三に、税金や社会保険の扱いがどうなるか。

この3つは、それぞれ別の制度です。ひとつクリアしても、他がクリアできているわけではありません。順番に見ていきましょう。

先に、実務で相談されるパターンを挙げておきます。育休中に少しでも収入があると助かる、というご相談は本当に多いです。第一子のときは想像していなかった支出が出てきて、給付金だけでは足りないと感じる。この感覚は、決してわがままではありません。ただ、進め方を間違えると、助けるつもりの行動が家計を悪化させます。だからこそ、順番が大事なんです。

もうひとつ、動機が「収入」ではない方もいます。仕事から完全に離れることへの不安です。1年現場を離れると、復職したときに感覚が戻るか心配になる。手を動かし続けたいという気持ちで副業を考える方も、実際に多くいらっしゃいます。この場合、収入の額は目的ではないので、月1件から2件の小さな依頼で足りることが多い。目的が違えば、設計も変わります。自分がなぜやりたいのかを先に言葉にしておくと、受ける量を決めやすくなります。

給付金の支給要件、10日と80時間の意味

ここが最も重要な部分です。ゆっくり読んでください。

育児休業給付金は、支給単位期間(原則として1か月ごとに区切られた期間)を単位に支給されます。この支給単位期間中に就業した日数が10日以下であること、または10日を超える場合は就業した時間が80時間以下であることが、支給の要件になっています。

つまり、月に10日以内であれば時間数は問われず、11日以上働く場合は合計80時間以内に収める必要がある、という構造です。

ここで大事なのは、雇用の形態による違いがないという点です。

育休中に収入を得る方法として、「副業」「アルバイト」「パート」といった形態が検討されることがありますが、育児休業給付金の支給の可否を判断する10日や80時間といった数字に関しては、これらの名称の違いによる取り扱いの差は基本的にありません。重要なのは、実際に「就労」したかどうかという点です。 出典: biz.moneyforward.com

つまり、「アルバイトだからセーフ」「副業だから対象外」という区別はありません。実際に働いたかどうかで判断されます。呼び方を変えても、要件の当てはめは変わらないということです。

もうひとつ、賃金による停止の仕組みがあります。

育休中の副業は可能ですが、自社における就労での賃金が育休前賃金の80%以上になると育児休業給付金は停止されます。 出典: biz.moneyforward.com

これは、育児休業を取得している事業主から支払われた賃金についての判定です。支給単位期間中に支払われた賃金が、休業開始時の賃金の80%以上になると給付金は支給されません。13%を超えて80%未満の範囲であれば、給付金は減額されて支給されます。

給付率についても押さえておきましょう。育児休業給付金は、休業開始から180日までは休業開始時賃金日額の67%、それ以降は50%で計算されます。仮に休業開始時の月額が30万円相当だとすれば、最初の期間は月20万円程度、その後は15万円程度という規模になります。

この金額を、副業で失うリスクと比べてください。月5万円の副業収入のために月20万円の給付金を失えば、差し引きで15万円の損です。私が相談で最初にこの計算をしていただくのは、そのためです。制度の詳細は厚生労働省の案内で確認してください。

他社での就労や業務委託は、必ずハローワークに確認する

ここが、インターネット上の情報で最も混乱している論点です。正確にお伝えします。

賃金による停止の判定は、育児休業を取得している事業主から支払われた賃金を見ます。ここは明確です。

問題は、就業した日数と時間の要件です。他の事業主の下で働いた日数や時間が、この10日80時間にどう算入されるのか。ここは、個別の事情によって判断が分かれる領域です。

そして、業務委託の場合はさらに複雑になります。雇用されずに業務委託で作業をする場合、それが「就業」に当たるのかどうか。作業の時間を自分で決められる形であれば、日数や時間の把握そのものが難しくなります。

私が相談でお伝えしているのは、ひとつだけです。始める前に、管轄のハローワークに確認してください。

なぜ確認が必要なのか。理由は2つあります。

第一に、判断が個別の事情に左右されるからです。働き方の実態、契約の形、報酬の決まり方。これらによって当てはめが変わります。インターネット上の一般的な説明を自分に当てはめて進めるのは、危険です。

第二に、後から遡って返還を求められる可能性があるからです。支給された給付金が、後の確認で要件を満たしていなかったと判断されれば、返還の対象になります。しかも、育休が終わったあとに判明することがあります。そのときには、もう副業の収入は使ってしまっています。

確認の仕方は簡単です。育児休業給付金の申請を扱っているハローワークに電話をして、「育休中にこういう形で働こうと考えているのですが、支給要件に影響しますか」と聞く。具体的な働き方を伝えるほど、正確な答えが返ってきます。※この確認を飛ばして進めるのは、私が見てきた中で最も後悔の大きい選択です。

そして、勤務先の人事担当にも確認してください。育児休業給付金の申請手続きは、通常は事業主が行います。つまり、就業の実績は勤務先を通じて申告される流れになります。勤務先に伝えずに進めることは、手続きの整合性という面でも無理があります。

就業規則の確認と、職場への伝え方

法律の確認が終わったら、次は勤務先です。

副業を制限する根拠は、就業規則にあります。読むべき箇所は3つです。

第一に、副業や兼業に関する条項。「禁止」なのか「許可制」なのか「届出制」なのか。この三つは意味が違います。厚生労働省はモデル就業規則を改定し、副業や兼業を原則として認める方向を示しました。それを受けて、届出制に変えた企業が増えています。

第二に、服務規律の条項。職務専念義務、信用保持義務、秘密保持義務。育休中であっても、在籍している従業員としての義務は残ります。

第三に、競業避止に関する条項。勤務先と競合する事業者の仕事を受けることは、ここに触れる可能性があります。

そのうえで、伝え方です。多くの方が「言いにくい」と感じています。その気持ちは分かります。ただ、伝えないほうがリスクが大きい。育児休業給付金の手続きが勤務先を経由するからです。

伝え方のコツは、内容を具体的に整理して持っていくことです。何をするのか、いつやるのか、月にどのくらいの時間か、勤務先の業務と競合しないこと、秘密情報を使わないこと。この5点を一枚にまとめて、届出や相談の窓口に出す。

なぜ紙にするのか。口頭で「副業をしたいのですが」と言うと、相手は最悪のケースを想像します。育休中という状況もあり、「復職しないつもりなのか」と受け取られることもあります。内容が具体的に書いてあれば、判断が早く、しかも誤解が生まれません。

もうひとつ、伝えるときに添えるとよいことがあります。復職の意思です。育休中の副業を「辞めるための準備」と受け取られると、話が難しくなります。復職を前提に、その間に無理のない範囲で収入を補いたい。そう伝えるだけで、受け取り方が変わります。

先日、あるご相談で、こういうケースがありました。育休中に在宅の作業を受け始めた方が、勤務先に伝えずに進めていて、給付金の手続きの過程で人事から質問を受けた。結果的に大きな問題にはなりませんでしたが、そのやりとりの間の数週間、ずっと不安を抱えて過ごすことになったそうです。先に伝えていれば、その時間は要らなかったはずです。

育休中に向く副業の条件を先に決める

ここからは、実際にどんな働き方が現実的かを見ていきます。

育休中の副業には、他の時期とは違う制約があります。だから、条件を先に決めてから仕事を探すほうが確実です。

条件は4つです。

第一に、時間を細かく分けられること。赤ちゃんの生活リズムは予測できません。3時間まとまった時間を前提にする仕事は、成立しません。20分単位で進められる形が向いています。

第二に、締切に幅があること。「今日の17時まで」という依頼は、体調や急な発熱で守れなくなります。数日の余裕がある依頼を選んでください。

第三に、リアルタイムの拘束がないこと。決まった時刻に電話やビデオ通話に出る形は、リスクが高いです。どうしても必要な場合は、同居している方の協力が確実に得られる時間に限ってください。

第四に、就業の日数と時間が把握しやすいこと。これは給付金の要件に直結します。作業した時間を記録できる形でないと、後で説明ができません。

この4つを満たすものとしては、文章を書く仕事、資料の作成、データの整理、翻訳、画像の編集といった在宅で完結する作業が挙げられます。文章を書く仕事の単価の実態は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に職種別のデータがまとまっています。

打ち合わせが必要な仕事を受ける場合は、使うツールを先に確認しておくと安心です。音声だけで参加できるか、途中で抜けられるか、録画が残るか。ツールごとの違いを整理したZoom・Teams・Google Meetを比較|フリーランスの打ち合わせに最適なのは?【2026年版】は、育休中に短い打ち合わせを入れる場合の判断材料になります。

逆に、育休中に避けたほうがよい形も挙げておきます。シフトに入る形のアルバイトは、就業日数が積み上がりやすく、給付金の要件に触れやすい。在庫を抱える物販は、発送の締切に縛られます。そして、相手の急な要求に応じることが前提の仕事は、精神的な余裕を奪います。

在宅で完結する仕事の中身を、具体的に見る

条件が決まったら、中身を見ていきましょう。育休中に現実的に受けられる形を5つ挙げます。

第一に、文章を書く仕事です。Webの記事、商品の説明文、企業のお知らせ文、メールマガジン。文字数と単価で契約するものが多く、作業を細かく分けられます。単価は依頼者と内容によって幅があり、1文字0.5円程度から始まるものと、専門知識が必要で1文字3円以上のものがあります。自分が本業で扱ってきた領域の記事であれば、後者に近い単価で受けられる可能性があります。

第二に、資料の作成です。会議の資料、営業用の提案書、社内の手順書。前職や本業で日常的に作っていたものなら、すでに技術があります。テンプレートに沿って作る形の依頼は、時間が読みやすいという利点があります。

第三に、データの整理と入力です。単価は低めですが、判断が要らないので中断と再開が簡単です。赤ちゃんが寝ている間に少しずつ進める形に、最も向いています。

第四に、画像や動画の編集です。写真の切り抜きや明るさの調整、短い動画の字幕付け。道具の習得に時間がかかりますが、一度身につけば継続の依頼に繋がりやすい領域です。

第五に、翻訳や文字起こしです。語学が使える方や、聞き取りに慣れている方に向いています。文字起こしは音声を聞きながら進めるため、静かな環境が必要という制約があります。

どれを選ぶかを決めるときは、単価より先に「中断できるか」を見てください。赤ちゃんが泣いたら中断せざるを得ません。中断して戻ったときに、どこまでやったか思い出すコストが低い仕事を選ぶ。これが、育休中の仕事選びで最も効く基準です。

そして、受ける量についてです。最初の月は、自分が想像した量の半分にしてください。育児の負荷は、月齢によって変わります。3ヶ月の頃にできたことが、8ヶ月の頃には難しくなることもあります。動き始めると、目を離せる時間が減るからです。

契約についても一点。フリーランス保護新法では、発注者に対して業務の内容や報酬の額、支払期日を明示する義務が課されています。また、成果物を受け取った日から原則として60日以内に報酬を支払う義務があります。条件が書かれたものを受け取ってから始めてください。※口約束で始めて後から条件が変わったという相談は、残念ながら少なくありません。

配偶者が育休を取る場合と、共働き世帯での設計

育休を取るのが配偶者の場合、あるいは夫婦の両方が育休を取る場合についても触れておきます。

育児休業は、性別に関係なく取得できます。そして、育児休業給付金の要件も同じです。配偶者が育休中に副業を考えている場合、確認すべきことはこの記事で整理したものと同じ3つです。給付金の要件、就業規則、税金と社会保険。

夫婦の両方が育休を取っている場合は、世帯の収入設計が重要になります。給付金は休業開始から180日までが67%、それ以降が50%です。二人とも50%の期間に入ると、世帯の収入は大きく下がります。この時期に備えて、育休に入る前に固定費を見直しておくほうが、副業を増やすより効果が確実です。

そして、役割分担の話です。育休中に副業をする場合、作業をする時間は誰かが子どもを見ている時間です。夫婦のどちらかが「自分の時間で副業をしている」つもりでいると、もう一方に負担が寄ります。作業の時間を具体的に決めて共有してください。「土曜の午前は私が作業、午後は交代」といった形です。

私が相談を受ける中で、金銭的なトラブルより多いのが、この時間配分をめぐる不満です。副業の収入がいくらであっても、家庭の中の不均衡は残ります。始める前に、時間の使い方を言葉にしておいてください。

給付金は非課税、しかし副業の所得は課税される

税金の話に移ります。ここは、知っておくと安心できる部分です。

まず、育児休業給付金は非課税です。雇用保険法には、失業等給付について租税その他の公課を課してはならないという定めがあり、育児休業給付にも同様の取り扱いがあります。つまり、給付金には所得税も住民税もかかりません。

これは大事な事実です。給付金は、確定申告で申告する所得には含まれません。配偶者控除や配偶者特別控除の判定に使う合計所得金額にも入りません。つまり、育休中に給付金だけを受け取っている場合、配偶者の税金の計算上、あなたの所得はその年の給与分だけで判定されます。

年の途中で育休に入った方は、ここで思わぬ結果になることがあります。その年の給与が少なくなるため、配偶者控除や配偶者特別控除の対象になる場合があるのです。配偶者が年末調整で申告していなければ、確定申告で還付を受けられる可能性があります。これは、知らないと取り逃がす制度です。

一方、副業で得た収入は課税されます。ここが給付金と違う点です。

給与を1か所から受けている方で、給与以外の所得の合計が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。この20万円は収入ではなく、収入から必要経費を引いた後の所得の額です。

業務委託で在宅の作業をした場合、その収入は雑所得または事業所得になります。経費として計上できるものは、業務に使った通信費、パソコンやソフトの費用(業務に使った割合分)、書籍や資料、文房具などです。記録を残しておけば計上できます。

正確な取り扱いは国税庁の案内で確認してください。手続きはe-Taxを使えばスマートフォンとマイナンバーカードで完結します。入口はe-Taxです。

住民税と社会保険料、見落とされやすい2つの論点

もう2つ、押さえておくべきことがあります。

ひとつめは住民税です。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別に必要になります。住民税には20万円以下なら申告しなくてよいという規定がありません。申告先はお住まいの市区町村です。所得税の確定申告をした場合は、住民税の申告を別に行う必要はありません。

そして、育休中の住民税の納め方に注意が必要です。育休中は給与の支払いが止まることが多いため、給与から天引きする特別徴収ができなくなります。この場合、勤務先が一括で徴収するか、普通徴収に切り替えて自分で納付するかの手続きが取られます。復職後に前年分の住民税がまとめて天引きされ、手取りが想定より少なくて驚く方がいます。育休に入るときに、住民税の扱いを人事に確認しておいてください。

ふたつめは社会保険料です。育児休業期間中は、申出により健康保険と厚生年金保険の保険料が免除されます。事業主の負担分も被保険者の負担分も免除され、しかも年金の計算上は保険料を納めたものとして扱われます。これは非常に大きな制度です。

ここで気をつけていただきたいのは、副業の形によってこの前提が崩れる場合があることです。他の事業所で週の労働時間や月の賃金が一定の基準を超える働き方をすると、その事業所で社会保険の被保険者資格を取得することになる可能性があります。そうなると、複数の事業所にまたがる手続きが必要になり、話が一気に複雑になります。

業務委託で受ける形であれば、雇用ではないため被保険者資格の取得という論点は生じません。育休中の副業として業務委託が選ばれやすいのは、こうした事情もあります。ただし、業務委託であっても給付金の就業要件の確認は必要です。制度の全体像は日本年金機構の案内も参考になります。

物販や転売で「稼ぎすぎた」場合の落とし穴

実際にあるご相談を挙げます。

育休中の副業に関して。 ちょこっと足しになればと思い、メルカリ物販を始めました。 が、かなり足しになってしまい、毎月30万を超えるようになりました。育休中に稼ぎ過ぎると育休手当は止められてしまうのでしょうか? また、その際に会社にバレることもあるのでしょうか? 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

このケースで整理すべき論点は4つあります。

第一に、給付金の要件です。賃金による停止の判定は、育児休業を取得している事業主から支払われた賃金を見ます。物販の売上はこれに当たりません。ただし、就業した日数と時間の要件については、その活動が「就業」に当たるかどうかの判断が必要です。仕入れ、撮影、出品、梱包、発送という一連の作業をどう評価するかは、個別の事情によります。だからこそ、ハローワークへの確認が要るのです。

第二に、税金です。物販の所得が20万円を超えれば確定申告が必要になります。月30万円の売上が続いているなら、所得は確実に基準を超えます。しかも、この規模になると事業として行っていると判断される可能性が高く、開業届や青色申告の検討が必要な段階です。

第三に、社会保険の扶養や配偶者控除への影響です。物販の所得は合計所得金額に含まれます。配偶者控除の判定に影響します。

第四に、就業規則です。物販を継続的に行うことが副業に当たるかどうかは、規定の書き方によります。届出が必要な会社であれば、届出をしていない状態になっています。

そして、会社に知られる経路についてです。最も多いのは住民税です。副業の所得が加わると住民税の額が変わるため、給与計算の担当者が気づく可能性があります。育休中で給与の支払いが止まっている期間はこの経路が働きませんが、復職後に前年分の住民税が計算されるときに現れます。

隠す前提で設計するより、先に確認する。これが、結果として一番楽な道です。中古品を仕入れて転売する形であれば古物営業法に基づく許可の問題も出てきます。規模が伸びたら、税金だけでなく他の法令も確認してください。

このケースでもう一つ考えておきたいのは、作業量です。月30万円の売上を物販で作るには、仕入れと出品と発送で相当な時間がかかります。育児と並行してその時間を確保しているということは、休む時間を削っている可能性が高い。収入が増えたことを喜ぶ前に、睡眠が足りているかを確かめてほしいのです。制度上の問題がなくても、体が持たない働き方は続きません。

復職を見据えた設計と、続く働き方の選び方

ここからは、フリーランス・在宅ワーク市場を20年運営してきた運営者の視点から、少し長い目で見た話をします。

20年この市場を見てきた立場から言えば、育休中に始めた仕事が復職後も続いている方には共通点があります。育休の期間を「稼ぐ時期」ではなく「関係を作る時期」として使っていることです。

運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど、単発の作業ではなく「この人に任せると楽」という関係づくりに時間を使っています。育休中に月3万円分だけ受けていた方が、復職後も同じ依頼者から相談を受け続けている。金額は小さくても、その関係が3年続けば、積み上がる額は大きくなります。逆に、給付金の要件ぎりぎりまで詰め込んで疲れ果ててしまうと、復職と同時に全部が止まります。

もうひとつ、額面と手取りの話をさせてください。仕事を仲介する事業者が間に入ると、依頼者が支払った金額から手数料が抜かれ、受け手に届く額が薄くなります。中間マージンが乗らない直接の取引なら、依頼者は同じ予算でより多く頼めて、受け手の手元には厚く残ります。手数料0%という条件の価値は、金額の大小ではなく「同じ仕事で手元に残る割合が違う」という質の差です。長く見てきた実感として、この差を理解している方は、単価の交渉より先に「どこで受けるか」を選び直しています。

復職後を見据えるなら、育休中に手を付けておくと効くものがあります。

ひとつは、基礎の型です。報告書や依頼文、請求書の書き方が整っている人は、業務委託の現場で信頼が早く積み上がります。ビジネス文書検定は、その型を体系的に押さえられる試験です。育児の合間に少しずつ進められる範囲の学習量です。

もうひとつは、技術の方向です。ネットワークの基礎を扱うCCNA(シスコ技術者認定)は、運用や保守の在宅案件への入口になります。時間がかかる試験ですが、資格が応募の条件になっている案件が実際にあるため、取ったあとの効き方が明確です。

そして、需要が伸びている領域として、生成AIを業務に組み込む支援があります。どんな業務が発注されているかはAIコンサル・業務活用支援のお仕事に整理されています。マーケティングやセキュリティを含む周辺の広がりはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で確認できます。開発の領域に関心があるならアプリケーション開発のお仕事も見ておく価値があります。

復職前に整えておくとよいことも挙げておきます。

ひとつは、記録の整理です。育休中に受けた仕事の内容、依頼者、報酬、作業した時間。これを一枚にまとめておくと、復職後に副業を続けるかどうかの判断が数字でできます。時間あたりの手取りを計算してみて、復職後の生活で成立する水準かを確かめる。成立しないなら、続けない判断も正しい判断です。

もうひとつは、依頼者への連絡です。復職の時期が決まったら、受けられる量が変わることを早めに伝えてください。突然量を減らすより、先に伝えておくほうが関係が続きます。「復職後は月2件までなら受けられます」と具体的に伝えると、依頼者も計画が立てられます。

そして、税金と住民税の確認です。育休中に副業の所得があった年は、確定申告が必要になる可能性があります。復職して忙しくなる前に、売上と経費の記録を整えておいてください。年が明けてから一年分を遡るのは、育児と仕事の両立をしながらでは相当な負担になります。

最後に、順番をもう一度整理します。育休中に副業を考えるなら、まず管轄のハローワークに働き方を伝えて確認する。次に勤務先の就業規則を読み、届出が必要なら出す。そして、記録を残しながら始める。この順番を守れば、後から慌てることはありません。

育児休業給付金は、あなたが払ってきた雇用保険料に基づく権利です。副業を考えることも、収入を補いたいと思うことも、後ろめたいことではありません。確かめるべきことを確かめて、記録を残して進めれば大丈夫です。法律は、あなたの味方です。

よくある質問

Q. 育休中に副業をすると育児休業給付金は止まりますか?

給付金には支給単位期間中に就業した日数が10日以下、10日を超える場合は就業した時間が80時間以下という要件があります。この基準は雇用形態の呼び方で変わりません。また、育児休業を取得している事業主から支払われた賃金が休業開始時賃金の80%以上になると支給されません。他社での就労や業務委託の扱いは個別判断になるため、始める前に管轄のハローワークに確認してください。

Q. 育児休業給付金に税金はかかりますか?

かかりません。雇用保険の給付には租税その他の公課を課してはならないという定めがあり、育児休業給付金は非課税です。確定申告で申告する所得にも、配偶者控除の判定に使う合計所得金額にも含まれません。一方で、副業で得た収入は課税の対象になります。

Q. 勤務先には伝えたほうがいいですか?

伝えることをおすすめします。育児休業給付金の申請手続きは通常は事業主が行い、就業の実績も勤務先を通じて申告される流れになります。伝える際は、何をするのか、月にどのくらいの時間か、競合しないこと、秘密情報を使わないこと、そして復職の意思を一枚にまとめて届出や相談の窓口に出すと、誤解が生まれにくくなります。

Q. 育休中の副業ではどんな仕事が向いていますか?

20分単位で進められ、締切に数日の余裕があり、決まった時刻の拘束がなく、作業時間を記録できる形が向いています。文章の執筆、資料作成、データ整理、翻訳、画像編集といった在宅で完結する作業が該当します。シフトに入るアルバイトは就業日数が積み上がりやすく、発送の締切に縛られる物販も育児との両立が難しくなります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月18日最終更新:2026年9月20日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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